JPH11297340A - 溶融炭酸塩型燃料電池 - Google Patents

溶融炭酸塩型燃料電池

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JPH11297340A
JPH11297340A JP10101202A JP10120298A JPH11297340A JP H11297340 A JPH11297340 A JP H11297340A JP 10101202 A JP10101202 A JP 10101202A JP 10120298 A JP10120298 A JP 10120298A JP H11297340 A JPH11297340 A JP H11297340A
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electrolyte
reservoir
electrolyte reservoir
average pore
pore diameter
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JP10101202A
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Yoji Fujita
洋司 藤田
Takashi Nishimura
隆 西村
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Mitsubishi Electric Corp
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Mitsubishi Electric Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 この発明は、電極や電解質層からの炭酸塩の
消耗に応じて電解質リザーバから電極や電解質層に炭酸
塩を供給できるようにし、性能劣化の防止を図ることが
できる溶融炭酸塩型燃料電池を得る。 【解決手段】 電解質補給を目的とした電解質リザーバ
100がセパレータ板66端部のウェットシール部6b
の下部に配置されている。この電解質リザーバ100
は、酸化剤電極46の端部に接するように配置された第
1の電解質リザーバ101と、酸化剤電極46および電
解質マトリクス31に接触することなく第1の電解質リ
ザーバ101に接するように積層された第2の電解質リ
ザーバ102とから構成され、第1の電解質リザーバ1
01の平均空孔径が、第2の電解質リザーバ102の平
均空孔径より小径に形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は発電装置である溶融
炭酸塩型燃料電池に関するものである。
【従来の技術】
【0002】図7は電解質が650℃で液体となるアル
カリ金属の炭酸塩を用いる溶融炭酸塩型燃料電池の構造
を示す要部斜視図である。図7において、単セルは、電
解質マトリクス31、この電解質マトリクス31を挟ん
で相対して配置された燃料電極26および酸化剤電極4
6、燃料電極26上に形成され燃料ガス流路を構成する
燃料側コルゲート板22および酸化剤電極46上に形成
され酸化剤ガス流路を構成する酸化剤側コルゲート板6
2から構成されている。そして、このように構成された
単セルがセパレート板66を介して複数個積層されて、
スタックを構成している。さらに、燃料ガス4を給排気
するためのマニホールド11a及び酸化剤ガス5を給排
気するためのマニホールド11bがこのスタックの四方
側面に設置されている。また、燃料電極26と酸化剤電
極46は、それぞれ発生した電流を通過せしめる燃料側
穴あき板23と酸化剤側穴あき板63に保持されてい
る。さらに、セパレート板66には、電池の内外を分離
シールする燃料側ウエットシール部6aと酸化剤側ウエ
ットシール部6bとが設けられている。
【0003】ここで、電解質マトリクス31、燃料電極
26および酸化剤電極46に含まれる電解質として、炭
酸リチウム62モル%、炭酸カリウム38モル%からな
る混合炭酸塩を用いている。また、酸化剤側コルゲート
板62、酸化剤側穴あき板63、セパレータ板66の酸
化剤に触れる面の構成材料はクロムを18から20重量
%含むSUS316Lよりなっている。
【0004】このように構成された溶融炭酸塩型燃料電
池では、電解質とコルゲート板が反応するとともに、電
解質の蒸発によって、徐々に電解質が燃料電極26およ
び酸化剤電極46の電極または電解質マトリクス31か
ら散逸することにより、内部抵抗、反応抵抗が上昇し、
電池性能が劣化していく。
【0005】このような電解質の消耗を防止するため
に、集電板の形状の改良、集電板材料の改良が行われて
いるが、一方で、電解質を経時的に燃料電極26および
酸化剤電極46の電極及び電解質マトリクス31に供給
する電解質リザーバの検討が行われている。これまで、
溶融炭酸塩型燃料電池用の電解質リザーバに関して、特
開平4−73866号公報、特開昭63−318074
号公報、特開昭61−269861号公報、特開昭62
−234870号公報等が知られているが、いずれも、
電解質のリザーバの設置位置を改善して電解質の消耗防
止を図るものであり、電解質の移動に係わるポア構造に
ついては何ら検討されておらず、どの程度のポアが有効
であるかを記述していない。また、実際の効果も十分明
らかであったとは言い難い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように、溶融炭酸
塩型燃料電池の寿命を制限する要因の一つとして、電池
内の燃料電極26および酸化剤電極46の電極および電
解質マトリクス31からの電解質の消耗がある。しかし
ながら、従来の溶融炭酸塩型燃料電池においては、集電
板の形状や集電板材料の改良、さらには電解質リザーバ
の設置位置の改善により電解質の消耗を防止することが
試みられていたが、電解質の移動に係わるポア構造を規
定し、さらには電解質の組成を改良して電解質の消耗を
防止しようとする試みはなされていなかった。
【0007】この発明は、上記のような課題を解決する
ためになされたもので、電解質リザーバを異なる平均空
孔径を持つ孔質体で構成し、その平均空孔径と設置位置
を規定することにより、さらには電解質の組成を改良す
ることにより、電極や電解質層からの炭酸塩の消耗に応
じて電解質リザーバから電極や電解質層に炭酸塩を供給
できるようにし、性能劣化の防止を図ることができる溶
融炭酸塩型燃料電池を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明に係る溶融炭酸
塩型燃料電池は、燃料電極および酸化剤電極により電解
質マトリクスを挟み込んで構成される単セルと、電解質
補給を目的とした電解質リザーバとを有する溶融炭酸塩
型燃料電池において、上記電解質リザーバは、上記燃料
電極、上記酸化剤電極および上記電解質マトリクスの少
なくとも1つに接触するように配置された第1の電解質
リザーバと、上記燃料電極、上記酸化剤電極および上記
電解質マトリクスに接触することなく上記第1の電解質
リザーバに接触するように積層された第2の電解質リザ
ーバとから構成され、上記第1の電解質リザーバの平均
空孔径が、上記第2の電解質リザーバの平均空孔径より
小径に形成されているものである。
【0009】また、上記第1の電解質リザーバの平均空
孔径が、上記燃料電極、上記電解質マトリクスおよび上
記酸化剤電極の該第1の電解質リザーバと接触する部材
の平均空孔径より大径に形成されているものである。
【0010】また、上記第1の電解質リザーバの平均空
孔径が、上記電解質マトリクスの平均空孔径の5倍以内
で、かつ、上記第2の電解質リザーバの平均空孔径の三
分の一以上に設定されているものである。
【0011】また、上記第1の電解質リザーバの平均空
孔径が、0.5μmより大きく、かつ、1.5μmより小さく設
定されているものである。
【0012】また、上記第2の電解質リザーバの平均空
孔径が、1.5μm以上で、かつ、3.0μm以下に設定されて
いるものである。
【0013】また、電解質が完全に融解する温度が56
0℃以上、かつ、650℃以下に設定されているもので
ある。
【0014】また、炭酸塩の組成の95%以上が炭酸リ
チウムと炭酸ナトリウムとにより占められており、炭酸
リチウム/炭酸ナトリウムの比率が1.8以上、かつ、
4.0以下に設定されているものである。
【0015】また、燃料電極および酸化剤電極により電
解質マトリクスを挟み込んで構成される単セルと、電解
質補給を目的とした電解質リザーバとを有する溶融炭酸
塩型燃料電池において、上記電解質リザーバ中の電解質
が完全に融解する温度が560℃以上、かつ、650℃
以下に設定されているものである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
について説明する。 実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1に係る溶
融炭酸塩型燃料電池における単セルの周囲に存在するウ
ェットシール部周りを示す断面図である。図1におい
て、単セルは、電解質マトリクス31、この電解質マト
リクス31を挟んで相対して配置された燃料電極26お
よび酸化剤電極46、燃料電極26上に形成され燃料ガ
ス流路を構成する燃料側コルゲート板22および酸化剤
電極46上に形成され酸化剤ガス流路を構成する酸化剤
側コルゲート板62から構成されている。そして、電解
質リザーバ100がセパレータ板66端部のウェットシ
ール部6bの下部に配設されている。さらに、燃料電極
26と酸化剤電極46は、それぞれ発生した電流を通過
せしめる燃料側穴あき板23と酸化剤側穴あき板63に
保持されている。そして、図示していないが、このよう
に構成された単セルがセパレート板66を介して複数個
積層されて、スタックを構成し、さらに燃料ガス給排気
用のマニホールド及び酸化剤ガス給排気用のマニホール
ドがこのスタックの四方側面に設置されている。
【0017】この実施の形態1による溶融炭酸塩型燃料
電池は、電解質リザーバ100が、酸化剤電極46の端
部に接するように配設された第1の電解質リザーバ10
1と、電解質マトリクス31および酸化剤電極46に接
することなく第1の電解質リザーバ101に接するよう
に積層された第2の電解質リザーバ102とから構成さ
れ、さらに第1の電解質リザーバ101の平均空孔径が
第2の電解質リザーバ102の平均空孔径より小さく構
成されているものである。
【0018】ここで、この実施の形態1による作用効果
を実施例に基づいて説明する。 [実施例1]この実施例1では、単セルを一対のセパレ
ータ板66で挟持し、第1および第2の電解質リザーバ
101、102を図1に示されるようにセパレータ板6
6のウェットシール部6bの下部に積層配置して電池
(電極面積25cm2)を作製している。なお、第1の電解質
リザーバ101には、比表面積が1m2/g程度に調整
されたγLiAlO2を、Li2CO3とK2CO3とのモル比が62対
38である混合炭酸塩からなる電解質(電解質の融点48
8℃)と有機バインダーとともにシート状に成形した多
孔質体を用いた。この多孔質体は、バインダー及び電解
質を除去後の平均空孔径は0.9μmであり、その厚みは1.
5mm、幅は7mmである。一方、第2の電解質リザーバ1
02には、焼結した酸化ニッケルの多孔体を用いた。こ
の第2の電解質リザーバ102は、酸化ニッケルの多孔
体の空孔のほぼ85%が満たされるように、Li2CO3とK2
CO3とのモル比が62対38である混合炭酸塩からなる
電解質をあらかじめ高温で溶解含浸したものである。こ
の多孔体は、電解質を注入する前の水銀ポロシメータに
よる平均空孔径は1.9μmであり、その厚みは1.5mm、幅
7mmである。
【0019】[実施例2]この実施例2では、第1およ
び第2の電解質リザーバ101、102の平均空孔径を
それぞれ1.2μmおよび1.9μmとして上記実施例1と同
様に電池を作製している。 [実施例3]この実施例3では、第1および第2の電解
質リザーバ101、102の平均空孔径をそれぞれ0.9
μmおよび1.6μmとして上記実施例1と同様に電池を
作製している。
【0020】[従来例]従来例として、図2に示される
ように、単セルの周辺部に電解質リザーバを全く持たな
い、つまり電解質リザーバ100の部分がオーステナイ
トステンレス鋼の一種であるSUS316Lのコルゲート板で
置き換わっている電池を作製している。 [比較例1]比較例1として、電解質リザーバ100を
単層の電解質リザーバ(平均空孔径:0.9μm)で構成
した電池を作製している。 [比較例2]比較例2として、電解質リザーバ100を
単層の電解質リザーバ(平均空孔径:1.9μm)で構成
した電池を作製している。 [比較例3]比較例3として、電解質リザーバ100を
単層の電解質リザーバ(平均空孔径:0.5μm)で構成
した電池を作製している。 [比較例4]比較例4として、電解質リザーバ100を
第1の電解質リザーバ(平均空孔径:0.9μm)と第2
の電解質リザーバ(平均空孔径:1.2μm)で構成した電
池を作製している。 [比較例5]比較例5として、電解質リザーバ100を
第1の電解質リザーバ(平均空孔径:0.9μm)と第2
の電解質リザーバ(平均空孔径:3.4μm)で構成した電
池を作製している。
【0021】このように作製された電池を約2000時
間運転して、電池性能の電流値が150mA/cm2、燃料利用
率が40%、炭酸ガス利用率、酸素利用率が40%の時
の初期性能と、1000時間あたりの特性の低下量とし
て定義される劣化率を測定し、その結果を図3に示す。
【0022】以下、図3に基づいて説明する。実施例1
では、初期性能が832mV、劣化率が5.2mV/1000時間
であるのに対し、従来例では、初期特性が845mV、劣
化率が32mV/1000時間であり、実施例1が、従来例に比
べて、劣化率が大きく改善されていることがわかる。こ
こで、実施例1における初期性能は従来例よりも832m
Vとやや低くなっいる。これは、電池昇温途中にカソー
ドの酸化が起きる際に、カソード中に含まれる電解質量
が従来例の場合に比較して、電解質リザーバ100が存
在するために多くなり、電解質が過剰な状態になったの
ではないかと考えられている。しかし、この電池性能が
この程度低下しても、この実施例1では劣化率が低減さ
れているため、1000時間を経ずして従来例を上回った。
【0023】また、平均空孔径が0.9μmの単層の電解質
リザーバを用いた比較例1では、劣化率が11mV/1000時
間まで改善されたが、実施例1には及ばない。初期性能
も従来例よりも827mVとやや低くなった。一方、平均空
孔径が1.9μmの単層の電解質リザーバを用いた比較例2
では、劣化率が18mV/1000時間と比較例1に比較しても
大きく、初期特性も780mVとかなり低くなってしまう結
果となった。このことは、単層の電解質リザーバの平均
空孔径が大きくなると、電解質が運転初期に電極に過剰
に供給されて、電池性能が低下してしまうとともに、電
解質の散逸もはやくなり、電解質の供給機能を十分に果
たせなくなるものと考えられる。
【0024】そのために、電解質リザーバが単層の場合
には、平均空孔径が1.9μmでは大きすぎ、電解質リザー
バの平均空孔径を1.5μm程度以下に設計することが適当
であると考えられる。しかし、平均空孔径が0.9μmの単
層の電解質リザーバ(比較例1)では、電解質マトリク
ス31内に含まれる細孔(0.1〜0.6μm)と径が同等とな
る細孔が不可避的に生成すると考えられる。そのため、
電解質リザーバ内の電解質の一部は電池へ供給できない
ことになり、劣化率を十分に抑制できないという問題が
生じてしまう。
【0025】また、比較例3の結果から、電解質リザー
バが単層の場合で平均空孔径が0.5μm以下となると、電
解質リザーバ内の大半の細孔の径が電解質マトリクス3
1内の細孔の孔径と同程度となるため電解質の補給する
機能が大きく減少してしまうためか、ほとんどリザーバ
の効果が現れないことがわかった。
【0026】以上のことから、実施例1では、小さい平
均空孔径(0.9μm)をもった第1の電解質リザーバ10
1を酸化剤電極46に接触させ、初期の電解質消耗を補
填できるやや大きい平均空孔径(1.9μm)を持った第2
の電解質リザーバ102を第1の電解質リザーバ101
に接触させて設けるリザーバの積層配置構造を採ること
により、電解質リザーバが単層の場合(従来例、比較例
1)よりも劣化率を低減できることがいえる。
【0027】また、第1および第2の電解質リザーバ1
01、102の平均空孔径をそれぞれ1.2、1.9μmとし
た実施例2および第1および第2の電解質リザーバ10
1、102の平均空孔径をそれぞれ0.9、1.6μmとした
実施例3では、劣化率および初期特性ともに、上記実施
例1と同等の結果が得られた。
【0028】ここで、リザーバの積層配置構造におい
て、小さい平均空孔径の第1の電解質リザーバ101の
平均孔径を1.5μmより大きくしても、単層のリザーバの
結果(比較例2)から推定されるように劣化率低減の効
果が小さくなると予想することができる。また、第1の
電解質リザーバ101の平均空孔径を0.5μm以下とする
と、比較例3の結果から、リザーバの効果がほとんど得
られなくなると予想することができる。また、比較例4
の結果から、大きい平均空孔径の第2の電解質リザーバ
の平均孔径を1.5μm未満にした場合、単層のリザーバの
場合(比較例1)と同様に補給にかかわる電解質量が小
さくなり、劣化率が大きくなり、劣化率低減に大きな効
果が得られないことがいえる。また、比較例5の結果か
ら、大きい平均空孔径の第2の電解質リザーバの平均空
孔径を3.4μmとした場合、初期の電解質消耗量が増加す
るだけで、電池性能の劣化率の低減を十分に達成するこ
とができないことがいえる。以上のことから、第1の電
解質リザーバ101の平均空孔径RSおよび第2の電解
質リザーバ102の平均空孔径RLを、それぞれ0.5μm
<RS<1.5μm、1.5μm≦RL≦3.0μmと設定するこ
とが望ましい。
【0029】なお、電極や電解質マトリクスへの電解質
の補給経路には、毛管力により電解質が残存しているこ
とが必要であり、積層配置構造の電解質リザーバを使用
する際には平均空孔径の小さい方の層を、アクティブコ
ンポーネントに接触させることがより有効である。ま
た、電解質マトリクス31の空孔径は0.1〜0.6μmまで
分布しており、本実施例では電解質マトリクス31の平
均空孔径が約0.3μmのものを用い、最適なリザーバの空
孔径の範囲を検討している。ただし、電解質の補給は相
対的な空孔径の比によって、支配される。そのため、電
解質マトリクス31の平均孔径が異なっても、電解質マ
トリクスまたは電極接触面近傍の第1の電解質リザーバ
101の平均空孔径を、電解質マトリクス31の平均空
孔径の5倍以内で、かつ、該接触面から離れた位置の第
2の電解質リザーバ102の平均空孔径の1/3以上に
設定することにより、異なる空孔径に対しても、優れた
電解質補給機能を得ることができると考えられる。
【0030】実施の形態2.上記実施の形態1では、炭
酸リチウムと炭酸カリウムの混合物を溶融炭酸塩型燃料
電池の電解質に用いた場合について説明しているが、こ
の実施の形態2では、カソードの溶解抑制に効果のあ
る、炭酸リチウムと炭酸ナトリウムの混合物を溶融炭酸
塩型燃料電池の電解質に用いたものである。
【0031】ここで、この実施の形態2による作用効果
を実施例に基づいて説明する。 [実施例4]この実施例4では、Li2CO3とNa2CO3とのモ
ル比が65対35である混合炭酸塩からなる電解質(電
解質の融点560℃)を用い、上記実施の形態1と同じ構
造の電池を作製している。即ち、第1および第2の電解
質リザーバ101、102の平均空孔径は、それぞれ0.
9μm、1.9μmである。 [実施例5]この実施例5では、Li2CO3とNa2CO3とのモ
ル比が70対30である混合炭酸塩からなる電解質(電
解質の融点580℃)を用い、上記実施例4と同様に電池
を作製している。 [実施例6]この実施例6では、Li2CO3とK2CO3とのモ
ル比が75対25である混合炭酸塩からなる電解質(電
解質の融点580℃)を用い、上記実施例4と同様に電池
を作製している。 [実施例7]この実施例7では、Li2CO3とNa2CO3とのモ
ル比が70対30である混合炭酸塩からなる電解質(電
解質の融点580℃)を用い、電解質リザーバ100とし
て単層の電解質リザーバ101(平均空孔率:0.9μ
m)を用いて電池を作製している。
【0032】[比較例6]比較例6として、Li2CO3とNa
2CO3とのモル比が53対47である混合炭酸塩からなる
電解質(電解質の融点496℃)を用い、上記実施例4と
同様に電池を作製している。 [比較例7]比較例7として、Li2CO3とNa2CO3とのモル
比が58対42である混合炭酸塩からなる電解質(電解
質の融点530℃)を用い、上記実施例4と同様に電池を
作製している。 [比較例8]比較例8として、Li2CO3とNa2CO3とのモル
比が53対47である混合炭酸塩からなる電解質(電解
質の融点496℃)を用い、上記実施例7と同様に電池を
作製している。
【0033】このように作製された電池を約2000時
間運転して、電池性能の電流値が150mA/cm2、燃料利用
率が40%、炭酸ガス利用率、酸素利用率が40%の時
の初期性能と、1000時間あたりの特性の低下量とし
て定義される劣化率を測定し、その結果を図4に示す。
【0034】以下、図4に基づいて説明する。比較例6
と先の実施例1との結果から、電解質としてLi2CO3とNa
2CO3との混合炭酸塩(融点:496℃)を用いた場合、電
解質としてLi2CO3とK2CO3との混合炭酸塩(融点:488
℃)を用いた場合に比べて、初期特性がかなり低くなる
ことがわかる。この初期特性の劣化は、カソードの酸化
の際に、カソード内に含まれる電解質が多いことにより
引き起こされると考えられ、特に炭酸リチウムと炭酸ナ
トリウムの混合物を電解質に用いる場合に、顕著に現れ
ているものと思われる。
【0035】また、比較例6、7および実施例4、5の
結果から、電解質における炭酸リチウムの比率が高くな
るにつれ(電解質の融点が高くなるにつれ)、初期特性
が高められることがわかる。そして、炭酸リチウムの比
率が58%(比較例7、電解質の融点:530℃)では初
期特性はなお不十分であり、初期特性の観点から炭酸リ
チウムの比率を65%(電解質の融点:560℃)以上と
することが望ましい。一方、炭酸リチウムの比率が80
%(電解質の融点:650℃)を超えると電解質の融点が
上昇しすぎて、電池運転温度でも融解しない成分が残っ
てしまい、電解質を補給する機能が損なわれてしまうこ
とから、炭酸リチウムの比率を65%(炭酸リチウム/
炭酸ナトリウムの比率:約1.8)以上、80%(炭酸
リチウム/炭酸ナトリウムの比率:4.0)以下とする
ことが望ましい。言い換えれば、電解質の融点を560
℃以上、650℃以下とすることが望ましい。また、ニ
ッケルの溶出を防止する目的から、電解質にアルカリ土
類金属の炭酸塩を添加することが行われるが、アルカリ
土類金属の炭酸塩の添加比率が5%を超えると電池性能
の低下をもたらすことになる。そこで、アルカリ土類金
属の炭酸塩の添加比率を5%未満に抑え、炭酸塩の組成
の95%以上を炭酸リチウムと炭酸ナトリウムにより占
められるようにすることが望ましい。
【0036】ここで、実施例6の結果から、炭酸リチウ
ムと炭酸カリウムの混合物からなる電解質組成において
も、電解質の融点を580℃とすることにより、十分高
い初期特性が得られている。従って、この初期特性に及
ぼす効果は、炭酸リチウムと炭酸ナトリウムとからなる
電解質に限らず、炭酸リチウムと炭酸カリウムとからな
る電解質にも効果があることはいうまでもないことであ
る。
【0037】このような初期特性に及ぼす効果は、昇温
中に電解質リザーバ中の電解質の一部が固体のままであ
ることにより得られるもので、その効果はリザーバの積
層配置構造に限るものではない。即ち、比較例8と実施
例7との結果から、単層の電解質リザーバを用いたもの
においても、電解質の融点を560℃以上とすることに
より、十分高い初期性能が得られるという効果を持つも
のである。
【0038】なお、上記各実施例では、第1の電解質リ
ザーバ101は電解質マトリクス31には接触せず、酸
化剤電極46の端部に接触するように配置されている
が、該第1の電解質リザーバ101は酸化剤電極46に
は接触せず、電解質マトリクス31に接触するように配
置してもよく、さらには電解質マトリクス31と酸化剤
電極46との両者に接触するように配置してもよい。ま
た、上記各実施例では、第1および第2の電解質リザー
バ101、102を積層してなる電解質リザーバ100
を単セルの酸化剤側ウェットシール部6bの下部に設置
するものとしているが、該電解質リザーバ100は第1
の電解質リザーバ101を燃料電極26の端部に接触さ
せ、かつ、第2の電解質リザーバ102を燃料電極26
および電解質マトリクス31から隔離して第1の電解質
リザーバ101に接触させるようにして燃料側ウェット
シール部6aの下部に設置してもよい。この場合、第1
の電解質リザーバ101は、燃料電極26および電解質
マトリクス31の少なくとも一方に接触していればよ
い。また、上記各実施例では、電解質リザーバ100が
第1および第2の電解質リザーバ101、102を積層
して構成されているものとしているが、電解質リザーバ
100は2層のリザーバを積層した構造に限定されるも
のではなく、3層以上のリザーバを積層した構造でもよ
い。この場合、1層のリザーバが燃料電極、電解質マト
リクスおよび酸化剤電極の少なくともいずれかに接し、
他の層のリザーバが燃料電極、電解質マトリクスおよび
酸化剤電極に接しないように1層のリザーバに積層さ
れ、さらに1層のリザーバの平均空孔径と他の層のリザ
ーバの平均空孔径とを上述の第1の電解質リザーバ10
1と第2の電解質リザーバ102との関係に構成すれば
よい。
【0039】実施の形態3.図5はこの発明の実施の形
態3に係る溶融炭酸塩型燃料電池に適用されるセパレー
タ板を示す平面図、図6はこの発明の実施の形態3に係
る溶融炭酸塩型燃料電池における単セルの周囲に存在す
るウェットシール部周りを示す断面図である。このセパ
レータ板66Aは、図5に示されるように、ウェットシ
ール部6bが電極部の周囲に設けられ、ガスダクト部6
7が四隅に穿設され、さらに電解質リザーバ105が電
極部68とガスダクト部67との間に配置されている。
そして、このセパレータ板66Aを用いた溶融炭酸塩型
燃料電池では、図6に示されるように、ウェットシール
部6bの下部に設置された電解質リザーバ100に加え
て、電解質マトリクス31に接するように電解質リザー
バ105が配置されている。この電解質リザーバ105
は、上述の電解質リザーバ100と同様に第1および第
2の電解質リザーバ101、102とから構成され、第
1の電解質リザーバ101が電解質マトリクス31に接
し、第2の電解質リザーバ102が電解質マトリクス3
1および酸化剤電極46に接することなく第1の電解質
リザーバ101に積層されている。
【0040】この実施の形態3では、このように構成さ
れているので、上記実施の形態1、2と同様に、電解質
リザーバの積層配置構造が寿命の安定化または初期性能
の確保に有効であるという効果を奏する。このように、
第1および第2の電解質リザーバ101、102を積層
してなる積層配置構造の電解質リザーバの設置位置は、
単セルのウェットシール部6bの下部に限定されるもの
でない。
【0041】
【発明の効果】この発明は、以上のように構成されてい
るので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0042】この発明によれば、燃料電極および酸化剤
電極により電解質マトリクスを挟み込んで構成される単
セルと、電解質補給を目的とした電解質リザーバとを有
する溶融炭酸塩型燃料電池において、上記電解質リザー
バは、上記燃料電極、上記酸化剤電極および上記電解質
マトリクスの少なくとも1つに接触するように配置され
た第1の電解質リザーバと、上記燃料電極、上記酸化剤
電極および上記電解質マトリクスに接触することなく上
記第1の電解質リザーバに接触するように積層された第
2の電解質リザーバとから構成され、上記第1の電解質
リザーバの平均空孔径が、上記第2の電解質リザーバの
平均空孔径より小径に形成されているので、電解質の消
耗に応じて電解質リザーバから電解質を供給でき、性能
劣化の防止を図ることができる溶融炭酸塩型燃料電池が
得られる。
【0043】また、上記第1の電解質リザーバの平均空
孔径が、上記燃料電極、上記電解質マトリクスおよび上
記酸化剤電極の該第1の電解質リザーバと接触する部材
の平均空孔径より大径に形成されているので、電解質の
補給機能が確保され、電解質の消耗に応じて電解質リザ
ーバから電解質を供給できるようになり、劣化率の低下
を抑えることができる。
【0044】また、上記第1の電解質リザーバの平均空
孔径が、上記電解質マトリクスの平均空孔径の5倍以内
で、かつ、上記第2の電解質リザーバの平均空孔径の三
分の一以上に設定されているので、電解質マトリクス、
燃料電極および酸化剤電極の異なる空孔径に対しても優
れた電解質補給機能が得られる。
【0045】また、上記第1の電解質リザーバの平均空
孔径が、0.5μmより大きく、かつ、1.5μmより小さく設
定されているので、電解質補給機能が確保され、電解質
の消耗に応じて電解質リザーバから電解質を供給できる
ようになり、劣化率の低下を抑えることができる。
【0046】また、上記第2の電解質リザーバの平均空
孔径が、1.5μm以上で、かつ、3.0μm以下に設定されて
いるので、初期の電解質消耗を補填できるようになり、
劣化率の低下を一層抑えることができる。
【0047】また、電解質が完全に融解する温度が56
0℃以上、かつ、650℃以下に設定されているので、
昇温中に電解質リザーバ中の電解質の一部が固体のまま
となっており、高い初期特性が得られる。
【0048】また、炭酸塩の組成の95%以上が炭酸リ
チウムと炭酸ナトリウムとにより占められており、炭酸
リチウム/炭酸ナトリウムの比率が1.8以上、かつ、
4.0以下に設定されているので、昇温中に電解質リザ
ーバ中の電解質の一部が固体のままとなっており、高い
初期特性が得られる。
【0049】また、燃料電極および酸化剤電極により電
解質マトリクスを挟み込んで構成される単セルと、電解
質補給を目的とした電解質リザーバとを有する溶融炭酸
塩型燃料電池において、上記電解質リザーバ中の電解質
が完全に融解する温度が560℃以上、かつ、650℃
以下に設定されているので、昇温中に電解質リザーバ中
の電解質の位置部が固体のままとなっており、高い初期
特性の溶融炭酸塩型燃料電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る溶融炭酸塩型
燃料電池における単セルの周囲に存在するウェットシー
ル部周りを示す断面図である。
【図2】 従来例による溶融炭酸塩型燃料電池における
単セルの周囲に存在するウェットシール部周りを示す断
面図である。
【図3】 この発明の実施の形態1に係る溶融炭酸塩型
燃料電池における初期特性および劣化率を表す図であ
る。
【図4】 この発明の実施の形態2に係る溶融炭酸塩型
燃料電池における初期特性および劣化率を表す図であ
る。
【図5】 この発明の実施の形態3に係る溶融炭酸塩型
燃料電池に適用されるセパレータ板を示す平面図であ
る。
【図6】 この発明の実施の形態3に係る溶融炭酸塩型
燃料電池における単セルの周囲に存在するウェットシー
ル部周りを示す断面図である。
【図7】 従来の溶融炭酸塩型燃料電池の構造を示す要
部斜視図である。
【符号の説明】
26 燃料電極、31 電解質マトリクス、46 酸化
剤電極、100、105 電解質リザーバ、101 第
1の電解質リザーバ、102 第2の電解質リザーバ。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燃料電極および酸化剤電極により電解質
    マトリクスを挟み込んで構成される単セルと、電解質補
    給を目的とした電解質リザーバとを有する溶融炭酸塩型
    燃料電池において、上記電解質リザーバは、上記燃料電
    極、上記酸化剤電極および上記電解質マトリクスの少な
    くとも1つに接触するように配置された第1の電解質リ
    ザーバと、上記燃料電極、上記酸化剤電極および上記電
    解質マトリクスに接触することなく上記第1の電解質リ
    ザーバに接触するように積層された第2の電解質リザー
    バとから構成され、上記第1の電解質リザーバの平均空
    孔径が、上記第2の電解質リザーバの平均空孔径より小
    径に形成されていることを特徴とする溶融炭酸塩型燃料
    電池。
  2. 【請求項2】 上記第1の電解質リザーバの平均空孔径
    が、上記燃料電極、上記電解質マトリクスおよび上記酸
    化剤電極の該第1の電解質リザーバと接触する部材の平
    均空孔径より大径に形成されていることを特徴とする請
    求項1記載の溶融炭酸塩型燃料電池。
  3. 【請求項3】 上記第1の電解質リザーバの平均空孔径
    が、上記電解質マトリクスの平均空孔径の5倍以内で、
    かつ、上記第2の電解質リザーバの平均空孔径の三分の
    一以上に設定されていることを特徴とする請求項1また
    は請求項2記載の溶融炭酸塩型燃料電池。
  4. 【請求項4】 上記第1の電解質リザーバの平均空孔径
    が、0.5μmより大きく、かつ、1.5μmより小さく設定さ
    れていることを特徴とする請求項1記載の溶融炭酸塩型
    燃料電池。
  5. 【請求項5】 上記第2の電解質リザーバの平均空孔径
    が、1.5μm以上で、かつ、3.0μm以下に設定されている
    ことを特徴とする請求項第4記載の溶融炭酸塩型燃料電
    池。
  6. 【請求項6】 電解質が完全に融解する温度が560℃
    以上、かつ、650℃以下に設定されていることを特徴
    とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の溶融炭
    酸塩型燃料電池。
  7. 【請求項7】 炭酸塩の組成の95%以上が炭酸リチウ
    ムと炭酸ナトリウムとにより占められており、炭酸リチ
    ウム/炭酸ナトリウムの比率が1.8以上、かつ、4.
    0以下に設定されていることを特徴とする請求項1乃至
    請求項5のいずれかに記載の溶融炭酸塩型燃料電池。
  8. 【請求項8】 燃料電極および酸化剤電極により電解質
    マトリクスを挟み込んで構成される単セルと、電解質補
    給を目的とした電解質リザーバとを有する溶融炭酸塩型
    燃料電池において、上記電解質リザーバ中の電解質が完
    全に融解する温度が560℃以上、かつ、650℃以下
    に設定されていることを特徴とする溶融炭酸塩型燃料電
    池。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8318380B2 (en) 2007-02-05 2012-11-27 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Fuel cell and vehicle having fuel cell

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