JPH11243313A - 電波望遠鏡 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 １基のアンテナで複数のターゲットを切り替
えて追尾することで、例えば相対ＶＬＢＩ観測等を可能
にした電波望遠鏡を得る。 【解決手段】 地球の自転に応じて天体を追尾すると同
時に、観測天体２の方向を一定時間追尾した後、高速に
指向方向を切り替え、参照天体３を一定時間追尾し、ま
た高速に指向方向を変えて、観測天体２を追尾し、これ
を繰り替えすことで相対ＶＬＢＩ観測を１基のアンテナ
で実現させる。また、天体の切り替えを高速にするため
に、アンテナ駆動指令値を工夫して、最短時間でかつ機
械系の共振を励振しないように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は電波望遠鏡、特に
位置が既知の参照天体からの相対的な値として観測対象
である観測天体の位置を測定する、相対ＶＬＢＩ観測に
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】宇宙電波観測では超長基線干渉計(ＶＬ
ＢＩ:Very Long Baseline Interferometory)の方法がよ
く用いられる。特に相対ＶＬＢＩ法は、観測対象の天体
(観測天体)の位置を、その近くにある位置が既知の天体
(参照天体)からの相対角距離を計ることで求める手法で
あり、観測天体の位置を直接測定する場合に比べてはる
かに高い測定精度が期待できる。

【０００３】図５に従来のこの種の電波望遠鏡の構成図
を示す。従来においては、図５に示すように観測場所に
２基のアンテナを設置し、一基が観測天体を、一基が参
照天体を追尾して相対ＶＬＢＩ観測を行っていた。ここ
で、１ａと１ｂは同一の観測場所にありペアとなってい
る電波望遠鏡のアンテナ、２は観測天体、３は参照天
体、４ａと４ｂはそれぞれのアンテナの制御装置、５は
指向指令部、７はアンテナ駆動指令値、８はアンテナ駆
動応答値、９は駆動制御部である。

【０００４】従来技術による処理を説明する。アンテナ
の制御装置４ａおよび４ｂでは、それぞれ観測天体２お
よび参照天体３に対して、指向指令部５からアンテナ駆
動指令値７を出力する。それは駆動制御部９にてアンテ
ナからのアンテナ駆動応答値８とともに参照され、アン
テナを駆動制御する。この結果、アンテナ１ａおよび１
ｂは各々観測天体２ａと参照天体３に向けて指向制御さ
れ、２つの天体からの電波を観測して相対ＶＬＢＩ観測
が実現できる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】従来の相対ＶＬＢＩ用
の電波望遠鏡は以上のように構成されているので、１つ
の観測場所に２基のアンテナを必要とし、製作コストが
高くなるという課題があった。

【０００６】この発明は上記のような問題を解決するた
めになされたもので、１基のアンテナで複数のターゲッ
トを切り替えて追尾することで、例えば相対ＶＬＢＩ観
測等を可能にした電波望遠鏡を得ることを目的としてい
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の目的に鑑み、この
発明は、アンテナと、天体を追尾するための指向指令値
を時々刻々出力する指向指令発生手段、追尾する天体を
切り替えるためのスイッチング・パターンを出力する切
替指令発生手段、上記指向指令値とスイッチング・パタ
ーンを組み合わせる加算手段、およびこの加算手段から
の上記指向指令値がスイッチング・パターンによって切
り替えられたアンテナ駆動指令値と上記アンテナからの
アンテナ駆動応答値に従って上記アンテナを駆動制御す
る駆動制御手段を含む制御装置と、を備えたことを特徴
とする電波望遠鏡にある。

【０００８】またこの発明は、位置が既知の参照天体か
らの相対的な値として観測対象である観測天体の位置を
測定する相対ＶＬＢＩ観測を行うために、上記参照天体
と観測天体を交互に切り替えて追尾することを特徴とす
る電波望遠鏡にある。

【０００９】またこの発明は、上記アンテナ駆動指令値
において、天体を切り替えるためのスイッチング・パタ
ーンを最大加速・最大速度・最大減速とすることで、最
短時間指令値で天体の切り替えができることを特徴とす
る電波望遠鏡にある。

【００１０】またこの発明は、アンテナ駆動系の応答遅
れを補正して、上記アンテナ駆動応答値が最大加速・最
大速度・最大減速の最短時間切り替えができるように、
上記スイッチング・パターンを補正したことを特徴とす
る電波望遠鏡にある。

【００１１】またこの発明は、アンテナ機械系の共振特
性を励振しないように、上記スイッチング・パターンが
共振周波数でパワーを持たないようにされていることを
特徴とする電波望遠鏡にある。

【００１２】この発明における電波望遠鏡は、地球の自
転に応じて天体を追尾すると同時に、観測天体の方向を
一定時間追尾した後、高速に指向方向を切り替え、参照
天体を一定時間追尾し、また高速に指向方向を変えて、
観測天体を追尾し、これを繰り替えす機能を備えること
で、１基のアンテナで相対ＶＬＢＩ観測を可能にする。

【００１３】

【発明の実施の形態】実施の形態１．図１はこの発明の
一実施の形態による電波望遠鏡の構成図である。図１に
おいて、１は天体からの電波を受けるアンテナ、２は観
測天体、３は参照天体、４はアンテナの制御装置、５は
その中にあって指向指令値を作成・発生する指向指令部
(指向指令発生手段)、６は天体を切り替えるときのスイ
ッチング・パターンを作成・発生する切替指令部(切替
指令発生手段)、１０は指向指令値とスイッチング・パ
ターンを組み合わせる加算器(加算手段)、７は指向指令
値とスイッチング・パターンを組み合わたアンテナ駆動
指令値、８はアンテナ１からのアンテナ駆動応答値、９
はアンテナ１を動かす駆動制御部(駆動制御手段)であ
る。

【００１４】次に動作について説明する。制御装置４の
指向指令部５は一方の天体を追尾するための指向指令を
時々刻々出力する。切替指令部６では、もう一方の天体
を追尾するためにこれを切り替えるためのスイッチング
・パターンを出力し、２つの指令部の出力値の和がアン
テナ駆動指令値７となる。これはアンテナ駆動応答値８
とともに駆動制御部９に入力され、アンテナ１を駆動制
御する。

【００１５】この結果、アンテナ１は観測天体２と参照
天体３を高速に交互に切り替えて追尾し、一基のアンテ
ナで相対ＶＬＢＩ観測が可能になる。この時、スイッチ
ング・パターンは図２に示すようにアンテナ駆動指令値
７が最大加速・最大速度・最大減速するように作成すれ
ば最短時間の天体切り替えが可能である。

【００１６】実施の形態２．またこの発明の別の実施の
形態による電波望遠鏡を図１および図３を参照して説明
する。この実施の形態では、図１の天体望遠鏡につい
て、アンテナ駆動系の応答遅れを考慮してスイッチング
・パターンを修正し、図３のようにアンテナ駆動応答値
８が最大加速、最大速度、最大減速の最短軌道を描くよ
うなスイッチング・パターンとすることで、２つの天体
を切り替えていち早く追尾できるようにした。

【００１７】実施の形態３．またこの発明のさらに別の
実施の形態による電波望遠鏡を図１および図４を参照し
て説明する。図４の(ａ)は修正前のスイッチング・パタ
ーン、(ｂ)はスイッチング・パターンをフーリエ変替し
たスペクトル図、(ｃ)は(ｂ)のスペクトル図を考慮して
アンテナ機械系の共振周波数付近にパワーが集まらない
ように修正したスイッチング・パターンを示す。

【００１８】この実施の形態では、図１の電波望遠鏡に
おいて、図４に示すように、予め最大加速・最大速度・
最大減速のスイッチング・パターンをフーリエ変換し、
アンテナ機械系の共振周波数付近にパワーが集まらない
ように成型した後、逆フーリエ変換して、例えば図４の
(ｃ)に示すような修正されたスイッチング・パターンを
作成し、これを切替指令部６に記憶しておいて、アンテ
ナの機械共振を励振しないように駆動を行うようにし
た。

【００１９】なお、上記各実施の形態では２つの天体を
交互に切り替えて追尾する相対ＶＬＢＩ観測について説
明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、
ターゲットを切り替えて追尾する他の観測、測定にも適
用可能であり、またターゲットも２つの限定されるもの
ではない。

【００２０】

【発明の効果】以上のようにこの発明では、アンテナ
と、天体を追尾するための指向指令値を時々刻々出力す
る指向指令発生手段、追尾する天体を切り替えるための
スイッチング・パターンを出力する切替指令発生手段、
上記指向指令値とスイッチング・パターンを組み合わせ
る加算手段、およびこの加算手段からの上記指向指令値
がスイッチング・パターンによって切り替えられたアン
テナ駆動指令値と上記アンテナからのアンテナ駆動応答
値に従って上記アンテナを駆動制御する駆動制御手段を
含む制御装置と、を備えた電波望遠鏡としたので、アン
テナの指向方向を複数の天体の間で高速に切り替えが可
能な電波望遠鏡を提供できる。

【００２１】またこの発明では、特に位置が既知の参照
天体からの相対的な値として観測対象である観測天体の
位置を測定する相対ＶＬＢＩ観測を行うために、上記参
照天体と観測天体を交互に切り替えて追尾するようにし
たので、１基のアンテナで相対ＶＬＢＩ法による精度の
良い観測を実現できる効果が得られる。

【００２２】またこの発明では、上記アンテナ駆動指令
値において、天体を切り替えるためのスイッチング・パ
ターンを最大加速・最大速度・最大減速とすることで、
最短時間指令値で天体の切り替えができる効果が得られ
る。

【００２３】またこの発明では、アンテナ駆動系の応答
遅れを補正して、上記アンテナ駆動応答値が最大加速・
最大速度・最大減速の最短時間切り替えができるよう
に、上記スイッチング・パターンを補正するようにした
ので、最短時間で天体の切り替えができる効果が得られ
る。

【００２４】さらにこの発明では、アンテナ機械系の共
振特性を励振しないように、上記スイッチング・パター
ンが共振周波数でパワーを持たないようにされているの
で、アンテナ機械系の共振の発生を防止する効果が得ら
れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 この発明の一実施の形態による電波望遠鏡の
構成図である。

【図２】 この発明の実施の形態１におけるアンテナ駆
動指令値およびアンテナ駆動応答値を示した図である。

【図３】 この発明の実施の形態２におけるアンテナ駆
動指令値およびアンテナ駆動応答値を示した図である。

【図４】 この発明の実施の形態３におけるスイッチン
グ・パターンの修正を説明すための図である。

【図５】 従来の電波望遠鏡の構成図である。

【符号の説明】

１ アンテナ、２ 測定天体、３ 参照天体、４ 制御
装置、５ 指向指令部、６ 切替指令部、７ アンテナ
駆動指令値、８ アンテナ駆動応答値、９ 駆動制御
部、１０ 加算器。

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 アンテナと、 天体を追尾するための指向指令値を時々刻々出力する指
   向指令発生手段、追尾する天体を切り替えるためのスイ
   ッチング・パターンを出力する切替指令発生手段、上記
   指向指令値とスイッチング・パターンを組み合わせる加
   算手段、およびこの加算手段からの上記指向指令値がス
   イッチング・パターンによって切り替えられたアンテナ
   駆動指令値と上記アンテナからのアンテナ駆動応答値に
   従って上記アンテナを駆動制御する駆動制御手段を含む
   制御装置と、 を備えたことを特徴とする電波望遠鏡。
2. 【請求項２】 位置が既知の参照天体からの相対的な値
   として観測対象である観測天体の位置を測定する相対Ｖ
   ＬＢＩ観測を行うために、上記参照天体と観測天体を交
   互に切り替えて追尾することを特徴とする請求項１に記
   載の電波望遠鏡。
3. 【請求項３】 上記アンテナ駆動指令値において、天体
   を切り替えるためのスイッチング・パターンを最大加速
   ・最大速度・最大減速とすることで、最短時間指令値で
   天体の切り替えができることを特徴とする請求項１また
   は２に記載の電波望遠鏡。
4. 【請求項４】 アンテナ駆動系の応答遅れを補正して、
   上記アンテナ駆動応答値が最大加速・最大速度・最大減
   速の最短時間切り替えができるように、上記スイッチン
   グ・パターンを補正したことを特徴とする請求項１また
   は２に記載の電波望遠鏡。
5. 【請求項５】 アンテナ機械系の共振特性を励振しない
   ように、上記スイッチング・パターンが共振周波数でパ
   ワーを持たないようにされていることを特徴とする請求
   項１ないし４のいずれかに記載の電波望遠鏡。