JPH1123568A - 光硬化反応系の硬化特性測定方法及び装置 - Google Patents

光硬化反応系の硬化特性測定方法及び装置

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JPH1123568A
JPH1123568A JP18889497A JP18889497A JPH1123568A JP H1123568 A JPH1123568 A JP H1123568A JP 18889497 A JP18889497 A JP 18889497A JP 18889497 A JP18889497 A JP 18889497A JP H1123568 A JPH1123568 A JP H1123568A
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curing
measuring
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cured product
container
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Osamu Kawana
修 川名
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 硬化物の長さ、重さ等の状態から硬化深度、
反応率等の硬化特性を簡便に、かつ正確に測定できる光
硬化反応系の硬化特性測定方法及び装置を提供する。 【解決手段】 光硬化反応液Sを収容する容器1の開口
部4を透光性部材2で密閉し、該透光性部材2で密閉し
た開口部が下方を向くように測定ステージ5上に配置
し、紫外線照射装置10の光ファイバ11aにより、下
方から上記透光性部材を通して容器内に活性エネルギー
線を照射する。その時の露光量は露光量測定装置13の
受光器14により測定する。その後、硬化物の状態から
硬化特性を判断する。例えば、硬化物の活性エネルギー
線照射方向の長さを測定して硬化深度を求めることがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、硬化物の長さ、重
さ等の状態から硬化深度、反応率等の硬化特性を簡便に
測定することができる光硬化反応系の硬化特性測定方法
及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】紫外線を利用したアクリル系モノマーや
ビニル系モノマーの光硬化反応系は、多岐に及び、様々
な用途で用いられており、その光硬化反応性に関する研
究もいくつか報告されている。その中でも特に、光硬化
反応液に紫外線を照射した際の表面からゲル成長末端ま
での距離、即ち硬化深度の調節は、光造形システムなど
への応用の観点からも重要である。このことに関する研
究は、これまで、(1)グラインドゲージを用いる光硬
化反応性の検討、(2)UV照射量と指触乾燥性の関係
についての検討、(3)硬化物の引っ掻きテスト及びセ
ロハンテープ剥離テストなど、専ら感覚に頼る方法が中
心であった。
【0003】前記(1)のグラインドゲージを用いる方
法について簡単に説明すると、図5に示すように、ゲー
ジ盤100の表面には連続的に傾斜した極めて薄い楔形
をなした溝101が形成されており、その縁部には傾斜
する溝の深さに応じた目盛りが付されている(図示の例
では最大深さ100μmであるが、25μmから500
μmまで種々の深さのものがある)。図6に示すよう
に、上記溝101に光硬化性化合物を含有する光硬化反
応液を入れ、掻き取り刃によってゲージ盤100と光硬
化反応液102の表面を均一にした後、例えば紫外線を
照射して光硬化させる。その後、セロハンテープによっ
て溝101の表面に浮いている硬化物103を剥がし取
り、その厚さによって硬化深度を測定する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記方法の場合、紫外
線照射によって光硬化反応液の表面部に硬化物103が
生成するが、硬化物103の比重が大きいために沈み込
みを生じ、硬化物の表面上に押し上げられた光硬化反応
液部分がさらに光硬化するため、得られる硬化物の厚さ
が実際の条件下で本来得られるべき厚さよりも大きくな
り、正確な硬化深度を測定できないという問題がある。
また、前記方法では大気中で紫外線照射し、光硬化させ
るものであるため、光ラジカル重合系では酸素により重
合が阻害されるなど、厳密な光硬化挙動の測定には不向
きである。さらに、ゲージ盤は硬質の特殊合金で作製さ
れ、また精密加工が必要なため高価であるという難点が
ある。
【0005】一方、前記(2)のUV照射量と指触乾燥
性の関係を検討する方法は、人の指先の感覚に頼る方法
であり、専ら概略的な硬化状態の把握に用いられ、硬化
深度等の硬化特性を正確に知ることはできない。また、
前記(3)の引っ掻きテストやセロハンテープ剥離テス
トは、得られた硬化物の硬度や接着性を測定する方法で
あって、このような方法も硬化深度等の硬化特性を測定
することはできない。
【0006】また、光硬化性化合物の二重結合の濃度や
光重合開始剤の濃度に依存して照射された紫外線が光硬
化反応系に吸収される現象、すなわち光硬化反応系自体
の紫外線遮蔽効果(以下、フィルター効果という)が生
じ、これが硬化深度に影響を及ぼす。最適な光硬化組成
系や照射条件の設計のためには、このようなフィルター
効果が硬化深度に及ぼす影響についても検討することが
望まれるが、従来の光硬化反応の測定において、モノマ
ー及び光重合開始剤によるフィルター効果が硬化深度に
及ぼす影響について検討するための定量的な測定方法は
見当らない。
【0007】従って、本発明の目的は、硬化物の長さ、
重さ等の状態から硬化深度、反応率等の硬化特性を簡便
に、かつ正確に測定できる光硬化反応系の硬化特性測定
方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、上
記測定に最適に用いることができ、しかも操作が簡単で
あり、かつ装置コストが従来のグラインドゲージに比べ
て大幅に安価な光硬化反応系の硬化特性測定装置を提供
することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明によれば、光硬化反応液を収容する容器の開
口部を透光性部材で密閉し、該透光性部材で密閉した開
口部が下方を向くように配置し、下方から上記透光性部
材を通して容器内に活性エネルギー線を照射し、その
後、硬化物の状態から硬化特性を判断することを特徴と
する光硬化反応系の硬化特性測定方法が提供される。こ
のような方法により、例えば、硬化物の活性エネルギー
線照射方向の長さを測定して硬化深度を求めることがで
きる。
【0009】さらに本発明によれば、上記測定方法の実
施に最適に用いることができる光硬化反応系の硬化特性
測定装置も提供され、この装置は、光硬化反応液を収容
するための開口部を有する容器と、該容器の開口部を密
閉するための透光性部材と、該透光性部材を通して上記
容器内に活性エネルギー線を照射するための露光装置
と、該露光装置からの露光量を測定する装置とを備えて
いることを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明による光硬化反応系の硬化
特性の測定方法においては、光硬化反応液を収容する容
器の開口部を透光性部材で密閉し、該透光性部材で密閉
した開口部が下方を向くように配置し、下方から上記透
光性部材を通して容器内に活性エネルギー線を照射する
ことを特徴としている。このように下方から活性エネル
ギー線を照射することにより、生成した硬化物は透光性
部材により支持された状態となり、従来のグラインドゲ
ージのように上方から照射したときの硬化物の沈み込み
がなく、活性エネルギー線の照射量に応じた光硬化反応
が生起し、従って、得られる硬化物の状態からその光硬
化反応系の硬化特性を正確に知ることができる。
【0011】例えば、硬化物の活性エネルギー線照射方
向の長さを測定することにより硬化深度を知ることがで
きる。また、光硬化性化合物の光反応性不飽和基総数
(二重結合総数)=重さ/不飽和基当量(二重結合当
量)の関係があるので、硬化物の単位容積当りの重量を
測定することにより、用いた試料の比重から反応によっ
て減少した光反応性不飽和基の数(二重結合の数)を計
算し、反応率を求めることができる。さらに、光硬化性
化合物や光重合開始剤の濃度を種々変えて測定すること
により、これらのフィルター効果が硬化深度に及ぼす影
響を知ることができる。また、フィラー等を混合した場
合、得られる円柱状硬化物の形状変化からこれらフィラ
ー等の光散乱効果を知ることもできる。さらに、試料を
窒素でボイリングして溶存酸素を追い出したものと比較
することにより、溶存酸素の影響を測定できる。このよ
うな硬化特性を測定することにより、最適な光硬化反応
組成系や露光条件の設計を適正に行うことが可能とな
る。
【0012】本明細書において、光硬化反応系とは、光
硬化反応を生起する系(組成系)を意味し、液状の光硬
化性化合物自体、これに光重合開始剤を添加した組成
物、液状もしくは固形状の光硬化性化合物や光重合開始
剤を溶剤に溶解・分散させた組成物、これらにさらに例
えばカルボキシル基含有樹脂などの種々のバインダー樹
脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性成分、熱重合開始剤、
さらには熱重合禁止剤、無機充填剤、レベリング剤、増
粘剤、カップリング剤等の各種添加剤を添加した組成物
などを用いることができ、光硬化性化合物の硬化挙動の
検討、光硬化性の塗料、マーキングインキ、印刷版やプ
リント配線基板のエッチングレジスト、ソルダーレジス
トなど種々の用途への適正組成の検討など、目的に応じ
て種々の光硬化反応系の硬化特性を測定することができ
る。また、上記した各成分についても従来公知のものは
全て用いることができるので、ここで各成分の具体例を
列挙する煩は避ける。また、活性エネルギー線の照射光
源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超
高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプな
ど種々の光源を用いることができる。その他、レーザー
光線、X線、電子線なども露光用活性エネルギー線とし
て利用できる。
【0013】
【実施例】以下、添付図面に示す実施例を説明しながら
本発明について具体的に説明する。図1は本発明の硬化
特性測定装置の概略構成を示しており、図中、符号1は
光硬化反応液Sを収容する容器であり、その口部を覆う
ように透光性部材2が装着され、さらに開口部4が形成
された蓋体3が容器口部に螺着され、容器口部端面と蓋
体3内面で透光性部材2を挟持した状態に密閉されてい
る。
【0014】前記透光性部材2としては、ポリエステル
系、ポリアクリル系などの透明プラスチックのフィルム
やプレート、ガラスプレートなどを用いることができ
る。また、透明プラスチックの蓋を直に容器1の口部に
取り外し自在に螺着あるいは嵌着するようにしてもよ
い。なお、容器1としては、外部からの光を遮蔽するよ
うに着色容器、特に黒色もしくは褐色容器とすることが
好ましい。また、容器1の開口部は種々の大きさに設計
できるが、種々の方向からの光の入射を防止し、硬化深
度をより正確に測定するためには、出来るだけ照射光源
からの光のみが入射されるように、より小さい開口部と
することが好ましい。さらに、容器1には熱電対(図示
せず)を装着できるようにし、光硬化反応時の温度変化
を測定することもできる。
【0015】前記のように光硬化反応液Sが入れられた
容器1は、その蓋体3の開口部4が測定ステージ5の開
口部6と整合するように下向きに測定ステージ5上に載
置される。この状態で、測定ステージ5の下方から活性
エネルギー線を光硬化反応液Sに所定量だけ照射し、光
硬化反応を生起させる。図示の例では露光装置として紫
外線照射装置10が用いられており、該装置内に取り付
けられた光源(高圧水銀灯、図示せず)には2本の光フ
ァイバ11a,11bが接続され、一方の光ファイバ1
1aの先端(照射スポット)12aは測定ステージ5の
開口部6に面するように配置され、光硬化反応液Sの露
光に用いられ、他方の光ファイバ11bの先端(照射ス
ポット)12bは露光量測定装置13内に設けられた図
示しないフォトダイオードの受光素子からなる受光器1
4に向けられ、露光量測定に供される。露光量測定にお
いては、受光器14に同一光量が入射するように、前記
透光性部材2と同一材料、同一厚さの透明フィルム15
を介して受光器14に入射されるように構成されてい
る。
【0016】前記のようにして所定光量の紫外線を照射
して光硬化反応を終了した後、容器1から蓋体3を取り
外し、硬化物が付着した透光性部材2を取り出す。透光
性部材2には、図2に示すように略円柱状の硬化物20
が付着しているので、その長さを測定することにより硬
化深度(ゲル化深度)を容易に求めることができる。以
下、本発明の測定方法によって、モノマーの光硬化反応
性や、光重合開始剤の効果、及び硬化反応の深度などに
ついて具体的に測定した例を示す。
【0017】なお、以下の実施例において用いた試薬、
反応装置及び試験方法は以下のとおりである。 試薬:二官能モノマーとして、ジエチレングリコールジ
メタクリレート(以下、2EGと略称する)、トリエチ
レングリコールジメタクリレート(以下、3EGと略称
する)、三官能モノマーとして、トリメチロールプロパ
ントリアクリレート(以下、TMPTAと略称する)、
トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(以
下、TMP3と略称する)、トリメチロールプロパンジ
エトキシトリアクリレート(以下、TMP6と略称す
る)、トリメチロールプロパントリエトキシトリアクリ
レート(以下、TMP9と略称する)、六官能モノマー
として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(以下、DPHAと略称する)はいずれも市販品をその
ま使用した。光重合開始剤として、2−メチル−[4−
(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロ
パノン(チバガイギー(株)製、商品名イルガキュア9
07)、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェ
ニルホスフィンオキシド(BASFジャパン(株)製、
商品名TPO)、フェニル[(p−トリルチオ)フェニ
ル]ケトン(日本化薬(株)製、商品名BMS)、2,
2−ジメトキシ−1,2−ジフェニル−1−エタノン
(チバガイギー(株)製、商品名イルガキュア65
1)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−
モルホリノフェニル)−1−ブタノン(チバガイギー
(株)製、商品名イルガキュア369)、2,4−ジエ
チル−9H−チオキサンテン−9−オン(日本化薬
(株)製、商品名DETX)はいずれも市販品をそのま
ま使用した。
【0018】反応装置及び試験方法:蓋に直径10mm
の孔を開けた容量50mlの褐色ガラス製サンプル瓶を
反応容器とした。これに所定の配合比で調製した反応液
を30g入れた後、蓋と同じ径に切り取ったポリエチレ
ンテレフタレート(PET)フィルムを挟み、蓋を締
め、サンプル瓶の径より小さい孔の開いた試験台に蓋を
下にして載置した後、下方から所定光量の紫外線を照射
した(図1)。その後、蓋を開けて硬化物が付着したP
ETフィルムを取り出し、PETフィルムに付着した未
反応モノマーをトリクロロエタン中で1分間洗浄した
後、常温で乾燥し、硬化物を得た。この硬化物の高さを
マイクロメーターで測定し、硬化深度とした。紫外線照
射装置は、ウシオ電機(株)製のUIS25102を用
い、ランプはUSH−250BY(250W、主波長2
90〜365nm)を使用した。さらにサンプルに照射
するものと同一光量で別の光ファイバから受光器UVD
365PD(受光素子:シリコンフォトダイオード)に
照射し、365nm(感度波長域330〜390nm)
の積算光量を光照射エネルギー量とした。また、硬化物
中の不飽和二重結合は、KBr錠剤法で、赤外分光光度
計、(株)パーキンエルマー−ジャパン製のFTIR−
1720Xを用いて測定した。
【0019】実施例1(光硬化性モノマーの硬化深度と
反応率の関係) モノマーとしてTMPTAを使用し、光重合開始剤イル
ガキュア907の5.00×10-2モル量(モノマーの
二重結合1.00モル量に対して、以下同様)及びBM
Sの1.62×10-3モル量の光反応液を調製し、前記
方法で紫外線を40mJ/cm2 照射し、硬化物を得
た。硬化物を紫外線照射方向に切断した後、その表面を
紫外線照射面から各2mm毎に硬化物を削り取り、IR
スペクトルを測定した。反応率は、810cm-1の吸収
の減少率より求めた。その結果を図3に示す。図3に示
されるように、硬化深度が増すに従って二重結合の反応
率が75.0%から19.5%へと直線的に減少するこ
とが確認された。このことは、光照射表面から深部にい
くに従い、モノマー及び光重合開始剤のフィルター効果
により、アクリレートモノマーの光反応性が低下するこ
とを示唆している。また、光反応直後の硬化物は、底部
に比較して先端部分(深部)が軟らかかった。これは、
深部の方が架橋密度の小さいことを示唆している。この
ことは、図3のエチレン性二重結合の反応率の結果と良
く一致している。また、図3から明らかなように、反応
率が19.5%以上で硬化物になることがわかる。
【0020】実施例2(硬化深度と光重合開始剤濃度の
関係) モノマーとしてTMPTA、光重合開始剤としてDET
Xを用いて、前記方法で10〜100mJ/cm2 毎に
種々の露光量で照射し、硬化深度を測定した。その結果
を図4に示す。図4に示されるように、光重合開始剤濃
度が1.84×10-1モル量の場合、露光量が増す(照
射時間の経過)に従って硬化深度が深くなる傾向があっ
た。300mJ/cm2 照射した時点で硬化深度が1.
00mmに達した。しかしながら、露光量を500mJ
/cm2 まで増加しても硬化物の硬化深度は変わらなか
った。一方、光重合開始剤DETXをモノマーに対し
3.68×10-2モル量添加して光反応性を調べた。そ
の結果、興味深いことに、より深い硬化深度を示し、3
00mJ/cm2 照射したときの硬化深度は1.45m
mに達し、500mJ/cm2 で1.70mmに達し
た。このことは、光重合開始剤濃度が高い場合、そのフ
ィルター効果により硬化深度が浅くなることを示唆して
いる。この結果から、光硬化反応において深い硬化深度
を必要とする光硬化物を得るためには、少量かつ適正な
光重合開始剤の添加が重要であることを示唆している。
【0021】実施例3(硬化深度とモノマー及び光重合
開始剤の関係) 前記方法で光重合開始剤としてイルガキュア907を
5.00×10-2モル量及びBMSを1.62×10-3
モル量含む表1に示す種々のモノマーに対し、紫外線を
30mJ/cm2 照射してモノマーの硬化反応を行っ
た。その結果を表1に示す。
【表1】
【0022】表1に示すように、二官能モノマーについ
て硬化深度を測定した結果、2EGの深度は1.78m
mであり、3EGの深度は4.15mmであった。この
ことは、2EGの二重結合濃度が8.26×10-3モル
/gであり、3EGの6.99×10-3モル/gより高
いために2EGのフィルター効果が大きいこと、加え
て、3EGの構造が2EGにオキシエチレン基(−O−
CH2 −CH2 −)を導入したものであることから、3
EGは、モノマー及びその硬化物中のメタクリロイル基
のミクロブラウン運動のし易さが光反応性を高め、より
深い硬化深度を得させたものと思われる。
【0023】次に、三官能モノマーについて同様に硬化
深度を調べた結果、TMP3の深度が4.31mm、T
MP6の深度は5.53mm、TMP9の深度は5.5
4mmであり、TMPTAの硬化深度が最も深くて6.
67mmであった。このことは、TMP3、TMP6、
TMP9については順に硬化深度が深くなったことか
ら、二官能モノマーと同様に、二重結合濃度によるフィ
ルター効果の違いと、スペーサー基(オキシエチレン
基)の導入によるアクリロイル基のミクロブラウン運動
のし易さの効果が硬化深度に発現されたものと思われ
る。しかしながら、TMPTAの硬化深度が最も深くな
る理由については、TMPTA及びTMP3のUV吸収
スペクトル(石英セル1cm、アセトニトリル溶媒中1
2.5ppmの濃度で測定した。以下同様)を見ると、
どちらも250nm付近に大きな吸収を持ち、TMPT
Aの場合は、290nmで76%、300nmで85%
の紫外線を透過するのに対し、TMPTAにオキシエチ
レン基をスペーサー基として導入したTMP3では、2
90nmで55%、300nmで70%の紫外線を透過
するにすぎず、光源の有効波長域でのUV吸収がTMP
TAに比較して大きいことが分かった。従って、TMP
TAでは、光源の有効波長域におけるフィルター効果が
他の三官能モノマーより小さいため、これが前述のスペ
ーサー基の効果よりも大きな影響を及ぼし、硬化深度が
深くなったと考えられる。
【0024】また、六官能モノマーであるDPHAの硬
化深度は3.71mmであった。三官能モノマーと比較
して硬化深度が浅いことについては、前述の二重結合濃
度の効果とともに、DPHAが高粘度であることや架橋
点が多いために、硬化反応の進行に伴いアクリロイル基
の分子運動が抑制されることなどに起因するものと思わ
れる。
【0025】実施例4 モノマーとしてTMPTAを用い、表2に示す種々の光
重合開始剤を3.33×10-2モル量含む反応液に、紫
外線を30mJ/cm2 照射してモノマーの硬化反応を
行った。その結果並びに用いた光重合開始剤の最大吸収
波長(λmax )及び最大吸収波長でのモル吸光係数(ε
max )を表2に示す。
【表2】
【0026】表2に示す結果から、同じモノマーを用い
ても光重合開始剤によって硬化深度が全く異なることが
分かった。すなわち、イルガキュア907を用いた場合
には、7.18mmと最も深部まで反応が進行すること
が判明した。また、この中でTPOの硬化深度が最も浅
くなることについては、TPOのλmax が268nmで
あり、光源の有効波長域からはずれることが一因である
と考えられる。一方、各種光重合開始剤のεmax と硬化
深度には明瞭な関係は見られなかった。これは硬化深度
に及ぼす影響が、光重合開始剤のフォトブリーチング
(光重合開始剤が分解してラジカルとなり、分解物が紫
外線を吸収しない現象)、量子収率(単位光子量でラジ
カルを発生する効率)、光反応性樹脂への溶解性をはじ
めとする複雑な要因が影響し合うためと思われる。
【0027】前記実施例1〜4の結果から、モノマーの
光硬化反応において、より深い硬化深度を得ようとした
場合、モノマーの二重結合濃度が小さいこと、アクリロ
イル基又はメタクリロイル基の分子運動性が優れるこ
と、さらに適正な濃度で光重合開始剤を用いることが重
要であることを示唆している。従って、本発明の測定方
法は、これらの条件と最適なモノマー及び光重合開始剤
の組合せを見い出すための有用な手法と判断される。
【0028】
【発明の効果】以上のように、本発明の測定方法によれ
ば、従来のグラインドゲージのように上方から光照射し
たときの硬化物の沈み込みがなく、露光量に応じた光硬
化反応が生起し、得られる硬化物の状態からその光硬化
反応系の硬化深度、反応率等の硬化特性を比較的に簡単
にかつ正確に知ることができる。従って、本発明の方法
を利用することにより、最適な光硬化反応組成系や露光
条件等を適正に設計することが可能となる。また、本発
明の測定装置は、従来から光硬化反応系の露光に用いら
れている露光装置及び露光量測定装置に僅かな設計変更
を加え、これに簡単な構成の試料容器を組み合わせたも
のであるため、装置の製造コストが極めて安価であり、
しかもその操作も簡単であり、経験や勘にたよることな
く容易に光硬化反応系の硬化特性を測定することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光硬化反応系の硬化特性測定装置の概
略構成図である。
【図2】透光性部材上に付着した硬化物の状態を示す概
略側面図である。
【図3】トリメチロールプロパントリアクリレートのエ
チレン性二重結合の反応率と硬化深度との関係を示すグ
ラフである。
【図4】トリメチロールプロパントリアクリレートと光
重合開始剤2,4−ジエチル−9H−チオキサンテン−
9−オン(DETX)からなる光硬化反応系の硬化深度
と露光量の関係を示すグラフである。
【図5】グラインドゲージの斜視図である。
【図6】グラインドゲージを用いて硬化反応を行った時
の状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 容器 2 透光性部材 3 蓋体 4,6 開口部 5 測定ステージ 10 紫外線照射装置(露光装置) 11a,11b 光ファイバ 12a,12b 照射スポット 13 露光量測定装置 14 受光器 15 透明フィルム 20 硬化物 S 光硬化反応液

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光硬化反応液を収容する容器の開口部を
    透光性部材で密閉し、該透光性部材で密閉した開口部が
    下方を向くように配置し、下方から上記透光性部材を通
    して容器内に活性エネルギー線を照射し、その後、硬化
    物の状態から硬化特性を判断することを特徴とする光硬
    化反応系の硬化特性測定方法。
  2. 【請求項2】 硬化物の活性エネルギー線照射方向の長
    さを測定して硬化深度を求めることを特徴とする請求項
    1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 光硬化反応液を収容するための開口部を
    有する容器と、該容器の開口部を密閉するための透光性
    部材と、該透光性部材を通して上記容器内に活性エネル
    ギー線を照射するための露光装置と、該露光装置からの
    露光量を測定する装置とを備えていることを特徴とする
    光硬化反応系の硬化特性測定装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100308654B1 (ko) * 1999-07-13 2001-09-26 마선영 진동을 이용한 경화 측정장치
JP2013104869A (ja) * 2011-11-11 2013-05-30 Sentekku:Kk 樹脂硬化収縮測定器
JPWO2016158114A1 (ja) * 2015-03-30 2018-01-18 富士フイルム株式会社 着色感光性組成物、硬化膜、パターン形成方法、遮光膜付き赤外光カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサ
JP2021162504A (ja) * 2020-04-01 2021-10-11 株式会社豊田中央研究所 臨界クラック膜厚測定用ゲージ及び耐クラック性試験装置

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