JPH11218096A - 高圧ファン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 一体成形が容易で、しかも発生する騒音が小
さな高圧ファンを提供する。 【解決手段】 中央にボス部１４を有し、その周囲に支
持部材１５を介して多数の翼板１１が周方向に隙間を有
して設けられ、使用にあっては高速回転する羽根車１２
と、そのケーシング１３を有する高圧ファン１０におい
て、多数の翼板１１の一方の軸方向端部間に、成型及び
脱型時に各翼板１１間の隙間からなる風通路２０を形成
する内型板２３ａが軸方向に挿通する多数の開孔２１を
設けた。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、羽根車の成型が容
易でしかも静音化が可能な多翼型の高圧ファンに関す
る。

【０００２】

【従来の技術】従来の高圧ファンにおいては、多数の翼
板を周方向に所定距離で配置し、それぞれの翼板によっ
て形成される風通路が後退角となったターボファンが、
例えば、特開昭５５−６６６９６号公報や特開平８−１
５９０９１号公報等において提案されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記公
報記載のターボファンにおいては、周方向に均等配置さ
れる翼板の枚数が少なく、しかも隣り合う翼板によって
形成される風通路が半径方向に広くなっているので、騒
音が発生し易いという問題がある。そこで、翼板の枚数
を増加して静音化した多翼ファンを前記ターボファンに
適用することが考えられるが、隣り合う翼板の間隔が小
さく、しかも各翼板が半径方向に徐々に屈曲している多
数の翼を有する多翼ファンを、プラスチック素材を用い
て成形しようとする場合には、翼板とこれの軸方向の一
方を支持する支持部材の一体成形は可能であるが、更
に、翼板の軸方向の他方を支持する支持部材を含めた羽
根車の一体成形は極めて困難であった。また、風通路の
出口側の軸方向長さ（即ち、高さ）が風通路の入口側の
軸方向長さより小さくなっているターボファンにおいて
は、従来のターボファンの形状をそのまま保持したので
は、射出による一体成形はできなかった。一方、本出願
人が鋭意研究した結果、多翼ファンにおいては仮にそれ
がターボファンであっても、羽根車を高速回転させた場
合には、軸方向に逃げる風は殆どなく、従って、多数の
翼板を支持する片側の支持部材に風通路に通ずる開孔が
あっても、多翼ファンの性能には大きな障害とならない
ことを確認した。本発明はかかる事情に鑑みてなされた
もので、一体成形が容易で、しかも発生する騒音が小さ
な高圧ファンを提供することを目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】前記目的に沿う請求項１
記載の高圧ファンは、中央にボス部を有し、その周囲に
支持部材を介して多数の翼板が周方向に隙間を有して設
けられ、使用にあっては高速回転する羽根車と、そのケ
ーシングを有する高圧ファンにおいて、前記多数の翼板
の一方の軸方向端部間に、成型及び脱型時に前記各翼板
間の隙間からなる風通路を形成する内型板が軸方向に挿
通する多数の開孔を設けている。請求項２記載の高圧フ
ァンは、請求項１記載の高圧ファンにおいて、前記風通
路の幅はその全長にわたって同一か、又は通過する空気
に巻き込みを発生しない程度で半径方向に徐々に拡幅し
ている。

【０００５】請求項３記載の高圧ファンは、請求項１又
は２記載の高圧ファンにおいて、前記翼板の半径方向外
側の後退角が、該翼板の半径方向内側の後退角より大き
いターボファンからなっている。請求項４記載の高圧フ
ァンは、請求項１〜３のいずれか１項に記載の高圧ファ
ンにおいて、前記多数の翼板の他方の軸方向端部を密閉
状態で連結する連結部材が設けられ、前記風通路の軸方
向高さが半径外方向に狭まっている。請求項５記載の高
圧ファンは、請求項１〜４のいずれか１項に記載の高圧
ファンにおいて、前記ボス部は、前記多数の翼板と軸方
向にみて同一位置にあって、前記支持部材の内側基端は
前記ボス部の他方側に連結され、更に、該支持部材の中
間部分は円錐台状となって、前記風通路の内側入口側の
風ガイド壁となっている。請求項６記載の高圧ファン
は、請求項１〜５のいずれか１項に記載の高圧ファンに
おいて、前記多数の翼板の外側で軸方向の一方側端部に
は補強用周縁部が設けられている。

【０００６】

【発明の実施の形態】続いて、添付した図面を参照しつ
つ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発
明の理解に供する。ここに、図１は本発明の一実施の形
態に係る高圧ファンの羽根車の側断面図、図２は同高圧
ファンの羽根車の平断面図、図３は図２におけるＢ矢視
部の拡大図、図４は同高圧ファンの全体断面図である。

【０００７】図１〜図４に示すように、本発明の一実施
の形態に係る高圧ファン１０は、各翼板１１が後退角と
なったターボファンからなって、図示しない駆動モータ
の出力軸に接続される羽根車１２と、この羽根車１２の
ケーシング１３を有している。以下、これらについて詳
しく説明する。

【０００８】前記羽根車１２は射出成形が可能な合成樹
脂（例えば、ＡＢＳ、ＰＰ等）からなって、中央にボス
部１４を有している。このボス部１４の周囲に支持部材
１５を介して、多数の翼板１１が周方向に隙間を有して
設けられている。前記ボス部１４は中央に取付け孔１６
を備え、図示しない駆動モータの出力軸がボス部１４の
一方の軸方向端部（Ａ側）又は反対側から嵌入固定でき
る構造となっている。ボス部１４の他端部には略円錐台
状の支持部材１５の内側部分を構成し、風ガイド壁を構
成する円錐台板部１７の内側基端が連接され、その外側
には支持部材１５の外側部分を構成する円形平面状の基
板部１８が連結されている。

【０００９】前記基板部１８には、少しの隙間を有して
円周方向に所定間隔で並べられた翼板１１の一方の軸方
向端部が固定されている。この翼板１１の他方の軸方向
端部には、半径方向に斜め傾斜した連結部材の一例であ
る連結基板１９が一体的で（かつ密閉状態で）連結され
ている。この連結基板１９と基板部１８との間隔は半径
外方向に小さくなって、即ち、翼板１１の高さが半径外
方向に徐々に小さくなって、隣り合う翼板１１によって
形成される風通路２０の軸方向高さが、半径外方向に徐
々に狭くなっている。

【００１０】翼板１１は、円周方向に６０〜１２０枚備
え、図２、図３に示すように、風通路２０の入口側の角
度（θ１）より、出口側の角度（θ２）の方が更に大き
くなっている。そして、翼板１１の外径に対する内径の
比は、０．６５〜０．７５程度となっている。そして、
図３に示すように、翼板１１の厚みｔは、翼板１１の長
さ方向に略同一の厚みとなっているが、翼板１１の取付
け角度が半径外方向に徐々に後退角が大きくなっている
ので、結果として風通路は外側方向に略同じ幅となって
いる。ここで、風通路２０の幅は通過する空気に巻き込
みを生じない程度で半径方向に徐々に拡幅してもよい。

【００１１】図１、図３に示すように、隣り合う翼板１
１によって形成される風通路２０と同一断面を有する開
孔２１が基板部１８に設けられ、この基板部１８の周囲
に更に補強用の周縁部２２が設けられている。そして、
各翼板１１の半径方向内側部分には、補強用の三角リブ
２３が設けられているが、この三角リブ２３は、図１に
示すように、一定の後退角で配置された翼板１１に円滑
に連結するように、半径方向に斜めに取付けられてい
る。この実施の形態における羽根車１２においては、翼
板１１の半径方向外側は、周縁部２２で補強され、その
内側は三角リブ２３で補強されているので、開孔２１と
風通路２０によって分離されている翼板１１の高速回転
によるより十分な補強を図ることができる。

【００１２】そして、以上のように、基板部１８に開孔
２１を設けることによって、多数の曲がった翼板１１を
有する羽根車１２の一体成形が可能となる。即ち、図１
に示すように、羽根車１２の上方向の外側形状を形成す
る図示しない上型と、この上型に軸心を合わせて取付け
られ、羽根車１２の下方向の外側形状を形成する下型を
向かい合わせて金型が形成されるが、この下型に風通路
２０を形成する多数の脱型可能な内型板（挿入板）２３
ａを組付けることによって、羽根車１２全体を射出一体
成形する金型ができることになる。

【００１３】一方、この羽根車１２が回転自由に取付け
られるケーシング１３は、従来の高圧ファンのケーシン
グと同様、合成樹脂素材又は金属素材からなって、軸方
向の片側に図示しない風入口を有し、外側周囲の一部に
風出口２４を有している。

【００１４】従って、ケーシング１３内に組付けられた
この羽根車１２を図示しない駆動モータによって高速回
転（１５０００〜２５０００ｒｐｍ）すると、通常のフ
ァンと同様、羽根車１２に高速回転に伴う遠心力によっ
て空気の流れが形成される。ここで、ケーシング１３の
風入口から入った空気は、円錐台板部１７によってガイ
ドされて、隣り合う翼板１１によって形成される風通路
２０内に侵入する。ここで、従来のターボファンにおい
ては、翼板の数が７〜１６枚であるのに対し、本実施の
形態に係る羽根車１２においては、翼板１１の数を６０
〜１２０枚とし、更に、翼板１１の内外径比を０．６５
〜０．７５程度と大きくしているので、風通路２０の幅
が入口から出口方向にかけて略同一となり、これによっ
て、風量、風圧を同一条件にしても、風の流れが均一と
なって、騒音の発生が著しく減少する。なお、この実施
の形態に係る高圧ファン１０においては、従来型のター
ボファンに比較して、約１５ｄＢの騒音の低下が確認さ
れている。

【００１５】更には、この高圧ファン１０の羽根車１２
は組み立て方式ではなくて、一体成形によって製造可能
であるので、極めて製造コストが低減する。ここで、こ
の実施の形態に係る高圧ファン１０においては、従来の
ターボファンと異なり、一体成形を行うために、翼板１
１の一方側を支持する基板部１８に開孔２１を設けてい
るが、この実施の形態に係る高圧ファン１０における風
通路２０の幅は狭く、更に羽根車１２は高速回転してい
るので、開孔２１から軸方向に抜ける風は極めて僅少で
あり、従って、ファンの運転には全く支障がないことに
なる。そして、この高圧ファン１０においては、翼板１
１の他方側に設けられている連結基板１９が斜めとなっ
ているので、吹き出される空気が圧縮されて、風出口２
４から排出される。

【００１６】この実施の形態においては、羽根車１２の
内外径比を０．６５〜０．７５としているが、０．６５
未満であると、入口側の風通路と出口側の風通路の幅の
差が大きくなって、流れが均一で無くなり、騒音が発生
し易くなるからであり、０．７５を超えると吹き出され
る圧力が下がるからである。また、翼板１１の枚数を６
０〜１２０枚に設定したのは、翼板の枚数が少ない場合
には、従来のターボファンに近づいて、騒音が発生し易
くなり、翼板の枚数を多くすると、製造が困難となり、
更には翼板１１も薄くなるので、強度上問題が生じるか
らである。

【００１７】前記実施の形態においては、ボス部の他端
側に支持部材を取付け、この支持部材を円錐台状に屈曲
して、その基板部に翼板を取付けているが、本発明はこ
の構造に限定されるものではなく、ボス部の一端側（即
ち、Ａ側）に直接基板部を取付けるようにしてもよく、
更にはボス部の長さを変えてもよい。また、翼板１１の
他端側の連結基板は断面斜めに設けているが、半径方向
に合わせて平面状に形成してもよい。そして、この実施
の形態においては、材料をプラスチックとした比較的小
型の高圧ファンについて説明したが、例えば、アルミダ
イキャスト等で製造する中型のファンや、更に大型のフ
ァンについても本発明は適用される。

【００１８】

【発明の効果】請求項１〜６記載の高圧ファンは、多数
の翼板の一方の軸方向端部には、成型及び脱型時に各翼
板間の隙間からなる風通路を形成する内型板が軸方向に
挿通する多数の開孔を設けているので、射出一体成形が
可能となって、製造原価が低減できる。特に、請求項２
記載の高圧ファンにおいては、風通路の幅はその全長に
わたって同一か、又は通過する空気に巻き込みを発生し
ない程度で半径方向に徐々に拡幅しているので、乱流や
風の巻き込みが抑制されて、発生する騒音を低く抑える
ことができる。請求項３記載の高圧ファンにおいては、
翼板の半径方向外側の後退角が、該翼板の半径方向内側
の後退角より大きいターボファンからなっているので、
より大きな風圧を得ることができる。請求項４記載の高
圧ファンは、多数の翼板の他方の軸方向端部を密閉状態
で連結する連結部材が設けられ、風通路の高さが半径方
向に狭まっているので、これによって、風流れ方向に圧
縮されて、比較的大きな風圧の風を得ることができる
他、翼板の支持がより強固になる。請求項５記載の高圧
ファンは、支持部材の内側基端はボス部の他方側に連結
され、更に、該支持部材の中間部分は円錐台状となっ
て、風通路の内側入口側の風ガイド壁となっているの
で、風抵抗が小さくなり、これによって効率良く、風を
発生させることができる。そして、請求項６記載の高圧
ファンは、多数の翼板の外側で軸方向の一方側端部には
補強用周縁部が設けられているので、翼板を強固に構成
でき、これによって羽根車の高速回転が可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施の形態に係る高圧ファンの羽根
車の側断面図である。

【図２】同高圧ファンの羽根車の平断面図である。

【図３】図２におけるＢ矢視部の拡大図である。

【図４】同高圧ファンの全体断面図である。

【符号の説明】

１０ 高圧ファン １１ 翼板 １２ 羽根車 １３ ケーシン
グ １４ ボス部 １５ 支持部材 １６ 取付け孔 １７ 円錐台板
部 １８ 基板部 １９ 連結基板 ２０ 風通路 ２１ 開孔 ２２ 周縁部 ２３ 三角リブ ２３ａ 内型板（挿入板） ２４ 風出口

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 中央にボス部を有し、その周囲に支持部
   材を介して多数の翼板が周方向に隙間を有して設けら
   れ、使用にあっては高速回転する羽根車と、そのケーシ
   ングを有する高圧ファンにおいて、 前記多数の翼板の一方の軸方向端部間に、成型及び脱型
   時に前記各翼板間の隙間からなる風通路を形成する内型
   板が軸方向に挿通する多数の開孔を設けたことを特徴と
   する高圧ファン。
2. 【請求項２】 前記風通路の幅はその全長にわたって同
   一か、又は通過する空気に巻き込みを発生しない程度で
   半径方向に徐々に拡幅している請求項１記載の高圧ファ
   ン。
3. 【請求項３】 前記翼板の半径方向外側の後退角が、該
   翼板の半径方向内側の後退角より大きいターボファンか
   らなる請求項１又は２記載の高圧ファン。
4. 【請求項４】 前記多数の翼板の他方の軸方向端部を密
   閉状態で連結する連結部材が設けられ、前記風通路の軸
   方向高さが半径外方向に狭まっている請求項１〜３のい
   ずれか１項に記載の高圧ファン。
5. 【請求項５】 前記ボス部は、前記多数の翼板と軸方向
   にみて同一位置にあって、前記支持部材の内側基端は前
   記ボス部の他方側に連結され、更に、該支持部材の中間
   部分は円錐台状となって、前記風通路の内側入口側の風
   ガイド壁となっている請求項１〜４のいずれか１項に記
   載の高圧ファン。
6. 【請求項６】 前記多数の翼板の外側で軸方向の一方側
   端部には補強用周縁部が設けられている請求項１〜５の
   いずれか１項に記載の高圧ファン。