JPH11187870A - 新規なトランス−4−ヒドロキシケイ皮酸脱炭酸酵素、及び、それを用いた重水素化方法 - Google Patents

新規なトランス−4−ヒドロキシケイ皮酸脱炭酸酵素、及び、それを用いた重水素化方法

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JPH11187870A
JPH11187870A JP9366651A JP36665197A JPH11187870A JP H11187870 A JPH11187870 A JP H11187870A JP 9366651 A JP9366651 A JP 9366651A JP 36665197 A JP36665197 A JP 36665197A JP H11187870 A JPH11187870 A JP H11187870A
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acid
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Tetsushi Tawara
哲士 田原
Yasuyuki Hashitoko
泰之 橋床
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Japan Science and Technology Corp
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 クレブシエラ オキシトカ(Klebsiella oxy
toca)菌体から得ることができ、トランス−4−ヒドロ
キシケイ皮酸を基質とするトランス−4−ヒドロキシケ
イ皮酸脱炭酸酵素、及び、脱炭酸酵素を用いた重水素化
を提供する。 【解決手段】 本発明は、クレブシエラ オキシトカ
(Klebsiella oxytoca)菌体から得ることができ、トラ
ンス−4−ヒドロキシケイ皮酸を基質とするトランス−
4−ヒドロキシケイ皮酸脱炭酸酵素、及び、脱炭酸酵素
を用いた重水素化方法等に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クレブシエラ オ
キシトカ(Klebsiella oxytoca)菌体から得ることがで
き、トランス−4−ヒドロキシケイ皮酸を基質とするト
ランス−4−ヒドロキシケイ皮酸脱炭酸酵素に関する。
また、本発明は、トランス−4−ヒドロキシケイ皮酸又
はその誘導体を、4−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシ
ラーゼ(4−HCD)の存在下に脱炭酸させることによ
る、重水素化4−ヒドロキシスチレン又はその誘導体の
位置選択的な重水素化方法に関する。本発明の方法によ
れば、高収率、高選択率で目的とする重水素化物を製造
することができる。
【0002】
【従来の技術】幾つかの有機酸の非酸化的酵素反応によ
る脱炭酸反応が知られている。これらの非酸化的酵素反
応による脱炭酸反応は、基質の構造や性状によってグル
ープ分けをすることが可能である。最も大きなグループ
のひとつであるアミノ酸脱炭酸酵素は、アミノ化炭素原
子に結合するカルボキシル基を脱炭酸し、脂肪族アミン
類を生成する(例えば、グルタミン酸デカルボキシラー
ゼ)。また、安息香酸脱炭酸酵素は、ベンゼン環上のカ
ルボキシル基を脱炭酸し、それを水素原子に置換する
(例えば、没食子酸デカルボキシラーゼ)。
【0003】一方、4−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキ
シラーゼ(4−HCD)は、α,β−不飽和カルボン酸
をもつケイ皮酸類を脱炭酸してビニル基を持つスチレン
化合物を生成させることから、これらとは別のグループ
に分けられる。本発明者らは、クレブシエラ オキシト
カ(Klebsiella oxytoca)という植物着生細菌(エンテ
ロバクター科)が4−HCD活性を有していることを報
告してきた(橋床ら、「ジェイ、バイオサイ、バイオテ
ク、バイオケム」第57巻、第215頁、1993年
(Hashidoko,Y, et al.,J.Biosci.Biotech.Biochem.,(1
993),57,215))。しかし、当該植物着生細菌から、4
−HCDを単離するには至らなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、さらに
研究を進め、このクレブシエラ オキシトカ(Klebsiel
la oxytoca)中の酵素を初めて単離し、この酵素の特性
及び活性を確認したところ、この酵素が新規な4−HC
Dの一種であることを見出した。そして、この新規な酵
素が特異的にトランス−4−ヒドロキシケイ皮酸類を脱
炭酸することを見出し、かつ、当該酵素反応においては
カルボキシル基の開裂反応時の水素導入に際して、高度
な幾何選択性があることを見出した。さらに、本発明者
らは、この酵素的脱炭酸反応においては、α位の炭素原
子に導入される水素は酵素タンパクのアミノ酸残基上の
交換性プロトン(H+) に由来するとされているので、
重水を含有する緩衝液中で反応を行うことにより、生成
するスチレンのC−8炭素原子へ重水素を幾何選択的に
導入することができることを見出した。
【0005】即ち、本発明は、クレブシエラ オキシト
カ(Klebsiella oxytoca)菌体由来のトランス−4−ヒ
ドロキシケイ皮酸を基質とする新規なトランス−4−ヒ
ドロキシケイ皮酸脱炭酸酵素を提供するものであり、ま
た、本発明は、トランス−4−ヒドロキシケイ皮酸又は
その誘導体を用いて、重水を含有する反応溶媒中で脱炭
酸反応を行うことにより、対応する4−ヒドロキシスチ
レン又はその誘導体のビニル位のトランス位(E配置)
が位置選択的に重水素化された化合物及びその製造方法
を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、クレブシエラ
オキシトカ(Klebsiella oxytoca)菌体から得ること
ができ、トランス−4−ヒドロキシケイ皮酸を基質とす
る新規なトランス−4−ヒドロキシケイ皮酸脱炭酸酵素
に関する。また、本発明は、トランス−4−ヒドロキシ
ケイ皮酸又はその誘導体を、4−ヒドロキシケイ皮酸デ
カルボキシラーゼ(4−HCD)の存在下に脱炭酸させ
ることによる重水素化−4−ヒドロキシスチレン又はそ
の誘導体のビニル位を位置選択的に重水素化する方法に
関する。さらに、本発明は次式(II)
【0007】
【化3】
【0008】(式中、Dは重水素原子を示し、Rは水
素、低級アルキル基、水酸基、又は、低級アルコキシ基
を示し、当該Rはベンゼン環上に各々独立して1〜4個
存在することができる。)で示される重水素化−4−ヒ
ドロキシスチレン類に関する。本発明の重水素化−4−
ヒドロキシスチレン類は、立体選択的に化合物を製造す
る際の製造法を確立させるための多様な試薬として有用
である。
【0009】本発明の新規な酵素は、クレブシエラ オ
キシトカ(Klebsiella oxytoca)という植物着生細菌
(エンテロバクター科)から得ることができるものであ
る。本発明の新規な酵素は、例えば、トランス−カフェ
酸などの存在下にジャガイモ煮汁などの培地で培養した
クレブシエラ オキシトカ(Klebsiella oxytoca)菌体
を、超音波などの手段によりこれを破砕することにより
得られる可溶化されたタンパクを、常法により、例えば
硫安などで沈殿させることにより得ることができる。
【0010】本発明の酵素の理化学的性質を示す。本発
明の酵素は、α,β−不飽和カルボン酸を脱炭酸する作
用を有する。本発明の酵素は、4−ヒドロキシケイ皮酸
を特異的な基質とするものである。本発明の酵素の基質
について検討した結果を図1に示す。図1には左側に本
発明の酵素の基質となる物質を示しており、右側に基質
とならない物質を示している。これらの結果は、本発明
の酵素の基質特異性を示すものである。基質となる物質
は、図1中の化合物番号1、2、3、4、5、及び、1
8として示される物質である。図1中の化合物番号6、
7、8、9、10、及び、11で示される化合物は、ベ
ンゼン環のパラ位(4位)にヒドロキシ基を有していな
いために本発明の酵素の基質にならない物質である。化
合物番号12及び13はカルボン酸基のα、β位に不飽
和結合が無く共役結合が延びていないために本発明の酵
素の基質とならないものである。
【0011】図1中の化合物番号14及び15で示され
る化合物はシス体であり、また、化合物番号16で示さ
れる化合物は共役がさらに延びている化合物であり、不
飽和結合と反応する位置が不適合なものであるから本発
明の酵素の基質とならないものである。図1中の化合物
番号17で示される化合物は隣接する電子吸引基が存在
するために、反応に関与する部位の電子密度が不足して
おり本発明の酵素の基質とならないものである。
【0012】本発明の酵素の至適pHは、7.0付近で
あり(図9及び10参照)、安定pHとしてはpH約
6.0〜8.0である。本発明の酵素の特性と公知の4
−HCDの特性を比較すると次の表1のとおりとなる。
【0013】
【表1】
【0014】表1中の、文献1は、ビー ジェー フィン
ケルら、ジャーナル バイオロ ケム、237巻、第29
26−2931頁(1962年)(B.J.Finkl
e,et al.,J.Biol,Chem.,23
7,292 6−2931(1962))、
文献2は、エイチ ジー バインら、ジャーナル ジェネ
ラル ミクロバイオロ、 95巻、第18
8−190頁(1976年)(H.G.Bayn
e,et al.,J.General Mi
crobiol., 95,188−19
0(1976))、文献3は、ティー ハラダら、キャン
ジャーナル ミクロバイオロ、22巻、
第1258−1262頁(1976年)(T.Hara
da,e t al.,Can.J.Mi
crobiol.,22,1258 −1
262(1976))、文献4は、エー アール グッディ
ーら、ジャーナル ジェネラル ミクロバイオロ、128
巻、第2615−2620頁(1982年)(A.R.
Goodey,et al.,J.General M
icr obiol.,128,2615
−2620(1982))、文献5は、アール エフ リン
ドセイら、ジャーナル アプリ バクテリアル、39巻、
第181−187頁(1975年)(R.F.Lind
say,et al.,J.Appl.Bacteri
ol.,3 9,181−187(197
5))、文献6は、ジー デグラシーら、アプリ エンバ
イロン ミクロバイオロ、61 巻、第3
26−332頁(1995年)(G.Degrass
i, et al.,Appl.Envi
ron.Microbiol., 61,
326−332(1995))、を各々示す。
【0015】表1に示す酵素特性からも明らかなよう
に、本発明の酵素は文献6に記載の4−HCDと酵素の
タイプが同じであるが至適pH及びミカエリス定数にお
いて明確な相違がみられ、また基質において文献1、
2、3、5及び6のものと同じにみえても、至適pH、
ミカエリス定数において明確な相違がみられる。さらに
本発明の酵素はZ−異性体に不活性な点において公知の
4−HCDとも相違するものである。このように、本発
明の酵素は、公知の4−HCDとは作用、至適pH、及
び、ミカエリス定数を異にする新規な酵素である。
【0016】図2〜10に本発明の新規な酵素の特性を
示す。図2は、本発明の酵素の基質による活性の変化を
示したものである。使用した酵素液は、1μlで1.8
×10-2単位のものを0.5μl相当とし、反応液はト
リス塩酸緩衝液(Tris−HCl)(pH7.2)5
0mlで、反応条件は25℃、30分であった。活性の
変化は、4−ヒドロキシケイ皮酸アンモニウム塩を10
0とした相対活性度で示しており、遊離のカフェ酸が基
準とした4−ヒドロキシケイ皮酸アンモニウム塩の約
1.4倍の活性を有していることがわかる。
【0017】図3は、緩衝液系に各種の溶質を添加した
ときの、本発明の酵素の活性の変化を4−ヒドロキシケ
イ皮酸アンモニウム塩(1mg/ml)を基質として用
い、トリス塩酸緩衝液(Tris−HCl)(pH7.
2)を基準とした相対活性度で示したものである。使用
した酵素液は、1μlで1.8×10-2単位のものを
0.5μlあるいは0.02μl相当とし、反応液はT
ris−HCl(pH7.2)50mlで、反応条件は
25℃、30分であった。クエン酸又はEDTA(エチ
レンジアミン四酢酸)の添加により本発明の酵素の活性
が大幅に増強されることがわかる。
【0018】図4は、本発明の酵素の濃度が一定のとき
の、基質濃度と反応速度のとの関係を示したものであ
る。使用した基質は、4−ヒドロキシケイ皮酸アンモニ
ウム塩(1mg/ml)であり、酵素液は、1μlで
1.8×10-2単位のものが0.02μl相当であり、
反応液はTris−HCl(pH7.2)50mlで、
反応条件は25℃、30分であった。基質濃度が0.5
mg/ml付近までは、反応速度は基質濃度にほぼ正比
例するが、それ以上の基質濃度になるとほぼ飽和状態を
示すことがわかった。本酵素のKm値はおよそ0.5m
Mである。
【0019】図5の(A)及び(B)は、基質濃度に対
する4−ヒドロキシスチレンの生成量の変化をプロット
したものであり、この図からミカエリス定数(Km)が
約0.5mMであることが判る。
【0020】図6は、本発明の酵素の量と基質の反応速
度との関係を示したものである。使用した基質は、4−
ヒドロキシケイ皮酸アンモニウム塩(1mg/ml)で
あり、酵素液は、1μlで1.8×10-2単位のもので
あり、反応液はTris−HCl(pH7.2)50m
l(黒三角印)及びクエン酸緩衝液(pH6.0)50
ml(黒丸印)で、反応条件は25℃、30分であっ
た。反応速度は酵素の量に正比例していることがわか
る。
【0021】図7は、塩化ナトリウムの濃度が本発明の
酵素の活性に与える影響を示したものである。使用した
基質は、4−ヒドロキシケイ皮酸アンモニウム塩(1m
g/ml)であり、酵素液は、1μlで1.8×10-2
単位のものが0.25μl相当であり、反応液はTri
s−HCl(pH7.2)50mlで、反応条件は25
℃、30分であった。塩化ナトリウムの濃度が1モル付
近までは、反応速度は塩化ナトリウムの濃度の影響をあ
まり受けないが、それ以上の濃度になると塩化ナトリウ
ムの濃度の上昇に伴って反応速度が少しづつ減少する傾
向にあることがわかる。
【0022】図8は、エタノールの濃度が本発明の酵素
の活性に与える影響を示したものである。使用した基質
は、4−ヒドロキシケイ皮酸アンモニウム塩(1mg/
ml)であり、酵素液は、1μlで1.8×10-2単位
のものが0.5μl相当であり、反応液はTris−H
Cl(pH7.2)50mlで、反応条件は25℃、3
0分であった。反応速度はエタノールの濃度の増加によ
り急激に減少し、本発明の酵素がエタノールの影響を極
めて敏感に受けることがわかる。
【0023】図9は、クエン酸緩衝液(50ml)にお
ける本発明の酵素のpHの影響を示したものである。使
用した基質は、4−ヒドロキシケイ皮酸アンモニウム塩
(1mg/ml)であり、酵素液は、1μlで1.8×
10-2単位のものが0.02μl相当であり、反応条件
は25℃、30分であった。図10は、トリス塩酸緩衝
液(50ml)における本発明の酵素のpHの影響を示
したものである。使用した基質は、4−ヒドロキシケイ
皮酸アンモニウム塩(1mg/ml)であり、酵素液
は、1μlで1.8×10-2単位のものが0.5μl相
当であり、反応条件は25℃、30分であった。図9と
図10に示したpH曲線から、本発明の酵素の至適pH
が7.2付近であることがわかった。アエロバクター
アエロゲネス(Aerobacter aerogenes)由来の公知の
4−ヒドロキシケイ皮酸脱炭酸酵素の至適pHは5.7
(B.J.Finkle,et al.,J.Biol,Chem.,237,2926(196
2))、バチルス プミルス(Bacillus pumilus)由来の
公知の4−ヒドロキシケイ皮酸脱炭酸酵素の至適pHは
5.5(G.Degrassi,et al.,Appl.Environ.Microbiol.,
61,326(1995))、クラドスポリウムフィレイ(Cladospo
rium phlei)由来の公知の4−ヒドロキシケイ皮酸脱炭
酸酵素の至適pHは6.0であり(T.Harada, et al.,C
an. J. Microbiol., 22,1258(1976))、本発明の酵素が
公知のものと異なるものであることがこの至適pHから
も明らかとなった。
【0024】次に、本発明の位置選択的な重水素化の方
法について説明する。本発明の位置選択的な重水素化方
法に使用するトランス−4−ヒドロキシケイ皮酸又はそ
の誘導体としては、トランス−4−ヒドロキシケイ皮酸
の化学構造を有するものであって、当該化学構造の他に
4−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ(4−HC
DC)よる脱炭酸反応を阻害しないいかなる置換基を有
するものであってもよく、好ましくは次式(I)
【0025】
【化4】
【0026】(式中、Rは水素、低級アルキル基、水酸
基、又は、低級アルコキシ基を示し、Rはベンゼン環上
に各々独立して1〜4個存在することができる。)で示
されるトランス−4−ヒドロキシケイ皮酸又はその誘導
体が挙げられる。式(I)で示される化合物における、
低級アルキル基としては、炭素数1〜15、好ましくは
1〜10、より好ましくは1〜5のアルキル基が挙げら
れ、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソ
プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基などを挙
げることができる。また、低級アルコキシ基としては、
炭素数1〜15、好ましくは1〜10、より好ましくは
1〜5のアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、
エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n
−ブトキシ基、sec−ブトキシ基などを挙げることが
できる。
【0027】より具体的に本発明の好ましいトランス−
4−ヒドロキシケイ皮酸又はその誘導体を例示すれば、
トランス−4−ヒドロキシケイ皮酸、トランス−カフェ
酸、トランス−フェルラ酸、トランス−2,4−ジヒド
ロキシケイ皮酸などを挙げることができる。これらのト
ランス−4−ヒドロキシケイ皮酸又はその誘導体は、1
種の化合物を単独で使用してもよいが、これらの化合物
の2種以上を使用することもできる。
【0028】本発明の4−ヒドロキシケイ皮酸デカルボ
キシラーゼ(4−HCDC)は、トランス−4−ヒドロ
キシケイ皮酸の化学構造を有し、そのカルボキシル基を
幾何選択的に脱炭酸する能力を有するものであれば特に
制限はないが、本発明のクレブシエラ オキシトカ(Kl
ebsiella oxytoca)菌体から得ることができ、トランス
−4−ヒドロキシケイ皮酸を基質とする新規なトランス
−4−ヒドロキシケイ皮酸脱炭酸酵素が好ましい。本発
明の方法によりトランス体(E体)の重水素化物を製造
する方法を化学反応式で示すと次式
【0029】
【化5】
【0030】(式中、Rは水素、低級アルキル基、水酸
基、又は、低級アルコキシ基を示し、Rはベンゼン環上
に各々独立して1〜4個存在することができる。)のよ
うになる。即ち、トランス−4−ヒドロキシケイ皮酸又
はその誘導体、例えば式(I)で示される化合物を、重
水を含有する反応溶媒中で、4−ヒドロキシケイ皮酸デ
カルボキシラーゼ(4−HCD)の存在下に脱炭酸させ
ることにより、ビニル基のベンゼン環に対するトランス
位(E配置)が位置選択的に重水素化された4−ヒドロ
キシスチレン又はその誘導体(III) を製造することが
できる。
【0031】重水素を含有する反応溶媒としては、その
一部又は全部を重水で置換した緩衝液が好ましく、緩衝
液に重水を加えたものを使用することもできる。緩衝液
としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はな
く、例えばクエン酸−リン酸緩衝液(pH7.0)が好
ましい。反応条件としては、通常の培養条件を採用すれ
ばよく、基質や使用する酵素に応じて適宜最適条件を設
定することができる。また、本発明の方法によれば、シ
ス位(Z配置)を位置選択的に重水素化した重水素化−
4−ヒドロキシスチレン又はその誘導体を製造すること
ができる。この方法は、まず、8−重水素化−トランス
−4−ヒドロキシケイ皮酸又はその誘導体を、通常の緩
衝液中で、4−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ
(4−HCD)の存在下に脱炭酸させることにより、シ
ス位(Z配置)が選択的に重水素化された4−ヒドロキ
シスチレン又はその誘導体を製造することができる。
【0032】この方法における8−重水素化−トランス
−4−ヒドロキシケイ皮酸又はその誘導体としては、前
記したトランス−4−ヒドロキシケイ皮酸又はその誘導
体の8位(ビニル位)が重水素化されたものを使用する
ことができる。より具体的には、8−重水素化−トラン
ス−4−ヒドロキシケイ皮酸、8−重水素化−トランス
−カフェ酸、8−重水素化−トランス−フェルラ酸、8
−重水素化−トランス−2,4−ジヒドロキシケイ皮酸
などを例示することができる。
【0033】これらの、8−重水素化−トランス−4−
ヒドロキシケイ皮酸又はその誘導体は、公知の種々の方
法で入手することができる。例えば、次の化学反応式
【0034】
【化6】
【0035】に示されるように、重水素置換したパラヒ
ドロキシベンスアルデヒド又はその誘導体とマロン酸の
混合物を、ドブナー(Dobner)反応(Dobner,O.,Ber.,1
900,33,2140参照)に従って、ピリジン/重水中で行う
ことにより、目的とする8−重水素化−トランス−4−
ヒドロキシケイ皮酸又はその誘導体を製造することがで
きる。得られた8−重水素化−トランス−4−ヒドロキ
シケイ皮酸又はその誘導体を、通常の軽水緩衝液中で脱
炭酸酵素と反応させると、シス位が重水素化された目的
物を得ることができる。
【0036】さらに、本発明の方法による前記の方法を
組み合わせることにより、4−ヒドロキシスチレン類の
ビニル基の2個の水素原子が共に重水素化された化合物
を製造することもできる。本発明の方法によれば、従来
の合成的手段によって調製することが極めて困難である
とされていた末端の8位のみが重水素化された重水素化
スチレン類を、簡便な方法で幾何選択的に調製すること
ができる。また、本発明の方法によれば、8−重水素化
−トランス−4−ヒドロキシケイ皮酸を基質とすること
により、トランス体の重水素化物のみならずシス体の重
水素化スチレン類をも簡便な方法で幾何選択的に調製す
ることもできる。
【0037】
【実施例】以下に具体例により本発明をより具体的に説
明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるもので
はない。
【0038】実施例1 クエン酸−リン酸緩衝液(pH7.0)を凍結乾燥した
残さに、2mlの重水を加え、クレブシエラ オキシト
カ(Klebsiella oxytoca)から抽出し40%グリセリン
−トリス塩酸緩衝液として冷凍保存しておいた粗酵素液
100マイクロを加え、これを再び凍結乾燥した。その
結果得られた固体を10mlの重水に再溶解し、ほぼ完
全に重水素置換された酵素液を調製した。38mgのト
ランス−4−ヒドロキシケイ皮酸重水素化アンモニウム
塩を基質とし、この重水素置換緩衝液酵素溶液中で脱炭
酸反応を行った。脱炭酸反応は重水中においても速やか
に進行した。唯一の生成物をエーテル転溶し、引き続い
て調製TLCで精製した(収量 16mg)。
【0039】生成物の1H−NMRスペクトルは、4−
ヒドロキシスチレンに帰属できるシグナル群を示した
が、C−8に位置するビニルメチレンの一方(8−E)
が消失していた(図11の(A)のスペクトル参照)。
図11には、シス位(Z配置)が重水素化されたものの
NMRスペクトル(図11の(B))、及び、重水素化
されていない4−ヒドロキシスチレンのNMRスペクト
ル(図11の(C))が併記されている。なお、図11
のNMRの測定条件は、CDCl3を溶媒とし、270
MHzである。また、EI−MSと13C−NMRのスペ
クトルは、それぞれ8位重水素化−4−ヒドロキシスチ
レン構造の正当性を支持した。
【0040】8位−重水素化−4−ヒドロキシスチレン
: 無色シ口ップ状、 Rf 0.3(4% MeOH/CHCl3) EI−MS (m/z,%) :122(M++1,1
7),121(M十,100),120(31),92
(35)1 H−NMR : δ(CDCl3) 7.29(2H,br.d,J=8.6Hz)[2位及
び6位の水素]、6.79(2H,br.d,J=8.
6Hz)[3位及び5位の水素]、6.64(1H,b
r.d,J=17.5Hz)[7位の水素]、5.58
(1H,d,J=17.5Hz)[8位Z配置の水素]13 C−NMR : 68MHz,CDCl3 155.4(4−C),136.0(7−CH),13
0.5(1−C),127.6(2−及び6−CH),
115.4(3−及び5−CH),111.2(t,8
−CHD)
【0041】実施例2 基質としてトランス−4−ヒドロキシケイ皮酸に換え
て、トランス−カフェ酸、トランス−フェルラ酸、トラ
ンス−2,4−ジビドロキシケイ皮酸を用い、実施例1
と同様にして、それぞれ対応するE−重水素化スチレン
誘導体を生成した。
【0042】実施例3 基質としてトランス−4−ヒドロキシケイ皮酸に代えて
Z−8−重水素化−トランス−4−ヒドロキシケイ皮酸
(38mg)を用い、緩衝液として通常の軽水緩衝液中
で、実施例1と同様に反応させることにより、Z−8−
重水素化−4−ヒドロキシスチレンを得た(収量 9m
g)。無色シロップ状。
【0043】 Rf 0.3 (4% MeOH/CHC13) EI−MS (m/z,%) :122(M++1,1
2),121(M+,100),120(27),92
(38)1 H−NMR δ(CDCl3) :7.30(br.
d,J=8.6Hz)[2位、6位水素],6.79
(br.d,J=8.6Hz)[3位、5位水素],
6.63(m−liked,J=10.9Hz)[7位
水素],5.10(d,J=10.9Hz)[8位水
素]
【0044】実施例4 実施例3で使用した8−Z−重水素化−4−ヒドロキシ
ケイ皮酸は次のようにして製造した。重水素置換したマ
ロン酸(0.5g)とパラヒドロキシベンズアルデヒド
(65mg)を用いて、ドブナー反応(Dobner 反応)
を行った。即ち、ピリジン/重水(2ml/0.5m
l)中、70℃で終夜反応をさせた後、反応混合液を水
で希釈し、塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出した。目
的の8−重水素化−4−ヒドロキシケイ皮酸を、TLC
(10% MeOH/CHCl3)により精製し、48
mgの淡黄色固体として得た(収率55%)。
【0045】8−Z−重水素化−4−ヒドロキシケイ皮
酸: EI−MS (m/z,%) :166(M++1,1
8),165(M+,100),164(49),14
8(61),120(31)1 H−NMR δ(270MHz,アセトン−d6)
:8.86(1H,br.,4−OH),7.60
(1H,br.s,7−H),7.55(2H,br.
d,J=8.6Hz,2−及び6−H),6.90(2
H,br.d,J=8.6Hz,3及び5−H) なお、溶媒の重水素置換が完全でなかったために、微小
なH−8シグナルがpH6.35付近に約6%の強度で
観察された。
【0046】実施例5 本発明の酵素は次のようにして単離した。菌株クレブシ
エラ オキシトカ(JCM1665)は、理化学研究所
(埼玉県)より入手した。クレブシエラ オキシトカ
(Klebsiella oxytoca)菌体を、2mM濃度のトランス
−カフェ酸を含むジャガイモ煮汁培地(Difco,4
00ml)で25℃で48時間振とう培養した。培養し
た菌体を、2,000gで10分間遠心分離して集め、
これを50mMのトリス−塩酸緩衝液(pH7.2)に
懸濁し、2,000gで10分間遠心分離した。得られ
た菌体を、25mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH
7.0,20ml)中に懸濁し、氷溶中で超音波破砕し
た(Soniphier20meV,15分間,10%
パルス)。得られた液を遠心分離(12,000gで5
分間(5℃))し、4−HCD活性を示す浮遊物を得た。
可溶性蛋白質は、70〜80%Na2SO4で沈澱させ、
40%グリセロールと25mMリン酸ナトリウム緩衝液
(pH7.0,10ml)に再溶解させて、−20℃で
保存した。この溶解液(蛋白質含有量は約100μl/
μl)の、4−ヒドロキシケイ皮酸ナトリウム塩を基質
として使用した場合の脱炭酸活性は、約30nmol/
μl/分であった。
【0047】実施例6 50mMクエン酸・リン酸緩衝液10mlにシス−4−
ヒドロキシケイ皮酸アンモニウム塩10mgをとり、同
量の粗酵素液を加え、よく攪拌した。このとき、光があ
たると基質のシス体がトランス体に光異性化するおそれ
があるので、反応容器をアルミホイルで包み、室温、暗
所で一晩放置した。また、対照として、同じ条件で基質
としてトランス体を用いて反応させた。その結果、トラ
ンス体では脱炭酸反応が生起したが、シス体では脱炭酸
反応は全く起こらなかった。
【0048】実施例7(本発明の酵素の活性試験) 本酵素の4−HCD活性はガスクロマトグラフィーを用
いて次のようにして決定された。まず、ガスクロマトグ
ラフィーの標準溶液として、100mgのパルミチン酸
メチル(和光純薬、分析グレード)の100ml n−
ヘキサン溶液を調整した。酵素の溶液(5μl)に10
0mMのリン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液を加え、こ
れに基質として5mMのE−4−ヒドロキシケイ酸ナト
リウム(5a)溶液5mlを加え、各々10、20、3
0、40、50及び60分間、25℃で放置した。各々
の反応時間の終了時に、酵素反応を終結させるために2
mlの酢酸エチルを加え、少し振った。さらに、内部標
準として、前記の標準溶液1mlを加え、振り混ぜた。
有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、ガスクロマトグ
ラフィーで分析した。4−ヒドロキシスチレンと内部標
準のピークは、リテンションタイム(eR)が各々4.
1分と8.7分のところに現れた。標準のカーブにおい
ては、10μモルの4−ヒドロキシスチレンが標準のピ
ークに対して1.02の一定の比率で示された。結果を
図2に示す。図2に示されるように、酵素反応が20分
間の場合が、標準のカーブにおいて最も信頼できる値の
ようである(基質の6%が反応していると考えられ
る)。図3に示されるように、ミカエリス定数(Km)
は約0.5mMであった。
【0049】実施例 8 基質特異性の試験に用いた図1に記載の化合物の合成例
を次に記載する。 (1)E−4−アミノケイ皮酸(11) p−アミノベンズアルデヒドとマロン酸とを、ピリジン
中で100℃、一夜、ドブナー(Dobner)反応により製
造した。溶媒を除去した後、反応混合物を少量の10%
メタノール/クロロホルムに溶解し、シリカゲルクロマ
トグラフィー(20%メタノール/クロロホルム)にか
けた。溶出した主生成物(11)を、薄層クロマトグラ
フィー(TLC)(10%メタノール/クロロホルム)
で分離した。黄色固体。収率49%。 EI−MS (m/z,%):163(M+,10
0),146(35),118(20),117(1
7),91(11)1 H−NMR δ(アセトン−d6);7.54(d,J=15.8Hz,7
-H), 7.36(br.d,J=8.6Hz,2- and 6-H),6.64(br.d,J=8.6
Hz,3- and 5-H),6.18(d,J=15.8Hz,8-H).
【0050】(2)E,E−5−(4−ヒドロキシフェ
ニル)−2,4−ペンタジエン酸(16) 4−メトキシケイ皮アルデヒドとマロン酸とを、70℃
でドブナー(Dobner)反応により縮合させ、EI−MS
による親ピークm/zが248(M+,100)を示す
二塩基酸を得た(収率99%以上)。次いで、この二塩
基酸を160℃で一夜加熱することにより、E,E−5
−(4−メトキシフェニル)−2,4−ペンタジエン酸
(16)を得た(収率30%)。これを、BBr3/C
2Cl2を用いて脱メチル化して、目的のE,E−5−
(4−ヒドロキシフェニル)−2,4−ペンタジエン酸
(16)を得た(収率45%)。 EI−MS (m/z,%);190(M+,87),
145(100),144(31),127(42),
117(16),115(21)1 H−NMR δ(アセトン−d6);7.39(br.d,J=8.6H
z,2- and 6-H),7.39(dd,J=15.2 and 9.9Hz,8-H), 6.94
(br.d,J=15.8Hz,7-H),6.85(dd,J=15.2 and 9.9Hz,9-H),
6.82(br.d,J=8.6Hz,3-and5-H)5.91(d,J=15.2Hz,10-H).
【0051】(3)2−(3−プロペン−1−カルボキ
シル)−5−アセトキシ−4H−ピラン−4−オン(1
8) コウジ酸(2−ヒドロキシメチル−5−ヒドロキシ−4
H−ピラン−4−オン、和光製)をエタノールに溶解
し、これに等量のKOH及び等量の無水酢酸を加えて、
アセチル化することにより、2−ヒドロキシメチル−5
−アセトキシ−4H−ピラン−4−オンを得た(収率7
0%)。得られたモノアセチル体を、50%クロロホル
ム/トルエン中で粉末状の二酸化マンガンを用いて酸化
することにより2−ホルミル−5−アセトキシ−4H−
ピラン−4−オンを得た(収率26%、約70%の原料
を回収した。)。 EI−MS (m/z,%);113(M+,10
0),91(44),65(32),44(33),4
0(58)1 H−NMR δ(CDCl3);9.70 (s,7-H), 8.02
(s,6-H), 7.07 (s,3-H), 2.35 (s,5-OAc)
【0052】この生成物(34mg)をマロン酸と、ピ
リジン中、70℃で一夜処理した。溶媒を減圧で留去
し、残渣をクロロホルム溶解し、シリカゲルカラムクロ
マトグラフィーにより10%メタノール/クロロホルム
で溶出させて目的の化合物(18)を得た(収率40
%)。黄色固体。 Rf 0.1(10%メタノール/クロロホルム) EI−MS(m/z,%):182(M+,100),
153(35),125(17),97(12),79
(11)44(14)1 H−NMR δ(CD3OD);8.10(s,6-H), 7.80(d,J
=15.8 Hz,7-H), 6.77(d,J=15.8Hz,8-H),6.70(s,3-H).
【0053】(4)Z−4−ヒドロキシケイ皮酸(1
4) E−4−ヒドロキシケイ皮酸エチルエステルに、254
nmの紫外線を照射して異性化させ、次いでこれを1M
のNaOH/メタノールで加水分解することにより目的
物(14)を得た(収率約30%)。1 H−NMR δ(アセトン−d6);6.75(J=12.9Hz),
5.70(J=12.9 Hz)
【0054】(5)2,4−ジヒドロキシケイ皮酸 7−ヒドロキシクマリンを濃アンモニア水に溶解し、一
夜室温で暗所に放置した。水層を酢酸エチルで洗浄して
未反応の原料を除いた。水層を減圧下で乾燥すると、粉
状のZ−2,4−ジヒドロキシケイ皮酸(15)のアン
モニウム塩を得た。一方、水層に254nmの紫外線を
30分間照射すると、C7/C8の二重結合が異性化し
たE−2,4−ジヒドロキシケイ皮酸(4)のアンモニ
ウム塩が得られる。後者の乾燥した残渣を2M塩酸溶液
に溶解し、酢酸エチルで抽出した。有機層を5%NaH
CO3と酢酸エチルに分配した。これはE−2,4−ジ
ヒドロキシケイ皮酸が遊離カルボン酸に止まり、E−体
のみが水層に移行するからであり、目的化合物は酸性化
して酢酸エチルで再抽出することにより得られた。
【0055】実施例9 基質に化学構造が似ているが、基質にならない化合物
(9)、(12)、(17)、4−ヒドロキシフェニル
酢酸(19)、及び、4−ヒドロキシケイ皮アルコール
(20)について、4−HCDの活性阻害を検討した。
5mlの100mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.2)
又はリン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)
に、酵素溶液(10μl)と100μモルの試験化合物
(50μlの100μMメタノール溶液)とを加え、2
5℃で5分間放置した。この酵素溶液に、5mlの10
mM4−ヒドロキシケイ皮酸アンモニウム塩(5a、5
0μモル)を加え、同じ温度で30分間放置した。十分
な阻害活性が観察され、この阻害活性は基質の濃度にほ
ぼ定量的であった。
【0056】
【発明の効果】本発明によれば、新規な4−HCDが提
供され、また、重水素化−4−ヒドロキシスチレン類を
位置選択的に収率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の酵素の基質となる物質と基質
とならないものを示したものである。
【図2】図2は、本発明の酵素の基質による活性の変化
を示したものである。
【図3】図3は、緩衝液系に各種の溶質を添加したとき
の、本発明の酵素の活性の変化をカフェ酸アンモニウム
塩(1mg/ml)を基質として用い、トリス塩酸緩衝
液(Tris−HCl)(pH7.2)を基準とした相
対活性度で示したものである。
【図4】図4は、本発明の酵素の濃度が一定のときの、
基質濃度と反応速度との関係を示したものである。
【図5】図5の(A)及び(B)は、基質濃度に対する
4−ヒドロキシスチレンの生成量の変化をプロットした
ものである。
【図6】図6は、本発明の酵素の量と基質の反応速度と
の関係を示したものである。
【図7】図7は、塩化ナトリウムの濃度が本発明の酵素
の活性に与える影響を示したものである。
【図8】図8は、エタノールの濃度が本発明の酵素の活
性に与える影響を示したものである。
【図9】図9は、クエン酸緩衝液(50ml)における
本発明の酵素のpHの影響を示したものである。
【図10】図10は、トリス塩酸緩衝液(50ml)に
おける本発明の酵素のpHの影響を示したものである。
【図11】図11は、4−ヒドロキシスチレンの1H−
NMR(270MHz,CDCl3中)のスペクトルを
示す。図11の(A)はE−8−重水素化物のスペクト
ルであり、(B)はZ−8−重水素化物のスペクトルで
あり、(C)は非重水素化物のスペクトルを示す。図中
の矢印はシグナルが消失している部分を示している。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クレブシエラ オキシトカ(Klebsiella
    oxytoca)菌体から得ることができ、トランス−4−ヒ
    ドロキシケイ皮酸を基質とするトランス−4−ヒドロキ
    シケイ皮酸脱炭酸酵素。
  2. 【請求項2】 至適pHが、7.2付近である請求項1
    に記載のトランス−4−ヒドロキシケイ皮酸脱炭酸酵
    素。
  3. 【請求項3】 トランス−4−ヒドロキシケイ皮酸又は
    その誘導体を、トランス−4−ヒドロキシケイ皮酸デカ
    ルボキシラーゼ(4−HCD)の存在下に脱炭酸させる
    ことによる、ビニル位に位置選択的に重水素原子を有す
    る4−ヒドロキシスチレン又はその誘導体の製造方法。
  4. 【請求項4】 脱炭酸反応が重水を含有する反応溶媒中
    で行われることを特徴とする請求項3に記載の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 重水素化がベンゼン環に対してトランス
    位である請求項3又は4に記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 トランス−4−ヒドロキシケイ皮酸又は
    その誘導体が次式(I) 【化1】 (式中、Rは水素、低級アルキル基、水酸基、又は、低
    級アルコキシ基を示し、Rはベンゼン環上に各々独立し
    て1〜4個存在することができる。)で示される化合物
    である請求項3〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 トランス−4−ヒドロキシケイ皮酸又は
    その誘導体が、トランス−4−ヒドロキシケイ皮酸、ト
    ランス−カフェ酸、トランス−フェルラ酸、又は、トラ
    ンス−2,4−ジヒドロキシケイ皮酸のいずれか1種又
    は2種以上である請求項6に記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 重水素化がベンゼン環に対してシス位で
    ある請求項3に記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 ビニル位の2個の水素が重水素化される
    ことを特徴とする請求項3又は4に記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 トランス−4−ヒドロキシケイ皮酸デ
    カルボキシラーゼ(4−HCD)が、請求項1又は2に
    記載の4−HCDである請求項3〜9のいずれか1項に
    記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 次式(II) 【化2】 (式中、Dは重水素原子を示し、Rは水素、低級アルキ
    ル基、水酸基、又は、低級アルコキシ基を示し、Rはベ
    ンゼン環上に各々独立して1〜4個存在することができ
    る。)で示される重水素化−4−ヒドロキシスチレン
    類。
JP9366651A 1997-12-26 1997-12-26 新規なトランス−4−ヒドロキシケイ皮酸脱炭酸酵素、及び、それを用いた重水素化方法 Pending JPH11187870A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008019208A (ja) * 2006-07-13 2008-01-31 Pola Chem Ind Inc 新規化合物及びそれを含有する皮膚外用剤
US7378261B2 (en) 2003-04-14 2008-05-27 E.I. Du Pont De Nemours And Company Method for preparing para-hydroxystyrene by biocatalytic decarboxylation of para-hydroxycinnamic acid in a biphasic reaction medium
JP2018123127A (ja) * 2017-01-31 2018-08-09 東洋合成工業株式会社 アルケニル化合物の合成方法及び製造方法

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