JPH11169595A - 回転胴のバランス調整装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 内容物を収納して高速回転する回転胴、例え
ば洗濯物の遠心脱水機の回転胴のバランスを調整する装
置に関し、回転胴に設けた貯留室にバランス用の液体を
供給する簡易な技術手段を提供する。 【解決手段】 回転胴１の円周を等分する位置に設けた
貯留室２に液体を供給して回転時のバランスを調整する
装置において、貯留室２の数に対応させて回転胴と共に
回転する内径側が開放された液受リング３を設け、これ
らの液受リングの内側に先端を液受リングに向けた回転
しない給液ノズル４を配置し、相対応する液受リング３
と貯留室２とを連通パイプ５で連通した。回転胴１が水
平軸回りに回転するときは、給液ノズル４は下向きにす
る。回転胴１の回転開始後、液受リング３部分における
遠心力が１Ｇを超えた後、給液ノズル４から各液受リン
グ３に回転胴のアンバランスを修正するのに必要な量の
液体を供給する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、内容物を収納し
て高速回転する回転胴の軸回りのバランスを調整する装
置に関するもので、たとえば洗濯物の遠心脱水機の回転
胴のバランスを調整するために用いられる装置に関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】衣類その他の繊維製品を洗濯した後の脱
水装置として、周面に透孔を有する回転胴を備えた遠心
脱水機が広く用いられている。業務用の装置では、脱水
のみを行う専用の脱水機と、洗濯胴をそのまま回転して
脱水を行う洗濯脱水機とがあるが、いずれにしても、洗
濯物を収容した回転胴が高速回転して脱水を行う。この
とき回転胴の重心を偏心させないように洗濯物を収容す
ることは実際上不可能であり、特に洗濯脱水機では洗濯
が終了した後そのまま洗濯胴を回転させるので、洗濯物
が偏在した状態になるのを避けることができない。

【０００３】回転胴内に洗濯物が偏在すると、回転時に
当然アンバランスが生ずる。大きなアンバランスがあっ
ても支障なく脱水作業が行えるようにしようとすると、
回転胴やそれを支持する回転軸の剛性を高くし、ベアリ
ングも高荷重のものを用いて頑丈なフレームで回転胴を
支持しなければならないので、装置が大型かつ高価にな
る。一方、大きなアンバランスを許容しない機械にする
と、アンバランス量が許容値を超える毎に大きな振動が
発生したり機械が停止したりして使用に耐えない。

【０００４】このような収容物の偏在に起因する回転胴
のアンバランスを修正する手段として、３個以上の貯留
室を回転胴の円周を等分する位置に配置し、収容物が偏
在する側と反対の側の貯留室に液体（通常は水）を供給
して、収容物の偏在を貯留室に供給した水の重量でバラ
ンスさせるという技術手段が提唱されている。洗濯脱水
機の回転胴には、洗濯作業時に洗濯物をかき上げるため
のビータと呼ばれる凸条が回転胴の円周を等分する位置
に配置されているので、このビータを中空形状にして内
側を貯留室とし、回転胴を支持する軸に軸方向に設けた
連通孔を通して、軸端から各貯留室に水を供給するよう
にしている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】業務用の洗濯脱水機で
は、回転胴への洗濯物の出し入れを容易にするために、
洗濯物を水平方向の回転軸で片持ちで支持しているのが
普通である。回転胴の重量は回転軸の一端に作用するの
で、回転軸を支える２個のベアリングをある程度離して
配置しなければならないので回転軸が長くなり、従って
回転胴の貯留室に水を供給するための上記連通孔も長く
ならざるを得ないが、細長い孔の加工は非常に困難であ
る。またこの連通孔には回転継手を介して水を供給しな
ければならないが、シールが損傷した場合などに、モー
タや制御機を配置した機械内部に水漏れが生ずる危険が
ある。さらにこのようなバランス調整手段では１回の脱
水が終わった後、次の脱水を開始する前に貯留室の水を
抜いておかなければ、次の脱水時にバランスを取ること
ができなくなるが、そのための強制排出手段も設ける必
要があり、装置構造が複雑になるという問題がある。

【０００６】この発明はより簡易な構造で回転胴に設け
た貯留室にバランス用の液体を供給する技術手段を提供
することを課題としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この発明の回転胴のバラ
ンス調整装置は、回転胴１の円周上の当該円周を等分す
る位置に貯留室２を備え、この貯留室に液体を供給する
ことにより回転時における回転胴１のバランスを調整す
る装置において、回転胴と同心で一体的に回転する複数
の内径側が開放された液受リング３が前記貯留室２の数
に対応させて設けられ、これらの液受リングの内側には
先端を液受リング内に向けた回転しない給液ノズル４が
配置され、相対応する液受リング３と貯留室２とが連通
パイプ５で連通されているものである。

【０００８】複数の液受リング３は、同一径のものを回
転胴１の軸方向に並べて配置するのが良いが、径の異な
るものを半径方向に並べて配置することも可能である。
給液ノズル４は液受リング３の回転方向に向けて液体を
噴射するように斜めに向けて配置するのが液の飛散を防
止する点で好ましい。

【０００９】更に給液ノズル４を各液受リング３にそれ
ぞれ個別に設け、各給液ノズルの給液量を個別に制御す
る開閉弁６を設けるのが機械構造および制御を簡単にす
る点で好ましい。同一径の液受リングを回転胴１の軸方
向に並べて配置したときは、他の構造として、複数の液
受リングに液体を供給するための１個の給液ノズル４を
回転胴１の軸方向に移動自在に設ける構造が可能であ
る。

【００１０】回転胴１が水平軸回りに回転するときは、
給液ノズル４は液受リング３に向けて液体を流下する向
き、即ち下向きに配置され、回転胴１の回転開始後、液
受リング３部分における遠心力が１Ｇを超えた後のタイ
ミングにおいて、給液ノズル４から液受リング３に液体
を供給する。

【００１１】貯留室２は内容物の偏在方向が定まってい
るときは２個で良い場合もあり得るが、通常は３個以上
は必要であり、液受リング３も３個以上必要である。複
数個の貯留室を更に軸方向に分割して設けることもでき
る。一般的には貯留室１個に対し液受リング１個を対応
させるが、貯留室を６個以上の偶数個設けたときは、２
つの貯留室を１個の液受リングに対応させる構成を採用
することも可能である。貯留室２には好ましくは内径端
に空気抜孔７を設ける。この空気抜孔は回転胴が停止し
たときには液抜孔ともなる。洗濯脱水機の場合にはビー
タの内側を貯留室とするのが合理的である。

【００１２】複数の液受リング３は必ずしも同一径であ
る必要はないが、同一径とするのが合理的である。液受
リングの底すなわち外径は、貯留室２の内径端より小径
である。液受リング３から貯留室２へと繋がる連通パイ
プ５は放射方向に延び、より好ましくは回転に逆らう液
の慣性が液を貯留室側に誘導するように斜めに配置す
る。連通パイプ５を貯留室２の内径端に連通すると、回
転胴が停止したときまたはゆっくり回転しているとき
に、上方の貯留室２から液を排出する作用を受け持たせ
ることができる。

【００１３】給液ノズル４は各液受リング３に回転胴の
アンバランスを修正するのに必要な量の液体を供給す
る。液体の量は給液ノズルに繋がる管路に設けられた開
閉弁６によって制御される。複数の液受リング３のそれ
ぞれに給液ノズル４を配置し、各給液ノズル毎に設けた
開閉弁６で各貯留室２に供給する液体の量を制御でき
る。同一径の液受リングを軸方向に並べて配置したとき
は、１個の給液ノズルを軸方向に移動させることによ
り、液体を供給する液受リング、従って液体を供給する
貯留室を選択することができる。給液ノズル４を回転胴
の回転方向に斜めに配置すれば、給液ノズル４からの液
体が液受リング３の回転接線方向に噴射され、液体が液
受リング３の底面に衝突したときの液体の飛散を少なく
することができる。

【００１４】液受リング３への液体の供給は、液受リン
グに供給された液体が遠心力によって液受リングの外側
に押し付けられて、内側開口から流出するおそれがなく
なった後のタイミングで行われる。回転胴が水平軸まわ
りに回転するものでは、液受リング３の位置における遠
心力が１Ｇ以上になった後、好ましくは１．５〜２Ｇに
なったときに最初の供給が行われる。

【００１５】各液受リングに供給される液の量は、回転
を開始した回転胴のアンバランス量を検出することによ
り演算される。アンバランス量は、装置の振動を加速度
センサで検出することで行うことも可能であるが、リニ
アスケールや回転エンコーダで検出する手段がより簡単
である。回転胴の位相は回転胴１や回転軸８に設けた部
材を近接センサで検出することによって検出可能であ
り、位相と振幅からアンバランスの方向と量とを検出し
て、それを打ち消す量の液体を偏心方向と反対の側の貯
留室に供給する。回転胴の回転数が増加するにつれてア
ンバランスが顕在化したり、脱水機などでは収容物から
液が放出されることによってアンバランス量が減少した
りするので、バランスの調整は回転立上り時に複数回に
分けて行うのが好ましい。

【００１６】液受リング３は回転胴１に近接して設ける
ことができ、洗濯脱水機等においては、回転胴１が収容
される水槽内に設けることができる。従って液受リング
３から水が溢れ出したとしても、それが機械室や制御装
置内に流入することはない。また回転が終わった後回転
胴をゆっくりと回転すれば、各貯留室２内の液体は、当
該貯留室が上方に回動したとき、連通パイプ５を通って
液受リング３へと流れて排出され、また空気抜孔７から
も排出される。この排出は重力の作用によって自然に行
われ、何等特別の排出手段を設ける必要がない。

【００１７】

【発明の実施の形態】以下この発明を洗濯脱水機に採用
した例を図１ないし図３を参照して説明する。この例で
はバランス液体は水であるから、液受リングや給液ノズ
ルなどを水受リングや給水ノズルと言うこととする。

【００１８】図の洗濯脱水機の回転胴１は、水槽を形成
する外胴９に収容されており、外胴９には洗濯物を出し
入れするための開口１０が設けられている。この開口に
は図に想像線で示すような形状のドアが設けられる。回
転胴１の軸方向一側はこの開口１０部分で開口してお
り、他側に回転軸８が固定されている。回転軸８は外胴
９の後壁を貫通して延び、その背後に配置した２個のベ
アリング１１、１２でフレーム１３に軸支されている。
回転軸８の後端には、図示しない電動機から回転力を受
けるＶベルトプーリ１４が固定されている。

【００１９】回転胴１の外周にはその円周を三等分する
位置に断面三角形状のビータ１５が設けられており、こ
のビータの内側がバランス液体を貯留する貯留室２とな
っている。貯留室２の開口１０側の内径端には、空気抜
孔７が開口している。

【００２０】回転胴１の後壁外側には円筒状の部材とそ
の内側を仕切るリング状の板部材とによって３個の水受
リング３が形成されている。各水受リング３は同一径で
その中心軸は回転胴１の回転中心軸と一致しており、か
つ回転胴の後壁２４と外胴の後壁２５との間の空間に位
置している。各水受リング３は、略放射方向に延びる連
通パイプ５により、貯留室２と一対一の関係で連通して
いる。連通パイプ５は図２に示すように、回転胴１の回
転方向に対して外径側が後退するように斜めに延びて、
各貯留室２の背面側内径端に連通している。

【００２１】回転軸８の直下の回転軸８と水受リング３
との間には、３本の給水パイプ１７が配置されており、
各給水パイプの先端は、各水受リングの内側開口１６に
向いた給水ノズル４となっている。各給水ノズル４は、
図２に示すように、水受リング３の回転接線方向に斜め
に水を噴出するように配置されている。３本の給水パイ
プ１７は、それぞれの電磁開閉弁６を経て図示しない給
水源（ポンプ）へと繋がっている。

【００２２】回転軸８の中間部にはその円周一箇所に目
印部材１８が固定されており、近接センサ１９がこの目
印部材１８を検出することによって回転胴１の位相が検
出される。一方、図３に示すように、外胴９の一箇所に
ワイヤ２０の一端が固定され、当該ワイヤ２０はプーリ
２１に巻回された後、ばね２２を介して不動部材に連結
されている。プーリ２１は自由回転プーリでその回転軸
にエンコーダ２３が取り付けられている。

【００２３】回転胴１にアンバランスがあると、そのア
ンバランスが外胴９を振動させる。この振動はワイヤ２
０を周期的に引っ張り、プーリ２１を細かく往復回動さ
せる。プーリ２１の回動はエンコーダ２３で検出され
る。そしてエンコーダ２３で検出した変位と近接センサ
１９で検出した回転胴の位相とを基に、制御用コンピュ
ータで洗濯物の偏在に基づく回転胴１のアンバランス量
と方向とを演算して、各貯留室２に供給すべき水量を求
め、それに従って電磁開閉弁６を開閉する。給水ノズル
４から水受リング３へ流出した水は、遠心力と水の慣性
とにより速やかに対応する貯留室へと流れ、回転胴１の
アンバランスを修正する。

【００２４】前述したように、上記手順によるバランス
の調整は、回転胴１の回転が加速していく途中の段階で
複数回行われる。たとえば回転胴１の回転が１００ない
し１５０ｒｐｍに達したときに最初のバランス調整を行
い、次に２００〜２５０ｒｐｍに達した段階で２回目の
調整を行う。さらに回転胴１が定常回転に達した後も、
必要に応じてバランス調整を行うことができる。

【００２５】以上洗濯脱水機について説明したが、この
発明のバランス調整装置の適用は洗濯脱水機に限定され
るものではない。どのような機械であってもその回転胴
のバランスを調整するのに採用することができるが、バ
ランス液体として水を用いることができる点で、繊維製
品を初めとする各種収容物の遠心脱水装置に特に有効で
ある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明装置を採用した洗濯脱水機の断面側面図

【図２】図１のＡ−Ａ断面図

【図３】図１のＢ−Ｂ断面模式図

【符号の説明】

１ 回転胴 ２ 貯留室 ３ 水受けリング ４ 給水ノズル ５ 連通パイプ ６ 開閉弁

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 回転胴(1) の円周上の当該円周を等分す
   る位置に貯留室(2)を備え、この貯留室に液体を供給す
   ることにより回転時における回転胴(1) のバランスを調
   整する装置において、回転胴と同心で一体的に回転する
   複数の内径側が開放された液受リング(3) が前記貯留室
   (2) の数に対応させて設けられ、これらの液受リングの
   内側には先端を液受リング内に向けた回転しない給液ノ
   ズル(4) が配置され、相対応する液受リング(3) と貯留
   室(2) とが連通パイプ(5) で連通されていることを特徴
   とする、回転胴のバランス調整装置。
2. 【請求項２】 同一径の液受リング(3) が回転胴(1) の
   軸方向に並べて配置され、給液ノズル(4) は液受リング
   (3) の回転方向に向けて液体を噴射するように斜めに配
   置されていることを特徴とする、請求項１記載の回転胴
   のバランス調整装置。
3. 【請求項３】 各液受リング(3) にそれぞれ個別に給液
   ノズル(4) が設けられ、各給液ノズルの給液量を個別に
   制御する開閉弁(6) が設けられている、請求項１または
   ２記載の回転胴のバランス調整装置。
4. 【請求項４】 複数の液受リングに液体を供給するため
   の１個の給液ノズル(4) が回転胴(1) の軸方向に移動自
   在に設けられていることを特徴とする、請求項２記載の
   回転胴のバランス調整装置。
5. 【請求項５】 回転胴(1) が水平方向の回転軸を備え、
   給液ノズル(4) は液受リング(3) に向けて液体を流下す
   る向きに配置され、回転胴(1) の回転開始後、液受リン
   グ(3) 部分における遠心力が１Ｇを超えた後のタイミン
   グにおいて、給液ノズル(4) から液受リング(3) に液体
   を供給することを特徴とする、請求項１ないし４のいず
   れか１記載の回転胴のバランス調整装置。