JPH11166430A - 内燃機関 - Google Patents

内燃機関

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JPH11166430A
JPH11166430A JP9334273A JP33427397A JPH11166430A JP H11166430 A JPH11166430 A JP H11166430A JP 9334273 A JP9334273 A JP 9334273A JP 33427397 A JP33427397 A JP 33427397A JP H11166430 A JPH11166430 A JP H11166430A
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丈和 伊藤
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    • F02COMBUSTION ENGINES; HOT-GAS OR COMBUSTION-PRODUCT ENGINE PLANTS
    • F02DCONTROLLING COMBUSTION ENGINES
    • F02D41/00Electrical control of supply of combustible mixture or its constituents
    • F02D41/0002Controlling intake air
    • F02D2041/001Controlling intake air for engines with variable valve actuation
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T10/00Road transport of goods or passengers
    • Y02T10/10Internal combustion engine [ICE] based vehicles
    • Y02T10/40Engine management systems

Abstract

(57)【要約】 【課題】 機関から排出される未燃HCの量を必要時に
増大させる。 【解決手段】 燃焼室5内に燃料を噴射するための燃料
噴射弁6と、吸気弁7および排気弁9が共に開弁するバ
ルブオーバーラップ期間を制御するためのバルブオーバ
ーラップ期間制御用アクチュエータ47,48を具備す
る。機関から排気される未燃炭化水素量を増量すべきで
あると判断されたときにはバルブオーバーラップ期間を
長くすると共に少なくとも一部の燃料をバルブオーバー
ラップ期間中に噴射する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関においては機関から排出される
未燃炭化水素、即ち未燃HCの量を一時的に増量したい
場合がある。例えばリーン空燃比のもとで燃焼が行われ
る内燃機関の排気通路内に酸化機能を有する触媒を配置
した場合において触媒の温度が活性化温度以下に低下し
そうなときに機関から排出される未燃HCの量を一時的
に増量することができれば触媒の温度が上昇し、斯くし
て触媒の温度を活性化温度以上に維持することができ
る。
【0003】一方、常時一定量以上の未燃HCを機関か
ら排出させるために吸気弁と排気弁とが共に開弁するバ
ルブオーバーラップ時に燃焼室内に向けて燃料を噴射す
るようにしたディーゼル機関が公知である(特開平6−
159041号公報参照)。このディーゼル機関ではバ
ルブオーバーラップ時に吸気通路から燃焼室内を通って
排気通路内に吹き抜ける空気により噴射燃料の一部を常
時排気通路内に排出させるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところでこの場合、十
分な量の未燃HCを機関から排出させるには空気の吹き
抜け量を増大させなければならず、そのためにはバルブ
オーバーラップ期間を長くしなければならない。しかし
ながらバルブオーバーラップ期間を長くすれば機関の出
力が低下し、燃料消費量が大巾に増大する。従って機関
から排出される未燃HCの量を一時的に増大させるだけ
のためにバルブオーバーラップ期間を常に大きくしてお
くこともできない。
【0005】
【課題を解決するための手段】そこで1番目の発明で
は、燃焼室内に燃料を噴射するための燃料噴射弁と、吸
気弁および排気弁が共に開弁するバルブオーバーラップ
期間を制御するためのバルブオーバーラップ期間制御手
段と、機関から排出される未燃炭化水素量を増量すべき
か否かを判断する判断手段とを具備し、機関から排気さ
れる未燃炭化水素量を増量すべきであると判断されたと
きにはバルブオーバーラップ期間を長くすると共に少く
とも一部の燃料をバルブオーバーラップ期間中に噴射す
るようにしている。
【0006】2番目の発明では1番目の発明において、
機関排気通路内に酸化機能を有する触媒を配置し、触媒
の温度が活性化温度以下に低下しそうなときにバルブオ
ーバーラップ期間を長くすると共に少くとも一部の燃料
をバルブオーバーラップ期間中に噴射するようにしてい
る。3番目の発明では1番目の発明において、流入する
排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOx を吸収し、
流入する排気ガスの空燃比がリッチになるとNOxを放
出するNOx 吸収剤を機関排気通路内に配置し、NOx
吸収剤からNOx を放出すべきときにはバルブオーバー
ラップ期間を長くすると共に少くとも一部の燃料をバル
ブオーバーラップ期間中に噴射するようにしている。
【0007】4番目の発明では1番目の発明において、
燃焼室内の不活性ガス量を増大していくと煤の発生量が
次第に増大してピークに達し、燃焼室内の不活性ガス量
を更に増大していくと燃焼室内における燃焼時の燃料お
よびその周囲のガス温が煤の生成温度よりも低くなって
煤がほとんど発生しなくなる内燃機関において、煤の発
生量がピークとなる不活性ガス量よりも燃焼室内の不活
性ガス量が多く煤がほとんど発生しない第1の燃焼と、
煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも燃焼室内
の不活性ガス量が少ない第2の燃焼とを選択的に切換え
る切換手段を具備し、第2の燃焼が行われているときに
機関から排気される未燃炭化水素量を増量すべきである
と判断されたときにはバルブオーバーラップ期間を長く
すると共に少くとも一部の燃料をバルブオーバーラップ
期間中に噴射するようにしている。
【0008】
【発明の実施の形態】図1は本発明を4ストローク圧縮
着火式内燃機関に適用した場合を示している。図1を参
照すると、1は機関本体、2はシリンダブロック、3は
シリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は電気
制御式燃料噴射弁、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は
排気弁、10は排気ポートを夫々示す。吸気ポート8は
対応する吸気枝管11を介してサージタンク12に連結
され、サージタンク12は吸気ダクト13を介してエア
クリーナ14に連結される。吸気ダクト13内には電気
モータ15により駆動されるスロットル弁16が配置さ
れる。一方、排気ポート10は排気マニホルド17およ
び排気管18を介して酸化機能を有する触媒19を内蔵
した触媒コンバータ20に連結され、排気マニホルド1
7内には空燃比センサ21が配置される。
【0009】排気マニホルド17とサージタンク12と
は排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路22を介
して互いに連結され、EGR通路22内には電気制御式
EGR制御弁23が配置される。また、EGR通路22
周りにはEGR通路22内を流れるEGRガスを冷却す
るための冷却装置24が配置される。図1に示される実
施例では機関冷却水が冷却装置24内に導びかれ、機関
冷却水によってEGRガスが冷却される。
【0010】一方、各燃料噴射弁6は燃料供給管25を
介して燃料リザーバ、いわゆるコモンレール26に連結
される。このコモンレール26内へは電気制御式の吐出
量可変な燃料ポンプ27から燃料が供給され、コモンレ
ール26内に供給された燃料は各燃料供給管25を介し
て燃料噴射弁6に供給される。コモンレール26にはコ
モンレール26内の燃料圧を検出するための燃料圧セン
サ28が取付けられ、燃料圧センサ28の出力信号に基
づいてコモンレール26内の燃料圧が目標燃料圧となる
ように燃料ポンプ27の吐出量が制御される。
【0011】電子制御ユニット30はデジタルコンピュ
ータからなり、双方向性バス31によって互いに接続さ
れたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ラン
ダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッ
サ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備
する。空燃比センサ21の出力信号は対応するAD変換
器37を介して入力ポート35に入力され、燃料圧セン
サ28の出力信号も対応するAD変換器37を介して入
力ポート35に入力される。機関本体1には機関冷却水
温を検出するための温度センサ29が取付けられ、この
温度センサ29の出力信号は対応するAD変換器37を
介して入力ポート35に入力される。また、少なくとも
一つの吸気枝管11内には吸入空気とEGRガスとの混
合ガス温を検出するための温度センサ44が取付けら
れ、この温度センサ44の出力信号は対応するAD変換
器37を介して入力ポート35に入力される。
【0012】また、触媒19上流の排気通路内には触媒
19に流入する排気ガスの温度を検出するための温度セ
ンサ45が配置され、触媒19下流の排気通路内には触
媒19から流出した排気ガスの温度を検出するための温
度センサ46が配置される。これら温度センサ45,4
6の出力信号は対応するAD変換器37を介して入力ポ
ート35に入力される。
【0013】アクセルペダル40にはアクセルペダル4
0の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷セン
サ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応す
るAD変換器37を介して入力ポート35に入力され
る。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば
30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角セ
ンサ42が接続される。一方、吸気弁7には吸気弁7を
駆動するためのアクチュエータ47が取付けられ、排気
弁9には排気弁9を駆動するためのアクチュエータ48
が取付けられる。出力ポート36は対応する駆動回路3
8を介して燃料噴射弁6、電気モータ15、EGR制御
弁23、燃料ポンプ27およびアクチュエータ47,4
8に接続される。
【0014】図2(A)はアクチュエータ47の拡大図
を示している。図2(A)を参照すると、50は吸気弁
7の頂部に取付けられた円板状鉄片、51,52は鉄片
50の両側に配置されたソレノイド、53,54は鉄片
50の両側に配置された圧縮ばねを夫々示す。ソレノイ
ド52が付勢されると鉄片50が上昇し、吸気弁7が閉
弁する。これに対してソレノイド51が付勢されると鉄
片50が下降し、吸気弁7が開弁する。従って各ソレノ
イド51,52の付勢タイミングを制御することによっ
て吸気弁7を任意の時期に開弁し、閉弁することができ
る。アクチュエータ48も図2(A)に示すアクチュエ
ータ47と同様の構造を有しており、従って排気弁9も
任意の時期に開弁し、閉弁することができる。
【0015】図2(B)は吸気弁7と排気弁9のリフト
曲線を示している。なお、図2(B)において実線は吸
気弁7と排気弁9が共に開弁するバルブオーバーラップ
期間が比較的短かい場合を示しており、図2(B)にお
いて破線はバルブオーバーラップ期間が長くされた場合
を示している。吸気弁7および排気弁9を夫々アクチュ
エータ47,48により駆動することによって図2
(B)の実線および破線で示すようにバルブオーバーラ
ップ期間を容易に制御することができる。
【0016】ところで圧縮着火式内燃機関では従来より
例えば図1に示されるようなEGR通路を介して排気ガ
ス、即ちEGRガスを機関吸気通路内に再循環させるよ
うにしている。この場合、EGRガスは比較的比熱が高
く、従って多量の熱を吸収することができるので、EG
Rガス量を増大するほど、即ちEGR率(EGRガス量
/(EGRガス量+吸入空気量))を増大するほど燃焼
室内における燃焼温度が低下する。燃焼温度が低下する
とNOx の発生量が低下し、従ってEGR率を増大すれ
ばするほどNOx の発生量は低下することになる。
【0017】このように従来よりEGR率を増大すれば
NOx の発生量を低下しうることはわかっている。しか
しながらEGR率を増大させていくとEGR率が或る限
度を越えたときに煤の発生量、即ちスモークが急激に増
大し始める。この点に関し従来より、それ以上EGR率
を増大すればスモークが限りなく増大していくものと考
えられており、従ってスモークが急激に増大し始めるE
GR率がEGR率の最大許容限界であると考えられてい
る。
【0018】従って従来よりEGR率はこの最大許容限
界を越えない範囲内に定められている。このEGR率の
最大許容限界は機関の形式や燃料によってかなり異なる
がおおよそ30パーセントから50パーセントである。
従って従来のディーゼル機関ではEGR率は最大でも3
0パーセントから50パーセント程度に抑えられてい
る。
【0019】このように従来ではEGR率に対して最大
許容限界が存在すると考えられていたので従来よりEG
R率はこの最大許容限界を越えない範囲内においてNO
x およびスモークの発生量ができるだけ少なくなるよう
に定められていた。しかしながらこのようにしてEGR
率をNOx およびスモークの発生量ができるだけ少なく
なるように定めてもNOx およびスモークの発生量の低
下には限度があり、実際には依然としてかなりの量のN
Ox およびスモークが発生してしまうのが現状である。
【0020】ところが本発明者がディーゼル機関の燃焼
の研究の過程においてEGR率を最大許容限界よりも大
きくすれば上述の如くスモークが急激に増大するがこの
スモークの発生量にはピークが存在し、このピークを越
えてEGR率を更に大きくすると今度はスモークが急激
に減少しはじめ、アイドリング運転時においてEGR率
を70パーセント以上にすると、またEGRガスを強力
に冷却した場合にはEGR率をほぼ55パーセント以上
にするとスモークがほとんど零になる、即ち煤がほとん
ど発生しないことを見い出したのである。また、このと
きにはNOx の発生量が極めて少量となることも判明し
ている。次にこのことについて図3を参照しつつ説明す
る。
【0021】図3は機関低負荷運転時においてスロット
ル弁16の開度およびEGR率を変化させることにより
空燃比A/F(図3の横軸)を変化させたときの出力ト
ルクの変化、およびスモーク、HC,CO,NOx の排
出量の変化を示す実験例を表している。図3からわかる
ようにこの実験例では空燃比A/Fが小さくなるほどE
GR率が大きくなり、理論空燃比(≒14.6)以下の
ときにはEGR率は65パーセント以上となっている。
【0022】図3に示されるようにEGR率を増大する
ことにより空燃比A/Fを小さくしていくとEGR率が
40パーセント付近となり空燃比A/Fが30程度にな
ったときにスモークの発生量が増大を開始する。次い
で、更にEGR率を高め、空燃比A/Fを小さくすると
スモークの発生量が急激に増大してピークに達する。次
いで更にEGR率を高め、空燃比A/Fを小さくすると
今度はスモークが急激に低下し、EGR率を65パーセ
ント以上とし、空燃比A/Fが15.0付近になるとス
モークがほぼ零となる。即ち、煤がほとんど発生しなく
なる。このとき機関の出力トルクは若干低下し、またN
Ox の発生量がかなり低くなる。一方、このときHC,
COの発生量は増大し始める。
【0023】図4(A)は空燃比A/Fが18付近でス
モークの発生量が最も多いときの燃焼室5内の燃焼圧変
化を示しており、図4(B)は空燃比A/Fが13付近
でスモークの発生量がほぼ零のときの燃焼室5内の燃焼
圧の変化を示している。図4(A)と図4(B)とを比
較すればわかるようにスモークの発生量がほぼ零である
図4(B)に示す場合はスモークの発生量が多い図4
(A)に示す場合に比べて燃焼圧が低いことがわかる。
【0024】図3および図4に示される実験結果から次
のことが言える。即ち、まず第1に空燃比A/Fが1
5.0以下でスモークの発生量がほぼ零のときには図3
に示されるようにNOx の発生量がかなり低下する。N
Ox の発生量が低下したということは燃焼室5内の燃焼
温度が低下していることを意味しており、従って煤がほ
とんど発生しないときには燃焼室5内の燃焼温度が低く
なっていると言える。同じことが図4からも言える。即
ち、煤がほとんど発生していない図4(B)に示す状態
では燃焼圧が低くなっており、従ってこのとき燃焼室5
内の燃焼温度は低くなっていることになる。
【0025】第2にスモークの発生量、即ち煤の発生量
がほぼ零になると図3に示されるようにHCおよびCO
の排出量が増大する。このことは炭化水素が煤まで成長
せずに排出されることを意味している。即ち、燃料中に
含まれる図5に示されるような直鎖状炭化水素や芳香族
炭化水素は酸素不足の状態で温度上昇せしめられると熱
分解して煤の前駆体が形成され、次いで主に炭素原子が
集合した固体からなる煤が生成される。この場合、実際
の煤の生成過程は複雑であり、煤の前駆体がどのような
形態をとるかは明確ではないがいずれにしても図5に示
されるような炭化水素の煤の前駆体を経て煤まで成長す
ることになる。従って、上述したように煤の発生量がほ
ぼ零になると図3に示される如くHCおよびCOの排出
量が増大するがこのときのHCは煤の前駆体又はその前
の状態の炭化水素である。
【0026】図3および図4に示される実験結果に基づ
くこれらの考察をまとめると燃焼室5内の燃焼温度が低
いときには煤の発生量がほぼ零になり、このとき煤の前
駆体又はその前の状態の炭化水素が燃焼室5から排出さ
れることになる。このことについて更に詳細に実験研究
を重ねた結果、燃焼室5内における燃料およびその周囲
のガス温度が或る温度以下である場合には煤の成長過程
が途中で停止してしまい、即ち煤が全く発生せず、燃焼
室5内における燃料およびその周囲の温度が或る温度以
上になると煤が生成されることが判明したのである。
【0027】ところで煤の前駆体の状態で炭化水素の生
成過程が停止するときの燃料およびその周囲の温度、即
ち上述の或る温度は燃料の種類や空燃比や圧縮比等の種
々の要因によって変化するので何度であるかということ
は言えないがこの或る温度はNOx の発生量と深い関係
を有しており、従ってこの或る温度はNOx の発生量か
ら或る程度規定することができる。即ち、EGR率が増
大するほど燃焼時の燃料およびその周囲のガス温度は低
下し、NOx の発生量が低下する。このときNOx の発
生量が10p.p.m 前後又はそれ以下になったときに煤が
ほとんど発生しなくなる。従って上述の或る温度はNO
x の発生量が10p.p.m 前後又はそれ以下になったとき
の温度にほぼ一致する。
【0028】一旦、煤が生成されるとこの煤は酸化触媒
等を用いた後処理でもって浄化することはできない。こ
れに対して煤の前駆体又はその前の状態の炭化水素は酸
化触媒等を用いた後処理でもって容易に浄化することが
できる。このように酸化触媒等による後処理を考えると
炭化水素を煤の前駆体又はその前の状態で燃焼室5から
排出させるか、或いは煤の形で燃焼室5から排出させる
かについては極めて大きな差がある。本発明において用
いている新たな燃焼システムは燃焼室5内において煤を
生成させることなく炭化水素を煤の前駆体又はその前の
状態の形でもって燃焼室5から排出させ、この炭化水素
を酸化触媒等により酸化せしめることを核としている。
【0029】さて、煤が生成される前の状態で炭化水素
の成長を停止させるには燃焼室5内における燃焼時の燃
料およびその周囲のガス温度を煤が生成される温度より
も低い温度に抑制する必要がある。この場合、燃料およ
びその周囲のガス温度を抑制するには燃料が燃焼した際
の燃料周りのガスの吸熱作用が極めて大きく影響するこ
とが判明している。
【0030】即ち、燃料周りに空気しか存在しないと蒸
発した燃料はただちに空気中の酸素と反応して燃焼す
る。この場合、燃料から離れている空気の温度はさほど
上昇せず、燃料周りの温度のみが局所的に極めて高くな
る。即ち、このときには燃料から離れている空気は燃料
の燃焼熱の吸熱作用をほとんど行わない。この場合には
燃焼温度が局所的に極めて高くなるために、この燃焼熱
を受けた未燃炭化水素は煤を生成することになる。
【0031】一方、多量の不活性ガスと少量の空気の混
合ガス中に燃料が存在する場合には若干状況が異なる。
この場合には蒸発燃料は周囲に拡散して不活性ガス中に
混在する酸素と反応し、燃焼することになる。この場合
には燃料熱は周りの不活性ガスに吸収されるために燃焼
温度はさほど上昇しなくなる。即ち、燃焼温度を低く抑
えることができることになる。即ち、燃焼温度を抑制す
るには不活性ガスの存在が重要な役割を果しており、不
活性ガスの吸熱作用によって燃焼温度を低く抑えること
ができることになる。
【0032】この場合、燃料およびその周囲のガス温度
を煤が生成される温度よりも低い温度に抑制するにはそ
うするのに十分な熱量を吸収しうるだけの不活性ガス量
が必要となる。従って燃料量が増大すれば必要となる不
活性ガス量はそれに伴なって増大することになる。な
お、この場合、不活性ガスの比熱が大きいほど吸熱作用
は強力となり、従って不活性ガスは比熱の大きなガスが
好ましいことになる。この点、CO2 やEGRガスは比
較的比熱が大きいので不活性ガスとしてEGRガスを用
いることは好ましいと言える。
【0033】図6は不活性ガスとしてEGRガスを用
い、EGRガスの冷却度合を変えたときのEGR率とス
モークとの関係を示している。即ち、図6において曲線
AはEGRガスを強力に冷却してEGRガス温をほぼ9
0℃に維持した場合を示しており、曲線Bは小型の冷却
装置でEGRガスを冷却した場合を示しており、曲線C
はEGRガスを強制的に冷却していない場合を示してい
る。
【0034】図6の曲線Aで示されるようにEGRガス
を強力に冷却した場合にはEGR率が50パーセントよ
りも少し低いところで煤の発生量がピークとなり、この
場合にはEGR率をほぼ55パーセント以上にすれば煤
がほとんど発生しなくなる。一方、図6の曲線Bで示さ
れるようにEGRガスを少し冷却した場合にはEGR率
が50パーセントよりも少し高いところで煤の発生量が
ピークとなり、この場合にはEGR率をほぼ65パーセ
ント以上にすれば煤がほとんど発生しなくなる。
【0035】また、図6の曲線Cで示されるようにEG
Rガスを強制的に冷却していない場合にはEGR率が5
5パーセントの付近で煤の発生量がピークとなり、この
場合にはEGR率をほぼ70パーセント以上にすれば煤
がほとんど発生しなくなる。なお、図6は機関負荷が比
較的高いときのスモークの発生量を示しており、機関負
荷が小さくなると煤の発生量がピークとなるEGR率は
若干低下し、煤がほとんど発生しなくなるEGR率の下
限も若干低下する。このように煤がほとんど発生しなく
なるEGR率の下限はEGRガスの冷却度合や機関負荷
に応じて変化する。
【0036】図7は不活性ガスとしてEGRガスを用い
た場合において燃焼時の燃料およびその周囲のガス温度
を煤が生成される温度よりも低い温度にするために必要
なEGRガスと空気の混合ガス量、およびこの混合ガス
量中の空気の割合、およびこの混合ガス中のEGRガス
の割合を示している。なお、図7において縦軸は燃焼室
5内に吸入される全吸入ガス量を示しており、鎖線Yは
過給が行われないときに燃焼室5内に吸入しうる全吸入
ガス量を示している。また、横軸は要求負荷を示してお
り、Z1は低負荷運転領域を示している。
【0037】図7を参照すると空気の割合、即ち混合ガ
ス中の空気量は噴射された燃料を完全に燃焼せしめるの
に必要な空気量を示している。即ち、図7に示される場
合では空気量と噴射燃料量との比は理論空燃比となって
いる。一方、図7においてEGRガスの割合、即ち混合
ガス中のEGRガス量は噴射燃料が燃焼せしめられたと
きに燃料およびその周囲のガス温度を煤が形成される温
度よりも低い温度にするのに必要最低限のEGRガス量
を示している。このEGRガス量はEGR率で表すとほ
ぼ55パーセントであり、図7に示す実施例では70パ
ーセント以上である。即ち、燃焼室5内に吸入された全
吸入ガス量を図7において実線Xとし、この全吸入ガス
量Xのうちの空気量とEGRガス量との割合を図7に示
すような割合にすると燃料およびその周囲のガス温度は
煤が生成される温度よりも低い温度となり、斯くして煤
が全く発生しなくなる。また、このときのNOx 発生量
は10p.p.m 前後、又はそれ以下であり、従ってNOx
の発生量は極めて少量となる。
【0038】燃料噴射量が増大すれば燃料が燃焼した際
の発熱量が増大するので燃料およびその周囲のガス温度
を煤が生成される温度よりも低い温度に維持するために
はEGRガスによる熱の吸収量を増大しなければならな
い。従って図7に示されるようにEGRガス量は噴射燃
料量が増大するにつれて増大せしめなければならない。
即ち、EGRガス量は要求負荷が高くなるにつれて増大
する必要がある。
【0039】一方、図7の負荷領域Z2では煤の発生を
阻止するのに必要な全吸入ガス量Xが吸入しうる全吸入
ガス量Yを越えてしまう。従ってこの場合、煤の発生を
阻止するのに必要な全吸入ガス量Xを燃焼室5内に供給
するにはEGRガスおよび吸入空気の双方、或いはEG
Rガスを過給又は加圧する必要がある。EGRガス等を
過給又は加圧しない場合には負荷領域Z2では全吸入空
気量Xは吸入しうる全吸入空気量Yに一致する。従って
この場合、煤の発生を阻止するためには空気量を若干減
少させてEGRガス量を増大すると共に空燃比がリッチ
のもとで燃料を燃焼せしめることになる。
【0040】前述したように図7は燃料は理論空燃比の
もとで燃焼させる場合を示しているが図7に示される低
負荷運転領域Z1において空気量を図7に示される空気
量よりも少なくても、即ち空燃比をリッチにしても煤の
発生を阻止しつつNOx の発生量を10p.p.m 前後又は
それ以下にすることができ、また図7に示される低負荷
領域Z1において空気量を図7に示される空気量よりも
多くしても、即ち空燃比の平均値を17から18のリー
ンにしても煤の発生を阻止しつつNOx の発生量を10
p.p.m 前後又はそれ以下にすることができる。
【0041】即ち、空燃比がリッチにされると燃料が過
剰となるが燃焼温度が低い温度に抑制されているために
過剰な燃料は煤まで成長せず、斯くして煤が生成される
ことがない。また、このときNOx も極めて少量しか発
生しない。一方、平均空燃比がリーンのとき、或いは空
燃比が理論空燃比のときでも燃焼温度が高くなれば少量
の煤が生成されるが本発明では燃焼温度が低い温度に抑
制されているので煤は全く生成されない。更に、NOx
も極めて少量しか発生しない。
【0042】このように、機関低負荷運転領域Z1では
空燃比にかかわらずに、即ち空燃比がリッチであろう
と、理論空燃比であろうと、或いは平均空燃比がリーン
であろうと煤が発生されず、NOx の発生量が極めて少
量となる。従って燃料消費率の向上を考えるとこのとき
平均空燃比をリーンにすることが好ましいと言える。と
ころで燃焼室内における燃焼時の燃料およびその周囲の
ガス温度を炭化水素の成長が途中で停止する温度以下に
抑制しうるのは燃焼による発熱量が少ない比較的機関負
荷が低いときに限られる。従って本発明では機関負荷が
比較的低いときには燃焼時の燃料およびその周囲のガス
温度を炭化水素の成長が途中で停止する温度以下に抑制
して第1の燃焼、即ち低温燃焼を行うようにし、機関負
荷が比較的高いときには第2の燃焼、即ち従来より普通
に行われている燃焼を行うようにしている。なお、ここ
で第1の燃焼、即ち低温燃焼とはこれまでの説明から明
らかなように煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よ
りも燃焼室内の不活性ガス量が多く煤がほとんど発生し
ない燃焼のことを云い、第2の燃焼、即ち従来より普通
に行われている燃焼とは煤の発生量がピークとなる不活
性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量が少ない燃焼の
ことを云う。
【0043】図8(A)の実線は第1の燃焼が行われた
ときの燃焼室5内の平均ガス温Tgとクランク角との関
係を示しており、図8(A)の鎖線は第2の燃焼が行わ
れたときの燃焼室5内の平均ガス温Tgとクランク角と
の関係を示している。また、図8(B)の実線は第1の
燃焼が行われたときの燃料およびその周囲のガス温Tf
とクランク角との関係を示しており、図8(B)の破線
は第2の燃焼が行われたときの燃料およびその周囲のガ
ス温Tfとクランク角との関係を示している。
【0044】第1の燃焼、即ち低温燃焼が行われている
ときには第2の燃焼、即ち従来の普通の燃焼が行われて
いるときに比べてEGRガス量が多く、従って図8
(A)に示されるように圧縮上死点前は、即ち圧縮行程
中は実線で示す第1の燃焼時における平均ガス温Tgの
ほうが破線で示す第2の燃焼時における平均ガス温Tg
よりも高くなっている。なお、このとき図8(B)に示
されるように燃料およびその周囲のガス温Tfは平均ガ
ス温Tgとほぼ同じ温度になっている。
【0045】次いで圧縮上死点付近において燃焼が開始
されるがこの場合、第1の燃焼が行われているときには
図8(B)の実線で示されるように燃焼およびその周囲
のガス温Tfはさほど高くならない。これに対して第2
の燃焼が行われている場合には図8(B)の破線で示さ
れるように燃料およびその周囲のガス温Tfは極めて高
くなる。このように第2の燃焼が行われた場合には燃料
およびその周囲のガス温Tfは第1の燃焼が行われてい
る場合に比べてかなり高くなるが大部分を占めるそれ以
外のガスの温度は第1の燃焼が行われている場合に比べ
て第2の燃焼が行われている場合の方が低くなってお
り、従って図8(A)に示されるように圧縮上死点付近
における燃焼室5内の平均ガス温Tgは第1の燃焼が行
われている場合の方が第2の燃焼が行われている場合に
比べて高くなる。その結果、図8(A)に示されるよう
に燃焼が完了した後の、即ち膨張行程の後半における燃
焼室5内の平均ガス温Tgは、云い換えると燃焼室5内
の既燃ガス温は第1の燃焼が行われた場合の方が第2の
燃焼が行われた場合に比べて高くなる。
【0046】このように第1の燃焼、即ち低温燃焼が行
われた場合には第2の燃焼が行われた場合に比べて燃焼
時における燃料およびその周囲のガス温Tfはかなり低
くなるが燃焼室5内の既燃ガスは第2の燃焼が行われた
場合に比べて逆に高くなり、従って燃焼室5から排出さ
れる排気ガスの温度も第2の燃焼が行われている場合に
比べて高くなる。
【0047】図9は第1の燃焼、即ち低温燃焼が行われ
る第1の運転領域Iと、第2の燃焼、即ち従来の燃焼方
法による燃焼が行われる第2の燃焼領域IIとを示してい
る。なお、図9において縦軸Lはアクセルペダル40の
踏込み量、即ち要求負荷を示しており、横軸Nは機関回
転数を示している。また、図9においてX(N)は第1
の運転領域Iと第2の運転領域IIとの第1の境界を示し
ており、Y(N)は第1の運転領域Iと第2の運転領域
IIとの第2の境界を示している。第1の運転領域Iから
第2の運転領域IIへの運転領域の変化判断は第1の境界
X(N)に基づいて行われ、第2の運転領域IIから第1
の運転領域Iへの運転領域の変化判断は第2の境界Y
(N)に基づいて行われる。
【0048】即ち、機関の運転状態が第1の運転領域I
にあって低温燃焼が行われているときに要求負荷Lが機
関回転数Nの関数である第1の境界X(N)を越えると
運転領域が第2の運転領域IIに移ったと判断され、従来
の燃焼方法による燃焼が行われる。次いで要求負荷Lが
機関回転数Nの関数である第2の境界Y(N)よりも低
くなると運転領域が第1の運転領域Iに移ったと判断さ
れ、再び低温燃焼が行われる。
【0049】なお、本発明による実施例では第2の境界
Y(N)は第1の境界X(N)に対してΔL(N)だけ
低負荷側とされる。図9および図10に示されるように
ΔL(N)は機関回転数Nの関数であり、ΔL(N)は
機関回転数Nが高くなるほど小さくなる。ところで機関
の運転状態が第1の運転領域Iにあって低温燃焼が行わ
れているときには煤はほとんど発生せず、その代り未燃
炭化水素が煤の前駆体又はその前の状態の形でもって燃
焼室5から排出される。このとき燃焼室5から排出され
た未燃炭化水素は酸化機能を有する触媒19により酸化
せしめられる。
【0050】触媒19としては酸化触媒、三元触媒、又
はNOx 吸収剤を用いることができる。NOx 吸収剤は
燃焼室5内における平均空燃比がリーンのときにNOx
を吸収し、燃焼室5内における平均空燃比がリッチにな
るとNOx を放出する機能を有する。このNOx 吸収剤
は例えばアルミナを担体とし、この担体上に例えばカリ
ウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCs
のようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCa
のようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムY
のような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金P
tのような貴金属とが担持されている。
【0051】酸化触媒はもとより、三元触媒およびNO
x 吸収剤も酸化機能を有しており、従って上述した如く
三元触媒およびNOx 吸収剤を触媒19として用いるこ
とができる。触媒19は触媒19の温度が或る一定温度
を越えると活性化する。触媒19が活性化する温度は触
媒19の種類により異なり、代表的な酸化触媒の活性化
温度は350℃程度である。触媒19を通過した排気ガ
スの温度は触媒19の温度よりもわずかな一定温度だけ
低くなり、従って触媒19を通過した排気ガス温は触媒
19の温度を代表している。従って本発明による一実施
例では触媒19を通過した排気ガスの温度から触媒19
が活性化したか否かを判断するようにしている。
【0052】図11は空燃比センサ21の出力を示して
いる。図11に示されるように空燃比センサ21の出力
電流Iは空燃比A/Fに応じて変化する。従って空燃比
センサ21の出力電流Iから空燃比を知ることができ
る。次に図12を参照しつつ第1の運転領域Iおよび第
2の運転領域IIにおける運転制御について概略的に説明
する。図12は要求負荷Lに対するスロットル弁16の
開度、EGR制御弁23の開度、EGR率、空燃比、噴
射時期および噴射量を示している。図12に示されるよ
うに要求負荷Lの低い第1の運転領域Iではスロットル
弁16の開度は要求負荷Lが高くなるにつれて全閉近く
から半開程度まで徐々に増大せしめられ、EGR制御弁
23の開度は要求負荷Lが高くなるにつれて全閉近くか
ら全開まで徐々に増大せしめられる。また、図12に示
される例では第1の運転領域IではEGR率がほぼ70
パーセントとされており、空燃比は15から18のリー
ン空燃比とされている。
【0053】云い換えると第1の運転領域IではEGR
率がほぼ70パーセントとなり、空燃比が15から18
のリーン空燃比となるようにスロットル弁16の開度お
よびEGR制御弁23の開度が制御される。なお、この
とき空燃比は空燃比センサ21の出力信号に基づいてE
GR制御弁23の開度を補正することによって目標リー
ン空燃比に制御される。また、第1の運転領域Iでは圧
縮上死点TDC前に燃料噴射が行われる。この場合、噴
射開始時期θSは要求負荷Lが高くなるにつれて遅くな
り、噴射完了時期θEも噴射開始時期θSが遅くなるに
つれて遅くなる。
【0054】なお、アイドリング運転時にはスロットル
弁16は全閉近くまで開弁され、このときEGR制御弁
23も全閉近くまで閉弁せしめられる。スロットル弁1
6を全閉近くまで閉弁すると圧縮始めの燃焼室5内の圧
力が低くなるために圧縮圧力が小さくなる。圧縮圧力が
小さくなるとピストン4による圧縮仕事が小さくなるた
めに機関本体1の振動が小さくなる。即ち、アイドリン
グ運転時には機関本体1の振動を抑制するためにスロッ
トル弁16が全閉近くまで閉弁せしめられる。
【0055】機関の運転状態が第1の運転領域Iである
ときには煤およびNOx はほとんど発生せず、排気ガス
中に含まれている煤の前駆体又はその前の状態の炭化水
素は触媒19により酸化せしめられる。一方、機関の運
転領域が第1の運転領域Iから第2の運転領域IIに変わ
るとスロットル弁16の開度が半開状態から全開方向へ
ステップ状に増大せしめられる。このとき図9に示す例
ではEGR率がほぼ70パーセントから40パーセント
以下までステップ状に減少せしめられ、空燃比がステッ
プ状に大きくされる。即ち、EGR率が多量のスモーク
を発生するEGR率範囲(図6)を飛び越えるので機関
の運転領域が第1の運転領域Iから第2の運転領域IIに
変わるときに多量のスモークが発生することがない。
【0056】第2の運転領域IIでは従来から行われてい
る燃焼が行われる。この燃焼方法では煤およびNOx が
若干発生するが低温燃焼に比べて熱効率は高く、従って
機関の運転領域が第1の運転領域Iから第2の運転領域
IIに変わると図12に示されるように噴射量がステップ
状に低減せしめられる。第2の運転領域IIではスロット
ル弁16は一部を除いて全開状態に保持され、EGR制
御弁23の開度は要求負荷Lが高くなると次第に小さく
される。この運転領域IIではEGR率は要求負荷Lが高
くなるほど低くなり、空燃比は要求負荷Lが高くなるほ
ど大きくなる。ただし、空燃比は要求負荷Lが高くなっ
てもリーン空燃比とされる。また、第2の運転領域IIで
は噴射開始時期θSは圧縮上死点TDC付近とされる。
【0057】ところで低温燃焼しうる第1の運転領域I
の範囲は圧縮始めにおける燃焼室5内のガス温およびシ
リンダ内壁面温度に応じて変化する。即ち、要求負荷が
高くなって燃焼による発熱量が増大すると、燃焼時にお
ける燃料およびその周囲のガス温が高くなり、斯くして
低温燃焼を行うことができなくなる。一方、圧縮始めの
燃焼室5内のガス温TGが低くなると燃焼が開始される
直前の燃焼室5内のガス温が低くなるので燃焼時におけ
る燃料およびその周囲のガス温が低くなる。従って圧縮
始めの燃焼室5内のガス温TGが低くなれば燃焼による
発熱量が増大しても、即ち要求負荷が高くなっても燃焼
時における燃料およびその周囲のガス温は高くならず、
斯くして低温燃焼が行われることになる。云い換えると
圧縮始めの燃焼室5内のガス温TGが低くなればなるほ
ど低温燃焼しうる第1の運転領域Iが高負荷側に拡大す
ることになる。
【0058】また、シリンダ内壁面温度TWと圧縮始め
の燃焼室5内のガス温TGとの温度差(TW−TG)が
小さいほど圧縮行程中にシリンダ内壁面を介して逃げる
熱量が増大する。従ってこの温度差(TW−TG)が小
さくなるほど圧縮行程中における燃焼室5内のガスの温
度上昇量が少なくなり、斯くして燃焼時における燃料お
よびその周囲のガス温が低くなる。従って温度差(TW
−TG)が小さいほど低温燃焼しうる第1の運転領域I
が高負荷側に拡大することになる。
【0059】本発明による実施例では圧縮始めにおける
燃焼室5内のガス温TGが低くなると図13に示される
ように第1の境界がXo(N)からX(N)に移動せし
められ、温度差(TW−TG)が小さくなると図13に
示されるように第1の境界がXo(N)からX(N)に
移動せしめられる。なお、ここでXo(N)は基準とな
る第1の境界を示している。基準となる第1の境界Xo
(N)は機関回転数Nの関数であり、X(N)はこのX
o(N)を用いて次式に基づいて計算される。
【0060】 X(N)=Xo(N)+K(T)・K(N) K(T)=K(T)1 +K(T)2 ここでK(T)1 は図14(A)に示されるように圧縮
始めにおける燃焼室5内のガス温TGの関数であり、こ
のK(T)1 の値は圧縮始めにおける燃焼室5内のガス
温TGが低くなるほど大きくなる。また、K(T)2
図14(B)に示されるように温度差(TW−TG)の
関数であり、このK(T)2 の値は温度差(TW−T
G)が小さくなるほど大きくなる。なお、図14(A)
および図14(B)においてT1 は基準温度、T2 は基
準温度差であり、TG=T1 でかつ(TW−TG)=T
2 のときに第1の境界が図13のXo(N)となる。
【0061】一方、K(N)は図14(C)に示される
ように機関回転数Nの関数であり、K(N)の値は機関
回転数Nが高くなるほど小さくなる。即ち、圧縮始めに
おける燃焼室5内のガス温TGが基準温度T1 よりも低
くなると圧縮始めにおける燃焼室5内のガス温TGが低
くなるほど第1の境界X(N)はXo(N)に対して高
負荷側に移動し、温度差(TW−TG)が基準温度差T
2 よりも低くなると温度差(TW−TG)が小さくなる
ほど第1の境界X(N)はXo(N)に対して高負荷側
に移動する。また、Xo(N)に対するX(N)の移動
量は機関回転数Nが高くなるほど少なくなる。
【0062】図15(A)は第1の境界が基準となる第
1の境界Xo(N)であるときの第1の運転領域Iにお
ける空燃比A/Fを示している。図15(A)におい
て、A/F=15,A/F=16,A/F=17で示さ
れる各曲線は夫々空燃比が15,16,17であるとき
を示しており、各曲線間の空燃比は比例配分により定め
られる。図15(A)に示されるように第1の運転領域
Iでは空燃比がリーンとなっており、更に第1の運転領
域Iでは要求負荷Lが低くなるほど空燃比A/Fがリー
ンとされる。
【0063】即ち、要求負荷Lが低くなるほど燃焼によ
る発熱量が少なくなる。従って要求負荷Lが低くなるほ
どEGR率を低下させても低温燃焼を行うことができ
る。EGR率を低下させると空燃比は大きくなり、従っ
て図15(A)に示されるように要求負荷Lが低くなる
につれて空燃比A/Fが大きくされる。空燃比A/Fが
大きくなるほど燃料消費率は向上し、従ってできる限り
空燃比をリーンにするために本発明による実施例では要
求負荷Lが低くなるにつれて空燃比A/Fが大きくされ
る。
【0064】図15(B)は第1の境界が図13に示さ
れるX(N)のときの第1の運転領域Iにおける空燃比
A/Fを示している。図15(A)および(B)を比較
するとわかるように第1の境界X(N)がXo(N)に
対して高負荷側に移動するとそれに追従して各空燃比を
示すA/F=15,A/F=16,A/F=17の曲線
も高負荷側に移動する。従って第1の境界X(N)がX
o(N)に対して高負荷側に移動すると同一要求負荷L
および同一機関回転数Nにおける空燃比A/Fが大きく
なることがわかる。即ち、第1の運転領域Iが高負荷側
に拡大せしめられると煤およびNOx のほとんど発生し
ない運転領域が拡大されるばかりでなく、燃料消費率が
向上せしめられることになる。
【0065】本発明による実施例では第1の境界X
(N)が種々に変化したときの第1の運転領域Iにおけ
る目標空燃比、即ち種々のK(T)の値に対する第1の
運転領域Iにおける目標空燃比が図16(A)から図1
6(D)に示されるように要求負荷Lおよび機関回転数
Nの関数としてマップの形で予めROM32内に記憶さ
れている。即ち、図16(A)はK(T)の値がKT1
のときの目標空燃比AFKT1を示しており、図16
(B)はK(T)の値がKT2のときの目標空燃比AF
KT2を示しており、図16(C)はK(T)の値がK
T3のときの目標空燃比AFKT3を示しており、図1
6(D)はK(T)の値がKT4のときの目標空燃比A
FKT4を示している。
【0066】一方、空燃比を目標空燃比AFKT1,A
FKT2,AFKT3,AFKT4とするのに必要なス
ロットル弁16の目標開度が図17(A)から図17
(D)に示されるように要求負荷Lおよび機関回転数N
の関数としてマップの形で予め定めROM32内に記憶
されており、また空燃比を目標空燃比AFKT1,AF
KT2,AFKT3,AFKT4とするのに必要なEG
R制御弁23の目標基本開度が図18(A)から図18
(D)に示されるように要求負荷Lおよび機関回転数N
の関数としてマップの形で予めROM32内に記憶され
ている。
【0067】即ち、図17(A)は空燃比が15のとき
のスロットル弁16の目標開度ST15を示しており、
図18(A)は空燃比が15のときのEGR制御弁23
の目標基本開度SE15を示している。また、図17
(B)は空燃比が16のときのスロットル弁16の目標
開度ST16を示しており、図18(B)は空燃比が1
6のときのEGR制御弁23の目標基本開度SE16を
示している。
【0068】また、図17(C)は空燃比が17のとき
のスロットル弁16の目標開度ST17を示しており、
図18(C)は空燃比が17のときのEGR制御弁23
の目標基本開度SE17を示している。また、図17
(D)は空燃比が18のときのスロットル弁16の目標
開度ST18を示しており、図18(D)は空燃比が1
8のときのEGR制御弁23の目標基本開度SE18を
示している。
【0069】図19は第2の燃焼、即ち従来の燃焼方法
による普通の燃焼が行われるときの目標空燃比を示して
いる。なお、図19においてA/F=24,A/F=3
5,A/F=45,A/F=60で示される各曲線は夫
々目標空燃比24,35,45,60を示している。空
燃比をこの目標空燃比とするのに必要なスロットル弁1
6の目標開度STが図20(A)に示されるように要求
負荷Lおよび機関回転数Nの関数としてマップの形で予
めROM32内に記憶されており、空燃比をこの目標空
燃比とするのに必要なEGR制御弁23の目標開度SE
が図20(B)に示されるように要求負荷Lおよび機関
回転数Nの関数としてマップの形で予めROM32内に
記憶されている。
【0070】次に触媒19としてNOx 吸収剤を用いた
場合を例にとって本発明の具体的な実施例について説明
する。前述したように第1の燃焼、即ち低温燃焼が行わ
れているときには機関から多量の未燃HC,COが排出
され、これら未燃HC,COはNOx 吸収剤19により
酸化せしめられる。低温燃焼が行われているときには前
述したように排気ガス温が高く、また多量の未燃HC,
COが排出されるために多量の酸化反応熱が発生し、斯
くして低温燃焼が行われているときにはNOx 吸収剤1
9は通常、活性化温度以上に維持される。
【0071】これに対して第2の燃焼が行われていると
きには前述したように排気ガス温が低く、また未燃H
C,COの排出量も少ないためにほとんど酸化反応熱が
発生しない。従って第2の燃焼が行われているときには
NOx 吸収剤19の温度が活性化温度以下まで低下する
危険性がある。これは触媒19として酸化触媒或いは三
元触媒を用いたときでも同様である。
【0072】そこで本発明による実施例では第2の燃焼
が行われているときにNOx 吸収剤19の温度が活性化
温度以下に低下しそうになったら図21に示されるよう
にバルブオーバーラップ期間を長くすると共に、第1回
目の燃料噴射Q1 をバルブオーバーラップ期間中に、第
2回目の燃料噴射Q2 を圧縮上死点付近で行うようにし
ている。
【0073】即ち、内燃機関においては排気弁9が開弁
すると排気ポート10内は一時的に正圧となり、次いで
この正圧波は下流側に向け伝播して例えばマニホルド集
合部で負圧波の形で反射し、この負圧波は今度は上流側
に向け伝播し、その結果排気弁9が閉弁する直前に排気
ポート10内には負圧が発生する。その結果、バルブオ
ーバーラップ時に吸気ポート10から燃焼室5内に供給
された空気の一部はこの負圧によって排気ポート10内
に吹き抜け、このときの吹き抜け量はバルブオーバーラ
ップ期間が長くなるほど増大する。
【0074】従って図21に示すようにバルブオーバー
ラップ期間を長くすると共に第1回目の燃焼噴射Q1
バルブオーバーラップ期間中に行うと多量の未燃HCが
吹き抜け空気と共に排気ポート10内に排出される。こ
の未燃HCはNOx 吸収剤19において酸化せしめら
れ、そのときの酸化反応熱でもってNOx 吸収剤19の
温度が上昇せしめられる。従ってNOx 吸収剤19の温
度が活性化温度以下に低下するのが阻止されることにな
る。なお、このときNOx 吸収剤19に流入する排気ガ
スの空燃比は例えば15から18程度のリーンとされる
がこのとき空燃比をリッチにしてもかまわない。即ち、
NOx 吸収剤19上にはもともと排気ガス中の過剰酸素
が吸着しているのでNOx 吸収剤19に流入する排気ガ
スの空燃比がリッチにされてもただちに酸化反応が生ず
るからである。
【0075】第1回目の燃料噴射Q1 のうちの一部の燃
料は燃焼室5内に残り、従ってこの場合にはビゴム噴射
を行ったときと同じような形となる。機関から多量の未
燃HCを排出させる必要のないときには機関出力を向上
するためにバルブオーバーラップ期間は短かくされ、燃
料噴射は圧縮上死点付近において一回だけ行われる。一
方、機関吸気通路およびNOx 吸収剤19上流の排気通
路内に供給された空気および燃料(炭化水素)の比をN
Ox 吸収剤19への流入排気ガスの空燃比と称するとN
Ox 吸収剤19は流入排気ガスの空燃比がリーンのとき
にはNOx を吸収し、流入排気ガスの空燃比が理論空燃
比又はリッチになると吸収したNOxを放出するNOx
の吸放出作用を行う。
【0076】NOx 吸収剤19を機関排気通路内に配置
すればこのNOx 吸収剤19は実際にNOx の吸放出作
用を行うがこの吸放出作用の詳細なメカニズムについて
は明らかでない部分もある。しかしながらこの吸放出作
用は図22に示すようなメカニズムで行われているもの
と考えられる。次にこのメカニズムについて担体上に白
金PtおよびバリウムBaを担持させた場合を例にとっ
て説明するが他の貴金属、アルカリ金属、アルカリ土
類、希土類を用いても同様なメカニズムとなる。
【0077】図1に示される圧縮着火式内燃機関では空
燃比がリーンの状態で燃焼が行われる。このように空燃
比がリーンの状態で燃焼が行われている場合には排気ガ
ス中の酸素濃度は高く、このときには図22(A)に示
されるようにこれら酸素O2がO2 - 又はO2-の形で白
金Ptの表面に付着する。一方、流入排気ガス中のNO
は白金Ptの表面上でO2 - 又はO2-と反応し、NO2
となる(2NO+O2→2NO2 )。次いで生成された
NO2 の一部は白金Pt上で酸化されつつ吸収剤内に吸
収されて酸化バリウムBaOと結合しながら図22
(A)に示されるように硝酸イオンNO3 - の形で吸収
剤内に拡散する。このようにしてNOx がNOx 吸収剤
19内に吸収される。流入排気ガス中の酸素濃度が高い
限り白金Ptの表面でNO2 が発生され、吸収剤のNO
x 吸収能力が飽和しない限りNO2 が吸収剤内に吸収さ
れて硝酸イオンNO3 - が生成される。
【0078】一方、空燃比がリッチにされ、流入排気ガ
ス中の酸素濃度が低下してNO2 の生成量が低下すると
反応が逆方向(NO3 - →NO2 )に進み、斯くして吸
収剤内の硝酸イオンNO3 - がNO2 の形で吸収剤から
放出される。このときNOx吸収剤19から放出された
NOx は図22(B)に示されるように流入排気ガス中
に含まれる多量の未燃HC,COと反応して還元せしめ
られる。このようにして白金Ptの表面上にNO2 が存
在しなくなると吸収剤から次から次へとNO2が放出さ
れる。従って空燃比がリッチにされると短時間のうちに
NOx 吸収剤19からNOx が放出され、しかもこの放
出されたNOx が還元されるために大気中にNOx が排
出されるのを阻止することができることになる。
【0079】そこで本発明による実施例では第1の燃焼
が行われているときにNOx 吸収剤19からNOx を放
出すべきときには空燃比がリッチされる。これに対して
第2の燃焼が行われているときにNOx 吸収剤19から
NOx を放出すべきときにはバルブオーバーラップ期間
が長くされ、排気ガスの空燃比がリッチとなるように第
1回目の燃焼噴射Q1 がバルブオーバーラップ期間中に
行われる。
【0080】図23は要求負荷Lと、NOx 吸収剤19
下流の排気ガス温TEと、NOx 吸収剤19に吸収され
ている推定NOx 量ΣNOx と、排気ガスの空燃比A/
Fとを示している。図23に示されるように第1の燃焼
が行われているときに推定NOx 量ΣNOx が許容最大
値MAXを越えると燃焼室5内における空燃比がリッチ
とれさ、そによって排気ガスの空燃比A/Fがリッチと
される。このときNOx 吸収剤19からNOx が放出さ
れる。
【0081】次いで第2の燃焼が行われているときにN
Ox 吸収剤19下流の排気ガス温TEが一定値、例えば
300℃まで低下したとするとバルブオーバーラップ期
間が長くされると共に、例えば排気ガスの空燃比が1
7.0となるように第1回目の燃料噴射Q1 がバルブオ
ーバーラップ期間中に行われる。このとき、NOx 吸収
剤19の温度が上昇せしめられる。
【0082】次いで第2の燃焼が行われているときに推
定NOx 量ΣNOx が許容最大値MAXを越えるとバル
ブオーバーラップ期間が長くされると共に、例えば排気
ガスの空燃比がリッチとなるように第1回目の燃料噴射
1 がバルブオーバーラップ期間中に行われる。このと
きNOx 吸収剤19からNOx が放出される。図24は
低温燃焼領域、即ち第1の運転領域Iを制御するための
ルーチンを示している。
【0083】図24を参照すると、まず初めにステップ
100において圧縮始めにおける燃焼室5内のガス温T
Gおよびシリンダ内壁面温度TWが算出される。この実
施例では温度センサ44により検出された吸入空気とE
GRガスの混合ガス温が圧縮始めにおける燃焼室5内の
ガス温TGとされ、温度センサ29により検出された機
関冷却水温がシリンダ内壁面温度TWとされる。次いで
ステップ101では図14(A)に示す関係からK
(T)1 が求められ、図14(B)に示す関係からK
(T)2 が求められ、これらK(T)1 とK(T)2
を加算することによってK(T)(=K(T)1 +K
(T)2 )が算出される。
【0084】次いでステップ102では機関回転数Nに
基づいて図14(C)に示す関係からK(N)が算出さ
れる。次いでステップ103では予め記憶されている第
1の境界Xo(N)の値を用いて次式に基づき第1の境
界X(N)の値が算出される。 X(N)=Xo(N)+K(T)・K(N) 次いでステップ104では機関回転数Nに基づいて図1
0に示す関係からΔL(N)が算出される。次いでステ
ップ105ではX(N)からΔL(N)を減算すること
によって第2の境界Y(N)の値(=X(N)−ΔL
(N))が算出される。
【0085】図25は機関から排出される未燃HCの量
を増大すべきであることを示すHCフラグを処理するた
めの時間割込みルーチンを示している。図25を参照す
ると、まず初めに温度センサ46により検出されたNO
x 吸収剤19下流の排気ガス温TEが予め定められた一
定温、例えば300℃よりも高いか否かが判別される。
TE≦300℃のときにはステップ201に進んでHC
フラグがセットされ、次いでステップ202ではHCフ
ラグがセットされてから一定時間経過したか否かが判別
される。HCフラグがセットされてから一定時間経過し
たときにはステップ203に進んでHCフラグがリセッ
トされる。即ち、TE≦300℃になると一定時間HC
フラグがセットされることになる。
【0086】なお、ステップ200ではTE>300℃
であるか否かを判断する代りに温度センサ46により検
出された排気ガス温TEと温度センサ45により検出さ
れたNOx 吸収剤19上流の排気ガス温TEIとの温度
差(TE−TEI)が一定温度、例えば10℃以上であ
るか否かを判断することもできる。即ち、NOx 吸収剤
19が活性化しているときにはNOx 吸収剤19内にお
いて排気ガス温が上昇し、(TE−TEI)>10℃で
あればNOx 吸収剤19が活性化しているものと判断す
ることができる。
【0087】図26はNOx 吸収剤19からNOx を放
出させるために排気ガスの空燃比をリッチにすべきこと
を示すリッチフラグを処理するための時間割込みルーチ
ンを示している。図26を参照すると、まず初めにステ
ップ300においてフラグIがセットされているか否か
が判別される。フラグIがセットされているとき、即ち
低温燃焼が行われているときにはステップ301に進ん
で機関から単位時間当り排出されるNOx 量ΔNOx が
算出される。このNOx 量ΔNOx は要求負荷Lおよび
機関回転数Nの関数として予めROM32内に記憶され
ている。次いでステップ303に進む。一方、フラグI
がリセットされているとき、即ち第2燃焼が行われてい
るときにはステップ302に進んで機関から単位時間当
り排出されるNOx量ΔNOx が算出される。このNOx
量ΔNOx も要求負荷Lおよび機関回転数Nの関数と
して予めROM32内に記憶されている。次いでステッ
プ303に進む。
【0088】ステップ303ではΔNOx をΣNOx に
加算することによってNOx 吸収剤19に吸収されてい
ると推定される推定NOx 量ΣNOx が算出される。次
いでステップ304では推定NOx 量ΣNOx が許容最
大値MAXを越えたか否かが判別される。ΣNOx >M
AXのときにはステップ302に進んでリッチフラグが
セットされ、次いでステップ306ではリッチフラグが
セットされてから一定時間経過したか否かが判別され
る。リッチフラグがセットされてから一定時間経過した
ときにはステップ307に進んでリッチフラグがリセッ
トされ、ステップ308においてΣNOx が零とされ
る。即ち、ΣNOx >MAXになると一定時間リッチフ
ラグがセットされることになる。
【0089】次に図27および図28を参照しつつ機関
の運転を制御するためのルーチンについて説明する。図
27および図28を参照すると、まず初めにステップ4
00において機関の運転領域が第1の運転領域Iである
ことを示すフラグIがセットされているか否かが判別さ
れる。フラグIがセットされているとき、即ち機関の運
転領域が第1の運転領域Iであるときにはステップ40
1に進んで要求負荷Lが第1の境界X(N)よりも大き
くなったか否かが判別される。L≦X(N)のときには
ステップ402に進んで第1の燃焼、即ち低温燃焼が行
われる。
【0090】即ち、ステップ402では図16(A)か
ら(D)に示されるマップのうちでK(T)に応じた二
つのマップを用いて比例配分により目標空燃比AFが算
出される。次いでステップ403では図17(A)から
(D)に示されるマップのうちで目標空燃比AFに応じ
た二つのマップを用いて比例配分によりスロットル弁1
6の目標開度STが算出され、スロットル弁16の開度
がこの目標開度STに制御される。次いでステップ40
4では図18(A)から(D)に示されるマップのうち
で目標空燃比AFに応じた二つのマップ用いて比例配分
によりEGR制御弁23の目標基本開度SEが算出され
る。次いでステップ405では噴射開始時期θSが算出
され、次いでステップ406に進む。
【0091】ステップ406ではリッチフラグがセット
されているか否かが判別される。リッチフラグがセット
されていないときにはステップ407に進んで燃料噴射
量Qが算出される。次いでステップ408では空燃比セ
ンサ21により検出された実際の空燃比A/Fが目標空
燃比AFよりも大きいか否かが判別される。A/F>A
Fのときにはステップ409に進んでEGR制御弁23
の開度に対する補正値ΔSEに一定値βが加算され、次
いでステップ411に進む。これに対してA/F≦AF
のときにはステップ410に進んで補正値ΔSEから一
定値βが減算され、次いでステップ411に進む。ステ
ップ411ではEGR制御弁23の目標基本開度SEに
補正値ΔSEを加算することによりEGR制御弁23の
目標開度SEOが算出され、EGR制御弁23の開度が
この目標開度SEOに制御される。即ち、この実施例で
はEGR制御弁23の開度を制御することによって実際
の空燃比が目標空燃比AFに制御される。無論この場
合、スロットル弁16の開度を制御することによって実
際の空燃比を目標空燃比AFに制御することもできる。
【0092】一方、ステップ406においてリッチフラ
グがセットされていると判断されたときにはステップ4
12に進み、目標空燃比AFを用いて空燃比A/Fをリ
ッチ、例えばA/F=13にするのに必要な燃料噴射量
の補正値ΔQが次式に基づいて算出される。 ΔQ=Q・(AF−13.0)/AF 次いでステップ413では燃料噴射量Qに補正値ΔQを
加算することによって最終的な燃料噴射量Q(=Q+Δ
Q)が算出される。このときNOx 吸収剤19からNO
x が放出される。
【0093】一方、ステップ401においてL>X
(N)になったと判断されるとステップ414に進んで
フラグIがリセットされ、次いでステップ417に進ん
で第2の燃焼、即ち従来より行われている通常の燃焼が
行われる。即ち、ステップ417では図20(A)に示
すマップからスロットル弁16の目標開度STが算出さ
れ、次いでステップ418では図20(B)に示すマッ
プからEGR制御弁23の目標開度SEが算出される。
次いでステップ419ではHCフラグ又はリッチフラグ
がセットされているか否かが判別される。HCフラグお
よびリッチフラグのいずれもセットされていないときに
はステップ420に進んで燃料噴射量Qが算出され、次
いでステップ421では噴射開始時期θSが算出され
る。
【0094】一方、ステップ400においてフラグIが
リセットされていると判断されたとき、即ち機関の運転
領域が第2の運転領域IIであるときにはステップ415
に進んで要求負荷Lが第2の境界Y(N)よりも小さく
なったか否かが判別される。L≧Y(N)のときにはス
テップ417に進む。これに対してL<Y(N)になる
とステップ416に進んでフラグIがセットされる。次
いでステップ402に進み、第1の燃焼、即ち低温燃焼
が行われる。
【0095】また、ステップ419においてHCフラグ
又はリッチフラグがセットされていると判断されたとき
にはステップ422に進んでアクチュエータ47,48
が駆動され、バルブオーバーラップ期間が長くされる。
次いでステップ423において第1回目の燃料噴射量Q
1 および第2回目の燃料噴射量Q2 が算出される。な
お、HCフラグがセットされた場合のQ1 およびQ2
リッチフラグがセットされた場合のQ1 およびQ2 とは
夫々別個に要求負荷Lおよび機関回転数Nの関数として
ROM32内に記憶されている。HCフラグがセットさ
れた場合には排気ガスの空燃比が例えば17.0程度の
リーン空燃比となり、それによってNOx吸収剤19の
温度が上昇せしめられる。一方、リッチフラグがセット
された場合には排気ガスの空燃比がリッチとなり、それ
によってNOx 吸収剤19からNOx が放出される。
【0096】次いでステップ424では第1回目の燃料
噴射開始時期θS1 (図21)と第2回目の燃料噴射開
始時期θS2 (図21)が算出される。
【0097】
【発明の効果】機関から排出される未燃HCを増量する
必要がないときには十分な機関の出力を確保し、機関か
ら排出される未燃HCを増量すべきときに限ってバルブ
オーバーラップ期間が長くされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧縮着火式内燃機関の全体図である。
【図2】アクチュエータの拡大断面図等を示す図であ
る。
【図3】スモークおよびNOx の発生量を示す図であ
る。
【図4】燃焼圧を示す図である。
【図5】燃料分子を示す図である。
【図6】スモークの発生量とEGR率との関係を示す図
である。
【図7】噴射燃料量と混合ガス量との関係を示す図であ
る。
【図8】燃焼室内における平均ガス温Tgと、燃料およ
びその周囲のガス温Tfの変化を示す図である。
【図9】第1の運転領域Iおよび第2の運転領域IIを示
す図である。
【図10】ΔL(N)と機関回転数Nとの関係を示す図
である。
【図11】空燃比センサの出力を示す図である。
【図12】スロットル弁の開度等を示す図である。
【図13】第1の境界X(N)の制御方法を説明するた
めの図である。
【図14】K(T)1 ,K(T)2 およびK(N)を示
す図である。
【図15】第1の運転領域Iにおける空燃比を示す図で
ある。
【図16】目標空燃比のマップを示す図である。
【図17】スロットル弁の目標開度のマップを示す図で
ある。
【図18】EGR制御弁の目標基本開度を示す図であ
る。
【図19】第2の燃焼における空燃比等を示す図であ
る。
【図20】スロットル弁の目標開度等を示す図である。
【図21】バルブオーバーラップ期間と燃料噴射時期等
を示す図である。
【図22】NOx の吸放出作用を説明するための図であ
る。
【図23】空燃比制御を説明するためのタイムチャート
である。
【図24】低温燃焼領域を制御するためのフローチャー
トである。
【図25】HCフラグを処理するためのフローチャート
である。
【図26】リッチフラグを処理するためのフローチャー
トである。
【図27】機関の運転を制御するためのフローチャート
である。
【図28】機関の運転を制御するためのフローチャート
である。
【符号の説明】
6…燃料噴射弁 16…スロットル弁 19…触媒 23…EGR制御弁
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F01N 3/20 ZAB F01N 3/20 ZABE 3/24 ZAB 3/24 ZABR F02D 41/04 370 F02D 41/04 370 41/40 ZAB 41/40 ZABC 43/00 ZAB 43/00 ZAB 301 301Z 301G

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燃焼室内に燃料を噴射するための燃料噴
    射弁と、吸気弁および排気弁が共に開弁するバルブオー
    バーラップ期間を制御するためのバルブオーバーラップ
    期間制御手段と、機関から排出される未燃炭化水素量を
    増量すべきか否かを判断する判断手段とを具備し、機関
    から排気される未燃炭化水素量を増量すべきであると判
    断されたときにはバルブオーバーラップ期間を長くする
    と共に少くとも一部の燃料をバルブオーバーラップ期間
    中に噴射するようにした請求項1に記載の内燃機関。
  2. 【請求項2】 機関排気通路内に酸化機能を有する触媒
    を配置し、該触媒の温度が活性化温度以下に低下しそう
    なときにバルブオーバーラップ期間を長くすると共に少
    くとも一部の燃料をバルブオーバーラップ期間中に噴射
    するようにした請求項1に記載の内燃機関。
  3. 【請求項3】 流入する排気ガスの空燃比がリーンのと
    きにはNOx を吸収し、流入する排気ガスの空燃比がリ
    ッチになるとNOx を放出するNOx 吸収剤を機関排気
    通路内に配置し、NOx 吸収剤からNOx を放出すべき
    ときにはバルブオーバーラップ期間を長くすると共に少
    くとも一部の燃料をバルブオーバーラップ期間中に噴射
    するようにした請求項1に記載の内燃機関。
  4. 【請求項4】 燃焼室内の不活性ガス量を増大していく
    と煤の発生量が次第に増大してピークに達し、燃焼室内
    の不活性ガス量を更に増大していくと燃焼室内における
    燃焼時の燃料およびその周囲のガス温が煤の生成温度よ
    りも低くなって煤がほとんど発生しなくなる内燃機関に
    おいて、煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも
    燃焼室内の不活性ガス量が多く煤がほとんど発生しない
    第1の燃焼と、煤の発生量がピークとなる不活性ガス量
    よりも燃焼室内の不活性ガス量が少ない第2の燃焼とを
    選択的に切換える切換手段を具備し、該第2の燃焼が行
    われているときに機関から排気される未燃炭化水素量を
    増量すべきであると判断されたときにはバルブオーバー
    ラップ期間を長くすると共に少くとも一部の燃料をバル
    ブオーバーラップ期間中に噴射するようにした請求項1
    に記載の内燃機関。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6519933B2 (en) 2000-03-21 2003-02-18 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Internal combustion engine having variable valve control system and NOx catalyst
FR2862715A1 (fr) * 2003-11-24 2005-05-27 Peugeot Citroen Automobiles Sa Vehicule automobile a moteur a combustion, notamment diesel, equipe d'un piege a nox pilote par l'injection
JP2011526666A (ja) * 2008-06-30 2011-10-13 イートン コーポレーション 固体酸化物型燃料電池を動力源とする車両用の車載改質装置における燃料リッチ低温の燃焼モードで内燃機関を運転するシステム及び方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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