JPH11164682A - 低栄養性微生物の生育促進法および該微生物を用いたバイオリアクター - Google Patents

低栄養性微生物の生育促進法および該微生物を用いたバイオリアクター

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JPH11164682A
JPH11164682A JP22757198A JP22757198A JPH11164682A JP H11164682 A JPH11164682 A JP H11164682A JP 22757198 A JP22757198 A JP 22757198A JP 22757198 A JP22757198 A JP 22757198A JP H11164682 A JPH11164682 A JP H11164682A
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bioreactor
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Toshiya Shigeno
俊也 茂野
Takehiro Koizumi
岳弘 小泉
Teruaki Oki
照章 大木
Toyoji Hozumi
豊治 穂積
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Showa Shell Sekiyu KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 栄養塩類を添加することなしに、低栄養条件
で生育し、有機化合物、例えば芳香族化合物を分解する
ことのできる低栄養性微生物の生育促進方法、該生育促
進方法を用いた芳香族化合物含有排水処理用バイオリア
クター、および該バイオリアクターを用いた排水処理技
術の提供。 【解決手段】 低栄養性微生物〔Burkholder
ia cepacia1A(FERM P−1556
6)を除く、以下菌体とも言う。〕の生育を合成樹脂の
存在下で行うことを特徴とする低栄養性微生物の生育促
進法およびそのためのバイオリアクター。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明はリン、窒素等の栄養塩濃度が低い
低栄養条件で生育し、有機化合物を分解することのでき
る微生物[Burkholderia cepacia
1A(FERM P−15566)を除く]の生育促
進法、該生育促進法を用いた有機化合物、例えばフェノ
ール含有排水処理用バイオリアクター、および該バイオ
リアクターを用いた排水処理技術に関するものである。
【0002】
【従来技術】自然環境は一般的に低栄養条件であると考
えられており、また製油所や化学工場などの排水は、リ
ンや窒素に乏しい低栄養排水であるので、通常知られて
いる微生物は生育できないので、従来の環境浄化技術で
は、汚染環境に(NH42SO4、NH4Cl、Na3
4、Na2HPO4等の栄養塩類を添加し、微生物の活
性を高める方法が行われている[(D.A.Grave
sら、AppliedBiochemistry an
d Biotechnology,vol.28,P8
13(1991):原山 重明、「地球をまもる小さな
生き物たち」、技報堂出版、P109(1995):西
村 実、土と微生物、No46、P19(1995):
C.H.Nelsonら、「Hydrocarbon
Bioremediation」、CRC Pres
s、P125(1994)]。
【0003】また排水処理においても、微生物の生育と
活性を保つために炭素:リン:窒素の割合を制御するこ
とが必要であると考えられている。炭素:リン:窒素の
割合を制御するためには、排水に栄養塩を添加する方法
が一般的である[「廃水処理技術指導書」、石油連盟、
P129(1975):「公害防止の技術と法規」、財
団法人産業公害防止協会、P215(1992)]。さ
らに特開平6−500495では汚染環境に栄養塩を効
率よく持続的に与えるための方法が記されており、また
特開平7−507208ではリン酸エステルを添加する
ことにより、栄養物質の供給と同時に汚染物質を乳化さ
せる方法が記されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記のように自然環境
は一般的に低栄養条件であると考えられており、また製
油所や化学工場などの排水もリンや窒素に乏しい低栄養
排水である。この様な条件では通常知られている微生物
は生育できないので、環境浄化や低栄養排水の処理には
栄養塩類を添加して微生物の活性を高めることが必要で
ある。しかし汚染環境や排水に添加する栄養塩類は、環
境浄化や排水処理にかかるコストの1つである。特に浄
化しようとする汚染場所が広い範囲であったり、あるい
は処理をしようとする排水量が多い場合には添加する栄
養塩類にかかる費用は莫大なものとなる。さらに過剰に
添加した栄養塩類は、地下水の硝酸汚染や環境の富栄養
化等の二次汚染の原因となるので、添加方法や添加量の
制御は重要である。
【0005】すなわち、窒素源は、土壌微生物の作用に
より酸化されて硝酸体となる。したがって窒素源を過剰
に与えると土壌や地下水中の硝酸イオン濃度が高くな
る。硝酸イオンは、発ガン性が指摘されており、飲料水
への混入が問題となっている[鶴巻 道二、「地下水汚
染・土壌汚染の現状と浄化対策」、工業技術会、P98
(1993)]。また、過剰に添加した栄養塩類、特に
リンおよび窒素源が雨水や地下水によって河川や湖沼に
流入すると環境の富栄養化を引き起こす。環境の富栄養
化はアオコの異常発生や飲料水のカビ臭の原因となるた
め、生活排水中のリンや窒素を除去する方法が数多く提
案されている[中村 和憲、「微生物の生態17」、学
会出版センター、P31(1991):深瀬 哲朗、
「地球をまもる小さな生き物たち」、技報堂出版、P1
33(1995)]。P.Morganらは土壌環境に
栄養塩類を添加することが土着微生物の有機物質の分解
活性を阻害することを指摘している[Wat.Sci.
Tech.,vol.6,P63(1990)]。
【0006】添加した栄養塩類による二次汚染を回避す
るには、栄養塩類をコントロールしながら添加すること
が必要である。しかしこの様な制御装置を排水処理設備
に設置することは、設備をより高価なものとし、排水の
処理コストを増大させる。さらに汚染土壌や地下水等の
汚染環境は解放系であるため、栄養塩類をコントロール
しながら効率よく添加するには、何らかの方法で汚染環
境を閉鎖する必要がある。しかし汚染環境を土木的方法
によって閉鎖するには、多額な資金が必要であり、特に
汚染環境が広い場合には技術的に困難である。したがっ
て汚染環境において、添加した栄養塩類による二次汚染
を防ぐことは事実上不可能と言わざるを得ない。
【0007】低栄養性微生物の存在は古くから知られて
おり、多くの研究がなされている。これまで低栄養性微
生物は生育条件の中の有機炭素量でのみ論じられてお
り、有機炭素濃度が1から15ppm以下で生育可能な
微生物が低栄養性微生物と称されて研究されている
[(畝本 力、「特殊環境に生きる細菌の巧みなライフ
スタイル」、共立出版、P7(1993):江口 充、
「海洋微生物とバイオテクノロジー」、技報堂出版、P
68(1991):諏訪 裕一ら、「微生物の分離
法」、R&Dプランニング、P545(1990)]。
しかしながら自然汚染環境あるいは製油所や化学工場の
排水は、汚染物質である有機炭素の濃度が高く、その他
のリン、窒素等の栄養塩濃度のみが低い状態にある。こ
の様な有機炭素の濃度が高く、その他のリン、窒素等の
栄養塩濃度のみが低い条件で生育し汚染物質を分解する
微生物は、従来の低栄養性微生物の概念に当てはまらな
いものであり、野村らの学会発表(日本農芸化学会誌、
71巻、臨時増刊号、P241、1997)以外にこれ
までに報告がない。
【0008】本発明の目的は、栄養塩類を添加すること
なしに、低栄養条件で生育し、有機化合物、例えば芳香
族化合物を分解することのできる低栄養性微生物(Bu
rkholderia cepacia 1Aを除く)
の生育促進方法、該生育促進方法を用いた芳香族化合
物、例えばフェノール含有排水処理用バイオリアクタ
ー、および該バイオリアクターを用いた排水処理技術、
例えば製油所や化学工場などのフェノール含有排水処理
技術を提供することにある。なお、本発明で言う低栄養
条件とは、前記のように有機炭素の濃度が高く、例え
ば、15ppm以上で、かつリン、窒素等の栄養塩濃度
が低い、例えば、リン5ppm以下でかつ窒素50pp
m以下のような条件を指す。
【0009】
【課題を解決するための手段】普通の自然環境は低栄養
状態と考えられているが、本発明者らは、微生物の生育
に特に重要なリンと窒素に注目し、自然環境中のリンと
窒素の濃度を測定した。その結果、土壌や地下水では次
表1に示すように窒素濃度が約60ppm以下、リン濃
度が約3ppm以下である。海洋では更に栄養成分濃度
は低く、窒素濃度が約1.0ppm以下、リン濃度が約
0.1ppm以下である。
【0010】
【表1】 1 発明者の測定による 2 微生物の生態12、P10、学会出版センター(1989)より 3 西村実、土と微生物、No.46、P19(1995)より 4 微生物の生態3、P4、学会出版センター(1987)より
【0011】前記自然環境中のリンと窒素の濃度の測定
値に基づき、本発明者らは目的とする有機炭素の濃度が
高く、その他のリンと窒素の栄養塩濃度のみが低い条件
で生育し、汚染物質を分解することのできる微生物を得
るための培地は、リン濃度が約5ppm以下で、かつ窒
素濃度が約50ppm以下のものであることを見出し、
この知見に基づき、低栄養条件下で芳香族化合物を分解
する微生物を提案している(特願平9−126382、
特願平9−126383)。
【0012】また、本発明者らは、栄養塩類を添加する
ことなしに、低栄養状態の排水を効率よく処理するため
には、低栄養性微生物は、菌体生育量が少ないため、菌
体量を高めたバイオリアクターを構築する必要があると
考え、低栄養条件である製油所や化学工場などの低栄養
排水について低栄養性微生物を培養する際に、ポリスチ
レンを添加することによって、低栄養性微生物Burk
holderia cepacia 1Aの生育とこれ
に伴うフェノールの分解活性が著しく向上することを見
出し、先に出願している。
【0013】さらに、本発明者らは、Burkhold
eria cepacia 1A以外の低栄養性微生物
の培養液中にポリスチレン、テフロン、ポリプロピレ
ン、デルリン、アルミナ、エポキシ樹脂、ナイロン、ポ
リエチレンの各種合成樹脂素材で作成したビーズを添加
し、該微生物の生育量とフェノール分解量について検討
した結果、培養液中に合成樹脂素材特にポリスチレンを
添加することによって、Burkholderia c
epacia 1A以外の低栄養性微生物も、その生育
とこれに伴うフェノールの分解活性が著しく向上し、か
つこれら合成樹脂素材を用いることによって、バイオリ
アクターを構築できるることを見出し、この知見に基づ
き本発明に到達することができた。すなわち、本発明の
特徴は、Burkholderia cepacia
1A以外の低栄養性微生物の生育を低栄養条件で合成樹
脂素材、特に好ましくはポリスチレンの共存下で行うこ
とを特徴とする低栄養性微生物の生育促進方法、および
1A株以外の低栄養性微生物と前記合成樹脂素材、特に
ポリスチレンを用いたバイオリアクターに関する。
【0014】培地にプラスチック製品を添加して微生物
を生育させる研究は、本発明前に服部らの報告がある
〔森崎久雄ら、界面と微生物、学会出版センター(19
88)〕。服部らは、培養液にプラスチック製の陰イオ
ン交換樹脂を添加して、微生物の生育至適pHがイオン
交換樹脂を添加しない場合と比べてアルカリ側に移動す
ることを見い出した。そして、この現象は陰イオン交換
樹脂の表面近傍における培養液のpHが陰イオン交換樹
脂から遠くに存在する培養液のpHと異なることに起因
するものと考察している。しかし本発明で用いる合成樹
脂は、イオン交換能と言ったような特別な機能を有する
ものではなく、陰イオン交換樹脂の添加効果と本発明で
使用する合成樹脂の作用とは、まったく異なるものであ
る。
【0015】本発明で用いる低栄養性微生物としては、
本発明者らが先に提案しているPseudomonas
putida 9−1A1菌株(FERM P−15
571)、Burkholderia cepacia
1C菌株(FERM P−15567)、Burkh
olderia cepacia 1E菌株(FERM
P−15568)、Burkholderia pi
ckettii K11菌株(FERM P−1620
7)、Burkholderia pickettii
K37菌株(FERM P−16208)、Rhod
ococcussp.10−1A1菌株(FERM P
−15572)、Arthrobacter atro
cyaneus 3A菌株(FERM P−1601
6)、Cryptococcus albidus 3
H菌株(FERM P−16015)、Alcalig
enes denitrificans subsp.
denitrificans K2菌株(FERM P
−16012)、Alcaligenes denit
rificans subsp.denitrific
ans K3菌株(FERM P−16013)、およ
びAlcaligenes denitrifican
s subsp.denitrificans K19
菌株(FERM P−16014)よりなる群から選ば
れたものが挙げられる。
【0016】一方、菌体の固定化法については、従来よ
り多く研究がなされており、アルギン酸、ポリビニール
アルコール、κ−カラギーナン、ゲランガム、アガロー
ス、セルロース、デキストラン等のゲル状物質に包括固
定する方法や、ガラス、活性炭、ポリスチレン、ポリエ
チレン、ポリプロピレン、木材、シリカゲル等の表面に
吸着固定する方法を挙げることができる[扇元 敬司、
「バイオテクノロジーテキストシリーズ 微生物学」、
講談社、P168(1994)、相田 浩ら、「新版
応用微生物学II」、朝倉書店、P116(199
5)]。
【0017】また、フェノールの排水処理に於いてもR
hcdococcus属細菌[S−L.Pai外ら、B
ioresource Tech.,51,P37(1
995)]やPsendomonas putida
[渡辺一哉ら、水処理技術、36,P77(199
4)、A.Morsenら、Appl.Microbi
ol.Biotech.,33,P206(199
0)]等の細菌、Candidatropicalis
[H.Wenhua外ら、Water Trent,
8,P119(1993)]やCryptococcu
s elinovir[A.Morsenら、App
l.Microbiol.Biotech.,33,P
206(1990)]等の酵母及び活性汚泥[F.S.
Lakhwala ら、Bioprocess Eng
i.,8,P9(1992)]をアルギン酸やポリビニ
ルアルコール等による包括法及び活性炭や粘土鉱物によ
る吸着法にて固定化して用いる例が報告されている。
【0018】しかしながら、本発明における前記合成樹
脂素材の効果は、その効果からみて、担体としての菌体
固定化のための効果のみではなく、低栄養性微生物の培
養液中の浮遊菌体の量をも高める他の素材には見られな
い増殖触媒作用であると考えられる。前記合成樹脂素材
の増殖触媒作用は、合成樹脂が水に不溶なこと、低栄養
性微生物が合成樹脂製のビーズを炭素源として利用でき
ないこと、培養液中に加える合成樹脂製のビーズの数に
比例することより、ポリスチレンの表面積に依存するも
のと考えられる。
【0019】培養液中に加える合成樹脂の形状は、ビー
ズ状のものに限られるものではなく、シート状、ハニカ
ム状、パイプ状等の種々の形状のものを用いることがで
きるが、前記のように生育促進効果は表面積に依存する
ので、その表面積の大きいものが好ましい。さらに合成
樹脂は、合成樹脂素材以外の他の素材、例えばガラス、
シリカゲル、アルミナ、金属等の表面にコーティングし
た形でも用いることができる。
【0020】さらに、本発明者らは培養液中に加える合
成樹脂(特にポリスチレン)の使用態様について検討し
た結果、合成樹脂に物理的な力を加え、該合成樹脂表面
に保持されて増殖した菌体の少なくとも一部を積極的に
剥離させ、浮遊菌体とすることにより、合成樹脂表面の
増殖作用が向上することを見出した。この増殖作用の向
上の原因としては、図4に示すように、合成樹脂として
ポリスチレンを使用した場合、該ポリスチレン表面から
菌体剥離され、該剥離された浮遊菌体もフェノール分解
活性を有する菌体であり、さらに菌体が剥離されたポリ
スチレン表面には、また菌体が形成されるので、リアク
ター全体としてはフェノール分解活性が向上する。
【0021】前記培養工程中にポリスチレン表面から増
殖した菌体を剥離するためには、菌体剥離型リアクター
を用いるのが好ましい。該菌体剥離型リアクターとして
は、例えば菌体剥離型ーエアーリフト型リアクター、お
よび小型ジャー型等が挙げられる。
【0022】本発明のバイオリアクターに用いるポリス
チレンは耐水性に優れた半永久的な材質であり、長期間
使用することが可能である。長期間使用すれば、ポリス
チレンそのものは廃棄物とならないので、総合的な観点
からは環境負荷が少ない。また、本発明で言うポリスチ
レンとは、スチレンの単独重合体のみを指すのではな
く、本発明の意図する増殖触媒作用を奏する限り、スチ
レン以外に他のモノマー成分を含有するものであっても
良い。
【0023】本発明で使用する低栄養性微生物は、リン
濃度5ppm以下でかつ窒素濃度50ppm以下の培地
を用いて、フェノール100ppmあるいは1000p
pmを炭素源とした条件で検索することによって得られ
た。
【0024】リン源は実質的に微生物がリン源として利
用可能な物質であればなんでも良く、リン酸一アンモニ
ウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸
水素アンモニウムカリウム、リン酸水素二ナトリウム、
リン酸水素二カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リ
ン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等の無機
のリン酸塩およびこれらの塩の水和物、酵母エキス、肉
汁エキス等のリンを含む天然物やリン酸エステル等の有
機リン化合物等をあげることができる。
【0025】同様に窒素源も実質的に微生物が窒素源と
して利用可能な物質であればなんでも良く、硫酸アンモ
ニウム、リン酸一アンモニウム、硝酸アンモニウム、リ
ン酸水素アンモニウムカリウム、塩化アンモニウム等の
アンモニウム塩およびこれらの塩の水和物、硝酸アンモ
ニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸塩、亜
硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩、尿素、アミノ酸、酵母エ
キス、肉汁エキス、ペプトン等の窒素を含む天然物やア
ミド化合物等の有機含窒素化合物等をあげることができ
る。
【0026】前記低栄養性微生物は、リン5ppm以下
でかつ窒素50ppm以下と言う低栄養条件下で生育す
ることができるので、栄養塩類を添加しない環境調和型
の環境浄化や排水処理に応用することが可能である。た
だし、該微生物がリン5ppm以下でかつ窒素50pp
m以下と言う低栄養条件下で生育することができると言
う性質を有することは、該微生物がリン5ppm以上あ
るいは窒素50ppm以上の条件で生育できないことを
意味するのではなく、前記低栄養性微生物は、低栄養条
件下のみならず、高栄養条件下でも生育できる通性低栄
養性微生物である。
【0027】
【実施例】実施例1 低リン濃度、低窒素濃度条件(自然環境)で生育するフ
ェノール資化性菌の検索 (検索用培地の作成)検索用培地として、下表2に示し
た培地(以下、E−培地)を1/10に希釈したもの
(1/10E−培地:リン約5ppm、窒素約50pp
m)、および1/100に希釈したもの(1/100E
−培地:リン約0.5ppm、窒素約5ppm)の2種
類を用いた。これに、炭素源としてフェノール1,00
0ppmを加えた。また、各培地のpHは7.0とし
た。
【0028】
【表2】
【0029】(分解菌の取得方法A)分離源としては、
つくば市周辺の土壌約480種類を用い、以下の方法で
微生物のみを抽出して培地に添加した。300ml容の
三角フラスコに滅菌水30mlを入れ、ここに土壌サン
プル5gを加えた。これを1日回転振とうして、菌の抽
出を行なった。抽出後、遠心(2,000rpm,5m
in)して土壌を沈澱させ、上清を濾紙、およびグラス
フィルターにてろ過して、土壌微粒子を除いた。得られ
た菌液をニトロセルロースフィルター(0.2μm)で
ろ過して微生物を捕集した。このフィルターを適宜切断
して培地に加え、検索を行なった。検索は以下の方法で
行なった。300ml容の三角フラスコに1/10E−
培地または1/100E−培地30mlを入れ、ここに
上述のニトロセルロースフィルターを加え30℃にて5
日間振とう培養を行なった。生育の見られたものについ
ては、1/10E−培地または1/100E−培地8m
lを入れた内径24mmの大型試験管に100μl植え
継ぎ5日間培養した。これを2回繰り返し、菌の単離を
行なった。菌の単離には、前述の1/10E−培地また
は1/100E−培地に1.2%のアガロース[aga
rose(電気泳動用ultra−pure grad
e)]を加えて作成した平板を用いた。これに、前述の
培養液を適宜希釈して塗布し、30℃にて5日間培養し
て、生育してきたコロニーを単離した。
【0030】1/10E−培地、1/100E−培地共
に多数のサンプルに菌の生育が見られたので、菌の単離
を試みた。その結果4種類の形状の異なるコロニーが認
められたので、それぞれについて2〜3コロニーを取得
した。取得した候補株14株の内、保存中に分離能力を
失わなかった5株(1/10E−培地より取得した4
株、1/100E−培地より取得した1株)をその後の
検討に用いることとした。これら全ての株は1/10培
地およびブイヨン培地[nutrient broth
(NB)]に生育可能であった。1/10E−培地で検
索を行なった場合、全ての土壌(抽出菌体)サンプルか
ら菌の生育が見られたことから、この程度の栄養条件
(リン約5ppm、窒素約50ppm)で生育する菌は
かなり多いと思われる。また、1/10E−培地で取得
した菌と1/100E−培地で取得した菌とは、コロニ
ーの形態を観察した限りでは菌種に違いはなかった。ま
た1/100E−培地で取得した菌は1/10E−培地
でも生育可能であることから、これらは同じ菌か、少な
くとも分類学的に近縁であると思われる。
【0031】(分解菌の取得方法B)分離源としては、
厚木市周辺の土壌約20種類を用い、分解菌の取得方法
Aとは異なり、前記土壌サンプルをフィルターを用いて
濾過することなく、直接前記1/10E−培地に加えて
行った。すなわち、前記土壌サンプル約1gを50ml
の前記1/10E−培地を加えた500ml容の三角フ
ラスコに加え、30℃で約1週間培養し、生育のあった
ものは、さらに50mlの1/10E−培地を加えた5
00ml容の三角フラスコで約1週間培養してから、平
板を用いてコロニーを単離した。
【0032】実施例2 (実施例1で取得した分解菌の同定) 前記分解菌の取得方法Aで得られたフェノール資化性
菌は全てグラム陰性で、運動性を持ち、オキシダーゼ、
カタラーゼ共に陽性であった。また、O−Fテストは酸
化を示した。その他の各種生理試験の結果から、取得し
た5株は全てBurkholderia cepaci
aであると同定された。しかし、硝酸還元能、グルコー
スからの酸の生成、エスカリンの分解試験等の結果が異
なることから、同じBurkholderia.cep
aciaでも以下の4つのグループに分けられる。 (1/10E−培地より取得) グループ1:1A菌株(FERM P−15566) グループ3:1C菌株(FERM P−15567) グループ4:1E菌株(FERM P−15568) :1H菌株(FERM P−15569) (1/100E−培地より取得) グループ2:2D菌株(FERMP−15570)
【0033】 前記分解菌の取得方法Bで得られたフ
ェノール資化性菌は、取得した株の1種類は、グラム陰
性で運動性を持ち、オキシダーゼ、カタラーゼが陽性で
あり、またO−Fテストは酸化を示し、キングのB培地
で蛍光性の色素を生成する、という試験結果から、Ps
eudomonas putida9−1A1(FER
MP−15571)であると同定された。また、他方の
種類は、形態がロッドでコリネフォルムを示し、グラム
陽性で運動性がなく、細胞壁ジアミノ酸としてメソ−ジ
アミノピメリン酸を有し、細胞壁に直鎖飽和型及び10
位にメチル基を有する分枝型の脂肪酸を有する、という
試験結果から、Rhodococcussp.10−1
A1(FERMP−15572)であると固定された。
下表に、前記フェノール資化性菌の特性を示す。
【0034】
【表3】
【0035】フェノール資化性菌1Cの特性(2)
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
【表7】
【0039】
【表8】
【0040】
【表9】
【0041】
【表10】
【0042】
【表11】
【0043】
【表12】
【0044】
【表13】
【0045】実施例3 低リン濃度、低窒素濃度条件(製油所排水の条件)で生
育するフェノール資化性菌の検索 (検索用培地の作成)下表14に示す実際の製油所の排
水の分析結果についての情報が得られたので、これをも
とにして、本実施例では新たに検索用培地として表15
に示した培地(以下、F−培地)を1/100に希釈し
たもの(1/100F−培地:リン約1ppm、窒素約
20ppm)を用いた。これに炭素源としてフェノール
100ppmを加えた。また、培地のpHは7.0とし
た。なお、表15中の微量金属(trace meta
l)の組成は下表16の通りである。
【0046】
【表14】
【0047】
【表15】
【0048】
【表16】
【0049】(分解菌の取得方法C)分離源としては、
つくば市周辺の土壌約480種類を用い、以下の方法で
微生物のみを抽出して培地に添加した。300ml容の
三角フラスコに滅菌水30mlを入れ、ここに土壌サン
プル5gを加えた。これを1日回転振とうして、菌の抽
出を行なった。抽出後、遠心(2,000rpm,5m
in)して土壌を沈澱させ、上清を濾紙、およびグラス
フィルターにてろ過して、土壌微粒子を除いた。得られ
た菌液をニトロセルロースフィルター(0.2μm)で
ろ過して微生物を捕集した。このフィルターを適宜切断
して培地に加え、検索を行なった。検索は以下の方法で
行なった。300ml容の三角フラスコに1/100F
−培地30mlを入れ、ここに上述のニトロセルロース
フィルターを加え30℃にて5日間振とう培養を行なっ
た。生育の見られたものについては、1/100F−培
地8mlを入れた内径24mmの大型試験管に100μ
l植え継ぎ5日間培養した。これを2回繰り返し、菌の
単離を行なった。菌の単離には、1/100F−培地に
1.2%のアガロース[agarose(電気泳動用u
ltra−pure grade)]を加えて作成した
平板を用いた。これに、前述の培養液を適宜希釈して塗
布し、30℃にて5日間培養して、生育してきたコロニ
ーを単離した。1/100F−培地の多数のサンプルに
菌の生育が見られたので、菌の単離を試みた。その結果
形状の異なるコロニーが認められたので、コロニーを取
得した。これら全ての株は、ブイヨン培地[nutri
ent broth(NB)]に生育可能であった。
【0050】実施例4 (実施例3で取得した分解菌の同定)取得したフェノー
ル資化性菌の1種類は、グラム陽性の細菌、1種類は酵
母、また3種類はグラム陰性の細菌であった。 Arthrobacter atrocyaneus
3A菌株(FERM P−16016) Cryptococcus albidus 3H菌株
(FERM P−16015) Alcaligenes denitrificans
subsp.denitrificans K2菌株
(FERM P−16012) Alcaligenes denitrificans
subsp.denitrificans K3菌株
(FERM P−16013) Alcaligenes denitrificans
subsp.denitrificans K19菌
株(FERM P−16014) 下表17〜25に前記フェノール資化性菌の特性を示
す。
【0051】
【表17】
【0052】
【表18】
【0053】
【表19】
【0054】
【表20】
【0055】
【表21】
【0056】
【表22】
【0057】
【表23】
【0058】
【表24】
【0059】
【表25】
【0060】実施例5 低リン濃度、低窒素濃度条件(自然環境)で生育する芳
香族化合物の資化性菌の検索 (検索用培地の作成)前表15に示したF−培地を1/
100に希釈したもの(1/100F−培地:リン約1
ppm、窒素約20ppm)を用いた。これに炭素源と
してベンゼン、トルエンおよびキシレンをそれぞれ10
0ppmを加えた。また、培地のpHは7.0とした。
【0061】(分解菌の取得方法D)分離源としては、
つくば市周辺の土壌約150種類を用い、以下の方法で
微生物のみを抽出して培地に添加した。300ml容の
三角フラスコに滅菌水30mlを入れ、ここに土壌サン
プル5gを加えた。これを1日回転振とうして、菌の抽
出を行なった。抽出後、遠心(2,000rpm,5m
in)して土壌を沈澱させ、上清を濾紙、およびグラス
フィルターにてろ過して、土壌微粒子を除いた。得られ
た菌液をニトロセルロースフィルター(0.2μm)で
ろ過して微生物を捕集した。このフィルターを適宜切断
して培地に加え、検索を行なった。検索は以下の方法で
行なった。300ml容の三角フラスコに1/100F
−培地30mlを入れ、ここに上述のニトロセルロース
フィルターを加え30℃にて5日間振とう培養を行なっ
た。生育の見られたものについては、1/100F−培
地8mlを入れた内径24mmの大型試験管に100μ
l植え継ぎ5日間培養した。これを2回繰り返し、菌の
単離を行なった。菌の単離には、1/100F−培地に
1.2%のアガロース[agarose(電気泳動用u
ltra−pure grade)]を加えて作成した
平板を用いた。これに、前述の培養液を適宜希釈して塗
布し、30℃にて5日間培養して、生育してきたコロニ
ーを単離した。1/100F−培地の多数のサンプルに
菌の生育が見られたので、菌の単離を試みた。その結果
形状の異なるコロニーが認められたので、コロニーを取
得した。これら全ての株は、ブイヨン培地[nutri
ent broth(NB)]に生育可能であった。
【0062】実施例6 (実施例5で取得した分解菌の同定)取得した芳香族化
合物の資化性菌の2種類は、全てグラム陰性の細菌であ
った Burkholderia pickettii K1
1菌株(FERM P−16207) Burkholderia pickettii K3
7菌株(FERM P−16208) 下表26〜27に前記芳香族化合物資化性菌の特性を示
す。
【0063】
【表26】
【0064】
【表27】
【0065】実施例7 実施例1で得られた分解菌による低リン濃度、低窒素濃
度条件下のフェノールの分解 (分解方法)供試菌株を1/10E−平板培地(フェノ
ール1,000ppm)に植菌し、30℃にて培養し
た。生育した菌体を1/10E−培地2mlを入れたプ
ラスチックチューブ(フェノールがチューブに吸着しな
いことは確認済み)に植菌し、振とう培養機(MBSS
−10、丸菱)にて培養して、培養後のフェノールの分
解量を、ガスクロマトグラフィーを用いて定量した。初
発フェノール濃度は100ppm、1000ppmと
し、それぞれ3、6日後にサンプリングを行った。ガス
クロマトグラフィーの条件を以下に示す。 カラム(Column) :UnisoleF−200 注入温度(Inj.temp) :180℃ カラム温度(Col.temp):150℃ 検出器 (Detector) :FID 注入量 (inj.size) :2μl 内部標準物質(IS) :ジエチレングリコール 分解試験の結果を下表28に示す。実験に供した4株
は、いずれもフェノール分解能を有していた。
【0066】
【表28】
【0067】(実施例1で得られた菌株と既存の菌株の
フェノール分解能の比較実験) 実施例8 供試菌株としては実施例1で得た分離株1C、1E、1
H及び2Dの5株を用いた。また、比較のために、これ
までにフェノール分解菌として報告されているATCC
(American Type Culture Cu
lture Collection)保存菌株も用い
た。このATCC保存のフェノール分解菌は、下記の4
株である。 ・Pseudomonas putida ATCC 11172 ・Rhodococcus rhodochrous ATCC 14347 ・Vibrio cyclosies ATCC 14635 ・Rhodococcus zopfii ATCC 51349 前記供試菌株を1/100F−培地、または1/100
F−培地のリン、窒素濃度をそれぞれ約500ppmに
高めた培地2mlを入れたプラスチックチューブに植菌
し、振とう培養機(MBSS−10、丸菱)にて30
℃、4日間培養した。培養後のフェノールの分解量を、
ガスクロマトグラフィーを用いて定量した。
【0068】(結果と考察)分解試験の結果を下表29
〜30に示した。取得した分解菌は5株とも1/100
F−培地に良好に生育し、添加した100ppmのフェ
ノールはほとんどが4日以内に完全に分解されていた。
また、培地中のリン、窒素濃度を高めても、生育、フェ
ノール分解共に阻害は全く見られなかった。一方、AT
CC保存株の方は、全ての菌株が基本培地には全く生育
が見られなかった。表中でフェノールのわずかな減少が
見られるのは、植菌した菌体への吸着であると思われ
る。なお、培地中のリン、窒素濃度をそれぞれ500p
pmに高めた培地を用いた場合には、表30に示すよう
にATCC14635株以外の3株に生育が見られ、フ
ェノールの分解が観察された。この結果から、前記5株
のフェノール分解菌は、これまでに知られているフェノ
ール分解菌が全く生育できないような低リン低窒素条件
下で生育し、良好なフェノール分解能を有する新規な菌
であると考えられる。
【0069】
【表29】
【0070】
【表30】
【0071】実施例9 実施例3で取得した分解菌による低リン濃度、低窒素濃
度条件下芳香族化合物の分解特性 (分解方法)供試菌株としては実施例3で得た分離株3
A(Arthrobacter atrocyaneu
s3A)およびK2(Alcaligenes den
itrificans subs.denitrifi
cansK2)を用いてフェノールの資化性を確認し
た。基質であるフェノールの量は100ppmとし、前
記1/10E−培地のリンおよび窒素を5ppmにした
ものを基本培地とし、リンあるいは窒素濃度を変化させ
た培地を使用しフェノールの資化性を確認した。すなわ
ち、前記供試菌株3AおよびK2を前記培地に植菌し、
培養は600rpmの回転振とう下で3日間30℃で行
った。菌体の生育度は580nmの吸光度(A580)
で、フェノール濃度はHPLCにより測定した。
【0072】実施例10 実施例5取得した分解菌の低リン濃度、低窒素濃度条件
下の各種芳香族化合物に対する分解特性 (分解方法)1/100NB平板に生育させた前記K1
1およびK37株を1/100F培地に懸濁し、その1
00μlを155ml容バイアルビン(培地30ml)
に接種。その後基質である各種芳香族化合物(ベンゼ
ン、トルエン、キシレン)をそれぞれ100ppmづつ
添加した(合計300ppm)。ただし、キシレンにつ
いては、あらかじめo−、m−、p−を1:2:1で混
合しておいたものを使用した。バイアルビンをテフロン
コートブチルゴム栓、およびアルミシールで密封し、3
0゜Cで振とう培養をした。実験は2連にて行った。一
定期間ごとにガスタイトシリンジにて気相を50μl引
き抜きGCにて定量。また、滅菌した1mlシリンジで
培養液を0.5ml抜き取り、生育量を測定した。
【0073】(結果と考察)前記分解試験の結果を図1
〜4に示した。図1および図2に示す結果より、K2株
は100ppmのフェノールを分解するのに、培地中の
窒素濃度は0.5ppm程度、リン濃度は1ppm程度
あれば十分であることが解る。また、図3および図4に
示す結果より、菌の生育が観察され、これに伴ってベン
ゼン、トルエン、キシレンが分解されているので、K1
1株およびK37株はベンゼン、トルエン、キシレンを
分解資化して生育していることが解る。
【0074】実施例11 低栄養性微生物の固定化担体の材質を検討するため、ポ
リスチレン、テフロン、アルミナ、ナイロン、デルリ
ン、ポリエチレン、ポリプロピレンを用いてψ6.3m
mのビーズを作成した。種母培養したK2株および3A
株は他の培養実験と同様に滅菌水で懸濁し、580nm
吸光度(A580)で0.01になるように植菌した。培
地1mlとビーズ4個をネジ付ガラス試験管に入れ、3
0℃、600rpmの回転振盪下で1日間培養を行い、
フェノールの分解能を検討した。結果は図5および6に
示した。ナイロンとデルリンはフェノールの吸着或いは
吸収量が高かったため、以降の実験には供しなかった。
培養時に合成樹脂製のビーズを添加した時には、いずれ
の菌株においても、ビーズ無添加の場合に比べて浮遊菌
体量が増加し、これに伴ってフェノールの分解が促進さ
れた。特にポリスチレンビーズを添加した時に、いずれ
の菌株においても浮遊菌体量が著しく増加した。前記の
ようにフェノール分解活性と共に、培地中の浮遊菌体量
も増加したことにより、培地中に添加した合成樹脂製は
低栄養性微生物の生育を促進する効果があるものと推測
される。
【0075】実施例12 K2株の培養時にψ6.3mmのポリスチレンビーズを
試験管あたり1〜4個添加してポリスチレンビーズの添
加個数とフェノール分解に対する影響を検討した。種母
培養したK2株は他の培養実験と同様に滅菌水で懸濁
し、A580で0.01になるように植菌した。培地1m
lとビーズ4個をネジ付きガラス試験管に入れ、30
℃、600ppmの回転振盪下で1日間培養を行い、フ
ェノールの分解能を検討した。その結果を下表31に示
した。ポリスチレンビーズの添加個数が増加するに従
い、浮遊菌体量も増加し、これに伴ってフェノール分解
量も増加した。
【0076】
【表31】
【0077】実施例13 ポリスチレンビーズ(ψ6.3mm)を用いて図7に示
すようなバイオリアクターを2台作成した。1台にはポ
リスチレンビーズを300個添加し、もう1台にはポリ
スチレンビーズを全然添加せずに両者を比較検討した。
培地は各々500ml添加し、種母培養したK2株は滅
菌水に懸濁してA580で0.001になるように植菌し
た。培養は回転バネを250rpmで回転撹拌しながら
25℃で行った。反応は回分式で行った。その結果、図
8に示すようなポリスチレンビーズを添加したものは浮
遊菌体量も増加し、これに伴ってフェノール分解能もポ
リスチレンビーズ無添加に比べ高かった。
【0078】実施例14 小型ジャー型リアクターによるフェノールの分解 本実施例は、図10に示すような菌体剥離型リアクター
として小型ジャー型リアクターを用いてフェノールを分
解する実施例である。該小型ジャー型リアクターは、カ
ルスター社製の動物細胞培養用フラスコ(500ml、
ダブルアーム付)を改造して作製した。主な改造点は、
フラスコ内部にステンレス製カゴを設置し、ポリスチレ
ンビーズ〔住友ベークライト製ELISA(RIA)用ボ
ールH500個〕を添加出来るように、またリアクター
内の水面が水平になるようにテフロン製のバッフルを設
置し、さらに該撹拌羽根の軸にステンレス製の棒を2本
取付、カゴの中のポリスチレンビーズに物理的な衝撃を
与えられるようにした。このリアクターを用いて、浮遊
菌体量とフェノール分解量を検討した。
【0079】種母培養したK2株を他の培養実験と同様
に滅菌水で懸濁し、580nmの吸光度(A580)で0.
01となるように植菌した。培地はリン0.5ppm、
窒素5ppmおよびフェノール100ppmを含むもの
を用い、23時間の回分培養を行なった。その結果を下
表32に示した。同表の結果から明らかなように、ステ
ンレス製の棒を取付けることにより浮遊菌体量は著しく
増大した。また、これに伴いフェノール分解活性も向上
した。
【0080】
【表32】 (注):菌体の成育が著しく低かったので分析を行なわなかった。
【0081】実施例15 小型ジャー型リアクターによるトルエンの分解 本実施例は、図10に示すような菌体剥離型リアクター
として小型ジャー型リアクターを用いてトルエンを分解
する実施例である。該小型ジャー型リアクターは、カル
スター社製の動物細胞培養用フラスコ(500ml、ダ
ブルアーム付)を改造して作製した。主な改造点は、フ
ラスコ内部にステンレス製カゴを設置し、ポリスチレン
ビーズ〔住友ベークライト製ELISA(RIA)用ボー
ルH500個〕を添加出来るように、またリアクター内
の水面が水平になるようにテフロン製のバッフルを設置
し、さらに該撹拌羽根の軸にステンレス製の棒を2本取
付、カゴの中のポリスチレンビーズに物理的な衝撃を与
えられるようにした。このリアクターを用いて、浮遊菌
体量を検討した。
【0082】種母培養したK11株を他の培養実験と同
様に滅菌水で懸濁し、580nmの吸光度(A580)で
0.01となるように植菌した。培地はリン0.5pp
m、窒素5ppmおよびトルエン100ppmを含むも
のを用い、45時間の回分培養を行なった。その結果を
下表33に示した。同表の結果から明らかなように、ス
テンレス製の棒を取付けることにより浮遊菌体量は著し
く増大した。ステンレス製の棒を設けるることにより、
浮遊菌体量は著しく向上した。
【0083】
【表33】
【0084】
【効果】栄養塩類を添加することなしに、低栄養条件で
生育し、芳香族化合物を分解することのできる低栄養性
微生物の生育促進方法、該生育促進方法を用いた有機化
合物、例えばフェノール含有排水処理用バイオリアクタ
ー、および該バイオリアクターを用いた排水処理技術、
例えば製油所や化学工場などのフェノール含有排水処理
技術を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】フェノール資化性菌K2の培地中の窒素濃度を
変化させた場合のフェノール分解結果を示す図である。
【図2】フェノール資化性菌K2の培地中のリン濃度を
変化させた場合のフェノール分解結果を示す図である。
【図3】芳香族炭化水素資化性菌K11のベンゼン、ト
ルエン、キシレンを分解資化する時の経時変化を示す図
である。
【図4】芳香族炭化水素資化性菌K37のベンゼン、ト
ルエン、キシレンを分解資化する時の経時変化を示す図
である。
【図5】実施例11のK2株の浮遊菌体量およびフェノ
ールの分解の結果を示す図である。
【図6】実施例11の3A株の浮遊菌体量およびフェノ
ールの分解の結果を示す図である。
【図7】本発明で使用するバイオリアクターの概念図で
ある。
【図8】図7のバイオリアクターを用いてK2株培養を
行ったフェノール分解結果および浮遊菌体量を示す図で
ある。
【図9】本発明の菌体剥離型リアクターの概念を説明し
た図である。
【図10】小型ジャー型リアクターの模式的断面図であ
る。
【符号の説明】
1 ポリスチレンビーズ保持用のカゴ 2 カゴ中に保持されたポリスチレンビーズ 3 バッフル(じゃま板) 4 撹拌羽根 5 回転軸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI //(C12N 1/20 C12R 1:01) (C12N 1/20 C12R 1:05) (C12N 1/20 C12R 1:06) (C12N 1/20 C12R 1:40) (72)発明者 穂積 豊治 東京都港区台場2丁目3番2号 昭和シェ ル石油株式会社内

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 低栄養性微生物〔Burkholder
    ia cepacia 1A(FERM P−1556
    6)を除く、以下菌体とも言う。〕の生育を合成樹脂の
    存在下で行うことを特徴とする低栄養性微生物の生育促
    進法。
  2. 【請求項2】 合成樹脂表面に保持されて増殖した菌体
    の少なくとも一部を積極的に剥離させながら行なう請求
    項1記載の低栄養性微生物の生育促進法。
  3. 【請求項3】 合成樹脂がポリスチレンである請求項1
    〜2のいずれかに記載の低栄養性微生物の生育促進法。
  4. 【請求項4】 菌体の生育を合成樹脂の存在下、排水中
    で行う請求項1〜3のいずれかに記載の低栄養性微生物
    の生育促進法。
  5. 【請求項5】 排水が芳香族化合物を含有するものであ
    る請求項4記載の低栄養性微生物の生育促進法。
  6. 【請求項6】 芳香族化合物がフェノール、ベンゼン、
    トルエンおよびキシレンよりなる群から選ばれた少なく
    とも1種の化合物である請求項5記載の低栄養性微生物
    の生育促進法。
  7. 【請求項7】 低栄養性微生物がPseudomona
    s putida9−1A1菌株(FERM P−15
    571)、Burkholderia cepacia
    1C菌株(FERM P−15567)、Burkh
    olderia cepacia 1E菌株(FERM
    P−15568)、Burkholderia pi
    ckettii K11菌株(FERM P−1620
    7)、Burkholderia pickettii
    K37菌株(FERM P−16208)、Rhod
    ococcus sp.10−1A1菌株(FERMP
    −15572)、Arthrobacter atro
    cyaneus 3A菌株(FERM P−1601
    6)、Cryptococcus albidus 3
    H菌株(FERM P−16015)、Alcalig
    enes denitrificans subsp.
    denitrificans K2菌株(FERM P
    −16012)、Alcaligenes denit
    rificans subsp.denitrific
    ans K3菌株(FERM P−16013)、およ
    びAlcaligenes denitrifican
    ssubsp.denitrificans K19菌
    株(FERM P−16014)よりなる群から選ばれ
    たものである請求項1〜6のいずれかに記載の低栄養性
    微生物の生育促進法。
  8. 【請求項8】 低栄養性微生物[Burkholder
    ia cepacia 1A(FERM P−1556
    6)を除く]を合成樹脂と共存させたものであることを
    特徴とするバイオリアクター。
  9. 【請求項9】 合成樹脂がポリスチレンである請求項4
    記載のバイオリアクター。
  10. 【請求項10】 合成樹脂表面に保持されて増殖した菌
    体の少なくとも一部を積極的に剥離させる手段を有する
    請求項8〜9のいずれかに記載のバイオリアクター。
  11. 【請求項11】 低栄養性微生物がPseudomon
    as putida9−1A1菌株(FERM P−1
    5571)、Burkholderiacepacia
    1C菌株(FERM P−15567)、Burkh
    olderia cepacia 1E菌株(FERM
    P−15568)、Burkholderia pi
    ckettii K11菌株(FERM P−1620
    7)、Burkholderia pickettii
    K37菌株(FERMP−16208)、Rhodo
    coccus sp.10−1A1菌株(FERM P
    −15572)、Arthrobacter atro
    cyaneus3A菌株(FERM P−1601
    6)、Cryptococcus albidus 3
    H菌株(FERM P−16015)、Alcalig
    enes denitrificans subsp.
    denitrificans K2菌株(FERM P
    −16012)、Alcaligenes denit
    rificans subsp.denitrific
    ans K3菌株(FERMP−16013)、および
    Alcaligenes denitrificans
    subsp.denitrificans K19菌
    株(FERM P−16014)よりなる群から選ばれ
    たものである請求項8〜10のいずれかに記載のバイオ
    リアクター。
  12. 【請求項12】 排水処理用である請求項8〜11のい
    ずれかに記載のバイオリアクター。
  13. 【請求項13】 排水が芳香族化合物を含有するもので
    ある請求項12記載のバイオリアクター。
  14. 【請求項14】 芳香族化合物がフェノール、ベンゼ
    ン、トルエンおよびキシレンよりなる群から選ばれた少
    なくとも1種の化合物である請求項13記載のバイオリ
    アクター。
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JP2016041393A (ja) * 2014-08-13 2016-03-31 大阪瓦斯株式会社 フェノール類化合物含有排水の処理方法

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JP2013172662A (ja) * 2012-02-24 2013-09-05 Kanazawa Inst Of Technology 物質変換方法、バイオリアクタの製造方法、バイオリアクタ
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