JPH11155404A - 乳牛の乳頭殺菌消毒剤及び殺菌消毒方法 - Google Patents

乳牛の乳頭殺菌消毒剤及び殺菌消毒方法

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JPH11155404A
JPH11155404A JP9330358A JP33035897A JPH11155404A JP H11155404 A JPH11155404 A JP H11155404A JP 9330358 A JP9330358 A JP 9330358A JP 33035897 A JP33035897 A JP 33035897A JP H11155404 A JPH11155404 A JP H11155404A
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JP
Japan
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milking
nipple
milk
iodine
dipping
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JP9330358A
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English (en)
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Eiji Tsunoda
映二 角田
Toku Ueichi
徳 上市
Shigeru Ando
茂 安藤
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Nippon Zenyaku Kogyo Co Ltd
Original Assignee
Nippon Zenyaku Kogyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 乳牛の搾乳前の乳頭の殺菌消毒と搾乳後の乳
頭の殺菌消毒とを行い得る殺菌消毒剤と、乳頭の殺菌消
毒方法とにより、乳頭表面の細菌を有意に殺菌消毒して
乳房炎を予防する。 【解決手段】 水性溶液中に有効ヨウ素0.1〜0.5
%、保湿剤としてグリセリン2〜5%又はプロピレング
リコール2〜5%を含有することを特徴とする乳牛の乳
頭殺菌消毒剤である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乳牛の搾乳前及び
搾乳後に使用する乳頭の殺菌消毒剤及び殺菌消毒方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】乳牛の乳頭消毒は、乳房炎防除の最も重
要な予防対策の1つであり、英国のDoddらが195
2年に乳頭消毒剤を開発・実施し、我国では昭和40年
頃より乳質改善事業の一環として使用が実施されるよう
になり、今日では40%の普及率となっている。
【0003】現在一般に実施されている乳頭消毒は、搾
乳後に乳頭を薬液に浸漬する方法(所謂ポストディッピ
ング)であり、乳頭皮膚表面に付着する乳房炎起因菌を
殺菌消毒し、さらに保湿剤によりひび割れ等の乳頭皮膚
の状態を改善し、乳頭表面の細菌の増殖を抑制すること
により、乳房炎を予防することにあり、市場では多数の
製品が市販されている。
【0004】しかしながら、米国のthe Natio
nal Institute for Researc
h in Dairyingにより実施された試験にお
いて、ポストディッピング実施乳牛群の12ケ月間での
新たな感染は50%減少したものの、それは既に感染し
ていた乳房の全体からみると14%の僅かな減少でしか
なかった。このことから、既存菌による亜臨床型感染が
持続したことが伺えたと報告している。即ち、このポス
トディッピングは、伝播性の乳房炎起因菌による新たな
感染の率は減少させるけれども、いわゆる環境性乳房炎
の起因菌に対する防除効果は期待できないと言うことで
ある。
【0005】次に、環境性乳房炎の主な原因は、その発
生機序を図6(A)(B)に示す如く、図6(A)のよ
うに乳頭皮膚に付着して先端に移行した乳房炎起因菌
が、図6(B)のようにミルカー搾乳時の乳汁逆流現象
によって乳頭口を通じて乳頭槽へ侵入すること等の原因
で発生する乳房炎である。
【0006】搾乳後の消毒(ポストディッピング)のみ
では、その効果持続期間(例えば適用後1〜2時間)が
比較的短く、次の搾乳までに殺菌効果が消失するため、
環境性の起因菌に対しては効果に限界があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように、搾乳後の
消毒(ポストディッピング)には既存菌に対する感染へ
の効果が期待できない問題があり、更に環境性乳房炎に
対する効果にも限界がある。
【0008】本発明は、かかる従来の問題点を解決すべ
くなしたもので、乳牛の搾乳前の乳頭の殺菌消毒(プレ
ディッピング)と搾乳後の乳頭の殺菌消毒(ポストディ
ッピング)を行い得る殺菌消毒剤と、乳頭の殺菌消毒方
法とにより、乳頭表面の細菌を有意に殺菌消毒して乳房
炎を予防することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
水性溶液中に有効ヨウ素0.1〜0.5%、保湿剤とし
てグリセリン2〜5%を含有することを特徴とする乳牛
の乳頭殺菌消毒剤であり、また請求項2記載の発明は、
保湿剤として、グリセリンに代えてプロピレングリコー
ル2〜5%を含有することを特徴とする乳牛の乳頭殺菌
消毒剤であり、更に請求項3記載の発明は、乳牛の搾乳
前に、容器に入れた請求項1又は2記載の乳牛の乳頭殺
菌消毒剤に乳頭を浸漬した後、清潔な布状物で拭き取
り、搾乳後に、再び前記乳牛の乳頭殺菌消毒剤に乳頭を
浸漬した後、清潔な布状物で拭き取ることを特徴とする
乳牛の乳頭殺菌消毒方法であり、また請求項4記載の発
明は、布状物が、使い捨て紙タオルであることを特徴と
する請求項3記載の乳牛の乳頭殺菌消毒方法である。
【0010】搾乳前の乳頭の浸漬消毒(以下プレディッ
ピングと称する)は、乳房炎の予防に効果ありとの文献
がある一方で、プレディッピングは搾乳前の浸漬である
ので、ポストディッピング剤をプレディッピング用とし
て使用した場合、粘稠性が高く、ヨウ素が乳頭にいつま
でも付着し、それが搾乳時にミルク中に移行しヨウ素の
ミルク残留が問題とされた。そのためプレディッピング
後の乳頭に付着した薬剤の拭き取りを充分実施する必要
があるとの報告がなされている。
【0011】そこで残効性(粘稠性)の低い、ヨウ素濃
度の低い製品の開発が待たれた。したがって、搾乳前と
後に使用するディッピング剤は、当然夫々の目的にかな
った製品を使用しなければならないものの、我国では未
だプレディッピング剤として使用できる製品が存在しな
かった。
【0012】しかし酪農家にとって乳牛の乳房炎発生は
深刻な問題であり、乳房炎を予防するためにポストディ
ッピング剤がプレディッピング用として使用され、動物
用医薬品であるポストディッピング剤の用途外使用、ミ
ルク中へのヨウ素移行などの問題が発生していると思考
される。これらの問題を解決するために、プレディッピ
ング剤として有効に使用することができ乳頭の殺菌消毒
剤の出現が望まれている。
【0013】中川、古川、中島らは、プレディッピング
実施農家はタオルによる洗浄を行った農家と比較して黄
色ブドウ球菌、環境性連鎖球菌が有意に低く、乳質を衛
生的に維持するため、プレディッピングは有効であると
思われたと発表している。
【0014】このようにプレディッピングは乳質改善に
有効であることが文献にも明らかにされていることか
ら、本特許発明者はどのような成分分量とすれば、プレ
ディッピング剤としても好適に使用できる乳頭の殺菌消
毒剤を得られるかについて種々実験を重ねた結果、本発
明を完成した。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の有効性を確認する
ための試験、及び好適な実施の形態について説明する。
【0016】試験方法1 プレディッピング剤として100g中ヨウ素複合体(ヨ
ウ化ナトリウムとヨウ素の結合体)0.2g、ヨウ素酸
ナトリウム0.07g、ヨウ化ナトリウム0.025
g、保湿剤としてグリセリン2gを含むヨウ素0.1%
含有の水性溶液(検体I)を使用してプレディッピング
の野外試験を行った。
【0017】試験方法2 プレディッピング剤として100g中ヨウ素複合体1
g、ヨウ素酸ナトリウム0.35g、ヨウ化カリウム
0.125g、保湿剤としてプロピレングリコール2g
を含むヨウ素0.5%含有の水性溶液(検体II)を使
用してプレディッピングの野外試験を行った。
【0018】検体I及び検体IIのプレディッピング野
外試験成績 (1)試験目的 搾乳前の乳頭の薬剤浸漬(プレディッピング)は、乳質
改善に効果があると言われており、また、乳頭表皮に付
着している細菌がミルカー搾乳時の乳汁逆流現象によっ
て乳頭槽内へ侵入すること等の原因で発生する乳房炎の
予防に効果的であると言われている。この乳房炎予防の
効果は、図5(A)(B)に示す如く、図5(A)のよ
うに搾乳前に乳頭にプレディッピングを施すと、乳頭皮
膚に付着した乳房炎起因菌は殺菌され、従って図5
(B)のようにミルカー搾乳時に乳汁逆流現象によって
菌が乳頭口を通じて乳頭槽へ侵入するのを防止できるこ
とによっている。検体Iのプレディッピングを実施する
ことにより、試験は乳汁中の成分及び体細胞数への影
響について、また、検体IIのプレディッピングを実施
することにより、試験は乳頭表面の細菌数に及ぼす効
果について試験し検討した。
【0019】(2)試験区分及び供試頭数 試験 N酪農協傘下のフリーストール農家の搾乳牛90頭を用
い、従来の搾乳手順で実施した5週間の成績を対照群と
し、その後プレディッピングを採用した搾乳手順で実施
した5週間の成績を試験群とした。 試験 臨床研究牧場の搾乳牛18頭を用い、本発明のプレディ
ッピング実施群(試験群)9頭、未実施群(対照群)9
頭に区分した。F酪農組合連合会傘下の一般酪農家4軒
の搾乳牛54頭を各農家ごとに従来の搾乳手順にプレデ
ィッピングを追加実施した群(試験群)29頭、従来通
りの搾乳手順を実施した群(対照群)25頭の2群に分
けて供試した。
【0020】上記において、本発明のプレディッピング
採用手順は、図1に示すように、乳頭をヨウ素0.1%
薬剤に浸漬し片側6頭を連続で実施する→最初の牛から
順次に、乳頭の薬液を紙タオルで拭き取る→前搾りを実
施し、ミルカーを装着して搾乳する→次の牛の搾乳に移
る(片側終了後、一方側6頭処置)→ミルカーの離脱
後、ポストディッピングを実施する、という手順で行っ
た。
【0021】また、従来の搾乳手順は、図2に示すよう
に、次亜塩素酸ナトリウム1000倍希釈液に浸した布
タオルで拭き取る。→新しい布タオルで再度拭き取る
(この布タオルは次の拭き取りに使用)→前搾りを実施
し、ミルカーを装着して搾乳する→両側を左右交互に、
この手順を1頭ずつ繰返す→ミルカーの離脱後、ポスト
スプレーを実施する、という手順で行った。
【0022】(3)調査項目及び方法 試験は、乳汁中の成分(乳脂肪、乳蛋白及び乳糖)及
び体細胞数を比較した。バルク合乳を毎週1回測定し、
従来搾入手順の5時点とプレディッピング採用手順の5
時点の成績を比較した。
【0023】試験は、乳頭清拭前、ミルカー装着前及
び離脱後の3時点における乳頭表面の細菌数の推移を比
較した。調査した乳頭数は、3試験の合計で試験群76
本、対照群68本であり、3試験を総合し試験群と対照
群での3時点の成績を比較検討した。また、採材試料は
バルク合乳を用い、採材時点は従来手順(5週)及びプ
レディッピング採用手順(5週)の10時点で行った。
【0024】a)試験 乳質への影響について プレディッピング実施群の搾乳実施者の聞き取り調査の
結果は以下の通りであった。 ・搾乳時間が90頭の搾乳で約20分間短縮された。 ・各牛の乳汁の搾り切りが良くなった。 ・搾乳後の乳頭消毒でスプレーの時に比べて、全体的に
むらが無くなった。 ・乳頭が以前に比べて滑らかで綺麗になった。 ・毎回の搾乳後の布タオル100枚の洗濯がなくなり楽
になった。
【0025】試験群と対照群の乳質の検査結果は表1の
如くであり、これを図3に示した。
【表1】 ───────────────────────────────── 調査項目 対照群(n=5) 試験群(n=5) ───────────────────────────────── 乳脂肪率(%) 3.93±0.03a 4.09±0.05b 乳蛋白率(%) 3.29±0.04a 3.36±0.02b 乳糖率(%) 4.42±0.04 4.44±0.03 体細胞数(log/ml) 5.39±0.06 5.36±0.10 ───────────────────────────────── aとbの2群間で有意な差(p<0.01)あり
【0026】b)試験 乳頭表面の細菌数に及ぼす効
【表2】 調査乳頭本数(1頭につき2乳頭を供試) ──────────────────────────────── 区分 臨床研究牧場 一般酪農家(4軒) 計 ──────────────────────────────── 試験群 9頭;18本 29頭;58本 38頭;76本 対照群 9頭;18本 25頭;50本 34頭;68本 ──────────────────────────────── 採材方法:乳頭口に近い乳頭表面(ミルカーに収まる部
位)を円形(3.14cm2)にくり抜いたプラスチッ
ク板で押し付け、その面を滅菌綿棒で拭い取った後、生
理食塩水1cc分注したチューブに綿棒を入れ良く撹拌
し、試料とした。血液寒天培地に塗布し、37℃で24
時間培養し、発育した細菌数をカウントし、乳頭表面1
cm2当たりの細菌数を求めた。 採材時点:乳頭清拭前、ミルカー装着直前、離脱直後の
3時点を採材した。
【0027】試験の細菌検査成績の結果を下記表3に
示すと共に、図4に示す。
【表3】 乳頭表面細菌数(log/cm2) ─────────────────────────────────── 調査項目 乳頭清拭前 ミルカー装着直前 ミルカー離脱後 ─────────────────────────────────── 試験群(n=76) 4.38±0.79 2.21±0.93 2.37±0.98 対照群(n=68) 4.34±0.80 2.96±0.62 2.51±0.89 ───────────────────────────────────
【0028】前記試験から、以下のような結果が得ら
れた。ディッピングを行っていない酪農家で、検体Iに
よるプレディッピングを採用した搾乳手順で搾乳を実施
し、手順変更前後5週間のバルク合乳の成分及び体細胞
数を比較したところ、搾乳手順変更後(試験群)の乳汁
成分中、乳脂肪率と乳蛋白率が増加する傾向を示した。
また、搾乳実施者への聞き取り調査から搾乳時間が短縮
され、乳汁の搾り切りが良くなったとの回答があった。
これは、従来の作業手順では、布タオルによる乳頭清拭
からミルカー装着までの作業を1頭毎に行ったため作業
が非常に煩雑であったものと推察された。変更した搾乳
手段では、片側6頭を順次プレディッピングし、次の作
業(ペーパータオルでの薬剤拭き取り、ミルカー装着)
も規則的に順次行うことにより、作業性にリズムができ
作業効率を良くする結果につながったものと思われた。
また、従来の手順では、牛乳がパーラーに入ってからミ
ルカー装着までの時間は最初の牛と最後の牛で、かなり
時間差があったものと推察された。泌乳を促進するホル
モンであるオキシトシンは、乳牛がミルカーに入った時
点で既に脳下垂体より分泌され、搾乳し易い状態にある
と考えられるが、ミルカー装着が遅れる程オキシトシン
の分泌が少ない状態での搾乳となり、搾乳量も少なくな
ると考えられる。搾乳手順の変更で作業効率が良くなっ
たことにより、最初の牛と最後の牛でのミルカー装着ま
での時間差は少なくなり、全体的に乳汁の搾り切りが良
くなった要因と思われる。
【0029】以上のように、搾乳手順を変更したとこ
ろ、従来の手順に比べて搾乳時間が短縮され、搾乳者に
とっても乳牛にとってもストレスの軽減となり、間接的
に乳汁成分の改善につながったものと思われる。
【0030】また、搾乳後の乳頭消毒をスプレーから浸
漬方式(ディッピング)に変更したことから表面の消毒
むらが無くなり、乳頭全体を確実に消毒できていること
が示唆された。更に乳頭皮膚が滑らかになったのは、本
薬剤に含有するグリセリン等の保湿成分によるものと推
察され、検体Iによる乳頭皮膚の保護改善効果が認めら
れた。
【0031】試験から、フリーストール式の大型酪農
家において、検体Iのプレディッピングを採用した搾乳
手順に変更することにより、乳脂肪率と乳蛋白率が増加
する傾向を示し、また従来の乳頭清拭よりも細菌数が減
少することが認められた。更に、搾乳実施者からの聞き
取り調査によれば、搾乳手順の変更により、搾乳時間の
短縮と搾乳衛生の改善効果及び検体Iのディッピングに
よる乳頭皮膚の保護改善効果があることが認められた。
【0032】前記試験から、以下のような結果が得ら
れた。成績を総合評価した結果、搾乳前の乳頭清拭によ
り、その表面皮膚に付着する細菌数を有意に減少させる
ことが認められた。更に、搾乳手順に検体IIのプレデ
ィッピングを追加することにより、その細菌数を更に減
少させることが確認された。このことは、本薬剤を用い
てプレディッピングすることは、搾乳衛生上好ましいこ
とと思われる。
【0033】プレディッピングを実施しなかった対照群
において、ミルカー装着後の乳頭表面の細菌数がミルカ
ー装着直前に比べ減少したことは、ミルカー搾乳時の乳
汁逆流現象により、ライナー内に逆流する乳汁が乳頭表
面に付着していた細菌を洗い流したものと推察された。
このことは、集乳したバルク合乳中の細菌数を増加させ
る一因となるものと考えられ、食品衛生上好ましくない
と思われる。
【0034】また、板垣らは、乳頭口とミルカーに付着
する多数の細菌がミルカーの逆流現象などによって治療
後も再感染を引き起こし、これが潜在性及び慢性乳房炎
に移行する原因と考え、プレディッピングとミルカーの
徹底消毒除菌の必要性を報告している。したがって、試
験の乳頭表面細菌数の成績から、本薬剤のプレディッ
ピングを実施することは、潜在性及び慢性乳房炎の罹患
率を低下させることも期待される。以上、検体IIのプ
レディッピングを実施することによる乳成分への影響が
ないことを確認した。また、本剤のプレディッピングに
より乳頭皮膚表面の細菌数を減少させることを確認し
た。
【0035】一方、ヨウ素の残留性についてヨウ素製剤
が牛乳のヨウ素レベルを上げる危険性があると言われて
いるが、牛乳は人間にとって重要なヨウ素の供給源の1
つであり、成人の1日当たりの要求量は200μgであ
る。大半の牛乳は約350μg/lのヨウ素を含有して
おり、それゆえに700mlの牛乳で1日当たりの要求
量を供給することができる。牛乳中の大部分(70〜8
0%)のヨウ素は乳牛に供給する飼料に由来することか
ら、種々の飼料は牛乳中のヨウ素濃度を広範囲で変動さ
せている。例えばある測定では、バルク合乳中ヨウ素は
牛群の間で200〜4000μg/lと非常に大きな範
囲で変化するとしている。非常にヨウ素量の少ない場合
はバルクタンクの洗浄、ことによると乳頭洗浄水に加え
られる消毒水に由来するかもしれない。また、意外に
も、ヨウ素の残留はプレディッピングよりもポストディ
ッピングに由来することが多い。
【0036】そこで、本発明の乳牛の乳頭殺菌消毒剤を
プレディッピングに使用した際の牛乳へのヨウ素の影響
について検査した。
【0037】試験 本薬剤をプレディッピングに使用
した際の牛乳への影響について ヨウ素濃度0.1%とした本発明の乳牛の乳頭殺菌消毒
剤を用いてプレディッピングを行った時のバルク合乳中
のヨウ素濃度の上昇を検査したところ、20〜30μg
/lであった。また、ヨウ素濃度0.5%とした本発明
の乳牛の乳頭殺菌消毒剤を用いてプレディッピングを行
った時の牛乳中のヨウ素濃度の上昇は100〜150μ
g/lであり、一般に広範囲に変動する通常の牛乳中の
ヨウ素濃度に対して低い値を示した。本発明のプレディ
ッピングを実施した場合におけるバルク合乳中のヨウ素
濃度の上昇は、試験から明らかなように、20〜15
0μg/l程度であり、人の健康を害するような問題を
生じることが無いことが明らかとなった。
【0038】
【実施例】以下、本発明を実施例を挙げて更に詳述する
が、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものでな
いこと、プレディッピング剤として使用する場合につい
て示すが、ポストディッピング剤としても使用し得るこ
とは勿論である。
【0039】実施例1 100g中ヨウ素複合体0.2g、ヨウ素酸ナトリウム
0.07g、ヨウ化ナトリウム0.025g、保湿剤と
してグリセリン2gを含むヨウ素0.1%含有の水性溶
液を使用して、乳牛の搾乳前殺菌消毒剤として常法によ
り使用した結果、乳頭皮膚表皮細菌数は減少し、プレデ
ィッピング剤として効果をあげた。なお、常法とは、溶
液を容器に入れて、乳頭に浸漬した後、タオル等で乳頭
の薬液を清潔な布状物で拭き取り、搾乳後に再び溶液を
容器に入れて乳頭に浸漬した後清潔な布状物で拭き取る
ことをいう。布状物は使い捨て紙タオルを使用する。
【0040】実施例2 100g中ヨウ素複合体0.4g、ヨウ素酸ナトリウム
0.14g、ヨウ化ナトリウム0.05g、保湿剤とし
てグリセリン5gを含むヨウ素0.2%含有の水性溶液
を使用して、乳牛の搾乳前殺菌消毒剤として常法により
使用した結果、乳頭皮膚表皮細菌数は減少し、プレディ
ッピング剤として効果を上げた。
【0041】実施例3 100g中ヨウ素複合体0.4g、ヨウ素酸ナトリウム
0.14g、ヨウ化ナトリウム0.05g、保湿剤とし
てプロピレングリコール5gを含むヨウ素0.2%含有
の水性溶液を使用して、乳牛の搾乳前殺菌消毒剤として
常法により使用した結果、乳頭皮膚表皮細菌数は減少
し、プレディッピング剤として効果をあげた。
【0042】実施例4 100g中ヨウ素複合体0.6g、ヨウ素酸ナトリウム
0.21g、ヨウ化カリウム0.075g、保湿剤とし
てプロピレングリコール2gを含むヨウ素0.3%含有
の水性溶液を使用して、乳牛の搾乳前殺菌消毒剤として
常法により使用した結果、乳脂肪率と乳蛋白率が向上す
る傾向があり、乳頭が以前に比べて滑らかで綺麗になっ
た。
【0043】実施例5 100g中ヨウ素複合体0.8g、ヨウ素酸ナトリウム
0.28g、ヨウ化カリウム0.1g、保湿剤としてグ
リセリン4gを含むヨウ素0.4%含有の水性溶液を使
用して、乳牛の搾乳前殺菌消毒剤として常法により使用
した結果、乳脂皮膚表皮細菌数は減少し、プレディッピ
ング剤として効果をあげた。
【0044】実施例6 100g中ヨウ素複合体0.8g、ヨウ素酸ナトリウム
0.28g、ヨウ化カリウム0.1g、保湿剤としてプ
ロピレングリコール4gを含むヨウ素0.4%含有の水
性溶液を使用して、乳牛の搾乳前殺菌消毒剤として常法
により使用した結果、乳汁成分を向上する傾向があり、
乳頭が以前に比べて滑らかで綺麗になった。
【0045】実施例7 100g中ヨウ素複合体1g、ヨウ素酸ナトリウム0.
35g、ヨウ化カリウム0.075g、保湿剤としてプ
ロピレングリコール2gを含むヨウ素0.5%含有の水
性溶液を使用して、乳牛の搾乳前殺菌消毒剤として常法
により使用した結果、スプレー時に乳頭全体に認められ
た薬剤の「むら」も無くなり、乳頭皮膚表皮細菌数も減
少し、プレディッピング剤の効果が現れた。
【0046】実施例8 100g中ヨウ素複合体1g、ヨウ素酸ナトリウム0.
35g、ヨウ化カリウム0.075g、保湿剤としてグ
リセリン5gを含むヨウ素0.5%含有の水性溶液を使
用して、乳牛の搾乳前殺菌消毒剤として常法により使用
した結果、乳頭皮膚表皮細菌数も減少し、プレディッピ
ング剤の効果が現れた。
【0047】実施例9 100g中ヨウ素複合体1g、ヨウ素酸ナトリウム0.
35g、ヨウ化カリウム0.075g、保湿剤としてプ
ロピレングリコール5gを含むヨウ素0.5%含有の水
性溶液を使用して、乳牛の搾乳前殺菌消毒剤として常法
により使用した結果、乳頭が以前に比べて滑らかで綺麗
になった。
【0048】実施例10 100g中ヨウ素複合体0.2g、ヨウ素酸ナトリウム
0.07g、ヨウ化カリウム0.025g、保湿剤とし
てグリセリン5gを含むヨウ素0.1%含有の水性溶液
を使用して、乳牛の搾乳前殺菌消毒剤として常法により
使用した結果、乳頭皮膚表皮細菌数も減少し、プレディ
ッピング剤の効果をあげた。
【0049】実施例11 100g中ヨウ素複合体0.6g、ヨウ素酸ナトリウム
0.21g、ヨウ化カリウム0.75g、保湿剤として
グリセリン3gを含むヨウ素0.3%含有の水性溶液を
使用して、乳牛の搾乳前殺菌消毒剤として常法により使
用した結果、乳頭皮膚表皮細菌数も減少し、プレディッ
ピング剤の効果をあげた。
【0050】実施例12 100g中ヨウ素複合体0.6g、ヨウ素酸ナトリウム
0.21g、ヨウ化カリウム0.75g、保湿剤として
プロピレングリコール3gを含むヨウ素0.3%含有の
水性溶液を使用して、乳牛の搾乳前殺菌消毒剤として常
法により使用した結果、乳頭皮膚表皮細菌数も減少し、
搾乳時間の短縮と搾乳衛生の改善効果があり、プレディ
ッピング剤として効果をあげた。
【0051】実施例13 100g中ヨウ素複合体2g、ヨウ素酸ナトリウム0.
7g、ヨウ化カリウム0.25g、保湿剤としてグリセ
リン2gを含むヨウ素1%含有の水性溶液を使用して、
乳牛の搾乳前殺菌消毒剤として常法により使用した結
果、ヨウ素が乳頭にいつまでも付着して、搾乳時にミル
クに移行してヨウ素のミルク中残留があり、プレディッ
ピング剤として使用不適当と思われた。
【0052】
【発明の効果】本発明の乳牛の乳頭殺菌消毒剤は、プレ
ディッピングに適した製剤であり、プレディッピングに
より搾乳前の乳頭皮膚表面殺菌数の減少と乳質を向上さ
せることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の乳牛の乳頭殺菌消毒方法のプレディッ
ピング採用手順を示す説明図である。
【図2】従来の搾乳手順を示す説明図である。
【図3】試験群と対照群の乳汁中成分を比較して示した
グラフである。
【図4】試験群と対照群の乳頭表面細菌数を比較して示
したグラフである。
【図5】(A)は乳頭をプレディッピングした状態を示
す模式図、(B)はミルカーによる搾乳状態を示す模式
図である。
【図6】(A)は乳頭に乳房炎起因菌が付着した状態を
示す模式図、(B)はミルカーによる搾乳によって菌が
乳頭槽内に侵入する状態を示す模式図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A61L 2/18 A61L 2/18 // A47K 10/16 A47K 10/16 Z

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水性溶液中に有効ヨウ素0.1〜0.5
    %、保湿剤としてグリセリン2〜5%を含有することを
    特徴とする乳牛の乳頭殺菌消毒剤。
  2. 【請求項2】 保湿剤として、グリセリンに代えてプロ
    ピレングリコール2〜5%を含有することを特徴とする
    請求項1記載の乳牛の乳頭殺菌消毒剤。
  3. 【請求項3】 乳牛の搾乳前に、容器に入れた請求項1
    又は2記載の乳牛の乳頭殺菌消毒剤に乳頭を浸漬した
    後、清潔な布状物で拭き取り、搾乳後に、再び前記乳牛
    の乳頭殺菌消毒剤に乳頭を浸漬した後、清潔な布状物で
    拭き取ることを特徴とする乳牛の乳頭殺菌消毒方法。
  4. 【請求項4】 布状物が、使い捨て紙タオルであること
    を特徴とする請求項3記載の乳牛の乳頭殺菌消毒方法。
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