JPH11135846A - 半導体を用いた熱電装置 - Google Patents

半導体を用いた熱電装置

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JPH11135846A
JPH11135846A JP30071797A JP30071797A JPH11135846A JP H11135846 A JPH11135846 A JP H11135846A JP 30071797 A JP30071797 A JP 30071797A JP 30071797 A JP30071797 A JP 30071797A JP H11135846 A JPH11135846 A JP H11135846A
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thermoelectric
energy
temperature
heat
semiconductor
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Norio Hidaka
紀雄 日▲高▼
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Fujitsu Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 小型、かつ消費電力の少ない冷却装置を提供
する。 【解決手段】 低温端と高温端とを有する第1の熱電半
導体部材の低温端に第1の部材が接続されている。第1
の部材から第1の熱電半導体部材中に、電子及び正孔の
いずれか一方の第1のキャリアが注入される時に、例え
ばペルチェ効果等による吸熱が生ずる。発光領域が半導
体材料により形成され、第1の熱電半導体部材の高温端
まで輸送された第1のキャリアを捕集し、電子と正孔と
の再結合による発光を生ずる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体を用いた熱
電装置に関し、特にペルチェ吸熱効果を利用した発光装
置、冷却装置、電力抽出装置に関する。
【0002】大規模半導体集積回路装置(LSI)の高
集積化や高速大容量電算機システム等の大規模化ととも
に、その消費電力及び発熱量が増大し、その大量の熱を
吸収する冷却装置も大型化、大容量化している。冷却装
置の大型化が、システム全体の小型化、高性能化、低消
費電力化を困難なものにしている。また、従来の冷却装
置では、ある部分を冷却すると、他の部分で発熱が生ず
る。このため、発熱部分に放熱設備が必要となる。発熱
部分を有しない冷却装置を実現できれば、冷却装置の小
型化、低消費電力化等が期待できる。
【0003】光エネルギを癌治療や整形外科、歯科の生
体アブレーション等の医療分野、精密機械加工、半導体
製造等の工業分野に活用する研究が進むにつれて、卓上
型の小型で高出力のレーザ装置が要求されるようになっ
た。
【0004】近年、電力消費量の増大とともに、電力を
創りだす燃料の消費量は増大の一途をたどっており、エ
ネルギ資源の枯渇、炭酸ガスによる地球温暖化、排ガス
による環境汚染といったエネルギ危機から環境破壊まで
の人類生存に係わる問題が叫ばれるようになってきてい
る。この問題を解決するためのエネルギ源の探索、エネ
ルギの抽出方法などが世界的に模索されている。
【0005】理想的なエネルギ源としては、クリーンで
無尽蔵であることは無論のこと、それを取り出す装置が
小型でしかも大容量かつ高効率であることが望ましい。
【0006】将来のエネルギ源の一つの候補にあげられ
検討されている太陽エネルギは、クリーンで無尽蔵であ
るが地球への照射電力密度が1kW/m2 と小さく、そ
れを取り出す装置(太陽電池)の変換効率も20%程度
と低い。改良により現在の2〜3倍は可能との予測もあ
るが、充分な電力を得るためには大型にならざるを得な
い。
【0007】
【従来の技術】図7は、従来の熱電冷却素子のバンドダ
イヤグラムを示す。この素子はゼーベック係数α、抵抗
r、熱伝導度Kをもつ熱電半導体Sの両側にそれぞれ金
属M1及びM2 を接触させて構成されている。低温接合
部には、金属M1 のフェルミ準位とn型熱電半導体Sの
伝導帯下端の準位間のエネルギ差ΔEC のポテンシャル
障壁が形成され、高温接合部には、金属M2 のフェルミ
準位とn型熱電半導体Sの伝導帯下端の準位間のエネル
ギ差ΔEH のポテンシャル障壁が形成されている。
【0008】なお、より厳密には両接合部の半導体S側
にスパイク状の空乏層が形成されるが、その厚さは数n
m程度であるため金属M1 からの電子はトンネル効果に
より熱電半導体Sの伝導帯下端に達する。このため電子
に対しては実効的にΔEC のポテンシャル障壁と考えて
差し支えない。
【0009】金属M1 とM2 との間に電圧(αΔT+r
I)が印加されている。αΔTは熱電半導体Sの両端の
温度差をΔTにするために必要な電圧に相当する。電流
Iを流すことによって、低温接合部の金属中の電子がポ
テンシャル障壁ΔEC を乗り越え、かつエネルギQ
PC(ペルチェ吸熱量)を金属M1 から奪う。このため、
低温接合部が冷却されその温度がTC に下がる。
【0010】このペルチェ吸熱量QPCは、およそ(ΔE
C +2kT)程度のエネルギである。ここで、kはボル
ツマン定数、Tは温度を表す。より詳細には次のゼーベ
ック係数αに温度を乗じたもので表される。
【0011】
【数1】α=(k/q){ln(NCOND/Nd ) +2 } (V/K) ここで、kはボルツマン定数、qは電気素量、NCOND
伝導帯の有効状態密度、Nd はドナー濃度を表す。
【0012】エネルギQPCをもつ電子は半導体S中を移
動して高温接合部に達し、金属M2にエネルギQPH(Q
PC+αΔTS I:ペルチェ発熱量)を与える。このため
高温接合部は発熱し、その温度がTH に上昇する。低温
接合部の吸熱量をQC 、高温接合部の発熱量をQH 、ペ
ルチェ吸熱エネルギをQPC、ペルチェ発熱エネルギをQ
PH、ペルチェ吸熱係数をΠC 、ペルチェ発熱係数を
ΠP 、熱電半導体S内で発生するジュール熱をPr 、低
温接合部の温度をTC 、高温接合部の温度をTH 、外気
温度をTR 高温接合部と低温接合部との温度差をΔ
S とすると、これらの温度、熱量等の関係等は次式で
表される。
【0013】
【数2】 QC =QPC−(1/2) Pr −ΔTS K …(1.1) QH =QPH+(1/2) Pr −ΔTS K …(1.2) QH −QC =(QPH−QPC)+Pr …(1.3) =αΔTS I+Pr …(1.4) QPC=αTC I=ΠC I …(1.5) ΠC =αTC …(1.6) QPH=αTH I=α(TC +ΔTS )I …(1.7) ΠP =αTH …(1.8) Pr =rI2 …(1.9) ΔTS =TH −TC =TR −TC …(1.10)
【0014】式中の(1/2)Pr は熱電半導体Sの内
部で発生したジュール熱のうち低温接合部に流入する熱
量に相当し、ΔTS Kは高温接合部の発熱量のうち低温
接合部に流入する熱量に相当している。式(1.3)に
示すQH −QC は、この素子に外部から印加される電力
であり常に正の値をとる。これは、素子内で電力が消費
され熱エネルギとして素子内に残ることを意味する。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】従来のペルチェ素子に
熱絶縁空間において電流を流し続けると、高温接合部か
ら低温接合部への熱流、および高温接合部からの発熱及
び熱蓄積により素子全体の温度が上昇し続ける。同時
に、低温接合部の温度も上昇することになるため、この
素子は冷却機能を失うことになる。従って、この素子を
冷却器として利用する場合は、熱の蓄積による高温接合
部の温度上昇を抑制し一定温度に保持するための放熱器
が不可欠となる。このため冷却素子全体の寸法、消費電
力が大きくなる。
【0016】本発明の目的は、小型、かつ消費電力の少
ない冷却装置を提供することである。
【0017】本発明の他の目的は、発熱を抑制すること
ができる発光装置を提供することである。
【0018】本発明のさらに他の目的は、効率的な電力
抽出装置を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明の一観点による
と、低温端と高温端とを有する第1の熱電半導体部材
と、前記第1の熱電半導体部材の低温端に接続された第
1の部材であって、該第1の部材から前記第1の熱電半
導体部材中に、電子及び正孔のいずれか一方の第1のキ
ャリアが注入される時に吸熱が生ずる材料により形成さ
れた第1の部材と、半導体材料により形成され、前記第
1の熱電半導体部材の高温端まで輸送された第1のキャ
リアを捕集し、電子と正孔との再結合による発光を生ず
る発光領域とを有する熱電装置が提供される。
【0020】低温端で、例えばペルチェ効果等による吸
熱が生ずる。高温端から発光領域に注入されたキャリア
のエネルギが光エネルギに変換される。このため、高温
端における発熱が抑制される。
【0021】
【発明の実施の形態】本願発明者は、従来のペルチェ素
子の動作原理を詳細に検討した。以下に、その検討内容
を説明する。
【0022】ペルチェ素子における熱の蓄積および高温
接合部の温度上昇の原因の一つは、電子によって低温接
合部の金属から奪われた熱エネルギが、高温接合部に元
の熱エネルギの形態のまま注入されていることにある。
すなわち、熱エネルギをある箇所で奪い、これを他所に
移動しその箇所を局所的に冷却したとしても、閉じた熱
システムでは熱エネルギが増えることはあっても減ずる
ことはなく(熱力学の第一法則、エネルギ保存の法則に
基づく)、他所で必ず熱の蓄積がおこる。
【0023】熱エネルギを他のエネルギ形態に変換して
熱システム外に放出することができれば、熱蓄積を抑制
できると考えられる。しかし、熱エネルギは完全に他の
形態のエネルギに変換できない低質のエネルギといわれ
ており、その変換の可能性には疑問が出てくる。反面、
力学エネルギや電気エネルギは、熱エネルギと違って摩
擦や抵抗が無ければ相互に完全に変換できる良質のエネ
ルギといわれる。
【0024】ペルチェ素子の低温接合部のポテンシャル
障壁を越えた電子は、ポテンシャルエネルギ(ΔEC
と運動エネルギ(2kT)の和の状態で高温接合部に輸
送していると考えられる。従って、このエネルギを熱エ
ネルギ以外の形態に変換できる可能性は十分あると予想
される。
【0025】ペルチェ素子の高温接合部における温度上
昇のもう一つの原因は、エネルギQ PCを与えられた電子
が高温接合部の金属M2 中に注入され、その注入された
電子が金属中の格子と衝突して、その金属に格子振動エ
ネルギを与えることである。
【0026】従って、問題を解決するための主要な技術
的課題は、高温接合部に注入されるエネルギを熱以外の
良質のエネルギ形態に変えること、及びエネルギを与え
られた電子と金属の格子との衝突を回避することにより
高温接合部における熱エネルギの発生を抑制することで
ある。
【0027】次に、上記の技術的課題を解決するための
本発明の実施例による熱電装置の動作原理について説明
する。
【0028】図1Aは、本発明の実施例による熱電装置
のバンドダイヤグラムを示す。n型熱電半導体S1 の低
温端(低温接合部)CC に金属M1 が接続され、高温端
(高温接合部)CH に、電子と正孔とが発光性の再結合
をする半導体(発光領域)S 2 、半導体S2 よりも大き
なバンドギャップを有するp型半導体S3 、及び金属M
2 がこの順番に接続されている。
【0029】図1Aに示す冷却装置においては、図7に
示す従来のペルチェ素子の高温接合部の金属M2 の代わ
りに半導体S2 を用いている。半導体S2 を用いると、
低温接合部CC から電子によって輸送されたエネルギを
高温接合部CH で光エネルギに変換することができる。
すなわち、高温接合部CH に輸送された電子のエネルギ
がすべて熱エネルギに変換されるのではなく、バンド間
遷移により光エネルギに変換されるのである。
【0030】図1Bは、図1Aに示す冷却装置内で生ず
る熱現象を、等価な電気回路を使って表した熱電等価回
路図を示す。この等価回路では、熱エネルギの流れを電
流、温度差を電圧、熱伝導度を電気コンダクタンスに等
価とおいている。低温接合部CC から高温接合部CH
での等価回路は従来の熱電冷却素子の熱流式から求め
た。また、半導体(発光領域)S2 の等価回路は発光素
子の光出力エネルギに関する次式から求めた。すなわ
ち、
【0031】
【数3】 QL =(QE −Pd ) …(2.1) =(QPH−Pd ) …(2.2) ここで、QL は、出力された光エネルギ、QE は発光領
域S2 に入力された電気エネルギ、Pd は熱損失を表
す。発光領域S2 では、入力される電気エネルギQE
ペルチェ発熱エネルギQPHと等価とおいている。
【0032】低温接合部CC の熱流源QC は外気からの
吸熱量、熱流源QPCはペルチェ吸熱エネルギ、(1/
2)Pr は熱電半導体S1 中で発生するジュール熱の半
分を表している。すなわち、熱電半導体S1 中で発生し
たジュール熱のうち半分の熱量が低温接合部CC に輸送
されると仮定している。KS は熱電半導体S1 の熱伝導
度、ΔTS は高温接合部CH の温度TH と低温接合部C
C の温度TC との温度差であり、ΔTS S は熱伝導に
より高温接合部CH から低温接合部CC に流入する熱量
を表す。
【0033】高温接合部CH の熱流源QPHはペルチェ発
熱エネルギ、(1/2)Pr は高温接合部に流入するジ
ュール熱を表している。発光領域S2 の熱流源QPHは発
光領域S2 に流入するペルチェ発熱エネルギに相当し、
この一部が光エネルギとして放出される。熱流源Pd
発光領域S2 で発生する熱損失を表し、(QPH−Pd)
が光となって素子外に放出されるエネルギとなる。KF
は高温接合部CH と外気間の熱伝導度、TR は外気温
度、QH は高温接合部CH から外気に流れる熱量であ
る。
【0034】図1Bの等価回路を基本熱流式で表すと、
以下のようになる。ここで、PINは印加電力を表す。
【0035】
【数4】 QH =QPH+(1/2) Pr −ΔTS S −(QPH−Pd ) …(2.3) QC =QPC−(1/2) Pr −ΔTS S …(2.4) QH −QC =(QPH−QPC)+Pr −(QPH−Pd ) …(2.5) =αΔTS I+Pr −QL …(2.6) PIN=αΔTS I+Pr …(2.7) Pr =rI2 …(2.8) ΔTS =(TR −TC )+(QH /KF ) …(2.9) TH =TR +(QH /KF ) …(2.10)
【0036】発光領域S2 の電気光変換効率が高くなっ
て熱損失Pd が小さくなると、高温接合部CH の発熱量
H が小さくなる。QH が負になると高温接合部CH
温度が外気温度より下がる。このとき、外気と高温接合
部CH との間の熱流QH は逆に外気から素子に向かって
流れることになる。熱損失Pd が大きく高温接合部C H
の発熱量が大きい時は、熱流QH は素子から外気に向か
って流れる。
【0037】高温接合部CH の発熱量QH 及び消費電力
H −QC を表す式(2.3)及び(2.5)は、〔−
(QPH−Pd )〕の項を除くと従来素子の式(1.1)
及び(1.3)になる。また、低温接合部CC と高温接
合部CH との温度差を表す式(2.9)は、熱伝導度K
F を無限大にすると、従来素子の式(1.10)になる。
熱伝導度KF が無限大ということは、外気と高温接合部
H 間に温度差がなくなり、高温接合部の温度TH が一
定の外気温度TR に保持されることを意味する。また、
これは、低温接合部CC で奪われる熱量QC と高温接合
部QH で外気に放出される熱量QH が平衡状態にあるこ
とを意味している。
【0038】式(2.3)の右辺の第4項(QPH
d ) は、高温接合部CH に達した電子のエネルギQPH
が光エネルギに変換される量を表している。この(QPH
−Pd )は電気光変換効率ηL を用いて表すとηL PH
となる。負の符号はエネルギの発生を表しており、光エ
ネルギとして高温接合部CH から素子外に取り出されて
いることを意味する。
【0039】これは、外部から注入される印加電力PIN
よりも光として放出される熱量の方が大きくなり得るこ
とを示している。すなわち、高温接合部CH の温度TH
が外気温度TR より低くなり得ることを意味する。これ
が従来素子との決定的な違いである。ここで、低温接合
部CC と発光領域S2 とは直列に接続されているため、
その各部、各層を流れる電流は等しい。従って、低温接
合部CC を流れる電子と発光領域S2 内で伝導帯から価
電子帯に遷移する電子とにより単位時間、単位面積当た
りに移動するエネルギ量は同じになる。
【0040】消費電力を表す式(2.5)の右辺の第3
項(QPH−Pd )の負の符号は、式(2.3)の第4項
と同様にエネルギが素子内部で発生していることを意味
している。即ち、入力電力〔(QPH−QPC)+Pr 〕を
加えることにより、ペルチェ発熱エネルギQPHの一部が
光エネルギ(QPH−Pd )として取り出され、素子外に
放出されていることを意味する。
【0041】通常、ペルチェ発熱エネルギQPHは入力電
力よりも大きくすることができるため、消費電力(2.
5)を負にすることが可能になる。すなわち、素子の外
にエネルギを抽出することができる。素子外に抽出され
たエネルギは、素子内で失われたエネルギに相当する。
すなわち、この熱システム(冷却素子と光放出空間を含
む系)の総エネルギ量は変化せず、エネルギ保存の法則
は満たされている。
【0042】また、冷却装置設計に必要な式は、上式の
基本熱流式(2.3)〜(2.10)に熱電素子パラメー
タを代入して整理し、次のように表すことができる。
【0043】
【数5】 QH =−ΠC I〔(EG /ΠC )ηL +(ΔTS S /ΠC I) −{(rI/2ΠC )+(EG /ΠC )}〕 …(3.1) QC =ΠC I{1−(rI/2ΠC )−(ΔTS S /ΠC I)} …(3.2) ここで、ΠC はペルチェ吸熱係数、EG は発光領域S2
のバンドギャップ、η L は発光領域S2 の電気光変換効
率、Iは素子を流れる電流である。
【0044】式(3.1)から、高温接合部CH の発熱
量QH を負にするには、ペルチェ吸熱係数ΠC を大きく
するとともに、電気光変換効率ηL 及び熱伝導率KS
大きくすることが必要である。一方、熱伝導率KS を大
きくしすぎると、式(3.2)が示すように吸熱量QC
が小さくなりすぎて性能が低下する。従来の熱電冷却装
置においては、熱伝導率KS が小さい程、性能が良くな
るが、本実施例による冷却装置では好適な値が存在する
ことが分かる。
【0045】次に、上記動作原理に基づいた実施例につ
いて説明する。図2は、実施例による熱電装置のバンド
ダイヤグラムを示す。実施例による熱電装置は、n側金
属Mn 、n型ペルチェ積層構造PBn 、n型半導体から
なる緩衝層Sn 、発光領域St 、p型半導体からなる緩
衝層Sp 、p型ペルチェ積層構造PBp 、p側金属Mp
がこの順番に積層されて構成される。n側金属Mn とn
型ペルチェ積層構造PBn との接合面、及びp側金属M
p とp型ペルチェ積層構造PBp との接合面が、図1A
に示す低温接合部CC に相当する。また、発光領域St
とn型ペルチェ積層構造PBn との接合部及び発光領域
t とp型ペルチェ積層構造PBp との接合部が、図1
Aに示す高温接合部CH に相当する。
【0046】n型ペルチェ積層構造PBn は、n型熱電
半導体層S1nと金属層M1nが交互に積層されて構成され
る。例えば、10層のn型熱電半導体層S1nと9層の金
属層M1nにより構成される。p型ペルチェ積層構造PB
p は、p型熱電半導体層S1pと金属層M1pが交互に積層
されて構成される。例えば、10層のp型熱電半導体層
1pと9層の金属層M1pにより構成される。
【0047】n型熱電半導体層S1n及びp型熱電半導体
層S1pは、それぞれ例えば厚さ約50μm、面積1×1
mm2 のn型PbTe層及びp型PbTe層である。金
属層M1n及びM1pは、例えば厚さ5μmのAu層であ
る。n型緩衝層Sn 及びp型緩衝層Sp は、それぞれ例
えば厚さ約2μmのn型InP層及びp型InP層であ
る。発光領域St は、例えばバンドギャップ1.25e
VのInGaAsP層である。
【0048】n型緩衝層Sn は、n型熱電半導体層S1n
のうち最も発光領域St 側の層と発光領域St との間の
格子不整合を緩和する。同様に、p型緩衝層Sp は、p
型熱電半導体層S1pのうち最も発光領域St 側の層と発
光領域St との間の格子不整合を緩和する。緩衝層Sn
及びSp を設けているために、発光領域St へのキャリ
ア注入効率及び発光領域の発光効率が高くなる。このた
め、高温接合部での熱損失が低減され、発光装置の熱電
性能が高くなる。
【0049】さらに、n型緩衝層Sn はp型ペルチェ積
層構造PBp から発光領域St 内へ注入された正孔に対
してポテンシャル障壁を形成し、n型ペルチェ積層構造
PB n 内への正孔の漏洩を抑制する。同様に、p型緩衝
層Sp はn型ペルチェ積層構造PBn から発光領域St
内へ注入された電子に対してポテンシャル障壁を形成
し、p型ペルチェ積層構造PBp 内への電子の漏洩を抑
制する。このため、発光領域St 内へキャリアが蓄積さ
れ、キャリアの再結合確率を高めることができる。
【0050】また、n型ペルチェ積層構造PBn 側の低
温接合部とp型ペルチェ積層構造PBp 側の低温接合部
の総吸熱量は、n型の電子による吸熱量とp型の正孔に
よる吸熱量の和となる。このため、電子のみによる吸熱
の場合、及び正孔のみによる吸熱の場合に比べて吸熱量
を2倍にすることができる。
【0051】また、図2に示す熱電装置では、n型ペル
チェ積層構造PBn 及びp型ペルチェ積層構造PB
p が、共に10個のペルチェ障壁を直列に有する。この
ため、各段のペルチェ障壁で吸熱されたエネルギが漸次
追加され、最終段の高温接合部のペルチェ発熱エネルギ
が大きくなる(例えば10倍になる)と考えられる。こ
のようにして、実効的なペルチェ係数ΠC を大きくし、
式(3.1)の高温接合部の発熱量QH を負にする条件
を満たすような熱電装置を構成することが可能になる。
【0052】図2に示す発光装置において、熱電半導体
の合成抵抗をr、電流をI、実効的なペルチェ吸熱係数
をΠC 、高温接合部と低温接合部との温度差をΔTS
n型及びp型ペルチェ積層構造PBn 及びPBp の熱伝
導度をKS としたとき
【0053】
【数6】 〔1−(rI/2ΠC )〕>−(ΔTS S /ΠC I) を満足するように各材料を構成し、電流を流す。この条
件を満たすことにより、式(3.2)の低温接合部の吸
熱量QC が正となり、冷却機能を持たせることができ
る。
【0054】n型ペルチェ積層構造PBn 及びp型ペル
チェ積層構造PBp の各々を移動するキャリアのペルチ
ェ吸熱係数が、発光領域St のエネルギギャップEG
半分になるように設計される。これによって電子の持つ
ポテンシャルエネルギをエネルギギャップEG と同じに
している。発光領域St に注入された電子は、その伝導
帯から価電子帯に直接遷移し、バンドギャップEG に相
当する波長の光を放出してエネルギを失う。このため格
子との衝突が回避され、高温接合部での熱の発生、蓄積
が抑制される。
【0055】図2に示す熱電装置の種々の熱電パラメー
タを以下に示す。
【0056】
【数7】 PbTeの熱電定数 比抵抗 :ρ = 1.15×10-3 (Ω・cm) 熱伝導率 :χ = 1.79×10-2 (W/K・cm) ゼーベック係数(n型):S = 250 (μV/K) 長さ50μm、面積1mm2 の単層ペルチェ障壁素子の熱電パラメータ 素子長 :l0 = 50 (μm) 面積 :A = 1 (mm2 ) ゼーベック係数:S = 250 (μV/K) 抵抗 :r0 = 5.75×10-4 (Ω) 熱伝導度 :k0 = 3.58×10-2 (W/K) 多層ペルチェ障壁素子の実効熱電パラメータ 実効ゼーベック係数:α = 2.5 × 10 -3(V/K) 実効熱伝導度 :KS = 0.358 (W/K) 実効抵抗 :r = 0.575 ×10-2(Ω) 層数 :N = 10 素子長 :L = 0.5 (mm) 面積 :A = 1 (mm2 )
【0057】この多層ペルチェ障壁素子の実効ゼーベッ
ク係数αは、上記のように素子長と面積が同等の単体素
子(S=250μV/K)に比べて、実効的に10倍に
なり、ミリボルトオーダの値が得られる。従ってペルチ
ェ係数も10倍となる。また、熱伝導度、抵抗とも実効
的に10倍になる。
【0058】実効熱伝導度KS は、この発光装置の動作
に重要な意味を持つ。すなわち、高温接合部で発生する
熱量を光エネルギとして十分に放出することができず
(発光領域St での電気光変換効率ηL が低い場合)発
熱量QH を負にできない場合に、実効熱伝導度KS を大
きくして高温接合部で発生した熱を低温接合部に戻す。
このようにして、高温接合部の温度を下げる役割を果た
す。従来の熱電冷却素子では、熱伝導度KS を大きくす
ると低温接合部に流入する熱量が大きくなり、吸熱量Q
C および成績係数COP(Coefficient of performanc
e) が小さくなるためKS を小さくすることが好ましい
と考えられていた。一方、本実施例の場合には、熱伝導
度KS を小さくすればよいというわけではなく、好適な
範囲が存在する。
【0059】次に、図2に示すn型ペルチェ多層構造P
n と発光領域St とを有するn型領域のみの熱電装置
の性能に着いて評価する。
【0060】この熱電装置を、入力電力PIN=16.5
mW、電流I=1A、高温接合部と外気との間の熱伝導
度KF =4.73×10-3(W/K)、発光領域St
電気光変換効率ηE =80%、外気温度TR =300K
の条件で動作させた場合を考える。
【0061】式(3.1)、(3.2)のバンドギャッ
プEG を(1/2)EG にし、上記条件及び熱電パラメ
ータを代入することにより、下記の熱電冷却性能が得ら
れる。
【0062】 成績係数 COP= 32 吸熱量 QC = 529 (mW) 高温接合部の発熱量QH =−454 (mW) 低温接合部の温度 TC = 250 (K) 高温接合部の温度 TH = 251 (K) 光出力 PL = 1 (W)
【0063】このように、高温接合部の温度TH は25
1Kになり、外気温度より約50K低く、吸熱量QC
529mW、成績係数COPが32倍(3200%)に
なる。一方、従来の放熱ファン付の半導体のペルチェ素
子のCOPは100%以下、家庭用空調機のそれは2〜
3倍(200〜300%)、大型の強制空冷、水冷等の
放熱設備を設けた冷却塔等では15倍(1500%)程
度である。また、本実施例の熱電装置では、冷却すると
同時に光出力1Wを得られる。
【0064】高温接合部の発熱量QH の負の符号は、熱
流が外気から高温接合部に向っていることを示してお
り、高温接合部の温度TH が外気温度TR より低いこと
を意味している。高温接合部の発熱量QH が負になる現
象は、低温接合部で奪った吸熱エネルギQPCの一部を高
温接合部から光エネルギ(QPH−Pd )として放出し、
さらに高温接合部で発生した熱をn型ペルチェ積層構造
PBn を通して低温接合部に戻していることにより起こ
っている。
【0065】これにより低温接合部および高温接合部を
含む素子全体の温度が低下する。高温接合部と外気との
間の熱伝導度KF が零、即ち高温接合部が外気と熱的に
絶縁されている場合は、式(2.10)の右辺第2項の
(QH /KF )がマイナス無限大となり高温接合部の温
度TH が絶対零度に近づくことになる。
【0066】従来素子では、高温接合部の発熱量QH
符号は正であり高温接合部の温度が常に外気よりも高く
なっている。このため、高温接合部の熱を放熱ファン等
を用いて外気に放出している。即ち、ペルチェ発熱エネ
ルギQPHを放出しているわけである。この高温接合部の
温度TH は、放熱ファンによる外気との熱伝導度KF
無限大にしても外気温度より低くなることはない。ま
た、放熱ファン用の電力が必要となり消費電力は大きな
ものになる。
【0067】低温接合部と高温接合部の温度差ΔT
S は、小さいことが好ましい。温度差ΔTS を小さくす
ると、式(2.7)により、印加電力PINを少なくする
ことができる。
【0068】このように本実施例によると、高いCOP
を達成し、さらに冷却機能と発光機能を合わせもつ装置
を実現することができる。また、放熱の必要がないた
め、放熱用ファンによる装置容積の増大等を回避するこ
とができる。
【0069】次に、上記実施例と熱力学の第二法則との
関係について考察する。本装置が発生するエネルギ及び
エントロピは無限に熱の流出入がある開放系では定義す
ることができない。従って、熱絶縁系U内に置かれた本
装置が発生する有効エネルギ及び生成するエントロピを
求めて本装置が熱力学の第二法則に反しないことを示
す。
【0070】熱絶縁系Uに外部から流入流出する熱は全
くないと仮定する。本装置が動作していない時の熱絶縁
系Uの初期熱量をQT0、その時の系Uの温度をTU0とす
る。熱絶縁系Uの初期電気エネルギをP0 とする。
【0071】本装置に電気エネルギP0 を加えると、本
装置が動作を開始し、熱エネルギQ T0を有する系Uから
熱エネルギQCHを吸収し光エネルギQL を放出する。こ
のため系Uの熱エネルギは、QT0から(QT0−QCH)に
減少し、系Uの温度はTU0からTU に低下する。一方、
光エネルギQL は有効エネルギQESと熱エネルギQTS
変換されてその熱エネルギQTSが放出されるため、熱絶
縁系U内の熱エネルギQTUは(QT0−QCH)にQTSが加
えられた量となる。有効エネルギとは、それを使うこと
によって何らかの仕事ができるエネルギ、例えば電気エ
ネルギ等をいう。
【0072】熱絶縁系U内の熱エネルギQTU、温度
U 、および光エネルギQL から変換された有効エネル
ギQES、熱エネルギQTSの関係は次式で表される。
【0073】
【数8】 熱絶縁系Uの熱エネルギ :QTU=(QT0−QCH)+QTS (4.1) 熱絶縁系Uの温度 :TU ={(QT0−QCH)+QTS}/CU (4.2) 装置から出力される 光エネルギ:QL =QCH+P0 (4.3) 変換されたエネルギ : =QES+QTS (4.4) 熱絶縁系Uの比熱 :CU =QT0/TU0 (4.5) 装置に注入される熱エネルギ:QCH=QRC+QRH (4.6)
【0074】ここで、 QRC:低温接合部に流入する熱エネルギ QRH:高温接合部と発光領域接合部間に流入する熱エネ
ルギ QES:光エネルギQL を変換して得られる有効エネルギ 式(4.1) 〜(4.5) に、熱平衡条件(QTU=QCH、TU
C )、および変換損失が零以上の条件(QTS≧0)を
いれて整理すると、熱平衡状態における光エネルギ
L 、有効エネルギQES、熱エネルギQTSに関する次式
が得られる。
【0075】
【数9】 QES=QT0{1−(TC /TU0)}+P0 (4.7) QTS=QT0{1−2(1−(TC /TU0))} (4.8) QL =QT0(TC /TU0)+P0 (4.9) (TC /TU0)≧(1/2) (4.10)
【0076】上式は、熱絶縁系Uの温度TU と装置温度
C 、及び熱絶縁系Uの熱エネルギQTUと本装置で吸収
される熱エネルギQCHとが一致し、本装置が仕事を停止
したときに得られるエネルギと温度との関係を示してい
る。すなわち、これ以上のエネルギを発生することはで
きないことを意味する。
【0077】式(4.8) 〜(4.10)において、本装置の温度
C が系Uの初期温度TU0の半分(TC /TU0)=(1
/2)の時、次式のように有効エネルギQESは最大値
(QT0/2)+P0 、熱エネルギQTSは零となり、光エ
ネルギQL は最大値(QT0/2)+P0 となる。本装置
のエネルギはこの最大値以上に大きくなることはなくこ
れが限界値となる。これを、式に表すと、以下のように
なる。
【0078】
【数10】 〔QESM =(QT0/2)+P0 (4.11) 〔QTSM =0 (4.12) 〔QL M =(QT0/2)+P0 (4.13) (TC /TU0)≧(1/2) (4.14) ここで、〔 〕M は、最大値を表す。
【0079】これらの式は、放出される光エネルギQL
が全て有効エネルギQESに変換され、系U内の熱エネル
ギQT0の半分が有効エネルギQESに変換可能であること
を意味する。このQESは、蓄積可能なエネルギであるが
蓄積されたままでは仕事をしないエネルギである。
【0080】一方、装置温度が系Uの初期温度に一致し
たとき((TC /TU0)=1)には、有効エネルギQES
が零となり、熱エネルギQTSは初期エネルギQT0、光エ
ネルギQL はQT0+P0 となる。これは、放出される光
エネルギQL が全て初期熱エネルギQT0に変換されて系
Uには有効エネルギQESが全く無いことを意味する。
【0081】以上のことから熱絶縁系U内で本装置が発
生する有効エネルギQESには限界があり永久に仕事をす
ることはできない。すなわち、本装置は永久機関ではな
い。
【0082】図8A及び図8Bは、それぞれ、従来の熱
電冷却素子及び本装置のブロックダイヤグラムである。
これらは、素子を構成する部分とそれに流入流出する熱
エネルギとその部分の温度を示したものである。従来素
子では、高温接合部の熱エネルギQH を放出するための
放熱器(放熱ファン等)が設けられており、この放熱器
は、通常、数十%の効率であるためQF 以外に新たに熱
エネルギQPFを発生する。このため外気にはQF とPF
の熱エネルギが放出される。
【0083】本装置を構成する冷却板、低温接合部、高
温接合部は従来素子のそれと同じ働きをする。また、本
装置の発光領域は従来素子の放熱器に対応している。
【0084】電力PINを印加すると、外気中の熱エネル
ギQRCが冷却板から素子の低温接合部に流入され、低温
接合部の熱エネルギQCSは高温接合部に輸送される。高
温接合部では、ペルチェ発熱エネルギが発光領域から光
エネルギQL として放出されるとともに熱エネルギΔT
Kが低温接合部に逆流するため高温接合部の発熱量Q H
は負となる。このために高温接合部と発光領域間に外気
から熱エネルギQRHが補給される。
【0085】各構成部間で生成されるエントロピは次の
よう表される。流入するエネルギは正で流出するエネル
ギは負の符号で表している。ここで、ΔSRCは外気と冷
却板間で生成されるエントロピ、ΔSCCは冷却板と低温
接合部間で生成されるエントロピ、ΔSCHは低温接合部
と高温接合部間で生成されるエントロピ、ΔSRHは外気
と高温接合部間で生成されるエントロピ、ΔSHLは高温
接合部と発光領域間で生成されるエントロピ、ΔSLL
発光領域と外気間で生成されるエントロピである。
【0086】
【数11】 ΔSRC=(−QRC/TR ) +(QCS/TC ) (4.15) ΔSCC=(−QCS/TC ) +(QCS/TC ) (4.16) ΔSCH=(−QCS/TC ) +(QHS/TH ) (4.17) ΔSRH=(−QRH/TR ) +(QRH/TH ) (4.18) ΔSHL={−(QHS+QRH)/TH }+(QL /TH )=0 (4.19) ΔSLL=(−QL /TH ) +(QL /TR ) (4.20)
【0087】本装置が外気から吸収した熱エネルギを光
に変換する過程で生成するエントロピΔSRLは各構成部
間で生成されるエントロピの総和であり次のよう表され
る。
【0088】
【数12】 ΔSRL=ΔSRC+ΔSCC+ΔSCH+ΔSRH+ΔSHL+ΔSLL (4.21) ={QL −QCH}/TR (4.22) QCH=(QRC+QRH) (4.23) QL =QCH+PIN (4.24)
【0089】光エネルギQL が仕事をすることにより全
て熱エネルギに変換されたときは、(QL −QCH)=P
INとなるから、本装置が生成するエントロピは次のよう
に正の値となる。
【0090】
【数13】 ΔSRL=PIN/TR (4.25)
【0091】一方、光エネルギQL が全て熱に変換され
ないときは、(QL −QCH)≦0となりエントロピは負
の値になる。しかしこの状態は「光エネルギQL が仕事
をしていない状態」すなわち、局所的にエントロピが負
の状態であり、この局所的に負の状態は通常起こりうる
ことであり「熱力学の第二法則」に反するものではな
い。
【0092】また、表1に示すように本装置は、従来の
冷却素子の有効エネルギが零であるのに対して、原理的
に系U内の熱エネルギQT0の半分を有効なエネルギに変
換する可能性を有する。そして本装置の生成エントロピ
は従来素子のそれより小さい。因みに地球上の熱エネル
ギQT0は放熱エネルギを含めて益々増加しており莫大な
値であり、無償のエネルギが用意されていると言える。
【0093】
【表1】
【0094】以上、熱絶縁系U内の有効エネルギおよび
生成エントロピの考察により、本装置は永久機関ではな
く正のエントロピを生成することを示し、本装置の原理
が「熱力学の第二法則」を満たしていることを示した。
【0095】次に、図3を参照して、図2に示す熱電装
置の原理を利用した発光装置の具体的な構成例について
説明する。図3は、発光装置の中心で直交する2つの平
面で切断した1/4部分の斜視図を示す。
【0096】n型ペルチェ積層構造3とp型ペルチェ積
層構造4が、その高温接合面同士を対向させて配置さ
れ、両者の高温接合面のほぼ中央に発光素子1が挟持さ
れている。高温接合面の他の一部の領域には、SiO2
からなる固定部材2が挟持され、n型ペルチェ積層構造
3とp型ペルチェ積層構造4とを一定の間隔に保持して
いる。n型ペルチェ積層構造3の低温接合面上に冷却板
5が固着され、p型ペルチェ積層構造4の低温接合面上
に冷却板6が固着されている。
【0097】図4Aは、図3の発光装置のp型ペルチェ
積層構造4の詳細な構造を示す。p型PbTeからなる
熱電半導体層S1pとAuからなる金属層M1pが複数層交
互に積層されている。この積層構造は、例えば、以下の
方法で形成される。
【0098】まず、p型のPbTe板をHBrとBr2
の混合液で表面洗浄する。洗浄したPbTe板の両面上
に、Au膜を蒸着し、その上にAuメッキを施し、さら
にAuSn合金層を蒸着する。このように形成したPb
Te板を積層して融着することにより、PbTeとAu
との積層構造を得る。
【0099】この積層構造の両面には、AuSn合金か
らなる金属層30と31が現れる。金属層30、熱電半
導体層S1pと金属層M1pとの積層構造、及び金属層31
とにより、p型ペルチェ積層構造4が形成される。金属
層30の下面に冷却板6を接触させて、p型ペルチェ積
層構造4と冷却板6とを融着する。その後、4つの側面
を研磨して仕上げる。
【0100】図3のn型ペルチェ積層構造3は、図4A
のp型熱電半導体層S1pの代わりに、n型のPbTeか
らなる熱電半導体層を用い、積層の順番を上下逆転させ
た構造を有する。
【0101】図4Bは、図3の発光素子1の詳細な構造
を示す。InGaAsPからなる発光層(発光領域)4
0が、n型InPからなるクラッド層41とp型InP
からなるクラッド層42とにより挟まれている。この3
層が、さらにn型InPからなる緩衝層43とp型In
Pからなる緩衝層44とにより挟まれている。この5層
が、n型PbTe層45とp型PbTe層46とにより
挟まれている。
【0102】このような構造の発光素子1は、例えば公
知の埋込構造成長プロセス技術により形成される。以
下、この方法を簡単に説明する。
【0103】n型InP基板の上にn型InPからなる
クラッド層、InGaAsPからなる発光領域、p型I
nPからなるクラッド層を順番に積層し、ダブルヘテロ
構造を形成する。SiO2 等の誘電体層をマスクとして
p型クラッド層と発光領域とを選択的にエッチングしメ
サストライプ構造を形成する。その後p型InP層、n
型InP層を選択成長させてメサストライプ構造を埋め
込む。続いて、SiO 2 を除去して全面にp型InPか
らなるクラッド層を成長させる。
【0104】次に、n型InP基板の裏面上にn型Pb
Te層をエピタキシャル成長させ、p型InPクラッド
層上にp型PbTe層をエピタキシャル成長させる。n
型PbTe層とp型PbTe層との表面上に金膜を蒸着
し、その上に金メッキを施す。その後、へき開あるいは
研磨により、図4Bに示す発光素子1を得る。
【0105】図3に戻って、発光装置の作製方法を説明
する。n型ペルチェ積層構造3と発光素子1、p型ペル
チェ積層構造4と発光素子1との接合は、例えば半田等
を用いた融着により行う。固定部材2とその両側のペル
チェ積層構造3及び4との接合も同様に行う。
【0106】このようにして作製された発光装置は、図
2に示すバンドダイヤグラムと等価な構成を有する。冷
却板5及び6の各々に接続された入力電圧端子から、電
力が加えられる。発光素子1の光変換効率ηL を80
%、電流を1A、外気温度TRを300K、入力電力を
16.5mW、発光素子1と外気との熱伝導度KF
4.73×10-3W/Kとした条件下で、以下ような発
光性能が得られる。
【0107】
【数14】 光出力 PL = 1 (W) 電気光変換効率 β = 6009 (%) 吸熱量 QC =529 (mW) 低温接合部の温度 TC =250 (°K) 高温接合部の温度 TC =251 (°K) 成績係数 COP= 32
【0108】このように、電気光変換効率βが6009
%といった大きな値が得られる。この電気光変換効率β
は、外部から素子両端に印加される電力PINとその素子
から外に取り出される光エネルギQL との比率(QL
IN)であり、発光領域に入力されるペルチェ発熱エネ
ルギQPHと光エネルギQL との比率ηL とは異なる。
【0109】変換効率βが100%を越えるのは、印加
電力よりも大きなペルチェ発熱エネルギQPHが光エネル
ギQL に変換されて素子外に取り出されることによる。
また、このペルチェ発熱エネルギQPHは、式(1.5)
と(1.7)から、低温接合部のペルチェ吸熱量Q
PC{1+(ΔTS /TC )}と表される。すなわち、光
エネルギQL は、印加電力よりも大きなペルチェ吸熱エ
ネルギを内蔵した金属のエネルギから供給されているた
め、その光エネルギQL に相当する電力を外部から供給
する必要はない。本素子に必要な電力は低温接合部で熱
を奪った電子を発光領域に輸送するための僅かな電力だ
けである。
【0110】このように、本装置では、100%を超
え、かつ発熱のない高効率発光が可能となる。これは、
本装置を並列に動作させることにより発熱を伴わない光
増幅が可能であり、大きな光出力が得られることを示し
ている。
【0111】次に、図5を参照して、図3に示す発光装
置を使用した電力抽出装置について説明する。
【0112】図5は、電力抽出装置の1/4部分の斜視
図を示す。図3に示す発光装置の発光素子1から発光し
た光を受ける位置にフォトダイオード50が配置されて
いる。なお、図5には現れないが、発光素子1の他方の
出射端面にも対向するように、他のフォトダイオードが
配置される。フォトダイオード50は、発光素子1から
発光した光を受光し、出力端子TOUT1とTOUT2間に光起
電力を出力する。
【0113】ホトダイオード50は、そのpn接合面を
発光素子1の光軸に対して直交するように配置され、有
効変換効率を高くしている。また、発光スペクトルのピ
ーク波長と受光素子のピーク波長とを一致させることに
より光電気変換効率を高くしている。太陽電池のように
太陽光スペクトルの一部しか利用していない光電変換素
子にくらべると、光電気変換効率を2〜3倍程度改善す
ることができる。
【0114】この電力抽出装置の発光素子1と外気との
間の熱伝導度KF は、固定部材2の熱伝導率 χ=70
(W/K・cm)と発光素子1の構造及び寸法から、K
F =4.73×10-3W/K程度になると見積もられ
る。
【0115】図5に示す電力抽出装置を、フォトダイオ
ード50の光電気変換効率ηE =80%、電流I=1
A、外気温度TR =300K、入力電力PIN=16.5
mWの条件で動作させたときの電力抽出性能は、下記の
ようになる。
【0116】
【数15】 電気出力 PE = 0.8 W 電力抽出率 γ = 48.5(4850%) 吸熱量 QC = 329 (mW) 高温接合部の発熱量 QH =−464 (mW) 低温接合部の温度 TC = 250 (K) 高温接合部の温度 TH = 251 (K) フォトダイオードの温度 TD = 251 (K)
【0117】なお、フォトダイオード50で発生する熱
が、フォトホトダイオードのp、n電極から取り出した
熱良導体、例えば厚さ5μmの金メッキ層51、52、
及び絶縁性の熱良導体53、54を通じて、それぞれ冷
却板5、6に吸収される。なお、フォトダイオード50
で発生する熱は、上記条件の下では100mWとなる。
光電気変換効率ηE =80%であるから、入力電力1W
のうち200mWが熱となり、片側のフォトダイオード
で発生する熱が、その半分の100mWとなるからであ
る。このため、吸熱板5及び6の吸熱量は、それぞれフ
ォトダイオード50の発熱量である100mWだけ減少
するが、まだ冷却能力を備えており、各冷却板5及び6
の吸熱量は164mWとなる。p型、n型両方合わせた
冷却板5及び6の吸熱量は329mW、成績係数は1
9.8となる。
【0118】フォトホトダイオード50のn層の中心部
から冷却板5または6までの概略の熱伝導度KNMは、フ
ォトダイオード50の基板にInPを用いた場合、約
3.32×10-3(W/K)となると予測される。これ
はInPのn層の熱流方向の実効長を200μm、幅を
1mm、厚さを0.2mm、熱伝導率を0.68W/K
・cmとしたときの熱伝導度KN と、金メッキ導体の実
効長を400μm、厚さを5μm、幅を1mm、熱伝導
率を2.95W/K・cmとしたときの熱伝導度KM
直列と仮定し、合成熱伝導度KNMを〔(1/KN )+
(1/KM )〕-1から求めたものである。
【0119】また、片側のフォトダイオードのn層の中
心部から一方の冷却板5または6に吸収される熱量QD
は50mW(100mW/2)であるから、片側のフォ
トダイオードのn層の中心部の温度上昇ΔTNMはΔTNM
=(QD /KNM)=15Kとなり、フォトダイオードの
温度TD は265Kとなる。
【0120】上述のように、本実施例による電力抽出装
置では、電力抽出率48.5(4850%)といった高
効率な性能が得られる。電力抽出率は、電気出力PE
印加電力PINとの比率である。電力抽出率が100%を
越えるのは、図3の発光装置の説明で述べたように低温
接合部の金属の持つ熱エネルギの寄与によるものであ
る。
【0121】この電力抽出装置を並列に動作させること
により、発熱を伴わない大きな電力抽出が可能となり、
低温大容量の発電機に応用できる。
【0122】次に、図6を参照して、図2の熱電装置の
原理を用いた冷却装置について説明する。
【0123】図6は、冷却装置の1/4部分の斜視図を
示す。n型ペルチェ積層構造3、p型ペルチェ積層構造
4、発光素子1、固定部材2、冷却板5、6が、図3に
示す発光装置と同様に配置されている。n型ペルチェ積
層構造3とp型ペルチェ積層構造4との間隙内の、発光
素子1の近傍にフォトダイオード7が配置されている。
フォトダイオード7とn型ペルチェ積層構造3との間
は、絶縁領域8により絶縁され、フォトダイオード7と
p型ペルチェ積層構造4との間は、絶縁領域9により絶
縁されている。発光素子1から放射した光が、フォトダ
イオード7に入射する。
【0124】n型ペルチェ積層構造3及びp型ペルチェ
積層構造4の側面のうち、フォトダイオード7が配置さ
れている面を画定する側面を、それぞれ絶縁領域8及び
9が被覆している。絶縁領域8及び9の側面上に、それ
ぞれ電極10及び11が形成されている。電極10及び
11は、それぞれフォトダイオード7に接続され、両電
極10、11間にフォトダイオード7の光起電力が印加
される。
【0125】電極10と11の側面及びフォトダイオー
ド7の端面上に、絶縁層12が形成されている。絶縁層
12の側面上に、黒体層13、カバー層14がこの順番
に積層されている。電極10及び11から、絶縁層1
2、黒体層13、カバー層14を通して、それぞれ電極
端子17及び18が導出されている。
【0126】以下、この冷却装置の作製方法を説明す
る。n型ペルチェ積層構造3と発光素子1、p型ペルチ
ェ積層構造4と発光素子1との接合は、例えば半田等を
用いた融着により行う。固定部材2とその両側のペルチ
ェ積層構造3及び4との接合も同様に行う。また、フォ
トダイオード7等の部品も、同様にAuSn等を用いた
熱融着により接合する。
【0127】電極10、11、絶縁層12、黒体層13
等の積層構造、及び絶縁領域15、16の形成は、通常
のパッケージ多層技術を用いて行う。
【0128】図6に示す冷却装置では、フォトダイオー
ド7の受光端面と発光素子1の出射端面との間隔を短く
し、光損失を低減するとともに微小化を図っている。ま
た、フォトダイオード7のpn接合面7aを、例えば鋸
歯状の凹凸を有する面で構成し、実効的に受光面積を大
きくしてもよい。さらに、複数のpn接合を直列に設
け、その数を変えることにより所望の値の電圧が取り出
せるようにしてもよい。
【0129】また、フォトダイオード7の受光部(pn
接合部)のバンドギャップが、発光素子1の発光部のバ
ンドギャップとほぼ等しくなるような構成とすることが
好ましい。このような構成とすることにより、発光素子
1から出射した光エネルギを効率的に電気エネルギに変
換することができる。なお、ここで発光素子1の発光ス
ペクトルのピークを与える波長を中心として、そのピー
クの半値幅以内に含まれる波長に相当するバンドギャッ
プは、ほぼ等しいバンドギャップと考えてよい。
【0130】電極10、11の側面上に石英ガラス、S
iO2 等からなる絶縁層12を設け、その側面上にカー
ボン、グラファイト等からなる黒体層13を設けてい
る。黒体層13の一端が、絶縁性の熱良導体15、16
を通じて、それぞれ冷却板5、6に熱的に結合してい
る。発光素子1の出射端面から出射した光は、フォトダ
イード7、発光素子1等の電極、絶縁層等で多重反射、
乱反射し、この反射光による微量熱エネルギは、最終的
にこの黒体層13に吸収され、さらに冷却板5、6に吸
収される。また、電極10、11は、それぞれフォトダ
イオード7から発生するジュール熱を冷却板5、6に導
く。例えば厚さ5μmの金メッキ導体により形成され
る。発光素子1の出射端面からの微小反射による微量熱
エネルギとジュール熱を含めた総熱量は冷却板5及び6
に吸収される。
【0131】図6に示す冷却装置を、入力電力PIN=1
6.5mW、電流I=1A、発光素子1の電気光変換効
率ηL =80%、フォトダイオード7の光電気変換効率
ηE=80%、外気温度TR =300K、発光素子1と
外気間の熱伝導度KF =4.73×10-3(W/K)の
条件下で動作させたときの冷却性能は、下記の通りであ
る。
【0132】
【数16】 成績係数 COP= 16.9 吸熱量 QC = 329 (mW) 電気出力 PE = 0.8 (W) 高温接合部の発熱量 QH =−464 (mW) 低温接合部の温度 TC = 250 (K) 高温接合部の温度 TH = 251 (K) フォトダイオードの温度 TD = 268 (K) 装置容積 VOL= 1.1 ×1.1 × 1.2 mm3
【0133】フォトダイオード7として図5のフォトダ
イオード50と同様に熱伝導率0.68(W/K・c
m)のInPを用いた場合、片側ホトダイオード(長さ
200μm、幅1mm、厚さ300μm、損失電力10
0mW)のpn接合部の温度上昇分TJ は僅か0.25
°Kとなる。これはフォトダイオード7(熱流方向の実
効長100μm、面積1mm×0.3mm)の熱伝導度
を0.204(W/K)、損失電力を50mw(100
mw/2)として算出した値である。
【0134】また、片側ホトダイオード(熱損失100
mW)のp型およびn型半導体の電極からそれぞれ取り
出した金メッキ導体10、11(熱流方向の長さ500
μm、面積5μm×1mm)の温度上昇分ΔTM は、熱
伝導率2.95(W/K・cm)の金メッキ導体を用い
るとその熱伝導度が2.95×10-3(W/K)であ
り、損失電力が50mW(100mW/2)であるから
17Kとなる。
【0135】従って、フォトダイオードのpn接合部と
冷却板間の温度上昇分ΔTJMは、ΔTJM=ΔTJ +ΔT
M =17.25Kとなる。すなわち、フォトダイオード
7からの発熱による温度上昇は、ほとんど金メッキ導体
10、11の温度で決まり、フォトダイオードの温度T
D は268Kで低温接合部の温度TC より高い部分が生
じることになる。また、黒体の温度上昇は金メッキの温
度上昇以下である。
【0136】上述のように、本実施例の冷却装置では、
素子全体が冷却され、微小入力電力16.5mWで成績
係数16.9(1690%)、素子内の最高温度268
°K、吸熱量32.9(W/cm2 )、さらに電気出力
0.8Wが得られ、エレメントの小型化、および冷却と
電気出力の両機能が実現されている。これらの機能は、
金属から奪った低質の熱エネルギーを電気という良質の
エネルギー形態に変換しこれをその素子外に取り出すこ
とにより達成している。エレメントの寸法・形状につい
ては、勿論、熱電パラメータ、材料等を最適化すること
により、さらに微小化することができる。
【0137】以上実施例に沿って本発明を説明したが、
本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種
々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に
自明であろう。
【0138】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
熱電装置の高温接合部からの過剰な熱の発生を抑制する
ことができる。また、高温接合部の温度が上昇しない条
件で動作させることが可能になり、この場合、熱電装置
全体が冷却される。従って、熱絶縁空間に置いても熱籠
もり現象を起こすことなく冷却効果を得ることができ
る。
【0139】また、本発明による装置は、冷却と発光機
能を併せもっており、発熱を伴うことなく低温で発光す
ることができる。このため、放熱設備を併設することな
く光エネルギを出力する装置を実現することが可能にな
る。
【0140】さらに、本発明による装置は、冷却と電力
出力機能を合わせもっており、低温で電力を抽出でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による熱電装置のバンドダイヤ
グラム及び熱電等価回路図である。
【図2】本発明の実施例による発光装置のバンドダイヤ
グラムである。
【図3】実施例による発光装置の一構成例を示す一部破
断斜視図である。
【図4】図3に示す発光装置のp型ペルチェ積層構造及
び発光素子の斜視図である。
【図5】実施例による電力抽出装置の一構成例を示す一
部破断斜視図である。
【図6】実施例による冷却装置の一構成例を示す一部破
断斜視図である。
【図7】従来のペルチェ素子のバンドダイヤグラムであ
る。
【図8】従来例及び実施例の熱電装置のブロックダイヤ
グラムである。
【符号の説明】
1 発光素子 2 固定部材 3 n型ペルチェ積層構造 4 p型ペルチェ積層構造 5、6 冷却板 7 フォトダイオード 8、9 絶縁層 10、11 電極 12 絶縁層 13 黒体層 14 カバー層 15、16 熱良導体 17、18 出力端子 30、31 AuSn合金層 40 発光領域 41、42 クラッド層 43、44 緩衝層 45、46 PbTe層 50 フォトダイオード 51、52 金メッキ層 53、54 熱良導体

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 低温端と高温端とを有する第1の熱電半
    導体部材と、 前記第1の熱電半導体部材の低温端に接続された金属も
    しくは半導体からなる第1の部材であって、該第1の部
    材から前記第1の熱電半導体部材中に、電子及び正孔の
    いずれか一方の第1のキャリアが注入される時に吸熱が
    生ずる材料により形成された第1の部材と、 半導体材料により形成され、前記第1の熱電半導体部材
    の高温端まで輸送された第1のキャリアを捕集し、電子
    と正孔との再結合による発光を生ずる発光領域とを有す
    る熱電装置。
  2. 【請求項2】 前記第1の熱電半導体部材の前記低温端
    で生ずる吸熱が、ペルチェ効果によるものである請求項
    1に記載の熱電装置。
  3. 【請求項3】 さらに、前記第1の熱電半導体部材と発
    光領域との間に配置され、両者の格子不整合を緩和する
    ための第1の緩衝層を有する請求項1に記載の熱電装
    置。
  4. 【請求項4】 さらに、 低温端と高温端とを有する第2の熱電半導体部材であっ
    て、その高温端側から、電子及び正孔のうち前記第1の
    キャリアとは異なる第2のキャリアを前記発光領域に注
    入する第2の熱電半導体部材と、 前記第2の熱電半導体部材の低温端に接続された第2の
    金属部材であって、該第2の金属部材から前記第2の熱
    電半導体部材中に前記第2のキャリアが注入される時に
    ペルチェ効果による吸熱が生ずる材料により形成された
    第2の金属部材とを有する請求項1〜3のいずれかに記
    載の熱電装置。
  5. 【請求項5】 さらに、前記第2の熱電半導体部材と前
    記発光領域との間に配置され、両者の格子不整合を緩和
    するための第2の緩衝層を有する請求項4に記載の熱電
    装置。
  6. 【請求項6】 前記第2の熱電半導体部材が、半導体材
    料と金属材料とを交互に積層して構成され、前記第2の
    キャリアが金属材料から半導体材料に注入されるとき
    に、ペルチェ効果による吸熱を生ずる請求項4または5
    に記載の熱電装置。
  7. 【請求項7】 前記第1及び第2の熱電半導体部材が、
    その高温端同士を対向するように配置され、前記発光領
    域が、両者の高温端面に挟まれた間隙の一部の領域にの
    み配置され、 さらに、前記第1及び第2の熱伝半導体部材の高温端面
    に挟まれた間隙のうち、前記発光領域が配置されていな
    い領域に配置され、電気的絶縁材料により形成され、前
    記第1及び第2の熱伝半導体部材を相互に機械的に固定
    する固定部材を有する請求項4〜6のいずれかに記載の
    熱電装置。
  8. 【請求項8】 前記第1の熱電半導体部材が、半導体材
    料と金属材料とを交互に積層して構成され、前記第1の
    キャリアが金属材料から半導体材料に注入されるとき
    に、ペルチェ効果による吸熱を生ずる請求項1〜7のい
    ずれかに記載の熱電装置。
  9. 【請求項9】 さらに、前記発光領域から放射された光
    を受光し、光エネルギを電気エネルギに変換する光電変
    換素子を有する請求項1〜8のいずれかに記載の熱電装
    置。
  10. 【請求項10】 前記光電変換素子が、前記発光領域を
    形成する半導体材料のバンドギャップとほぼ等しいバン
    ドギャップを有する半導体材料により形成されている請
    求項9に記載の熱電装置。
  11. 【請求項11】 前記発光領域が、複数の光放射面を有
    し、前記光電変換素子が、前記複数の光放射面の各々に
    対向するように複数配置されている請求項9または10
    に記載の熱電装置。
  12. 【請求項12】 前記光電変換素子が、pn接合を有す
    るフォトダイオードであり、該pn接合面が凹凸を有す
    る面である請求項9〜11のいずれかに記載の熱電装
    置。
  13. 【請求項13】 さらに、前記光電変換素子と前記第1
    の部材とを熱的に結合し、該光電変換素子からの発熱を
    該第1の部材に流入させる第1の熱伝導部材を有する請
    求項1〜12のいずれかに記載の熱電装置。
  14. 【請求項14】 さらに、前記発光領域の光放射端面か
    ら反射された光を吸収する黒体を有する請求項1〜13
    のいずれかに記載の熱電装置。
  15. 【請求項15】 さらに、前記黒体を前記第1の部材と
    熱的に結合し、黒体の光吸収による発熱が前記第1の部
    材に流入するように構成された第2の熱伝導部材を有す
    る請求項14に記載の熱電装置。
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