JPH11124723A - ポリビニルアルコール系抗菌繊維およびその製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系抗菌繊維およびその製造方法

Info

Publication number
JPH11124723A
JPH11124723A JP30501597A JP30501597A JPH11124723A JP H11124723 A JPH11124723 A JP H11124723A JP 30501597 A JP30501597 A JP 30501597A JP 30501597 A JP30501597 A JP 30501597A JP H11124723 A JPH11124723 A JP H11124723A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antibacterial
fiber
polyvinyl alcohol
high molecular
pva
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP30501597A
Other languages
English (en)
Inventor
Tadayoshi Uchiumi
忠良 内海
Ichiro Nagashima
一朗 長嶋
Kazuhiro Kumeta
和弘 粂田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nitivy Co Ltd
Original Assignee
Nitivy Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nitivy Co Ltd filed Critical Nitivy Co Ltd
Priority to JP30501597A priority Critical patent/JPH11124723A/ja
Publication of JPH11124723A publication Critical patent/JPH11124723A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Artificial Filaments (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 抗菌作用を発揮するにあたり、菌体を積極的
に引き寄せ、菌体と抗菌剤との会合の機会を多くして抗
菌作用を高めた抗菌繊維を得ること。 【解決手段】 ポリビニルアルコールに高分子ポリアミ
ンもしくは高分子ポリカルボン酸および抗菌剤を混合し
た水溶液を乾式紡糸して糸条化するか、ポリビニルアル
コールに高分子ポリアミンもしくは高分子ポリカルボン
酸を添加した水溶液を乾式紡糸法にて糸条化し、該糸条
に抗菌剤を担持させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は親水性を有するポリ
ビニルアルコール(以下、PVAと略記する)に抗菌性
とともにイオン性を持たせた抗菌繊維に関し、さらに詳
しくは、菌体を積極的に引き寄せ抗菌効果を発揮するよ
うに設計した抗菌繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の繊維に抗菌性を付与する方法とし
て種々の手法が報告されている。その考え方の基本は、
抗菌性物質を繊維形成高分子に担持させることにあり、
紡糸に至る前段階で糸条形成高分子に混合するか、糸条
形成過程もしくは形成後、後加工的に付与することによ
り実施されている。
【0003】抗菌性物質としては、抗菌性を有する金
属、酸化物、水酸化物、有機抗菌剤が公知である。この
ようにして開発された抗菌繊維は、その置かれた環境の
中で、抗菌性物質の移動、徐放により所期の抗菌効果が
得られると考えられている。ところで、対象となる菌体
はそれを目的に管理されている減菌、滅菌施設以外には
あらゆる環境の中に存在している。抗菌繊維は、そう云
った環境の中で拡散、その他の要因によってたまたま接
近もしくは付着した菌に対して抗菌効果を発揮するか、
近傍に徐放された抗菌性物質が徐放された範囲に存在す
る菌体に対して抗菌効果を発揮するに止まっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、対象となる
菌体が偶然に抗菌繊維の抗菌効果を発揮する領域もしく
は表面に到達するのを待つに止まらず、積極的に菌体を
引き寄せ、もしくは菌体を吸着することによって抗菌効
果を発揮する領域外に菌体が拡散することを防ぐことに
より、抗菌効果を確実にする抗菌繊維を提供するもので
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、かかる効
果を有する抗菌繊維について鋭意研究した結果、イオン
交換能を有する成分と抗菌性物質とを共存させることに
より解決できることを見いだし、本発明を完成した。す
なわち、本発明の要旨とするところは、PVAと高分子
ポリアミンもしくは高分子ポリカルボン酸と抗菌性物質
および水を加熱溶解して紡糸原液とし、該紡糸原液を乾
式紡糸して得られる抗菌繊維およびその製造方法にあ
る。また、PVAと高分子ポリアミンもしくは高分子ポ
リカルボン酸および水からなる紡糸原液を乾式紡糸して
得られた糸条に抗菌性物質を担持させた抗菌繊維および
その製造方法にある。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に説明す
る。本発明で使用するPVAは、乾式紡糸に好ましい濃
度、粘度を与えるため、平均重合度 500〜2,000 であ
る。ケン化度は紡糸後の糸条の物性に著しく影響するた
め、98モル%以上のPVAが好ましく用いられる。
【0007】本発明で用いる高分子ポリアミンとして
は、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリ
ルアミン等が例として挙げられる。重合度は 300以上、
10,000以下が好ましい。重合度が 300未満では繊維を水
に浸漬した場合、糸条からの脱落が顕著に起こり、10,0
00を越えると水溶液の粘度が著しく増加し、PVAとの
混合比を少なくしても紡糸が困難となるので好ましくな
い。高分子ポリアミンのアミノ基は、遊離型もしくはア
ミノ基の50%まで硫酸塩、塩酸塩、酢酸塩としたものが
好ましく使用される。
【0008】本発明で使用する高分子ポリカルボン酸と
しては、カルボキシル基を有するビニルモノマー、その
アルカリ金属塩、1価のアミン塩、カルボン酸アミド、
カルボン酸エステル等のビニルモノマーを単独で重合し
たもの、もしくは上記モノマーを任意に組合せて共重合
した重合体を加水分解して高分子カルボン酸としたも
の、前述のモノマーと酢酸ビニル、アクリロニトリル、
スチレン等と共重合して得られた重合体を加水分解し高
分子カルボン酸としたものが挙げられる。
【0009】カルボキシル基を有するビニルモノマーと
しては、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ク
ロトン酸、フマール酸等が例として挙げられる。カルボ
ン酸アミドを有するビニルモノマーとしては、メチルア
クリレート、メチルメタアクリレート等が例示される。
カルボキシル基を保有していないモノマーと共重合して
得られる高分子ポリカルボン酸の場合、4meq/g 以上の
カルボキシル基を保有していることが好ましい。
【0010】高分子ポリカルボン酸は、重合度が 300以
上、10,000以下が好ましい。重合度が 300未満では繊維
を水に浸漬した場合、糸条からの脱落が顕著に起こるよ
うになり、重合度が10,000を越えると、水溶液の粘度が
著しく増加し、PVAとの混合比を少なくしても紡糸が
困難になる。高分子ポリカルボン酸は、アルカリ金属イ
オンもしくは1価のアミンによりカルボキシル基の10%
以上、40%以下が中和された部分中和塩を用いるのが好
ましい。アルカリ金属塩としては、ナトリウムが好まし
い。1価のアミンとしては、アンモニア、モノ−、ジ
−、トリ−メチルアミン、モノ−、ジ−、トリ−エタノ
ールアミン等が使用される。
【0011】抗菌性物質としては、市販の有機、無機抗
菌剤が使用できる。水不溶性の抗菌性物質の場合は、水
分散液として使用する。その粒径は10μm以下、好まし
くは2μm以下の粒子が用いられる。
【0012】本発明で使用する抗菌性物質の具体例とし
ては、マグネシウムまたはカルシウムと銅または亜鉛の
複合金属水酸化物、または酸化物、銀、銅、亜鉛、チタ
ン等の酸化物、銀、銅、亜鉛、カルシウム、マグネシウ
ム等抗菌性金属の単独もしくは混合状態のイオン性物
質、銀、銅、亜鉛をシリカガラス、ゼオライト、リン酸
ジルコニウム等に担持された水不溶性複合体、有機抗菌
剤単独もしくは有機抗菌剤と無機担体混合物または複合
物、もしくは有機抗菌剤と無機抗菌剤混合物または複合
物等が挙げられる。
【0013】紡糸原液に混合する場合、高分子ポリイオ
ンもしくはPVAと相互作用し、極端な粘度上昇を起こ
し、ゲル化を起こすものを除き、いずれも使用すること
ができる。抗菌性物質の混合量は 0.1%以上、10%以下
が好ましい。
【0014】抗菌性物質の紡糸原液への混合は次のよう
な方法で行うことができる。高分子ポリアミンを使用す
る場合は、PVAと高分子ポリアミンおよび抗菌性物
質、水を所定量混合、加熱溶解し、固形分濃度が20〜40
%の紡糸原液を調製する。抗菌性物質が溶解後の保温工
程で凝集して粗大粒子を形成する場合、PVAと高分子
ポリアミンの混合溶液、PVAと抗菌性物質との混合溶
液を別々に調製しておき、紡糸ノズル直前の原液経路に
2種の原液を供給してスタティクミキサーで混合後、直
ちにノズル孔より吐出させることにより、抗菌性物質の
凝集を回避することができる。また、抗菌性物質と高分
子ポリアミンとの混合溶液を上記方法にてPVA紡糸原
液と混合して糸条とすることもできる。これらの場合、
別々に調製する原液は、設定した供給比率において所定
の混合組成、固形分濃度になるように溶解することが必
要である。
【0015】高分子ポリカルボン酸を使用する場合は、
PVAと高分子ポリカルボン酸が架橋反応を生起する場
合があり、紡糸原液の粘度を著しく増大させることがあ
るので注意を要する。そのため、高分子ポリカルボン酸
のカルボキシル基を一部アルカリ金属塩、好ましくはナ
トリウム塩として中和しておくとPVAとの過剰な架橋
反応を防ぐことができる。好ましくは10〜40モル%、さ
らに好ましくは20〜30モル%の部分中和したものが用い
られる。
【0016】部分中和した高分子ポリカルボン酸を用い
ても、PVAとの架橋反応の生起を完全に防ぐことはで
きない。従って、PVAと抗菌性物質の混合溶液と高分
子ポリカルボン酸溶液という組合せか、PVA溶液、高
分子ポリカルボン酸と抗菌性物質との混合溶液という組
合せに所定量の水を加え溶解することで別々に紡糸用原
液を調製する。組合せる2種の紡糸原液は、紡糸ノズル
直前の経路に供給し、スタティクミキサーで混合後、直
ちにノズル孔から吐出し、糸条を形成する。ノズルから
吐出された後は、巻き取られ抗菌繊維となる。
【0017】抗菌性物質を糸条に後加工的に付与する場
合は、次のごとく行われる。高分子ポリアミンを混合し
たPVA系繊維の場合は、PVA/高分子ポリアミン=
98/2 〜50/50の比率で混合したものを水とともに加熱
溶解し、濃度20〜40%の紡糸原液とし、乾式紡糸法によ
り糸条化する。
【0018】一方、高分子カルボン酸を混合する場合に
は、先述したようにPVAと高分子カルボン酸部分中和
物を混合し加熱すると架橋反応が生起し、粘度の上昇が
起こることから、PVA、高分子カルボン酸を別々に溶
解した後、紡糸ノズル直前の経路に別々に供給し、スタ
ティクミキサーで混練後直ちにノズルから吐出し、糸条
化する。
【0019】得られた高分子ポリイオン性物質を含有し
たPVA系繊維は、水洗によって表面に露出している高
分子ポリイオン性物質を洗浄除去することにより、1N
以上の高濃度強イオン性対イオン溶液、もしくは高温水
溶液に浸漬するといった過酷な条件以外では、水中での
膨潤、溶出、溶解といった問題も起こらず、通常の繊維
として取扱うことができる。使用条件がさらに耐水性を
必要とする場合には、アセタール化もしくはグリシジル
化合物によるエーテル化が行われる。
【0020】アセタール化には、一般にPVAの不溶化
に使用されるアルデヒド類が用いられる。具体的にはホ
ルムアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド
等が用いられる。アセタール化によって混合繊維のPV
A側がアセタール化され、耐水性が付与される。
【0021】エーテル化反応には、グリシジル化合物、
具体的にはエピクロルヒドリン、モノ−、ジ−、トリ
−、ポリ−エチレングリコールジグリシジルエーテル等
が使用される。グリシジルエーテルは、混合繊維の高分
子ポリイオン性物質、とくに高分子ポリアミンと反応し
て耐水性を付与する。
【0022】このようにして得られたイオン性繊維へ抗
菌剤を付与する。抗菌性物質の水溶液もしくは分散液
は、抗菌性物質がイオン性をもつかプラスもしくはマイ
ナスに帯電した状態もしくは非帯電状態で存在してい
る。このような水溶液もしくは分散液にイオン性繊維を
浸漬することにより、抗菌性物質は電気的因子もしくは
繊維との親和性因子により選択的に繊維表面に吸着さ
れ、さらには繊維内部への拡散によって繊維中に固着さ
れることになる。浸漬液中の抗菌性物質の濃度は、積極
的に繊維表面への吸着、また繊維内部への拡散が起こる
ため、高濃度にする必要はない。糸条が包含している溶
液、分散液は洗浄によって廃棄されるため、コストと効
果を勘案し、条件を設定すればよい。なお、繊維内部へ
の拡散は、浸漬浴温度により著しく影響を受けるので、
糸条構造が破壊されない温度に昇温することが好まし
い。
【0023】以上のような処理を受けた糸条は水洗し乾
燥されるが、その後 230℃までの温度で熱処理を施すこ
とにより、抗菌性物質の固着を一層確実にすることがで
きるので好ましい。
【0024】付与された抗菌剤は、繊維のイオン性を造
塩もしくは電気的中和によって減衰し、菌体を引き寄せ
る効果を低減する。そのため、少なくともイオン性基の
30%以上が抗菌剤に占有されず、好ましくは遊離型とし
て残留するような条件を設定することが必要である。
【0025】銀、銅等の抗菌性金属の場合、イオン性繊
維に吸着後還元剤による金属単体への転換が可能であ
る。還元剤としては、ホルマリン−水酸化ナトリウム混
合水溶液、ヒドラジン、アスコルビン酸、水素化ホウ素
ナトリウム等が例として挙げられる。存在するイオン性
基量までの任意の量の金属単体を糸条中に導入できる点
も、本発明の特徴の一つである。
【0026】紡糸、不溶化反応、後加工的抗菌剤付与等
を経た後、最終的に抗菌性物質以外にナトリウム、塩素
イオン等の対イオンがイオン性基の残余部分にイオン交
換し吸着している場合、繊維のイオン性によって菌体を
引き寄せる性能を発揮させるため、低濃度の酸もしくは
アルカリ溶液で対イオンを脱落、洗浄することもでき
る。
【0027】以上のごとくして製造された糸条は、紡糸
直後、不溶化直後、あるいは抗菌性物質吸着後、単独も
しくは他の繊維と合わせ混繊、合撚、嵩高加工等を行っ
て製編織を行うことができる。また、所定長にカット
し、単独もしくは他の繊維とともに不織布とすることも
できる。後加工的に抗菌性物質を付与しようとする場合
は、以上のごとき形状に加工した後、所定の抗菌剤溶
液、抗菌剤分散液に浸漬して抗菌剤を付与することがで
きる。
【0028】このようにして得られた繊維は、糸条中に
保持されたイオン性基によって、空気中に浮遊する細
菌、水中に存在する細菌を引き寄せ、また媒体の移動と
ともに抗菌性物質の影響のおよぶ範囲外へ細菌が移動す
ることを抑制し、抗菌繊維の効力をいかんなく発揮する
ことができる。
【0029】以下、実施例により本発明をさらに詳細に
説明する。
【0030】
【実施例1】ケン化度99.9モル%、重合度 1,200のPV
Aと、重合度 5,000のポリエチレンイミンを加熱溶解機
に仕込み、 120℃まで昇温し、固形分濃度38.0%、ポリ
エチレンイミン/PVA=10/90の水溶液を作製した
(A原液)。一方、無機系抗菌剤「シーバイオMZH」
(株式会社海水化学研究所製)水分散液と前記PVAを
混ぜ、固形分濃度20%、抗菌剤/PVA=4/1の水溶
液を作製した(B原液)。シーバイオMZHの分散状態
は良好で、顕微鏡観察した結果、分散液中に粗大粒子は
存在せず、溶解操作で凝集は全く認められなかった。
【0031】紡糸ノズル直前に2種の原液経路とスタテ
ィクミキサー(15エレメント)を配置した乾式紡糸機を
使用し、各々の経路に 100℃保温下ギアポンプを使用し
原液を供給し、 160℃の熱風中に吐出、乾燥し、 180℃
で 4.5倍延伸、 220℃で熱処理して100d/30fのフィラメ
ントを得た。A原液とB原液の流量比はA/B=95/5
とした。得られたフィラメントにはポリエチレンイミン
が 9.5%、抗菌剤が 2.0%含有されていた。
【0032】
【実施例2】実施例1で使用したPVAを加熱溶解機に
水とともに仕込み、 120℃まで昇温し、1時間加熱溶解
して濃度34.2%の原液を作製した(C原液)。ポリアク
リル酸(東亜合成株式会社製、アロンA10H、平均重合度
5,000 、25%水溶液)24重量部を攪拌翼付き溶解機に仕
込み、攪拌しつつ粒状カ性ソーダ1重量部(中和度30%
に相当)を凝集塊が生成しない程度に徐々に投入した。
カ性ソーダ粒子が視認できなくなってからさらに1時間
攪拌し、固形分濃度27.2%の原液を作製した(D原
液)。
【0033】実施例1で使用した紡糸機に流量比C/D
=10/3で原液を供給し、乾式紡糸を行った。熱風温度
は 150℃、 180℃で 4.0倍延伸し、 230℃で熱処理し
た。紡糸は安定であり、経時的に変化せず特段の問題も
発生しなかった。得られた100d/30fのフィラメントを綛
にとり、硫酸20%、硫酸ナトリウム20%、ホルムアルデ
ヒド4%の浴中でホルマール化を行った。得られた繊維
の総カチオン交換容量を測定したところ、2.1meq/gであ
った。
【0034】反応後水洗した100g綛5綛を、カ性ソーダ
4gを溶解した10Lの水溶液に室温下浸漬し、30分間攪
拌した後、綛を取り出した。浴のpHはほぼ中性であっ
た。この浴に硝酸銀20gを溶解し、取り出していた綛を
再び浴に浸漬し、室温下1時間攪拌処理し、繊維に銀を
吸着させた。吸尽率は98%以上であった。これは繊維中
のカルボン酸の約10%に相当していた。
【0035】十分に水洗した後、ホルムアルデヒド5
%、カ性ソーダ10%、60℃に保った水溶液中に浸漬し、
1時間攪拌して還元処理を行った。処理により、綛は黒
色に変化したが、浸漬浴は無色のままであった。軽く水
洗後、硫酸50gを溶解した10Lの水溶液中に浸漬して、
30分攪拌し、水洗した。浸漬浴を分析した結果、pHは3
前後であり、銀の溶出は吸着量の1%以下であった。酸
はカルボキシル基を遊離型に転換することに消費され
た。得られた繊維のイオン交換容量を測定したところ、
1.9meq/gの総カチオン交換容量を示した。
【0036】
【実施例3】実施例1で使用したと同じPVA、ポリエ
チレンイミンを使用し、実施例1と同様の操作で固形分
濃度36.0%、ポリエチレンイミン/PVA=5/95の紡
糸原液を作製した。該紡糸原液を乾式紡糸し、100d/30f
のフィラメントを得た。得られた糸条1gを粒径25nm以
下のアナターゼ型酸化チタン1%分散水溶液に浴比1:
20で浸漬し、攪拌しつつ60℃に加熱し1時間吸着処理し
た。十分に水洗後、乾燥し、さらに 110℃で2時間熱処
理した。糸条重量を測定したところ、 5.5%重量が増加
していることがわかった。
【0037】
【実施例4】実施例1で使用したと同じPVA、ポリエ
チレンイミンを使用し、実施例1と同様の操作で固形分
濃度40.3%、ポリエチレンイミン/PVA=15/85の紡
糸原液を作製した(E原液)。一方、大日精化工業株式
会社製の有機系抗菌剤「ダイキラーPED932243N」の水分
散液とPVAを水とともに加熱溶解機に仕込み、同様の
操作により固形分濃度35.2%、抗菌剤/PVA=6/94
の溶液を作製した(F原液)。両原液を実施例1と同様
の紡糸機を用いて乾式紡糸し、250d/25fのフィラメント
を得た。各原液の流量比はE/F=9/1であった。
【0038】得られた繊維を綛状とし、エチレングリコ
ールジグリシジルエーテル 0.3%の室温水溶液に浴比
1:20で浸漬した。攪拌を続けながら80℃まで30分かけ
て昇温し、80℃に3時間保持して架橋処理を行った。未
架橋処理の糸条は沸騰水に溶解するのに対し、架橋処理
糸は溶解しなかった。得られた繊維にはポリエチレンイ
ミンが13%、抗菌剤が 0.5%含まれていた。
【0039】
【比較例1】実施例1で使用したと同様のPVA、抗菌
剤を使用し、加熱溶解機に抗菌剤/PVA=2/98で水
と共に仕込み、実施例1と同様にして固形分濃度35.9%
の紡糸原液を作製した。本紡糸原液を使用する以外は実
施例1の紡糸条件にて乾式紡糸し、100d/30fのフィラメ
ント糸を作製した。
【0040】
【比較例2】実施例2で製造したポリアクリル酸/PV
A混合ホルマール化糸をそのまま使用した。
【0041】
【比較例3】実施例4で使用したと同様のPVA、抗菌
剤を使用し、同様の操作により固形分濃度34.3%、抗菌
剤/PVA= 0.5/99.5の溶液を作製した。使用原液を
この原液1種とする以外は実施例4と同様にして250d/2
5fのフィラメント糸を作製した。
【0042】
【実施例5】実施例1で製造したフィラメント糸、比較
例1で製造したフィラメント糸および抗菌剤が含まれて
いない同繊度のPVAフィラメント糸の3種について、
黄色ブドウ球菌に対する抗菌性を評価した。各試料とも
1.0mm長にカットして使用した。菌数が5〜30×105
まれている液 0.2mlを各々 0.2g採取した各試料に接種
した。接種直後、18時間培養後20mlの生理食塩水で試料
を洗い、洗浄液中の生菌数を混釈平板培養法で測定し、
試料当たりの生菌数に換算した。その結果を[表1]に
示す。この結果から抗菌剤を含む試料は抗菌性を示して
いる。
【0043】
【表1】
【0044】続いて、上記カット糸50gを各々別々にガ
ラス製カラムに充填し、各々に、さきに接種した菌体分
散液を 100倍に希釈した液をポンプでSV30となる流速
で供給した。なお、供給用の液は15℃前後に保ち、カラ
ムに流入するまでの間に温水ジャケットを使用して35℃
前後の温度まで昇温させ、同温度に保たれたカラムに流
入させるようにした。通液開始8時間後、カラム流出部
から流出液を各々採取し、各採取液中の生菌数を同様に
して測定した。結果を[表2]に示した。
【0045】
【表2】
【0046】以上の結果から、イオン性(ポリアミン
基)を繊維に持たせることにより、菌体を引き寄せ、抗
菌効果を確実にしていることがわかる。
【0047】
【実施例6】実施例1の繊維と比較例1の繊維をそれぞ
れ51mm長にカットし、これらの繊維60%と3dのポリエ
ステルステープル40%を混繊し、ニードルパンチ法によ
り目付300g/m2 の不織布とした。それぞれの不織布60g
をカートリッジ型フィルターとした。それぞれにレジオ
ネラ属菌を含む風呂水 200Lを35〜40℃に保温し、循環
経路に上記フィルターを設置して風呂水を流量15〜16L
/分で循環ろ過し、一定時間毎に風呂水をサンプリング
して生菌数を測定した。結果を[表3]に示した。実施
例1の試料の方が抗菌効果の優れていることが明らかで
ある。
【0048】
【表3】
【0049】
【実施例7】実施例2で製造した銀担持フィラメント
糸、比較例2で製造したフィラメント糸、抗菌剤を含ま
ない同繊度のPVA繊維の3者について、河川水に含ま
れる雑菌に対する抗菌性をサンアイバイオチェッカーT
TC(三愛石油株式会社製)を使用し評価した。基本的
操作は実施例5と同様である。
【0050】総菌数が 106個/mlの河川水 1.0mlを各々
1.0g採取した各サンプルに接種した。河川水には栄養
剤その他成長を維持、促進するための薬剤等は全く加え
ず、そのまま使用した。接種直後、18時間放置後、各々
10mlの生理食塩水で洗浄し、洗浄水中の総菌数をバイオ
チェッカーで測定した。その結果、PVA糸の場合、接
種直後 105個/ml、18時間放置後 107個/ml、同じく18
時間放置後の実施例2の場合 103個/ml未満、比較例2
の場合 105個/mlであった。銀が担持された実施例2の
繊維が抗菌性を有することは明らかである。比較例2で
は、菌体は吸着するもの生理食塩水による洗浄で、かな
りの部分が繊維から脱落したものと考えられる。
【0051】実施例5と同様、各繊維をガラス製カラム
に50g充填し、各々のカラムにポンプで予め水で10倍希
釈した河川水を流速SV20で流した。8時間後、流出液
をそれぞれ採取し、そこに含まれている総菌数をバイオ
チェッカーで測定した。その結果、PVA繊維の場合 1
05個/ml、実施例2の場合 103個/ml未満、比較例2の
場合 103個/ml未満であった。さらに流し続け、3日後
測定したところ、実施例2の繊維は 103個/ml未満を維
持したのに対し、比較例2の繊維は流入する希釈河川水
と同レベルになった。以上の結果から、繊維にイオン性
(ポリカルボン酸)を持たせることにより、菌体を引き
寄せることができ、銀の抗菌効果を確実にすることがで
きた。
【0052】
【実施例8】実施例4で紡糸したエチレングリコールジ
グリシジルエーテルで不溶化していないフィラメント
糸、比較例3のフィラメント糸、および同繊度の抗菌剤
を含まないPVA繊維を各々巾 9.5cmの筒状メリヤス編
地にした。各々のメリヤス編地を長さ15cmに切断し、そ
れぞれ一端を編地と同一の糸で縛り、開口部を封鎖し、
他端から外径5cmのガラスパイプを 1.5〜2.0 cm挿入
し、編地と同一の糸で縛った。次いで、試薬特級のエチ
ルアルコールに浸漬後、減圧乾燥し、抗カビ性の試験に
供した。
【0053】200℃以上に加熱した銅パイプ中を通過し
た空気を室温まで冷却し、減菌水に吹き込み、バブリン
グ加湿した後、空気室を経由し、上記メリヤス編地を取
り付けたガラスパイプにメリヤス面に対し 0.5〜1.0 cm
/秒となる流速で流した。なお、編地を取り付けたガラ
スパイプは、底部側面に孔を開けた20cm×20cm×20cmの
箱の天井部にパイプを貫通させ、編地取り付け部を下向
きにした形で取り付けてある。約15時間この状態に保持
した。次いで、予め空気中に放置することによって青カ
ビが表面積の50%以上発生している食パンを、ガラスパ
イプ直前の空気室にセットした。同時に、メリヤス編地
がセットされている箱の中のメリヤス編地直下に、焼き
たての食パンを置いた。系の温度は積極的にコントロー
ルせず、環境の温度変化(20〜35℃)に追随させた。約
24時間この状態を保持した。
【0054】次いで、編地をガラスパイプから外し、開
口部を封鎖している糸を切断して開口させ、編地を切り
開いた。別に準備した焼きたての食パンの上に、メリヤ
ス編地の内側の面が直接パン表面に接触するようにし
た。このようにして得られた合計6種類の食パンをそれ
ぞれポリエチレン袋に入れ、カビの生え具合いを定性的
に比較観察した。
【0055】結果の評価基準は次のようにし、試料食パ
ン中のどれかが×の評価となった時点で全体をそれぞれ
判定した。評価結果は[表4]に示した。以上の結果か
ら、イオン性を持つことにより、菌体を引き寄せ、抗菌
抗カビ効果を確実にできることが明らかである。
【0056】
【表4】
【0057】
【発明の効果】本発明によれば、PVA系繊維に高分子
ポリアミン、高分子ポリカルボン酸を含有させ、さらに
抗菌剤または抗カビ剤を保持させることにより、菌体を
積極的に引き寄せ、抗菌抗カビ効果を効率良く発揮させ
る繊維を得ることができるようになった。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリビニルアルコール系合成繊維であっ
    て、繊維中に高分子ポリアミンもしくは高分子ポリカル
    ボン酸を2〜50wt%、抗菌性物質を 0.1〜20wt%含有す
    ることを特徴とするイオン性を有し、菌体を積極的に引
    き寄せ抗菌効果を発揮する抗菌繊維。
  2. 【請求項2】 ポリビニルアルコール(1) に、高分子ポ
    リアミンもしくは高分子ポリカルボン酸(2) をポリビニ
    ルアルコールに対し2〜50wt%、抗菌性物質(3) をポリ
    ビニルアルコールに対し 0.1〜20wt%、および水を加
    え、加熱溶解、分散して得られる混合溶液を乾式紡糸す
    ることを特徴とするイオン性を有し、菌体を積極的に引
    き寄せ抗菌効果を発揮する抗菌繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】 ポリビニルアルコール(1) に、高分子ポ
    リアミンもしくは高分子ポリカルボン酸(2) をポリビニ
    ルアルコールに対し2〜50wt%添加した混合水溶液を乾
    式紡糸し、アセタール化もしくはグリシジル化合物によ
    るエーテル化による不溶化を行うかもしくは行うことな
    く、抗菌性物質の溶液もしくは分散液に浸漬することに
    より、さらに必要があれば還元処理することにより、該
    抗菌性物質を 0.1〜10wt%担持させたことを特徴とする
    イオン性を有し、菌体を積極的に引き寄せ抗菌効果を発
    揮する抗菌繊維の製造方法。
JP30501597A 1997-10-21 1997-10-21 ポリビニルアルコール系抗菌繊維およびその製造方法 Pending JPH11124723A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP30501597A JPH11124723A (ja) 1997-10-21 1997-10-21 ポリビニルアルコール系抗菌繊維およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP30501597A JPH11124723A (ja) 1997-10-21 1997-10-21 ポリビニルアルコール系抗菌繊維およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11124723A true JPH11124723A (ja) 1999-05-11

Family

ID=17940072

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP30501597A Pending JPH11124723A (ja) 1997-10-21 1997-10-21 ポリビニルアルコール系抗菌繊維およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11124723A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007531615A (ja) * 2004-03-26 2007-11-08 ペニャルヴァ,ホアキン エスピュエラス フィルタ及び製造方法
JP2014074243A (ja) * 2012-10-03 2014-04-24 Japan Exlan Co Ltd 光触媒含有繊維および該繊維を含有する繊維構造物
CN111719196A (zh) * 2020-07-31 2020-09-29 储旭 复合抗菌纤维及其制备方法
CN115651374A (zh) * 2022-10-24 2023-01-31 福建亮点印务有限公司 一种环保抗菌食品级包装袋及其制备方法
CN116574300A (zh) * 2023-05-12 2023-08-11 华南理工大学 一种长效抗菌的聚乙烯醇缩醛海绵及其制备方法

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007531615A (ja) * 2004-03-26 2007-11-08 ペニャルヴァ,ホアキン エスピュエラス フィルタ及び製造方法
KR101464206B1 (ko) * 2004-03-26 2014-11-21 호아퀸 에스푸에라스 페날바 생산방법 및 상기 방법을 사용하여 수득되고 레지오넬라뉴모필라 증식으로부터 위험이 있는 설비에 레지오넬라뉴모필라의 여과 및 제거를 위한 부직포 및/또는 여과인젝터 구조 또는 시트를 포함하는 필터
JP2014074243A (ja) * 2012-10-03 2014-04-24 Japan Exlan Co Ltd 光触媒含有繊維および該繊維を含有する繊維構造物
CN111719196A (zh) * 2020-07-31 2020-09-29 储旭 复合抗菌纤维及其制备方法
CN115651374A (zh) * 2022-10-24 2023-01-31 福建亮点印务有限公司 一种环保抗菌食品级包装袋及其制备方法
CN115651374B (zh) * 2022-10-24 2023-10-24 福建亮点印务有限公司 一种环保抗菌食品级包装袋及其制备方法
CN116574300A (zh) * 2023-05-12 2023-08-11 华南理工大学 一种长效抗菌的聚乙烯醇缩醛海绵及其制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
DE69833683T2 (de) Superabsorbierende gele aus poly(vinylamin) und verfahren zur herstellung davon
EP1169502B1 (en) Multicomponent superabsorbent fibers
CN108047709B (zh) 一种石墨烯抗菌母粒、纤维及其制备方法
CN1283240A (zh) 抗微生物结构物
CN101175571A (zh) 含有共混聚合物而成的液体中物质转移材料
US20020146385A1 (en) Ionic antimicrobial coating
JPS62195038A (ja) 抗菌性ポリエステル系成形体
US20150292117A1 (en) Process for producing water-absorbing polymer fibers
JPH11124723A (ja) ポリビニルアルコール系抗菌繊維およびその製造方法
JP2010138430A (ja) 金属回収資材及び白金族金属の回収方法
Şendil et al. Cross‐linked electrospun polyvinyl alcohol/sodium caseinate nanofibers for antibacterial applications
EP0552151A4 (ja)
JPH0694534B2 (ja) 抗菌性を有するポリエステル系成形体
US20160199235A1 (en) Water-absorbent material with adjustable desalination function
Qin et al. Preparation and characterization of silver containing chitosan fibers
JP4560778B2 (ja) 光触媒活性を有する機能性繊維
EP0644958A1 (en) Fibre and film
CN113638073A (zh) 一种抗菌纳米纤维的制备方法
JPH04126820A (ja) 抗菌性ポリビニルアルコール系合成繊維及びそれを用いた成形物
JPH0559662A (ja) 抗菌性繊維製品
JP3338604B2 (ja) 消臭・抗菌性アクリル系合成繊維の製造方法
CN118110032B (zh) 壳聚糖复合抗菌织物、其制备方法及应用
Ferrero et al. Chitosan coating on textile fibers for functional properties
JP3579606B2 (ja) 抗菌・防ダニ性繊維
TWI449823B (zh) Superabsorbent antibacterial fiber and its use