JPH11120628A - ディスク成形品の成形方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶融樹脂材料をキャビティへ完全充填すると
ともに、キャビティ内に充填された溶融樹脂材料の流動
層のスプルー側への逆流量をオスカッタの前進によるゲ
ートカットの時期タイミングによって調整し、板厚精度
のより高いディスク成形品が得ることができるディスク
成形品の成形方法を提供する。 【解決手段】 成形型Ｐの型閉め後の型締力を溶融樹脂
材料Ｍの射出工程の当初は低くかつ充填完了の前から後
にかけての区間においては高く切り替えて成形するとと
もに、キャビティＣ内の成形品内部に溶融樹脂材料Ｍの
流動層Ｍｆが残置されている間に、前記オスカッタ２５
によるゲートカットの時期タイミングを調整することに
よってディスク成形品の板厚調整をする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明はディスク成形品の
成形方法に関し、特には板厚精度の高いディスク成形品
を成形する方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】例えばコンパクトディスク（ＣＤ）やＬ
ＤあるいはＤＶＤ等の光ディスク成形品の成形に際して
は、幅に対して面積が極めて大きいキャビティに樹脂材
料を射出するので（ＣＤの場合厚みが１．２ｍｍで直径
が１２０ｍｍ）、しばしばキャビティの外周部分まで樹
脂材料が完全に行きわたらない、いわゆるショートショ
ット現象が起こり、成形品の板厚精度、特に外周部の板
厚を十分に確保することができないという問題があっ
た。このショートショット現象を解決するために、ディ
スク成形品の成形型の型閉め後の型締力を溶融樹脂材料
の射出工程の当初は低くかつ充填完了の前から後の区間
において高く切り換えて成形する、いわゆる射出圧縮成
形が提案され、この射出圧縮成形の採用によって、溶融
樹脂材料のキャビティへの完全充填が可能となった。

【０００３】しかるに、上記射出圧縮成形によってディ
スク成形品の成形を行うと、今度は逆に、成形されたデ
ィスク成形品の内周部の板厚が外周部の板厚よりも薄く
なるという、いわゆる中やせ現象が起こることがある。
この中やせ現象は板厚精度上も問題であるが、仮にそれ
が許容される範囲内のものであっても（ＣＤの場合の肉
厚の許容範囲は１．２ｍｍプラスマイナス０．１ｍ
ｍ）、薄い面板状のディスク成形品にあっては内周部の
板厚が薄くなるとディスク成形品の全体強度が低下する
という品質上の問題にもつながる。

【０００４】本発明者は、このような中やせ現象の発生
の原因について鋭意研究したところ、成形時のゲートカ
ットの時期タイミングがこの中やせ現象と関係のあるこ
とを知った。すなわち、射出圧縮成形では、成形型の型
締力が溶融樹脂材料の充填完了の前から後の区間におい
て高く切り換えて成形されるので、キャビティ内に充填
された溶融樹脂材料の流動層がこの高い型締力によって
ゲート部からスプルー側に逆流するのである。この流動
層の逆流はキャビティの中心部のゲート部で生ずるか
ら、ゲートカットの時期タイミングが遅くなると成形品
の内周側の溶融樹脂材料の流動層の流出量が大きくな
り、その結果内周部の板厚が外周部に比してより大きく
減少し中やせ現象が発生することがわかった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】この発明は、上の見識
に基づいて提案されたもので、溶融樹脂材料をキャビテ
ィへ完全充填するとともに、キャビティ内に充填された
溶融樹脂材料の流動層のスプルー側への逆流量をオスカ
ッタの前進によるゲートカットの時期タイミングによっ
て調整し、板厚精度のより高いディスク成形品が得るこ
とができるディスク成形品の成形方法を提供しようとす
るものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】すなわち、請求項１の発
明は、ディスク成形品キャビティを構成するミラーブロ
ックのいずれか一方にスタンパが配置された成形型の前
記キャビティに溶融樹脂材料を射出し充填した後オスカ
ッタの前進によりゲートカットするディスク成形品の成
形方法において、前記成形型の型閉め後の型締力を溶融
樹脂材料の射出工程の当初は低くかつ充填完了の前から
後にかけての区間においては高く切り替えて成形すると
ともに、前記キャビティ内の成形品内部に溶融樹脂材料
の流動層が残置されている間に、前記オスカッタによる
ゲートカットの時期タイミングを調整することによって
ディスク成形品の板厚調整をすることを特徴とするディ
スク成形品の成形方法に係る。

【０００７】また、請求項２の発明は、請求項１におい
て、前記ゲートカットを溶融樹脂材料の充填完了直後か
ら０．４秒の間において行うディスク成形品の成形方法
に係る。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下添付の図面に従ってこの発明
を詳細に説明する。図１は射出圧縮成形用の成形型の一
例を示す要部の断面図、図２はこの発明の一実施例にお
ける溶融樹脂材料の充填時の状態を模式的に表した断面
図、図３はその充填完了時の状態を表した模式断面図、
図４はその一つのゲートカットの時期タイミング状態を
表した模式断面図、図５は同じく他のゲートカットの時
期タイミング状態を表した模式断面図、図６はさらに別
のゲートカットの時期タイミング状態を表した模式断面
図、図７はこの発明方法により得られたディスク成形品
の斜視図、図８はゲートカットの時期タイミングとディ
スク成形品の内周部板厚および外周部板厚の関係を示し
たグラフである。

【０００９】この発明は、例えば図７に図示したような
コンパクトディスクＤ等のディスク成形品の成形方法に
関し、以下、このコンパクトディスクＤを実施例として
説明する。このコンパクトディスクＤは、板厚ｂが１．
２ｍｍ、直径ｄが１２０ｍｍの規格を有する。符号Ｄｏ
は中心孔部である。

【００１０】図１は、このコンパクトディスクＤの成形
に用いられる射出圧縮成形用の成形型Ｐの要部の断面図
である。図１において、符号１０は固定型全体を表し、
１１は固定側ミラーブロック、１２はミラーブロックイ
ンサート、１３はメスカッタ、１４はスプルーブッシ
ュ、１５はスプルー孔である。また、符号２０は可動型
全体を表し、２１は可動側ミラーブロック、２２はスタ
ンパ、２３はスタンパ内周ホルダ、２４はエジェクタ、
２５はオスカッタ、２６はセンターピンである。また、
符号Ｃは固定型１０と可動型２０によって形成されるデ
ィスク成形品キャビティ、Ｇはゲート部、Ｎは射出装置
のノズルを表す。

【００１１】図示の例では、スタンパ２２が可動型２０
側の可動側ミラーブロック２１に取り付けられたものを
示したが、周知のように、この種のディスク成形品の成
形にあってはスタンパは固定型１０側にも取り付けるこ
とが可能である。また、上の成形型の構成は一例であっ
て、必要な変更がなされることはいうまでもない。な
お、以下、図２ないし図６に基づいて説明するが、これ
らの図では、説明の便宜上、図１の成形型Ｐを固定型１
０および可動型２０として簡略化し、模式図として表し
た。

【００１２】まず、図２に示すように、成形型Ｐの型閉
め後、固定型１０側のスプルー孔１５からゲート部Ｇを
介して溶融樹脂材料Ｍをディスク成形品キャビティＣ内
に射出充填し、可動型２０側のスタンパ２２（図１参
照）によってディスクの成形と同時に信号面の転写を行
う。なお、図からも明らかなように、前記キャビティＣ
内に充填された溶融樹脂材料Ｍは、前記キャビティＣの
成形型の型面側から固化する。図中の符号Ｍｆは流動
層、Ｍｈは半溶固層である。

【００１３】この発明では、溶融樹脂材料Ｍの射出工程
の当初は型締力を低くし、充填完了の前から後にかけて
の区間においては型締め力を高く切り換えて成形され
る。実施例では、型締能力が３５トンの型締装置を使用
し、溶融樹脂材料Ｍの射出工程の当初の型締力を２ト
ン、充填完了後の射出保圧時の型締力を１７トンとして
成形した。型締力の低い樹脂材料Ｍの射出工程の当初で
は、図２のように、キャビティＣは射出圧により１５０
μｍほど開き、樹脂材料ＭはキャビティＣの外周まで行
きわたりやすい状態となる。そして、その後型締め力を
高くすることによって溶融樹脂材料ＭはキャビティＣの
全体に完全に充填される。

【００１４】このように、型締力を２段階に切り替えて
射出圧縮成形することによって、溶融樹脂材料Ｍはキャ
ビティＣ外周まで十分流動して、ショートショットを生
じることなく完全充填が可能となる。型締力の切替は、
通常では充填完了とほぼ同時に行うのが一般的である
が、材料やスタンパの特性および成形品の要求仕様（ソ
リ量等）等に応じて充填完了の前や後に切り換えること
もある。なお、実施例のＣＤ（板厚１．２ｍｍ、直径１
２０ｍｍ）の射出充填に要する時間、つまり充填開始時
から充填完了時までの時間は０．２〜０．５秒である。

【００１５】図３は、溶融樹脂材料Ｍの充填完了時を示
すものである。この充填完了時には、射出装置は停止さ
れて該射出装置による射出圧は０となるとともに、前記
したように高い型締力により型締めされているため、図
示のように、キャビティＣ内の成形品内部の溶融樹脂材
料Ｍの流動層Ｍｆがゲート部Ｇを経てスプルー孔１５
（射出装置側）へ逆流する。この逆流はキャビティＣ内
に流動層Ｍｆが残置されている間、オスカッタ２５が前
進してゲート部Ｇが閉じられるまで続く。図示の符号Ｍ
ｓはスプルー成形部分である。なお、キャビティＣ内に
溶融樹脂材料Ｍの流動層Ｍｆが残置されている時間は、
実施例のコンパクトディスクＤで概ね充填完了後１秒間
である。

【００１６】この発明においては、このキャビティＣ内
の成形品内部に樹脂材料Ｍの流動層Ｍｆが残置されてい
る間に、前記オスカッタ２５によるゲートカットの時期
タイミングを調整して、流動層Ｍｆの逆流量を制御し
て、ディスク成形品の板厚調整、より詳しく言えば、デ
ィスク成形品の内周部側と外周部側の厚み調整を行うも
のである。

【００１７】ずなわち、図４は溶融樹脂材料Ｍの充填完
了後０．１秒の時期タイミングでゲートカットを行った
場合、図５は同じく溶融樹脂材料Ｍの充填完了後０．３
秒の時期タイミングでゲートカットを行った場合、図６
はさらに溶融樹脂材料Ｍの充填完了後０．５秒の時期タ
イミングでゲートカットを行った場合の各模式図であ
る。図示したように、溶融樹脂材料Ｍの充填完了から時
間が経過するにつれて、溶融樹脂材料Ｍの半固溶層Ｍｈ
が増加し流動層Ｍｆの量が減少する。

【００１８】上の時期タイミングでゲートカットを行っ
た場合のディスク成形品の板厚の測定結果を表１として
示す。この測定は、ディスク成形品の内周部として中心
から４５ｍｍ離れた位置（図７のＸ位置）の板厚を、外
周部として中心から１１５ｍｍ離れた位置（図７のＹ位
置）の板厚をそれぞれ計測して行なった。なお、材料の
充填量はすべて同一とした。

【００１９】

【００２０】また図８は、上の表１の測定結果に基づい
て、ゲートカットの時期タイミングとディスク成形品の
内周部板厚および外周部板厚の関係を示したグラフであ
る。グラフにおいて、横軸はゲートカットの時期タイミ
ングを、縦軸はディスク成形品の板厚を示し、ディスク
成形品の内周部板厚は実線で、外周部板厚は一点鎖線で
表した。

【００２１】図７および図８の各データからわかるよう
に、ゲートカットの時期タイミングが前記溶融樹脂材料
Ｍの充填完了から時間が経過するにつれて逆流量が増加
して、ディスク成形品の内周部板厚および外周部板厚の
双方とも薄くなる。また、内周部には残置流動層が多い
ので、内周部板厚の変化量（薄くなる量）は、外周部板
厚の変化量に比し大きいことが分かる。そして、この例
では、ゲートカットの時期タイミングが前記溶融樹脂材
料Ｍの充填完了後０．４秒のとき、ディスク成形品Ｄの
内周部板厚と外周部板厚の差は０となり、それ以後で
は、ディスク成形品Ｄの内周部板厚が外周部板厚よりも
薄くなる（いわゆる中やせ現象）ことが示される。

【００２２】これらのことから、ディスク成形品に求め
られる板厚の調整を行うことができる。特に、前記した
内周部の板厚が外周部より薄くなるいわゆる中やせ現象
を防止するためには、請求項２の発明に記載したよう
に、溶融樹脂材料の充填完了直後から０．４秒の間にゲ
ートカットを行えばよい。これによって、ディスク成形
品の全体強度（面強度）を向上することができる。ま
た、ディスク成形品の内周部と外周部との板厚の差をで
きるだけ小さくするためには、０．４秒近辺でゲートカ
ットすればよい。

【００２３】

【発明の効果】以上図示し説明したように、この発明の
ディスク成形品の成形方法によれば、溶融樹脂材料をシ
ョートショットを生じることなくディスク成形品キャビ
ティに完全充填することができるとともに、ゲートカッ
トの時期タイミングを調整することにより前記キャビテ
ィ内に充填された成形品内部の溶融樹脂材料の流動層の
逆流量を調整して、ディスク成形品の板厚調整を行な
い、要求される板厚精度のディスク成形品を得ることが
できる。

【００２４】また、請求項２の発明のようにゲートカッ
トを溶融樹脂材料の充填完了直後から０．４秒の間に行
うことにより、ディスク成形品の内外周の板厚差を微小
にしつつ、なおかつ強度上問題点のある中やせ現象を解
消することができ、品質精度の高いディスク成形品を得
ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】射出圧縮成形用の成形型の一例を示す要部の断
面図である。

【図２】この発明の一実施例における溶融樹脂材料の充
填時の状態を模式的に表した断面図である。

【図３】その充填完了時の状態を表した模式断面図であ
る。

【図４】その一つのゲートカットの時期タイミング状態
を表した模式断面図である。

【図５】同じく他のゲートカットの時期タイミング状態
を表した模式断面図である。

【図６】さらに別のゲートカットの時期タイミング状態
を表した模式断面図である。

【図７】この発明方法により得られたディスク成形品の
斜視図である。

【図８】ゲートカットの時期タイミングとディスク成形
品の内周部板厚および外周部板厚の関係を示したグラフ
である。

【符号の説明】

１０ 固定型 １１ 固定側ミラーブロック ２０ 可動型 ２１ 可動側ミラーブロック ２２ スタンパ ２５ オスカッタ Ｄ ディスク成形品 Ｐ 成形型 Ｃ ディスク成形品キャビティ Ｇ ゲート部 Ｍ 溶融樹脂材料 Ｍｆ 溶融樹脂材料の流動層

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ディスク成形品キャビティを構成するミ
   ラーブロックのいずれか一方にスタンパが配置された成
   形型の前記キャビティに溶融樹脂材料を射出し充填した
   後オスカッタの前進によりゲートカットするディスク成
   形品の成形方法において、 前記成形型の型閉め後の型締力を溶融樹脂材料の射出工
   程の当初は低くかつ充填完了の前から後にかけての区間
   においては高く切り替えて成形するとともに、前記キャ
   ビティ内の成形品内部に溶融樹脂材料の流動層が残置さ
   れている間に、前記オスカッタによるゲートカットの時
   期タイミングを調整することによってディスク成形品の
   板厚調整をすることを特徴とするディスク成形品の成形
   方法。
2. 【請求項２】 請求項１において、前記ゲートカットを
   溶融樹脂材料の充填完了直後から０．４秒の間において
   行うディスク成形品の成形方法。