JPH11112495A - 量子通信方法及び装置 - Google Patents

量子通信方法及び装置

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JPH11112495A
JPH11112495A JP9269418A JP26941897A JPH11112495A JP H11112495 A JPH11112495 A JP H11112495A JP 9269418 A JP9269418 A JP 9269418A JP 26941897 A JP26941897 A JP 26941897A JP H11112495 A JPH11112495 A JP H11112495A
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quantum
photon
receiver
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JP9269418A
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Akio Motoyoshi
明夫 元吉
Koichi Yamaguchi
公一 山口
Tetsuya Ogura
徹也 小倉
Tetsuya Yoneda
哲也 米田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 量子ビットのテレポーテェイションを実現
できる量子通信方法及び装置を提供する。 【解決手段】 送信しようとする情報に応じた量子状態
を有する第1の粒子[1]と量子力学的にもつれた状態
を含む互いに相関する第2の粒子[2]と第3の粒子
[3]を用意する。第1の粒子と第2の粒子は送信者
が、第3の粒子は受信者が保有する。第2と第3の粒子
の合成系で得られる量子状態と第1の粒子の量子的状態
並びにその直交状態との積状態から得られる状態を所定
の比率で混合した状態16を送、受信者が共有する。第
1と第2の粒子からなる系で送信者により行なわれた測
定結果が古典通信路で受信者に送信され、受信者は、古
典通信路で送信された情報に基づいて第3の粒子を測定
することにより第1の粒子から消滅した量子状態を第3
の粒子に再現する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、量子通信方法及び
装置、さらに詳細には、量子力学的状態を送信者から受
信者に送信する量子通信方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】現在の情報通信は、通信路を経由しての
古典ビッツ(bits)、即ち0、1を直接送信するこ
とにより行なわれており、近年の情報通信網の急激な発
達と共に、暗号通信など、通信の機密保持、送受信相手
の確認が大きな課題となっている。
【0003】一方、近未来の量子情報通信は、2状態系
(量子ビッツ(qubits)、実用的には光の偏光)
の任意の重ね合わせ状態に、古典ビットを符号化(en
coding)して送信するものである。この状態の送
信は、いかなる量子ビットも通信路を経由せず、量子遠
隔輸送(quantum teleportatio
n)により可能であるため、情報通信の際の安全(se
curity)の保証が得られる。
【0004】このような量子情報通信は、例えば、19
93年、アメリカのベネット(C.H.Bennet
t)達により提案されている(29 MARCH 19
93、VOLUME 70 NUMBER 13 フィ
ジカル レビュー レターズ(PHYSICAL RE
VIEW LETTERS 1895―1899ペー
ジ)。この方法では、送信者と受信者の間で、あらかじ
め量子力学的にもつれた粒子のペアー(EPRペアー)
が共有されており、送信者は、送りたい情報を符号化し
た粒子と送信者の持っている粒子(EPRペアーの一
方)の合成系で、ある物理量の測定を行なう。送信者
は、送信者の観測する2粒子系の4つの可能な測定結果
の内、1/4の確率で1つの測定結果を得るので、その
測定結果を古典通信路で受信者に知らせる。受信者は、
送信者から古典通信路を介して送られてくる測定結果に
基づき、受信者が保有しているEPRペアーのもう一方
の粒子を操作することにより送信者が符号化した粒子、
即ち量子ビットを再現し、これを復号(decodin
g)してlビットの送信を完了させることができる。
【0005】このテレポーテェイション(telepo
rtation)は、量子ビット(粒子[1])の全情
報を古典通信路と量子ルートに分け、古典通信路を介し
て2ビットの情報として伝達するとともに(4つの測定
結果は2ビットで表現できる)、EPRペアー(粒子
[2]、[3])の量子力学的なもつれを量子ルートを介
して保有することにより、測定により量子状態が破壊さ
れた粒子[1]の量子状態を受信者の保有する粒子[3]
において再現することができることを特徴としている。
このテレポーテェイションでの量子ルートには、量子力
学的なもつれによる相関が存在するだけで、古典通信路
のような通信路があるわけではないので、通信路を介し
た盗聴はそもそも有り得ず、また古典通信路を介した情
報は盗聴されてもその情報だけでは粒子[1]の量子状
態を再現することはできないので、絶対的に盗聴不可能
な量子通信が可能になると、いわれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この量子ビットのテレ
ポーテェイションという通信技術では、量子力学でEP
R問題と呼ばれるものの正しい理解と合理的な観測理論
が不可欠であり、重要な役割を果たす。ところがベネッ
ト達の方法は、EPR問題の不明朗な扱いと、量子力学
誕生の頃(1926年)のノイマン(von Neum
ann)の射影仮説と呼ばれる観測理論に基づいてお
り、この仮説を採用しない限り実現不可能である(送信
者側で破壊された量子ビットを受信者側で再現する操作
ができない)。今日では、ノイマンの射影仮説を認める
と、物理過程として説明できない現象(否定的測定実
験、中性子干渉実験など)が見つかっており、又この仮
説によるとEPR問題は物理的に説明不可能なパラドッ
クス(EPRパラドックスと呼ばれている)となり、哲
学的議論にたよるしかなく、自然法則に従う物理の問題
ではなくなる。
【0007】従って、本発明は、このような問題点に鑑
みてなされたもので、量子ビットのテレポーテェイショ
ンを実現できる量子通信方法及び装置を提供することを
課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、この課題を解
決するために、量子状態を送信者から受信者に送信する
量子通信方法において、送信しようとする情報に応じた
量子状態を有する第1の粒子と量子力学的にもつれた状
態を含む互いに相関する第2と第3の粒子を用意して、
第1の粒子と第2の粒子を送信者が、第3の粒子を受信
者が保有し、前記第2と第3の粒子の合成系で得られる
量子状態と第1の粒子の量子的状態並びにその直交状態
との積状態から得られる状態を所定の比率で混合した状
態を送、受信者が共有し、第1と第2の粒子からなる系
で送信者により行なわれた測定結果を古典通信路で受信
者に送信し、受信者は、古典通信路で送信された情報に
基づいて第3の粒子を測定することにより第1の粒子か
ら消滅した量子状態を第3の粒子に再現する構成を採用
している。
【0009】また、本発明では、量子状態を送信者から
受信者に送信する量子通信装置において、光子を発生す
る手段と、前記光子から送信しようとする情報に応じて
偏光状態が変化された第1の光子を発生する手段と、前
記光子から所定の偏光を有する第2と第3の光子を発生
する手段と、第1の光子の偏光のx、y方向成分と第2
の光子の偏光のx、y成分から第1の光子のx、y方向
成分の係数に対応する変数を測定する測定手段とを備
え、送信者は前記測定された変数を古典通信路を介して
第3の光子を保有する受信者に送信し、受信者は送信さ
れてきた変数(同時計数結果)と第3の光子のx、y方
向の偏光に基づき第1の光子の偏光状態を再現する構成
も採用している。
【0010】
【発明の実施の形態】
[原理の説明]テレポーテェイションによる量子通信を
理解するためには、粒子の物理量の測定過程を理解する
ことが不可欠になる。測定過程を物理過程として、現在
の量子力学の枠内で合理的に説明する観測理論は、量子
力学の誕生以来、紆余曲折の末、1980年、町田一並
木理論として提唱されている。この理論では、測定過程
で起こるのは、ノイマンの射影仮説のように分波の消失
ではなく量子力学的干渉可能性の消失であり、この過程
を記述するには、量子力学で通常考えられているように
量子力学的状態を波動関数で記述するのではなく、密度
行列(統計作用素、密度作用素とも呼ばれている)で記
述しなければならないことが主張されている。
【0011】又この場合、測定される系と測定装置で複
合系をなしており、EPR問題は2粒子の複合系とその
部分系での測定の問題であり、テレポーテェイションは
3粒子の複合系とその部分系での測定の問題である。こ
のように測定過程や複合系とその部分系を扱うときは、
量子力学的状態は密度行列で記述しなければならない。
この考えに沿ってEPR問題を密度行列で記述し、角運
動量の保存法則を用いると、どこにもパラドックスは存
在せず、EPR問題は正しく合理的に理解できることを
町田(1991年)は示した。これに対して、ベネット
達の方法では、この保存法則の重要性への認識がなく、
測定する物理量も明瞭ではない。
【0012】本発明は、保存法則が成立するよく知られ
た物理量を観測することによりテレポーテェイションに
よる量子通信を実現しようとするものであり、町田―並
木理論に基づき量子力学的状態を密度行列で記述するこ
とによりこの量子通信を完全に理解することができるの
で、以下で説明する実施形態では、量子力学的状態を密
度行列で記述することにする。
【0013】古典ビット「0」、「1」は、量子ビット
(qubit)では、それぞれ
【0014】
【数1】
【0015】で表現される。ここで、|φi>(i=0,1)
は、粒子[1]の送信しようとする量子状態で、ディラ
ックのケット表記|>を用いた粒子[1]の状態ベクト
ルである。粒子[1]を電子とすると、電子の状態ベク
トルは、上向きのスピン↑状態と下向きのスピン↓状態
の重ね合わせで表現される。ai、biを任意の複素数と
して、
【0016】
【数2】
【0017】の関係があるので、古典ビット「0」は、
スピンの上下成分を測定すれば、状態|↑>がa0の絶
対値の2乗の確率で、また状態|↓>がb0の絶対値の
2乗の確率で現れる波動の重ね合わせで表現される量子
ビット|φ0>に対応し、また古典ビット「1」は、ス
ピンの上下成分を測定すれば、状態|↑>がa1の絶対
値の2乗の確率で、また状態|↓>がb1の絶対値の2
乗の確率で現れる波動の重ね合わせで表現される量子ビ
ット|φ1>に対応する。
【0018】量子力学的にもつれた100%の相関をも
つ2個の補助粒子は、EPRペアー(EPRは、Ein
stein―Podolsky―Rosenの頭文字)
とも呼ばれており、例えば、スピン1重項(singl
et)、即ち全スピンの大きさが0で上下成分もゼロの
状態にあるスピン1/2の2電子で実現される。
【0019】この状態Ψのケットは、
【0020】
【数3】
【0021】で定式化される。ここで、|↑>1|↓>2
は一方の電子[1]がスピン上向き状態に、他方の電子
[2]がスピン下向き状態にあり、一方|↓>1|↑>2
は一方の電子[1]がスピン下向き状態に、他方の電子
[2]がスピン上向き状態にあって、もしスピンの上下
成分を測定すれば、それぞれ1/2の確率で|↑>1
↓>2あるいは|↓>1|↑>2が観測されることを示し
ている。これらの補助粒子は、量子力学的にもつれた状
態にあり、100%相関しているので、これらがたとえ
巨視的距離離れていたとしても、一方の粒子のスピン状
態が上向きと観測されれば(50%の確率)、他方の粒
子のスピン状態の観測結果を確実に(100%)下向き
であると予言できることを示している。フォン・ノイマ
ンの射影仮説に従いEPRペアーを数3のように記述す
ると、いわゆるEPRパラドックスが発生する。測定に
より純粋状態は、混合状態へと変化するので、EPRペ
アーの量子状態は、統計作用素(密度行列)ρを用い
て、
【0022】
【数4】
【0023】のように記述しなければならない。この密
度行列の記述で、一方の粒子のスピンの上下成分の測定
後の全体の系の状態は
【0024】
【数5】
【0025】に変換される(∞は、測定後所定の時間が
経過したことを示す)。この密度行列の変化は、もつれ
がほどけ干渉項が消えて全系が混合状態となったことを
示している。また、測定後各粒子の状態は、それぞれ
【0026】
【数6】
【0027】となる。但し、
【0028】
【数7】
【0029】は部分トレース(行列の対角要素の和を部
分的にとる)を示す。
【0030】数6の第2式は、他方の粒子[2]の量子
力学的状態は、一方の粒子[1]の測定によって何の変
化も受けていないことを示しているので、量子状態を数
3のように記述した場合に発生するEPRパラドックス
を回避することができる。
【0031】ここで、上述した量子力学的にもつれた状
態を含む2個の粒子(EPRペアーの拡張)を補助粒子
として用い、送信しようとする古典ビットに応じた量子
ビットをテレポーテェイションする量子通信の具体的な
方法を説明する。
【0032】図1に示したように、送信者10は、送信
しようとする古典情報に応じて符号化された量子ビット
|φi1(古典ビット「0」、「1」に応じてi=0、
1、|φ01と|φ11は非直交状態にある)と、その
直交状態|ψi1である粒子[1]のブロック11を用
意する。
【0033】また、送、受信者は、量子力学的にもつれ
た状態を含む2個の補助粒子[2]、[3]を準備し、一
方の粒子[2]を送信者10が、また他方の粒子[3]を
受信者12が保有する。そして、送、受信者は粒子
[2]と[3]の合成系14で角運動量の大きさ1、その
z-成分が0、1、−1の3つの状態|1,0>23、|
1,1>23、|1,―1>23を共有する。また、送信者
10は、これらの3つの状態と粒子[1]の積状態|φi
1|1,0>23、|ψi1|1,1>23、|ψi1
1,―1>23を作り、これを2:1:1の強度比で混ぜ
た混合状態16を作る。この全系の状態を密度行列を用
いて記述すると、|1,0>=|Ψ(+)>、|1,1>
=|1>、|1,―1>=|−1>と書いて、
【0034】
【数8】
【0035】のようになる。但し
【0036】
【数9】
【0037】である。部分トレースをとることにより、
ブロック11、14に対応する
【0038】
【数10】
【0039】が得られ、上記の(1,23)系を(1
2,3)系に組み直すことにより、ブロック18と20
に対応する
【0040】
【数11】
【0041】が得られる。
【0042】次に、送信者10は自分の保有する粒子
[1]と[2]からなる(1,2)系18で角運動量のz
-成分の測定を行なう。この測定により全系の密度行列
は、
【0043】
【数12】
【0044】のように変換され、最終的に
【0045】
【数13】
【0046】を得る。
【0047】送信者10は、(1,2)系の測定により
0又は±1の測定結果を得るので、その測定結果(又
は、測定が完了したこと)を古典通信路で受信者12に
知らせる。この情報を受け取った受信者12は自分の持
つ粒子[3]の状態20に、それぞれ|φi3又は|ψi
3が現れたことを角運動量の保存法則から知り、受信
者は粒子[3]の測定による復号化で|φ01、又は|
φ11が送られたことを知ることができる。
【0048】古典ビット0、1の符号化、復号化の方向
及びz軸の方向は、あらかじめ送受信者で決めておいて
もよいし、復号化の際の測定結果の確率の差から読み出
すこともできる。この方法は、ベネット達のものと違
い、送信者側で測定により破壊された量子ビットを受信
者側で再現する操作は不要であり、日本で生まれた観測
理論に基づき、我が国の国際的な雑誌に公表した量子通
信技術のための純国産の理論である。
【0049】[光子を用いた実施形態]上述した原理
は、スピン1/2の粒子(電子、中性子など)で可能で
あるが、実用化に適した光子を粒子とする例に基づきテ
レポーテェイションの具体例を説明する。光の偏光をス
ピンの代わりに用いる場合は、
【0050】
【数14】
【0051】(xは水平偏光状態、yは垂直偏光状態)
とし、スピン1/2の粒子のスピン状態|↑>と|↓>
を、例えば|↑>=x、|↓>=yあるいはその逆に読
み替えることで、スピン1/2の粒子について述べたこ
とが、原理的には光子について、全てあてはまる。しか
し、3個の光子を用いる場合、光子の偏光状態の測定は
1個1個の光子についてしかできず、図1のブロック1
6である3光子の数8に対応する状態及び図1のブロッ
ク18、20である数11を導く3光子の状態の直接の
作成は困難などの実際上の制約があるため、光子3個で
量子通信を実現するには特別の工夫が必要である。
【0052】図2には、この工夫のなされた粒子を光子
とした場合のテレポーテイションの実施形態が図示され
ている。
【0053】図2は、基本的に重要な部分のみを一つの
例で分かり易く示したものであり、同図に示したよう
に、送信者10はブロック21を、受信者12はブロッ
ク50を用意する。ブロック21の中で符号22で示す
ものは、最初の光源としてのレーザーパルス発振器で、
ナノ秒程度の間隔で角振動数ωのパルスを次々と発生す
る。各レーザーパルスは2次高調波発生結晶(例えば、
KNbO3などの結晶、以下SHGという)23に入射
される。ここでは、説明の便宜上、パルスレーザーを用
いたが、連続波レーザーを用いることも出来る。
【0054】SHG23から、角振動数ωで素通りした
光子と角振動数が2ωに変わった光子の2光子が得ら
れ、角振動数ωの光子は光子[1]のブロック30へ、
角振動数2ωの光子は、例えばKNbO3などのタイプ
Iの非線形結晶から構成されるパラメトリック変換器
(パラメトリック・ダウン・コンバージョン、以下PD
Cという)24へ導かれる。このPDC24で、角振動
数ωの2光子に変換され、一方の光子は、送信者側の光
子[2]のブロック40へ、もう一方の光子は光ファイ
バー25を経由して受信者側の光子[3]のブロック5
0へ送られる。PDC24から出た2光子はタイプIの
結晶の場合、その偏光状態が互いにx(水平偏光)同
士、又は互いにy(垂直偏光)同士と決まった所定の偏
光状態で放出される。
【0055】以下、光子[1]のブロック30、光子
[2]のブロック40、光子[3]のブロック50の順に
説明する。
【0056】SHG23からブロック30に導かれた光
子[1]はハーフミラー31で2つの光路に分割され、
ハーフミラー31を通過した光子は偏光回転子(水晶)
32を通り、偏光方向がθ回転されて|φ>1状態が形
成される。垂直偏光(y)を通過させ、水平偏光(x)
を反射する偏光ビームスプリッター(以下PBSとい
う)33で、偏光方向がθ回転された光子は、θに対応
する係数a、bを持つax1とby1に分割され、by1
はそのまま光電子増倍管62へ、またax1はミラー3
4で反射された後光電子増倍管61へ導かれる。
【0057】一方、ハーフミラー31で反射された光は
ミラー35で反射され偏光回転子36で偏光方向が(π
−θ)回転され、|ψ>1状態が形成される。この(π
−θ)偏光が回転された光子は、その後PBS37で、
(π−θ)に対応する係数a*、−b*をもつa*1と−
*1に分割され、a*1はそのまま光電子増倍管64
へ、−b*1はミラー38で反射され光電子増倍管63
へと導かれる。
【0058】この光子[1]のブロック30は、図1の
光子[1]のブロック11に対応し、量子ビット|φ>1
の光子と、その直交状態|ψ>1の光子が形成されたこ
とになる。その場合、古典ビット「0」、「1」は偏光
回転子32、36で偏光方向θをそれに対応して設定す
ることにより量子ビットに変換することができる。
【0059】PDC24からブロック40に導かれた光
子[2]は、偏光状態はそのままで、ハーフミラー41
で2つの光路に分割され、ハーフミラー41を通過した
方は、PBS43で偏光x2とy2の光子に分割され、偏
光y2の光子はそのまま光電子増倍管72へ、偏光x2
光子はミラー42で反射された後、光電子増倍管71へ
導かれる。一方ハーフミラー41で反射された方はミラ
ー44で反射された後PBS45で偏光x2とy2の光子
に分割され、偏光y2の光子はそのまま光電子増倍管7
3へ、偏光x2の光子はミラー46で反射された後光電
子増倍管74へと導かれる。
【0060】PDC24から、光ファイバー25を経由
して受信者側のブロック50へ送られた光子[3]はハ
ーフミラー51で2つの光路に分割され、ハーフミラー
51を通過した方はPBS52で偏光x3、y3の光子に
分割され偏光y3の光子はそのまま光電子増倍管82
へ、偏光x3の光子はミラー53で反射された後光電子
増倍管81へと導かれる。ハーフミラー51で反射され
た方はπ/2の偏光回転子54でx偏光とy偏光が入れ
換えられた後、ミラー55で反射されPBS56で偏光
3とy3の光子に分割され、偏光y3の光子はそのまま
光電子増倍管83へ、偏光x3の光子はミラー57で反
射された後光電子増倍管84へと導かれる。
【0061】この装置では、レーザーパルス発生器22
の各パルスごとにブロック30の光電子増倍管61〜6
4のどれか、ブロック40の光電子増倍管71〜74の
どれか、ブロック50の光電子増倍管81〜84のどれ
かに、それぞれ光子が1個づつ現れるので、光子[1]
と光子[2]で作る部分系で送信者が行う測定は、図3
に図示したように、2つのペアー端子で、それぞれ偏光
をカウンタ111〜118を用いて同時計数を行うこと
により行なわれる。
【0062】カウンタ111〜114は、光電子増倍管
63と71、61と74、62と73、64と72の各
ペアーからの光子が同時に現れる順序と回数を計数し、
係数a、bに対応した計数確率b、a、b、aの絶対値
の2乗がそれぞれカウンタの出力端子91〜94に得ら
れる。
【0063】同様に、カウンタ115〜118は、光電
子増倍管61と73、63と72、64と71、62と
74の各ペアーからの光子が同時に現れる順序と回数を
計数し、係数a、bに対応した計数確率a、b、a、b
の絶対値の2乗がそれぞれカウンタの出力端子95〜9
8に得られる。
【0064】この測定結果を与えるパルスごとの同時計
数、すなわち、カウンターの出力端子91〜98のどの
端子に同時計数が得られたかと、その計数順序を受信者
に古典通信する。受信者側では、光電子増倍管81〜8
4に附属のどの端子に光子が現れたかを測定し、その順
序を記録しておくと、図4に示したように、古典通信の
結果に応じて、それぞれ測定端子が101〜108のよ
うに決まるので、それぞれの決まった測定端子に古典通
信で送られた送信者の同時計数順序に、91と101,
92と102,…,98と108に同時計数の得られた
記録と照合し、3光子の同時計数の得られた結果のみを
集め、その回数を計数すると、結果が対応する確率で1
01〜108のように得られる。端子101〜104で
は、確率bの絶対値の2乗でx3が、また確率aの絶対
値の2乗でy3が得られるので、端子101〜104よ
り|ψ>3が得られる。また端子105〜108では、
確率aの絶対値の2乗でx3が、また確率bの絶対値の
2乗でy3が得られるので、端子105〜108より|
φ>3が得られる。
【0065】例えば、送信者10は「0」の1ビットを
送信しようとする。そこで、図2のレーザーパルス光源
22からナノ秒程度の間隔でパルスを順次発生させ、偏
光回転子32と36で「0」に対応してθを 任意に決
める。これにより偏光回転子32、36により「0」に
対応した係数aの水平偏光x1と係数bの垂直偏光y1
重ね合わせからなる量子状態|φ01とその直交状態の
|ψ01が得られる(光子[1])。PDC24により
所定の偏光x/yを有する光子[2]、光子[3]を作
成し、光子[3]を光ファイバー25を介して受信者1
2に送る。
【0066】送信者10は、光源22からのレーザーパ
ルスを100パルス(10のマイナス7乗秒)〜100
0パルス(10のマイナス6乗秒)についてカウンタ1
11〜118を用いて同時計数する。量子力学に従って
起こる現象は確率的であるので、その測定結果が「0」
に応じた係数a、bに対応する上記のような計数確率と
して得られる。そこで、送信者10はカウンターの出力
端子91〜98のどの端子に同時計数が得られたかと、
その順序を古典通信路を用いて受信者12に送信する。
【0067】光子[3]を測定する受信者12の測定端
子ax、ay、bx、byは、送信者10の光子[2]の測
定端子Ax、Ay、By、Bxとそれぞれ対応(相関)して
おり、各測定端子101〜108には、それぞれ水平偏
光ないし垂直偏光が現れる。従って、受信者12は、光
電子増倍管81〜84に附属のどの端子に光子が現れた
かを測定し、その順序を記録しておき、パルスごとの送
信者側での同時計数結果の古典通信に応じて定まった測
定端子に光子が現れた記録、つまり91と101,92
と102,…,98と108に同時計数の得られた記録
と照合し、その結果を集めると、水平偏光(x3)の現
れる測定端子101、103と垂直偏光(y3)に現れ
る測定端子102、104とから、受信者12は、係数
−b*の水平偏光x3と係数a*の垂直偏光y3の重ね合わ
せからなる量子状態|ψ03を作成することができ、|
ψ01 を再現することができる。このとき、同様に測
定端子105〜108を介して|φ03を作成し、|φ
01を再現することができる。
【0068】一方、送信者10が「1」の1ビットを送
信しようとする場合には、それに応じて「0」の送信時
と異る量だけθ(その差が0、π以外の任意の角度)を
変化させる。それに応じて係数a、bが変化し、計数確
率も変化して「1」に対応する|ψ13、|φ13を作
成することができ、|ψ11、|φ11を再現すること
ができる。
【0069】光子[1]の量子状態を受信者で再現する
には、古典通信路を介して送信されてくるパルスごとの
同時計数結果と、光ファイバー25から送られてくる光
子[3]の偏光状態(光子[2]の偏光状態に相関す
る)を知る必要があるので、古典通信路を介して送られ
るパルスごとの同時計数結果だけ盗聴しても、あるいは
光ファイバーを通過する光子[3]の偏光状態だけを測
定しても、光子[1]の量子状態を再現することはでき
ない。
【0070】通信路には、いかなる情報も持たぬ偏光し
た光子が通っているだけであるから、通信路25におけ
る盗聴は全く不可能である。すなわち、量子ルート(通
信路25)は、単なる偏光光子が通過するだけであり、
古典通信路には受信者の測定端子を決める情報が流れる
だけなので、100〜1000パルスの情報を集めない
と、送信者から送られた情報が「0」か「1」かがわか
らない。したがって、通信路25を介しての盗聴があ
り、パルスの数が1/2になると、受信者も盗聴者も送
信者からの情報を再生することが不可能になる。この意
味で通信の破壊は可能であるが、送信者と受信者の間で
「0」か「1」のどちらかのa,bを一つ決めておく
と、受信者では、送信者の情報を再現できるが、盗聴者
にはどのような情報が送られてきたのか不明であるよう
にすることができる。
【0071】光子を用いたテレポーテェイションでは、
測定並びに古典通信が[原理の説明]で図1を用いて説
明したものよりも複雑になるが、これは[原理の説明]
の最後に述べた光子を用いる場合の特別の事情による。
なお、受信者の測定は送信者からの古典通信に応じて自
動化して記録しておけば、後で読み出すことができる。
【0072】ここで、端子91〜94での測定結果は、
スピン測定の場合の±1に、端子95〜98の測定結果
は0に対応しているので光電子増倍管61〜64、71
〜74の測定端子にエレクトロニクスでAND、ORの
回路を組むことにより、送信者での測定及び送信者から
の古典通信を簡単化することができる。受信者での端子
101〜108の測定も同様に簡単化できるが、端子1
01〜108の測定は、あらかじめ送受信者間で偏光回
転子32と36のθを決めておくことにより、|φ>3
と|ψ>3の測定におき換えることにより簡単化するこ
ともできる。
【0073】図2において、光子[1]のブロック30
が数10の第1式に、ブロック40とブロック50が数
10の第2式に対応する。又、端子91〜98の測定後
のブロック21が数11の第2式に、その時のブロック
50が数11の第1式に対応する。同じく端子91〜9
8の測定後のブロック21と50の全体は数12に対応
する。しかし、[原理の説明]の最後に述べた事情によ
り、これらの対応は数10、数11あるいは数12と全
く同じという意味ではなく、量子通信として[原理の説
明]で述べたことと同じ結果を与えるという意味での対
応である。
【0074】図2では、ブロック30、40、50の間
で[原理の説明]で述べた部分的に必要な光の強度調整
(フィルター又はダミーミラーを用いる)と光電子増倍
管61〜64、71〜74及び81〜84に光が測定器
の応答時間内に同時到着するための光路長調整は簡単に
行うことができるが、図が不必要に複雑にならないよう
に省略してある。又、PDC結晶の温度調整なども当然
のことなので省略してある。その他、通信精度向上、測
定精度向上のための偏光子なども省略されているが、い
ずれも必要に応じて適宜設けられるものである。
【0075】さらに、PDC24のタイプIをタイプI
Iにするとか、偏光ビームスプリッターの代わりにπ/
2の偏光回転子を用いるとか、θの偏光回転子を透過度
と反射度が50:50でないハーフミラーにおき換える
など色々の光学素子の入れ換えが可能であり、その時、
図も変わってくるが、図2では、基本的に重要な部分の
みが一例として示されている。
【0076】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、量子
状態の混合状態と保存法則に基づいてテレポーテェイシ
ョンを行なっているので、受信者は、このテレポーテェ
イションにより送信者が送信しようとする情報に応じた
量子状態を受信者が保有する粒子に再現することがで
き、盗聴から高度に保護された量子暗号通信が可能にな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】量子通信の原理を説明する説明図である。
【図2】粒子を光子とした場合の量子通信装置の構成を
示す構成図である。
【図3】光子の偏光成分の同時計数を測定する状態を示
した構成図である。
【図4】送信者の同時計数の測定結果を受信者に古典通
信する状態を示した説明図である。
【符号の説明】
10 送信者 12 受信者 22 レーザーパルス光源 23 2次高調波発生結晶 24 パラメトリック変換器 25 光ファイバー
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H04L 9/08 H04L 9/00 601E (72)発明者 米田 哲也 熊本県熊本市清水亀井町4番10号

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 量子状態を送信者から受信者に送信する
    量子通信方法において、 送信しようとする情報に応じた量子状態を有する第1の
    粒子と量子力学的にもつれた状態を含む互いに相関する
    第2と第3の粒子を用意して、第1の粒子と第2の粒子
    を送信者が、第3の粒子を受信者が保有し、 前記第2と第3の粒子の合成系で得られる量子状態と第
    1の粒子の量子的状態並びにその直交状態との積状態か
    ら得られる状態を所定の比率で混合した状態を送、受信
    者が共有し、 第1と第2の粒子からなる系で送信者により行なわれた
    測定結果を古典通信路で受信者に送信し、 受信者は、古典通信路で送信された情報に基づいて第3
    の粒子を測定することにより第1の粒子から消滅した量
    子状態を第3の粒子に再現することを特徴とする量子通
    信方法。
  2. 【請求項2】 前記粒子は、光子、電子あるいは中性子
    であることを特徴とする請求項1に記載の量子通信方
    法。
  3. 【請求項3】 量子状態を送信者から受信者に送信する
    量子通信装置において、 光子を発生する手段と、 前記光子から送信しようとする情報に応じて偏光状態が
    変化された第1の光子を発生する手段と、 前記光子から所定の偏光を有する第2と第3の光子を発
    生する手段と、 第1の光子の偏光のx、y方向成分と第2の光子の偏光
    のx、y成分から第1の光子のx、y方向成分の係数に
    対応する変数を測定する測定手段とを備え、 送信者は前記測定された変数を古典通信路を介して第3
    の光子を保有する受信者に送信し、受信者は送信されて
    きた変数と第3の光子のx、y方向の偏光に基づき第1
    の光子の偏光状態を再現することを特徴とする量子通信
    装置。
  4. 【請求項4】 前記測定手段は、偏光がx、y方向の第
    1と第2の光子がそれぞれ同時に現れる確率も計数する
    ことを特徴とする請求項3に記載の量子通信装置。
JP9269418A 1997-10-02 1997-10-02 量子通信方法及び装置 Pending JPH11112495A (ja)

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US09/082,050 US6314189B1 (en) 1997-10-02 1998-05-20 Method and apparatus for quantum communication
EP98308015A EP0920149A3 (en) 1997-10-02 1998-10-01 Method and apparatus for quantum communication

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000286841A (ja) * 1999-03-30 2000-10-13 Nec Corp 量子暗号を用いた鍵配布方法
KR20030011446A (ko) * 2001-08-02 2003-02-11 나흥종 전자기 유도에 의한 전이장치
KR100759811B1 (ko) 2005-12-08 2007-09-20 한국전자통신연구원 고속 자동 보상 양자 암호 송수신장치 및 방법

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