JPH11107045A - ポリビニルアルコール系難燃繊維及びその製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系難燃繊維及びその製造方法

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JPH11107045A
JPH11107045A JP27403797A JP27403797A JPH11107045A JP H11107045 A JPH11107045 A JP H11107045A JP 27403797 A JP27403797 A JP 27403797A JP 27403797 A JP27403797 A JP 27403797A JP H11107045 A JPH11107045 A JP H11107045A
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JP
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weight
pvc
fiber
polymer
pva
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JP27403797A
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Shinya Inada
真也 稲田
Masahiro Sato
政弘 佐藤
Toshimi Yoshimochi
駛視 吉持
Akio Omori
昭夫 大森
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高強度を有し、メルトドリップがなく、洗濯等
による難燃性能の低下がなく、着色が少なくかつ難燃性
に優れた繊維を安定に得ることができる繊維を提供す
る。 【解決手段】ビニルアルコール系ポリマー(以下PVAと
略記)と、異種モノマーが1〜30重量%共重合されてい
る塩化ビニル系ポリマー(以下PVCと略記)を、錫化合
物およびアンチモン化合物からなる群から選ばれる少な
くとも1種の化合物とともに共通の極性有機溶媒に添加
・溶解し、PVAが海成分、 PVCが島成分である紡糸原液
とし、これを凝固浴に湿式または乾湿式紡糸し、その後
乾燥、延伸、更に必要に応じて熱処理して難燃繊維を製
造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工業的に安価に製
造可能なコストパフォーマンスに優れたポリビニルアル
コール(以下PVAと略記する)系難燃繊維とその製造方
法に関するものであり、防護服向などの衣料、カーテン
やカーペット向などの産業資材、カーシートや車両バネ
受け材向などの産業資材など好適に用いることのできる
繊維とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、難燃繊維としては、難燃性コモノ
マーを共重合したアクリル繊維やポリエステル繊維、難
燃性薬剤を練り込んだり反応させたりした再生セルロー
ス繊維、ポリマー自身が難燃性の熱硬化性繊維やアラミ
ド繊維、難燃性薬剤で後加工した木綿や羊毛などが上市
されている。アクリル繊維は燃焼時シアンガスの発生、
ポリエステル繊維はメルトドリップ、熱硬化性繊維は繊
維強度が低い、アラミド繊維は極めて高価、木綿や羊毛
は後加工による風合い硬化や洗濯耐久性不良などの問題
があり、それぞれ改善の検討がなされている。
【0003】一方、PVA系の難燃繊維も、例えば特公昭3
7-12920号、特公昭49-10823号、特公昭51-19494号公報
等で知られており、防護服向などの衣料、カーテンやカ
ーペット向などの生活資材、カーシートや車両バネ受け
材向などの産業資材などに用いられているが、用途によ
ってはコストパフォーマンスの点で不満足となって、更
なる拡販が困難な状況にある。
【0004】従来のPVA系難燃繊維は、PVCが水には溶解
しないため、安価な市販PVC粉末を使用することは不能
であり、小粒径の高価なポリ塩化ビニル(以下PVCと略
記)エマルジョンを使用せざるを得ない。 またPVAとPV
Cエマルジョンの混合水溶液は紡糸温度近辺の70〜100℃
で安定でなく、特にギヤポンプを通過する際の機械的安
定性が不十分であり、安定化のため低ケン化度のPVAを
使用したり、界面活性剤や水溶性高分子などを添加する
必要があり、更にコストを高くしている。
【0005】また、従来のPVA系難燃繊維は、エマルジ
ョン粒径が0.01〜0.08μmのPVCの水系エマルジョンとPV
A水溶液を混合し、さらに難燃助剤として錫やアンチモ
ン化合物の水分散液を添加した液を紡糸原液とし、ぼう
硝水溶液からなる固化浴に湿式紡糸し、乾燥、乾熱延
伸、熱処理し、更に必要に応じて耐熱水性改善のためホ
ルマリンなどによりアセタール化処理して製造されてい
る。また高強度繊維を得るために、PVAとPVCエマルジョ
ン混合水溶液に硼酸を添加した紡糸原液を苛性ソーダと
ぼう硝の混合水溶液からなる固化浴に吐出し、硼酸架橋
紡糸することも行われている。しかし、強力な脱水性塩
類であるぼう硝を固化浴に使用するため、得られる繊維
断面は不均一なスキンコア構造となり、断面中央のコア
構造部は結晶性が不十分となりやすい。また用いるPVC
エマルジョンの粒子径が0.01〜0.08μmと小さく、得ら
れるPVAとPVCのブレンド繊維でのPVCの島径がせいぜい
0.05μmと小さく、極端に数多く存在するため、マトリ
ックスを形成するPVA相はまとまった状態では存在しが
たい。従ってホルマール化などの耐熱水性改善処理を行
っても、寸法安定性、特に乾湿寸法安定性に改良の余地
がある。さらに一般にPVCは溶媒に対する溶解性がわ
るく、溶解性を高めるために溶媒の温度を高めるとPV
Cが分解や着色を生じ易く商品価値ある繊維が得られに
くいという問題点を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の
PVA系難燃繊維は他の難燃性繊維に比較すると優れた点
はあるが、コストパフォーマンスの点で用途が限定され
ていた。本発明は、コストパフォーマンスに優れた安価
で難燃性の良好で、さらに製造工程において着色が実質
的に生じていないPVA系難燃繊維およびその製造方法を
提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、PVAと、
異種モノマーが1〜30重量%共重合されているPVCからな
り、PVAが海成分、PVCが島成分の海島繊維であり、島の
大きさが0.2〜8μmであることを特徴とするポリビニル
アルコール系難燃繊維である。さらに本発明は、 PVAと
PVCを共通の溶媒に溶解し、得られた紡糸原液をPVAに対
して固化能を有する固化溶媒と原液溶媒とを混合した固
化浴に湿式または乾湿式紡糸し、抽出、乾燥、延伸、更
に必要に応じて熱処理やアセタール化してPVA系難燃繊
維を製造するにあたり、以下の条件(a)〜(b)、(a)異
種モノマーが1〜30重量%共重合されているPVCを使用す
ること,(b)紡糸原液が、PVA溶液中に、PVCの溶液から
なる2〜100μmの粒子径の島が存在している相構造であ
ること、を満足することを特徴とするPVA系難燃繊維の
製造方法である。
【0008】以下に本発明を詳細に説明する。まず本発
明繊維の海成分すなわちマトリックス成分はPVAであら
ねばならない。難燃性を付与するPVCと、強度の強い海
島繊維を可能とする水酸基による強固な分子間水素結合
を形成しうるポリマーはPVAのみである。本発明でいうP
VAとは、ビニルアルコールユニットを70モル%以上有す
るポリマーを意味しており、従ってエチレン、酢酸ビニ
ル、イタコン酸、ビニルアミン、アクリルアミド、ピバ
リン酸ビニル、無水マレイン酸、スルホン酸含有ビニル
化合物などのモノマーが30モル%未満の割合で共重合さ
れていてもよい。ケン化度は80モル%以上が好ましく、
配向結晶化のためには、全構成ユニットの95モル%以上
がビニルアルコールユニットであるPVAがより好まし
く、更に好ましくは98モル%以上、より一層好ましくは9
9モル%以上、最も好ましくは99.8モル%以上である。PVA
の重合度に関しては、特に限定はないが、高強度繊維と
するためには重合度500以上が好ましく、1500以上であ
ると更に好ましい。また耐熱水性改善のため、繊維化後
ホルムアルデヒドで代表されるアルデヒド化合物などに
よりPVA分子内および/または分子間アセタール化などの
後反応を施してもよい。
【0009】また本発明繊維の島成分は、異種モノマー
が1〜30重量%共重合されているPVCでなければならな
い。島成分にPVCを用いることによりはじめて本発明繊
維を難燃繊維とすることができる。PVCは結晶性が甘
く、繊維形成能がないかあるいは繊維化しても低強度の
ものしか得られず、特にステープル繊維のコストパフォ
ーマンスに優れた製造法である湿式紡糸法ではPVCの繊
維は製造されていない。そこでPVCは、本発明繊維にお
いて島成分として、難燃性付与のための機能性ポリマー
として用いられている。また異種モノマーが1〜30重量%
共重合されていることで、PVAと共通の溶媒である原液
溶媒に対するPVCの溶解性が向上し、さらにPVAとの相溶
性がPVCホモポリマーよりも良好となる。このことが、
本発明で最も重要な点である。PVCホモポリマーは、PVA
との相溶性が十分でなく、また重合度の高いものは着
色の少ない低温での溶解性が十分でない。一方、異種ポ
リマー共重合PVCは、PVCホモポリマーに比べPVAとの相
溶性は良好であり、また重合度の高いものでも低温での
溶解性がよく、着色の少ない繊維を得ることができる。
そのため、異種モノマーが1〜30重量%共重合されている
PVCの使用により、難燃性能の高い繊維が工業的に安定
に製造することができるのである。異種モノマーとは、
酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリル酸エステルな
どのPVCと共重合可能なものである。相溶性の点から、
酢酸ビニル共重合PVCが好ましい。共重合量は多いほど
溶解性が向上するが、共重合量が30重量%を超えると難
燃性能が低下するため、好ましくない。また共重合量が
1重量%未満の場合、共重合による変性効果が不十分と
なる。溶解性と難燃性のバランスの点で、共重合量が5
〜20重量%であると好ましい。
【0010】PVAを海成分、PVCを島成分とするには、P
VAとPVCの合計量に対してPVAが55重量%以上が好
ましい。PVAが55重量%未満では一部PVCが海成分となる
場合があり好ましくない。またPVCが10重量%未満で
は、繊維中の塩素量が少なく難燃性が不十分となるので
好ましくない。難燃性、強度などのバランスより、PVA/
PVCの混合割合は85/15〜55/45であるとより好ましく、8
0/20〜60/40であると更に好ましい。なお本発明におい
て本発明の目的を損なわない範囲内でPVAとPVC以
外のポリマーが添加されていてもよい。さらに、各種安
定剤や着色剤などが添加されていてもよい。
【0011】またPVC島の大きさは0.2〜8μmでなければ
ならない。本発明でいうPVCの島の大きさとは、繊維サ
ンプルを定長状態でホルマール化処理してPVAを不溶化
した後エポキシ樹脂包埋、超薄切片(厚み約800nm)を
作成し、RuO4蒸気染色を行い、得られた繊維断面の超薄
切片を透過型電子顕微鏡写真より、任意に選び出したP
VCの島径を少なくとも50個実測し、その平均値を求め
た。PVC島径が8μmを越える場合には、紡糸安定性の点
で好ましくない。海成分のPVA相が完全なマトリックス
を形成しがたい部分がでてくるために曳糸性が悪くな
り、紡糸性が不良になると推定される。一方、島径が0.
2μm未満の場合には、マトリックスを形成するPVA相は
まとまった状態では存在しがたくなりPVAの配向・結晶
化が阻害されるため、ホルマール化などの耐熱水性改善
処理を行っても、寸法安定性、特に乾湿寸法安定性が不
良となる。PVC島径が0.5〜4μmであると好ましい。
【0012】さらに、本発明繊維が、錫化合物およびア
ンチモン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種
の化合物をポリマー総重量に対して0.1〜15重量%含有
していると、難燃性が改善され、好ましい。本発明にい
う錫化合物とは、錫元素を含む化合物なら特別な限定は
ないが、難燃助剤としての難燃性増強効果とコストパフ
ォーマンスの点で酸化錫やメタ錫酸などの無機酸化物が
好ましい。また本発明にいうアンチモン化合物とは、ア
ンチモン元素を含む化合物なら特別な限定はないが、難
燃助剤としての難燃性増強効果とコストパフォーマンス
の点で五酸化アンチモンや三酸化アンチモンなどの無機
酸化物が好ましい。錫化合物および/またはアンチモン
化合物の含有量がポリマーの総重量に対し0.1%未満で
あると難燃性が不十分である。15%を超える量を含有
させても難燃化効果は頭打ち状態となり、コストパフォ
ーマンスの点で不利となる。これら化合物の含有量が0.
5〜8重量%であると好ましく、1〜6重量%であると更に
好ましい。
【0013】次に本発明繊維の製造方法について説明す
る。まず紡糸原液はPVAとPVCを共通溶媒に溶解し紡糸原
液とする。共通の溶媒としては、ジメチルスルホキシド
(以下DMSOと略記)、ジメチルアセトアミド、ジメチル
ホルムアミドなどの極性有機溶媒があげられる。特に低
温溶解性、ポリマー低分解性などの点よりDMSOが好まし
い。原液中のポリマー濃度としては、10〜30重量%の範
囲が好ましい。
【0014】PVCとしては、前述のごとく、異種モノマ
ーが1〜30重量%共重合されているものを使用する。ま
た本発明の製造方法において、紡糸原液は、PVA溶液中
に、PVCの溶液からなる2〜100μmの粒子系の島が存在し
ている相構造でなければならない。本発明で言う紡糸原
液の相構造とは、紡糸原液をスライドガラス上に約20
0μmの厚さに滴下し、オリンパス光学製微分干渉顕微
鏡装置BX−60型を用いて写真撮影し、測定した値で
ある。また本発明でいう粒子径とは、上記した微分干渉
顕微鏡で観察した場合に判別できる大多数がその範囲の
径を有していることを意味している。PVC溶液の島径を2
〜100μmに制御することで、得られる繊維中のPVC島径
が0.2〜8μmとなる。 PVC溶液の島径の大多数が100
μmを越える場合には、原液安定性および紡糸安定性の
点で好ましくない。また、大多数が2μm未満であるとP
VAが明確な海相を形成することができなくなる。より好
ましくは5〜80μmの粒子径を有している相構造であ
る。粒子径が20〜50μmであるともっとも好ましい。ま
た原液温度は100℃以下が好ましい。100℃を超えると、
PVCの溶解性は向上するが分解速度が著しく増加し、着
色が顕著となり、また重合度低下も併発する。そのた
め、温度は低い方が良いが、低すぎるとPVCおよびPVAの
極性有機溶媒への溶解性や相溶性が悪くなる。40℃以上
90℃以下の原液温度が好ましい。更に好ましくは60℃以
上80℃以下である。紡糸原液の粘度としては、湿式紡糸
する場合には10〜400ポイズ、乾湿式紡糸する場合
には50〜2000ポイズの範囲が好ましい。
【0015】ポリマーの溶解方法は特に限定するもので
はなく、2種類のポリマーをそれぞれ単独で原液溶媒に
溶解したものを適当な割合で混合しても良いし、一方の
ポリマーを溶解した溶液に他方のポリマーを添加して溶
解する方法や、2種のポリマーを同時に溶解する方法等
いずれも採用することができ、紡糸原液にはポリマーの
安定化剤として酸類や酸化防止剤などを併用することは
何ら差し支えなく行うことができる。
【0016】このようにして得られた紡糸原液を紡糸ノ
ズルを通して固化浴中に湿式紡糸、あるいは乾湿式紡糸
する。固化浴を紡糸ノズルに直接接触させる湿式紡糸方
法は、ノズル孔ピッチを狭くしても繊維同士が膠着せず
に紡糸できるため、多孔ノズルを用いた紡糸に適してお
り、一方固化浴と紡糸ノズルの間にエアギャップを設け
る乾湿式紡糸の場合は、エアギャップ部での伸びが大き
いことより、高速紡糸に適している。本発明において
は、湿式か乾湿式かは目的や用途に応じて適宜選択する
ことができる。
【0017】本発明において用いる固化浴は固化溶媒と
原液溶媒からなる混合液であり、そして固化溶媒として
メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセト
ン、メチルエチルケトンなどのケトン類などのPVAに対
して固化能を有する有機溶媒が好ましく、かつ固化浴中
での固化溶媒/原液溶媒の組成比は25/75〜85/
15である。また固化浴は-5〜20℃の低温とすることが
均一固化の点で好ましい。
【0018】本発明において、固化レベルを適正に維持
するために、固化浴中の有機溶媒系固化溶媒と原液溶媒
の組成比は重要であり、本発明では重量比で25/75
〜85/15の範囲が採用される。固化浴中での原液溶
媒濃度が15重量%より少ないと凝固能が高すぎ、ノズ
ル切れとなり紡糸調子が不良となり、更に得られる繊維
の強度・ヤング率等の性能が低下する傾向にある。一
方、固化浴中での原液溶媒濃度が75重量%より多いと
十分な固化ができず、これまた紡糸工程通過性が悪く、
強度などの点で満足できる性能の繊維を得ることができ
ない。より好ましい固化浴中の原液溶媒の濃度は20〜
70重量%であり、25〜65重量%が最も好ましい。
なお本発明においては、固化浴は上記したように、固化
溶媒と原液溶媒との混合液が用いられるが、もちろん少
量ならばこれら以外の液体や固体が溶解されて存在して
もよい。本発明において、固化溶媒と原液溶媒の最も好
ましい組み合わせはメタノールとDMSOの組み合わせ
である。
【0019】固化浴で形成された糸条は、湿延伸、原液
溶媒の抽出、乾燥と経て、乾熱延伸工程に送られる。本
発明方法においては、全延伸倍率が6倍以上となるよう
に乾熱延伸を行うことが必要である。本発明でいう全延
伸倍率とは、湿延伸倍率と乾熱延伸倍率との積で表され
る倍率であり、全延伸倍率が6倍未満の場合には強度・
ヤング率の優れた繊維を得ることができない。
【0020】さらに、本発明繊維に、錫化合物およびア
ンチモン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種
の化合物を、ポリマー総重量に対して0.1〜15重量%分
散させると、難燃性が改善され、好ましい。分散方法は
特に制約はなく、PVAとPVCを共通溶媒に投入し溶解する
際に、同時に投入すればよい。
【0021】
【実施例】以下本発明を実施例により更に具体的に説明
するが、本発明はこれら実施例に何ら制約を受けるもの
ではない。なお、実施例中の強伸度はJIS L-1013に準拠
して測定したものである。また、難燃指数(LOI)はJIS K
7201に準拠して測定した。また沸騰水収縮率(以下W
srと略記する)は、サンプル繊維に2mg/dの荷重
を吊り下げ、所定長Lo(例えば1.00m)を正確に
採取し、フリーの状態で30分間100℃で煮沸し、次
いで風乾し、風乾後のサンプルに再び2mg/dの荷重
を吊り下げ、同様に糸長を測定し(L1)、次式により
Wsrを算出する。 Wsr=[(Lo−L1)/Lo]×100 (%)
【0022】実施例1 重合度1750、ケン化度99.8モル%のPVAと、
重合度700で酢酸ビニルが10重量%共重合されたPVCを、
メタ錫酸とともにDMSOに投入し、80℃で10時間窒素気
流下240rpmで攪拌溶解し、PVA/PVCの重量比が67/3
3、ポリマー濃度が18重量%、メタ錫酸が1重量%の混合
紡糸原液を得た。この原液を微分干渉顕微鏡で観察した
ところ、PVA溶液中にPVC溶液が約25μmの島径からなる
相構造を有していることがわかった。得られた80℃の紡
糸原液を、孔数1000ホール、孔径0.08mmの紡
糸口金を通して、メタノール/DMSOの重量比が70/30、温
度が0℃の固化浴中に湿式紡糸した。ついで、メタノー
ルでDMSOを抽出しながら、3.5倍の湿延伸を施し、100℃
の熱風で乾燥し、228℃で4.0倍乾熱延伸を施した。得ら
れた繊維は1.7デニールで、ほとんど着色しておら
ず、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で20000倍に拡大し
た断面TEM写真より、PVAが海、PVCが島の海島構造であ
り、PVCの島径は0.6μmであった。この繊維の強度は8.5
g/d、Wsrは2.5%、LOI値は37であった。
【0023】比較例1 酢酸ビニルの共重合量が35重量%のPVCを使用する以外
は実施例1と同様に原液溶解、紡糸、延伸を行った。得
られた紡糸原液を微分干渉顕微鏡で観察したところ、PV
A溶液中にPVC溶液が約20μmの島径からなる相構造を有
していることがわかった。紡糸調子は順調であった。得
られた繊維は、断面をTEMで20000倍に拡大した断面TEM
写真より、PVAが海、PVCが島の海島構造であり、PVCの
島径は0.5μmであった。得られた繊維の強度は8.4g/d、
着色はほとんどなく、Wsrは2.6%と実施例1とほぼ同じ
ものであったが、LOI値は34と実施例1に比べ低いものと
なった。
【0024】比較例2 重合度700のPVCホモポリマーを使用する以外は実施例1
と同様に原液溶解、紡糸、延伸を行おうとした。その結
果、PVCのDMSO溶解性が十分でなく、80℃では安定に紡
糸できる原液は得られず、105℃で紡糸可能な原液を得
たが、大きく着色しており、得られた繊維の着色も大き
かった。
【0025】実施例2 実施例1において、 PVA/PVCの重量比が75/25のものを作
製した。得られた紡糸原液を微分干渉顕微鏡で観察した
ところ、PVA溶液中にPVC溶液が約20μmの島径からなる
相構造を有していることがわかった。紡糸調子は良好で
あった。得られた繊維は、断面をTEMで20000倍に拡大し
た断面TEM写真より、PVAが海、PVCが島の海島構造であ
り、PVCの島径は0.5μmであった。また得られた繊維の
強度は9.6g/dで、ほとんど着色しておらず、Wsrは1.8%
と優れた物性であったが、LOI値は35と実施例1に比べ若
干低いものとなった。
【0026】
【発明の効果】本発明繊維は、本発明は、コストパフォ
ーマンスに優れた安価で難燃性の良好で、さらに着色が
実質的に生じていないPVA系難燃繊維およびその製造方
法を提供することを目的とするものであり、難燃性アク
リル繊維、難燃性ポリエステル繊維、熱硬化性繊維、ア
ラミド繊維、難燃性綿、難燃性羊毛などのPVA系以外の
難燃繊維素材に比べ、燃焼ガス毒性、メルトドリップ
性、強度、コスト、耐洗濯耐久性、風合いなどの点に優
れるPVA系難燃繊維の更なるコストパフォーマンスの改
善、着色の改善を目指したものである。本発明繊維は、
戦闘服や消防服などの防護衣料分野、カーシートや車両
バネ受け材やエアフィルターなどの産業資材分野、カー
テン、カーペット、毛布、布団側地、シーツカバー、中
入綿などの生活資材分野に有効に用いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大森 昭夫 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ビニルアルコール系ポリマー(1)と、異種
    モノマーが1〜30重量%共重合されている塩化ビニル系ポ
    リマー(2)からなり、(1)が海成分、(2)が島成分
    の海島繊維であり、島の大きさが0.2〜8μmであること
    を特徴とするポリビニルアルコール系難燃繊維。
  2. 【請求項2】(1)と(2)の混合重量割合が90:10〜5
    5:45である請求項1に記載の繊維。
  3. 【請求項3】錫化合物およびアンチモン化合物からなる
    群から選ばれる少なくとも一種の化合物をポリマー総重
    量に対して0.1〜15重量%含有する請求項1または2に記
    載の繊維。
  4. 【請求項4】ビニルアルコール系ポリマー(1)と塩化
    ビニル系ポリマー(2)を共通の溶媒に溶解し、得られ
    た紡糸原液を(1)に対して固化能を有する固化溶媒と
    原液溶媒とを混合した固化浴に湿式または乾湿式紡糸
    し、抽出、乾燥、延伸、更に必要に応じて熱処理やアセ
    タール化してポリビニルアルコール系難燃繊維を製造す
    るにあたり、以下の条件(a)と(b)、(a)異種モノ
    マーが1〜30重量%共重合されているポリ塩化ビニル系ポ
    リマーを使用すること、(b)紡糸原液が、(1)の溶液
    中に、(2)の溶液からなる2〜100μmの粒子径の島が
    存在している相構造であること、を満足することを特徴
    とするポリビニルアルコール系難燃繊維の製造方法。
  5. 【請求項5】紡糸原液に、錫化合物およびアンチモン化
    合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物
    が、ポリマー総重量に対して0.1〜15重量%分散、混合
    されている請求項4記載の製造方法。
JP27403797A 1997-10-07 1997-10-07 ポリビニルアルコール系難燃繊維及びその製造方法 Pending JPH11107045A (ja)

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JP27403797A JPH11107045A (ja) 1997-10-07 1997-10-07 ポリビニルアルコール系難燃繊維及びその製造方法

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