JPH11101794A - 異種材料界面付着エネルギー予測装置 - Google Patents

異種材料界面付着エネルギー予測装置

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JPH11101794A
JPH11101794A JP9276794A JP27679497A JPH11101794A JP H11101794 A JPH11101794 A JP H11101794A JP 9276794 A JP9276794 A JP 9276794A JP 27679497 A JP27679497 A JP 27679497A JP H11101794 A JPH11101794 A JP H11101794A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 種々の皮膜材料界面強度評価や付着物抑制材
開発等に重要な、材料界面での不着エネルギー(2つの
材料を十分遠方に離すのに必要なエネルギー)や不着性
の有無を予測する異種材料界面付着エネルギー予測装置
を提供する。 【解決手段】 与えられた対象材料の組成と結晶構造を
演算システムへ読み込む第1読込手段11と、対象材料
に関するすべての同種,異種2原子間相互作用エネルギ
ーパラメータを決定し、演算システムへ読み込むパラメ
ータ決定及び第2読込手段12と、材料界面原子構造モ
デル情報を読み込む第3読込手段13と、同種,異種2
原子間相互エネルギー総和に基づいて、材料表面間距離
に対する材料界面全エネルギーを計算する演算手段14
と、上記全エネルギー分布から付着エネルギーを評価す
る評価手段15とを具備する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、種々の皮膜材料界
面強度評価や付着物抑制材開発等に重要な、材料界面で
の付着エネルギー(2つの材料を十分遠方に離すのに必
要なエネルギー)や付着性の有無を予測する異種材料界
面付着エネルギー予測装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】種々の
皮膜材料の異種材料間の付着強度を実験測定する従来技
術は、引っ掻き試験(ダイヤモンドの針を被覆皮膜に垂
直に押し当て、垂直荷重を徐々に増加させつつ基板を水
平に移動させ、膜の剥離或いは損壊に伴う音波等の発生
を検知し、そのときの荷重(臨界荷重Wc )でもって付
着力の評価を行う試験方法。:「機械の研究」第49巻、
第4号p30−31参照)等いくつか報告されているが、同
じ試験材料,測定機器を用いてもその測定結果の再現性
及び信頼性は好ましくないという、大きな課題がある。
ましてや皮膜材料の異種材料界面付着強度の理論的予測
方法に関する従来技術は存在しないので、その出現が望
まれている。
【0003】そこで、本発明では、異種材料間付着強度
を実際に計測しなくても、材料の結晶構造と組成が判明
していれば、付着強度に相当する付着エネルギーや付着
性の有無を理論的に評価できる予測装置を提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決する本発
明の異種材料界面付着エネルギー予測装置は、異種の皮
膜材料同士の界面における付着エネルギー若しくは付着
性の有無等を予測する異種材料界面付着エネルギー予測
装置であって、与えられた対象材料の組成と結晶構造を
演算システムへ読み込む第1読込手段と、対象材料に関
するすべての同種,異種2原子間相互作用エネルギーパ
ラメータを決定し、演算システムへ読み込むパラメータ
決定及び第2読込手段と、材料界面原子構造モデル情報
を読み込む第3読込手段と、同種,異種2原子間相互エ
ネルギー総和に基づいて、材料表面間距離に対する材料
界面全エネルギーを計算する演算手段と、上記全エネル
ギー分布から付着エネルギーを評価する評価手段とを具
備することを特徴とする。すなわち、本発明の異種材料
間付着エネルギー予測装置は、対象材料の構成原子に関
する2原子系の原子間相互作用ポテンシャルエネルギー
表現式を用いて、二つの材料表面間距離に対する全ポテ
ンシャルエネルギーを計算し、この全エネルギー分布か
ら付着性の有無,付着の強さ(付着エネルギー)を予測
できるようにしたものである。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかる異種材料界
面付着エネルギー予測装置の実施の形態を説明するが、
本発明はこれに限定されるものではない。
【0006】図1は異種材料界面間付着エネルギー予測
システムの処理流れを示す図面であり、図2は異種材料
界面間付着エネルギー予測装置のブロック図である。図
3は本発明での異種材料界面モデル図を表し、特に酸化
物と機器表面皮膜間の付着エネルギー評価用の界面モデ
ル図である。
【0007】本発明での付着エネルギー予測システムの
基礎となる二原子間相互作用エネルギー関数は、フィジ
カル・レヴィー・B,ボルーム46、ナンバー5、19
91年、第2727頁から第2742頁(Physicl Revi
ew B,Vol.46,No.5,1992,pages 2727-2742)に知られてい
る修正原子挿入法( 以下、本明細書ではこれを「MEA
M(Modified Embedded Atom Method )ポテンシャル関
数」と称する) を用いる。上記MEAMポテンシャル関
数は、ある1個の原子の受けるポテンシャルエネルギー
が、近接原子との2体力エネルギーの和の半分と、近接
原子すべてから与えられる電子雲の中にその原子を挿入
するエネルギーとの和で与えられるという原子挿入法
(Embedded Atom Method,EAM) 原子間相互作用エネルギ
ー関数のコンセプトに基づくものである。上記EAMポ
テンシャル関数は、フィジカル・レヴィー・レター,ボ
ルーム50、ナンバー17、1983年、第1285頁
から第1288頁(Physicl Review Letter,Vol.50,No.
17,1983,pages 1285-1288)に知られている。
【0008】上記EAMポテンシャル関数の場合、電子
雲は電子雲等方分布のため、遷移金属以外の金属にしか
適用できなかった。これに対して、上記MEAMポテン
シャル関数の場合では、非等方分布の電子雲を考慮でき
るため、遷移金属、金属酸化物等にも適用できる。さら
に、上記MEAMポテンシャル関数の場合では、稠蜜構
造の場合は近距離原子だけを考慮し、表面のような疎な
構造の場合は遠距離原子も考慮できるようなモデルも含
まれている。
【0009】現在、上記MEAMポテンシャルは周期律
表中の体心立方型、面心立方型、六方稠蜜型、ダイヤモ
ンド型結晶等を含む44の原子種を基本的には扱うこと
ができ、金属表面酸化皮膜等に幅広く適用可能である。
上記MEAMポテンシャル関数を簡略化した式は、以下
に示す数式(1)のようになる。
【0010】
【数1】 ここで、Ei は各原子のポテンシャルエネルギー、Fi
は雰囲気電子密度ρi に挿入される原子iの挿入エネル
ギー、Zi は原子iの第一近接原子数、φijは距離Rij
だけ離れた原子iと原子jとの間のペアポテンシャルエ
ネルギーを示す。
【0011】上記44原子種に関して、上記式(1)第
1項の関数パラメータと式(1)第2項の同種原子間相
互作用エネルギー関数φijパラメータは、上記MEAM
ポテンシャル関数に関する論文(Physicl Review B,Vo
l.46,No.5,1992,pages 2731-Table III) に記載されて
おり、本発明でもこれらを用いているが、そのパラメー
タを下記「表1」に記載する。
【0012】
【表1】
【0013】上記数式において、式(1)第2項の異種
原子間相互作用エネルギー関数φijパラメータ4個は、
対象材料の凝集エネルギー、格子定数、対象弾性率等の
実験値を用いて、以下の手順で決定する。
【0014】MEAMの異種原子間相互作用エネルギー
パラメータは、凝集エネルギーに関するパラメータde
lta 、最近接原子間距離パラメータ re 、エネルギ
ー指数関数減衰パラメータα、2原子系の参照結晶型
の4つある。上記の参照結晶型は、B1(NaCl型) 、L
12(Ni3Si型) のうち、2原子系材料の凝集エネルギー、
格子定数実験値ができるだけ既知の結晶構造を選択す
る。上記ととはそれぞれ、凝集エネルギーと格子定
数に強い相関をもつので、実験値があれば参照結晶の凝
集エネルギーと格子定数から決め、参照結晶の実験値が
ない場合は、対象材料の凝集エネルギー、格子定数から
決定する。も実験値があれば参照結晶の凝集エネルギ
ーと格子定数から決め、参照結晶の実験値がない場合
は、このパラメータは体積弾性率に強い相関を持つの
で、対象材料の体積弾性率から決定する。
【0015】上記〜のパラメータ決定方法は、下記
(1)〜(4)を繰り返して決める。 (1)のパラメータを仮定し、計算基本セル中で
バルク結晶構造を初期配置として構造緩和させる(凝集
エネルギーに関連する系の全エネルギーが最小になるま
で原子位置を少しずつ移動させる。)。格子定数に関連
する計算基本セル長さは、構造緩和途中、可変とする。 ここで、上記計算基本セルは、原子を初期配置する直方
体の箱で、縦,横,高さの三方向に周期的な境界条件を
課したものをいう(図3参照、図3はバルク結晶構造で
はなく、特に、界面結晶構造の基本セルを示す。) (2)最小エネルギーとセル長さから凝集エネルギーと
格子定数を算出する。 (3)構造緩和解析(セル長さ可変)後のエネルギーを
0 、基本セル体積をV、基本セル長さとしてl0とす
る。そして、(i)l=1.001l0で構造緩和解析( セル長さ固
定) を行った後のエネルギーをE+ 、(ii)l=0.999l0
構造緩和解析( セル長さ固定)を行った後のエネルギー
をE- とすると、体積弾性率BをB=E''/9V、E''
=(E+ +E- −2E0 )/0.0012で算出する。 (4)それらが実験値に合うように初期設定パラメータ
を変更する。
【0016】このようにして、異種原子間相互作用エネ
ルギーパラメータを決定することができる。
【0017】上記のMEAMポテンシャルの同種、異種
2原子間相互作用エネルギー関数を用いて、材料表面で
の付着エネルギーを予測するシステムは、図1に示され
るよに、下記のステップ〜の5ステップから構成さ
れる。
【0018】<ステップ>対象材料の組成と結晶構造
を演算システムへ読み込む第1読込ステップ(S10
1)。 <ステップ>対象材料に関するすべての同種,異種2
原子間相互作用エネルギー(MEAMポテンシャル)パ
ラメータを決定し、演算システムへ読み込むパラメータ
決定及び第2読込ステップ(S102)。 <ステップ>材料界面原子構造モデル情報を読み込む
第3読込ステップ(S103)。 <ステップ>同種,異種2原子件相互エネルギー総和
に基づいて、材料表面間距離に対する材料界面全エネル
ギーを計算する演算ステップ(S104)。 <ステップ>上記全エネルギー分布から付着エネルギ
ーを評価する評価ステップ(S105)。
【0019】次に、各ステップの内容を説明する。
【0020】先ず、第1読込ステップ101では、界面
近傍の対象材料の組成(原子種とその比)と結晶構造
(立方晶、六方晶等)を演算システムへ入力する。
【0021】次に、パラメータ決定及び第2読込ステッ
プS102では、第1読込ステップS101でシステム
へ入力された対象材料の組成からすべての同種,異種2
原子間の組み合わせを抽出し、同種2原子間のMEAM
ポテンシャルパラメータは上記「表1」のものを用い、
異種2原子間のMEAMポテンシャルパラメータは上記
の方法で決定し、システムへ入力する。
【0022】さらに、第3読込ステップS103では、
第1読込ステップS101で入力される結晶構造と組
成、さらに、材料面方位と互いに向き合う異種材料原子
の面水平方向相対位置等の情報から、図2に示されるよ
うな材料界面の原子構造モデルを作成し、その原子数、
原子配置座標等をシステムへ入力する。入力された原子
座標をもとに、付着エネルギー予測システム基本セル中
に界面原子構造が形成される。二つの材料の界面構造を
計算基本セルで取り扱う場合、その結晶構造や格子定数
がほぼ同じであれば、両者の原子構造を基本セルに初期
配置でき、界面水平方向に周期境界条件を課すことで、
表面−表面系のモデル化が可能であるが、二つの材料表
面の結晶構造や格子定数が異なる場合は不可能である。
そこで、一方の材料をある程度の大きさのクラスターと
して扱い、クラスター−表面系モデルで扱う。但し、こ
の場合はクラスターのサイズで付着エネルギーがどのよ
うに変化するかを評価する。
【0023】次に、演算ステップS104では、先ず二
つの材料を初期原子配置構造のまま十分離して構造緩和
させ、表面を形成する。その後で、上記界面原子構造を
用いて材料表面間距離に対する材料界面系全エネルギー
を同種,異種2原子間相互作用エネルギー総和に基づい
て計算する。
【0024】最後に、評価ステップS105では、表面
間距離に対する全エネルギー分布の極小値の絶対値から
付着エネルギーを評価する。さらに、エネルギー分布に
おけるエネルギー障壁の有無から付着性の有無を判断す
る。
【0025】従って、かかる手順を実現する本発明の異
種材料界面間付着エネルギー予測装置は、図2に示すよ
うに、与えられた対象材料の組成と結晶構造を演算シス
テムへ読み込む第1読込手段11と、対象材料に関する
すべての同種,異種2原子間相互作用エネルギーパラメ
ータを決定し、演算システムへ読み込むパラメータ決定
及び第2読込手段12と、材料界面原子構造モデル情報
を読み込む第3読込手段13と、同種,異種2原子間相
互エネルギー総和に基づいて、材料表面間距離に対する
材料界面全エネルギーを計算する演算手段14と、上記
全エネルギー分布から付着エネルギーを評価する評価手
段15とを具備するものである。
【0026】
【実施例】本発明により、配管機器表面に付着した鉄酸
化物スケールと種々の機器表面との付着力あるいは付着
性の有無を予測した一実施例を図面を参照して説明する
が、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】図1に示す工程図において、第1読込ステ
ップS101で、界面近傍の対象材料の組成(原子種と
その比)と結晶構造(立方晶、六方晶等)をシステムへ
入力する。本実施例では、機器表面として、SUS表
面,Crメッキ表面,鉄含有Crメッキ表面の三種類を
採用する。鉄酸化物スケール(マグネタイト)、SUS
表面酸化皮膜、Crメッキ表面酸化皮膜、鉄含有Crメ
ッキ表面酸化皮膜それぞれの組成と結晶構造は、Fe3
4 ・立方晶(スピネル),NiFe2 4 ・立方晶
(スピネル),Cr2 3 ・六方晶(コランダム),F
eCr2 4 ・立方晶(スピネル)で、これらをシステ
ムへ入力する。次に、パラメータ決定及び第2読込ステ
ップS102で、第1読込ステップS101においてシ
ステムへ入力された対象材料の組成からすべての同種、
異種2原子間の組み合わせを抽出し、同種2原子間同種
2原子間MEAMポテンシャルパラメータは上記「表
1」のものを用い、異種2原子間のMEAMポテンシャ
ルパラメータは上記の方法で決定し、システムへ入力す
る。
【0028】本実施例での対象材料系は、Fe3 4
Fe3 4 ,Fe3 4 −NiFe 2 4 ,Fe3 4
−Cr2 3 ,Fe3 4 −FeCr2 4 となるの
で、同種,異種2原子間の組み合わせは、Fe−Fe,
Ni−Ni,Cr−Cr,O−O,Fe−O,Cr−
O,Fe−Cr,Fe−Ni,Ni−Oとなる。
【0029】今回決定した異種2原子間のMEAMポテ
ンシャルパラメータを下記「表2」に示す。
【0030】
【表2】
【0031】これらのパラメータの妥当性を確かめるた
め、Fe3 4 ,NiFe2 4 ,NiFe2 4 ,C
2 3 ,FeCr2 4 の凝集エネルギー,格子定
数,体積弾性率,ずれ弾性定数,表面エネルギーの解析
予測値を、実験値あるいは理論推定値と比較した結果を
「表3」に示す。パラメータは「表3」中の下線部解析
値が実験値に合うように決定され、下線部以外の解析値
は予測値である。
【0032】
【表3】 比較の結果、Fe3 4 ,NiFe2 4 ,Cr2 3
の体積弾性率,弾性定数,表面エネルギーの解析予測値
は実験値とほぼ一致している。FeCr2 4 について
も、体積弾性率の解析値が推定実験値よりやや小さいも
のの、弾性定数,付着力評価に重要な表面エネルギーは
推定実験値とほぼ一致し、決定パラメータの妥当性が確
認できた。
【0033】以上の同種,異種2原子間MEAMポテン
シャルパラメータを異種材料界面付着エネルギー予測シ
ステムへ入力する。さらに、第3読込ステップS103
で図3に示されるような材料界面の原子構造モデルをつ
くり、その原子配置座標を演算システムへ入力する。今
回、スケールは原子数360個(z方向に14原子層)
の直方体クラスターFe3 4 (110面)で模擬し、
酸化皮膜表面は、下記〜の5種類を採用する。 Fe3O4 (110 面)、2340原子、厚み12原子層、 lx =3
5.62、 ly =41.98、lz =17.81Å NiFe2O4 (110 面)、2340原子、厚み12原子層、 lx
=35.62、 ly =41.98、 lz =17.81Å FeCr2O4 (110 面)、2340原子、厚み12原子層、 lx
=35.62、 ly =41.98、 lz =17.81Å Cr2O3 (110 面)、2880原子、厚み12原子層、 lx =3
9.68、 ly =40.80、lz =17.18Å Cr2O3 (110 面)、3600原子、厚み14原子層、 lx =4
0.80、 ly =42.96、lz =19.84Å
【0034】なお、図3中、符号21はクラスター(F
3 4 )、22は表面皮膜、23の点線は計算基本セ
ルを表し、この計算基本セル13中での原子位置座標を
システムへ入力する。
【0035】次に、演算ステップS104で、計算基本
セル中の二つの材料を初期原子配置構造のまま十分離し
て構造緩和させ、表面を形成する。その後で、材料表面
間距離に対する材料界面系全エネルギーを同種,異種2
原子間相互作用エネルギー総和に基づいて計算する。図
4は、今回実施の5ケースの酸化皮膜表面に対して、ス
ケール位置を0.2Åずつ変化させた場合の全ポテンシャ
ルエネルギー静的計算結果を示す。
【0036】最後に、評価ステップS105では、表面
間距離に対する全エネルギー分布の極小値の絶対値から
付着エネルギーを評価する。また、エネルギー分布にお
けるエネルギー障壁の有無から付着性の有無を判断す
る。
【0037】「表4」に上記5ケースの付着エネルギー
計算結果及びエネルギー障壁の有無及びその値を示す。
【0038】
【表4】
【0039】「表4」に示す結果より、酸化皮膜がスケ
ール付着膜[Fe3O4 (110 面)]と、SUS表面[NiFe
2O4 (110 面)]、鉄含有Crメッキ[FeCr2O4 (110
面)]の場合、ポテンシャル障壁はなく、鉄酸化物スケ
ール[Fe3O4 (110 面)]が表面皮膜に容易に近づき、
それぞれの平衡位置で付着・安定化することが判明し
た。さらに、SUS表面への付着エネルギーはスケール
付着膜表面よりも大きいことから、SUS表面には容易
にスケールが付着すること、すなわち、スケール膜は柱
状ではなく層状に形成していく可能性が高いことが判明
した。
【0040】一方、酸化皮膜がCrメッキ[Cr2O3 (11
0 面)・Cr2O3 (100 面)]の場合、全エネルギー曲線
にポテンシャル障壁があることが判明した。
【0041】この障壁は、Cr2O3 (110 面)、Cr2O
3 (100 面)それぞれで0.2 、1.6 eV程度あり、鉄酸化
物スケールが表面皮膜に近づく際のスケール自体の運動
エネルギー( 熱レベル〜0.1 eV以下) では超えにくい障
壁になっている。一方、上述したように鉄含有Crメッ
キには、ポテンシャル障壁はなく、鉄酸化物スケールが
付着する可能性が高い。これらの計算結果は、Crメッ
キ表面には条件によっては付着したり、付着しなかった
りするという実験事実と定性的には一致しており、本発
明における異種材料間付着エネルギー予測システムの有
用性を示している。
【0042】
【発明の効果】以上、実施例と共に説明したように、本
発明の異種材料界面付着エネルギー予測装置は、異種の
皮膜材料同士の界面における付着エネルギー若しくは付
着性の有無等を予測する異種材料界面付着エネルギー予
測装置であって、与えられた対象材料の組成と結晶構造
を演算システムへ読み込む第1読込手段と、対象材料に
関するすべての同種,異種2原子間相互作用エネルギー
パラメータを決定し、演算システムへ読み込むパラメー
タ決定及び第2読込手段と、材料界面原子構造モデル情
報を読み込む第3読込手段と、同種,異種2原子間相互
エネルギー総和に基づいて、材料表面間距離に対する材
料界面全エネルギーを計算する演算手段と、上記全エネ
ルギー分布から付着エネルギーを評価する評価手段とを
具備するので、従来とは異なり、異種材料間付着強度を
実際に計測しなくても、材料の結晶構造と組成が判明し
ていれば、付着強度に相当する付着エネルギーや付着性
の有無を理論的に評価できることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】異種材料界面間付着エネルギー予測システムの
処理流れを示す図面である。
【図2】本発明での異種材料界面モデル図を表し、特に
酸化物と機器表面皮膜間の付着エネルギー評価用の界面
モデル図である。
【図3】異種材料界面間付着エネルギー予測装置のブロ
ック図面である。
【図4】本発明による鉄酸化物と幾つかの機器表面皮膜
間距離に対する全エネルギー計算結果を示す図である。
【符号の説明】
11 第1読込手段 12 パラメータ決定及び第2読込手段 13 第3読込手段 14 演算手段 15 評価手段 21 クラスター(Fe3 4 ) 22 表面皮膜 23 計算基本セル S101 第1読込ステップ S102 パラメータ決定及び第2読込ステップ S103 第3読込ステップ S104 演算ステップ S105 評価ステップ

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 異種の皮膜材料同士の界面における付着
    エネルギー若しくは付着性の有無等を予測する異種材料
    界面付着エネルギー予測装置であって、 与えられた対象材料の組成と結晶構造を演算システムへ
    読み込む第1読込手段と、 対象材料に関するすべての同種,異種2原子間相互作用
    エネルギーパラメータを決定し、演算システムへ読み込
    むパラメータ決定及び第2読込手段と、 材料界面原子構造モデル情報を読み込む第3読込手段
    と、 同種,異種2原子間相互エネルギー総和に基づいて、材
    料表面間距離に対する材料界面全エネルギーを計算する
    演算手段と、 上記全エネルギー分布から付着エネルギーを評価する評
    価手段とを具備することを特徴とする異種材料界面付着
    エネルギー予測装置。
JP27679497A 1997-08-01 1997-10-09 異種材料界面付着エネルギー予測装置 Expired - Fee Related JP3367880B2 (ja)

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