JPH1097934A - 変圧器運転シミュレータ - Google Patents

変圧器運転シミュレータ

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JPH1097934A
JPH1097934A JP8274143A JP27414396A JPH1097934A JP H1097934 A JPH1097934 A JP H1097934A JP 8274143 A JP8274143 A JP 8274143A JP 27414396 A JP27414396 A JP 27414396A JP H1097934 A JPH1097934 A JP H1097934A
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temperature
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JP8274143A
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Shinichi Tojo
伸一 東條
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Nippon Koei Co Ltd
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Nippon Koei Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 変圧器の個別の運転マニュアルが容易に作成
でき、その変圧器の持っている全能力を使用して運転で
きるものを得ることを目的とする。 【構成】 変電所の環境条件と変圧器の試験データを基
にして時系列で変化する負荷電流と気温のデータを入力
し、変圧器の油温シミュレーションを計算式により時系
列で算出し、また、逆に、変圧器の時系列で変化する冷
媒の温度と、時系列で変化する気温のデータを入力し、
変圧器の負荷電流シミュレーションを時系列で算出し、
これらのを画面および/またはプリンタに出力するよう
にした変圧器運転シミュレータである。このシミュレー
タにより、補助冷却装置の運転開始時刻をシミュレーシ
ョンから容易に確認できる。また、変圧器の個別の運転
マニュアルが容易に作成でき、その変圧器の特性にあっ
た運転が可能となり、さらに安全性を考慮しつつその変
圧器の全能力を使用して運転できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、変圧器の冷媒(絶
縁油、SF6ガスなど)の温度がどのように変化するか
を、時々刻々と変化する気温と負荷電流を入力データと
して与えて、画面、プリンタなどに時系列で出力する変
圧器運転シミュレータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、変圧器の油温は、変圧器の寿命を
例えば30年と設定し、この寿命を損なわないように運
転するようマニュアル化され、冷媒温度を例えば摂氏7
5度以下に保てば、この寿命を達成できるように説明さ
れている。ところで、夏期の重負荷時や変圧器の定格容
量を超えて運転するような過負荷時の運転は、消費地に
近い配電用変電所において、頻繁に行われることが通例
である。
【0003】したがって、夏期において変圧器の寿命を
損なわないように運転するにはどのようにしたらよいか
について、電気学会技術報告第143号(油入変圧器運
転指針:昭和61年)が発行されている。また、各電力
会社では、変圧器の過負荷運転をどのようにすべきかに
ついて、さらにこれをわかりやすく解説した「油入変圧
器過負荷運転指針」を作成し、これに基づいて過負荷運
転が実施されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の運転指針には、
つぎのような課題があった。 (1)従来の運転指針では、変圧器の分類が定格容量
(1〜10MVA、10〜100MVA、100〜30
0MVA、300MVA以上など)、絶縁階級(30号
以下、60号以上、100号以下、140号以上な
ど)、冷却方式(油入自冷、油入風冷、油入水冷、送油
自冷、送油風冷、送油水冷など)のみで分類され、対象
変圧器の定格容量および冷却方式を基に図10により時
定数を選択している。しかし、従来の運転指針には、個
々の変圧器が持っている特性の違いによるデータを取り
入れていないので、個々の変圧器の特性を生かしたきめ
細かな運転マニュアルになっていない。
【0005】(2)変圧器巻線や油温上昇値と負荷との
関係は、個々の変圧器の特性によって左右されるため、
理想的には、個々の変圧器の特性に基づき運転マニュア
ルを定めるべきであるが、従来の運転指針では、そのよ
うなことをするのは非常に煩雑で、実用的でない、との
理由から変圧器の定格運転時における一律の基準特性が
温度的に安全側となるように定められている。油強制循
環方式で時定数1.5Hの場合の許容負荷は、個々の変
圧器の特性に拘らず、例えば、一律に図9のようなもの
として公表されている。これによれば、重負荷以外の軽
負荷により、過負荷許容限度値と過負荷時間がグラフよ
り読み取れるようになっている。たとえば、定格容量の
130%で運転したい場合、軽負荷が50%で2.5時
間、70%で2.1時間、90%で1.6時間、100
%で0.9時間と容易に読み取れるが、具体的に油温や
巻線温度が何度になるかは、全く不明である。また、重
負荷以外の軽負荷の算出においてもその手順が煩雑であ
り、運転員は、この運用にかなり苦慮しているのが実態
である。また、実際には、油強制循環方式でも個々の変
圧器によって時定数が異なるにも拘らず、通常時におけ
る過負荷運転の場合はもちろんのこと、バンク事故など
の緊急的な過負荷運転時でも、この許容負荷曲線を使用
しなければならない。
【0006】(3)従来の運転指針では、等価周囲温度
を用いているが、これは関東全域などその地方の年平均
または月平均を統計的に算出した数値で、その変電所の
具体的環境条件(屋内、屋外、防音壁の有無など)を含
んでいないため、実際のその変電所個々の環境を反映で
きない。
【0007】(4)時々刻々と変化する負荷電流と気温
に対応した変圧器の油温が算出されていないため、1日
のうちで、具体的に何時に最高になり、かつ、何度にな
るかが全く不明であり、何時間か経過後の変化の予測が
できない。したがって、冷媒温度が上昇した後でない
と、運転員が、どのように負荷切換えを行えばよいか、
の具体的対策が取れない。
【0008】(5)変圧器の冷却器の一部または全部が
故障した場合、個別の変圧器の特性を生かした運転がで
きない。
【0009】本発明は、変圧器の個別の運転マニュアル
が容易に作成でき、その変圧器の持っている全能力を使
用して運転できるものを得ることを目的とするものであ
る。さらに、本発明は、簡易冷却装置を組み込むことに
より、変電所全体の冷却システムおよび負荷管理システ
ムとして変電所の運用に役立てることを目的とするもの
である。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、変電所の環境
条件と変圧器の試験データを基にして時系列で変化する
負荷電流と気温のデータを入力し、変圧器の冷媒と巻線
温度を計算式により時系列で算出し、また、逆に、変圧
器の時系列で変化する冷媒の温度と、時系列で変化する
気温のデータを入力し、変圧器の負荷電流を時系列で算
出し、これらの結果を画面および/またはプリンタに出
力するようにしたことを特徴とする変圧器運転シミュレ
ータである。
【0011】変圧器の時系列で変化する冷媒温度と、負
荷電流とを時系列で算出し、油温シミュレーション、負
荷電流シミュレーションとしてそれぞれ表示できるの
で、これらのシミュレーションにより、具体的に1日の
うちでどの時刻に冷媒の温度が最高になるか、管理値
(例えば75℃)を越えるかどうか、の判断が容易であ
り、また、逆に最高冷媒温度を規定した場合の最大負荷
電流も容易に確認できる。また、簡易冷却装置をどの時
刻で起動すれば冷媒の温度がどう降下するかの判断も容
易に演算表示することができる。以上から、変圧器の個
別の運転マニュアルが容易に作成でき、また、簡易冷却
装置を備えている場合、変電所をシステムとしてシミュ
レーションできるため、その変圧器および変電所の特性
にあった運転が可能となり、さらに安全性を考慮しつつ
その変圧器および変電所の全能力を使用して運転でき
る。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の実施例として、以下のシ
ミュレーションについて説明する。 A.冷媒温度のシミュレーション 時系列で(時々刻々と)変動する周囲温度、負荷電流お
よび冷却条件を入力データとして、冷媒(油またはガ
ス)の温度を時系列で算出し表示する(以下、油温シミ
ュレーションという)。 B.負荷電流のシミュレーション 時系列で(時々刻々と)変動する周囲温度、冷媒温度お
よび冷却条件を入力データとして、負荷電流を時系列で
算出し表示する(以下、電流シミュレーションとい
う)。ただし、負荷電流の厳密解を求めることは、理論
的に不可能なので、サーボ系自動制御理論の原理を応用
し、与えられた時系列の冷媒温度を目標値として、それ
に見合った電流値(カーブ)を算出する。 C.その他のシミュレーション 上記主要機能の他、つぎのようなシミュレーションが可
能である。 a.簡易冷却装置の運転条件を加味した各種応用プログ
ラムの作成 b.負荷電流(負荷率)と冷媒の温度上昇特性 c.巻線の平均温度
【0013】前記各シミュレーションの作成について具
体的に説明する。 A.油温シミュレーション この油温シミュレーションは、時系列で変動する周囲温
度、負荷電流および冷却条件を入力データとし、冷媒
(油またはガス)の温度を時系列で算出し、表示しよう
とするものである。油温シミュレーションの作成方法を
図1のフローチャートに基づき説明する。 (1)変圧器固定データの入力 スタート後、変圧器メーカーの試験成績書から読み取っ
てつぎに示すデータを入力する。なお、以下の括弧内お
よび文尾の数値は、送油自冷式の変圧器の場合の具体例
である。 a.温度(75℃)における1次巻線抵抗値(0.61
1Ω)と2次巻線抵抗値(0.005935Ω)を入力
する。 b.冷却フィンの放熱面積Fr(733m2)と変圧器本
体(タンク)の放熱面積St(30m2)を入力する。 c.変圧(電圧)比VR(64.5kV/6.9kV=
9.35)と定格電流値(20MVAのとき1675
A)を入力する。 d.鉄損Pi(15.4kW)と負荷損Pl(149.1
kW)を入力する。
【0014】(2)初期値の計算 a.1次側の抵抗値を2次側に変換する。 0.611/(VR2)=0.00699 b.全抵抗値RRの算出 (0.00699+0.005935)×3(相)=
0.03878 c.銅損Pcを算出する。 Pc=I2R=16752×0.03878÷1000=
108.8kW d.この銅損Pcを、負荷損Plから引き算し、漂遊負荷
損Pfを算出する。 Pf=Pl−Pc=149.1−108.8=40.3k
【0015】以上から変圧器の発熱量Qtは、つぎの
(1)式から求めることができる。 Qt=Pi+Pc+Pf ……………(1) この(1)式において、巻線温度が75℃で、かつ定格
の負荷電流が流れているときの変圧器の発熱量Qtは、 Qt=Pi(15.4kW)+Pc(108.8kW)+Pf(40.3kW ) =164.5kWとなる。 銅損Pcと漂遊負荷損Pfは、それぞれ油温θLと負荷電
流ILの変化に応じてつぎの(2)式と(3)式により
補正をすることにより、時々刻々と変化する時系列の電
流から損失を算出できる。 Pc=Rt{(234.5+θL+θw)/309.5}IL2…………(2) ここで、Rt:75℃の抵抗値 θL:油温 θw:油温と平均巻線温度との差 IL:負荷電流 Pf=Wc{309.5/(234.5+θL+θw)} …………(3) ここで、Wc:75℃の漂遊負荷損
【0016】(3)冷却方式別による方程式の作成 油入自冷、送油自冷、送油風冷、送油水冷など、冷却方
式別による方程式を作成する。一般に、送油自冷式にお
ける方程式は、つぎの(4)式が代表的であることが知
られている。 Mt(dθt/dt)+αFrθt=Qt …………(4) ここで、Mt:変圧器の熱容量(kcal/℃) Qt:変圧器の発熱量(kcal/S) α:変圧器本体と冷却フィンの熱伝達率(kcal/m
2℃S) θt:変圧器の温度上昇値(℃) Fr:変圧器本体と冷却フィンの表面積(m2) なお、変圧器本体の熱伝達率をα1、冷却フィンの熱伝
達率をα2とした場合、一般に、α12であるからα=
α12として、前記(4)式が用いられる。もし、α1
≠α2である場合には、つぎの(5)式が用いられる。 Mt(dθt/dt)+(α1St+α2Fr)θt=Qt …………(5) ここで、St:変圧器本体の表面積、Fr:冷却フィンの
表面積とする。
【0017】(4)放熱係数(σ)、熱伝達率(α)、
熱容量(Mt)を代入して、実測データ(気温、油温、
負荷電流)を基にして計算する。変圧器が、屋外、屋内
または地下に設置されているか、また、冷却方式が自然
対流方式か、強制対流式かによりその冷却メカニズムが
異なるので、その変圧器に適した熱伝達率を採用する。
自冷式変圧器である場合、つぎの(6)式となる。 α=4.4×(1+0.012×T)×σ …………(6) ここで、T:気温 σ:冷却フィンの状態と防音壁の有無によって変化させ
る放熱係数であり、このσは、変圧器の経年変化や設置
環境により、現地の実測値に合わせる必要がある。 この(4)項と、つぎの(5)項が本発明の特徴的な構
成要素である。
【0018】(5)実測値との比較 計算を実行する上で、変圧器の熱容量(Mt)が未知数
であるが、例えば、20MVAの変圧器であれば、1
0,000kcal/℃がおおよその値として経験的に
知られている。そこで、この値を代入して前記(4)式
を計算し、実測値と比較する。その結果、Mtが合わな
ければ、11,000または9,000に入れ替え、特
性が実測値に一致するまで行う。熱伝達率(α)につい
ても同様に変更して、特性が実測値に一致するまで行
う。
【0019】(6)簡易冷却の有無を判断する。 簡易冷却がなければ、簡易冷却のない変圧器(変電所)
としてシミュレータが完成し、図2の「簡易冷却なしの
油温計算値」特性線に示すような油温シミュレーション
が得られる。この図2において、「定格電流」は、変圧
器メーカーの試験成績書から入力したもので、容量が2
0MVAの場合、一定値の1675Aで、「気温」と
「負荷電流測定値」は、変圧器が設置されている現地の
測定値である。
【0020】(7)潜熱か、顕熱かの判断をする。 簡易冷却の有無で、簡易冷却があれば、潜熱か、顕熱か
の判断をする。 a.潜熱の場合、すなわち、主に地下変電所では、排水
路を有しないので、水の気化熱を利用した簡易冷却装置
が採用されており、このような場合、潜熱側へ移行し
て、気化効率(K)が選択される。ついで、つぎの
(7)式に示す潜熱時の方程式を作成して、前記同様、
簡易冷却を使用した場合の油温、気温、負荷電流の各実
測データを基にして実測値に一致するまで計算する。 Mt(dθt/dt)+αFrθt+Qa=Qt …………(7) ここで、Qa=K・Lh・q K:気化効率(冷媒温度θtの関数) Lh:水の気化熱量 q:水量 なお、Mtとαは、簡易冷却がないという条件で既知で
あるから、気化効率Kを実測値と一致するまで合わせる
ようにする。
【0021】b.顕熱の場合、冷却フィンに水を噴射し
て水温を利用して冷却する方式が採用されているような
場合、顕熱側へ移行して、熱伝達率(β)が選択され
る。ついで、つぎの(8)式に示す顕熱時の方程式を作
成して、前記同様、実測データを基にして両者が一致す
るまで計算する。 Mt(dθt/dt)+βKw(θt−θs)Fr+α(1−Kw)Frθt=Qt …………(8)
【0022】(8)簡易冷却を使用した場合の実測値と
の比較 潜熱時は、前記(7)式を計算し、また、顕熱時は、前
記(8)式を計算し、簡易冷却を使用した場合の実測値
とそれぞれ比較する。その結果、Kまたはβが合わなけ
れば、特性が実測値に一致するまで行う。特性が実測値
に一致すれば、終了し、図2の「簡易冷却有りの油温計
算値」特性線に示すような油温シミュレーションが計算
により得られる。この図2において、パルス状の特性線
は、簡易冷却装置を例えば30分起動、10分停止で運
転したことを示している。また、「簡易冷却有りの油温
計算値」特性線と略一致した特性線は、「簡易冷却有り
の油温実測値」特性線である。
【0023】B.負荷電流のシミュレーション この負荷電流シミュレーションは、時系列で変動する周
囲温度、冷媒(油またはガス)温度および冷却条件を入
力データとし、負荷電流を時系列で算出し、表示しよう
とするものである。 (1)基本的事項 変圧器の負荷電流から損失(変圧器の発熱量)Qtを求
め、前記(4)式の温度上昇の微分方程式を解き、これ
に気温を加算することによって油温を導くことは理論的
に可能である。しかし、逆に、油温から負荷電流を導く
ことは不可能である。これは、負荷電流と変圧器の冷媒
との関係が非可逆であるためである。そこで、本発明で
は、サーボ系自動制御理論を応用し、与えられた時系列
の冷媒温度を目標値として、それに見合った負荷電流の
シミュレーションを算出しようとするものである。
【0024】(2)サーボ系自動制御理論による負荷電
流の基本的算出方法 与えられた油温1を目標値とし、ある負荷電流から損失
Qtを算出し、前記(4)式を用いて温度上昇を算出
し、さらに気温を加算することにより、その負荷電流に
よる油温2を算出する。油温1と油温2の差がプラスで
あれば、与えられた油温の方が高いので、負荷電流を増
加させてQtを高くする。逆に、油温1と油温2の差が
マイナスであれば、計算による油温の方が高いので、負
荷電流を減少させて油温2の値を下げる。また、油温1
と油温2の差がゼロであれば、与えられた油温と計算に
よる油温とが等しいので、負荷電流を変えずに計算を継
続する。このように、与えられた目標値である油温に沿
って負荷電流を決めていくというサーボ系自動制御理論
により負荷電流を算出するものである。
【0025】(3)具体的算出方法 特定の変圧器の温度上昇特性の作成 図4は、当該変圧器特有の温度上昇特性曲線である。こ
の曲線は、その変圧器に定格電流の80%を、温度上昇
が飽和するまで流した場合の最終上昇値である。同様に
して、90、100、110%…とした場合の上昇値を
グラフ化すればその曲線を作成できる。この曲線からど
れだけの電流を継続して流し続ければ、その最終温度上
昇が何度であるかを求めることが、電流シミュレーショ
ンを作成する上できわめて重要である。これは、逆にい
えば最終の温度上昇を与えれば過去にどれだけの電流が
流れたかを知ることができる。また、簡易冷却装置を使
用した場合の特性も装置の運転条件や水量なども変更し
て作成できる。具体的には、特性曲線(1)は、「簡易
冷却なし」の場合を示し、特性曲線(2)は、簡易冷却
を10分運転、10分停止の場合を示し、特性曲線
(3)は、簡易冷却を30分運転、10分停止の場合を
示し、特性曲線(4)は、簡易冷却を「連続」運転の特
性曲線を示している。
【0026】油温上昇値の変極点の検索 与えられた時系列の油温から同じように与えられた時系
列の気温を引き算し、その差分の温度上昇が増加から減
少になる点と減少から増加になる点との時刻とその油温
上昇値をメモリに記憶させる。例えば、与えられた油温
のデータと気温のデータとの差が、図6(a)に示すよ
うに、14時に最大40℃であり、それ以降は減少し、
また、油温と気温との差が最低になる時刻が6時である
とし、その差が12℃であるものとする。この14時と
6時の2点が変極点となり、これをメモリに記憶する。
また、図6(b)に示すように、4時変極点、減少、1
0時変極点、増加、15時変極点、減少、21時変極
点、増加のように、増加と減少が1日に2回ずつで変極
点が4点ある場合には、これら4点の時刻とその上昇値
がメモリに記憶される。
【0027】変極点での負荷電流の算出 図4に示した変圧器温度上昇曲線(1)(2)(3)
(4)から変極点の温度上昇に対応した負荷電流値を求
める。例えば、簡易冷却なし特性線(1)の場合、前記
図6(a)の6時における温度差(上昇値)が12℃で
あるから、グラフから負荷電流値は600Aとなり、ま
た、もう1つの変極点14時では、温度差(上昇値)が
40℃であるから、グラフから負荷電流値は1750A
となる。
【0028】計算開始点の設定 求めた変極点では、前述の通り負荷電流値が近似的に明
らかになるから、この変極点のいずれかから計算を開始
する。例えば、6時の初期値は600Aであり、また、
16時では1750Aであるから、これらのうちのいず
れかの地点から計算を開始する。
【0029】電流のステップ関数化 図5に示す伝達関数のブロック図において、F(θp)
は、温度上昇値θpに対応して負荷電流のステップ関数
をつくる機能を有する。F(θp)は、2次関数として
近似できるとすればつぎの(9)式となる。 F(θp)=aθp2+bθp+c …………(9) 前記実施例では、6時から14時まで1750Aを出力
し、14時から6時まで600Aを出力することにな
る。
【0030】ステップ型負荷電流の積分 前記負荷電流を積分し、図5に示すように、積分要素
{1/(Wc)s}33により電圧Vc(s)に変換す
る。
【0031】1次遅れ要素34による基本電流の算出 前記電圧Vc(s)を入力とし、1次遅れ要素{1/
((WL)s+RL)}34により基本電流I2(s)を
算出する。この基本電流I2(s)は、加算回路35に
送られるとともに、加算回路32に負帰還される。この
ようにして、I2(s)は、なだらかな曲線となる。
【0032】目標油温と計算油温との差の検出とそれ
に比例した電流算出 入力端子30から入力した目標値θpと計算値θtとの
差を加算回路37で求め、係数増幅回路(KR)38で
比例定数Kを乗じ、この値を1次遅れ要素{1/((W
R)s+BR)}39に入力して、温度差に比例して出力
する電流I3(s)を算出する。
【0033】電流シミュレーションの完成 加算回路35にてI2(s)+I3(s)を負荷電流とし
て前記(4)式に示した油温上昇の式{1/((Wt)
s+α)}40にて温度上昇の計算値θtを算出し、目
標値であるθpとの比較を行い、図3に示すような電流
シミュレーションが完成し、出力端子36から出力す
る。
【0034】なお、図5におけるブロック図(伝達関
数)の各要素は、つぎの連立微分方程式の関係にある。 Wc(dVc/dt)={F(θp)−I2} …………(10) WL(dI2/dt)=(Vc−RL・I2) …………(11) WR(dI3/dt)=KR(θp−θt)−BR・I3} …………(12) Wt(dθt/dt)=(Qt−αθt) …………(13) なお、前記(5)式において、巻線の温度まで考慮した
場合の方程式は、つぎのように、 Mw(dθw/dt)+rθwSw=θt …………(5a) Mt(dθt/dt)+αθtFr)=rθwSw …………(5b) として連立微分方程式を形成できる。ここで、Mw:巻
線の熱容量、θw:巻線の温度上昇、Sw:巻線の表面
積、r:巻線と冷媒の熱伝達率である。
【0035】つぎに、以上のようにして求めた油温シミ
ュレーションと負荷電流シミュレーションは、図7また
は図8に示すような方法により、管理所11または総合
管理所23へ電送される。図7において、変電所10に
は、一般的に3台の変圧器12が設置されている。これ
らの変圧器12には、電流センサ出力端子14、気温セ
ンサ出力端子15、油温センサ出力端子16を具備し、
各データがテレコン子局13へ時々刻々と時系列で送ら
れるようになっている。また、この変電所10を管理す
る管理所11には、データをやり取りするテレコン親局
17、変電所10からのデータや、プログラムを記憶し
たメモリ19、各種データに基づき油温シミュレーショ
ンと負荷電流シミュレーションを演算するCPU18、
演算結果を印刷するプリンタ20、演算結果を表示する
ディスプレイ21が設けられている。
【0036】このような構成において、変圧器12のセ
ンサで時々刻々と検出された負荷電流、気温、油温の各
データがテレコン子局13へ集められ、管理所11のテ
レコン親局17へ送られる。管理所11では、これらの
データがメモリ19に一旦記憶された後、CPU18で
前述したような油温シミュレーションと負荷電流シミュ
レーションを計算して求める演算をし、その結果がプリ
ンタ20で印刷され、かつ、ディスプレイ21で表示さ
れる。したがって、冷媒や巻線温度がどのように変化す
るかをプリンタ20やディスプレイ21に時系列でシミ
ュレーションとして表示される。
【0037】図8は、総合管理所23に、さらに集中監
視装置22を具備し、変電所10から直接データを取り
込んだり、一旦テレコン親局17を介して取り込んだり
して、より総合的に管理する場合を示している。このよ
うな構成とすることにより、1か所の変電所10の変圧
器12の制御だけでなく、複数個所の変電所10の変圧
器12を管理して、1日のうちでどの時刻からどの時刻
まで、しかも冷媒の温度が何度のとき簡易冷却装置の運
転を開始すればよいかがシミュレーションから容易に確
認できる。また、その結果から負荷切換えの自動化まで
が実施可能となる。
【0038】
【発明の効果】
(1)本発明は、変圧器の冷媒である絶縁油やSF6ガ
スと、巻線の温度を時々刻々と変化する気温と負荷電流
を入力として与えて、その温度がどのように変化する
か、また逆に、時々刻々と変化する気温と冷媒の温度か
ら、負荷電流がどのように流すことができるかを算出
し、画面やプリンタにシミュレーションとして表示する
ことができる。
【0039】(2)一般に、冷媒の温度が管理値である
75℃を越えると、変圧器の寿命が損なわれると考えら
れていることから、その対策として、補助冷却装置や簡
易冷却装置の運転によりその冷媒の温度を75℃以下に
抑えるようになっている。本発明では、このような場合
に、シミュレーションにより1日のうちでどの時刻から
どの時刻まで、しかも冷媒の温度が何度のとき補助冷却
装置や簡易冷却装置の運転を開始すればよいかがシミュ
レーションから容易に確認できる。
【0040】(3)本発明を用いれば、従来困難と考え
られていた変圧器の個別の運転マニュアルが容易に作成
でき、その変圧器の特性にあった運転が可能となる。ま
た、簡易冷却装置の機能を付加したシミュレーションと
することにより、変電所の油温管理システムとして使用
でき、さらに、変電所の換気設計や冷却設計にも利用す
ることができる。
【0041】(4)従来、変圧器の過負荷運転は、既製
のマニュアルにより、安全性を考慮して概算的に運転さ
れてきたが、本発明のシミュレーションを用いれば、そ
の変圧器/変電所の全能力を使用して運転できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による油温シミュレーション作成時のフ
ローチャートである。
【図2】本発明による油温シミュレーションの具体的波
形図である。
【図3】本発明による電流シミュレーションの具体的波
形図である。
【図4】変電所油温上昇特性曲線図である。
【図5】本発明による電流シミュレーション作成時のブ
ロック図である。
【図6】本発明による電流シミュレーションを算出する
ときのステップ関数を作るときの例を示すもので、
(a)は、24時間内に油温と気温の温度差の上昇と下
降がそれぞれ1回ずつの場合を示し、(b)は、それぞ
れ2回ずつの場合を示している。
【図7】変電所を管理所により管理する場合のブロック
図である。
【図8】変電所を総合管理所により管理する場合のブロ
ック図である。
【図9】油強制循環方式による許容負荷特性曲線図であ
る。
【図10】従来の運転指針による変圧器油温変化の時定
数を示す図表である。
【符号の説明】
10…変電所、11…管理所、12…変圧器、13…テ
レコン子局、14…電流センサ出力端子、15…気温セ
ンサ出力端子、16…油温センサ出力端子、17…テレ
コン親局、18…CPU、19…メモリ、20…プリン
タ、21…ディスプレイ、22…集中監視装置、23…
総合管理所、30…目標値入力端子、31…F(θP)
回路、32…加算回路、33…1/WcS回路、34…
1次遅れ要素{1/(WLS+RL)}、35…加算回
路、36…出力端子、37…加算回路、38…係数増幅
回路(KR)、39…1次遅れ要素{1/(WRS+B
R)}、40…演算回路{1/(WtS+α}。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 変電所の環境条件と変圧器の試験データ
    を基にして時系列で変化する負荷電流と気温のデータを
    入力し、変圧器の冷媒と巻線温度を計算式により時系列
    で算出し、その結果を画面および/またはプリンタに出
    力するようにしたことを特徴とする変圧器運転シミュレ
    ータ。
  2. 【請求項2】 時系列で変化する負荷電流と気温のデー
    タは、架空または実測の値を用いるようにしたことを特
    徴とする請求項1記載の変圧器運転シミュレータ。
  3. 【請求項3】 変圧器の試験データと時系列で算出した
    巻線温度から、許容負荷計算の式で寿命計算をし、変圧
    器固有の過負荷許容曲線を画面および/またはプリンタ
    に出力するようにしたことを特徴とする請求項1記載の
    変圧器運転シミュレータ。
  4. 【請求項4】 変圧器に取り付けられた冷却装置の仕様
    と冷却特性を計算式に組み込み、前記冷却装置を運転し
    た場合の変圧器の温度特性を算出し、その結果を画面お
    よび/またはプリンタに出力するようにしたことを特徴
    とする請求項1記載の変圧器運転シミュレータ。
  5. 【請求項5】 変圧器の時系列で変化する冷媒の温度
    と、時系列で変化する気温のデータを入力し、前記変圧
    器の負荷電流を時系列で算出し、その結果を画面および
    /またはプリンタに出力するようにしたことを特徴とす
    る変圧器運転シミュレータ。
  6. 【請求項6】 変圧器に取り付けられた冷却装置の仕様
    と冷却特性を計算式に組み込み、前記冷却装置を運転し
    た場合の変圧器の負荷電流を時系列で算出し、その結果
    を画面および/またはプリンタに出力するようにしたこ
    とを特徴とする請求項5記載の変圧器運転シミュレー
    タ。
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