JPH1065487A - 水晶振動子およびその製造方法 - Google Patents

水晶振動子およびその製造方法

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JPH1065487A
JPH1065487A JP10989497A JP10989497A JPH1065487A JP H1065487 A JPH1065487 A JP H1065487A JP 10989497 A JP10989497 A JP 10989497A JP 10989497 A JP10989497 A JP 10989497A JP H1065487 A JPH1065487 A JP H1065487A
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武彦 宇野
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栄治 神山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 周囲温度が変動する場合においても、比較的
簡単な温度補償回路で安定した共振周波数やフィルタ周
波数が得られ、さらに取り扱いが簡単で複雑な調整作業
等もいらず、しかも低価格化が図れる水晶振動子および
その製造方法を提供する。 【解決手段】 水晶基板1の両面に励振用の電極部2,
3をそれぞれ形成して電極部2,3に挟まれた領域を励
振部4とした水晶振動子において、水晶基板1内の励振
部4と異なる位置に、励振部4の電気軸(X)と反対方
向の電気軸(−X)を有する軸反転部11,12を形成
したことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンピュータのク
ロック発生器、無線通信機器の局部発振器やフィルタ等
に好適に用いられ、周囲温度が変動する場合においても
安定した共振周波数やフィルタ周波数が得られる水晶振
動子およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、一定周波数の電気信号を発生させ
る発振器の共振回路に用いられる振動子として、温度変
化に対して安定した共振周波数が得られる水晶振動子が
ある。図16は、従来の水晶振動子を示す斜視図であ
り、図において、符号1は電気軸(X)を有し周波数の
温度係数が0であるATカットの水晶基板、2,3は水
晶基板1の両面に形成されたアルミニウム、金等からな
る励振用の電極、4は電極2,3により挟まれた箱状の
領域である励振部である。この水晶振動子は、電極2,
3間に共振周波数近傍の高周波電圧を印加することによ
り、1kHz〜100MHz程度の範囲内の固有の周波
数の電気振動を発生させることができる。
【0003】ところで、上述した水晶振動子の共振周波
数は、周囲温度をパラメータとした場合に3次曲線で表
される特性を有するので、温度変動の小さい場合には共
振周波数の変動は問題にならないくらい小さいが、温度
が大きく変動する環境下で用いる場合には、共振周波数
の変動が大きくなり無視することができなくなる。そこ
で、この特性を打ち消すような温度補償電圧を得ること
のできる感温素子、例えば、温度特性が指数関数で表さ
れるサーミスタを用いた温度補償回路と組み合せること
により、その共振周波数を周囲温度に対して略直線状に
変化させた温度補償水晶発振器(TCXO)が提供され
ている。
【0004】なお、一般に、電子デバイス用の結晶中に
双晶が存在すると、デバイスの特性に悪影響を及ぼすた
め、該結晶中には双晶が形成されないことが肝要である
とされており、前記水晶振動子や水晶発振器において
も、振動子として用いられる水晶基板中には双晶のない
ことが当然のこととされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た水晶発振器(TCXO)においては、温度補償回路を
構成するために前記サーミスタの他にいくつかの電子部
品が必要になり、用いる電子部品の点数が増加する分高
価格になる、また、この水晶発振器の回路の調整が複雑
になる等、様々な欠点があった。一方、3次曲線で表さ
れる水晶基板の共振周波数−温度特性は、水晶基板固有
の特性であるとされており、水晶基板自体には改善の余
地がないものと考えられていた。
【0006】本発明は、上記の事情に鑑みてなされたも
のであって、周囲温度が変動する場合においても、比較
的簡単な温度補償回路で安定した共振周波数やフィルタ
周波数が得られ、さらに取り扱いが簡単で複雑な調整作
業等もいらず、しかも低価格化が図れる水晶振動子およ
びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】水晶は、573℃(T
c)でα・β相転移を起こすが、応力等により転移温度
が低下し、Tcより低い温度で電気軸(X軸)が反転す
ることが知られている。本発明者等は、水晶基板の表面
に金属電極を付着させて熱処理を施すことにより、この
基板の切断方位および金属の種類によっては、Tcより
はるかに低い温度で水晶基板の電気軸が反転することを
見いだし、水晶基板内に、励振部の電気軸と反対方向の
電気軸を有する軸反転部を形成した水晶振動子およびそ
の製造方法を提供する。
【0008】すなわち、請求項1記載の水晶振動子は、
水晶基板の両面に励振用の電極部をそれぞれ形成して該
電極部に挟まれた領域を励振部とした水晶振動子におい
て、前記水晶基板内の前記励振部と異なる位置に、該励
振部の電気軸と反対方向の電気軸を有する軸反転部を形
成したものである。
【0009】この水晶振動子では、前記励振部の電気軸
と反対方向の電気軸を有する軸反転部を形成したことに
より、該励振部内に生じる振動エネルギーの一部を該軸
反転部に漏洩させて該水晶振動子の温度補償を行う。例
えば、ATカットの水晶基板は、室温においては、その
共振周波数が負の温度特性を有するのに対し、前記軸反
転部の共振周波数が正の温度特性を有するので、該軸反
転部により励振部の温度特性が補償されることになる。
これにより、周囲温度が変動する場合においても、比較
的簡単な温度補償回路で安定した共振周波数を得ること
が可能になる。
【0010】請求項2記載の水晶振動子は、請求項1記
載の水晶振動子において、前記軸反転部を、前記励振部
の片側または両側に近接して形成したものである。請求
項3記載の水晶振動子は、請求項1記載の水晶振動子に
おいて、前記軸反転部を、前記励振部の周囲に形成した
ものである。これらの水晶振動子では、前記励振部に近
接した位置またはその周囲に軸反転部を形成したことに
より、該励振部からの振動エネルギーの一部を該軸反転
部に漏洩させて励振部の温度補償をより確実に行う。
【0011】請求項4記載の水晶振動子は、請求項1,
2または3記載の水晶振動子において、前記軸反転部に
励振用の電極部を形成して温度センサ部としたものであ
る。この水晶振動子では、前記軸反転部が略直線状の温
度係数を有する温度センサとなる。これにより、この振
動子を従来の水晶発振器(TCXO)に応用すれば、水
晶基板の温度情報を直接得ることが可能になり、高精度
の温度補償が可能になる。
【0012】請求項5記載の水晶振動子の製造方法は、
水晶基板の両面に励振用の電極部をそれぞれ形成して該
電極部に挟まれた領域を励振部とする水晶振動子の製造
方法において、前記水晶基板の表面の前記電極部の片側
または両側に、金属膜を形成し、次いで、この水晶基板
を、水晶のα・β転移温度以下の温度で熱処理し、該水
晶基板内に、前記励振部の電気軸と反対方向の電気軸を
有する軸反転部を形成するものである。
【0013】この製造方法では、金属膜が形成された水
晶基板を水晶のα・β転移温度以下の温度で熱処理する
ことにより、前記金属膜に起因する応力により水晶基板
内の反転部を形成すべき位置の電気軸がα・β転移温度
より低い温度で反転する。これにより、水晶基板内の前
記励振部と異なる領域に、前記励振部の電気軸と反対方
向の電気軸を有する軸反転部が形成され、したがって、
該水晶基板内に該軸反転部と前記励振部とからなる双晶
構造が形成される。
【0014】以上により、水晶基板内の励振部と異なる
位置に、該励振部の電気軸と反対方向の電気軸を有する
軸反転部が形成されることとなり、周囲温度の変動に対
して安定した共振周波数やフィルタ周波数が得られる水
晶振動子を製造することが可能になる。
【0015】請求項6記載の水晶振動子の製造方法は、
請求項5記載の水晶振動子の製造方法において、前記金
属膜を、Cr膜、Ni膜またはNiCr膜のいずれかと
したものである。この製造方法では、Cr膜、Ni膜ま
たはNiCr膜を用いることにより、540〜550℃
程度の温度で電気軸の反転が起こる。これにより、水晶
基板内部にα・β転移温度よりはるかに低い温度でα・
β転移を起こさせることが可能になる。
【0016】請求項7記載の水晶振動子の製造方法は、
請求項5記載の水晶振動子の製造方法において、前記熱
処理を、不活性雰囲気または真空のいずれかの雰囲気中
で行うものである。この製造方法では、金属膜の酸化を
防止することにより、該金属膜の応力が低下するおそれ
がなくなり、水晶基板内部における軸反転部の形成がよ
り確実になる。
【0017】請求項8記載の水晶振動子の製造方法は、
水晶基板の両面に励振用の電極部をそれぞれ形成して該
電極部に挟まれた領域を励振部とする水晶振動子の製造
方法において、前記水晶基板の表面に導電性を有する材
料からなる薄膜を形成し、次いで、前記薄膜を形成した
水晶基板を加熱した後、加熱状態で前記薄膜に電流を流
すことによって、前記水晶基板の薄膜下方にあたる部分
に軸反転に必要な応力を付与し、前記励振部の電気軸と
反対方向の電気軸を有する軸反転部を形成するものであ
る。また、請求項9記載の水晶振動子の製造方法は、請
求項8記載のものと同様、薄膜を形成した水晶基板を加
熱した後、加熱状態で前記薄膜に電子線を照射すること
によって軸反転に必要な応力を付与し、軸反転部を形成
するものである。また、請求項10記載の水晶振動子の
製造方法は、請求項8、9記載のものと同様、薄膜を形
成した水晶基板を加熱した後、加熱状態で前記薄膜を通
して前記水晶基板内に高電界を印加することによって軸
反転に必要な応力を付与し、軸反転部を形成するもので
ある。
【0018】これら請求項8〜10記載の水晶振動子の
製造方法は、特に水晶基板における軸反転部の形成を確
実にかつ生産性良く実行するための手段を提供するもの
である。そして、その特徴は、軸反転の誘因が水晶基板
に形成した膜による応力であることに着目し、外部から
の電気的な手段を用いて水晶基板のうちの膜形成部に対
して効率良く応力を付与することにある。ここで言う電
気的手段とは、具体的には、導電性薄膜に電流を流
す、導電性薄膜に電子線を照射する、導電性薄膜を
通して水晶基板内に高電界を印加する、の3通りであ
る。
【0019】請求項11記載の水晶振動子の製造方法
は、請求項8ないし10のいずれかに記載の水晶振動子
の製造方法において、前記薄膜を、Cr膜、Ni膜また
はNiCr膜のいずれかとしたものである。この製造方
法では、Cr膜、Ni膜またはNiCr膜を用いること
により、より低い温度で電気軸の反転が起こる。これに
より、水晶基板内部にα・β転移温度よりはるかに低い
温度でα・β転移を起こさせることが可能になる。
【0020】請求項12記載の水晶振動子の製造方法
は、請求項8ないし10のいずれかに記載の水晶振動子
の製造方法において、前記加熱を、不活性雰囲気または
真空のいずれかの雰囲気中で行うものである。この製造
方法では、金属膜の酸化を防止することにより、該金属
膜の応力が低下するおそれがなくなり、水晶基板内部に
おける軸反転部の形成がより確実になる。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明の各実施形態について説明
する。 (第1の実施形態)図1は本発明の第1の実施形態の水
晶振動子を示す図であり、同図(a)は斜視図、同図
(b)は同図(a)のI−I線に沿う断面図である。図
において、11,12は水晶基板1内かつ励振部4の両
側の近傍に形成された、該励振部4の電気軸(X)と反
対方向の電気軸(−X)を有する軸反転部である。な
お、図1中、Wは電極2,3の幅、Lは電極2,3の長
さ、dは励振部4と軸反転部11,12との間隔、sは
軸反転部11,12の長さ、tは水晶基板1の厚みであ
り、fは長さ方向の振動変位の振幅分布である。
【0022】この水晶振動子では、電極2,3間に共振
周波数近傍の高周波電圧を印加すると、図1(b)に示
すような振動変位の振幅分布fが得られる。すなわち、
電極2,3の質量付加効果に基づくエネルギー閉じ込め
効果により、励振部4に振動エネルギーの大部分が集中
するが、一部は漏洩し軸反転部11,12に達し、この
結果、温度特性が改善される。
【0023】ここで、図2に基づき本実施形態の水晶振
動子の温度特性の改善効果について説明する。図2中、
Aは本実施形態の水晶振動子の最適な特性、Bは軸反転
部のないATカット水晶振動子の特性、CはATカット
水晶基板のX軸を反転処理した水晶振動子の特性、Dは
本実施形態の水晶振動子の温度補償の原理を確認するた
めに行った実験の結果である。なお、上記実験(D)に
用いた試料は、tが205μm、Wが5.0mm、Lが
2.5mm、sが2.5mm及びdが2.0mmのもの
で、熱処理条件は、550℃で1時間30分とした。ま
た、測定に用いた周波数frは8.0MHzとした。
【0024】これより明かなように、ATカット水晶振
動子(B)の共振周波数は3次曲線で表され、室温付近
では負の温度係数を有する。一方、反転処理した水晶振
動子(C)では、極めて大きな正の温度係数を有する。
したがって、図1(b)に示すように、振動エネルギー
の一部(振幅分布fの裾の部分)を軸反転部11,12
に漏洩させることにより、正の温度係数と負の温度係数
とが相殺され、最適な特性(A)が得られる。すなわ
ち、その温度係数は、約0〜70℃の温度範囲でほぼ0
となり、70℃を越えると温度上昇と共に僅かに増加す
る。
【0025】このように、振動エネルギーの一部を軸反
転部11,12に漏洩させて正の温度係数と負の温度係
数とを相殺することにより、温度特性を補償することが
できる。これにより、周囲温度が変動する場合において
も、温度補償回路等を用いることなく安定した共振周波
数を得ることが可能になる。
【0026】次に、図3に基づき水晶振動子の製造方法
について説明する。まず、ATカットの水晶基板1の表
面の軸反転部11,12を形成すべき位置に、電子ビー
ム(EB)蒸着法等により、Cr,Ni等の遷移金属、
またはこれらの合金であるNiCr等のいずれかの材料
からなる金属薄膜21,22を形成する(図3
(a))。
【0027】この場合、水晶基板1内部に軸反転部1
1,12を効果的に形成するためには、金属薄膜21,
22の厚み(t2)が水晶基板1の厚み(t1)に対し
て一定の比率(R=t2/t1)以上であることが必要
である。
【0028】例えば、図4に示すように、Cr膜の場合
では、R=1.3×10−3付近に軸反転が可能となる
臨界値があり、この臨界値を下回ると軸反転が不能にな
る。また、NiCr膜の場合では、R=0.4×10−
3付近に軸反転が可能となる臨界値があり、この臨界値
を下回ると軸反転が不能になる。したがって、例えば、
NiCr膜の場合、水晶基板1の厚みt1を200μm
とすると、安定した軸反転を得るためにはNiCr膜の
厚みを200nm以上(R≧1×10−3)とする必要
がある。なお、この場合の膜形成温度は200℃であ
る。
【0029】次いで、金属薄膜21,22が形成された
水晶基板1を、N2ガス等の不活性雰囲気または真空の
いずれかの雰囲気中で、水晶のα・β転移温度(573
℃)以下の温度、例えば金属薄膜21,22がNiCr
膜の場合、550〜560℃で30分間熱処理する。
【0030】熱処理時の金属薄膜21,22に起因する
応力により、水晶基板1内の反転部11,12を形成す
べき位置の電気軸がα・β転移温度より低い温度で反転
する。これにより、水晶基板1内部に励振部4の電気軸
(X)と反対方向の電気軸(−X)を有する軸反転部1
1,12が形成される(図3(b))。
【0031】次いで、必要に応じて金属薄膜21,22
を取り除き、水晶基板1の両面に電子ビーム(EB)蒸
着法等により電極2,3を形成する(図3(c))。以
上により、図1(b)に示す振動変位の振幅分布fを有
する水晶振動子を得ることができる。
【0032】ここで、本実施形態の水晶振動子の熱処理
前後の共振特性について説明する。図5は、熱処理前後
の共振特性を示す図であり、図中、(a)は水晶基板1
の両面にCr膜を形成したものの熱処理前の共振特性、
(b)は同熱処理後の共振特性、(c)は水晶基板1の
両面にAl膜を形成したものの熱処理後の共振特性であ
る。ここでは、図6に示すように、ATカットの水晶基
板1の両面の互いに対向する位置に、Cr膜(金属膜)
25,25及びAl膜(金属膜)26,26をそれぞれ
形成したものを試料とした。
【0033】(a)と(b)により、Cr膜25,25
では熱処理前後の共振周波数が大きく変化しており、熱
処理前後の周波数比は、水晶基板1(+35゜15´R
Y−cut)と軸反転部11,12(−35゜15´R
Y−cut)との周波数定数比にほぼ一致しており、軸
反転が生じていることが明かである。一方、Al膜2
6,26では熱処理前後において共振周波数の明瞭な変
化がみられず、軸反転が生じているとは認め難い。
【0034】以上説明した様に、本実施形態の水晶振動
子によれば、水晶基板1内かつ励振部4の両側の近傍
に、該励振部4の電気軸(X)と反対方向の電気軸(−
X)を有する軸反転部11,12を形成したので、該軸
反転部11,12により励振部4の温度特性を補償する
ことができ、したがって、周囲温度が変動する場合にお
いても、比較的簡単な温度補償回路で安定した共振周波
数を得ることができる。
【0035】また、本実施形態の水晶振動子の製造方法
によれば、水晶基板1の励振部4と異なる領域の表面
に、金属薄膜21,22を形成し、次いで、この金属薄
膜21,22付き水晶基板1を、水晶のα・β転移温度
以下の温度で熱処理するので、水晶基板1内に励振部4
の電気軸と反対方向の電気軸を有する軸反転部11,1
2が形成され、周囲温度の変動に対して安定した共振周
波数やフィルタ周波数が得られる水晶振動子を製造する
ことができる。
【0036】なお、励振部4及び軸反転部11,12の
形状は、上述した互いに平行なものの他、例えば、励振
部4と軸反転部11,12の互いに対向する各面の水平
断面が櫛型となる形状、励振部4と軸反転部11,12
の互いに対向する各上端部の水平断面が櫛型かつ各下端
部の水平断面が平行となる形状等、様々な形状のものが
可能である。
【0037】(第2の実施形態)図7は本発明の第2の
実施形態の水晶振動子を示す図であり、同図(a)は斜
視図、同図(b)は同図(a)のII−II線に沿う断
面図である。この実施形態の水晶振動子が上述した第1
の実施形態の水晶振動子と異なる点は、水晶基板1内か
つ励振部4の片側の近傍に、励振部4の電気軸(X)と
反対方向の電気軸(−X)を有する軸反転部12を形成
した点である。
【0038】この水晶振動子では、電極2,3間に共振
周波数近傍の高周波電圧を印加すると、図7(b)に示
すような振動変位の振幅分布fが得られる。電極2,3
の質量付加効果に基づくエネルギー閉じ込め効果によ
り、励振部4に振動エネルギーの大部分が集中するが、
一部は漏洩し軸反転部12に達し、この結果、温度特性
が改善される。
【0039】この水晶振動子は、上述した第1の実施形
態の水晶振動子と同様の製造方法により製造することが
できる。例えば、200μmの厚みのATカットの水晶
基板1の表面の軸反転部12を形成すべき位置に、20
0nm以上の厚みのNiCr膜等からなる金属薄膜22
を形成し、その後、N2ガス等の不活性雰囲気または真
空のいずれかの雰囲気中で、水晶のα・β転移温度(5
73℃)以下の温度、例えば550〜560℃で30分
間熱処理すれば、水晶基板1内部に励振部4の電気軸
(X)と反対方向の電気軸(−X)を有する軸反転部1
2が形成され、図7(b)に示す振動変位の振幅分布f
を有する水晶振動子を得ることができる。
【0040】本実施形態の水晶振動子においても、上述
した第1の実施形態の水晶振動子と全く同様に、該軸反
転部12により励振部4の温度特性を補償することがで
き、したがって、周囲温度が変動する場合においても、
比較的簡単な温度補償回路で安定した共振周波数を得る
ことができる。
【0041】(第3の実施形態)図8は本発明の第3の
実施形態の水晶振動子を示す図であり、同図(a)は斜
視図、同図(b)は同図(a)のIII−III線に沿
う断面図である。この実施形態の水晶振動子が上述した
第1及び第2の実施形態の水晶振動子と異なる点は、水
晶基板1の両面に半径rの励振用の電極31,32を形
成してこれら電極31,32により挟まれた円板状の領
域を励振部33とし、この励振部33の周囲の半径Rの
外側の位置に、励振部33の電気軸(X)と反対方向の
電気軸(−X)を有する軸反転部34を形成した点であ
る。
【0042】本実施形態の水晶振動子においても、上述
した第1及び第2の実施形態の水晶振動子と全く同様
に、該軸反転部34により励振部33の温度特性を補償
することができ、したがって、周囲温度が変動する場合
においても、比較的簡単な温度補償回路で安定した共振
周波数を得ることができる。
【0043】(第4の実施形態)図9は本発明の第4の
実施形態の温度センサ付き水晶振動子を示す斜視図であ
り、図において、41は水晶基板1内かつ励振部4の片
側の近傍に形成された、該励振部4の電気軸(X)と反
対方向の電気軸(−X)を有する軸反転部、42,43
は軸反転部41に形成された励振用の電極である。
【0044】この温度センサ付き水晶振動子は、ATカ
ットの水晶基板1を部分的に軸反転処理し、非反転部と
反転部それぞれに振動子を形成している。非反転部の振
動子44は通常のATカット水晶振動子となり、反転部
の振動子45は−35゜15´RY−cutの振動子
で、+29ppm/degの温度係数を有する温度セン
サとなる。
【0045】図10は、本実施形態の温度センサ付き水
晶振動子の共振周波数−温度特性を示す図であり、図
中、Eは非反転部の特性、Fは反転部の特性である。こ
れより明かなように、非反転部(E)の共振周波数は3
次曲線で表され、室温付近では負の温度係数を有する。
一方、反転部(F)では、+29ppm/degの温度
係数を有する。したがって、反転部(F)を温度センサ
として用いれば、水晶基板1の温度情報を直接得ること
ができる。この温度センサ付き水晶振動子は、従来の水
晶発振器(TCXO)等への応用が可能である。特に、
水晶発振器(TCXO)に応用した場合、水晶基板1の
温度情報を直接得ることができ、高精度の温度補償を行
うことができる。
【0046】(第5の実施形態)上記第1の実施形態で
は図3を用いて水晶振動子の製造方法を説明したが、以
下の実施形態では他の製造方法、特に、軸反転部の形成
方法に関する3つの方法について説明する。すなわち、
軸反転部を形成するために、第1の実施形態では、水晶
基板上に金属薄膜を形成した後、この水晶基板全体を熱
処理していたのに対し、本実施形態の方法は、水晶基板
上に金属薄膜を形成した後、金属薄膜に電流を流すこと
によってその下の水晶基板に応力を付与するという方法
である。
【0047】図11は本実施形態における軸反転部の形
成方法を示す図であり、図中符号1は水晶基板、51は
金属薄膜(導電性薄膜)、52は基板ホルダー、53
a,53bはリード線、54は加熱用ヒーター、55は
真空容器、56は電源、57はスイッチ、である。以
下、この図を用いて軸反転部の形成工程を説明する。
【0048】まず、図11に示すように、水晶基板1の
表面に、電子ビーム蒸着法等の周知の方法を用いてC
r,Ni等の遷移金属、またはこれらの合金であるNi
Cr等のいずれかの材料からなる金属薄膜51を形成す
る。
【0049】次に、上記金属薄膜51を形成した水晶基
板1を基板ホルダー52上に固定し、金属薄膜51の両
端部にリード線53a,53b、スイッチ57を介して
電源56を接続する。そして、水晶基板1を収容する真
空容器55の内部を排気して真空雰囲気とした後、加熱
用ヒーター54を用いて水晶基板1を500〜520℃
程度まで加熱する。この状態では、水晶基板1の温度が
α・β転移温度(573℃)に到達していないので、電
気軸(X)の反転は起こらない。なお、真空容器55の
内部を真空雰囲気とする代わりに、不活性雰囲気として
もよい。
【0050】次に、水晶基板1を上記の温度に保った状
態でスイッチ57を閉じる。すると、薄膜51は金属で
あるために電流が流れ、膜抵抗によって電流導通と同時
に薄膜51が加熱されて膨張し、軸反転に必要な応力が
水晶基板1に付与されると同時に薄膜51下の水晶の温
度が局所的に上昇するため、電気軸の反転が起こる。一
方、薄膜51の下以外の部分には膜による応力が加わら
ず温度上昇も小さいため、軸反転が生じる条件にまでは
達せず、電気軸の方向は元の状態を保ったままとなる。
【0051】ここで、本実施形態の方法に基づく実験例
を示す。本実験の試料は、水晶基板として幅8.5m
m、長さ9.2mm、厚さ0.16mmのATカット板
を用いた。そして、金属薄膜として幅1.0mm、長さ
8.0mm、厚さ250nmのクロム膜を水晶基板上に
形成した。また、実験条件として、真空容器内雰囲気は
5×10-5Torr(0.005Pa)、電流導通時の基板
温度は520℃、印加電力は2V×0.05A=100
mW(12.5mW/mm2)、印加時間は約1秒、と
した。
【0052】X軸反転が起こると同時にY軸も反転し、
結晶板の切断方位と結晶軸との関係は図12のようにな
る。すなわち、ATカット板はその面方線がY軸からZ
軸に向かって35°15’傾いた、いわゆる35°1
5’回転Yカットであるのに対し、X軸反転部分は−3
5°15’回転Yカットとなる。ATカット板の圧電共
振に対する周波数定数は、よく知られているように約1
650Hz・mであり、一方、−35°15’回転Yカ
ット板の周波数定数は約2520Hz・mと算出され
る。すなわち、ATカット板においてX軸方向が反転す
ると、共振周波数が約1.47倍に上昇することにな
る。
【0053】実験では試料を真空中で520℃に加熱
し、その加熱状態で水晶基板上の薄膜に電流を流した。
そして、X軸反転の様子を見るため、共振特性をネット
ワークアナライザにより観測した。図13は実験中の各
時点での共振周波数の変化の様子を示したものであり、
それぞれ(a)は室温時の初期状態、(b)は520℃
に加熱した状態、(c)は520℃で電流を印加し、遮
断した直後の状態、(d)は温度を再度室温に戻した時
の状態、を示している。
【0054】図13(a)に示すように、室温時の初期
状態では10MHz付近に共振が見られるが、図13
(b)に示すように、試料を520℃まで加熱してもそ
れだけでは共振周波数は11MHz程度と初期状態とほ
とんど変わらない。つまり、図13(a)と図13
(b)の共振周波数差は温度特性によるものであり、こ
れらの共振はともにATカットに対応する。これに対し
て、図13(c)に示すように、加熱状態で薄膜に電流
を流すと共振周波数は14.3MHz程度にまで上昇
し、図13(d)に示すように、その後温度を室温に戻
すと14.7MHz程度となった。このように、本実験
によって電流印加後の共振周波数は初期状態の約1.4
7倍になることが確認され、電流印加による本方法がX
軸の反転処理に有効であることが実証された。
【0055】(第6の実施形態)次に、他の軸反転部の
形成方法を説明する。本実施形態の方法は、水晶基板上
の金属薄膜に電子線を照射することによってその下の水
晶基板に応力を付与する方法である。
【0056】図14は本実施形態における軸反転部の形
成方法を示す図であり、図中符号1は水晶基板、51は
金属薄膜(導電性薄膜)、52は基板ホルダー、53
a,53bはリード線、54は加熱用ヒーター、55は
真空容器、61はカソード、62はカソード加熱用ヒー
ター、63は直流電圧源、64はスイッチ、である。こ
の図に示すように、水晶基板1上に形成した金属薄膜5
1はスイッチ64を通して直流電圧源63に接続され、
カソード61に対して負電圧が印加される構成となって
いる。本実施形態における軸反転部の形成工程は以下の
通りである。
【0057】第5の実施形態と同様に水晶基板1上に金
属薄膜51を形成した後、真空容器55内を真空または
不活性雰囲気とするとともに、加熱用ヒーター54を用
いて水晶基板1を500〜520℃程度まで加熱する。
次に、基板1を上記温度に保った状態でカソード加熱用
ヒーター62に通電してカソード61を加熱し、熱電子
放出の状態とする。そして、スイッチ64を閉じると、
水晶基板1上の金属薄膜51はカソード61に対して正
電位となるため電流が流れ、薄膜51部分は急激に加熱
されて膨張し、第5の実施形態に記載したのと同様なメ
カニズムによりX軸反転が起こる。一方、薄膜51下以
外の部分には薄膜による応力が加わらないため、軸反転
が生じる条件に達せず、電気軸方向は元の状態を保った
ままとなる。
【0058】ここで、本実施形態の方法における具体的
な条件の一例を挙げると、水晶基板として幅8.5m
m、長さ9.2mm、厚さ0.16mmのATカット
板、金属薄膜として幅1.0mm、長さ8.0mm、厚
さ250nmのクロム膜を用いる(第5の実施形態と同
一)こととし、真空容器内雰囲気は5×10-5Torr
(0.005Pa)、電子線照射時の基板温度は520
℃、電力は195V(加速電圧)×0.1mA=19.
5mW(2.4mW/mm2 )、電子線照射時間は約5
秒、である。
【0059】(第7の実施形態)次に、さらに他の軸反
転部の形成方法を説明する。本実施形態の方法は、水晶
基板上の金属薄膜に高電圧を印加することによってその
下の水晶基板に応力を付与する方法である。
【0060】図15は本実施形態における軸反転部の形
成方法を示す図であり、図中符号1は水晶基板、51は
金属薄膜(導電性薄膜)、52は基板ホルダー、53
a,53bはリード線、54は加熱用ヒーター、55は
真空容器、71は電圧印加用の電極、72は高電圧電
源、73はスイッチ、である。なお、電極71は、基板
ホルダー52の表面に設けてもよいし、水晶基板1の裏
面に設けてもよい。
【0061】この図に示すように、本実施形態では、ス
イッチ73を閉じると水晶基板1に高電圧が印加される
構成となっている。第5、第6の実施形態と同様の基板
1を準備し、500〜520℃程度まで加熱する。次
に、基板1を上記温度に保った状態でスイッチ73を閉
じると、金属薄膜51と電極71の間に介在する水晶基
板1に高電圧が印加され、強い電界がかかるため、基板
1の圧電性によって応力が加わる。そして、この応力の
大きさが軸反転に必要な応力値を越えると電気軸の反転
が起こる。一方、水晶基板1のうち薄膜51下以外の部
分には高電界による応力が加わらないため、軸反転が生
じる条件に達せず、電気軸方向は元の状態を保ったまま
となる。なお、軸反転に要する応力105〜106N/m
2 を得るためにはATカット板で5000〜10000
V/cm程度の電界を要するので、200μm厚の基板
で数100Vの電源を用いればよい。
【0062】本実施形態の場合、金属薄膜51の直下部
分にのみ高電界が加わるので、任意の膜形状に適用で
き、膜形状に対応した軸反転部を形成することができ
る。
【0063】上記第5〜第7の実施形態による軸反転部
形成方法を用いた場合、薄膜を形成した基板全体を単に
加熱する第1の実施形態の方法と異なり、水晶基板のう
ち、薄膜直下の極めて局所的な領域に対して薄膜から熱
が加えられる作用と薄膜の膨張による応力が付与される
作用の双方によって、より低い温度で軸反転を生じさせ
ることができる。例えば、水晶のα・β転移温度が57
3℃であるのに対して第1の実施形態では基板温度を5
50〜560℃としたが、これら実施形態の方法では5
00〜520℃というように加熱温度を低下させること
が可能となる。また、これらの方法を用いた場合、薄膜
直下に局所的に熱や応力が加えられる作用があるため
に、軸反転部を形成したい位置に薄膜を形成しさえすれ
ば、軸反転部を形成する位置や形状をより確実にコント
ロールすることができる。
【0064】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明の請求項1記
載の水晶振動子によれば、水晶基板の両面に励振用の電
極部をそれぞれ形成して該電極部に挟まれた領域を励振
部とした水晶振動子において、前記水晶基板内の前記励
振部と異なる位置に、該励振部の電気軸と反対方向の電
気軸を有する軸反転部を形成したので、前記励振部から
の振動エネルギーの一部を該軸反転部に漏洩させて励振
部の温度補償を行うことができ、周囲温度が変動する場
合においても、比較的簡単な温度補償回路で安定した共
振周波数やフィルタ周波数を得ることができる。
【0065】したがって、従来の水晶発振器(TCX
O)等において必要とされた、温度補償回路を構成する
電子部品や水晶発振器の回路の調整が不要となり、取り
扱いが簡単で安価な水晶発振器やフィルタを得ることが
できる。また、この水晶振動子を携帯型無線通信機に用
いれば、使用部品が少ないために実装容積が小さくな
り、また、電池消費量が減少することにより長時間使用
が可能になる等の優れた効果を奏することができる。
【0066】請求項2記載の水晶振動子によれば、前記
軸反転部を、前記励振部の片側または両側に近接して形
成したので、該励振部からの振動エネルギーの一部を該
軸反転部に漏洩させて励振部の温度補償をより確実に行
うことができる。
【0067】請求項3記載の水晶振動子によれば、前記
軸反転部を、前記励振部の周囲に形成したので、該励振
部からの振動エネルギーの一部を該軸反転部に漏洩させ
て励振部の温度補償をより確実に行うことができる。
【0068】請求項4記載の水晶振動子によれば、前記
軸反転部に励振用の電極部を形成して温度センサ部とし
たので、前記軸反転部が略直線状の温度係数を有する温
度センサとなり、したがって、この振動子を従来の水晶
発振器(TCXO)に応用すれば、水晶基板の温度情報
を直接得ることができ、高精度の温度補償を行うことが
できる。
【0069】請求項5記載の水晶振動子の製造方法によ
れば、水晶基板の両面に励振用の電極部をそれぞれ形成
して該電極部に挟まれた領域を励振部とする水晶振動子
の製造方法において、前記水晶基板の表面の前記電極部
の片側または両側に、金属膜を形成し、次いで、この水
晶基板を、水晶のα・β転移温度以下の温度で熱処理
し、該水晶基板内に、前記励振部の電気軸と反対方向の
電気軸を有する軸反転部を形成するので、周囲温度の変
動に対して安定した共振周波数やフィルタ周波数が得ら
れる水晶振動子を製造することができる。
【0070】請求項6記載の水晶振動子の製造方法によ
れば、前記金属膜をCr膜、Ni膜またはNiCr膜の
いずれかとしたので、水晶基板内部にα・β転移温度よ
りはるかに低い温度(540〜550℃)で電気軸の反
転を起こすことができる。
【0071】請求項7記載の水晶振動子の製造方法によ
れば、前記熱処理を、不活性雰囲気または真空のいずれ
かの雰囲気中で行うので、金属膜の酸化を防止すること
ができ、したがって、該金属膜の応力が低下するおそれ
がなくなり、水晶基板内部における軸反転部の形成をよ
り確実に行うことができる。
【0072】請求項8〜10記載の水晶振動子の製造方
法によれば、外部からの電気的な手段を用いて水晶基板
の内の膜形成部に対して応力を付与することができるた
め、軸反転部を効率良く形成することができ、軸反転部
を形成する位置や形状をより確実にコントロールするこ
とができる。
【0073】請求項11記載の水晶振動子の製造方法に
よれば、前記薄膜をCr膜、Ni膜またはNiCr膜の
いずれかとしたので、水晶基板内部にα・β転移温度よ
りはるかに低い温度(500〜520℃)で電気軸の反
転を起こすことができる。
【0074】請求項12記載の水晶振動子の製造方法に
よれば、前記加熱を、不活性雰囲気または真空のいずれ
かの雰囲気中で行うので、金属膜の酸化を防止すること
ができ、したがって、該金属膜の応力が低下するおそれ
がなくなり、水晶基板内部における軸反転部の形成をよ
り確実に行うことができる。
【0075】以上により、周囲温度が変動する場合にお
いても、比較的簡単な温度補償回路で安定した共振周波
数やフィルタ周波数が得られ、さらに取り扱いが簡単で
複雑な調整作業等もいらず、しかも低価格化が図れる水
晶振動子およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態の水晶振動子を示す
図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のI−I線
に沿う断面図である。
【図2】 本発明の第1の実施形態の水晶振動子の共振
周波数−温度特性を示す図である。
【図3】 本発明の第1の実施形態の水晶振動子の製造
方法を示す過程図である。
【図4】 軸反転の膜厚依存性を示す図である。
【図5】 金属薄膜付き水晶基板の熱処理前後の共振特
性を示す図である。
【図6】 金属薄膜付き水晶基板の形状を示す断面図で
ある。
【図7】 本発明の第2の実施形態の水晶振動子を示す
図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のII−I
I線に沿う断面図である。
【図8】 本発明の第3の実施形態の水晶振動子を示す
図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のIII−
III線に沿う断面図である。
【図9】 本発明の第4の実施形態の温度センサ付き水
晶振動子を示す斜視図である。
【図10】 本発明の第4の実施形態の温度センサ付き
水晶振動子の共振周波数−温度特性を示す図である。
【図11】 本発明の第5の実施形態における軸反転部
の形成方法を説明するための図である。
【図12】 結晶板の切断方位と結晶軸との関係を示
し、(a)通常のATカット板、(b)X軸反転部分、
をそれぞれ示す図である。
【図13】 同、実施形態に基づく実験中の各時点での
共振周波数の変化の様子を示すものであり、(a)は室
温時、(b)は520℃加熱時、(c)は電流遮断直
後、(d)は室温に戻した時、を示す図である。
【図14】 本発明の第6の実施形態における軸反転部
の形成方法を説明するための図である。
【図15】 本発明の第7の実施形態における軸反転部
の形成方法を説明するための図である。
【図16】 従来の水晶振動子を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ATカットの水晶基板 2,3 励振用の電極 4 励振部 11,12 軸反転部 21,22 金属薄膜 25 Cr膜(金属膜) 26 Al膜(金属膜) 31,32 励振用の電極 33 励振部 34 軸反転部 41 軸反転部 42,43 励振用の電極 44 非反転部の振動子 45 反転部の振動子 51 金属薄膜(導電性薄膜) 52 基板ホルダー 53a,53b リード線 54 加熱用ヒーター 55 真空容器 56 電源 57,64,73 スイッチ 61 カソード 62 カソード加熱用ヒーター 63 直流電圧源 71 電圧印加用の電極 72 高電圧電源 W 電極の幅 L 電極の長さ d 励振部と軸反転部との間隔 s 軸反転部の長さ f 長さ方向の振動変位の振幅分布 A 水晶振動子の最適な特性 B ATカット水晶振動子の特性 C 反転処理した水晶振動子の特性 D 温度補償の原理確認実験結果 E 非反転部の特性 F 反転部の特性 X 電気軸 −X 反対方向の電気軸

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水晶基板の両面に励振用の電極部をそれ
    ぞれ形成して該電極部に挟まれた領域を励振部とした水
    晶振動子において、 前記水晶基板内の前記励振部と異なる位置に、該励振部
    の電気軸と反対方向の電気軸を有する軸反転部を形成し
    たことを特徴とする水晶振動子。
  2. 【請求項2】 前記軸反転部を、前記励振部の片側また
    は両側に近接して形成したことを特徴とする請求項1記
    載の水晶振動子。
  3. 【請求項3】 前記軸反転部を、前記励振部の周囲に形
    成したことを特徴とする請求項1記載の水晶振動子。
  4. 【請求項4】 前記軸反転部に励振用の電極部を形成し
    て温度センサ部としたことを特徴とする請求項1,2ま
    たは3記載の水晶振動子。
  5. 【請求項5】 水晶基板の両面に励振用の電極部をそれ
    ぞれ形成して該電極部に挟まれた領域を励振部とする水
    晶振動子の製造方法において、 前記水晶基板の表面の前記電極部の片側または両側に、
    金属膜を形成し、 次いで、この水晶基板を、水晶のα・β転移温度以下の
    温度で熱処理し、該水晶基板内に、前記励振部の電気軸
    と反対方向の電気軸を有する軸反転部を形成することを
    特徴とする水晶振動子の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記金属膜は、Cr膜、Ni膜またはN
    iCr膜のいずれかであることを特徴とする請求項5記
    載の水晶振動子の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記熱処理は、不活性雰囲気または真空
    のいずれかの雰囲気中で行うことを特徴とする請求項5
    または6記載の水晶振動子の製造方法。
  8. 【請求項8】 水晶基板の両面に励振用の電極部をそれ
    ぞれ形成して該電極部に挟まれた領域を励振部とする水
    晶振動子の製造方法において、 前記水晶基板の表面に導電性を有する材料からなる薄膜
    を形成し、 次いで、前記薄膜を形成した水晶基板を加熱した後、加
    熱状態で前記薄膜に電流を流すことによって、前記水晶
    基板の薄膜下方にあたる部分に軸反転に必要な応力を付
    与し、前記励振部の電気軸と反対方向の電気軸を有する
    軸反転部を形成することを特徴とする水晶振動子の製造
    方法。
  9. 【請求項9】 水晶基板の両面に励振用の電極部をそれ
    ぞれ形成して該電極部に挟まれた領域を励振部とする水
    晶振動子の製造方法において、 前記水晶基板の表面に導電性を有する材料からなる薄膜
    を形成し、 次いで、前記薄膜を形成した水晶基板を加熱した後、加
    熱状態で前記薄膜に電子線を照射することによって、前
    記水晶基板の薄膜下方にあたる部分に軸反転に必要な応
    力を付与し、前記励振部の電気軸と反対方向の電気軸を
    有する軸反転部を形成することを特徴とする水晶振動子
    の製造方法。
  10. 【請求項10】 水晶基板の両面に励振用の電極部をそ
    れぞれ形成して該電極部に挟まれた領域を励振部とする
    水晶振動子の製造方法において、 前記水晶基板の表面に導電性を有する材料からなる薄膜
    を形成し、 次いで、前記薄膜を形成した水晶基板を加熱した後、加
    熱状態で前記薄膜を通して前記水晶基板内に高電界を印
    加することによって、前記水晶基板の薄膜下方にあたる
    部分に軸反転に必要な応力を付与し、前記励振部の電気
    軸と反対方向の電気軸を有する軸反転部を形成すること
    を特徴とする水晶振動子の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記薄膜は、Cr膜、Ni膜またはN
    iCr膜のいずれかであることを特徴とする請求項8,
    9または10記載の水晶振動子の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記加熱は、不活性雰囲気あるいは真
    空のいずれかの雰囲気中で行うことを特徴とする請求項
    8,9,10または11記載の水晶振動子の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010258491A (ja) * 2009-04-21 2010-11-11 Fujitsu Ltd 温度補償型水晶発振器、温度補償型水晶発振器を実装したプリント基板、及び温度補償型水晶発振器を搭載した電子機器

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