JPH1060618A - 溶射皮膜の形成方法、その方法を用いて形成した溶射皮膜および溶射材料粉末 - Google Patents

溶射皮膜の形成方法、その方法を用いて形成した溶射皮膜および溶射材料粉末

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JPH1060618A
JPH1060618A JP8217608A JP21760896A JPH1060618A JP H1060618 A JPH1060618 A JP H1060618A JP 8217608 A JP8217608 A JP 8217608A JP 21760896 A JP21760896 A JP 21760896A JP H1060618 A JPH1060618 A JP H1060618A
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thermal
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JP8217608A
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Shoichi Ikeda
正一 池田
Hiroyuki Takeda
裕之 武田
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガスフレーム溶射を用いて、Crまたは/お
よびSiを含有するNi基合金の酸化物含有量の少ない
溶射皮膜の形成方法、その形成方法を用いた溶射皮膜お
よび溶射材料粉末を提供する。 【解決手段】 Crまたは/およびSiを含有するNi
基合金粉末を、Crまたは/およびSiを含有するNi
基合金粉末を、ガスフレーム溶射を用いて、基板に溶射
皮膜を形成するにあたり、Crまたは/およびSiを含
有するNi基合金の溶射皮膜の酸化物量mOx(質量
%)を次式により調整する。 mOx=1.61×m×exp(−rmin /(5.8+0.27×m)) .... m=mCr+1.5×mSi .... ここで、rmin はNi基合金粉末の最小粒径(μm)、
CrはNi基合金粉末のCr量(質量%)、mSiはNi
基合金粉末のSi量(質量%)である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Crまたは/およ
びSiを含有するNi基合金溶射皮膜の形成方法、その
方法を用いて形成したNi基合金の溶射皮膜およびNi
基合金の溶射材料粉末に関するものである。特に、ガス
フレーム溶射を用いたCrまたは/およびSiを含有す
るNi基合金の酸化物含有量の少ない溶射皮膜の形成方
法、その方法を用いて形成したNi基合金の溶射皮膜お
よびNi基合金の溶射材料粉末に関するものである。ま
た、特に、Crまたは/およびSiを含有するNi基合
金は自溶合金およびNiろうに適用されるものである。
【0002】
【従来の技術】溶射は各種素材の表面改質技術として、
産業上の多くの分野に利用されている。耐摩耗性、耐熱
性、耐食性などの性質を有する溶射皮膜は機械、金属、
化学、電気等の広い分野の諸工業に利用され、近年では
溶射皮膜を利用したろう付け分野にまでその利用分野は
広がりを見せている(特開昭62−230474号公
報、特開平3−161167号公報参照)。特に、Cr
または/およびSiを含有するNi基合金の溶射皮膜は
耐摩耗性、耐熱性、耐食性に優れるため、多くの分野で
利用されている。Crまたは/およびSiを含有するN
i基合金として、自溶合金(JIS H8303等)、
Niろう(JIS Z3265等)が使用されている。
自溶合金は素材表面の耐摩耗性、耐熱性および耐食性を
改善する溶射材料である。また、Niろうは耐熱性を要
求される熱交換器用部材(コンデンサ、ラジエーター)
等のろう付に使用される。なお、自溶合金は素材の表面
改質だけでなく、ろう付け分野に用いられる。また、N
iろうは素材の表面改質に用いられる可能性がある。
【0003】溶射は、溶融あるいは半溶融状態に加熱し
た溶射材料粉末を基板表面に吹きつけて溶射皮膜等を形
成するものである。この溶射方法として、ガスフレーム
溶射とプラズマ溶射等がある。ガスフレーム溶射は、溶
射材料粉末を可燃ガス燃焼炎の流れにのせて、加熱しつ
つ基板表面に吹きつけるものである。通常、Crまたは
/およびSiを含有するNi基合金粉の溶射では、約1
800〜3100Kの温度範囲の燃焼炎が用いられる。
このガスフレーム溶射は操作が簡単で、設備費、運転費
が低廉であるので、最も普及している。
【0004】一方、プラズマ溶射は、溶射材料粉末を超
高温のプラズマジェットの流れにのせて、加熱しつつ基
板表面に吹きつけるものである。このプラズマジェット
は、陰極と陽極ノズルの間で発生させた直流アークによ
って、作動ガス(Arガス、N2 ガス、H2 ガス、Ar
−N2 混合ガス、H2 −He混合ガス等)を、超高温
(数1000から10000K)に加熱して、ノズルか
ら放出する。このプラズマ溶射は、高融点のセラミック
スから、金属、プラスチックスまで溶射でき、不活性雰
囲気あるいは減圧雰囲気の溶射が可能である。しかし、
作業中に騒音と強い光を発すること、運転費や設備費が
高いことなどの短所がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】溶射材料粉末を溶射す
る場合、粉末粒子の加熱中に溶射雰囲気と反応して、粉
末粒子の酸化が生じる場合がある。CrやSiを含有す
るNi基合金の溶射粉末ではCr、Siが優先的に酸化
される。酸化により溶射皮膜のCrやSiが消費され、
溶射皮膜(自溶合金、Niろう等)の耐摩耗性、密着性
や強度等が低下する問題がある。さらに、溶射皮膜(自
溶合金、Niろう等)を利用したろう付けでは、溶射皮
膜へ巻き込んだ酸化物が起点となり十分な延性、接合強
度が得られない問題が生じる。
【0006】溶射中の溶射材料粉末の酸化防止には、不
活性雰囲気あるいは減圧雰囲気で溶射できるプラズマ溶
射が有効である。しかしながら、プラズマ溶射は前述し
たように、溶射コストが高いことや多大な設備を要し、
さらに基板の形状や大きさの制約を生じる場合がある。
【0007】一方、ガスフレーム溶射は、溶射コストが
低く、設備費が安く、基板の形状や大きさの制約が少な
い。しかしながら、ガスフレーム溶射は可燃ガス燃焼炎
中に酸素を含むため、溶射中に溶射材料粉末の酸化防止
は困難であり、さらに、プラズマ溶射のように不活性雰
囲気あるいは減圧雰囲気に制御することはできない。
【0008】そこで本発明は、溶射コストが低く、設備
費が安く、基板の形状や大きさの制約の少ないガスフレ
ーム溶射を用いて、Crまたは/およびSiを含有する
Ni基合金の酸化物含有量の少ない溶射皮膜の形成方
法、その形成方法を用いた溶射皮膜および溶射材料粉末
を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前述した
目的を達成するために、ガスフレーム溶射によるCrま
たは/およびSiを含有するNi基合金の溶射皮膜の形
成方法およびその溶射皮膜について鋭意研究を行った。
この結果、Crまたは/およびSiを含有するNi基合
金の溶射材料粉末をガスフレーム溶射によって基板に溶
射して溶射皮膜を形成するにあたり、溶射皮膜の酸化物
量の増加は溶射材料粉末中の微粉の酸化が大きな影響を
与えることを見い出した。すなわち、溶射中に可燃ガス
燃焼炎で加熱される溶射材料粉末は、微粉ほど熱容量が
小さいので温度上昇が速く、必要以上の温度に加熱され
酸化が促進される。溶射材料粉末内の最小粒径を制御
(酸化が促進される微粉を除去)することにより、溶射
皮膜の酸化物量を調整することができるという知見を得
た。さらに、前記最小粒径は、粉末の組成、特に酸化さ
れやすいCr、Si量に依存しているという知見を得て
本発明を完成した。なお、最小粒径は、溶射材料粉末の
微粉側粉末を除去したときの前記溶射材料粉末の内一番
小さい粒径を示す。
【0010】本発明のうちで請求項1記載の発明は、C
rまたは/およびSiを含有するNi基合金粉末を、ガ
スフレーム溶射を用いて、基板に溶射皮膜を形成するに
あたり、Crまたは/およびSiを含有するNi基合金
の溶射皮膜の酸化物量mOx(質量%:以下、単に%で
示す)を次式により調整することを特徴とするものであ
る。 mOx=1.61×m×exp(−rmin /(5.8+0.27×m)) .... m=mCr+1.5×mSi .... ここで、rmin はNi基合金粉末の最小粒径(μm)、
CrはNi基合金粉末のCr量(%)、mSiはNi基合
金粉末のSi量(%)である。式と式を用いて、C
rまたはSiのいずれか一方、またはCrおよびとSi
の両方を含有するNi基合金粉末を調整することによっ
て、前記Ni基合金の溶射皮膜の酸化物量を所定の酸化
物量に調整できる。
【0011】Crまたは/およびSiを含有するNi基
合金の溶射皮膜の酸化物量を調整する式と式を導い
た過程を説明する。Crまたは/およびSiを含有する
Ni基合金粉末のCr量mCrを6.9〜19.5%、S
i量mSiを4.4〜10.5%の範囲で変化させた。さ
らに、ガスフレーム溶射に用いられる粉末の粒度を有す
るNi基合金粉末中の最小粒径rmin を11〜90μm
の範囲に変化させた。このNi基合金粉末をガスフレー
ム溶射を用いて、基板に溶射皮膜を形成した。この溶射
皮膜の酸化物量mOxを測定し、数値解析により、式
を求めたものである。このとき、Ni基合金粉末の最小
粒径rmin とm(式)の2つのパラメータを用いて、
式を見い出した。m(=mCr+1.5×mSi)は、ス
テンレス鋼の組織予測に用いられるシェフラー(Scheaf
fler)の組織図のCr当量(=%Cr+%Mo+1.5
%Si+0.5%Nb)を用いた。このCr当量を用い
たところ、良い相関が得られた。なお、式の各定数、
(1):1.61、(2):5.8、(3):0.27は溶射条
件や測定精度等により、それぞれ、(1):1.61±
0.09、(2):5.8±0.3、(3):0.27±0.
02の範囲である。
【0012】本発明に用いられるNi基溶射材料粉末
は、従来の耐摩耗性に優れた溶射皮膜を形成するNi基
溶射粉末材料と同様に、CrまたはSiの内の少なくと
も一方を含むものであり、その量はCr:0〜20%、
Si:0〜10.5%である。優れた耐摩耗性、耐熱性
を持つ溶射皮膜を得るために、Cr量は6.0〜20%
の範囲で、Si量は1.5〜10.5%の範囲であるこ
とが好ましい。Cr量が20%を越えると溶射皮膜の靱
性が低下する。また、Si量についても、10.5%を
越えると溶射皮膜の靱性が低下する。
【0013】また、本発明に用いられるNi基溶射材料
粉末は、従来の耐摩耗性、耐熱性に優れた溶射皮膜を形
成するNi基溶射粉末材料と同様に、C、B、Feを添
加できる。CはCrと化合して炭化物を形成し耐摩耗性
を向上させるものである。Bは溶射皮膜の耐熱性の向
上、ぬれ性を改善し、さらに、Crと化合物を形成し耐
摩耗性を向上させるものである。
【0014】さらに、本発明において使用する溶射材料
粉末はCrまたは/およびSiを含有するNi基合金成
分の粉末であれば特に制限を受けるものではない。代表
的なCrまたは/およびSiを含有するNi基合金成分
を表1に、非限定的に例示する。これらのNi基合金に
含まれている他の成分(Co、Mo、Cu、W、P等)
を、本発明において使用する溶射材料粉末に含んでもよ
い。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】本発明に用いられるNi基溶射材料粉末の
粒度は、図3に示すような、従来の溶射材料粉末と同様
の粒度を有するものであればよい。例えば、溶射材料粉
末の平均粒子径は50〜100μmの範囲にあり、最大
粒子径は120〜180μmの範囲にあればよい。ま
た、溶射材料粉末中のCr、Si量に対して式と式
を用いることにより、含有される酸化物量が少ない溶射
皮膜を得ることができる。
【0018】本発明において用いるガスフレーム溶射
は、酸素と、可燃ガスとの燃焼炎を熱源とする溶射方法
である。用いる可燃ガスを非限定的に例示すると、アセ
チレン、ブタン、プロパン、水素、石炭ガス等が挙げら
れる。
【0019】また請求項2記載の発明は、Crまたは/
およびSiを含有するNi基合金溶射皮膜の酸化物量m
Oxが1%以下になるように、請求項1記載の式と式
を用いて、Crまたは/およびSiを含有するNi基
合金粉末のCr量mCr、Si量mSiおよび最小粒径r
min を調整することを特徴とするものである。Crまた
は/およびSiを含有するNi基合金溶射皮膜の酸化物
量mOxを1%以下にすることによって、前記溶射皮膜
の耐摩耗性をさらに改善でき、また溶射皮膜と基板との
密着強度を改善できる。
【0020】また請求項3記載の発明は、請求項1また
は2記載のCrまたは/およびSiを含有するNi基合
金が、自溶合金であることを特徴とするものである。耐
摩耗性、耐熱性および耐食性に優れる自溶合金の溶射皮
膜の耐摩耗性をさらに改善できる。
【0021】また請求項4記載の発明は、請求項1また
は2記載のCrまたは/およびSiを含有するNi基合
金が、ろう材であることを特徴とするものである。溶射
皮膜用材料にろう材を用いるものである。る面倒な置き
ろう付け作業が、例えば、ブレージングシートによる簡
便なろう付け作業に変えることができる。なお、請求項
3記載の発明の溶射皮膜もろう付けに用いることができ
る。
【0022】また請求項5記載の発明は、請求項2乃至
4記載のいずれかの方法を用いて形成した溶射皮膜であ
ることを特徴とするものである。請求項2乃至4記載の
いずれかの方法を用いて形成した溶射皮膜は耐摩耗性、
および溶射皮膜と基板との密着強度にすぐれる。
【0023】また請求項6記載の発明は、Crまたは/
およびSiを含有するNi基合金粉末であって、最小粒
径rmin が次式を満足することを特徴とするガスフレー
ム溶射用の溶射材料粉末である。 rmin >−(5.8+0.27×m)×ln(0.62/m) .... m=mCr+1.5×mSi .... 本発明の溶射材料粉末をガスフレーム溶射に用いること
により、酸化物量が少ない溶射皮膜を得ることができ
る。この結果、耐摩耗性、および溶射皮膜と基板との密
着強度にすぐれた溶射皮膜を得ることができる。
【0024】本発明に用いられるNi基溶射材料粉末
は、従来の耐摩耗性に優れた溶射皮膜を形成するNi基
溶射粉末材料と同様に、CrまたはSiの内の少なくと
も一方を含むものであり、その量はCr:0〜20%、
Si:0〜10.5%である。優れた耐摩耗性、耐熱性
を持つ溶射皮膜を得るために、Cr量は6.0〜20%
の範囲で、Si量は1.5〜10.5%の範囲でにある
ことが好ましい。さらに、前述の非限定的に例示した表
1のCrまたは/およびSiを含有するNi基合金の粉
末も用いることができる。これらのNi基合金に含まれ
ている他の成分(C、B、Fe、Co、Mo、Cu、
W、P等)も、本発明において使用する溶射材料粉末に
含んでもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明の実施例を、図示例ととも
に説明する。図1は、本発明における実施例および比較
例に係る接合方法を示す模式図であり、図2は、本発明
における別の実施例および比較例に係る接合方法を示す
模式図である。
【0026】本実施例における粉末の最小粒径の制御方
法はふるい分級法により行った。使用したふるいの目開
きは16〜90μmの範囲のものを選んで用いた。ま
た、粉末の最小粒径を制御する方法は、他に流体(気
体、液体)に対する粒子の抵抗作用を利用する力学的な
分級法があり、本実施例のふるい分級法に限定されるも
のではない。なお、このふるい分級時に、ふるいの目開
き以下の小粒径の粉末を完全に除去することが困難な場
合がある。残留する小粒径の粉末の量を極力少なくする
必要があり、残留する小粒径の粉末の量を溶射する粉末
の5%未満にすることが好ましい。残留する小粒径の粉
末の量が5%未満では皮膜全体の性能に与える影響は小
さい。
【0027】(実施例1)溶射材料粉末として、Ni基
自溶合金JIS MSFNi3(Ni−14.2%Cr
−3.8%Si−3.9%Fe−2.5%B−0.6%
C)粉末を用いた。この粉末の粒度は16〜176μm
である。この粉末をふるい分けにより、最小粒径を16
〜90μmに調整した。これら最小粒径を調整した粉末
を用いて、酸素−アセチレン混合ガス(酸素流量:2.
70m3 /h、アセチレン流量:1.70m3 /h)を
用いたガスフレーム溶射により、溶射皮膜1を軟鋼基板
2上に形成した(図1参照)。その後、酸素−アセチレ
ンの燃焼ガスにより前記溶射皮膜1を加熱・再溶融させ
ることにより、前記溶射皮膜1のフュージングを行っ
た。なお、フュージングとは溶射皮膜を再溶融させるこ
とにより、溶射皮膜中に内在する空孔の消滅、基材への
皮膜の融着を確実に行うものである。
【0028】溶射後の溶射皮膜の酸化物量をBr2 −メ
タノール分解法により測定した。また、フュージング後
の溶射皮膜を切断し、溶射皮膜断面のビッカース硬度
(荷重9.8N)を測定した。さらに同じ方法で作製し
た溶射皮膜を用いて両輪駆動摩耗試験(乾式、試験荷重
980N)を行い耐摩耗性を評価した。これらの結果を
表3に示す。
【0029】
【表3】
【0030】表3の示すように、溶射材料粉末中の最小
粒径が小さいほど、溶射皮膜の酸化物量が多くなってい
る。さらに、最小粒径が16〜63μmの間で、溶射皮
膜の酸化物量と式より求めた酸化物量mOxと優れた
相関が認められた。本発明の実施例は、溶射皮膜の酸化
物量を1%以下になるように、すなわち式の酸化物量
mOxが1%になるように、溶射材料粉末中のCr量、
Si量を考慮して溶射材料粉末中最小粒径を調整した粉
末を用いて溶射した。本発明の実施例の場合は、ビッカ
ース硬度が700以上の溶射皮膜が得られ、高い耐摩耗
性の溶射皮膜が得られた。ここで、耐摩耗性の評価は1
mg摩耗するときの回転数で表しており、数値が高いほ
ど耐摩耗性に優れることを示す。
【0031】一方比較例に示すように、溶射皮膜の酸化
物量を1%を越えると、溶射皮膜の硬度および耐摩耗性
は、本発明の実施例に比べ著しく低下した。比較例に用
いた溶射材料粉末中の最小粒径は、式の酸化物量mO
xが1%を越える条件となっている。溶射皮膜の硬度お
よび耐摩耗性の低下は、Cr、Siの酸化により溶射皮
膜中のCrおよびSi量が減少したことに起因する。
【0032】(実施例2)溶射材料粉末として、Ni基
自溶合金(Ni−10.0%Cr−4.0%Si−4.
0%Fe−1.5%B)粉末を用いた。この粉末の粒度
は16〜175μmである。この粉末をふるい分けによ
り、最小粒径を16〜90μmに調整した。これら最小
粒径を調整した粉末を用いて、酸素−アセチレン混合ガ
ス(酸素流量:2.70m3 /h、アセチレン流量:
1.70m3 /h)を用いたガスフレーム溶射により溶
射皮膜1をSUS304基板2上に形成した(図1参
照)。そして実施例1と同様に、酸素−アセチレン混合
ガスのフレームを用いてフュージングを行った。
【0033】溶射後の溶射皮膜の酸化物量を実施例1と
同様の方法で測定した。その後、研摩試験を行った。研
摩試験は荷重:167N/cm2 、摩擦速度:8m/s
ecでエメリー布(粒度400#)に1分間押しつけて
摩耗させ、その摩耗量を測定した。これらの結果を表4
に示す。
【0034】
【表4】
【0035】表4に示すように、溶射皮膜の酸化物量と
式より求めた酸化物量mOxと相関が認められた。研
摩試験において、本発明の実施例(式の酸化物量mO
xが1%以下になる条件で溶射)では、比較例(式の
酸化物量mOxが1%を越える条件で溶射)の約半分の
摩耗量であり、優れた耐摩耗性を示した。
【0036】(実施例3)溶射材料粉末として、Niろ
う JIS BNi−2(Ni−6.9%Cr−4.4
%Si−3.0%Fe−3.1%B)粉末を用いた。こ
の粉末の粒度は11〜176μmである。この粉末をふ
るい分けにより、最小粒径を16〜90μmに調整し
た。これら最小粒径を調整した粉末を用いて、酸素−ア
セチレン混合ガス(酸素流量:2.70m3 /h、アセ
チレン流量:1.70m3 /h)を用いたガスフレーム
溶射により溶射皮膜4をSUS304基板5上に形成し
た(図2参照)。次に,図2に示すように、前記溶射皮
膜4を介して基板5をSUS304被接合材3と接触さ
せ、真空中で1175℃に加熱することにより前記溶射
皮膜4を溶融させて基板5と被接合材3とのろう付けを
行った。
【0037】溶射後の溶射皮膜の酸化物量を実施例1と
同様の方法で測定した。さらに、ろう付け後の接合材よ
り、接合部が中央のなるように、引張試験片(JIS
14A号試験片、平行部の直径6mm)を切り出した。
この試験片を用いて引張試験を行った。結果を表5に示
す。
【0038】
【表5】
【0039】表5に示すように、溶射後の溶射皮膜の酸
化物量と式より求めた酸化物量mOxと相関が認めら
れた。引張試験において、本発明の実施例(式の酸化
物量mOxが1%以下になる条件で溶射)では、接合部
に10%以上の伸びが認められ、引張強度も300MP
a以上であった。一方、比較例(式の酸化物量mOx
が1%を越える条件で溶射)では、ろう付け後の接合部
の強度が低く、伸びの低下が著じるしい。これは、ろう
付け後の接合部に酸化物が残留し、この酸化物が起点と
なり接合部での引張試験強度と伸びを低下させたもので
ある。
【0040】なお、本実施例では、自溶合金の溶射皮膜
は素材の表面改質に用い、Niろうの溶射皮膜はろう付
けに用いたが、本実施例に限定されることなく、自溶合
金溶射皮膜はろう付けに適用でき、Niろうの溶射皮膜
は素材の表面改質に適用できる。
【0041】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明は、溶射
コストが低く、設備費が安く、基板の形状や大きさの制
約の少ないガスフレーム溶射を用いて、Crまたは/お
よびSiを含有するNi基合金の酸化物含有量の少ない
溶射皮膜の形成方法、その形成方法を用いた溶射皮膜お
よび溶射材料粉末を提供することを可能とするものであ
る。
【0042】本発明のうち請求項1記載の発明は、ガス
フレーム溶射において、式と式により、Crまたは
/およびSiを含有するNi基合金粉末内の最小粒径と
Cr量とSi量を調整することにより、前記Ni基合金
の溶射皮膜の酸化物量を所定の酸化物量に調整すること
を可能とするものである。請求項2記載の発明は、請求
項1記載の発明の効果に加えて、Crまたは/およびS
iを含有するNi基合金溶射皮膜の耐摩耗性をさらに改
善でき、また溶射皮膜と基板との密着強度を改善するこ
とを可能とするものである。また請求項3記載の発明
は、摩耗性、耐熱性および耐食性に優れる自溶合金の溶
射皮膜の耐摩耗性をさらに改善することを可能とするも
のである。さらに、溶射皮膜をフュージングすることに
より、溶射皮膜中に内在する空孔の消滅および基材への
溶射皮膜の融着を促進することを可能とするものであ
る。また請求項4記載の発明は、粉末Niろうを使用す
る面倒な置ろう付け作業が、例えば、ブレージングシー
トによる簡便なろう付け作業に変えることを可能とする
ものである。なお、請求項3記載の発明の溶射皮膜もろ
う付けに用いることができ、前述の粉末Niろうと同様
の効果を有する。また請求項5記載の発明は、耐摩耗性
に優れ、溶射皮膜と基板との密着強度が高い、Crまた
は/およびSiを含有するNi基合金溶射皮膜を提供す
ること可能とするものである。また請求項6記載の発明
は、耐摩耗性、および溶射皮膜と基板との密着強度にす
ぐれた溶射皮膜を得ることができるガスフレーム溶射用
のCrまたは/およびSiを含有するNi基合金粉末を
提供することを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における実施例および比較例に係る接
合方法を示す模式図。
【図2】 本発明における別の実施例および比較例に係
る接合方法を示す模式図。
【図3】 従来の溶射材料粉末の粉末粒度を示す模式
図。
【符号の説明】
1 基板 2 溶射皮膜 3 SUS304被接合材 4 溶射皮膜 5 SUS304基板

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Crまたは/およびSiを含有するNi
    基合金粉末を、ガスフレーム溶射を用いて、基板に溶射
    皮膜を形成するにあたり、 Crまたは/およびSiを含有するNi基合金の溶射皮
    膜の酸化物量mOx(質量%)を次式により調整するこ
    とを特徴とする溶射皮膜の形成方法。 mOx=1.61×m×exp(−rmin /(5.8+0.27×m)) .... m=mCr+1.5×mSi .... ここで、mCr :Ni基合金粉末のCr量(質量%) mSi :Ni基合金粉末のSi量(質量%) rmin :Ni基合金粉末の最小粒径(μm)
  2. 【請求項2】 Crまたは/およびSiを含有するNi
    基合金溶射皮膜の酸化物量mOxが1質量%以下になる
    ように、請求項1記載の式と式を用いて、Crまた
    は/およびSiを含有するNi基合金粉末のCr量
    Cr、Si量mSiおよび最小粒径rmin を調整すること
    を特徴とする溶射皮膜の形成方法。
  3. 【請求項3】 前記Crまたは/およびSiを含有する
    Ni基合金が自溶合金である請求項1または2記載の溶
    射皮膜の形成方法。
  4. 【請求項4】 前記Crまたは/およびSiを含有する
    Ni基合金がろう材である請求項1または2記載の溶射
    皮膜の形成方法。
  5. 【請求項5】 請求項2乃至4記載のいずれかの方法を
    用いて形成した溶射皮膜。
  6. 【請求項6】 Crまたは/およびSiを含有するNi
    基合金粉末であって、最小粒径rmin が次式を満足する
    ことを特徴とするガスフレーム溶射用の溶射材料粉末。 rmin >−(5.8+0.27×m)×ln(0.62/m) .... m=mCr+1.5×mSi ....
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