【発明の詳細な説明】
菌類セルラーゼ
発明の技術的分野
本発明は新規な酵素に関する。特に、本発明は新規な菌類セルラーゼ及び該セ
ルラーゼをコードするDNA を得る方法に関するものである。
発明の背景
食品及び飼料産業において、グルカナーゼに大いなる関心がもたれている。こ
の酵素は、例えば、植物細胞壁物質の融解を行うフルーツジュース産業で、その
応用が見られる(継続中の欧州特許出願第94202442.3号)。また、これらは、膜の
汚れを減少させる処理補助手段として役立てることができる。飼料工業において
、各種の穀物の粘着性を低下させる際のβ−グルカナーゼの役割は十分に確立さ
れている。食品及び飼料の領域で使用される多くの酵素配合物はアスペルギルス
種、通常はアスペルギルスニガーから誘導される。これは、穏やかな温度及び中
性から酸性pHで用いるのに適した特性を有する、例えば、ペクチナーゼやヘミセ
ルラーゼのような多くの酵素類を製造する、安全な宿主である。ペクチナーゼ及
びヘミセルラーゼとは対照的に、通常セルラーゼは、トリコデルマ(Trichoderma
)から誘導される。レエセイ(reesei)、ビリデ(viride)又はロンギブラチアツム(
longibrachiatum)のようなトリコデルマは、セルロース分解酵素の良い生産者で
ある。しかし、トリコデルマ酵素は規則で規制されているため何処でも使用でき
るわけではない。そのためアスペルギルス酵素の良質な供給源はかなりの経済的
な価値を有することになるであろう。しかし、現在まで、誘導されたDNA により
、関心が持たれている酵素に対する、酵素精製、部分的なアミノ酸配列決定、遺
伝子又はcDNAの単離などを含む従来の方法を用い、A.ニガーからグルカナーゼ
をコードする遺伝子をクローニングすることは、可能となってはいない。
要約
本発明は、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、対応するDNA 配列、ベクタ
ー、形質転換された宿主、及びアスペルギルスニガー変種(Aspergillus niger
Var.)、ニガー又はアスペルギルスニガー変種ツビゲンシス(Aspergillus niger
Var.tubigensis)から得ることができる、これらのポリペプチドの製造方法を
提供する。
図面の簡単な記載
図1は、アスペルギルスニガーセルラーゼの CMCアーゼ活性による粘度性低下
を示す。
図2は、アスペルギルスニガーセルラーゼのβ−グルカナーゼ活性による粘度
性の低下を示す。
詳細な説明
本発明は、新規な菌類セルラーゼ及びこれらの菌類セルラーゼをコードするDN
A を同定する方法に関するものである。
本発明の方法において、菌類セルラーゼを、菌類から得られるDNA で形質転換
された原核宿主細胞の形態のDNA ラリブラリーを用いる発現クローニングによっ
てクローン化する。宿主細胞のスクリーニングを、cDNAをプラスミドに挿入した
後に行う。原核宿主細胞としては、細菌細胞、特にE.coliが好ましい。
本願明細書において、用語「セルラーゼ」とは、カルボキシメチルセルロース
(CMC)及び/又はβ-1,3- グルカン及び/又は β-1,4グルカン及び/又はキシ
ログルカンを分解する酵素をいう。
これまでの方法に対し、本発明の方法は迅速で、直接的かつ有効である。驚く
ことに、多数のセルラーゼ陽性クローンが、従来の方法における105〜106よりも
、102〜104クローンをスクリーニングすることにより見出された(Dalbege & Hel
dt-Hansen(1994年)Mol.Gen.Genet.243: 253-260 頁)。
本発明の他の驚くべき利点は、ほとんどの従来のコロニースクリーニング法と
は対照的に、関心の対象となっている遺伝子産物を含み得るその内容物を放出さ
せるために、続いて、細菌コロニーを溶解させる必要がないということである。
本発明の発現クローニングは原核生物細胞において実施することができ、クロ
ーニング処理中の如何なる場合にも真核生物に遺伝物質を移す必要がないのであ
る。
前記cDNA ライブラリーは、関心がもたれている菌類のmRNAから調製される。
特に関心が持たれている菌類の例には、アスペルギルス属の菌類、特にアスペル
ギルスニガー変種ニガー又はA.ニガー変種ツビゲンシスがある。
cDNA の調製に用いられるmRNAは構成的に存在してもよく、またその発現を誘
導してもよい。本発明の方法は、かなりの割合のコロニーが関心の対象となって
いるセルラーゼを産生するほど効果的である。
前記ライブラリーをベクターに構築する。このベクターは、プラスミド及びフ
ァージベクターを含む、遺伝物質の移動及び/又は発現に適したいかなるベクタ
ーであってもよい。
好ましい実施態様において、該ライブラリーはファージベクター、好ましくは
ZAPTMベクター又はその誘導体、さらに好ましくはλUni-ZAPTMXRである。このよ
うにして得られた一次ライブラリーは、適当な宿主、好ましくはE.coli、さらに
好ましくはE.coli XLI Blue MRF を用いて増幅する。
次いで該ファージを、好ましくは単繊維状のヘルパーファージとE.coli SOLR
のようなE.coli 宿主菌株を用いた重複感染により、ファージミドミドに転換す
る。このようにして、二重鎖ファージミドを創り出す。ここで、用語「ファージ
ミド」とは、プラスミドに転換されたファージゲノムをいう。スクリーニングの
前に全てのプラークがファージミドに転換されるので、低mRNAレベルでセルラー
ゼ活性を示すクローンが誤って、活性が無いと拒絶されることがない。その結果
、プラーク段階でのスクリーニングが不必要であることが、熟練した名宛人にと
り明らかになるであろう。
本発明の同定方法においては、セルラーゼをコードするDNA を、タンパク質の
精製、アミノ酸配列の決定、遺伝子の分子クローニングといった長く退屈な仕事
を介して行うよりも、セルラーゼの発現、すなわちセルラーゼ活性をスクリーニ
ングすることによりクローン化する。
発現クローニングの技術に、プレートアッセイ法があり、この方法ではcDNAラ
イブラリーをセルラーゼ陽性コロニーをスクリーニングすることを可能にする組
成物の媒体上に展開する。セルラーゼのスクリーニングでは純粋なタンパク質を
必要とせず、ただ、セルラーゼ活性を検出する適当なアッセイ法が得られればよ
い。これは標準的なアッセイ法でよく、例えば、セルラーゼ活性を、カルボキシ
メチルセルロースを含む被覆紙を用い、続いてコンゴレッド(Congo Red)で染色
して視覚化することにより、検出することができる。しかし、タンパク質の発現
により、該タンパク質をコードするDNA の同定を可能にする他種のいかなるアッ
セイ法でも、本発明の方法に使用することができる。
それに代え、例えば、標準的なアッセイ法が得られない場合、タンパク質活性
の検出のために目的として目的に沿ったアッセイ法を開発してもよい。
セルラーゼに加えて、他の酵素を検出してもよい。例えば、アミラーゼ、アラ
ビノキシラン分解酵素、カタラーゼ、ガラクタナーゼ、リパーゼ、オキシダーゼ
、ペクチナーゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼ及びキシラナーゼがある。これ
らの酵素の活性を当該技術分野で公知の方法を用いて検出することができる。
また、本発明は、本発明のペプチド、すなわちアスペルギルスニガー変種ニガ
ー又はA.ニガー変種ツビゲンシスから得られるセルラーゼをコードする配列、を
含む単離核酸フラグメントを提供する。
本発明の核酸ラグメントは、DNA 又はRNA、好ましくはDNA を含んでいてもよ
い。本発明の2種の好ましいDNA フラグメントは、核酸配列が、配列番号1及び
3のものである。しかし、本発明の核酸フラグメントはこれらの好ましいフラグ
メントに限定されるものではない。むしろ、また本発明は、セルラーゼ活性を有
するポリペプチドをコードするアスペルギルスニガー変種ニガー又はアスペルギ
ルスニガー変種から得られる配列番号1及び3の変異体を含むものである。した
がって、例えば、本発明は配列番号2又は4のポリペプチドをコードする配列番
号1又は3の縮重変異体を提供する。同様に、このような変異核酸フラグメント
は、配列番号2又は4のポリペプチドの変異体をコードしていてもよく、該変異
ポリペプチドは、その欠失、挿入又は置換が該ポリペプチドのセルラーゼ活性を
完全に破壊しない限り、1種以上のアミノ酸の欠失、挿入又は置換による配列番
号2又は4と異なったものである。その結果、本発明の該変異ポリペプチドは、
配列番号2又は4のポリペプチドの典型的実質的な活性の幾つか、又は全てを維
持している。
また、本発明は変異単離核酸、好ましくはDNA、配列番号1又は3の核酸と高
度の配列同一性を有するフラグメントを提供するものである。したがって、これ
らは通常、実質的に配列番号1又は3に対し相同的である。通常、このような変
異フラグメントは配列番号1又は3と少なくとも90%の配列同一性を有する。同
様に、このような変異フラグメントは、その欠失、挿入又は置換がコードされて
いるポリペプチドのセルラーゼ活性を完全に破壊しない限り、1以上のアミノ酸
の欠失、挿入又は置換により、配列番号1又は3と異なったものであってもよい
。したがって、このコードされたポリペプチドは、配列番号2又は4のポリペプ
チドのセルラーゼ活性の幾つか又は全てを維持している。
本発明の変異核酸フラグメントは、菌類又は酵母、好ましくはアスペルギルス
属の菌類、最も好ましいのはA.ニガー又はA.ツビゲンシスから得ることがあ
るが、これをどのような生物から得てもよい。
また、本発明は、本発明の核酸フラグメントをを含む、組換え核酸、好ましく
はDNA を提供する。通常、これらは、組換え核酸ベクターの形態である。
本発明のベクターは当該技術分野で公知のどのタイプであってもよく、かつ目
的とするDNA 又はRNA を含んでいてもよい。例えば、該構築物は直線状又は環状
のどちらであってもよい。プラスミドは好ましいタイプのベクターである。本発
明のベクターは、クローニングベクターとすることができ、これらは本発明の核
酸フラグメントを増し、単離し、かつ本発明の核酸の同定に有用である。また、
本発明のベクターは発現ベクターであってもよく、これらは、発現クローニング
による本発明の同定、及び本発明のポリペプチドの産生に有用である。適当な場
合、これと同じベクターが、入ファージベクターに関し本願明細書中に記載した
ように、クローニングベクター及び発現クローニング用発現ベクターとして働く
ことができる。
当業者は、当該技術分野で公知の遺伝子工学技術で改良される広く入手可能な
ベクターから始めることで、本発明の適当なベクターを調製することができ、こ
のようなベクターはSambrookらの論文に記載されている(Molecular cloning: a
Laboratory Manual; 1989年)。
通常、本発明のベクターは、1種以上の複製の由来を有し、それにより、細菌
、酵母又は菌類細胞のような宿主細胞で複製されることができる。このことは、
例えば、分子生物学の標準技術によるE.coli の場合のように、構築物を複製し
、かつ増殖することを可能にする。また、ベクター、特に発現ベクターは、通常
、5’から3’への配列において、少なくとも下記の要素を含んでいる:核酸配
列の発現に向けられたプロモーター、及び任意的にプロモーター制御因子、転写
開始部位、翻訳開始コドン、並びに本発明の核酸配列である。
また、該ベクターは、例えば1種以上の抗生物質耐性遺伝子のような、1種以
上の選択的マーカー遺伝子を含んでいてもよい。このようなマーカー遺伝子は形
質転換体の同定を可能にする。また、任意的に該構築体は前記プロモーターに対
するエンハンサーを含んでいてもよい。また、該ベクターは、機能的ポリペプチ
ドをコードする核酸に対し、通常3’のポリアデニル化シグナルを含んでいても
よい。また、該ベクターは、関心の対象となるポリペプチドをコードする配列に
対する3’の転写ターミネーターを含んでいてもよい。
また、該ベクターは、例えば、本発明のポリペプチドをコードする配列に対し
3’の、1種以上のイントロン又は他の非コード配列を含んでいてもよい。
典型的なベクターにおいて、本発明の核酸配列は、該配列の発現を可能にする
プロモーターと機能的にリンクされている。この「機能的にリンクされている」
とは、該プロモーターと、ポリペプチド又はタンパク質をコードする核酸配列と
が、該核酸配列が、このプロモーターの制御下に発現されるような関係で並置さ
れていることをいう。したがって、このプロモーターとコード配列の間に5’非
コード配列のような要素があってもよい。このような配列が、プロモーターによ
るコード配列の正しい制御を強化し又は損なうことがない場合、このような配列
をベクターに入れることができる。
本発明のポリペプチドをコードする核酸の発現を可能にする適当なプロモータ
ーをベクターに加えることができる。例えば、このプロモーターは細菌、真核生
物又はウイルスのプラスミドであってもよい。該プロモーターは、構造的又は誘
導性であってもよい。
また、本発明は、本発明の組換え核酸を宿主ゲノムに統合して又は細胞内で遊
離して宿す、組換え宿主を提供する。該宿主は適切なタイプであればよい。例え
ば、この宿主は細菌(例えばE.coli)、酵母(例えば、 K.ラクタス)、菌類
(例えば、アスペルギルス)、動物(例えば、昆虫又は哺乳動物)又は植物細胞
であってもよい。細菌の宿主は、例えば、本発明のDNA フラグメントの発現クロ
ーニングにおいて有用である。細菌及び他の細胞タイプは、本発明のポリペプチ
ドの産生に有用である。
本発明の組換え核酸は当該技術分野で公知の方法により宿主に導入することが
できる。例えば、該宿主を何らかの適当な方法により形質転換又はトランスフェ
クションすることができ、例えば、この方法にはSambrookらの論文に記載された
方法がある(Molecular cloning: A Laboratory Manual; 1989年)。例えば、本
発明の核酸配列を含む組換え核酸を、レトロウィルス粒子のような感染性ウィル
ス粒子に包み込ませてもよい。また、例えば、エレクロトポーレーション、リン
酸カルシウム沈殿、リポフェクション、バイオリステック法(Biolistic method)
又は宿主を裸の組換え核酸と接触させることによって、組換え核酸を導入するこ
とができる。
また、本発明は、本発明の核酸によってコードされるポリペプチドを提供する
。これらのポリペプチドは明細書中に記載したように、セルラーゼ活性を有する
。本発明の好ましい2種のポリペプチドは、その配列が、配列番号2及び4によ
って与えられるものである。しかし、本発明はこれらの配列に制限されるもので
はなく、むしろ本発明の核酸フラグメントによってコードされるすべてのポリペ
プチドを含むものであり、それは、明細書に記載されているように、セルラーゼ
活性を有するものである。
本発明は配列番号2及び4のポリペプチドに関連した配列を有する変異ポリペ
プチドを提供する。このような変異体は、配列番号2及び4に対し、例えば、少
なくとも70%の配列同一性といった、高い配列同一性を有する。
したがって、通常これらは、配列番号2又は4のポリペプチドに対し実質的に
相同性である。同様に、本発明の変異ポリペプチドは、その欠失、挿入又は置換
がコードされているポリペプチドのセルラーゼ活性を完全に破壊しない限り、1
個以上のアミノ酸の欠失、挿入又は置換により、配列番号2又は4と異なったも
のであってもよい。したがって、本発明の変異ポリペプチドは、配列番号2又は
4のポリペプチドの活性、典型的、実質的な活性の幾つか又は全てを維持してい
る。
本発明のポリペプチドは単離形態とすることができる。例えば、これらを実質
的に又は完全に単離することができる。
また、本発明は、本発明のポリペプチドを製造する方法を提供する。これは、
本発明の組換え核酸から、本発明のポリペプチドを発現するのを可能にする条件
下で、本発明の宿主を培養し、かつ任意的に、このように産生されたポリペプチ
ドを回収することを含む。
該ポリペプチドは、当該技術分野で公知の適当な手段により回収することがで
きる。
有用性
本発明のセルラーゼは、単独で又は他の酵素と組合わせて、食品工業で使用す
ることができ、例えば、植物細胞物質の液化、例えば、野菜又はフルーツジュー
スの量産、又は膜の汚れを減少させる処理助剤として用いることができる。
また、該セルラーゼは、食品工業において使用することができる。その応用の
例には、細胞壁を破壊することによる飼料利用の改良への使用、及び様々な種類
の穀物の粘着性を低下させることへの使用がある。
他の応用例には、繊維工業において、例えば、品質改善又は特殊効果(擦り切
れた外観)を行うための、織物繊維及び編物繊維の処理がある。
さらに他の応用例には、洗剤工業において、例えば洗剤組成物におけるものが
ある。該洗剤組成物は、例えば、粉末、液体などの便利な形態で調製することが
できる。該洗剤組成物は、他の酵素を1種以上、及びビルダー、漂白剤、香料な
どの該技術分野で公知の他の成分を含んでいてもよい。
また、本発明のセルラーゼは、パルプと紙の工業において、バイオパルプ化処
理及びバイオ洗浄処理で使用することもできる。
実験
細菌の育成、DNA 単離、雑種形成、制限酵素による消化、DNA 配列決定などの
標準的組換えDNA 技術は、Sambrook らによる文献に従った(Molecular cloning,
a laboratory manual,(1989):Cold Spring Harbor Laboratory Press,NewYork
.)。
〔実施例〕
(実施例I ) E.coliにおけるアスペルギルスニガー cDNA 発現ライブラリーの
構築
実施例 I.1 mRNAの誘導と単離
A.ニガー N400 培養体を、酵母抽出物を使用せず、かつオート、スペルト小麦
キシランの代わりに2%粗製小麦アラビノキシラン画分を用いて、欧州特許公開
第0463706 号公報に記載されているように、それぞれ69及び81時間育成し、その
後、濾過により菌糸体を集め、次いで滅菌食塩水で洗浄した。該菌糸体を、続い
て液体窒素中で凍結し、その後、マイクロディスメンブレイター(Microdismembr
ator(Braun))を用いて粉末化した。総RNA を、該RNA をCsCl濃度勾配を用いて2
回遠心分離したことを除き、Sambrookらの論文(1989年)に記載されているグア
ニジウムチオシアネート/CsClプロトコルに従って、菌糸体粉末から単離した。
ポリA+ mRNA を、改良点を伴うオリゴ(dT)-セルロースクロマトグラフィー(Aviv
及びLeder の論文,1972年,Sambrookらの論文(1989年))により、総RNA 5mgか
ら単離した。この改良点とは、すべての溶液からSDSをなくし、添加液に9%
(容量/容量)ジメチルスルホキシドを加えたことである。
実施例 I.2 cDNA ライブラリーの構築
cDNAをポリA+ mRNA 7μgから合成し、製造者の指示書に従って ZAPtm-cDNA
合成キット(Stratagene)を使用して、細菌ファージλ Uni-ZAP XR と組合わせた
。該cDNAを Uni-ZAP XR ベクターアームと結合させた後、該ファージDNA を製造
者の指示書に従い、PackagenetmTR抽出物(Promega)を用いて、パッケージ化した
。ベクターアーム1.2 μg にcDNA120ng を結合させることにより、組合わせファ
ージ3.5 ×104個からなる一次ライブラリーを得た。この一次ライブラリーを、
滴定され、4℃で貯蔵されたE.coli XL1-Blue MRF'を用いて増幅した。
実施例 I.3 ファージのファージミドへの転換
E.coli BB4 をプレート細菌として用い、Maniatis らの論文(Maniatisら
(1982年): Molecular cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor L
aboratory,Cold Spring Harbor,New York.64頁)に記載されているように、
ファージを、直径85mmのNZYCM(1.5% 寒天)プレート上に、アガロース0.7%を
含むNZYCM トパガロース(topagarose)に分散させて、該プレート上に拡げること
により増殖させた。37℃で一晩インキュベートした後、融合プレートを得て、そ
こからSM緩衝液5mlを加え、断続的に震盪しながら、4℃で2時間、該プレート
を保存することにより、前記ファージを得た。上清を集めた後、4℃で10分間、
4000xGで遠心分離し、該溶液から細菌を除いた。この上清に、クロロフォルム0.
3%を加え、ユニット(pfu)を形成するプラークの数を数えた。該ファージストッ
クは、ほぼ1010 pfu/mlを含んでいた。
A.ニガーcDNAを含む組換えUni-ZAP XRクローンを、製造者の指示書に従い、ス
トラタゲン(Stratagene)から得た cDNA 合成キットに含まれている単繊維状ヘル
パーファージEXASSISTtm及び E.coli SOLR 菌株を用いる重複感染により、ブル
ースクリプト(Bluescript)ファージミドに転換した。長期間の貯蔵を行うため、
上清1μl当たり約100 クローンを含むグリセロールストックを、−80℃で保存
した。
実施例II セルラーゼ産生クローンに関するプラスミドcDNAライブラリーのスク
リーニング
このスクリーニング手順は、Woodらの論文に基づき改良されたものである(Met
hods in Enzymology 160,59〜74頁)。プレートは、2x TY 20 ml、CMC(Sigma C
-4888)0.2% 、寒天1.5 %及び1ml当たり 100μg のアンピシリンを含んでいた
。細胞を、1プレート当たり約200 コロニー含む5mlの被覆層に平板的に播いた
。該被覆層を50℃に維持し、これは2 x TY,CMC0.2%,寒天0.75% 及び1ml当たり
100μg のアンピシリンを含んでいる。このプレートを、寒天0.5%、CMC 0.2%
、及び 1ml当たり 100μg のアンピシリンを含む溶液5mlで被覆し、50℃に保
った。乾燥後、該プレートを37℃で、48時間インキュベートした。次いで、該プ
レート上に0.1%コンゴレッド(Aldrich no C8, 445.3)5mlを注いだ。1〜2時
間染色した後、プレートを5M NaCl 溶液5mlで 0.5〜1時間脱色した。
A.ニガー cDNA ライブラリー(実施例I)から得た約12000 クローンを平板培
養した。CMC上でのスクリーニングにより、コンゴレッドで染色した後、ハロを
与えるコロニー89個を得た。コロニーは大きな、中間、小さなハロに基づき3ク
ラスに細分類できた。各クラスから3コロニーを生育し、プラスミドを単離し、
かつcDNA の配列決定を行った。すべてのコロニーは全長cDNA コピーを含んで
いた。該プラスミドは2種の分離クラスに分けられた。各クラスから、1コロニ
ーをCBS(Baarn,Netherland)に寄託した。小さいハロを与えるコロニーは1995
年8月3日に寄託され、CBS 589.95(cDNA 12)という番号が与えられた。大き
いハロを与えるコロニーは1995年9月21日に寄託され、CBS 662.95(cDNA 64)
という番号が与えられた。挿入のDNA 配列は、それがコードするアミノ酸配列と
共に配列番号1及び3が与えられている。
これまでの記載内容は、菌類セルラーゼをコードするDNA フラグメントを、プ
ラスミドベクターを使用し、原核生物宿主における発現クローニングにより同定
できることを示している。続く実施例は、このようにして同定された cDNA を使
用して、どのようにセルラーゼを過剰に産生する菌株を構築することができるか
ということを示している。
実施例III アスペルギルスにおける菌類セルラーゼの過剰発現
セルラーゼの過剰発現を適当な方法、例えば欧州特許公開第0420358 号におけ
るフィターゼに関し記載され又は欧州特許公開第0463706 号におけるキシラナー
ゼに関し記載されているのと類似する方法で行うことができる。
- セルラーゼcDNAの高レベル発現を確実に行うA.ニガーアミログルコシダーゼ(A
G)プロモーター
- 転写ターミネーターは、キシラナーゼ又はフィターゼ遺伝子から取り出すこと
ができる。約400-500塩基対の配列であれば転写終了には十分である。
- pGW325から得たニデュランス(niduIans)AmdS マーカー (Wernars K 1986年,T
hesis,Agricultural University of Wageningen,the Netherlands).
-A.ニガー菌株CBS 513.88が適当なレセプター菌株である。
AGプロモーター及びセルラーゼcDNAの連結を、記載されたような融合PCR(ポ
リメラーゼ連鎖反応)を用いて行うことができる。通常、融合オリゴヌクレオチ
ドは約36塩基対であり、転写開始コドンにおいて、両配列と重複する。該融合PC
R は、制限酵素を用いて切断することができ、かつ続いてE.coli ベクターと結
合することができるDNA フラグメントを増加させることができる。同様に、融合
実験を実施して、セルラーゼcDNAの翻訳ストップコドンを、キシラナーゼ又はフ
ィターゼに対し融合させることができる。これらのターミネーターの配列は、欧
州特許公開第0420358 号及び第0463706号に開示されている。
融合PCR 実験から得られるフラグメントの配列を決定し、起こり得る誤りをチ
ェックし、かつ続いて該DNA 配列を、AG プロモーターと適当なターミネーター
の制御下にあるセルラーゼcDNAを含むプラスミドに結合する。どの段階において
も、AmdSマーカーをこの構築物に加えることができる。すべての構築作業はE.c
oli において実施する。
該DNA フラグメントで A.ニガーCBS 413.88を形質転換させる。この方法はTi
lburn らの論文(Gene 26:205-221頁(1983年))及び Kelly & Hynesの論文(EMBOJ
4:475-479頁(1985年))に記載され、改良された方法が欧州特許公開第0463706 号
に開示されている。
実施例 IV K.ラクチス(lactis)における菌類セルラーゼの過剰発現
実施例 IV.1 発現ベクターの構築
開始ベクターpGBHSA20は、1996年10月3日にCBS(Baarn, Netherland)に寄託さ
れ、CBS 997.96 という番号が与えられた。このベクターは、K.ラクチスのラク
ターゼ遺伝子(lac4)のプロモーター及びターミネーター及びG418選択マーカーを
含んでいる。このcDNA挿入コードHAS(ヒト血清アルブミン)を、A.ニガーから
得たセルラーゼをコードするcDNA12及び cDNA64 と置き換えた。A.ニガーcDNA12
をクローニングするために、3'Xhol部位がある。ベクター pMTL22Pの対応部位に
おいて、全長cDNA12を含む KpnI/EcoRI フラグメントをサブクローニングするこ
とにより、5’HindIII部位を創った。HindIII を用いて消化し、cDNAのEcoRI 部
位に近接させ、次いでXhoIを用いて部分消化し(cDNA12は内部XhoI部位を含む。)
、pGBHSA20の特異HindIII/XhoI部位においてクローン化されたHindIII/XhoIフラ
グ
メントを放出させた。HAS コードcDNAをcDNA12で置き換えた、この得られた構築
物をpCVlac12と命名した。同じ戦術をcDNA64に適用し、発現ベクター pCVlac64
を得た。
実施例 IV.2 K.ラクチスの形質転換
形質転換の前に、相同的統合に必要とされるラクターゼプロモータにおける特
異部位を有するHpaI用いて、pCVlac12及び pCVlac64 を線状化した。K.ラクチス
菌株CBS 2359を、LiCl法でベクター15μg を用いて形質転換した。このLiCl法は
Itoらの論文に記載されている(J.Bact.153: 163-168頁(1983年))。形質転換体
を、G418 50 mg/mIを含むYePDプレート(酵母抽出物10 g/I、バクトペプトン(B
acto-peptone)20 g/l、グルコース20 g/I,バクト(Bacto)寒天20 g/l)で、形質
転換体を選択した。
実施例 IV.3 セルラーゼ産生K.ラクチス形質転換体のスクリーニング
K.ラクチス形質転換体を、セルラーゼ12及び64の発現に関連して、AZCL- ヘミ
セルラーゼ色素複合体(Megazyme,Australia)を含むセラジムC(Cellazyme C)タ
ブレットを用いる酵素アッセイ法において、スクリーニングした。セルラーゼは
、590nm で吸収を測定することにより定量することができるブルーAZCL化合物を
放出する。
培養濾液のセルラーゼ活性を測定するために、形質転換体をYePD中で、30℃、
200rpmで一晩生育させた。翌日、培養液を、遠心分離により細胞をペレット化す
ることにより回収した。上清におけるセルラーゼ活性は、独立の形質転換体で可
変的であり、cDNA12形質転換体と比べcDNA64を含む形質転換体は非常に低レベル
の酵素活性を示した。
形質転換体をグルコースにかわり、ラクトースで生育した場合、セルラーゼcD
NAの発現が強化された。
実施例 IV.4 セルラーゼの量産
pCVlac12 又はpCVlac64構築物を含み、前記アッセイ法で測定した最もセルラ
ー
ゼ活性が高かった、K ラクチス形質転換体を、ラクトース2%を含むYeP 1リッ
トル中で、30℃、200rpmで、2日間生育させた。次いで、細胞を遠心分離でペレ
ット化し、かつその上清を、前記のようにさらに酵素活性の特性を調べるために
集めた。
実施例 V アスペルギルスから得たクローン化セルラーゼの特性
実施例 V.1 酵素活性の測定
CMC、キシログルカン及びβ- グルカンに対する、pCVlac12(L12)及びpCVlac64
(L64)から得た生成物の活性を、NaN30.01%(重量/容量)を含み、pH5の50mMNaO
Ac 緩衝液200ml に入れた基質 250μg を40℃で、1時間処理することにより測
定した。還元される末端基の放出を Nelson-Somogyi らの方法に従って測定した
(J.Biol.Chem.195,19-23頁(1952年))。
実施例 V.2 pH最適値の決定
L12 及びL64 のpH最適値を、粘度減少を適用して測定した。
試料調製
(pCVlac12)T10を含むK.ラクチスCBS 2359及び(pVClac64)T41 を含むK.ラクチ
スCBS 2359から培養濾液を得た。試料を、使用する前に限外濾過して濃縮した。
使用した基質
カルボキシメチルセルロース([CMC] Sigma)、大麦から得たβ−グルカナーゼ(
[β-Gluc]Megazyme)
「ビスコロボト(Viscorobot)」を用いる粘性方法(Viscosimetric method)
基質の溶液(CMC 0.4 %及びβ-gluc 0.75%)を異なるpHを有する緩衝液で調製
した。該溶液(20ml かつ同時に7まで) を、この作業のために特別にプログラム
され、温度制御されているギルソン(Gilson)試料交換機 Model 222に入れた。前
記基質溶液を試料(L12又はL64)と混合した。緩衝液をブランクとした。規定のタ
イムインターバルで、試料交換機によって制御されるギルソン希釈装置を用いて
、試料を一定の速度で混合物から取り出した。取り出す際に、試料を強制的に一
片の毛細管に通し(cappilair tubing)、それにより系内に陰圧を創り出し、空気
を無くした。圧力差はサンプルの粘度に比例した。圧力差は、圧力変換器により
記録した。シグナルはデータを集める積分器に送られる。そのデータは積分器と
リンクしたコンピュータに送られる。手製のコンピュータプログラムを用い、粘
度の減少を時間に対しプロットした。規定されたタイムインターバル後の相対粘
度を、使用された溶液のpHに対しプロットした。
図1と2は、CMC とβ−グルカナーゼで得られた結果を示す。図から読み取る
ことができるように、L12及び L64のCMC アーゼpH最適値は、約pH 3.5である。
図2から読み取ることができるように、L12及び L64のβ−グルカナーゼは約p
H 5.5 である。
実施例 VI 小スケールの濁ったリンゴジュースの生産
皮と芯を除去した後、リンゴをブラウンキッチンマシン(Braun kitchen machi
ne(MX32,Frankfurt,Germany; 5mm ブレード)で均質化した。リンゴ/gを200
mM NaOAc 緩衝液(pH 4)3mIと一緒にインキュベートした(40℃、150 rpm)。
該緩衝液は、NaN30.01%(重量/容量)、アスコルビン酸 1%(重量/容量)、ペ
クチンリアーゼ50 mU 及び29 mU CMC アーゼ活性と等価な量のセルラーゼ L12配
合物を含んでいた。24時間後、濁ったジュースが得られた。この濁りは、数カ月
間安定していた。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C12C 5/02 C12C 7/00
7/00 C12G 1/00
C12G 1/00 C12N 1/15
C12N 1/15 1/19
1/19 1/21
1/21 9/42
9/42 D06M 16/00 A
D06M 16/00 D21C 3/22
D21C 3/22 A23L 2/00 L
D21H 11/20 D21H 5/14 B
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ
,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,
CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,H
U,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ
,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,
MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,R
O,RU,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM
,TR,TT,UA,UG,US,UZ,VN
(72)発明者 デ グラーフ レーンデルト ヘンドリッ
ク
オランダ エヌエル−6862セーカー オー
ステルベーク コルネリス コーニングス
トラート 8
(72)発明者 ヴィーゼル ヤコブ
オランダ エヌエル−6703セーカー ワー
ヘニンヘン ヒンケロールドセウェーグ
5
(72)発明者 ファン オーイェン アルベルト ヨハネ
ス ヨゼフ
オランダ エヌエル−2275イックスイック
ス フォールブルフ オーヴェルブルフカ
ーデ 78