【発明の詳細な説明】
カリウムチャンネルの新規ファミリーをコードする遺伝子
発明の分野
この発明は、概括的には、カリウムチャンネル遺伝子ファミリーに関する。よ
り具体的には、本発明はドロソフィラ メラノガスター(Drosophila melanogast
er)およびケノルハブディティス エレガンス(Caenorhabditis elegans)からの
カリウムチャンネル遺伝子のクローニングおよび特徴づけに関する。
発明の背景
合成有機殺虫剤は、主として、コリン作動系(有機リン化合物およびメチルカ
ルバメート)、電位依存性ナトリウムチャンネル(ピレスロイドおよびDDT)
、ならびにGABA依存性塩素チャンネル(シクロジエンおよび他のポリクロロ
シクロアルカン)に作用する神経毒である。カリウムチャンネルは、ニューロン
および筋線維の興奮性および再分極の特性のレベルを決定する不可欠な膜タンパ
ク質の大きなかつ多様なグループを含む[ハイル(B.Hille)、イオニック チャ
ンネルズ オブ エクサイタブル メンブレンズ(Ionic Channel of Excitable
Membranes)、シナウアー(Sinauer)、サンダーランド(Sunderland)、メリーラン
ド州(MA)(1984)]。カリウムチャンネルによりコードされる多数の不可欠な機能
は、それらを新規の殺虫剤ならびに動物およびヒトの治療上の優れた標的とする
。ショウジョウバエ ドロソフィラ メラノガスター(Drosophila melanogaster
)でのカリウムチャンネルの多様性は、相同なタンパク質をコードする広汎な遺
伝子ファミリーに起因する。カリウムチャンネルをコードする6個の遺伝子がド
ロソフィラ メ
ラノガスター(Drosophila melanogaster)からクローニングされており、これら
は昆虫の神経組織で観察されるカリウムの流れの多様性の大きな部分の原因であ
る[ウェイ(A.Wei)、コヴァルビアス(M.Covarrubias)、バトラー(A.Butler)
、ベイカー(K.Baker)、パク(M.Pak)、サルコフ(L.Salkoff)、サイエンス(Sci
ence)248、599-603(1990)、アトキンソン(N.S.Atkinson)、ロバートソン(G.A.
Robertson)、ガネツキー(B.Ganetzky)、サイエンス(Science)253、551-555(199
1)、ヴァルムケ(J.Warmke)、ドライスデール(R.Drysdale)、ガネツキー(B.Ga
netzky)、サイエンス(Science)252、1560-1564(1991)、ブルッゲマン(A.Brugge
mann)、パルド(L.A.Pardo)、シュトゥーマー(W.Stuhmer)、ポングズ(O.Pongs
)、ネイチャー(Nature)365、445-448(1993)]。ShakerおよびShalは
迅速な流れの活性化および不活性化の特性をもつ電位依存性カリウムチャンネル
をコードする。ShabおよびShawは遅延性の不活性化(Shab)および
非不活性化(Shaw)の特性をもつ遅延性整流性(rectifier)チャンネルをコ
ードする。Sloはカルシウム活性化性カリウムチャンネルをコードし、また、
eagは環状AMPにより調整されるカリウムおよびカルシウムの双方が透過で
きる電位依存性チャンネルをコードする。
カリウムチャンネルの挙動に影響を与える化合物による心活動電位の調整は重
篤な心疾患の有用な治療となりうる。これに関しては、昆虫よりクローニングさ
れたカリウムチャンネルのそれぞれが、哺乳類種で、とりわけラット心組織から
クローニングされた遅延性整流性カリウムチャンネルの相同物RAKを包含する
、対応する異形(versions)を有する[パウルミクル(M.Paulmichl)、ネイスミス
(P.Nasmith)、ヘルミス(R.
Hellmiss)、リード(K.Reed)、ボイル(W.A.Boyle)、ネルボンヌ(J.M.Nerbonne
)、ペラルタ(E.G.Peralta)、クラパム(D.E.Clapham)、プロシーディングス
オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンス USA(Proc.Natl.Acad
.Sci USA)88、7892-7895(1991)]。かように、RAKチャンネルは、心不全の
制御の新規薬物の重要な標的としての意味を持つ。心細胞での遅延性整流性カリ
ウム電流は、脱分極する内部へのカルシウムの流れに逆らうことにより心活動電
位のプラトーの期間を調節する。遅延性整流性カリウム電流は、特徴的に、休止
からの脱分極に際し活性化され、S字状もしくは遅延性の開始を呈し、そして非
直線性もしくは整流性の電流−電圧の関係を有する。遅延性カリウムコンダクタ
ンスのいくつかのタイプは、測定された単一チャンネルのコンダクタンスに基づ
いて心細胞で同定されている。心拍数および収縮性は遅延性整流性カリウムコン
ダクタンスの二次的メッセンジャーの修飾により調節され、また、プラトーの形
の種差はチャンネル発現のタイプおよびレベルにより影響されうる。
予測される膜貫通トポロジーに基づけば、カリウムチャンネルは2個の別個の
クラスにさらに分類されうる。すなわち、6個の膜貫通ドメイン(S1−S6)
およびただ1個の孔形成ドメイン(H5)より成る電位依存性、カルシウム活性
化性、かつ環状ヌクレオチド依存性カリウムチャンネル、ならびに、膜を2回貫
通しかつただ1個の孔形成領域もまた含有する内部整流性カリウムチャンネルで
ある[クボ(Y.Kubo)、リューヴェニー(E.Reuveny)、スレジンガー(P.A.Slesi
nger)、ヤン(Y.N.Jan)、ヤン(L.Y.Jan)ネイチャー(Nature)364、802-806(1993
);クボ(Y.Kubo)、ボールドウィン(T.J.Baldwin)、ヤン(Y.N.Jan)、ヤ
ン(L.Y.Jan)ネイチャー(Nature)362、127-133(1993)]。ここで、われわれは、
ドロソフィラ メラノガスター(Drosophila melanogaster)の新規のカリウムチ
ャンネルのクローニングおよび酵母での機能的発現を報告する。さらに、われわ
れは、カリウムチャンネルの既知のクラスで独特な位相的立体配置を表すカリウ
ムチャンネルの新規ファミリーの第二のメンバーを構成するケノルハブディティ
ス エレガンス(Caenorhabditis elegans)の相同物を明らかにする。
酵母サッカロミセス セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)が、カリウム
移送メカニズムを研究する目的のモデル真核生物体として利用される。酵母サッ
カロミセス セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)の遺伝子的構成を容易に
操作し得るため、研究者はカリウム移送を包含する多くの複雑な生物学的経路の
詳細な理解を発展させてきた。酵母では、高親和性のカリウム取り込みがTRK
1遺伝子産物により実行される[ゲイバー(R.F.Gaber)、スタイルズ(C.A.Styl
es)、フィンク(G.R.Fink)Mol.Cell.Biol.8、2848-2859(1988)]。trk1
機能を欠く変異酵母株はカリウムの高濃度を欠く培地中での増殖が不可能である
。カリウム移送メカニズムは、生物体では酵母およびヒトと同じくらい互いに異
なって存在するため、変異細胞での異種性カリウムチャンネルの発現がtrk1
の機能に取って換わり、そして低カリウム濃度を含有する培地での増殖を援助し
うると予測し得るであろう。これに関しては、植物のカリウムチャンネルが酵母
で機能すること、および、新規の除草剤の重要な標的としての意味をもつことが
示された[アンダーソン(J.A.Anderson)、ヒュープリカー(S.S.Huprikar)、コ
ーチャン(L.V.Kochian)、ルーカス(W.J.Lucas)、ゲイバー(R.F.Gaber)、プ
ロシーディングス オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンス USA
(Proc.Natl.Acad.Sci USA)89、3736-3740(1992);センテナ(H.Sentenac)、
ボノー(N.Bonnaud)、ミネ(M.Minet)、ラクルー(W.J.Lacroute)、サルモン(J.
-M.Salmon)、ゲイナー(F.Gaynard)、グリニョン(C.Grignon)、サイエンス(Sc
ience)256、663-665(1992);シャハトマン(D.P.Schachtman)とシュレーダー(J.
I.Schroeder)、ネイチャー(Nature)370、655-658]。かように、われわれは、
異種性の種からのカリウムチャンネルのクローニングおよび発現にこの酵母発現
系を採用し、それを新規殺虫剤の発見ならびに動物およびヒトの治療学に有用に
している。こうした化合物の発見は高い特異性および処理量のスクリーニングア
ッセイを必然的に要求するであろう。例えば、カリウムチャンネルに向けられる
新規の殺虫剤は、昆虫のチャンネルに対する高い選択性および非昆虫種に対する
低い活性を要求する。異種性のカリウムチャンネルの機能的発現を適応させるよ
う遺伝子的に修飾された酵母株を利用するスクリーニングアッセイは、この分野
で大きな利点を提供する。
発明の要約
本発明の最初の局面は、カリウムチャンネル遺伝子およびそれによりコードさ
れるタンパク質の新規のサブクラスの発見である。この新規のサブクラスに属す
るカリウムチャンネルは膜貫通ヘリックスの形成が可能な4個の疎水性ドメイン
を含む。その最初の孔形成ドメインは第一と第二の膜貫通ヘリックスの間に挿入
され、また、二番目の孔形成ドメインは第三と第四の膜貫通ヘリックスの間に挿
入され、さらに、その各孔形成ドメインはカリウム選択的ペプチドモチーフを含
有する。好まれる
態様においては、当該ペプチドモチーフはY/F−Gジペプチドモチーフから成
るグループから選択される。
ある好まれる態様においては、この新規のサブクラスに属する無脊椎動物(す
なわち昆虫および線虫)のカリウムチャンネル遺伝子の単離および特徴づけが提
示される。より好まれる態様においては、本発明は、このカリウムチャンネル遺
伝子ファミリーに独特な保存されたアミノ酸配列要素をコードする、ドロソフィ
ラ メラノガスター(Drosophila melanogaster)およびケノルハブディティス
エレガンス(Caenorhabditis elegans)からの相補的DNA断片の単離を提供する
。酵母の発現技術が、ドロソフィラ メラノガスター(Drosophila melanogaster
)およびC.エレガンス(Caenorhabditis elegans)から。DNAをクローニング
するのに採用され、また、ハイブリッド形成のアプローチが、ケノルハブディテ
ィス エレガンス(Caenorhabditis elegans)から付加的cDNAを単離するのに
利用される。
本発明の第二の局面は細胞増殖に対する影響を決定する物質のアッセイ方法で
ある。上述の種類の酵母細胞が異種性タンパク質の発現を引き起こすような適切
な増殖培地で培養され、寒天増殖培地に固定され、そして当該寒天プレートの表
面に適用される化学的化合物に曝される。固定された細胞の増殖に対する影響は
、異種性カリウムチャンネルに対し影響を有する化合物の周囲で見出される。
本発明の第三の局面は、ここに提示されるようなヌクレオチド配列によりコー
ドされるカリウムチャンネルに本質的に相同なそれらを阻害することによる線虫
の害および害虫の制御方法である。
図面の簡単な説明
第1図。pDmORF1をもつCY162細胞の増殖。CY162細胞は、低カ
リウム濃度を含有する培地でのCY162の増殖を援助するプラスミドの一次ラ
イブラリースクリーニングの生存体から単離したプラスミドで形質転換した。各
プラスミドをもつ株の6個の別個の形質転換体を指摘される培地上ところどころ
で培養する。pDmORF1をもつCY162細胞は各プレートの上左角に見出
され、一方、pKAT1含有細胞は下右角に見出される。
第2図。Dm ORF1のDNA配列および推定されるアミノ酸配列[配列番号
1および2]。この2.4kbのcDNAのヌクレオチド配列はGAL1プロモータ
ーに隣接するただ1個の長い読み取り枠を示した。予測されるポリペプチド中の
推定の膜貫通ドメイン(M1−M4)および孔形成H5ドメインに対応する区分
に下線がつけられる。1個のアミノ末端のアスパラギンに連結されるグリコシル
化部位がGで指摘される。第3図。ケノルハブディティス エレガンス(Caenorh
abditis elegans)ゲノムのF22b7.7区分のDNA配列および推定されるア
ミノ酸配列[配列番号3]。予測されるポリペプチド中の推定の膜貫通ドメイン
(M1−M4)および孔形成H5ドメインに対応する区分に下線がつけられる。
第4図。DmORF1配列およびF22b7.7配列の整列(Alignment)。DmO
RF1のタンパク質コード領域[配列番号37]およびF22b7.7のタンパ
ク質コード領域[配列番号38](この図ではCeORF−1と称される)が、
ジーンワーク(Genework)DNA配列分析ソフトウェアのタンパク質配列整列アル
ゴリズムを使用して比較される。同一アミノ酸が囲まれる。
第5A図。DmORF1およびF22b7.7の孔形成ドメインの比較。クロー
ニングされたドロソフィラ メラノガスター(Drosophila melanogaster)の6種
のカリウムチャンネルおよび3種の内部整流性チャンネルのアミノ酸配列[配列
番号7から21]が、孔形成H5領域内でDmORF1およびF22b7.7と
比較される。アミノ酸同一性は垂直線により指摘され、また、保存された置換は
点により指摘される。許容されると思われるアミノ酸置換が指摘される。
第5B図。DmORF1およびF22b7.7のポリペプチド配列のハイドロパ
シープロット分析。ジーンワークス(Geneworks)DNA分析ソフトウェアのカイ
ト−ドゥーリトル(Kyte-Doolittle)のハイドロパシーアルゴリズムが、DmOR
F1およびF22b7.7のトポロジーを予測するのに使用される。予測される
膜貫通ドメイン(M1−M4)および孔形成ドメインの位置が指摘される。
第6図。DmORF1の予測される膜貫通トポロジー。
第7図。プラスミドをもつCY162(trk1Δ)株の異種性カリウムチャン
ネル依存性の増殖。pYES2、pKAT1、pDmORF1およびpRATR
AKをもつCY162を、0mM、0.2mMもしくは100mMの添加した塩化カリウムを
含有するアルギニン−リン酸−寒天培地上、30℃で4日間培養する。
第8図。異種性カリウムチャンネルを含有する酵母細胞の増殖阻害。指摘される
プラスミドをもつCY162細胞(105)を、0.2mM塩化カリウムを含有するアル
ギニン−リン酸−寒天培地で培養する。滅菌したフィルターディスクをこの寒天
の表面に置き、そしてカリウムチャンネル遮断化合物の1M溶液20mlに浸した。
左上角から時計回りに塩化バリウム、
塩化セシウム、TEAそして塩化ルビジウムである。塩化カリウムは中央のディ
スクに適用される。
第9図。CORKのDNA配列および推定されるアミノ酸配列[配列番号36]
。この1.4kbのcDNAのヌクレオチド配列はGAL1プロモーターに隣接する
ただ1個の長い読み取り枠を示した。予測されるポリペプチド中の孔形成H5ド
メインに対応する区分に下線が付けられる。アスパラギンに連結されたグリコシ
ル化部位がGにより指摘される。
発明の詳細な説明
ヌクレオチド塩基はここで以下のように略記される:
Ade;A−アデニン G−グアニン Ura;U−ウラシル C−シトシン
T−チミン
アミノ酸配列はここで以下のように3文字もしくは1文字のいずれかで略記さ
れる:
Ala;A−アラニン Leu;L−ロイシン
Arg;R−アルギニン Lys;K−リシン
Asn;N−アスパラギン Met;M−メチオニン
Asp;D−アスパラギン酸 Phe;F−フェニルアラニン
Cys;C−システイン Pro;P−プロリン
Gln;Q−グルタミン Ser;S−セリン
Glu;E−グルタミン酸 Thr;T−スレオニン
Gly;G−グリシン Typ;W−トリプトファン
His;H−ヒスチジン Tyr;Y−チロシン
Ile;I−イソロイシン Val;V−バリン
ここで使用されるような「哺乳類」という用語はいずれかの哺乳動物
種(例えばヒト、マウス、ラットおよびサル)を指す。
ここで使用されるような「異種性」という用語は、カリウムチャンネルもしく
はその一部の発現で使用されるかまたはここで記述される生物体(例えば、哺乳
類、鳥類、両生類、昆虫、植物)よりほかの生物体から源を発する、酵母で天然
には見出されないDNA配列、タンパク質、および他の材料、もしくはその組み
合わせを指す。
「上流」および「下流」という用語は、転写および翻訳の方向を指すのにここ
で使用され、ある配列が別の配列に先立ち転写もしくは翻訳されることを後者の
「上流」と称する。
本発明のカリウムチャンネルは、電位依存性チャンネル、カルシウム活性化性
チャンネル、環状ヌクレオチド依存性チャンネル、内部整流性チャンネルなどを
包含する既知のカリウムチャンネルに共有の特性、およびとりわけ電気生理学的
特性に関する特性を所有する。ある好まれるチャンネルは、カリウム濃度、とり
わけ電位依存性チャンネルの特徴により影響される内側へおよび外側への流れを
表す。「チャンネル」という用語およびそれをコードするヌクレオチド配列は、
チャンネルの前述のクラスのサブタイプ、ならびにそれらの変異体、誘導体およ
び相同物を包含することを意図される。
カリウムチャンネルもしくはその一部をコードするヌクレオチド配列は組み換
え的に発現され、また、様々な理由で利用されうる。理由の最も注目に値するも
のは、カリウムイオンチャンネルの活性を調整する物質のスクリーニングである
。こうした物質、とりわけ本発明のカリウムチャンネル活性の阻害剤は、殺虫剤
、駆虫剤、心不全の制御に適する薬物などとして利用されうる。
異種性DNA配列は一般的に発現ベクターにより宿主中で発現される。発現ベ
クターは複製可能なDNA構築物であり、そこでは異種性DNA配列をコードす
るDNA配列は意図される宿主中での当該異種性DNA配列によりコードされる
タンパク質もしくはタンパク質サブユニットの発現に影響を与えることが可能な
適する制御配列に操作可能に連結される。一般に、制御配列は、転写プロモータ
ー、転写を制御する任意のオペレーター配列、適するmRNAリボソーム結合部
位をコードする配列、および(場合によっては)転写および翻訳の停止を制御す
る配列を包含する。本発明を実行するのに有用なベクターは、プラスミド、ウイ
ルス(バクテリオファージを包含する)、および組み込み可能なDNA断片(す
なわち遺伝子組み換えにより宿主ゲノム中に組み込み可能なDNA断片)を包含
する。当該ベクターは、プラスミドの場合のように宿主ゲノムに独立に複製しか
つ機能しうるか、もしくは組み込み可能なDNA断片の場合のように当該ゲノム
それ自身に組み込まれうる。適するベクターは、レプリコン、および、意図され
る発現宿主と両立できる種由来の制御配列を含有するであろう。例えば、宿主細
胞内で操作可能なプロモーターは、その細胞のRNAポリメラーゼに結合するそ
れであり、また、宿主細胞内で操作可能なリボソーム結合部位は、その細胞の内
在性リボソームに結合するそれである。
DNA領域は、それらが相互に機能的に関連する場合には操作可能に関連付け
られる。例えば、プロモーターはそれが当該配列の転写を制御する場合にコード
配列に操作可能に連結され、リボソーム結合部位はそれが翻訳を可能にするよう
に配置される場合にコード配列に操作可能に連結される。一般に、操作可能に関
連付けられるとは、隣接する、およ
び、リーダー配列の場合には、隣接しかつ読み取り状態(reading phase)にある
ことを意味する。
本発明の形質転換された宿主細胞は、組み換えDNA技術を使用して構築され
るベクターで形質転換もしくはトランスフェクションされており、かつ、当該異
種性DNA配列によりコードされるタンパク質もしくはタンパク質サブユニット
を発現する細胞である。好まれる態様においては、この形質転換された宿主細胞
は酵母である。酵母培養系の多様性、および酵母細胞の形質転換に適する発現ベ
クターは既知である。例えば、米国特許第4,745,057号、同第4,797,359号、同第
4,615,974号、同第4,880,734号、同第4,711,844号および同第4,865,989号を参照
。サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は酵母のなかで最も
普遍的に使用されるが、とはいえ多数の他の酵母種も普遍的に入手し得る。例え
ば、米国特許第4,806,472号(クルベロミセス ラクティス(Kluveromyces lacti
s)およびそれによる発現ベクター);同第4,855,231号(ピキア パストリス(Pi
chia pastoris)およびそれによる発現ベクター)を参照。異種性カリウムチャン
ネルは、低カリウム濃度含有培地で増殖が不可能な酵母株の生存を許容しうる[
CY162;例えば、アンダーソン(J.A.Anderson)、ヒュープリカー(S.S.Hup
rikar)、コーチャン((L.V.Kochian)、ルーカス(W.J.Lucas)、ゲイバー(R.F.G
aber)、プロシーディングス オブ ナショナル アカデミー オブ サイエン
ス USA(Proc.Natl.Acad.Sci USA)89、3736-3740(1992)を参照]。酵母ベ
クターは、当該プラスミドに酵母細胞内で高コピー数で複製する能力を与える内
在性2ミクロン(2μ)酵母プラスミドからの複製開始点もしくは自律性複製配
列(ARS)、当該プラスミ
ドが酵母細胞内で低コピー数でのみ複製する能力を制限するセントロメア(CE
N)配列、プロモーター、異種性DNA配列をコードするDNA、ポリアデニル
酸化配列および転写終止配列、ならびに選択可能なマーカー遺伝子を含有しうる
。例示的プラスミドはYRp7である[スティンチコム(Stinchcomb)ら、(1979)
ネイチャー(Nature)282、39;キングズマン(Kingsman)ら、(1979)ジーン(Gene)7
、141;チェンパー(Tschemper)ら、(1980)ジーン(Gene)10、157]。このプラス
ミドはTRP1遺伝子を含有し、この遺伝子はトリプトファン非存在下で増殖能
力を欠く酵母変異株例えばATCC番号44076についての選択的マーカーを提供
する。酵母宿主細胞ゲノム中のtrp1損傷の存在は、その後、トリプトファン
非存在下での増殖による形質転換の検出に有効な環境を提供する。
酵母ベクターでの適する促進配列は、メタロチオネインのプロモーター(YE
p52)、3−フォスフォグリセリン酸キナーゼのプロモーター[pPGKH、
ヒッツェマン(Hitzeman)ら、(1980)ジャーナル オブ バイオロジカル ケミス
トリー(J.Biol.Chem.)255、2073]、もしくは、エノラーゼ、グリセルアルデ
ヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシ
ラーゼ、フォスフォフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、
3−フォスフォグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸
イソメラーゼ、フォスフォグルコースイソメラーゼおよびグルコキナーゼのよう
な他の解糖酵素のプロモーター[pYSK153、ヘス(Hess)ら、(1968)J.Adv
.Enzyme Reg.7、149;およびホランド(Holland)ら、(1978)バイオケミストリ
ー(Biochemistry)17、4900]を包含する。酵
母の発現での使用に適するベクターおよびプロモーターはヒッツェマン(Hitzema
n)ら、EPO Publn.No.73,657にさらに記述される。増殖条件により制御される
転写の付加的な利点を有する他のプロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ
2(pAD4M)、イソチトクロームC、酸リン酸化物、窒素代謝に関連する分
解酵素、ならびに前述のメタロチオネインおよびグリセルアルデヒド−3−リン
酸デヒドロゲナーゼ、ならびにマルトースおよびガラクトース(pYES2)の
利用を司る酵素、のプロモーター領域である。最後に、適する発現プラスミドの
構築においては、これらの遺伝子に関連する終止配列もまた、当該mRNAのポ
リアデニル酸化および終止を提供するように発現ベクター内の異種性コード配列
の3’に結合されうる。
本発明のひとつの態様において酵母の発現系が記述される。ここで酵母細胞は
異種性のカリウムチャネルをもつ。好まれる態様においては、これらのチャンネ
ルはDmORF−1、CORKもしくはRAKである。上で言及されるように、
本発明の形質転換された宿主細胞は異種性DNA配列によりコードされるタンパ
ク質もしくはタンパク質サブユニットを発現する。発現される場合は、当該カリ
ウムチャンネルは宿主細胞膜に配置される(すなわち、リガンドの立体選択的結
合およびカリウムイオンの通過の双方にとって適正な方向にその中に物理的に置
かれる)。
本発明のある好まれるスクリーニングの態様においては形質転換された酵母細
胞が提示され、これは適する発現ベクター中にクローニングされたラット心遅延
性整流性カリウムチャンネルRAKをコードする異種性DNA配列を含有する。
RAKは、低カリウム濃度含有培地でのサッカロミセス セレビシエ(Saccharom
yces cerevisiae)株CY162のカ
リウム依存性の表現型を補足することが可能である。
本発明のカリウムチャンネルのサブクラスは、当該カリウムチャンネルが膜貫
通ヘリックスを形成することが可能な4個の疎水性ドメインを有することを特徴
とする。これらのチャンネルは、それらが2個の孔形成ドメインを含み、そのう
ち1個は前述の第一のヘリックスと前述の第二のヘリックスの間に挿入され、ま
た、他方は前述の第三のヘリックスと前述の第四のヘリックスの間に挿入される
ことをさらに特徴とする。当該孔形成ドメインはさらに、当該チャンネルに、ナ
トリウム、カルシウムなどのような他のイオンを除外してカリウムイオンを通過
させる能力を与えるようはたらくカリウム選択的モチーフを含有する。ある好ま
れる態様においては、このモチーフはペプチドY/Gを含有し、また、とりわけ
ジペプチドもしくはトリペプチドのモチーフのいずれかで、またしばしばY/F
−G結合をもつ。最も好まれる態様においては、当該モチーフはG−V−G、G
−L−G、G−Y−G、G−F−GおよびG−I−Gから成るグループより選択
される。
本発明のある態様においては、当該カリウムチャンネルは、それが細胞内およ
び細胞外へのカリウムイオンの流れの調整体として機能できるような様式で細胞
膜内に配置される。この活性を最良に調節するためには、少なくともただ1個の
孔形成ドメインが細胞膜の外側部分に隣接して配置されうる。
他の態様においては、本発明のカリウムチャンネルはさらにアミノ末端のグリ
コシル化部位を含み、そしてとりわけその部位はアスパラギンに連結される。
ここに提示されるようなサブクラスに属するカリウムチャンネルは脊
椎動物および無脊椎動物の双方の幅広い多様な動物種に由来しうる。酵母発現技
術およびここに述べられるような他の技術を使用し、本発明の発明人らは、低カ
リウム濃度含有培地上でサッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisia
e)株CY162(trk1Δ)のカリウム依存性の表現型の補足により、Dm
ORF1[配列番号1]と命名される無脊椎動物起源からのただ1個の2463塩基
対のcDNA断片を単離している[アンダーソン(J.A.Anderson)、ヒュープリ
カー(S.S.Huprikar)、コーチャン((L.V.Kochian)、ルーカス(W.J.Lucas)、ゲ
イバー(R.F.Gaber)、プロシーディングス オブ ナショナル アカデミー オ
ブ サイエンス USA(Proc.Natl.Acad.Sci USA)89、3736-3740(1992)]。
Dm ORF1は、他のカリウムチャンネルの孔形成領域との本質的なアミノ酸
同一性を表す618アミノ酸のタンパク質[配列番号2]をコードするただ1個の
長い読み取り枠を含有する。DmORF1は、膜貫通ヘリックス(M1−M4)
の形成が可能な4個の疎水性ドメイン、ならびに、膜貫通ヘリックスM1とM2
、およびM3とM4の間に見出される2個の推定の孔形成H5ドメインを包含す
る、それを他のクラスのカリウムチャンネルと区別する構造的特徴を含有する。
各孔形成H5ドメインはカリウム選択性に必要とされるY/F−Gジペプチドモ
チーフを含有する[ヘギンボタム(L.Heginbotham)、アブラムソン(T.Abramson
)、マッキノン(R.MacKinnon)、サイエンス(Science)258、1152-1155、(1992)]
。この業績を、pCORKと命名される434アミノ酸のタンパク質をコードする
のに十分なただ1個の読み取り枠を有するC.エレガンス(C.elegans)由来の構
築物をクローニングするのに発展させた。
DmORF1に類似のDNAおよびタンパク質についてのジェンバンク(GENBA
NK)データベース検索は、ケノルハブディティス エレガンス(Caenorhabditis e
legans)ゲノム配列決定プロジェクトで報告された[ウィルソン(R.Wilson)、ア
インズコフ(R.Ainscough)、アンダーソン(K.Anderson)ら、ネイチャー(Nature
)368、32-38(1994)]推定のタンパク質をコードするDNA配列F22b7.7
を包含するいくつかのクローニングされたカリウムチャンネル配列を示した。当
該DNA配列は、既知のカリウムチャンネル配列への本質的相同性をもつ366ア
ミノ酸のタンパク質(予測される分子量38.5kDa)をコードするのに十分なただ
1個の長い読み取り枠を含有した。
ハイブリッド形成のアプローチを使用し、CeORF1と命名されるcDNA
配列[配列番号38]が、F22B7.7のDNA配列を使用してデザインされ
るオリゴヌクレオチドをプローブとしてケノルハブディティス エレガンス(Cae
norhabditis elegans)cDNAライブラリーを探ることにより単離された[デイ
ヴィス(T.N.Davis)とトーナー(J.Thorner)メソッヅ イン エンツィモロジ
ー(Meth.Enzymol.)139、246-262(1987)]。CeORF1は他のカリウムチャン
ネルの孔形成領域との本質的なアミノ酸同一性を表すタンパク質をコードするた
だ1個の長い読み取り枠を含有する。
CeORF1およびpCORKはそれぞれDmORF1に類似の構造的特徴を
含有し、2個の推定の孔形成H5ドメインを包含する。各孔形成H5ドメインは
カリウム選択性に必要とされるY/F−Gジペプチドモチーフを含有する[ヘギ
ンボタム(L.Heginbotham)、アブラムソン(T.Abramson)、マッキンン(R.MacKi
nnon)、サイエンス(Science)258、
1152-1155、(1992)]。これらの特徴は、DmORF1、CORK、およびCe
ORF1を含むカリウムチャンネルの新規サブファミリーの呼称の根拠を形成す
る。
本発明の他の局面は、細胞膜の内へ、それを介して、あるいはの外へのイオン
の流れを可能にするカリウムチャンネルの能力に影響することによる、また、と
りわけこれらのイオンがカリウムイオンである場合の、そうしたチャンネルの活
性の調整方法に関する。生物学的であろうと化学的であろうとある物質が、配列
番号2、配列番号4、配列番号36もしくはRAKのアミノ酸配列を含むひとつ
もしくはそれ以上のカリウムチャンネルをそれらの構造の不可欠な部分として有
する細胞膜に、イオンの流れをそのように制御するカリウムチャンネルの能力に
影響を与えるのに十分な量かつ時間、適用されうる。カリウムチャンネル遮断薬
である物質はそうしたイオンの流れを調節するチャンネルの能力を阻害するであ
ろう。そうした能力を高める物質はカリウムチャンネルの「活性化剤」と考えら
れうる。RAKの活性を調整する物質は、心活動電位の上方へもしくは下方への
調整によりそうするとみられる。
こうした物質の応用はそれぞれ当該物質を細胞膜に分布しかつ当該物質が膜と
相互作用できるのに十分な時間そうした分布を保持するのに適する処方で、イン
ビトロ、エクスビトロ、もしくはインビボの応用の形態をとりうる。適切な処方
、物質濃度、応用時間および他の関連するパラメータは、とりわけ、イオンチャ
ンネルの電流の流れを測定する既知のアッセイを利用することにより確立されう
る。当業者が、とりわけカリウムチャンネル遮断薬の場合に、これらのパラメー
タを至適化するのに利用しうる別の適する終点は「細胞死」である。こうしたア
ッセイは
インビトロで実行され、また、インビボ条件に外挿され、もしくはいくつかの場
合には、例えば標的害虫(生物体全体)を含む試験サンプルに当該物質を直接適
用し、そして昆虫の死亡の許容し得るパーセントが達成される適切なパラメータ
に注目する(noting)ことによるように、直接インビボで容易に確立されうる。
ある好まれる態様においては、害虫を選択的に阻害する方法が、そうした昆虫
の細胞中に含有されかつ配列番号2のアミノ酸配列を含むカリウムチャンネル、
もしくはそれと本質的に相同なカリウムチャンネルの活性を選択的に阻害するこ
とが可能な物質をそうした害虫に適用することにより提示される。最も好まれる
態様においては、当該阻害剤は、標的とされる害虫よりほかの種に存在しうる他
の非相同的カリウムチャンネルの阻害なしに前述のカリウムチャンネルの活性を
阻害するであろう。こうした他の種はまた、庭園、作物もしくはその中で害虫を
制御することが所望される他の場所でのような当該阻害剤の適用場所にも存在し
うることも構想される。他の好まれる態様においては、線虫の害を選択的に阻害
する方法が、そうした害虫の細胞に含有されかつ配列番号4もしくは配列番号3
6のアミノ酸配列を含むカリウムチャンネル、あるいはそれと本質的に相同なカ
リウムチャンネルの活性を選択的に阻害することが可能な物質をそうした害虫に
適用することによる害虫の制御について論考されるとほぼ同様の様式で提示され
る。
以下の実施例は本発明の多様な局面をさらに例証するために提供される。それ
らは本発明を制限するものとして解釈されるべきでない。
実施例1
組み換え発現ライブラリーのスクリーニング。
サッカロミセス セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)株CY162はア
ンダーソン(Anderson,J.A.)ら、(1992)プロシーディングス オブ ナショナル
アカデミー オブ サイエンス USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)89、37
36-3740に記述される。細菌株の増殖およびプラスミド操作は標準的方法により
実行する(マニアティス(Maniatis T.)、モレキュラー クローニング(Molecula
r Cloning)。コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス(Cold Sp
ring Harbor Laboratory Press)、1982)。酵母増殖の培地条件、酵母からのプ
ラスミドDNAの単離、およびDNAが媒介する酵母株の形質転換は記述される
通りである(ローズ(Rose M.D.)、メソッヅ イン イースト ジェネティック
ス(Methods in yeast genetics)、コールド スプリング ハーバー ラボラト
リー プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1990)。pYES2中
に構築されかつ第3齢の雄性ドロソフィラ メラノガスター(Drosophila melano
gaster)mRNAから作成したcDNAを含有する多機能発現ライブラリーを記
述されるように使用する[エレッジ(S.J.Elledge)、マリガン(J.T.Mulligan)
、レイマー(S.W.Ramer)、スポッツウッド(M.Spottswood)、デイヴィス(R.W.D
avis)プロシーディングス オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンス
USA(Proc.Natl.Acad.Sci USA)88、1731-1735(1991)]。pYES2中に
構築されかつケノルハブディティス エレガンス(Caenorhabditis elegans)の全
生命段階から得たmRNAから作成したcDNAを含有する多機能発現ライブラ
リーはインヴィトロジェン コーポレーション(Invitrogen Corporation)による
注文製である。
異種性カリウムチャンネルをコードする発現プラスミドの単離。CY162細
胞を各ライブラリーからのプラスミドDNAで形質転換し、0.1M塩化カリウム含
有SCD−ura(ウラシルを除く全必須栄養補充物を含有する合成完全ブドウ
糖(2%)培地)寒天培地上で各ライブラリーから3×106個の形質転換体を得
る。形質転換体はSCG−ura(ウラシルを除く全必須栄養補充物を含有する
合成完全ガラクトース(2%)培地)寒天培地上に複製培養する。この選択的寒
天培地上で増殖するコロニーをSCG−ura寒天培地に移して個別のコロニー
のクローンを得、そして一方でカリウム依存性の表現型の抑制を再アッセイする
。プラスミドDNAを生存するコロニーから単離し、そしてCY162を形質転
換するのに使用する。カリウム非依存性の表現型を与える1種のプラスミドpD
mORF1を含有する6個の別個の形質転換株を、pKAT1をもつCY162
株とともにSCD−uraおよびSCG−ura培地上で培養する。pKAT1
は選択培地上でのCY162の増殖を援助する植物の内部整流性カリウムチャン
ネルをコードする(第1図)。プラスミドをもつ株はブドウ糖含有培地およびガ
ラクトース含有培地の双方でカリウム非依存性の増殖を表す。ブドウ糖含有培地
での増殖は、増殖を援助するのに十分なカリウムチャンネル発現につながる転写
の基礎レベルによるものであるとみられる。
実施例2
DmORF1のDNA配列分析。カリウム依存性の表現型の抑制を与えるプラス
ミドを高温サイクルシークェンシング(アプライド バイオシステムズ(Applied
Biosystems)により実行される自動DNA配列分析にかける。ジーンワークス(G
eneworks)DNA配列分析ソフトウェア(イ
ンテリジェネティクス(Intelligenetics))を使用して未処理のDNA配列情報
を整列しそして読み取り枠を同定する。pDmORF1中の2.4kbの挿入物のD
NA配列が第2図に表される[配列番号1]。当該cDNAの5’非翻訳配列は
タンパク質コード領域に見出されそうにない長いポリAおよびポリTの広がり(t
ract)を含有する。5’末端に近接する最初のATGはドロソフィラ メラノガ
スター(Drosophila melanogaster)のコンセンサス翻訳開始部位に存在し[ケイ
ヴナー(D.R.Cavener)ヌクレイック アシッヅ リサーチ(Nucleic Acids Res.)
、15、1353-1361(1987)]、翻訳開始部位としてのこの部位の呼称に矛盾しない
。618アミノ酸のタンパク質(予測される分子量68kDa)をコードするのに十分な
ただ1個の長い読み取り枠がpDmORF1中にコードされる。コンセンサスポ
リアデニル酸化部位AATCAAは3’非翻訳配列中の位置2093−2098に存在す
る。DmORF1は、膜貫通ヘリックス(M1−M4)の形成が可能な4個の疎
水性ドメイン、ならびに、膜貫通ヘリックスM1とM2、およびM3とM4の間
に見出される2個の孔形成H5ドメインを包含する、それを他のクラスのカリウ
ムチャンネルと区別する構造的特徴を含有する。各孔形成H5ドメインはカリウ
ム選択性に必要とされるY/F−Gジペプチドモチーフを含有する[ヘギンボタ
ム(L.Heginbotham)、アブラムソン(T.Abramson)、マッキノン(R.MacKinnon)
、サイエンス(Science)258、1152-1155、(1992)]。
実施例3
DmORF1に相同なケノルハブディティス エレガンス(Caenorhabditis eleg
ans)配列の同定。ジェンバンク(GENBANK)データベースのDmORF1に類似の
タンパク質配列の検索は、いくつかの既
知のカリウムチャンネル配列とのかなりの合致(match)を示す。最も近似した合
致は、ケノルハブディティス エレガンス(Caenorhabditis elegans)ゲノム配列
決定プロジェクトで報告された[ウィルソン(R.Wilson)、アインズコフ(R.Ain
scough)、アンダーソン(K.Anderson)ら、ネイチャー(Nature)368、32-38(1994)
]、推定のタンパク質コードDNA配列F22b7.7とである。当該DNA配
列およびジェンバンク(GENBANK)エクソン同定アルゴリズムにより認識される推
定のエクソンから組立てられた予測されるアミノ酸配列が第3図[配列番号3お
よび4]に表される。当該DNA配列は、既知のカリウムチャンネル配列との本
質的相同性をもつ336アミノ酸のタンパク質(予測される分子量38.5kDa)をコー
ドするのに十分なただ1個の長い読み取り枠を含有する。F22b7.7配列は
、pDmORF1中で同定される膜貫通ヘリックス(M1−M4)の形成が可能
な4個の疎水性ドメインのうち3個、ならびに、膜貫通ヘリックスの予測される
M1とM2、およびM3とM4の間に見出される2個の孔形成H5ドメインを包
含する、それを他のクラスのカリウムチャンネルと区別する構造的特徴を含有す
る。各孔形成H5ドメインはカリウム選択性に必要とされるY/F−Gジペプチ
ドモチーフを含有する[ヘギンボタム(L.Heginbotham)、アブラムソン(T.Abra
mson)、マッキノン(R.MacKinnon)、サイエンス(Science)258、1152-1155、(199
2)]。F22b7.7配列中のDmORF1のM1に相同なアミノ末端膜貫通ド
メインの欠損は、アミノ末端をコードするエクソン(ひとつもしくは複数)を同
定する検索アルゴリズムの欠陥によるとみられる。あるいは、アミノ末端コード
配列が、ケノルハブディティス エレガンス(Caenorhabditis elegans)では頻繁
に起こるトランス
スプライシングにより付加されうる。
実施例4
CeORF1のクローニングおよびDNA配列分析。
F22b7.7の2個の孔形成ドメインをコードするDNA配列に対応するオリ
ゴヌクレオチドを、アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)DNA
合成装置を使用して合成する。
F22b7.7−H2−1:
5’TCCATTTTCTTTGCCGTAACCGTCGTCACTACCA
TCGGATACGGTAATCCA[配列番号5]。F22b7.7−H2−
2:
5’TCATTCTACTGGTCCTTCATTACAATGACTACTG
TCGGGTTTGGCGACTTG[配列番号6]。当該オリゴヌクレチドは
、それらの5’末端で、5’末端ラベリングキットを使用し、製造元の説明書(
ニュー イングランド ヌクレアー(New England Nuclear))に従い32Pで標識
した。標識したオリゴヌクレオチドを合わせ、そして、λZAP−ケノルハブデ
ィティス エレガンス(Caenorhabditis elegans)cDNAライブラリー(クロン
テック(Clontech)より得る)からの6×105個のプラークを、公表された方法[
デイヴィス(T.N.Davis)とトーナー(J.Thorner)メソッヅ イン エンツィモロ
ジー(Meth.Enzymol.)139、246-262(1987)]によりスクリーニングするのに使用
する。ハイブリッド形成は42℃で16時間である。陽性クローンは、ハイブリッド
形成スクリーニング過程を2回繰り返すことによりプラーク精製する。製造元の
説明書に従ってファージDNAから取り出したプラスミドDNAを高温サイクル
シークェンシング(ア
プライド バイオシステムズ(Applied Biosystems))により実行される自動DN
A配列分析にかける。ジーンワークス(Geneworks)DNA配列分析ソフトウェア
(インテリジェネティクス(Intelligenetics))を使用して未処理のDNA配列
データを整列しそして読み取り枠を同定する。
実施例5
DmORF1およびF22b7.7によりコードされる推定のタンパク質の比較
。DmORF1およびF22b7.7の予測されるアミノ酸配列を整列しそして
第4図に表す[配列番号37および38]。限られた全体的アミノ酸相同性のみ
が、孔形成H2−1およびH2−2ドメインに存在する最大の相同性領域をもつ
これらの2種のタンパク質により表される。第5A図は、DmORF1およびF
22b7.7の孔形成ドメインと、既知のドロソフィラ メラノガスター(Droso
phila melanogaster)カリウムチャンネル配列および内部整流体カリウムチャン
ネル配列のそれら[配列番号7から21]との比較を示す。50%より大きなアミ
ノ酸同一性が全カリウムチャンネル配列でみとめられる。第5B図はDmORF
1およびF22b7.7のハイドロパシープロット分析を示す。それらの長さを
通して顕著な位相的類似性を示す2種のタンパク質は、4個の膜貫通疎水性ドメ
イン(M1−M4)および2個の孔形成H2ドメインから成ると予測される。こ
れらのデータは第6図に示された予測されるトポロジーを示唆する。双方のタン
パク質とも、膜を4回通り抜け、アミノ末端およびカルボキシル末端が細胞内に
存すると予測される。このトポロジーは、1個のアミノ末端アスパラギンに連結
されるグリコシル化部位およびH2ドメインを、機能的カリウムチャンネル形成
に対する絶対的要求である孔形成ドメインによる外側からの
膜の浸透を可能にする細胞の外側に配置する。
実施例6
酵母でのラット心房遅延性整流性カリウムチャンネルの機能的発現。植物の内部
整流性カリウムチャンネルをコードするプラスミドpKAT1、ラット心房遅延
性整流性カリウムチャンネルをコードするプラスミドpRATRAK、プラスミ
ドpDmORF1、およびコントロールのプラスミドpYESを含有するCY1
62の形質転換体を、様々な塩化カリウム濃度を含有するura培地を欠くアル
ギニン−リン酸−ブドウ糖寒天培地[ロドリゲス−ナヴァロ(A.Rodriguez-Nava
rro)とラモス(J.Ramos)、ジャーナル オブ バクテリオロジー(J.Bacteriol.
)159、940-945、(1984)]上で培養する(第7図)。pKAT1、pRATRA
K、およびpDmORF1を含有する株は全てカリウムの低濃度を含有する培地
上でのCY162の増殖を援助するが、一方、pYES2含有CY162細胞は
、高カリウム濃度を含有する培地上でのみ増殖し、いくつかの異なるタイプの異
種性カリウムチャンネルが高親和性のカリウムの取り込みを提供するよう機能す
ることを指摘する。
pRATRAKは、RATRAKのタンパク質コード配列を、PCRを使用し
て5’のHind IIIおよび3’のXba I切断部位を添加するように修飾することに
より構築される。加えて、4個のA残基が、良好な酵母の翻訳開始部位を提供す
るよう、イニシエーターATGのすぐ5’に隣接する配列に加えられる。修飾さ
れた配列を酵母発現ベクターpYES2(インヴィトロジェン(Invitrogen))の
Hind IIIおよびXba I切断部位にクローニングし、pRATRAKを形成する。
実施例7
異種性カリウムチャンネルの機能的発現のバイオアッセイ
増殖に関して異種性カリウムチャンネル依存性の酵母株は非特異的カリウムチ
ャンネル遮断化合物に感受性であるはずである。いくつかの化合物のカリウムチ
ャンネル遮断特性を試験するため、便宜的寒天プレートバイオアッセイを採用す
る。pKAT1、pRAKTAK、pDmORF1およびpYES2を含有する
株を、uraを欠きかつ塩化カリウムの様々な量を含有するアルギニン−リン酸
−ブドウ糖寒天培地で培養する。アルギニン−リン酸−ブドウ糖培地は標準的合
成酵母培養培地に存在するカリウムイオンおよびアンモニウムイオンからの妨害
を避けるために使用する。滅菌したフィルターディスクを寒天表面に置き、そし
てカリウムチャンネルを遮断するイオン、塩化セシウム、塩化バリウムおよびT
EAで浸す。異種性カリウムチャンネル含有株の増殖は、チャンネル依存性の様
式でカリウムチャンネルを遮断するイオンにより阻害される。DmORF1依存
性の増殖は塩化バリウムにより妨害されるが、しかし塩化セシウムもしくはTE
Aにより阻害されない。KAT依存性の増殖は塩化バリウム、塩化セシウムおよ
びTEAにより妨害される。RATRAK依存性の増殖は、pKAT1よりも相
当より大きな程度、塩化バリウム、塩化セシウムおよびTEAにより妨害され、
pRATRAK含有細胞のより遅い増殖速度を部分的に反映する。これらの観察
は、これらのチャンネルが当該変異酵母細胞の増殖を援助することを確かにし、
また、カリウムチャンネル機能を妨害する化合物のスクリーニングのための酵母
のバイオアッセイの効力を立証する。コントロールのpYES2含有株は、適用
された塩化カリウムおよび塩化カリウムの同種物塩化ルビジウムの周囲でのみ増
殖する。
実施例8
カリウムチャンネル活性を変化させる化合物の同定
異種性カリウムチャンネルの発現により低カリウム濃度含有培地での増殖が可
能とされた酵母株を、チャンネル機能を妨害する化学的化合物について多様な構
造のそれらのライブラリーをスクリーニングするのに使用する。pKAT1、p
RATRAK、pDmORF1、pCeORF1、およびpYES2−TRK1
を含有するCY162細胞(104/ml)を、500cm2のプレート中のuraを欠きか
つ0.2mM塩化カリウムを含有するアルギニン−リン酸−ブドウ糖寒天培地200ml中
で培養する。pYES2−TRK1をもつCY162細胞を、当該酵母株に対し
非特異的影響を有しかつ従って異種性カリウムチャンネルに対し特異的に活性で
はない化合物を同定するためのコントロールとしてアッセイに包含する。多様な
構造の化学的化合物のサンプル(DMSO中の10mg/ml溶液2μl)を、24×24
の配列中の硬化させた寒天培地の表面に適用する。当該プレートを30℃で2日間
インキュベーションする。この間に、適用した化合物が寒天培地中に放射状に拡
散する。異種性カリウムチャンネル遺伝子をもつ株に対する適用した化合物の影
響をpYES2−TRK1をもつ株と比較する。pYES2−TRK1をもつ株
の周囲にみとめられる帯よりも異種性カリウムチャンネルをもつ細胞を含有する
プレート上でより大きな適用点の周囲の増殖阻害の帯の原因となる化合物は、選
択的カリウムチャンネル遮断薬と考えられる。pYES2−TRK1をもつ株の
周囲にみとめられる帯よりも異種性カリウムチャンネルをもつ細胞を含有するプ
レート上でより大きな適用点の周囲の増殖増強の帯を誘発する化合物は、選択的
なカリウムチャネル開放物質と考えられる。
実施例9
2電極電圧固定法によりアッセイされるX.レヴィス(X.laevis)卵母細胞での
DmORF1誘発性の電流
pDmORF挿入物のDNA配列分析は、1個の長いORFによりコードされ
るタンパク質が既知のカリウムチャンネルと共通の性質を所有することを強く示
唆する。この仮説を試験するため、DmORFによりコードされる推定のカリウ
ムチャンネルの電気生理学的性質を、X.レヴィス(X.laevis)卵母細胞での発
現により検査した。電流を2電極全細胞電圧固定法により測定した。DmORF
1の読み取り枠をコードするDNA配列を以下のオリゴヌクレオチドを使用する
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した:
MPO23:ATAAAGCTTAAAAATGTCGCCGAATCGATG
GAT[配列番号22]
MPO24:AGCTCTAGACCTCCATCTGGAAGCCCATGT
[配列番号23]
全長のPCR産物をpSP64ポリA(プロメガ(Promega))の対応する部位中
にクローニングしpMP147を形成した。鋳型DNAは、Eco RIおよび製造元
の説明書に従ってメッセージ マシーン(Message Machine)(アンビオン(Ambion
))インビトロ転写キットを使用して転写されたRNAで直鎖状にした。当該R
NAのサンプルをMOPS−酢酸−ホルムアルデヒドアガロースゲル中で分離し
、そしてRNA含量を臭化エチジウム染色により推定した。残りはドライアイス
上に保存した。X.レヴィス(X.laevis)卵母細胞を単離し、そして、5−20ng
の転写物を含有する滅菌TE50nlを公表された処置に従って注入した。3日後、
全卵母細胞の電流を2電極電圧固定法を使用して記録した。電極は3M塩化カリ
ウムを含有しかつ0.3−1.0MΩの抵抗を有した。記録は低(10mM)もしくは高(9
0mM)塩化カリウムのいずれかの存在下に室温で一定の灌流を行い実行した。X
.レヴィス(X.laevis)卵母細胞で発現されるDmORF1遺伝子産物の2電極
電圧固定法は、電位依存性およびカリウム依存性のカリウムチャンネルの特性を
立証する。低カリウム濃度では、DmORF1は脱分極電位で外側への電流を表
した。高カリウム濃度では、DmORF1は内側へおよび外側への双方の電流を
表す。DmORF1チャンネルはカリウムに対する高度の選択を表し、また、カ
リウム>ルビジウム>アンモニウム>セシウム>ナトリウム>リチウムの順番の
陽イオン選択性を示す。カリウム電流は塩化バリウムにより大きく減衰された。
実施例10
ノーザンブロッティング分析により決定されるD.メラノガスター(D.melanoga
ster)でのDmORF1発現の発達上の調節
D.メラノガスター(D.melanogaster)発現ライブラリーからのpDmORF
1の単離は、当該挿入物がその種からのmRNA起源の内部に含有されることを
強く示唆する。DmORF1発現の発達上の調節の詳細な理解は新規の殺虫剤の
標的としてのDmORF1の使用戦略の決定を促進するはずである。DmORF
1発現を特徴づけるため、D.メラノガスター(D.melanogaster)の生活環の様
々な段階からのポリA RNAのノーザンブロッティング分析を実施した。
胚、幼虫および成虫形態からのD.メラノガスター(D.melanogaster)ポリA+
RNA(インヴィトロジェン(Invitrogen)、5μg)を、標準
的処置に従ってMOPS−酢酸−ホルムアルデヒドアガロースゲル中で分離した
。このゲルを臭化エチジウムで染色しそして写真撮影して分子量マーカーとして
使用される18Sおよび28SリボソームRNAの位置に印をつけた。RNAを毛管
作用により10×SSPEでニトロセルロースに移した。当該ブロットを風乾し、
80℃で1時間ベーキング(baked)し、そして4×SSPE、1%SDS、2×デ
ンハルト(Denhardt's)液、0.1%一本鎖DNA中、68℃で2時間プレハイブリダ
イゼーションした。
DmORF1の2.4kbのXho I断片をpDmORF1から単離し、そしてレディ
−トゥ−ゴー(Ready-to-Go)キット(ファルマシア(Pharmacia))を使用し、製造
元の説明書に従ってα−32P dCTPで標識した。このプローブを100℃で5
分間加熱することにより変性し、その後氷水浴中で冷却した(quenching)。当該
プローブをプレハイブリダイゼーション溶液に添加し、そしてハイブリダイゼー
ションを68℃で24時間継続した。
当該ブロットを2×SSPE、0.1%SDSで室温で簡単に、その後、0.5×S
SPE、0.1%SDSで65℃で2時間洗浄した。当該ブロットを風乾し、そして
増感スクリーンを使用して反射X線フィルム(NEN)を−70℃で48時間感光さ
せた。
ノーザンブロッティング分析は、DmORF1プローブがD.メラノガスター
(D.melanogaster)の胚、幼虫および成虫形態から単離したおよそ2.8kbのmRN
A種とハイブリッド形成することを指摘する。DmORF1のmRNAの長さは
予測されるORFの長さによく対応する。かように、DmORFはD.メラノガ
スター(D.melanogaster)の生活環の全発達段階で発現される。
実施例11
インビトロでのDmORF1遺伝子産物の発現
pDmORF1挿入物のDNA配列分析は、既知のカリウムチャンネルに共通
の保存されたアミノ酸配列ドメインをもつただ1個の長いORFを示す。当該D
NA配列は長さ618アミノ酸のタンパク質をコードするのに十分なORFを予測
する。DmORF1ポリペプチドは、その区分が血漿膜にまたがることを示唆す
る長さが少なくとも20疎水性アミノ酸の4区分を含有する。加えて、DmORF
1タンパク質配列はアミノ酸58−60に、Nに連結される推定のグリコシル化部位
(Asn−Thr−Thr)を含有する。DmORFの予測される大きさのタン
パク質がpDmORF1中の挿入物から発現されることを確認するため、また、
DmORF1がグリコシル化されるという主張を試験するため、pDmORF1
を、連結したインビトロ転写/翻訳をさせる鋳型として使用した。
プラスミドpMP147を鋳型として使用し、TnT結合転写−翻訳キット(
プロメガ(Promeega))を使用し、製造元の説明書に従って35Sで標識したDmO
RF遺伝子産物をインビトロで産生した。発生期のDmORF1ポリペプチドの
グリコシル化は、転写−翻訳反応へのイヌ膵ミクロソーム(プロメガ(Promeega)
)の添加により達成された。グリコシル化されたDmORFタンパク質のサンプ
ルをエンドグリコシダーゼHで処理して添加された炭化水素部分を除去した。ア
リコートをTCAで沈殿させてそしてGF/Cフィルター上に収集し、エタノー
ルで洗浄し、乾燥しそして計測した。同等のcpmをSDS−PAGEにより分
離した。当該ゲルを可溶性蛍光アンプリファイ(Amplify)(アマーシャ
ム(Amersham))に浸漬し、そしてワットマン(Whatman)3MM濾紙上へ乾燥した
。乾燥したゲルで反射X線フィルムを室温で感光させた。
DmORF1遺伝子産物のインビトロでの翻訳は68kDaのポリペプチドを産生
した。これは当該ORFの予測される分子量と矛盾しない。イヌ膵ミクロソーム
の存在下でのDmORF1の翻訳は、低減された電気泳動の移動性をもつタンパ
ク質の合成に帰着した。これは発生期のポリペプチドのグリコシル化と矛盾しな
い。グリコシル化されたDmORFのエンドグリコシダーゼHでの処理は、炭化
水素部分の除去に際して予期されるようなその相対的移動性を増大させた。かよ
うに、当該DmORF1挿入物は、予期される分子量をもつ糖タンパク質の発現
を支配することが可能である。エンドグリコシダーゼH処理は、Nに連結される
グリコシル化により添加された糖に矛盾しない炭化水素残基を除去する。
実施例12
酵母で発現されたDmORF1の高親和性のカリウムイオン取り込みおよび選択
性。
DmORFの発現はCY162細胞がカリウムの低濃度を含有する培地で増殖
することを可能にする。これは、DmORF1が高親和性のカリウム取り込み能
力を提供することを意味する。DmORF1含有CY162細胞のカリウム取り
込み特性を特徴づけるため、86Rbの取り込みの研究を実行した。このカリウム
同種物の取り込みの検討は、DmORF1によるカリウム取り込みの重要な局面
を示した。
異種性カリウムチャンネル発現プラスミドを含有する酵母株、CY162−D
mORF1、CY162−pKATおよびコントロール株CY162−pYES
2(クロンテック(Clontech))を、0.1M塩化カリウム
含有SCGal−ura中で一夜培養した。細胞を採集し、滅菌2回蒸留水で洗
浄し、そしてCa−MES緩衝液中で6時間カリウムイオンを枯渇させた。細胞
を再度洗浄し、そしてCa−MES緩衝液中に86RbClを含有する培養チュー
ブに分配(細胞108個/チューブ)した。当該チューブを室温でインキュベーシ
ョンし、サンプルを様々な時間間隔で濾過しそして計測した。細胞内への86Rb
の取り込みが表された。2回の繰り返し分析について、86Rbは一定に保ち、そ
してバリウムイオンを変動させてKi値を決定した。
DmORF1によりコードされる高親和性のカリウム取り込み能力はカリウム
同種物86Rbの高親和性の取り込みも同様に可能にする。バリウムは、2回の繰
り返し分析で立証されるように、μMのKiで86Rbの取り込みを阻害した。高親
和性の86Rb取り込みはコントロールのCY162−pYES2細胞でみとめら
れず、また、CY162−pKAT細胞内への86Rb取り込みはその公表された
特性と矛盾しない。
実施例13
酵母でのドロソフィラ メラノガスター(Drosophila melanogaster)カリウムチ
ャンネルの発現。
ショウジョウバエ ドロソフィラ メラノガスター(Drosophila melanogaster
)での電位依存性カリウムチャンネルの多様性は、6個の遺伝子、Shaker
、Shab、Shal、Shaw、EagおよびSloにより大部分がコードさ
れる。酵母でのこれらのカリウムチャンネルの発現は新規の殺虫化合物のスクリ
ーニングアッセイへのそれらの導入を可能にし、また、それらのイオンチャンネ
ルの性質ならびに活性化および阻害性の特性をもつ化合物への感受性の特徴づけ
を容易する。
ドロソフィラ メラノガスター(Drosophila melanogaster)カリウムチャンネ
ルをコードするDNA配列を、5’にHind IIIもしくはKpn I切断部位、および
3’にXba I、Sph IもしくはXho I切断部位を添加する合成オリゴヌクレオチド
を使用するPCRにより増幅した:
PCR反応の鋳型として使用されたプラスミドは:pBSc−DshakerH
37、pBSc−dShab11、pBSc−dShal2+(A)36、pBS
cMXT−dShaw[ウェイ(A.Wei)、コヴァルビアス(M.Covarrubias)、バ
トラー(A.Butler)、ベイカー(K.Baker)、パク(M.Pak)、サルコフ(L.Salkoff
)、サイエンス(Science)248、599-603(1990)、サルコフ(L.Salkoff)により提供
される]、pBScMXT−slo,v4[アトキンソン(N.S.Atkinson)、ロ
バートソン(G.
A.Robertson)、ガネツキー(B.Ganetzky)、サイエンス(Science)253、551-555(
1991)、サルコフ(L.Salkoff)により提供される]、およびpBIMCH20
Eag[CH20][ヴァルムケ(J.Warmke)、ドライスデール(R.Drysdale)、
ガネツキー(B.Ganetzky)、サイエンス(Science)252、1560-1564(1991)、ブルッ
ゲマン(A.Bruggemann)、パルド(L.A.Pardo)、シュトゥーマー(W.Stuhmer)、
ポングズ(O.Pongs)、ネイチャー(Nature)365、445-448(1993)、ガネツキー(B.
Ganetzky)により提供される]。
増幅された断片を適切な制限エンドヌクレアーゼで切断し、ジーンクリーン(G
eneclene)(バイオ(Bio)101)を使用して精製し、そしてpYES2(インヴ
ィトロジェン(Invitrogen))中の対応する切断部位に連結した。CY162細胞
は、組み立てたドロソフィラ メラノガスター(Drosophila melanogaster)カリ
ウムチャンネル発現プラスミドで塩化リチウム法により形質転換し、そして0.1M
塩化カリウム含有SCD−ura寒天培地上で培養した。選択された形質転換体
は、1−5mMの塩化カリウムを含有するアルギニン−リン酸−ガラクトース(2
%)/ショ糖(0.2%)−ura寒天培地上での増殖を試験した。pKAT1も
しくはpDmORF1を含有するCY162細胞をポジティブコントロールとし
て培養し、また、pYES2含有CY162細胞をネガティブコントロールを供
給するために増殖した。
ドロソフィラ メラノガスター(Drosophila melanogaster)カリウムチャンネ
ル発現プラスミドをもつCY162細胞は、増殖が機能的カリウムチャンネルの
発現に依存する条件下で生存する。1−3mMの間のカリウムイオン濃度では、ネ
ガティブコントロールのpYES2含有CY
162細胞は不十分に増殖する。ドロソフィラ メラノガスター(Drosophila me
lanogaster)カリウムチャンネルShal、ShawおよびEagの発現はCY
162の増殖を本質的に改善する。これらの結果は高親和性のカリウム取り込み
能力を提供するドロソフィラ メラノガスター(Drosophila melanogaster)カリ
ウムチャンネルと矛盾しない。この能力は、CY162(trk1 trk2)
細胞が欠いているTRK1によりコードされる本来の高親和性のカリウム移送能
力に取って換わるのに見たところ十分である。
実施例14
カリウムチャンネルとの相同性をもつ新規のC.エレガンス(C.elegans)配列の
クローニング。
この技術の適用性を新規の駆虫活性をもつ化合物を発見するのに発展させるた
め、CY162細胞を、C.エレガンス(C.elegans)mRNAから合成されたc
DNA(インヴィトロジェン(Invitrogen))を使用して構築したpYES2に基
づく酵母発現ライブラリーで形質転換した。実施例1に記述される選択計画を生
き残った酵母細胞から単離したプラスミドDNAを、高温サイクルシークェンシ
ング(アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)により実行される自
動DNA配列分析にかけた。ジーンワークス(Geneworks)DNA配列分析ソフト
ウェア(インテリジェネティクス(Intelligenetics))を使用して未処理のDN
A配列情報を整列しそして読み取り枠を同定する。pCORK中の1.4kbの挿入
物のDNA配列が第9図に表される。当該cDNAの5’非翻訳配列はこの構築
物中に存在する。434アミノ酸のタンパク質(予測される分子量48kDa)をコード
するのに十分なただ1個の長い読み取
り枠がpCORK中に予測される[配列番号38]。コンセンサスポリアデニル
酸化部位AATAAAは3’非翻訳配列中の位置1359−1364に存在し、また、そ
の後に15個の連続するA残基の広がりがある。CORKのORFはカリウムチャ
ンネル中に見出される孔形成H5ドメインに似た構造的特徴を含有する。2個の
推定の孔形成H5ドメイン(残基76−39および150−162)がカリウム選択性に必
要とされるG−Y/F−Gトリペプチドモチーフを含有する[ヘギンボタム(L.
Heginbotham)、アブラムソン(T.Abramson)、マッキノン(R.MacKinnon)、サイ
エンス(Science)258、1152-1155、(1992)]。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C12R 1:865)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),AM,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
N,CZ,EE,FI,GE,HU,IS,JP,KG
,KP,KR,KZ,LK,LR,LT,LV,MD,
MG,MN,MX,NO,NZ,PL,RO,RU,S
D,SG,SI,SK,TJ,TM,TT,UA,US
,UZ,VN