【発明の詳細な説明】
[発明の名称]
免疫細胞の増殖性老化の診断試験
政府の権利
本発明は、米国政府からの許可、即ち、NIH(National Institutes of Heal
th)からの許可第AG05309号,第AG00427号及び第AG00424
号、により支持された。従って、当該政府は本発明にある特定の権利を有する。
発明の背景
本発明は、ある種の免疫不全のための、特に高齢者用の診断試験に向けられて
いる。
高齢者層に共通した疾患の臨床及び病理学的証拠を実証する膨大な文献がある
。これ等の状態の幾らかは直接に特定の免疫不全に向けて追跡され得るが、その
他は明確に独立した免疫的老化である。これ等2つの両極端間には変化する程度
の免疫上の関与を示す疾患又は状態を表す”灰色の領域(grey area)”があり、
その幾らかは直ちに明確にはならない。元々Roy Walfordによって彼の”Immunol
ogical Theory of Aging”(R.L.Walford,”Immunologic
Theory of Aging”(Munksgaard,Copenhagen,1969))中で、予言されたように、
年齢に関係する免疫機能の変化は広範囲の退行性の疾患で通常病因として免疫を
考慮されない疾患に寄与しているはずである。故に、より微細な免疫上の関係の
幾つかを明らかにすることが高齢者のための適切な予防又は治療法を開発するた
めの努力の重要な局面である。
特に、年を取ることはB及びT両方の細胞に関与する免疫機能における劇的な
減退を伴う(M.L.Thoman & W.O.Weigle,”The Cellular Bases of Immunose
nescence,”Adv.Immunol. 46;221-261(1989);R.A.Miller,”Aging and th
e Immune Response,”in Handbook of the Biology of Aging(E.L.Schneider
& J.W.Rowe,eds.,3ded.,Academic Press,Inc.,1990),ch.9,pp.157-
180))。
特定の免疫上の不全、及びこれ等の不全から生じ、又は少なくとも関与される
加齢によるある特定の病気との間の推測されている関係を探求する重要性は、下
記刺激的な3組の発見により際だっている:
S.Wayne et al.,”Cell-Mediated Immunity as Predictor of Morbidity and
Mortality in Subjects Ovcr 60,”Exp . Gerontol, 45; M45(1990),J.C.Ro
berts-Thompson et al.,”Aging,Immune Response and Mortality,Lancet 2;
368(1974),及びD.M.Murasko et al.,”Association of Lack of Mitogen In
duced Lymphocyte Proliferation with Increased Mortality in the Elderly,
”Aging;Immunol .& Infect,Dis. 1;1(1988)。
これ等の研究者は、高齢者についての予測研究の中
で、共通のリコール(common recall)抗原に対するDTH試験及びT細胞マイトジェ
ン刺激(mitogen stimulation)試験の両方における低応答性が、その後の数年間
に死亡すると予測出来るとの報告をした。後者の2つの研究は、死亡の最も共通
の原因は、急死、心臓血管の疾患及び感染症であったと記載した。更に、D.M.M
urasko et al.(1988),(前記)は、免疫機能試験は、腫瘍性疾患又は免疫抑制
の治療中の患者が除去されたときでさえ、その前兆の値を維持した。故に、免疫
上の測定は、かなり危険である高齢者を特定する生物学的指標として可能性ある
ものとして使用され、それ等の予測的な値は死亡が”免疫上のもの”として基本
的には通常考慮されない状態によるものであるときでさえ維持される。
より大きな危険状態なる高齢者群は、細菌性及びウイルス性両方の感染性の病
気を含む。高齢者にとってより厳しい感染性疾患の例は、肺結核とインフルエン
ザである。ダウン症候群(Down's syndrome)はヒトでの加速する加齢のモデルと
して考慮され、ダウン症候群患者は、かなり増大する感染性疾患、特に呼吸器感
染による死亡の危険を有する(J.Oster et al.,in Proceedings of the Intern ational Copenhagen Congress Scientific Study of Mental Retardation
(1964)
,vol.1,p.231)。
更に、これ等の患者は、おそらくウイルス除去能力の低下のためひどく増大す
るB型肝炎表面抗原(hepatitis B
surface antigen)を有する(G.R.Burgio & A.G.Ugazio,”Immunity in Down's
Sybdrome , ”Eur .J.Pediatr,127; 293(1978))。
免疫上減退の他の局面は、高齢者における後天的免疫不全症候群(AIDS)の進行
の悪化となる(S.Ferro & J.E.Salit , ”HIV Infection in Patients over 55
Years of Age,”J .AIDS 5; 3481992))。
高齢者における免疫性の減退のもう1つの様相は、悪性腫瘍が複雑な多重因子
の進行であるにもかかわらず悪性腫瘍(malignancy)の増大があるようだ。免疫不
全の高齢者の増大する悪性腫瘍の発現に繋がるプロセスの1つの例は、エプスタ
イン・バーウイルス(Epstein-Barr virus EBV)の行動により提供される。EBVに
より引き起こされる急性感染症疾患である伝染性単核症は、しばしば子供よりも
大人においてよりひどく、EBVの頑固さが悪性腫瘍に導かれることがよく知られ
ている。より若いドナーに比較して79歳を超えた健常者のドナーからの著しく増
加するEBVで形質転換されたリンパ芽球腫株化細胞(EBV-trnsformed lymphblasti
d cell line)があることが証明されている(S.R.S.Rangan & P.Armatis,"Enha
nced Frequency of Spontancous B Cell Lines from Epistein-Barr Virus(EBV)
Seropositive Donors 80 Years and Older,"EXP .Gerontol,26; 541(1991))。
高齢者に、より共通する多くの他の疾病及び状態は幾つかの免疫上の成分を有
している。
これ等はアテローム性動脈硬化症、糖尿病、アルツ
ハイマー症、及び肺病を含む(R.B.Effros,”Immunosenescence-Related Disea
ses in the Elderly,”Immunl.& Allerg. Clinics of North America 13;695-
712(1993))。
高齢者の免疫を基礎とする医学上の問題の更にもう1つの例は特定のワクチン
に対する減少する抗体応答である(R.B.Effros(1993)(前記))。
T及びTリンパ球の相対割合、又はCD4及びCD8セット間のT細胞の寄与における
変化は、ときには特別の臨床試験群又は動物群落において説明可能ではあるが、
免疫機能における年齢に関係する退行を説明していないようだということの一致
が見られた(R.A.Miller(1990),前記)。
しかしながら、これ等の免疫的不全の本質に関する大きな研究機関による研究
にも拘わらず、年齢に伴う免疫能の進行する退行を説明する公知のメカニズムは
無い。又、年代順にどの歳老齢者の部分的集合が免疫的に危険な状態にあるか特
定する信頼すべき生物学的マーカーも無い。
従って、免疫的老化を測定する改良法に対する要求が存在する。そのような改
良法は広く利用可能でなければならず、小さなサブ群の免疫能細胞のみに見出さ
れるか、又はその発現が個体間で著しく変化するマーカー又は抗原に従属するも
のであってなならない。そのような方法は、予測的値の結果を与えるが、通常の
死亡や疾病のためと、特別に免疫が関与する状態への感受性の両方のために比較
的実施が同様に容易で分かり易いものでなければならない。そのような方法は、
又細胞の数多くのパラメーターが並行して測定され得るように他のマーカーのた
めの他のスクリ−ニング法と組合わせられるものでなければならない。
概要
免疫的老化(immune senescence)を測定する改良法は、CD28抗原を欠如する
T細胞が、抗原との再刺激、抗CD28との組合せで抗CD3抗体でさらしたり、又は
高容量のIL-2でさらすような刺激で増殖において阻害されるという発見に基づい
ている。故に、CD28+T細胞を検出すること及びCD28T細胞からそれらを分離する
ことは免疫的老化を測定する方法を提供する。
本発明の1つの様相は、細胞集団の中で免疫性老化細胞を免疫性非老化細胞か
ら識別する方法である。この方法は、次のステップを含む:
(1) 細胞集団を供給;
(2) 当該細胞集団を、CD28抗原に特異的なモノクローナル抗体と反応させ、当該
抗体は検出可能な標識で標識されており、その結果当該モノクローナル抗体はCD
28抗原に陽性の細胞に結合し、その抗体に結合する細胞は免疫的に非老化で、そ
の抗体と結合出来ない細
胞は免疫的に老化である;及び
(3) 当該細胞に結合される検出可能な標識を観察することによりモノクローナル
抗体と反応する細胞を検出し、それにより免疫性老化細胞を免疫性非老化細胞か
ら識別し、そして、(イ)当該集団の中で免疫性老化細胞の数;(ロ)当該集団の中で
非老化細胞の数;及び(ハ)当該集団の中で免疫性非老化細胞に対する免疫性老化
細胞の割合の何れかを測定する。
典型的には、検出可能な標識は蛍光性標識である。典型的には、細胞に結合さ
れる検出可能な標識を観察することによりモノクローナル抗体と反応する細胞を
検出するステップは、蛍光活性細胞分画(FACS)を使用して実施される。細胞集団
は、インビトロで培養されるリンパ球の集団であり得る。この場合、(イ)当該集
団の中で免疫性老化細胞の数;(ロ)当該集団の中で非老化細胞の数;及び(ハ)当該
集団の中で免疫性非老化細胞に対する免疫性老化細胞の割合の何れかの測定が、
培養されたリンパ球中のアネルギー(anergy)の存在の診断となる。培養されたリ
ンパ球中のアネルギーはリンパ球源である組織体中の減少する遅滞型高感受性又
は減少する力価の少なくとも1種と相関され得る。その代替として、細胞集団は
患者から得られるリンパ球の集団となり得る。
本発明の他の様相は、細胞集団の中で免疫性非老化
細胞から免疫性老化細胞を識別する方法である。その方法は、次のステップを含
む:
(1) 細胞集団を供給;
(2) 当該細胞集団を、CD28抗原に特異的な第1のモノクローナル抗体と反応させ
、当該抗体は検出可能な第1の標識で標識されておりその結果当該モノクローナ
ル抗体はCD28抗原に陽性の細胞に結合し、その抗体に結合する細胞は免疫的に非
老化であり、その抗体と結合出来ない細胞は免疫的に老化である;
(3) 細胞集団をCD3抗原に特異的な第2のモノクローナル抗体と反応させて、こ
の抗体は第1の検出可能な標識から識別可能な第2の検出可能な標識で標識され
、その結果第2のモノクローナル抗体はCD3抗原に陽性の細胞と結合し、CD3抗原
に陽性の細胞のサブ集団を明確に境界を限定し、及び
(4) CD3抗原に陽性の細胞のサブ集団において、細胞に結合される第1の検出可
能な標識を観察することにより第1のモノクローナル抗体と反応する細胞を検出
し、それによりCD3-陽性細胞のサブ集団において免疫性老化細胞を免疫性非老化
性細胞から識別し、そして、(イ)当該集団の中で免疫性老化細胞の数;(ロ)当該集
団の中で非老化細胞の数;及び(ハ)当該集団の中で免疫性非老化性細胞に対する
免疫性老化細胞の割合の何れかを測定する。
典型的には、第1及び第2の検出可能な標識は蛍光性標識であり、第1の抗原
に結合される細胞と同様CD3抗原に対して陽性の細胞のサブ集団が蛍光的に活性
化された細胞分画(FACS)により検出される。
典型的には、FACSが2次元プロットを与える1つのステップの中で実施される
。
この方法は、更に、次のステップを含むことが出来る:
(5) 免疫的に非老化(CD28陽性)又は免疫的に老化の(CD28陰性)のどちらかである
CD3陽性細胞を、検出可能な標識で標識される抗CD4モノクローナル抗体及び抗CD
28モノクローナル抗体より成る群から選択される少なくとも1種の他の抗体と反
応させ、及び
(6) 免疫的に非老化又は免疫的に老化のどちらかであり他の抗体の少なくとも1
種に結合するCD3陽性細胞の割合を、当該細胞に結合される検出可能な標識を観
察することにより測定する。
本発明の他のもう1つの様相は、細胞集団の中で免疫性老化細胞を免疫性非老
化細胞から分離する方法である。この方法は、次のステップを含む:
(1) 細胞集団を供給;
(2) 当該細胞集団を、CD28抗原に特異的なモノクローナル抗体と反応させ、当該
抗体は検出可能な蛍光性標識で標識されておりその結果当該モノクローナル抗
体はCD28抗原に陽性の細胞に結合し、その抗体に結合する細胞は免疫的に非老化
であり、その抗体に結合出来ない細胞は免疫的に老化である;及び
(3) 蛍光活性細胞分画(FACS)により免疫性老化細胞から免疫性非-老化性細胞を
分離して、第1サブ集団の免疫性非老化性細胞及び第2サブ集団の免疫性老化性
細胞を製造する。
本発明の他の様相は、この方法で製造される第1及び第2のサブ集団である。
本発明の更にもう1つの様相は、分離した容器内で下記のものを含有する細胞
集団における免疫性非老化細胞から免疫性老化性細胞を識別するためのキット:
(1) 第1の検出可能な標識で標識された抗CD3モノクローナル抗体;及び
(2) 第2の検出可能な標識で標識された抗CD28モノクローナル抗体。
当該キットは、追加の分離された容器内に、更に下記のものを含有することが出
来る:
(3) 検出可能な標識で標識された抗CD4モノクロナール抗体及び抗CD8モノクロナ
ール抗体より成る集団から選択される少なくとも1つの他のモノクロナール抗体
。
図面の簡単な説明
本発明の特徴、様相及び有利性は、下記の発明の詳細な説明、添付の請求項及
び付随する図を参考にすることで、更に理解することが出来る。
図1は、百歳以上の人(centenarians)及び対照群の抹消血T細胞のCD28の発現
を示している。1サンプルにあたり20,000細胞にてフローサイトメトリー解析を
行った[(A)対照群と百歳以上の人(cetenarians)の集団のCD28+の百分率平均(+S.
E.M):%CD28+=(CD28+細胞のアイソタイプ(isotype)control)/(全CD3+細胞の
アイソタイプcontrol));(B)個々のドナーのCD28/CD3比)]。
図2は、百歳以上の人及び対照群のドナーからのサンプルのフローサイトメト
リー解析による百歳以上の人及び対照群の抹消血の単核細胞上のCD28及びCD3の
発現を示している。各々のサンプルは実施例に示す2種類のモノクローナル抗体
により2重染色された。各々の象限にある数字は、陽性とスコアされた細胞の割
合を示す。
図3は、百歳以上の人におけるCD28+細胞とCD4/CD8比との相関を示す(r2=0.69
5,p<0.0001)。
図4は、インビトロの細胞老化に伴うCD28+の減少を示す。フローサイトメト
リー解析は、正常な大人のドナーからイニシエートされた培養T細胞で行われた
。”%増殖性生存期間完了(%proliferative lifespan completed)”に対する10
0%値は、老化前の完全に細胞群倍加(doublings)
が完了した細胞集団の累計に等しい。すべての老化培養細胞はCD3+>99%である
。当該図は、4人の個人のドナー由来の細胞を解析した4つの個々の実験におけ
るCD28発現の減少の代表である。
発明の詳細な説明
年齢に伴うT細胞の増殖性減退に関係している基本機構の解明のための努力に
より、私は、線維芽細胞老化のよく確率されたモデル系と類似した方法で、Tリ
ンパ球の増殖制御の研究のための培養系を開発した(L.Hayflick,"The Limited
in Vitro Lifetime of Human Diploid Cell Strains,"Exp Cell Rcs.180:367-
382(1965); T.H.Norwood& J.R.Ssmith,"The cultured Fibroblast-Like Cell as
a Model for the Study of Aging"in Hndbook of the Biology of Aging(C.E.F
inch & E.L.Schneider,eds.,Van Nostrand Reinhold Co.,New York,1985),pp
.291-321.)。本培養系の結果は、線維芽細胞と同様に、正常ヒトTリンパ球も有
限の増殖能を持つことを示している(Peillo et al,1989)。それにも関わらず、
その老化Tリンパ球は抗原認識及び細胞障害において正常に機能する(N.L.Peril
lo et al.,"Human T Lymphocytes Possess a Limited in Vitro Lifespan,"Exp .Gerontol
.24:177-187(1989))。特定のT細胞の共刺激(costimulatory events)
は、細胞障害性機能それ自身にとっては必ずしも必要ないが(A.Azuma et al.,
"CD 28-T Lymphocytes: Antigenic and Functional Properties,"J.Immunol.1
50:1147-1159(1993))、増殖を誘導する活性に必須であ
るので(C.H.June et al.,"T-Cell Interleukin 2 Gene Expression,"Molec .Cell.Biol
,7:4472-4481(1987))、T細胞老化における1つのCD28のような分子
の予想される関与が研究された。
CD28糖タンパク質は、ほとんどの成熟T細胞の表面に発現しているものである
が、T細胞抗原受容体(TCR)のエンゲージメント(engagement)に伴って起こる共
刺激においての重要な役割のために、最近の研究の注目の的になっている。CD28
の情報伝達が、(a)TCRと異なった経路を通して作用し、(b)サイクロスポリンA
に非感受性であり、そして(c)NF-κB様応答因子の誘導並びにリンフォカイン m
RNAの安定化によるIL-2遺伝子の転写の活性化において機能していると、最近の
報告によりわかっている(C.H.June et al.(1987)(前記); C.L.Verweij et al.,
"Activation of Interleukin-2 Gene Transcription via the T-Cell surface M
olecule CD 28 Is Mediated Through an NF-κB-Like Reponse Element,"J.Bio l.Chem
.266: 14179-14182(1991);M.K.Jenkins et al.,"CD 28 Delivers a C
ostimulatory Signal Involved in Antigen-Specifec IL-2 Production by Huma
n T Cells,"J.Immunol.147:2461-2466(1991))。
CD28の情報伝達がTCR刺激の結果の極めて重要な決定因子であるかもしれない
と、いくつかの実験的観察が示唆している。例えば、マウスに移植したメラノー
マへの実験的に誘導したT細胞を介した拒絶は、腫瘍細胞のCD28リガンドの存在
に完全に依存している(S.E.Townsend & J.P.Allison,"Tumor Rejection Aft
er Direct Costimulation of CD 2
8+T Cells by B7-Transfected Melanoma cells,"Science 259:368-370(1993))
。逆に、T細胞クローンの抗原性刺激後にCD28エンゲージメントがないのは、長
期間の抗原-特異的反応性低下の状態のためである(P.Tan et al.,"INduction of
Alloantigen-Speciffic Hyporesponsiveness in Human T Lymphocytes by Bloc
king Interaction of CD 28 with Its Natural Ligand B7/BB 1,"J.Exp.Med.1
77:165-173(1993))。
T細胞の最適な活性化における、新しく明らかになった共刺激の重要な性質に
おいて、インビボ及びインビトロの両方で、T細胞老化がCD28分子を持つT細胞
の割合の減少に関係し、それ故、免疫の老化はインビボで作動するヘイフリック
(Hayflick)の現象と相関するという仮定を検証するために本研究は行われた。
ここで用いられている「免疫的老化(immune senescence)」という用語は増殖
できなくなった免疫系の細胞、特にT細胞を言う。特に、抗原、抗CD28抗体と抗
CD3抗体との組み合わせ、又は高容量のIL-2でさらすことによる再刺激後の免疫
老化細胞においては、増殖は観察されない。これらの細胞は他の機能欠損は示さ
ない。
しかしながら、さらなる機能欠損を示し増殖できない細胞は免疫老化の定義に
は当てはまらない。
本発明の1つの様相は、細胞集団の中で免疫性老化細胞を免疫性非老化細胞か
ら識別する方法である。この方法は、一般には次のステップを含む:
(1) 細胞集団を供給する;
(2) 当該細胞集団を、CD28抗原に特異的モノクローナル抗体と反応させ、当該抗
体は検出可能な標識で標識されておりその結果当該モノクローナル抗体はCD28抗
原に陽性の細胞に結合し、その抗体に結合する細胞は免疫的に非老化であり、そ
の抗体に結合出来ない細胞は免疫的に老化である;及び
(3) 当該細胞に結合される検出可能な標識を観察することによりモノクローナル
抗体と反応する細胞を検出し、それにより免疫性老化細胞を免疫性非老化性細胞
から識別し、そして、(イ)当該集団の中で免疫性老化細胞の数;(ロ)当該集団の中
で非老化細胞の数;及び(ハ)当該集団の中で免疫性非老化細胞に対する免疫性老
化細胞の割合の何れかを測定する。
CD28抗原に対するモノクロナール抗体は、当該技術分野においてよく知られて
おり、ここで更に説明される必要はない。特に適当な抗CD28ものクローナル抗体
は、オランダのアムステルダムにあるブラッドトランスフュージョンの中央研究
所(Central Laboratoly for Blood Transfusion)により、製造、供給され、蛍光
性標識蛍光イソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)接合される。他の
抗CD28モノクロナール抗体は、この技術分野で公知であり、クロスコンペティテ
ィション測定法(crosscompetition assays)によるCD28抗原の同じエピトープに
結合する限り、使用され得る。これらのモノクロナール抗体を細胞に
結合する方法は、同様に公知でありここで更に説明する必要がない。典型的には
、これらの方法は、当該抗体を細胞の表面に等張(isotonic)かそれと殆ど同等の
緩衝生理食塩水中で結合するものである。緩衝生理食塩水は、同様に、ウシ血清
アルブミン(vovine serum albumin)のような担体タンパク質(carrier protein)
を有することが出来る。
示されたように、典型的には、検出可能な標識は、蛍光イソチオシアネート、
フィコエリスリン(phycoerythrin)、ローダミンイソチオシアネート(rhodamine
isothiocyanate)、又はテキサスレッド(Texas Red)のような蛍光性標識である。
これらの標識は、典型的には共有結合でモノクロナール抗体と結合され、そのよ
うな結合方法は、例えば、E.Harlow & D.Lane,”Antibodies;A Laboratory M
anual”(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New Yor
k,1988),353-358頁に記載されている。他の結合方法は同様にこの技術分野で
はよく知られている。
蛍光性標識は一般的には好ましいけれども、他の標識、放射線活性(radioacti
ve)標識、化学発光(chemiluminescent)標識、又は生物発光(bioluminescent)標
識等が使用され得る。もっと他の標識がこの技術分野でよく知られ、代替的なも
のとして使用され得る。
細胞に対し結合される検出可能な標識を観察することによりモンクローナル抗
体と反応する細胞を検出するステップは、代表的には、フロー血球計算(flow cy
tometry)
として同様によく知られている蛍光的に活性化された細胞分画[fluorescence a
ctivated cell sorting(FACS)]を使用して実施される。FACSの装置は、市販さ
れ購入可能であり、その使用法はここで更に説明される必要はない。FACSは、更
に、例えば、J.W.Goding,"Monoclonal Antibodies;Principles and Practice
"(2d ed.,Academic Press,London,1986),252-255頁に記載されている。FA
CSは、細胞の調製又は細胞の分析のどちらかに使用され得る。後述するように、
2次元的(two-dimensional)分析及び分離が、例えば4(2×2)集団へ細胞を分画し
て、実施され得る。
細胞集団は、インビトロ(in vitro)で培養された1集団のリンパ球(cultured
lymphocytes)であり得る。
(1)当該集団の中で免疫性老化細胞の数;(2)当該集団の中で非老化細胞の数;及
び(3)細胞集団の中で免疫性非老化性細胞に対する細胞に対する免疫性老化細胞
の割合の何れかの測定が、培養されたリンパ球中のアネルギー(anergy)の存在の
診断となる。後に示されるように、CD28-T細胞の存在はアネルギー(anergy)に連
結されている。培養されたリンパ球中のアネルギーは、減退する遅滞型過敏症又
はリンパ球起源である組織中で減少する抗体力価の少なくとも1種と相関され得
る。代替的には、細胞集団は、患者から得られる1集団のリンパ球であり得るが
、類似の診断結果が上記分析に
より得られる細胞集団の数及び/又は割合から引き出され得る。
本発明の他の様相は、細胞集団の中で免疫性非老化細胞から免疫性老化性細胞
を識別する方法である。その方法は、次のステップを含む:
(1) 細胞集団を供給する;
(2) 当該細胞集団を、CD28抗原に特異的な第1のモノクローナル抗体と反応させ
、当該抗体は検出可能な第1の標識で標識されており、その結果当該モノクロー
ナル抗体はCD28抗原に陽性の細胞に結合し、その抗体と結合する細胞は免疫的に
非老化であり、その抗体に結合出来ない細胞は免疫的に老化である;及び
(3) 細胞集団をCD3抗原に特異的な第2のモノクローナル抗体、この抗体は第1
の検出可能な標識から識別可能な第2の検出可能な標識で標識され、その結果第
2のモノクローナル抗体はCD3抗原に陽性の細胞と結合し、CD3抗原に陽性の細胞
のサブ集団を明確に境界を限定し、
(4) CD3抗原に陽性の細胞のサブ集団において、細胞に結合される第1の検出可
能な標識を観察することにより第1のモノクローナル抗体と反応する細胞を検出
し、それによりCD3-陽性細胞のサブ集団において免疫性老化細胞を免疫性非老化
性細胞から識別し、そして、(イ)当該集団の中で免疫性老化細胞の数;(ロ)当該
集団の中で非老化細胞の数;及び(ハ)当該集団の中で免疫性非老化性細胞に対す
る免疫性老化細胞の割合の何れかを測定する。
典型的には、この方法において、第1及び第2の検出可能な標識は蛍光性標識
であり、第1の抗原に結合される細胞と同様CD3抗原に対して陽性の細胞のサブ
集団が蛍光的に活性化された細胞分画(FACS)により検出される。
適当な抗CD3抗体はこの技術分野においてよく知られている。1つの特に適当
な抗CD3抗体はフィコエリスリン−結合抗CD3モノクローナル抗体であり、米国カ
リフォルニア州南サンフランシスコのカルタグ(Caltag)から入手可能である。他
の抗CD3モノクローナル抗体はこの技術分野で公知である。抗CD28抗体とのにつ
いては、他の抗CD3抗体が、クロス競争的測定(cross compettition assays)によ
るCD3抗原の同じエピトープに結合する限り、使用され得る。
典型的には、この方法において、第1及び第2の検出可能な標識は蛍光性標識
であり、第1の抗原に結合される細胞と同様CD3抗原に対して陽性の細胞のサブ
集団が蛍光的に活性化された細胞分画(FACS)により検出される。FACSは、典型的
には、2次元的プロットを与える1ステップの中で実施される。
この方法は、同様に、更に次のステップを含むことが
出来る:
(5) 免疫的に非老化(CD28陽性)又は免疫的に老化の(CD28陰性)のどちらかである
CD3陽性細胞を、検出可能な標識で標識される抗CD4モノクローナル抗体及び抗CD
28モノクローナル抗体を構成する集団から選択される少なくとも1種の他の抗体
と反応させ、
(6) 免疫的に非老化又は免疫的に老化のどちらかであり、他の抗体の少なくとも
1種と結合するCD3-陽性細胞の割合を、当該細胞に結合される検出可能な標識を
観察することにより測定する。
これ等の抗体は、サプレッサー(suppressor)T細胞からヘルパー(helper)T細
胞を識別するために使用される。典型的には、ヘルパーT細胞はCD4+であり、一
方、サプレッサーT細胞はCD8+である。これ等抗原のための適当なモノクローナ
ル抗体はこの技術分野においてよく知られている。その例は、フィコエリスリン
-結合抗CD4モノクローナル抗体及び蛍光イソチオシアネート-接合抗CD8モノクロ
ーナル抗体であり、両方共に米国カリフォルニア州南サンフランシスコのカルタ
グ(Caltag)から入手可能である。
他の抗体は、この技術分野で公知であり、使用され得る。
本発明の他のもう1つの様相は、細胞集団のなかで免疫性老化細胞を免疫性非
老化細胞から分離する方法
である。この方法はFACS装置の予備の能力を利用する。通常、この方法は、次の
ステップを含む:
(1) 細胞集団を供給する;
(2) 当該細胞集団を、CD28抗原に特異的なモノクローナル抗体と反応させ、当該
抗体は検出可能な蛍光性標識で標識されており、その結果当該モノクローナル抗
体はCD28抗原に陽性の細胞に結合し、その抗体に結合する細胞は免疫的に非老化
であり、その抗体に結合出来ない細胞は免疫的に老化である;及び
(3) 蛍光活性細胞分画(FACS)により免疫性老化細胞から免疫性非老化性細胞を分
離して、第1サブ集団の免疫性非老化性細胞及び第2サブ集団の免疫性老化性細
胞を製造する。
本発明の他の様相は、この方法で製造される分画された細胞集団である。これ
等の集団は第1サブ集団の免疫性非老化細胞、及び第2サブ集団の免疫性老化細
胞を含む。
これ等のサブ集団は、細胞を、静電気的にチューブに偏向を受けられる個々の
液体小滴の中に分離することにより単離され得る。
本発明のもう1つの他の様相は、分離した容器内で細胞集団における免疫性非
老化細胞から免疫性老化性細胞を識別するためのキットである。このキットは分
離された容器内で下記を含むものである:
(1) 第1の検出可能な標識で標識された抗CD3モノクローナル抗体;及び
(2) 第2の検出可能な標識で標識された抗CD28モノクローナル抗体。
当該キットは、追加の分離された容器内に、更に下記のものを含有することが出
来る:
(3) 検出可能な標識で標識された抗CD4モノクロナール抗体及び抗−CD8モノクロ
ナール抗体より成る集団から選択される少なくとも1つの他のモノクロナール抗
体。
本発明は、下記実施例により説明される。この実施例は説明する目的のみのた
めのものであり、本発明を限定するために意図されるものではない。
実施例
百歳以上の人及び長期間のT細胞培養におけるCD28陽
性細胞の減少
方法及び材料Tリンパ球の起源
末梢血のサンプルは21人の健康な百歳以上の人(CEPH)及び20人の25歳から69歳
の範囲の健康な対照群から得
られた。対照群は10人のUCLAのドナー集団と10人のCEPHドナー集団からなる。(
これら2つの集団からのCD28+T細胞の百分率の平均値は、UCLAのグループにお
いて全ての実験対照群の年齢が50又はそれ以上であるという事実にも関わらず、
明らかに異なっていた。)UCLAとCEPHの対照群ドナーは、UCLA及びセントルイス
血液バンク病院(Hospital St.Louis Blood Bank Crieria)のそれぞれの診断基準
により”健康”であり、そして、その百歳以上の人のすべては、「老化研究のた
めに健康なドナー」の募集広告に応答した人たちである。本研究はUCLAとCEPHの
ヒューマンユース(Human Use)委員会のガイドラインに従って行われ、すべての
課題は記述され、被験者の同意が得られたものである。単核細胞はフィコール-
ヒパーク密度(Ficoll-Hypaque density)遠心により単離され、液体窒素中で凍結
保存された。抗体染色のための調製において、サンプルは37℃で急速に解凍され
、20%のウシ胎児血清を含むRPMIで1回洗浄され、ハンクス液(Hanks Balanced
Salt Solution(HBSS))で2回洗浄された。細胞培養
T細胞培養は、以前記述したように(N.L.Perillo et al.(1989)(前記))、イニ
シエートされた。簡単に説明すると、106の単核細胞をの放射線照射(8,000Rad)
した106のアロジェネイックな(allogeneic)EBV形質転換B細胞と混ぜ合わ
せた。最初の10日の活性化期間の後、培養は、組み換え型IL-2(Amgen,Thousan
d Oaks,california,USA)を25Units/ml含むAIM VTMの無血清培地(Gibco,Gaither
sburg,Maryland,USA)にて行われ、そして、8×105/mlを越えたときはいつも、2
×105/mlの密度に継代した。
最初に活性化培養したのと同じようにリンパ芽球細胞を使用するように、再刺
激は3-4週ごとに行われた。各々の代において、(トリパンブルー染色排除により
測定された)生細胞数を記録し、その前の代からの集団の倍加(doubligs)を計算
するのに用いた。”%増殖性生存期間完了細胞(% proliferative lifespan com
pleted)”に相当する100%値は、老化前の完全に細胞分裂が終えた細胞集団の累
計に等しい(平均=23±7,範囲:11-57)。
老化した培養細胞はアロジェネイックな刺激細胞、CD3+CD28に対する抗体(mAbs)
又はIL-2の高容量添加に応答しての増殖が示されないものと定義される。生細胞
が減少しないのは増殖性の老化と関係する。フローサイトメトリー
以下の抗体が染色のために用いられた。フルオレセン-イソチオシアネート(FI
TC)接合のCD28に対するmAb(Central Laboratory for Blood Transfusion,Amste
rdam,Netherlands)、フィコエリトリン(PE)接合のCD3に対するmAb、FITC接合の
CD8に対するmAb、アイソタイプの対照であるIgG2
a-PE、IgG 1-FITC(全て、Caltag,South San Francisco,california,USAから)。
もっとも、CD3-PE及びCD28-FITC染色でも基本的には同じ結果である。対照群か
らのサンプルのいくつかがCD3-FITCに対するmAb及びCD28-PEに対するmAb(Becton
-Dickinson,San Jose,California USA)で染色された。百歳以上の人からの全
てのサンプルと対照群の10サンプルはCD28及びCD3で2重に染色され、2色のヒス
トグラムで分析された。106の細胞の一定分量は染色緩衝液(1%のBSAを含有する
PBS又はHBSS)で2度洗浄され、染色緩衝液で希釈された適当な濃度のモノクロー
ナル抗体液に懸濁された。サンプルは、光が当たらないところで4℃下、45分間
インキュベートされた。2回洗浄後、細胞は1%のパラホルムアルデヒドを含有
する緩衝生理食塩水に懸濁した。フローサイトメトリー解析は、コールターエリ
ート(Coulter Elite)フローサイトメトリーを用いて、1サンプルにあたり20,00
0細胞で行われた。
結果インビボでのCD28の発現
20人の対照群及び21の百歳以上の人の抹消血T細胞におけるCD28+細胞の割合
をフローサイトメトリーで比較した。図1Aに表すデータは、百歳以上の人の集団
でのCD28+T細胞の割合の著しい減少を示している。
図1Bに表すように、CD28+T細胞の割合において、対照群の平均値が91%であるの
と比較して、数人の高齢の人は44、53及び54%と低い値を示している。図2にお
けるFACSスカッチャープロットは2群から得られたデータを再表現している。高
齢者のCD28+細胞の割合における減少は、平均蛍光の強度又は標準偏差における
変化とは関係ない(データは表示していない)ことから、CD28の発現は、CD28+
とスコアされた細胞では正常であることを示唆している。T細胞の部分集合の割合(subset ratio)
老化はT細胞の部分集合の変化に関係しているのかどうかという文献に、相反
する報告がある。百歳以上の人の群におけるCD4/CD8比が分析され、実際、0.45
から2.38の範囲で得られた値において大きなばらつきがあった。しかしながら、
図3に表すように、CD28+T細胞とCD4/CD8比の間には顕著な相関がある(r2=0.695
,p<0.0001)。長期間のT細胞培養におけるCD28の発現
百歳以上の人の集団でのT細胞のセグメント(segment)におけるCD28の喪失に
関係している機構を明らかにしようとする努力により、細胞老化をインビトロで
検定するための最近開発された細胞培養系が用いらた。
このモデルの使用により、インビトロでの異刺激及びIL-2の持続的な存在下で培
養による繰り返し活性化された健康な大人の抹消T細胞は、増殖性老化の状態に
到達する前に、限られた回数の集団の倍化(23±7)が起こることが示された(N.L.
Perillo et al.(1989)(前記))。その老化培養細胞はCD8+Tが細胞集団で優性で
あるが、それにもかかわらず生存可能で、長寿で、そして、それらが感作する特
異的なアロジェニックな標的を認識して溶解するが全く有能である(N.L.Perill
o et al.,"The In Vitro Senescence of Human T Memoly T Cell phenotype,"Mech.Aging.Develop
.67173-185(1993))。すなわち、増殖性老化は機能の全般的
な構成要素とならないと規定される。
インビトロの増殖性生存期間の完了したT細胞の変化する割合におけるD28の
発現を比較することにより、老化はCD28の発現における劇的低下によって起こる
ことが分かった(図4)。この減少は、他のすべての試験されたT細胞マーカ(
CD2,CD3,CD29,CD11a,CD44,CD45RO)が低下せずに、安定に発現する(N.L.Pelillo
et al.(1993)(前記))のに対して、著しく違っている。こうして、増殖性老化の
状態に到達した培養細胞におけるCD28発現の特異的な喪失は、百歳以上の人に
おけるCD28陰性細胞がたくさんの細胞分裂をおこなった細胞であること示唆して
いる。
この研究は、老人の抹消のTリンパ球と老化T細胞
の培養細胞のどちらにおいてもCD28分子を発現する細胞の割合が減少することを
示した。この活性化した分子は、T細胞受容体のエンゲイジメントの後の決定的
な共刺激シグナルを与える。2次シグナルがない場合、さらなる抗原の刺激に対
する応答において、IL-2遺伝子の発現を活性化できなくなる特性によって、抗原
を提示したT細胞はアネルギーの状態に入るのかもしれない(M.K.Jenkins et al
.(1991)(前記);D.R.DaSilva et al.,"Clonal Anergy Is Induced In Vitro by T
Cell Receptor Occupancy in the Absence of Proliferation,"J.Immunol.14
7:3261-3267(1991))。アネルギーの細胞は長寿で、細胞溶解及び他のいくつかの
サイトカインの分泌が出来るかもしれないが、このIL-2遺伝子発現の減少の異な
った結果は増殖の欠落にある。ある場合では、共刺激の欠如は活性誘導型のアポ
トーシスを導くのかもしれない(Y.Liu & C.A.Janeway,"Interferon-g Plays a
Critical Role in Induced Cell Death of Efector T Cell:A Third Mechanism
of Self-Tolerance,"J.Exp.Med.172:1735-1740(1990))。
増殖性老化の現象でのインビトロの実験により、CD28を発現しているT細胞の
集団のインビボでの年齢に伴う減少が説明され得る。老化培養細胞は、およそ23
回の集団倍加(population doublings)を終えているが、抗原、抗CD28と抗CD3の
組み合わせ又は高濃度IL-2にさらすことによる再刺激後の増殖が不能であること
で特徴づけられる。高齢のドナーからのT細胞によって何度も明ら
かにされた欠損がある(M.L.Thoman&W.O.Weigle(1989)(前記);R.A.Miller(1990)(
前記);B.A.Effros(1993)(前記);A.Grossmann et al.,"Reduced Proliferation
on T Unrelated to Defects in Transmembrane Signaling which are Predomina
ntly in the CD 4+Subset,"Exp.Ccll.Res.180:367-382(1989))。更に、老化培
養細胞におけるT細胞の機能の保全性は老齢のマウス由来の単一のT細胞の細胞
傷害性能を測定した希釈実験(dilution experiments)の結果(R.A.Miller,"Ag
e-Associated Decline in Precursor Frequency for Different T Cell Reactio
ns with Preservation of Helper of Cytotoxic Effect per Precursor Cell,"J.Immunol
.132:63-68(1984))と一致し、更に、CD28は細胞傷害性に必要ないとい
う他の報告(A.Azuma et al.(1993)(前記))を確証する。これらの結果は、それ故
、百歳以上の人の抹消血におけるCD28陰性細胞が増殖性老化の状態に到達したこ
とを示唆する。最近の報告は、ヒトのTリンパ球にある免疫記憶が分裂のもっと
速い段階で細胞集団に備わっていることを実証している(C.A.Michie et al,"Li
fespan of Human Lymphcyte Subsets Define by CD45 Isoform,"Nature 360:26
4-265(1992))。このようにして、時間と共に、T細胞の増加集団は環境因子によ
り何度も刺激されるようになり、CD28の欠損に伴って、更に増殖限界に到達する
ようになるのかもしれない。胸腺からの成熟T細胞の産出の減少にする増殖限界
に到達した細胞の持つ増殖の可能性は、老人からのT細胞の変化した表現型及び
機能の結果であるのかもしれない。年齢に伴うヒトTリンパ球
の増殖性欠損はCD4+細胞よりもむしろCD8+細胞の減退した増殖能のためであるこ
とが示された(A.Grossmann et al(1989)(前記))。図3のデータは、CD4/CD8比の
減少(i,e,a relative increase in the proportion of CD8+cells)とCD28+T細
胞の減少した割合との相互関係が上記の結論を説明し得ることを示唆している。
それは、CD8+の増加した集団は、CD28共刺激経路を通して活性化することができ
ない細胞の増加する割合と関連していることを示唆している。
最近、若い正常のドナーからの、小さいけれども生存しているT細胞集団がCD
28陰性であることが報告された(A.Azuma et al.(1993)(前記))。この例における
矛盾しない結果としては、これらCD28陰性リンパ球はCD8+に対し優性であり、そ
れらは、分裂促進シグナルに応答に対して増殖しないと言える。臍帯血由来のT
細胞はCD28陰性の細胞は1%以下であることも示され、更に、CD28陰性細胞は年
齢と共に増加するという例からの結果も更に裏付けている。
百歳以上の人の抹消血におけるCD28陰性細胞が増加していることの実証は、他
の共刺激分子もまた年齢及び増殖生存期間に伴う変調を示すかもしれないことを
示唆する。CD28陰性のトランスジェニックマウスにおいて、免疫機能の減退は、
正常な加齢において観察されるものほど重くなかったことから(A.Shahinian et
al.,"Differential T Cell Costimulatory Requirements in CD28-Deficient M
ice,"Science 261
609・612(1993))、これは、実際、事実であるようだ。更に、トランスジェニック
マウスにおいて、年齢と共に減少していると知られている機能のいくつかしか影
響を及ぼさなかった。しかしながら、百歳以上の人及びこの例でのインビトロの
長期の培養では、老齢のT細胞はある他の非特異的な細胞間の事象に応答したCD
28の発現がおそらく変調していたので、このマウスのモデルは年齢に関与するCD
28の減少を実際には反映していないかもしれない。
結論として、加齢に伴うCD28+T細胞の数の減少は、分裂促進因子にたいする増
殖応答、リコール(recall)抗原に応答して引き起こされる遅延型過敏症、及び老
齢者におけるインフルエンザワクチンに対する抗体の減少など、以前の研究結果
の多くのことを説明することが出来る(B.A.Effros(1993)(前記))。HIV+のヒトに
おいて、CD28発現の欠損と分裂促進因子誘導型T細胞の低い増殖能との間には非
常に強い相関があると最近明らかにされた。この例の結果は、例えばインビトロ
での抗CD3並びにフォルボールエステルでの刺激のようなCD28を迂回する方式に
認められるように、免疫応答における加齢に関連する変化のすべてのものを必ず
しも説明しないが、それらは、少なくとも1つの免疫応答における変化機構を示
唆している。しかしながら、もし、CD28陰性の集合(細胞)が増殖衰退における
優勢な因子で
あることが明らかにされたならば、これは、免疫機能における年齢に関係した低
下は、すべての細胞の活性の減少よりもむしろ、活性化細胞数の減少のためであ
るという(R.A.Miller(1990)(前記))、前の仮説を成り立たせるだろう。
更に、長寿である百歳以上の人を含むこの例において報告されている研究は、
おそらく高水準の免疫適合性を説明するので、75-85の年齢の集団における研究
はCD28発現における、更に明白な欠損さえも明らかにすると確信される。この関
連において、老齢の人の低下したT細胞の増殖応答が、予測される後の早期の死
亡が明らかになったので(D.M.Murasko et al.(1988)(前記))、CD28発現の解析は
の免疫老化を老齢の人からスクリーニングするための信頼出来る生物マーカーを
供給するかもしれない。もし、CD28陰性のリンパ球の相対的に低い増殖応答を逆
にすることが出来るならば、この分野の未来の研究のためのさらなる挑戦によっ
て、年齢に伴うCD28のダウンレギュレーションに応答する機構が明らかにされる
であろう。この関連において、この例で報告されたインビトロの培養系は、この
鍵となる活性化分子の制御を含む細胞のプロセスを分析するための貴重な実験モ
デルを提供する。
発明の有利性
本発明は、免疫的老化を測定する改良法を提供する。この改良された方法は、
広く応用可能である。それは、小さいサブ集団の免疫能(immune-competent)細胞
のみに見出され又はその存在が個体個体で著しく変化するマーカー又は抗原に依
らない。これは、その方法で得られる結果が分かり易く、そして免疫応答に影響
を与える他の要素により誘導される変異性に従わないということを意味している
。その方法は、同様に、比較的容易に実施出来、分かり易い。一方、一般的には
死亡率及び疾病率の両方のため、そして更に特に免疫に関係した状態への感受性
のために予測値の結果を提供する。その方法は、同様に、他のマーカーの他のス
クリーニング法との組合せを可能とし、その結果細胞の数多くのパラメーターが
並行してして測定され得る。その方法は、免疫性非老化細胞から免疫性老化細胞
を分離し、単離するために使用され得る。
その方法は、免疫機能の老化から高齢者に起こる免疫的不全の存在又はその可
能性を診断及び測定するのに特に有用である。従って、それは免疫的にかなり危
険な状態にありそうな患者を測定し、より集中的な研究、予防又は免疫賦活又は
免疫調節(immunostimulation or immunomodulation)の試みに向けて、これ等患
者を標的とするのに使用され得る。
この方法は、同様に、高齢者ではないが、免疫無防
備状態(immunocompromised)になりそうな患者、例えば、ダウン症候群(Down's S
yndrome)患者又はHIV感染患者を研究するのに有益である。
本発明は、その特定の好ましい形式、手法に関してかなり詳細に説明されたけ
れども、他の形式、手法も可能である。故に、添付の請求項(claims)の精神及び
範囲はここに含まれる好ましい形式、手法の記載に限定されるべきではない。