JPH10304874A - 新規細胞株および本細胞株を用いたスクリーニング法 - Google Patents

新規細胞株および本細胞株を用いたスクリーニング法

Info

Publication number
JPH10304874A
JPH10304874A JP10073097A JP7309798A JPH10304874A JP H10304874 A JPH10304874 A JP H10304874A JP 10073097 A JP10073097 A JP 10073097A JP 7309798 A JP7309798 A JP 7309798A JP H10304874 A JPH10304874 A JP H10304874A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
substance
cell
differentiation
cells
regulating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Ceased
Application number
JP10073097A
Other languages
English (en)
Inventor
Hidetomo Kitamura
秀智 北村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Chugai Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Chugai Pharmaceutical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Chugai Pharmaceutical Co Ltd filed Critical Chugai Pharmaceutical Co Ltd
Priority to JP10073097A priority Critical patent/JPH10304874A/ja
Publication of JPH10304874A publication Critical patent/JPH10304874A/ja
Ceased legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 正常な成熟動物から軟骨細胞および脂肪細胞
に分化することができる未分化間葉系細胞のクローン化
細胞株を樹立し、細胞の分化調節物質のスクリ−ニング
方法を確立すること。 【解決手段】 正常成熟動物に由来することを特徴とす
る軟骨細胞および脂肪細胞に分化する能力を有する細胞
株、当該細胞株を使用する細胞の分化調節物質のスクリ
ーニング法、当該細胞株を含むスクリーニング用キッ
ト、上記スクリーニング法に得られる細胞の分化調節物
質、並びに上記分化調節物質を含有する医薬。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、正常成熟動物に由
来することを特徴とする軟骨細胞および脂肪細胞に分化
する能力を有する新規な細胞株、並びに、当該細胞株を
用いる未分化間葉系細胞から軟骨細胞および脂肪細胞へ
の分化を調節する物質などを簡便に探索することを可能
とする新しいin vitroのスクリーニング方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から軟骨細胞は、軟骨内骨化による
骨格の形成や関節の形成による運動の円滑化など、脊椎
動物が生存する上で重要な機能を果たしていることが知
られている。一方で、軟骨細胞が形成している関節軟骨
の損傷は、変形性関節症などの疾患においてその病態の
進展を促す重要な因子であると考えられている。こうし
た軟骨細胞が生体内で果たす役割の重要性にもかかわら
ず、未分化間葉系細胞から軟骨細胞への分化調節機構は
全く解明されていない。
【0003】一方、軟骨細胞と同様に未分化間葉系細胞
に起源を有する脂肪細胞は、細胞質内に脂肪滴を蓄積す
ることで生体内のエネルギー供給の調節に重要な働きを
有することが知られている。言うまでもなく脂肪細胞に
おける過剰な脂肪の蓄積は肥満を生じ、多くの成人病に
対する危険因子として捉えられている。脂肪細胞の分化
機構は、プロスタグランジンJ2を生理的リガンドとす
る核内受容体であるPPAR−γ2や、転写因子である
C/EBP−α等によって調節されることが報告されて
いるが、全容が解明されているとは言えない。ここで、
未分化間葉系細胞とは、一般的に複数の分化能を有する
未分化な間葉系細胞を指すが、中でも特に多分化能を有
する中胚葉由来の細胞を意味する。具体的な例として
は、マウス胎児由来のC3H10T1/2(Cell, 17:7
71-779,1979)や、ラット胎仔由来のRCJ3.1(J.
Cell. Bio., 106:2139-2151、 1988)や、ラット新生仔
由来のROB(Calcif. Tissue Int. 49 (3): 221-225,
1991)などが知られている。
【0004】このような未分化間葉系細胞からの軟骨細
胞および脂肪細胞への分化調節機構の研究に有用と考え
られる、軟骨および脂肪細胞への分化能を有する細胞株
は、胎児(Cell, 17, 771 (1979))や腫瘍(J. Cell Bi
ol. 130,1461 (1995))、新生動物(J.Cell Biol. 106,
2139 (1988))などに由来するものが知られているが、
正常な成熟動物に由来するものは現在のところ知られて
いない。こうした状況において、正常な成熟マウスなど
の正常成熟動物から、軟骨細胞および脂肪細胞に分化す
ることができる未分化間葉系細胞のクローン化細胞株を
樹立することができれば、成熟した個体におけるこれら
の細胞の分化調節機構の研究に極めて有用な研究手段を
提供できると考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的の一つ
は、正常な成熟動物から軟骨細胞および脂肪細胞に分化
することができる未分化間葉系細胞のクローン化細胞株
を樹立することである。本発明の別の目的は、上記の細
胞株を用いることを特徴とする、細胞の分化調節物質
(例えば、軟骨細胞または脂肪細胞への分化を調節する
物質、軟骨組織の破壊を調節する物質または軟骨細胞の
石灰化を調節する物質)をスクリーニングするための方
法を確立することである。
【0006】本発明のさらに別の目的は、上記の細胞株
を含む、細胞の分化調節物質(例えば、軟骨細胞または
脂肪細胞への分化を調節する物質、軟骨組織の破壊を調
節する物質または軟骨細胞の石灰化を調節する物質)を
スクリーニングするためのキットを提供することであ
る。本発明のさらに別の目的は、上記のような細胞株を
用いるスクリーニング法により得られることのできる、
細胞の分化調節物質(例えば、軟骨細胞または脂肪細胞
への分化を調節する物質、軟骨組織の破壊を調節する物
質または軟骨細胞の石灰化を調節する物質)、並びに上
記の分化調節物質を含有する医薬を提供することであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題
を解決するために鋭意研究した結果、正常な成熟マウス
の下腿骨よりクローン化細胞株を樹立することに成功し
た。そして、このクローン化細胞株の性状を詳細に解析
した結果、この細胞株は軟骨細胞および脂肪細胞に分化
する能力を有することが明らかになり、本発明を完成す
るに至った。
【0008】そして、ヒトTGF−β1などの軟骨誘導
物質に対するこの細胞株の反応性を検討した結果、この
細胞株を用いてin vitroで簡便に軟骨誘導物質
をスクリーニングすることができることが判明した。同
時に、1,25−ジヒドロキシビタミンD3によってこ
の細胞株の石灰化が抑制されることが明らかになり、こ
の細胞株が軟骨の石灰化を抑制する物質をin vit
roで簡便にスクリーニングできることも判明した。
【0009】また、ヒトTGF−β1によってCL−1
細胞が形成する軟骨様組織が炎症性サイトカインである
IL−1やTNF−αによって破壊されることも判明
し、この細胞株を用いて、こうした軟骨破壊を抑制する
物質をin vitroで簡便にスクリーニングできる
ことも明らかとなった。さらに、1,25−ジヒドロキ
シビタミンD3はこの細胞株の脂肪細胞への分化を顕著
に抑制することが判明し、この細胞株を用いてin v
itroで簡便に脂肪化抑制物質をスクリーニングする
ことができることが判明した。
【0010】即ち、本発明の第1の側面によれば、正常
成熟動物に由来することを特徴とする軟骨細胞および脂
肪細胞に分化する能力を有する細胞株が提供される。上
記細胞株の一つの実施態様においては、正常成熟マウス
に由来する細胞株が提供される。
【0011】上記細胞株の一つの実施態様においては、
未分化間葉系細胞に由来する細胞株が提供される。上記
細胞株の一例としては、受託番号FERM BP−58
23を有する細胞株が挙げられる。
【0012】本発明の第2の側面によれば、上記の本発
明の細胞株を用いることを特徴とする、細胞の分化調節
物質(例えば、軟骨細胞または脂肪細胞への分化を調節
する物質、軟骨組織の破壊を調節する物質または軟骨細
胞の石灰化を調節する物質)をスクリーニングするため
の方法が提供される。上記スクリーニング法の一つの実
施態様においては、スクリーニングされる物質は遺伝子
である。
【0013】本発明の第3の側面によれば、上記の本発
明の細胞株を含む、細胞の分化調節物質(例えば、軟骨
細胞または脂肪細胞への分化を調節する物質、軟骨組織
の破壊を調節する物質または軟骨細胞の石灰化を調節す
る物質)をスクリーニングするためのキットが提供され
る。
【0014】本発明の第4の側面によれば、上記した本
発明の細胞株を用いるスクリーニング法により得られる
ことのできる細胞の分化調節物質(例えば、軟骨細胞ま
たは脂肪細胞への分化を調節する物質、軟骨組織の破壊
を調節する物質または軟骨細胞の石灰化を調節する物
質)、並びに上記分化調節物質を含有する医薬が提供さ
れる。本願発明による分化調節物質を含有する医薬の具
体的用途の例としては、変形性関節症治療薬、軟骨を含
む組織の修復剤、リュウマチ治療薬、椎間板ヘルニア治
療薬、抗肥満薬などが挙げられる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の細胞株の一つの特徴は、
正常成熟動物に由来することである。本明細書中におい
て「正常成熟」という用語は、胎児由来の細胞、腫瘍細
胞または新生動物由来の細胞などを排除するために用い
られるものであり、広い意味に解釈されるものである。
本明細書中において「動物」という用語は、任意の動物
の意味をし、例えば、哺乳類、ハ虫類、両生類、魚類、
特には哺乳動物をさし、哺乳動物の具体例としては、マ
ウス、ラット、ヒト、サル、ハムスターなどが挙げら
れ、好ましくはマウスである。
【0016】本発明の細胞株は、上記の動物の多様な部
位、例えば、下腿骨、大腿骨、頭蓋骨、気管、耳介、
鼻、椎間板、心臓などから樹立することができる。より
具体的には、生体試料を切り出し、血清および抗生物質
などを適宜補充した適当な培地中で適当な期間(例え
ば、9〜15日間)、培養する。その後、クローン性に
増殖してくる細胞集落を単離し、培養を継続する。さら
に細胞が増殖した後、継代を適当な回数(例えば10〜
12回)繰り返す。最後に、限界希釈法などのような細
胞のクローニングのために当業者に既知の適当な技術を
用いて細胞のクローニングを行うことにより、クローン
化した細胞株を樹立することができる。
【0017】本発明の細胞株のもう一つの特徴は、軟骨
細胞および脂肪細胞に分化する能力を有するということ
である。細胞が軟骨細胞に分化したかどうかは、幾つか
の試験により判断することができる。例えば、L−アス
コルビン酸を含む培地中で培養した細胞をアルシアンブ
ルー(pH1.0)で染色した場合に染色される結節を
形成するか否かにより、軟骨細胞への分化の有無を判断
することができる。ここで使用されるアルシアンブルー
は銅フタロシアニンの誘導体である色素であり、カルボ
キシル基を有する酸性多糖(ポリアニオン)を染色でき
るので、組織化学において広く酸性ムコ多糖(グリコサ
ミノグリカン)の検出およびシアル酸含有糖タンパク質
の組織内分布の検出に用いられている。あるいは、成熟
動物より分離した初代培養軟骨細胞の軟骨基質とくにプ
ロテオグリカンの合成能を評価する際に汎用されてい
る、35S標識硫酸を含む培地中で培養した後の35S標識
硫酸の細胞層への取り込み量(Calcif.Tissue Int.19,
179-187, 1975)を指標に、細胞が軟骨細胞に分化した
かどうかを判断することができる。
【0018】あるいはまた、細胞におけるII型コラー
ゲン、X型コラーゲンおよびアグリカンコア蛋白の発現
の有無により、軟骨細胞への分化の有無を判断すること
ができるし、細胞の結節の内部の超微細構造を、例えば
透過型電子顕微鏡などを用いて詳細に観察することなど
によっても、軟骨細胞への分化の有無を判断することが
できる。
【0019】一般的には、軟骨細胞への分化の有無の判
断は、上記したような試験を複数組み合わせて行い、そ
の結果を総合的に考慮して判断される。しかしながら、
軟骨細胞への分化の有無を判断するために、上記以外の
試験を行うことも可能であるものと理解されるべきであ
る。例えば、トルイジンブルー染色によって結節の異染
性の観察などである。
【0020】細胞が脂肪細胞に分化したかどうかも、幾
つかの試験により判断することができる。例えば、オイ
ルレッドOに染色される細胞質内脂肪滴の蓄積が認めら
れるか否かにより脂肪細胞への分化の有無を判断するこ
とができる。あるいは、PPAR−γ2の発現の有無に
より、脂肪細胞への分化の有無を判断することができ
る。
【0021】軟骨細胞への分化の有無の判断と同様に、
脂肪細胞への分化の有無の判断も、上記したような試験
を組み合わせて行い、その結果を総合的に考慮して判断
することができる。しかしながら、脂肪細胞への分化の
有無を判断するためには、上記以外の試験を行うことも
可能であるものと理解されるべきである。例えば、スダ
ンIII染色に染色される細胞質内脂肪滴の蓄積の有無
や、aP2およびアジプシンの発現の有無の検討などで
ある。
【0022】本発明の細胞株の培養条件は、特に限定さ
れず、細胞が死滅せずに生存または増殖できるような任
意の条件下で培養することができる。例えば、培養温度
は、一般的には33〜39℃で、好ましくは37℃であ
る。培養培地は、ウシ胎児血清、好ましくは非働化ウシ
胎児血清(熱処理することにより、補体を不活化したウ
シ胎児血清)を3〜10%(好ましくは10%)含むα
−MEM培地を用いる。通気は、5%CO2を含む空気
とし、湿度は80〜120%(好ましくは100%)に
保って培養を行う。
【0023】本細胞株の保存条件も特には限定されない
が、例えば、10%グリセリンあるいは10%ジメチル
スルホキシドおよび10%血清を含む培地中に102
1010、好ましくは104〜108、さらに好ましくは1
6個/mlの細胞濃度で浮遊させた状態で、−80℃
あるいは液体窒素中で凍結保存することができる。好ま
しくは、10%グリセリンおよび10%血清を含む培地
中で106個/mlの細胞濃度で浮遊させた状態で、液
体窒素中で凍結保存する。上記のように保存された細胞
株は、例えば、37℃の水浴で急速に溶解した後、10
倍量の10%血清を含む培地を添加して攪拌し、遠心分
離して回収した細胞を10%血清を含む培地で培養する
ことにより再び増殖させることができる。
【0024】本発明の第2の側面によれば、本発明の細
胞株を用いることを特徴とする、細胞の分化調節物質
(例えば、軟骨細胞または脂肪細胞への分化を調節する
物質、軟骨組織の破壊を調節する物質または軟骨細胞の
石灰化を調節する物質)をスクリーニングするための方
法が提供される。本明細書中において、「細胞の分化調
節物質」とは、細胞の分化の調節に関与する任意の物質
を意味し、その例としてはヒト骨髄性白血病細胞株HL
−60に対して、それぞれマクロファージまたは顆粒球
に分化させることが知られている1,25−ジヒドロキ
シビタミンD3や全トランスレチノイン酸などが挙げら
れる。本発明の細胞株においては、軟骨細胞または脂肪
細胞への分化を調節する物質、軟骨組織の破壊を調節す
る物質または軟骨細胞の石灰化を調節する物質などが含
まれる。これらの例としては、軟骨細胞への分化の促進
因子としてのヒトTGF−β1およびヒトインシュリン
様増殖因子−I、脂肪細胞分化の促進物質としてのヒト
インシュリン様増殖因子−I、脂肪細胞分化の抑制物質
としてのヒトTGF−β1および1,25−ジヒドロキ
シビタミンD3、軟骨組織の破壊を促進する物質として
のIL−1およびTNF−α、軟骨細胞の石灰化を抑制
する因子としての1,25−ジヒドロキシビタミンD3
がそれぞれ挙げられる。
【0025】本明細書中において、「軟骨細胞または脂
肪細胞への分化を調節する物質」とは、未分化細胞、例
えば未分化間葉系細胞から、軟骨細胞または脂肪細胞へ
の分化を誘導または抑制する物質を意味する。軟骨細胞
への分化を調節する物質の例としては、軟骨誘導能を有
することが知られているヒトトランスフォーミング成長
因子β1および軟骨細胞に対する細胞外基質産生促進作
用を有することが知られているヒトインシュリン様増殖
因子−Iなどが挙げられる。脂肪細胞への分化を調節す
る物質の例としては、脂肪前駆細胞株3T3−L1細胞
に対してその脂肪化を抑制することが知られている1,
25−ジヒドロキシビタミンD3および脂肪細胞に対す
る脂肪合成促作用を有することが知られているヒトイン
シュリン様増殖因子−Iなどが挙げられる。
【0026】本明細書中において、「軟骨組織の破壊を
調節する物質」とは、軟骨組織、例えば軟骨形成能を有
する細胞を一定条件下で培養した場合に形成される軟骨
組織に対して、当該組織の破壊を調節する物質、特には
当該組織の破壊を促進または抑制する物質を意味する。
軟骨組織の破壊を促進する物質の具体例としては、炎症
性のサイトカインであるIL−1またはTNF−αなど
が挙げられる。
【0027】本明細書中において、「軟骨細胞の石灰化
を調節する物質」とは、軟骨細胞の石灰化を促進または
抑制する物質を意味し、特には石灰化を抑制する物質を
意味する。細胞の石灰化は、例えば、細胞中のCa含量
を測定することにより評価することができる。軟骨細胞
の石灰化を抑制する物質の例としては、1,25−ジヒ
ドロキシビタミンD3などが挙げられる。
【0028】後記の実施例で実証されるように、本発明
の細胞株は、上記に挙げた物質を用いた場合、軟骨細胞
および脂肪細胞への分化の有無、軟骨組織の破壊の程度
および軟骨細胞の石灰化の程度を評価できる細胞株であ
ると言えることから、本発明の細胞株を用いて、軟骨細
胞または脂肪細胞への分化を調節する物質、軟骨組織の
破壊を調節する物質または軟骨細胞の石灰化を調節する
物質をスクリーニングすることができることは明らかで
ある。
【0029】また、スクリーニングされる物質の対象と
しては、それ自体で分化調節能力を有する生理活性物質
のみならず、分化調節に何らかの形式で関与する遺伝子
も含まれる。例えば、本明細書中上記した通り、本発明
の細胞株は軟骨細胞への分化に伴って、II型コラーゲ
ン、X型コラーゲンおよびアグリカンコア蛋白のmRN
Aを発現しており、これらのmRNAは、以下の実施例
に記載されているRT−PCR法や公知のTMA法(Tr
anscription Mediated Amplification, 特表平4−50
0759号)などのようなmRNAの検出のために当業
者に慣用される技術により検出することができる。RT
−PCR法を使用する場合には、軟骨細胞への分化に関
与することが推定される遺伝子の配列に特異的なPCR
用プライマーを設計し、このプライマーを用いてRT−
PCR法を実施することにより、軟骨細胞への分化に関
与する遺伝子を単離することが可能である。
【0030】これら遺伝子の単離には、他にも発現クロ
ーニング法などを用いることもできる。例えば、本発明
の細胞から抽出したmRNAから2本鎖cDNAライブ
ラリーを作成し、これらのcDNAを適当なベクターに
組み込み、適当な動物細胞に遺伝子導入し、cDNAを
発現させる。これらの細胞を軟骨細胞分化の適当な指
標、例えばアルシアンブルー染色性などでスクリーニン
グすることにより、軟骨細胞の分化に関わる遺伝子を単
離することができる。また、軟骨細胞の分化との関連の
有無にかかわらず、既知の遺伝子の塩基配列をもとにP
CR法を用いて遺伝子を単離することもできる。例え
ば、既知の遺伝子と類似の遺伝子の塩基配列から、適当
なプライマーを設計し、本発明の細胞から抽出したmR
NAから作成したcDNAライブラリーを用いて適当な
条件下でPCRを行うことで既知の遺伝子と類似性の塩
基配列を有する遺伝子を増幅、単離することができる。
【0031】同様に、本発明の細胞株は脂肪細胞への分
化に関与することが知られているPPAR−γ2のmR
NAを発現しており、このmRNAはRT−PCR法や
公知のTMA法などのようなmRNAの検出のために当
業者に慣用される技術により検出することができる。R
T−PCR法を使用する場合には、脂肪細胞への分化に
関与することが推定される遺伝子の配列に特異的なPC
R用プライマーを設計し、このプライマーを用いてRT
−PCR法を実施することにより、脂肪細胞への分化に
関与する遺伝子を単離することが可能である。
【0032】これら遺伝子の単離には、他にも発現クロ
ーニング法などを用いることもできる。例えば、本発明
の細胞から抽出したmRNAから2本鎖cDNAライブ
ラリーを作成し、これらのcDNAを適当なベクターに
組み込み、適当な動物細胞に遺伝子導入し、cDNAを
発現させる。これらの細胞を脂肪細胞分化の適当な指
標、例えば細胞内脂肪滴の蓄積などでスクリーニングす
ることにより、脂肪細胞の分化に関わる遺伝子を単離す
ることができる。また、脂肪細胞の分化との関連の有無
にかかわらず、既知の遺伝子の塩基配列をもとにPCR
法を用いて遺伝子を単離することもできる。例えば、既
知の遺伝子と類似の遺伝子の塩基配列から、適当なプラ
イマーを設計し、本発明の細胞から抽出したmRNAか
ら作成したcDNAライブラリーを用いて適当な条件下
でPCRを行うことで既知の遺伝子と類似性の塩基配列
を有する遺伝子を増幅、単離することができる。
【0033】さらに本発明によれば、本発明の細胞株を
含む、軟骨細胞または脂肪細胞への分化を調節する物
質、軟骨組織の破壊を調節する物質または軟骨細胞の石
灰化を調節する物質をスクリーニングするためのキット
が提供される。本キット中において、本発明の細胞株
は、好ましくは、容易に培養増殖可能な状態に回復でき
るような形態で保持されている。例えば、10%グリセ
リンおよび10%血清を含む培地中で凍結保存した状態
や、培養用のフラスコで培養してある状態などである。
【0034】本キットには通常、本発明の細胞株に加え
て、スクリーニングの目的とされる物質の作用によって
生じるであろう当該細胞株の性質の変化を検出するため
の試薬、および場合によっては、細胞株の培養の際に培
地に添加すべき特定の試薬などが含まれる。
【0035】例えば、軟骨誘導物質をスクリーニングす
るためのキットまたは軟骨破壊抑制物質をスクリーニン
グするためのキットの場合には、検出試薬としてはアル
シアンブルー(pH1.0)、3H標識グルコサミンあ
るいは35S標識硫酸などを使用することができる。ま
た、脂肪細胞分化調節物質をスクリーニングするための
キットの場合には、検出試薬としてはオイルレッドO、
スダンIII、トリグリセリド定量のための試薬などを
使用することができる。
【0036】さらにまた、本発明によれば、本発明の細
胞株を用いるスクリーニング法により得られることがで
きる細胞の分化調節物質(例えば、軟骨細胞または脂肪
細胞への分化を調節する物質、軟骨組織の破壊を調節す
る物質または軟骨細胞の石灰化を調節する物質)が提供
される。これらの物質の種類は特には限定されず、本発
明のスクリーニング法においてスクリーニングされた任
意の物質(遺伝子などを含む)が含まれる。これらの物
質の中には、関節や耳、鼻の軟骨の修復、再建や、関節
軟骨の石灰化抑制による関節機能の維持や、関節の炎症
における関節軟骨破壊の抑制、あるいは肥満の治療など
の分野において有用な治療薬剤として使用できるものが
含まれる。
【0037】
【実施例】本発明を以下の実施例によって例示的に説明
するが、本発明は実施例によって限定されるものではな
い。実施例1:クローン化細胞株の樹立 正常成熟マウス下腿骨由来細胞株は、5週齢のC57B
L/6マウスの下腿骨近位端から樹立された。すなわ
ち、マウス下腿骨を無菌的に摘出後近位端を切り出し、
6穴プレート(CORNING社製)中で10%非働化
血清(FBS)、100U/mlペニシリンおよび10
0μg/mlストレプトマイシンを添加したαMEM培
地(GIBCO社製)で9日間培養した。培地交換後さ
らに4日間培養した。
【0038】その後、クローン性に増殖している細胞集
落を0.05%トリプシン+0.02%EDTA(Si
gma社製)に浸した濾紙片で単離し、濾紙片ごと24
穴プレート(CORNING社製)で培養した。培地交
換は3日ごとに行った。濾紙片の培養開始から7日目に
細胞がコンフルエントに達したのを確認後、Ca−Mg
を含まないPBSと0.05%トリプシン+0.02%
EDTAを用いて細胞を剥離し、60mm皿(CORN
ING社製)に継代した。3日ごとに培地を交換し、継
代後6日で4倍の希釈倍率で細胞を継代した。以後同様
にして16回まで細胞を継代し、16回目の細胞を限界
希釈法を用いて細胞のクローニングを行い、クローン化
細胞株であるCL−1細胞を樹立した。上記で得られた
CL−1細胞は、日本国茨城県つくば市東1丁目1番3
号の工業技術院生命工学工業研究所に、1997年2月
18日に受託番号FERM BP−5823の下、寄託
された。
【0039】実施例2:CL−1細胞の特性 前記の如くして樹立されたCL−1細胞について、in
vitroでの結節形成能を検索すると共に、RT−
PCR法を用いてII型コラーゲン、X型コラーゲン、
アグリカンコア蛋白およびPPAR−γ2のmRNA発
現の有無の検討を行い、また透過型電子顕微鏡を用いた
超微細構造の観察を行った。CL−1細胞を50μg/
mlのL−アスコルビン酸(和光純薬社製)を添加した
培地で1カ月間培養した。その後、4%パラホルムアル
デヒド(pH7.4)で固定し、0.1N塩酸で洗浄
後、1%アルシアンブルー(EM Science社製)溶液(p
H1.0)で1時間染色し、0.1N塩酸で分別後、光
学顕微鏡下で観察した。その結果、アルシアンブルー
(pH1.0)に染色される結節が形成された(図1を
参照)。
【0040】また、培地に10mMのβグリセロリン酸
を添加してCL−1細胞を同様に培養した。その後、4
%パラホルムアルデヒド(pH7.4)で固定し、蒸留
水で洗浄後、1%アリザリンレッドS(Merck社製)溶
液で5分間染色し、水洗後、肉眼的および光学顕微鏡的
に観察した。その結果、結節はアリザリンレッドSに陽
性を示すようになった(図2を参照)。また、結節を形
成しない部位では、オイルレッドO(プロピレングリコ
ール中の濃度0.5%)に染色される細胞質内脂肪滴の
蓄積が認められた(図1を参照)。
【0041】また、CL−1細胞の結節形成の過程にお
けるII型コラーゲン、X型コラーゲンおよびアグリカ
ンコア蛋白のmRNA発現を、RNA PCRキット
(宝酒造社製)およびこれらに特異的な塩基配列を有す
るプライマー(図6および配列表を参照)を用いてRT
−PCR法で解析した。なお、図6中のII型コラーゲ
ンの検出用のプライマーの配列は配列番号1および2
に;図6中のX型コラーゲンの検出用のプライマーの配
列は配列番号3および4に;図6中のアグリカンコア蛋
白の検出用のプライマーの配列は配列番号5および6に
それぞれ記載されている。RT−PCRは、CL−1か
ら抽出した総RNAをDNAseI(宝酒造社製)処理
後、キットの説明書に従って試薬を添加し、逆転写反応
を行い、それに引き続いてPCRを行った。PCRは、
94℃での1分間の処理を1回行い、94℃で1分間、
57℃で2分間そして72℃で3分間のサイクルを40
回行い、最後に72℃で7分間の処理を1回行い、4℃
に冷却する条件で行った。その結果、上記全てのmRN
Aについてその発現が認められた(図3から図5を参
照)。一方、PPAR−γ2のmRNAの発現も同様に
プライマー(図6および配列表を参照)を用いてRT−
PCR法で解析した。図6中のPPAR−γ2の検出用
のプライマーの配列は配列番号7および8に記載されて
いる。その結果、PPAR−γ2の発現も認められた
(図7を参照)。
【0042】さらに、CL−1細胞の結節を透過型電子
顕微鏡を用いて結節内部の超微細構造を観察したとこ
ろ、軟骨細胞に類似した細胞形態と細胞間基質の構造が
認められた(図8を参照)。これらの結果から、CL−
1細胞は軟骨および脂肪細胞への分化能を有する間葉系
細胞であることが明らかとなった。
【0043】さらに、CL−1細胞をβグリセロリン酸
存在下で1カ月間培養すると、CL−1細胞によって形
成された結節がアリザリンレッドSに陽性であることに
より、CL−1細胞より生じた軟骨様細胞は、軟骨の最
終分化段階である石灰化軟骨にまで分化できることも判
明した。
【0044】実施例3:CL−1細胞を用いたin v
itroでの軟骨誘導能の評価 CL−1細胞をin vitroの軟骨誘導物質のスク
リーニング系として利用できるかどうかを検討するため
に、軟骨誘導能が知られているhTGF−β1(J.Biol.
Chem. 261, 5693 (1986))に関して、CL−1細胞のア
ルシアンブルー(pH1.0)に対する染色性への作用
を検討した。すなわち、CL−1細胞を2500細胞/
cm2の細胞密度で24穴プレート(CORNING社
製)で培養し、コンフルエントに達した時点でヒトトラ
ンスフォーミング成長因子−β1(hTGF−β1;AU
STRAL Biologicals社製)を0.1、
1.0、10ng/mlの濃度で添加し、2ないし3日
ごとに培地交換して、添加開始後3週間培養した。hT
GF−β1の添加は、培地交換ごとに実施した。培養終
了後、細胞を4%パラホルムアルデヒド(和光純薬社
製)で固定し、水洗後0.1N塩酸(和光純薬社製)で
3分処理後、アルシアンブルー(pH1.0)溶液(濃
度:1%)で一晩染色した。染色終了後、サンプルを蒸
留水で3回洗浄し、風乾した。乾燥したサンプルを30
0μlの6Mグアニジン塩酸溶液(和光純薬社製)に3
時間浸漬し、撹拌後グアニジン塩酸溶液の620nmに
おける吸光度を測定した。その結果、hTGF−β1
用量依存的にアルシアンブルー(pH1.0)に対する
染色性は増加した(図9を参照)。
【0045】軟骨細胞に対する細胞外基質産生促進作用
が知られている(Ann. Rev. Physiol. 47, 443 (198
5))ヒトインシュリン様増殖因子−I(hIGF−I;
CHEMICON INTERNATIONAL社製)
についても同様の検討を行ったところ、100ng/m
lでアルシアンブルー(pH1.0)に対する染色性の
増加が認められた(図10を参照)。また、CL−1細
胞がコンフルエントに達した後にhTGF−β1(図1
1を参照)あるいはhIGF−I(図12を参照)を5
ないし7日間連日添加した場合にも同様の結果が得られ
た。形態学的にもhTGF−β1およびhIGF−Iの
存在下で培養した場合、培地のみで培養した場合と比較
して、アルシアンブルー(pH1.0)陽性の結節は明
らかに増加していた(図13を参照)。
【0046】また、インシュリン存在下で軟骨細胞に分
化することが知られているATDC−5細胞(Cell Dif
f. Dev. 30, 109 (1990);理化学研究所細胞銀行から入
手可能)についても、10μg/mlのインシュリンお
よび0.1ないし10ng/mlのhTGF−β1の存
在下で同様の方法でコンフルエント後7日間培養して、
アルシアンブルー(pH1.0)に対する染色性を検討
した。その結果、hTGF−β1処理によって、ATD
C−5細胞ではアルシアンブルー(pH1.0)に対す
る染色性は用量依存的に低下した(図14を参照)。こ
れらの結果から、CL−1細胞がin vitroで軟
骨形成を評価できる有用な細胞株であることが明らかに
なった。
【0047】実施例4:CL−1細胞を用いたin v
itroでの軟骨破壊評価系の構築 CL−1細胞にhTGF−β1の存在下で培養すること
で形成される軟骨様結節が、炎症性のサイトカインであ
るIL−1やTNF−αによって破壊されるかどうかを
検討した。CL−1細胞を2500細胞/cm2の細胞
密度で24穴プレート(CORNING社製)で培養
し、コンフルエントに達した時点でhTGF−β
1(1.0ng/ml)の最終濃度になるよう連日5日
間培地に添加した。その後、マウスインターロイキン1
α(mIL−1α;R&Dsystems社製)および
マウス腫瘍壊死因子−α(mTNF−α;R&Dsys
tems社製)を最終濃度0.1、1.0、10ng/
mlとなるよう培地に連日5日間添加し培養した。その
後に、上記と同様の方法でCL−1細胞のアルシアンブ
ルー(pH1.0)に対する染色性を測定した。その結
果、mIL−1αは0.1ng/ml以上(図15を参
照)、mTNF−αは1.0ng/ml以上(図16を
参照)でアルシアンブルー(pH1.0)に対する染色
性が低下した。また、hTGF−β1の添加とmIL−
1α(図17を参照)あるいはmTNF−α(図18を
参照)を同時に添加しても同様の成績が得られた。
【0048】これらの結果から、CL−1細胞は炎症性
サイトカインによる軟骨組織の破壊をin vitro
で評価できる細胞株であることが明らかになった。ま
た、このことから、本実験系を利用して軟骨破壊抑制物
質の探索も可能であることが示された。
【0049】実施例5:CL−1細胞を用いたin v
itroでの脂肪細胞分化調節物質のスクリーニング 脂肪前駆細胞株3T3−L1細胞に対してその脂肪化を
抑制することが知られている1,25−ジヒドロキシビ
タミンD3(Comp. Biochem. Physiol. 96A, (1990))の
CL−1細胞の脂肪細胞への分化への影響を検討した。
CL−1細胞を2500細胞/cm2の細胞密度で4穴
チャンバースライド(Nunc社製)で培養し、コンフ
ルエントに達した時点で1,25−ジヒドロキシビタミ
ンD3を最終濃度10-7Mになるように培地交換ごとに
添加した。1,25−ジヒドロキシビタミンD3添加開
始後3週間でオイルレッドO陽性細胞内脂肪滴の蓄積を
顕微鏡下で観察した。その結果、1,25−ジヒドロキ
シビタミンD3はオイルレッドO陽性の細胞質内脂肪滴
の蓄積を顕著に抑制していた(図19を参照)。
【0050】一方、脂肪細胞に対して脂肪合成促進作用
が知られているhIGF−I(Ann.Rev. Physiol. 47,
443 (1985))についても同様の検討を行ったところ、C
L−1細胞のオイルレッドO陽性脂肪滴の蓄積は培地の
みのものに比較して促進されていた(図13cを参
照)。これらのことから、CL−1細胞は未分化な間葉
系細胞から脂肪細胞への分化を抑制あるいは促進する物
質のin vitro評価系として有用であることが明
らかになった。
【0051】実施例6:CL−1細胞を用いた軟骨石灰
化抑制物質のスクリーニング 1,25−ジヒドロキシビタミンD3は軟骨の石灰化過
程において抑制的に働くことが知られているが(Proc.
Natl. Acad. Sci. 87, 6522 (1990))、そのCL−1細
胞の石灰化に対する作用を検討した。CL−1細胞を2
000細胞/cm2の細胞密度で60mm皿(CORN
ING社製)で培養した。コンフルエントに達した時点
で1,25−ジヒドロキシビタミンD3を最終濃度10
-9、10-8および10-7Mになるように添加し、コンフ
ルエント後4週間まで毎週サンプリングして経時的にC
a含量を測定した。すなわち、細胞層をCa−Mgを含
まないPBSにて3回洗浄後セルスクレイパー(Nun
c社製)でるつぼに回収後、60度の孵卵器中で乾燥
後、オーブンで800℃で一晩燃焼し、残った灰を6N
塩酸(和光純薬社製)500μlに溶解した。この溶液
中のCa量を0−CPC法(Caテストワコー、和光純
薬)にて定量し、皿あたりのCa沈着量を算出した。そ
の結果、コンフルエント後2週間以降で1,25−ジヒ
ドロキシビタミンD3は溶媒対照群に対して有意なCa
沈着量の抑制が認められた(図20を参照)。この結果
から、CL−1細胞が軟骨の石灰化を抑制する物質をi
n vitroで評価できる細胞株であることが明らか
になった。
【0052】実施例7:CL−1細胞を用いたin v
itroでの軟骨への分化促進活性の評価 実施例3では、アルシアンブルーに対する染色性を指標
にして軟骨誘導能を評価したが、この実施例では35S標
識硫酸の取り込み量を指標にして軟骨への分化促進活性
を評価した。CL−1細胞を2000個/ウエルの細胞
数でポリスチレン製96ウエルプレート(Wallac社製)
にまき、10%非働化血清(Intergen社製)および10
0U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプ
トマイシンを含むα−MEM(GIBCO社製)で37℃、
5%CO2のインキュベーター内で培養し、コンフルエ
ントに達するまで週3回新鮮培地に交換した。コンフル
エントを顕微鏡下で確認後、ヒトTGF−β1(AUSTRAL
BIOLOGICALS社製)を0.1、1.0、10ng/ml
含む新鮮培地に交換し、培養を続けた。その24時間
後、35S標識硫酸(Amersham社製)を0.5μCi/ウ
エル添加し、さらに24時間培養した。その後、5%パ
ラホルムアルデヒド(和光純薬社製)および0.4%セ
チルピリジニウムクロリド(和光純薬社製)を含む0.
1Mリン酸緩衝液(pH7.4)200μlと交換し、
室温で2時間固定した。同液で1回CL−1細胞層を洗
浄後、液体シンチレータ(Optiphase supermix, Wallac
社製)100μlを各ウエルに添加後攪拌し、CL−1
細胞層が取り込んだ35S標識硫酸の放射活性を、液体シ
ンチレータ(Microbeta 1450, Wallac社製)で測定し
た。その結果、ヒトTGF−β1は0.1ng/ml以
上で培地のみの対照と比較して統計学的に有意に35S標
識硫酸の取り込み量を増大させた。
【0053】TGF−β1について得られた結果を図2
1に示す。図21から分かるように、35S標識硫酸の取
り込み量は、TGF−β1の添加により約2倍まで増加
した。なお、この35S標識硫酸の取り込み量を指標とし
たこのスクリーニング法は、コンフルエント到達後2日
間で結果が得られるという点で、 アルシアンブルーに
対する染色性を指標にする方法よりも時間と労力を低減
できる。また、コンフルエント到達後に添加した物質の
軟骨細胞への分化促進作用を、2日間で評価できる系は
これまで報告されていないため、CL−1細胞を使用す
るスクリーニング法はこれまでにない有用性を提供する
ことになる。
【0054】
【発明の効果】本発明の細胞株は、正常成熟動物に由来
した、軟骨細胞および脂肪細胞に分化することができる
新規な細胞株である。そして、本発明の細胞株を利用す
ることにより、細胞の分化調節物質、例えば、軟骨細胞
および脂肪細胞の分化を調節する物質、軟骨組織の破壊
を抑制する物質、または軟骨細胞の石灰化を調節する物
質などをスクリーニングすることができる。さらにま
た、本発明の細胞株を用いたスクリーニング法により得
られる物質は、その特性を利用して、例えば、関節や
耳、鼻の軟骨の修復・再建や、関節軟骨の石灰化抑制に
よる関節機能の維持や、関節の炎症における関節軟骨破
壊の抑制、あるいは肥満の治療などの分野において有用
な治療薬剤などとして利用しうるものである。
【0055】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:19 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の種類 合成DNA 配列の特徴 特徴を表す記号:unsure 存在位置:1..19 特徴を決定した方法:E 配列 ACACAATCCA TTGCGAACC 19
【0056】配列番号:2 配列の長さ:20 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の種類 合成DNA 配列の特徴 特徴を表す記号:unsure 存在位置:1..20 特徴を決定した方法:E 配列 AGATAGTTCC TGTCTCCGCC 20
【0057】配列番号:3 配列の長さ:21 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の種類 合成DNA 配列の特徴 特徴を表す記号:unsure 存在位置:1..21 特徴を決定した方法:E 配列 CAGCTGGCAT AGCAACTAAG G 21
【0058】配列番号:4 配列の長さ:20 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の種類 合成DNA 配列の特徴 特徴を表す記号:unsure 存在位置:1..20 特徴を決定した方法:E 配列 GTGGTTAGCA CTGACAAGCG 20
【0059】配列番号:5 配列の長さ:20 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の種類 合成DNA 配列の特徴 特徴を表す記号:unsure 存在位置:1..20 特徴を決定した方法:E 配列 TGTTCAGTGG AACAGCAACC 20
【0060】配列番号:6 配列の長さ:22 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の種類 合成DNA 配列の特徴 特徴を表す記号:unsure 存在位置:1..22 特徴を決定した方法:E 配列 AGATTGTTCA CTGACGTCCA CC 22
【0061】配列番号:7 配列の長さ:20 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の種類 合成DNA 配列の特徴 特徴を表す記号:unsure 存在位置:1..20 特徴を決定した方法:E 配列 CTGATGCACT GCCTATGAGC 20
【0062】配列番号:8 配列の長さ:20 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の種類 合成DNA 配列の特徴 特徴を表す記号:unsure 存在位置:1..20 特徴を決定した方法:E 配列 CATGAGGCCT GTTGTAGAGC 20
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、CL−1細胞を4週間培養したときの
アルシアンブルー(pH1.0)とオイルレッドOの2
重染色標本を示す写真である。
【図2】図2は、CL−1細胞をβグリセロリン酸で4
週間培養したときのアリザリンレッドS染色標本を示す
写真である。図2中、aは培地のみでコンフルエント後
3週間培養したCL−1細胞を示し、bは10mMのβ
グリセロリン酸存在下でコンフルエント後3週間培養し
たCL−1細胞を示す。
【図3】図3は、II型コラーゲン特異的プライマーを
用いたRT−PCRの結果を示す写真である。図3中、
レーンaはサブコンフルエント培養から抽出した全RN
A;レーンbはコンフルエント後1週間培養から抽出し
た全RNA;レーンcはコンフルエント後2週間培養か
ら抽出した全RNA;およびレーンdはコンフルエント
後4週間培養から抽出した全RNAを示す。
【図4】図4は、X型コラーゲン特異的プライマーを用
いたRT−PCRの結果を示す写真である。図4中、レ
ーンaはサブコンフルエント培養から抽出した全RN
A;レーンbはコンフルエント後1週間培養から抽出し
た全RNA;レーンcはコンフルエント後2週間培養か
ら抽出した全RNA;およびレーンdはコンフルエント
後4週間培養から抽出した全RNAを示す。
【図5】図5は、アグリカンコア蛋白特異的プライマー
を用いたRT−PCRの結果を示す写真である。図5
中、レーンaはサブコンフルエント培養から抽出した全
RNA;レーンbはコンフルエント後1週間培養から抽
出した全RNA;レーンcはコンフルエント後2週間培
養から抽出した全RNA;およびレーンdはコンフルエ
ント後4週間培養から抽出した全RNAを示す。
【図6】図6は、RT−PCRに用いた特異的プライマ
ーの塩基配列を示す。
【図7】図7は、PPAR−γ2特異的プライマーを用
いたRT−PCRの結果を示す写真である。図7中、レ
ーンaはサブコンフルエント培養から抽出した全RN
A;レーンbはコンフルエント後1週間培養から抽出し
た全RNA;レーンcはコンフルエント後2週間培養か
ら抽出した全RNA;およびレーンdはコンフルエント
後4週間培養から抽出した全RNAを示す。
【図8】図8は、CL−1細胞により形成された結節内
部のCL−1細胞の透過型電子顕微鏡像(拡大倍率40
00倍)を示す写真である。
【図9】図9は、hTGF−β1によるCL−1細胞の
アルシアンブルー(pH1.0)に対する染色性の変化
を示すグラフである。
【図10】図10は、hIGF−IによるCL−1細胞
のアルシアンブルー(pH1.0)に対する染色性の変
化を示すグラフである。
【図11】図11は、hTGF−β1の連日添加による
CL−1細胞のアルシアンブルー(pH1.0)に対す
る染色性の変化を示すグラフである。
【図12】図12は、hIGF−Iの連日添加によるC
L−1細胞のアルシアンブルー(pH1.0)に対する
染色性の変化を示すグラフである。
【図13】図13は、hTGF−β1またはhIGF−
IによるCL−1細胞のアルシアンブルー陽性結節形成
の変化を示す写真である。図13中、aは培地のみでコ
ンフルエント後3週間培養したCL−1細胞を示し、b
はhTGF−β1(1.0ng/ml)でコンフルエン
ト後3週間培養したCL−1細胞を示し、cはhIGF
−I(100ng/ml)でコンフルエント後3週間培
養したCL−1細胞を示す。
【図14】図14は、hTGF−β1連日添加によるA
TDC−5細胞層のアルシアンブルー(pH1.0)に
対する染色性の変化を示すグラフである。
【図15】図15は、hTGF−β1によって増加した
CL−1細胞層のアルシアンブルー(pH1.0)に対
する染色性のmIL−1αによる変化を示すグラフであ
る。
【図16】図16は、hTGF−β1によって増加した
CL−1細胞層のアルシアンブルー(pH1.0)に対
する染色性のmTNF−αによる変化を示すグラフであ
る。
【図17】図17は、hTGF−β1とmIL−1αを
同時に添加したときのCL−1細胞層のアルシアンブル
ー(pH1.0)に対する染色性の変化を示すグラフで
ある。
【図18】図18は、hTGF−β1とmTNF−αを
同時に添加したときのCL−1細胞層のアルシアンブル
ー(pH1.0)に対する染色性の変化を示すグラフで
ある。
【図19】図19は、1,25−ジヒドロキシビタミン
3によるCL−1細胞の脂肪細胞への分化抑制を示す
写真である。図19中、aは培地のみでコンフルエント
後3週間培養したCL−1細胞を示し、bは1,25−
ジヒドロキシビタミンD3(10-7M)存在下でコンフ
ルエント後3週間培養したCL−1細胞を示す。
【図20】図20は、1,25−ジヒドロキシビタミン
3によるCL−1細胞層へのCa沈着量の変化を示す
グラフである。
【図21】図21は、TGF−β1添加による、CL−
1細胞の35S標識硫酸の取り込み量の変化を示すグラフ
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12N 5/10 C12Q 1/68 A 15/09 ZNA C12N 5/00 B C12Q 1/68 15/00 ZNAA //(C12N 5/06 C12R 1:91)

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 正常成熟動物に由来することを特徴とす
    る軟骨細胞および脂肪細胞に分化する能力を有する細胞
    株。
  2. 【請求項2】 正常成熟動物が正常成熟マウスである、
    請求項1に記載の細胞株。
  3. 【請求項3】 未分化間葉系細胞に由来する、請求項1
    または2に記載の細胞株。
  4. 【請求項4】 受託番号FERM BP−5823を有
    する請求項1から3の何れかに記載の細胞株。
  5. 【請求項5】 請求項1から4の何れかに記載の細胞株
    を用いることを特徴とする、細胞の分化調節物質をスク
    リーニングするための方法。
  6. 【請求項6】 細胞の分化調節物質が、軟骨細胞または
    脂肪細胞への分化を調節する物質、軟骨組織の破壊を調
    節する物質または軟骨細胞の石灰化を調節する物質であ
    る、請求項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 スクリーニングされる物質が遺伝子であ
    ることを特徴とする、請求項5または6に記載のスクリ
    ーニング方法。
  8. 【請求項8】 請求項1から4の何れか1項に記載の細
    胞株を含む、細胞の分化調節物質をスクリーニングする
    ためのキット。
  9. 【請求項9】 細胞の分化調節物質が、軟骨細胞または
    脂肪細胞への分化を調節する物質、軟骨組織の破壊を調
    節する物質または軟骨細胞の石灰化を調節する物質であ
    る、請求項8に記載のキット。
  10. 【請求項10】 請求項1から4の何れかに記載の細胞
    株を用いるスクリーニング法により得られることのでき
    る細胞の分化調節物質。
  11. 【請求項11】 軟骨細胞または脂肪細胞への分化を調
    節する物質、軟骨組織の破壊を調節する物質または軟骨
    細胞の石灰化を調節する物質である、請求項10に記載
    の細胞の分化調節物質。
  12. 【請求項12】 請求項10または11に記載の分化調
    節物質を含有する医薬。
  13. 【請求項13】 変形性関節症治療薬、軟骨を含む組織
    の修復剤、リュウマチ治療薬、椎間板ヘルニア治療薬お
    よび抗肥満薬から成る群から選択されることを特徴とす
    る、請求項12に記載の医薬。
JP10073097A 1997-03-07 1998-03-06 新規細胞株および本細胞株を用いたスクリーニング法 Ceased JPH10304874A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10073097A JPH10304874A (ja) 1997-03-07 1998-03-06 新規細胞株および本細胞株を用いたスクリーニング法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9-70556 1997-03-07
JP7055697 1997-03-07
JP10073097A JPH10304874A (ja) 1997-03-07 1998-03-06 新規細胞株および本細胞株を用いたスクリーニング法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10304874A true JPH10304874A (ja) 1998-11-17

Family

ID=26411699

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10073097A Ceased JPH10304874A (ja) 1997-03-07 1998-03-06 新規細胞株および本細胞株を用いたスクリーニング法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10304874A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5548972B2 (ja) * 2007-02-09 2014-07-16 国立大学法人大阪大学 退行性疾患の予防用又は治療用の薬剤のスクリーニング方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5548972B2 (ja) * 2007-02-09 2014-07-16 国立大学法人大阪大学 退行性疾患の予防用又は治療用の薬剤のスクリーニング方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Deng et al. Exosomes from adipose-derived mesenchymal stem cells ameliorate cardiac damage after myocardial infarction by activating S1P/SK1/S1PR1 signaling and promoting macrophage M2 polarization
Ambrosi et al. Adipocyte accumulation in the bone marrow during obesity and aging impairs stem cell-based hematopoietic and bone regeneration
RU2306335C2 (ru) Стволовые клетки и решетки, полученные из жировой ткани
Colleoni et al. Isolation, growth and differentiation of equine mesenchymal stem cells: effect of donor, source, amount of tissue and supplementation with basic fibroblast growth factor
Scharner et al. The muscle satellite cell at 50: the formative years
Zhang et al. In vivo evaluation of human dental pulp stem cells differentiated towards multiple lineages
EP3124600B1 (en) Method for generating a cell condensate for self-organisation
US20100129330A1 (en) Adipocytic differentiated adipose derived adult stem cells and uses thereof
CN107828722B (zh) 特异性表达pd-1的干细胞、其鉴定和分离方法及用途
CN108350423A (zh) 用于获得人类褐色/米色脂肪细胞的方法
KR100802011B1 (ko) 층분리배양법을 이용한 골수에서의 중간엽 줄기세포분리방법
JP2001103963A (ja) 脂肪組織由来の間質細胞に関する多様な中胚葉系統分化能およびその使用
WO2021054449A9 (ja) Lbm、cpc、opc、それらの調製方法及び品質管理方法、キット、移植材料並びに疾患モデル
US20080095750A1 (en) Use of adipose-derived stem cells for treatment of leukodystrophies
CN102459576A (zh) 用于调节干细胞的组合物和方法及其应用
JP2017500860A (ja) 哺乳類筋肉由来の幹細胞
Ogawa et al. Hematopoietic stem cell origin of connective tissues
Vinod et al. In vitro chondrogenic differentiation of human articular cartilage derived chondroprogenitors using pulsed electromagnetic field
Vidal et al. Adipogenic differentiation of adult equine mesenchymal stromal cells
Chen et al. MicroRNA-1 regulates the differentiation of adipose-derived stem cells into cardiomyocyte-like cells
Liu et al. Characteristics of pericardial interstitial cells and their implications in pericardial fibrocalcification
JPH10304874A (ja) 新規細胞株および本細胞株を用いたスクリーニング法
EP2607478A1 (en) Phenanthroline treated MSC
US7037717B1 (en) Cell line and screening method with the use of the same
KR20190130394A (ko) 전구세포 배양액 및 다층 그래핀 필름을 포함하는 줄기세포 분화 촉진용 조성물 및 이의 용도

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20051122

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060123

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060214

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060417

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20071025

A045 Written measure of dismissal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A045

Effective date: 20080221