JPH1030151A - 肌焼鋼材及びこれを用いた強化歯車並びにその歯面強度の判定方法 - Google Patents

肌焼鋼材及びこれを用いた強化歯車並びにその歯面強度の判定方法

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JPH1030151A
JPH1030151A JP5755797A JP5755797A JPH1030151A JP H1030151 A JPH1030151 A JP H1030151A JP 5755797 A JP5755797 A JP 5755797A JP 5755797 A JP5755797 A JP 5755797A JP H1030151 A JPH1030151 A JP H1030151A
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tooth surface
weight
gear
carburized
layer
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JP5755797A
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Masatoshi Yoshizaki
正敏 吉崎
Tadashi Hashimoto
忠 橋本
Akira Mataga
晶 又賀
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Hino Motors Ltd
Original Assignee
Hino Motors Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】浸炭異常層を歯面に均一に一定深さで生成させ
ることにより、歯面の剥離損傷に対する強度を向上でき
る。 【解決手段】化学成分として、0.10〜0.30重量
%のCと、0.01〜0.50重量%のSiと、0.6
0〜2.00重量%のMnと、0.025重量%以下の
Pと、0.040重量%以下のSと、2.00重量%以
下のCrと、0.020〜0.080重量%のNbと、
0.0010〜0.0100重量%のBと、0.010
重量%以下のNと、0.100重量%以下のTiと、残
部にFeを含み、SiとMnとCrの総含有量は1.9
0〜4.50重量%である肌焼鋼材により強化歯車が形
成される。この歯車を浸炭焼入れすることにより、歯面
に厚さL1が20〜30μmの均一な浸炭異常層11が
形成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、肌焼鋼材と、この
鋼材により形成され歯面が強化された歯車と、この歯車
の歯面強度を判定する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、歯車の歯面の強化方法として、浸
炭焼入れが知られている。浸炭焼入れは機械加工により
所定形状に形成された歯車の表面に炭素を拡散浸透させ
た後、焼入れを行って歯面を含む表面を硬化させる熱処
理であり、耐摩耗性の高い歯面と靱性に富む心部からな
る歯車を作製できる。また浸炭法には、固体浸炭剤を用
いて鋼製品を浸炭する固体浸炭法と、炭化水素系のメタ
ンやブタンやプロパン等のガスの変成RXガスを浸炭剤
として用いて鋼製品を浸炭するガス浸炭法と、NaCN
を主成分とする溶融塩浴中に鋼製品を浸漬して浸炭する
液体浸炭法とがある。通常、熱効率が良く、連続浸炭が
可能で、しかも一様な炭素量を有する浸炭層が得られる
ガス浸炭法が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来のガ
ス浸炭焼入れによる歯面の強化方法では、メタンやプロ
パンやブタン等の工業用ガスは純粋でなく、これらのガ
スには水や二酸化炭素や一酸化炭素等の酸素の化合物が
含まれており、これらの酸素の化合物が浸炭雰囲気中に
存在すると、炭素が歯車の歯面に侵入する過程で表面付
近のSi,Mn,Cr等のFeより高温酸化し易い元素
が上記酸素と結合して、これらの元素の酸化物が結晶粒
界に析出する、いわゆる粒界酸化が生じる。このため、
粒界付近では、固溶元素Si,Mn,Crが局所的に減
少して焼入れ性が低下し、浸炭焼入れ後の表面近傍の粒
界付近には、不完全焼入れ組織である浸炭異常層と呼ば
れる粒界酸化層が生成される問題点があった。この浸炭
異常層はマクロ的には軟質なため、歯面強度に悪影響を
及ぼす。しかし、本発明者らが実験を繰返し、浸炭異常
層の生成が所定の条件下では歯面強度を向上できること
が判ったが、その歯車が歯面強度の向上する良品である
か否かを非破壊で定量的に判定する方法はなかった。
【0004】本発明の目的は、浸炭焼入れすることによ
り、表面に浸炭異常層を均一に一定深さで生成させるこ
とができ、表面の剥離損傷に対する強度を向上できる肌
焼鋼材を提供することにある。本発明の別の目的は、浸
炭異常層を歯面に均一に一定深さで生成させることによ
り、歯面の剥離損傷に対する強度を向上できる強化歯車
を提供することにある。本発明の更に別の目的は、歯面
に均一な浸炭異常層が形成されているか否かを非破壊で
定量的に判定することができる、強化歯車の歯面強度の
判定方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、
化学成分として、0.10〜0.30重量%のCと、
0.01〜0.50重量%のSiと、0.60〜2.0
0重量%のMnと、0.025重量%以下のPと、0.
040重量%以下のSと、2.00重量%以下のCr
と、0.020〜0.080重量%のNbと、0.00
10〜0.0100重量%のBと、0.010重量%以
下のNと、0.100重量%以下のTiと、残部にFe
を含み;SiとMnとCrの総含有量が1.90〜4.
50重量%である肌焼鋼材である。この請求項1に係る
肌焼鋼材では、浸炭焼入れすることにより、表面に浸炭
異常層を均一に一定深さで生成させることができ、表面
の剥離損傷に対する強度を向上できる。
【0006】請求項2に係る発明は、図1に示すよう
に、請求項1記載の肌焼鋼材により形成され、歯面に厚
さL1が20〜30μmの均一な浸炭異常層11が形成
された強化歯車である。この請求項2に係る強化歯車で
は、比較的軟質な浸炭異常層11が20〜30μmと比
較的深く形成されているので、比較的速やかに歯面が摩
耗して歯車の使用初期に当たりがでてなじむ。この結
果、歯当たりが均一になって局部的な歯面応力の集中を
低減できる。また歯面粗さも低減して摩擦係数を低く抑
えることができる。
【0007】請求項3に係る発明は、請求項2に係る発
明であって、図1に示すように更に浸炭異常層11直下
のビッカース硬さが513以上を有する浸炭層12の浸
炭深さが0.7〜1.3mmであることを特徴とする。
この請求項3に係る強化歯車では、浸炭異常層11が浸
炭層12により確実に支持されるので、歯面の強度を更
に向上できる。
【0008】請求項4に係る発明は、上記請求項2又3
に記載された強化歯車の歯面に一定波長のX線を角度を
変えながら照射し、X線が歯面の結晶にて散乱する反射
X線の回折角に対する回折強度を測定し、回折強度のピ
ーク値の1/2の回折強度に対する回折角の幅であるX
線半価幅を測定し、更にX線半価幅が所定値以下のとき
に歯面に均一な浸炭異常層が形成されていると判定する
強化歯車の歯面強度の判定方法である。この請求項4に
記載された強化歯車の歯面強度の判定方法では、歯面に
均一な浸炭異常層が形成されているか否かを非破壊で定
量的に判定できるので、この判定方法により全数検査又
は抜取り検査を行って不良品又は不良ロットを排除すれ
ば、量産された残りの強化歯車は全て歯面強度が向上し
たものとなり、量産された強化歯車の品質及び耐久性を
向上できる。
【0009】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を図面に
基づいて詳しく説明する。肌焼鋼材を機械加工すること
により、平歯車、はすば歯車、傘歯車等の歯車を作製す
る。肌焼鋼材の化学成分としては、0.10〜0.30
重量%のCと、0.01〜0.50重量%のSiと、
0.60〜2.00重量%のMnと、0.025重量%
以下のPと、0.040重量%以下のSと、2.00重
量%以下のCrと、0.020〜0.080重量%のN
bと、0.0010〜0.0100重量%のBと、0.
010重量%以下のNと、0.100重量%以下のTi
と、残部にFeを含む。またSiとMnとCrの総含有
量は1.90〜4.50重量%の範囲にある。
【0010】上記機械加工された歯車は0.03〜0.
05%のCH4と、29〜31%のH2と、22〜24%
のCOと、0.15〜0.20%のCO2と、0.3〜
0.5%のH2Oと、残部がN2の組成を有するブタン変
成RXガスを浸炭源としてガス浸炭処理される。変成R
Xガスとしてブタン変成RXガスを用いたが、炭化水素
系ガスの変成RXガスであれば、メタン変成RXガスや
プロパン変成RXガス等を用いてもよい。
【0011】上記ブタン変成RXガス雰囲気中(カーボ
ンポテンシャル=0.85〜1.4%)で930±10
℃に3.5時間保持して歯車を浸炭する、即ち歯車の表
面に炭素を拡散浸透させる。その後、ブタン変成RXガ
ス雰囲気中で850±10℃に30分間保持した後、湯
温130±10℃の油に漬けて油冷した。更に大気中で
150℃に90分間保持して焼戻した後に空冷して強化
歯車を得た。この強化歯車の歯面には図1に示すよう
に、厚さL1が20〜30μmの均一な浸炭異常層11
が形成され、浸炭異常層11直下の有効浸炭硬化層12
の浸炭深さ、即ちビッカース硬さ(Hv)が513以上
の浸炭層の浸炭深さは0.7〜1.3mmに形成され
る。
【0012】
【実施例】次に本発明の実施例を図面に基づいて詳しく
説明する。 <実施例1>肌焼鋼材を歯切り加工した後にシェービン
グ仕上げすることによりモジュール3.5、歯数31、
歯幅30mmのはすば歯車を作製した。上記肌焼鋼材の
化学成分として、0.18重量%のCと、0.28重量
%のSiと、1.19重量%のMnと、0.023重量
%のPと、0.017重量%のSと、0.58重量%の
Crと、0.028重量%のNbと、0.0023重量
%のBと、0.006重量%のNと、0.015重量%
のTiと、残部にFeを含む。またSiとMnとCrの
総含有量は2.05重量%である。
【0013】上記歯車を0.04%のCH4と、30.
4%のH2と、23.9%のCOと、0.18%のCO2
と、0.4%のH2Oと、残部がN2の組成を有するブタ
ン変成RXガスを浸炭源とするガス浸炭処理した。上記
ブタン変成RXガス雰囲気中(カーボンポテンシャル=
1.05%)で930℃に3.5時間保持して歯車を浸
炭した。その後、ブタン変成RXガス雰囲気中で930
℃に30分間保持した後、湯温130℃の油に漬けて油
冷した。更に大気中で150℃に90分間保持して焼戻
した後に空冷して強化歯車を得た。この強化歯車の歯面
には図1に示すように、厚さL1が20〜30μmの均
一な浸炭異常層11が形成され、浸炭異常層11直下の
有効浸炭硬化層の浸炭深さは0.7〜1.3mmに形成
された。
【0014】<比較例1>肌焼鋼材を歯切り加工した後
にシェービング仕上げすることにより上記実施例1と同
一形状のはすば歯車を作製した。上記肌焼鋼材の化学成
分として、0.22重量%のCと、0.32重量%のS
iと、0.80重量%のMnと、0.022重量%のP
と、0.015重量%のSと、1.14重量%のCr
と、0.001重量%のNbと、0.0003重量%の
Bと、0.008重量%のNと、0.002重量%のT
iと、残部にFeを含む。またSiとMnとCrの総含
有量は2.26重量%である。上記歯車を実施例1と同
一条件で浸炭焼入れを行った。この浸炭焼き入れされた
歯車の歯面には図8に示すように、厚さL2が10〜2
0μmの浸炭異常層1が形成され、浸炭異常層1直下の
有効浸炭硬化層2の浸炭深さは0.7〜1.3mmに形
成された。
【0015】<比較試験1と評価>図3に示す歯車負荷
運転試験装置20を用いて実施例1及び比較例1の歯車
の歯面強度試験を行った。この装置20は駆動モータ2
1と、互いに噛合する第1及び第2動力循環用歯車22
a,22bをそれぞれ支持する第1軸受支持部23a
と、互いに噛合する第1及び第2試験歯車24a,24
bをそれぞれ支持する第2軸受支持部23bとを備え
る。第1及び第2動力循環用歯車22a,22bは第1
軸受支持部23aに回転可能に保持された第1及び第2
回転軸25a,25bにそれぞれ固着され、第1及び第
2試験歯車24a,24bは第2軸受支持部23bに回
転可能に保持された第3及び第4回転軸25c,25d
にそれぞれ固着される。モータ21の出力軸21aは第
1トルク計26aを介して第1回転軸25aの一端に接
続され、第1回転軸25aの他端はトーションバー27
を介して第3回転軸25cに接続される。また第2回転
軸25bは第2トルク計26b及び負荷トルク調整継手
28を介して第4回転軸25dに接続される。
【0016】モータ21から第1トルク計26a及び第
1回転軸25aを介して第1動力循環用歯車22aに伝
達された動力は、第2動力循環用歯車22b、第2回転
軸25b、第2トルク計26b、負荷トルク調整継手2
8、第4回転軸25d、第2試験歯車24b、第1試験
歯車24a、第3回転軸25c、トーションバー27及
び第1回転軸25aを介して第1動力循環用歯車22a
に戻り、一点鎖線矢印で示す方向に循環するようになっ
ている。また負荷トルク調整継手28は一対のカップリ
ング28a,28bを有する。モータ21を停止した状
態で一方のカップリング28aを他方のカップリング2
8bに対して相対的に所定角度だけ回転させ、この状態
で固定すると、トーションバー27が所定の角度でねじ
られ、第1及び第2試験歯車24a,24bの歯面間に
所定の面圧が付与されるようになっている。
【0017】実施例1の強化歯車2個を第1及び第2試
験歯車24a,24bとし、負荷トルク調整継手28に
より負荷トルクを調整して、上記第1及び第2試験歯車
24a,24bの歯面間のヘルツ応力比を1.28に設
定し、この状態でモータ21を1500rpmで回転さ
せ、歯面強度試験を行った。またこのとき試験歯車24
a,24bを油温90℃の所定の潤滑油を用いて油量2
リットル/分で強制潤滑した。その結果を図4のA1
び図2に示す。ヘルツ応力比のみを1.21,1.1
5,1.08,1.03及び0.96に変えて上記と同
様に歯面強度試験をし、その結果を図4のA2,A3,A
4,A5及びA6に示す。また比較例1の歯車2個を第1
及び第2試験歯車24a,24bとし、第1及び第2試
験歯車24a,24bの歯面間のヘルツ応力比を1.2
8,1.21,1.08,0.96及び0.92に変え
て上記と同様に歯面強度試験をし、その結果を図4のB
1,B2,B3,B4及びB5及び図7に示す。
【0018】図4の同一ヘルツ応力比で歯面強度試験を
行ったA1及びB1を比較すると、A1は歯車を6.8×
106回回転した後に、歯面を顕微鏡で撮影したとこ
ろ、図2に示すように歯面の荒れがなく結晶粒が細か
く、浸炭異常層が歯面全面に均一に残っていた。これに
対して、B1は歯車を2.8×106回回転した後に、歯
面を顕微鏡で撮影したところ、図9に示すように歯面が
荒れ、浸炭異常層の間に浸炭層がまだらに露出してい
た。図4のA2,A3,A4,A5及びA6においてもそれ
ぞれ歯車を6.5×106,6.4×106,18×10
6,31×106及び22×106回ずつ回転させた後に
歯面を上記と同様に観察したところ、上記図2と同様で
あった。一方、図4のB2,B3,B4及びB5においても
それぞれ歯車を4.3×106,8.0×106,12×
106及び18×106回ずつ回転させた後に歯面を上記
と同様に観察したところ、上記図9と同様であった。こ
の結果、実施例1の歯車の方が比較例1の歯車より歯面
強度が向上したことが判った。
【0019】<比較試験2及び評価>上記図3の歯車負
荷運転試験装置20を用いて実施例1の歯車と比較例1
の歯車の積算伝達仕事に対する積算摩耗量の変化を調べ
た。上記装置20においてモータ21の回転数を150
0rpmとし、負荷トルクを負荷トルク調整継手28に
よりヘルツ応力比が1.08になるように調整した。試
験歯車24a,24bを湯温90℃の所定の潤滑油を用
いて油量2リットル/分の強制潤滑した。その結果を図
5に示す。
【0020】図5から明らかなように、実施例1の歯車
ではこの歯車が15kWの積算伝達仕事をした後に歯面
が荒れて浸炭異常層の間に浸炭層がまだらに露出したの
に対し、比較例1の歯車ではこの歯車が6.4kWの積
算伝達仕事をした後に歯面が荒れて浸炭異常層の間に浸
炭層がまだらに露出した。この結果、実施例1の歯車の
方が比較例1の歯車より積算伝達仕事が延びたことが判
った。また、実施例1の歯車が15kWの積算伝達仕事
をした後の積算摩耗量が165mgと多かったのに対
し、比較例1の歯車が6.4kWの積算伝達仕事をした
後の積算摩耗量が25mgと少なかった。これは比較的
軟質の浸炭異常層が実施例1の歯車では20〜30μm
と比較的深くかつ均一であるのに対し、比較例1の歯車
では10〜20μmで比較的浅いためである。この結
果、実施例1の歯車では歯面の比較的深く均一な浸炭異
常層の摩耗によって使用初期にあたりがでてなじみ性を
向上し、歯当たりが均一になって局部的な歯面応力の集
中を低減できるので、歯面強度が向上したものと考えら
れる。
【0021】<比較試験3及び評価>実施例1及び比較
例1の歯車の歯面に波長が2.28962オングストロ
ームのX線を歯面への照射角度を変えながら照射し、こ
のX線が歯面の結晶にて散乱する反射X線の回折角に対
する回折強度をそれぞれ測定した。歯面におけるX線の
回折角に対するX線回折強度は図6に示すように、所定
の回折角にてピーク値を示す山形の分布曲線となった。
これらの回折強度のピーク値(実施例1では2800、
比較例1では1800)の1/2の回折強度(実施例1
では1400、比較例1では900)に対する回折角の
幅、即ちX線半価幅を測定したところ、実施例1では
3.9deg.であり、比較例1では7.3deg.で
あった。次に実施例1及び比較例1の歯車の歯面を電解
研磨により所定量ずつ除去して歯面内部のX線半価幅、
即ち歯面からの深さの変化に対するX線半価幅の変化を
測定した。この結果と上記歯面におけるX線半価幅を図
7に示す。
【0022】図6から明らかなように、回折角に対する
X線回折強度の分布曲線は比較例1と比べて実施例1の
方がシャープであり、X線半価幅が小さかった。また図
7から明らかなように、実施例1の歯車のX線半価幅は
歯面から内部に行くに従って大きくなり、歯面からの深
さが約17μm以上になると、比較例1の歯車のX線半
価幅と略同一の値を示した。この結果、歯車の歯面にお
けるX線半価幅が所定値以下(例えば、5〜6deg.
以下)のときに、歯面に均一な浸炭異常層が形成され、
歯面の耐剥離損傷、即ち歯面強度が向上することが判っ
た。
【0023】歯車の歯面強度とX線半価幅との因果関係
は未だ解明されていないが、X線半価幅は結晶の微視的
な歪みの不均一さなどで変化する量であり、結晶が歪ん
でいると広くなり、結晶が規則正しく並んでいると狭く
なる傾向がある、換言するとビッカース硬度計では測定
できないミクロ的な部分の硬度が大きくなるとX線半価
幅が狭くなり、このミクロ的な部分の硬度が小さくなる
とX線半価幅が広くなると考えられる。よって強化歯車
の歯面に均一な浸炭異常層が形成されているか否かを、
歯面にX線を照射してX線半価幅を測定するという非破
壊的方法で定量的に判定できるので、この判定方法によ
り全数検査又は抜取り検査を行って不良品又は不良ロッ
トを排除すれば、量産された残りの強化歯車は全て歯面
強度が向上したものとなる。
【0024】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、肌
焼鋼材が化学成分として、0.10〜0.30重量%の
Cと、0.01〜0.50重量%のSiと、0.60〜
2.00重量%のMnと、0.025重量%以下のP
と、0.040重量%以下のSと、2.00重量%以下
のCrと、0.020〜0.080重量%のNbと、
0.0010〜0.0100重量%のBと、0.010
重量%以下のNと、0.100重量%以下のTiと、残
部にFeを含み、SiとMnとCrの総含有量を1.9
0〜4.50重量%としたので、浸炭焼入れすることに
より、表面に浸炭異常層を均一に一定深さで生成させる
ことができる。この結果、表面の剥離損傷に対する強度
を向上できる。
【0025】上記肌焼鋼材を用いて形成された歯車を浸
炭焼入れして、この歯面に厚さが20〜30μmの均一
な浸炭異常層を形成したので、比較的速やかに歯面が摩
耗して歯車使用初期に当たりがでてなじむ。この結果、
歯当たりが均一になって局部的な歯面応力の集中を低減
できる。また歯面粗さも低減して摩擦係数を低く抑える
ことができる。また浸炭異常層直下のビッカース硬さ(H
v)が513以上を有する浸炭層の浸炭深さが0.7〜
1.3mmであれば、浸炭異常層が浸炭層により確実に
支持されるので、歯面の強度を更に向上できる。
【0026】更に上記強化歯車の歯面に一定波長のX線
を角度を変えながら照射し、X線が歯面の結晶にて散乱
する反射X線の回折角に対する回折強度を測定し、回折
強度のピーク値の1/2の回折強度に対する回折角の幅
であるX線半価幅を測定し、更にX線半価幅が所定値以
下のときに歯面に均一な浸炭異常層が形成されていると
判定すれば、非破壊で定量的に、強化歯車の歯面強度が
向上しているか否かをを検出できる。この結果、上記判
定方法により全数検査又は抜取り検査を行って不良品又
は不良ロットを排除すれば、量産された残りの強化歯車
は全て歯面強度が向上したものとなり、量産された強化
歯車の品質及び耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の強化歯車の浸炭異常層を含
む金属組織を示す電子顕微鏡写真図。
【図2】実施例1の強化歯車の歯面強度試験後の歯面の
摩耗状態を示す金属組織の電子顕微鏡写真図。
【図3】歯車負荷運転試験装置の構成図。
【図4】上記試験装置により実施例1の歯車と比較例1
の歯車のヘルツ応力比をそれぞれ一定にした状態で歯車
を回転させ、上記ヘルツ応力比に対する歯車総回転数を
示す図。
【図5】実施例1と比較例1の歯車の積算伝達仕事に対
するその歯面の積算摩耗量の変化を示す図。
【図6】強化歯車の歯面にX線を照射してその反射X線
の回折角の変化に対するX線回折強度の変化を示す図。
【図7】実施例1及び比較例1の歯車の歯面からの深さ
の変化に対するX線半価幅の変化を示す図。
【図8】比較例1の歯車の浸炭異常層を含む金属組織を
示す電子顕微鏡写真図。
【図9】比較例1の歯車の歯面強度試験後の歯面の摩耗
状態を示す金属組織の電子顕微鏡写真図。
【符号の説明】
11 浸炭異常層 12 有効浸炭硬化層(浸炭層)
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年3月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】変更
【補正内容】
【図8】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】変更
【補正内容】
【図9】

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学成分として、0.10〜0.30重
    量%のCと、0.01〜0.50重量%のSiと、0.
    60〜2.00重量%のMnと、0.025重量%以下
    のPと、0.040重量%以下のSと、2.00重量%
    以下のCrと、0.020〜0.080重量%のNb
    と、0.0010〜0.0100重量%のBと、0.0
    10重量%以下のNと、0.100重量%以下のTi
    と、残部にFeを含み;前記SiとMnとCrの総含有
    量が1.90〜4.50重量%である肌焼鋼材。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の肌焼鋼材により形成さ
    れ、歯面に厚さ(L1)が20〜30μmの均一な浸炭異常
    層(11)が形成された強化歯車。
  3. 【請求項3】 浸炭異常層(11)直下のビッカース硬さが
    513以上を有する浸炭層(12)の浸炭深さが0.7〜
    1.3mmである請求項2記載の強化歯車。
  4. 【請求項4】 請求項2又は3記載の強化歯車の歯面に
    一定波長のX線を角度を変えながら照射し、前記X線が
    前記歯面の結晶にて散乱する反射X線の回折角に対する
    回折強度を測定し、前記回折強度のピーク値の1/2の
    回折強度に対する回折角の幅であるX線半価幅を測定
    し、更に前記X線半価幅が所定値以下のときに前記歯面
    に均一な浸炭異常層が形成されていると判定する強化歯
    車の歯面強度を判定する方法。
JP5755797A 1996-05-14 1997-03-12 肌焼鋼材及びこれを用いた強化歯車並びにその歯面強度の判定方法 Pending JPH1030151A (ja)

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