JPH10295817A - 気管内挿管用マスク - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】チューブ挿入部分のシール性を高め、しかも、
チューブ挿入時の作業性を容易にする。 【解決手段】 マスク本体１に、麻酔ガス導入口３とは
別に患者の経口または経鼻に挿入される気管内チューブ
を挿通させるチューブ挿入口５が設けられる。チューブ
挿入口にはシール部材９を介して筒体７が挿入され、筒
体とその先端に螺合されるリング８との間には、中央に
孔６ａを有するゴム膜６が挟み込まれる。リング８の外
側にはキャップ１０が周縁部６ｂを着脱自在に取り付け
られる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、術中や治療中の患
者の呼吸を安全に確保するための患者に麻酔を施した
り、気管内チューブを気管支ファイバスコープを使用し
て気管の内部に挿入したりするための気管内挿管用マス
クに関する。

【０００２】

【従来の技術】周知のように、麻酔による気管内挿管時
に通常の喉頭鏡による喉頭展開が困難で、直視下での気
管内挿管が不可能である場合がある。この場合、気管支
ファイバスコープを使用し、気管内チューブにスコープ
を通してチューブ先端よりスコープの先を出し、気管内
の位置を確認しながら、挿管を行う。ところが、このよ
うな挿管は、どうしても時間を要するため、マスクを使
用して調節呼吸下で行う必要がある。

【０００３】従来のこの種の気管内挿管用マスクとし
て、例えば、実公平５−３８７４９号公報に記載されて
いるように、患者の口唇部及び鼻付近を覆いかつ麻酔ガ
ス導入口を有する透明なカップ状のマスク本体と、該マ
スク本体の周縁部に気密的に取り付けられ、使用時に患
者の経口及び経鼻周辺部分を囲むようにして顔面に密着
する軟質パッド部とを備え、前記マスク本体には、前記
麻酔ガス導入口とは別に前記気管内チューブを挿通させ
るチューブ挿入口を設け、このチューブ挿入口の外側に
は中央にチューブ挿入用の小孔を有する膜体を設けると
ともに、チューブ挿入口の内側にマスク本体の外側から
内側に向かってのみ開口自在となる弁膜を設けたものが
知られている。

【０００４】この種の気管内挿管用マスクによれば、麻
酔ガス導入口からマスク本体内に麻酔ガスを導入して、
マスク本体内の内圧を高くすることにより、マスク本体
の内側の弁膜をチューブ挿入口の内側に密着させた状態
で該挿入口を閉塞することとなり、麻酔用マスクとして
使用される。また、マスク本体のチューブ挿入口から気
管内チューブを膜体の小孔を通して挿入するだけで、患
者の経口あるいは経鼻から気管内に気管内チューブを挿
入するための気管内挿管用マスクとしても使用される。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところで、前記した従
来の気管内挿管用マスクにあっては、次の欠点があっ
た。 すなわち、前記した気管内挿管用マスクにあって
は、麻酔用マスクとして使用する場合、マスク本体内の
内圧を高くして、弁膜をマスク本体の内側からチューブ
挿入口の内側に密着させるものであるが、弁膜が経年変
化等によってもとの状態に戻らなくなった場合に、弁膜
のシール性が悪くなり、麻酔ガスが外部に漏れてしまう
おそれがあった。また、弁膜がもとの状態に戻らないま
でも、該弁膜による仕切性が悪くなった場合、マスク本
体内の内圧だけでは、弁膜をチューブ挿入口の内側に密
着させることができなくなり、この点でも麻酔ガスが漏
れるおそれがあり、麻酔用マスクとして使用にくくなる
という欠点があった。

【０００６】また、他のタイプの気管内挿管用マスクと
して、可撓性を有する風船状のものをチューブ挿入口の
外側に取り付け、気管内チューブを挿入するときには、
前記風船状のものの頭頂部をハサミ等で切断し、得られ
た切断孔から気管内チューブを挿入し、かつ、風船状の
ものと気管内チューブとの重なる部分をクリップで止め
てシールするタイプのものも知られている。しかしなが
ら、この種のものは、シール性に優れるものの、風船状
のものの頭頂部を切断する作業や、気管内チューブを奥
方へ押し進めるときにいちいちクリップを外す作業が必
要となり、取扱いが面倒であるという欠点があった。

【０００７】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
で、その目的とするところは、気管内チューブを挿入す
る場合でもあるいは挿入しない場合でも、チューブ挿入
部分のシール性が高くガス漏れを防ぎ、しかも取扱の面
からも優れる気管内挿管用マスクを提供することにあ
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解
決するため、以下の構成を採用した。すなわち、請求項
１記載の気管内挿管用マスクは、術中や治療中の患者の
呼吸を確保すべく、患者の経口あるいは経鼻から気管内
に気管内チューブを挿入するための気管内挿管用マスク
であって、患者の口唇部及び鼻付近を覆いかつ麻酔ガス
導入口を有する透明なカップ状のマスク本体と、該マス
ク本体の周縁部に気密的に取り付けられ、使用時に患者
の経口及び経鼻周辺部分を囲むようにして顔面に密着す
る軟質パッド部とを備え、前記マスク本体には、前記麻
酔ガス導入口とは別に前記気管内チューブを挿通させる
チューブ挿入口が設けられ、該チューブ挿入口には、略
中央に前記気管内チューブの径よりも小径に設定された
孔を有するドーナツ状のゴム膜が、その周縁部を前記マ
スク本体に対して気密に設けられ、かつ、前記チューブ
挿入口には、閉塞用のキャップが着脱自在に取り付けら
れていることを特徴とする。請求項２記載の気管内挿管
用マスクは、前記ゴム膜が、筒体その先端に螺合される
リングとの間に、ゴム膜の周縁部を挟み込まれて前記マ
スク本体に固定されていることを特徴とする。請求項３
記載の気管内挿管用マスクは、前記筒体が、前記マスク
本体に設けられた前記チューブ挿入口に、リング状のシ
ール部材を介装された状態で挿入固定されていることを
特徴とする。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下本発明の気管内挿管用マスク
の実施の形態を、図１及び図２を参照して説明する。

【００１０】図に示すように、本発明の気管内挿管用マ
スクは、術中や治療中の患者の呼吸を確保すべく、患者
の経口あるいは経鼻から気管内に気管内チューブＴを挿
入するためのものであり、患者の口唇部及び鼻付近を覆
いかつ麻酔ガス導入口３を有する透明なカップ状のマス
ク本体１と、該マスク本体１の周縁部に一体的かつ気密
に取り付けられた軟質パッド部２とを備える。

【００１１】また、この発明の気管内挿管用マスクは、
マスク本体１に、前記麻酔ガス導入口３とは別に、前記
気管内チューブＴを挿通させるチューブ挿入口５が設け
られ、このチューブ挿入口５には、略中央に孔６ａを有
するドーナツ状のゴム膜６が、その周縁部６ｂをマスク
本体１に対して気密になるように設けられている。

【００１２】具体的には、図２に示すように、ゴム膜６
は、筒体７と該筒体７の先端の雄ねじ部７ａに雌ねじ部
８ａが螺合されるリング８との間に、該ゴム膜６の周縁
部６ｂが挟み込まれることで、筒体７に対し気密状態で
固定される。そして、筒体７が、前記マスク本体１に設
けられたチューブ挿入口５にリング状のシール部材９を
介装された状態で、挿入固定されることでマスク本体５
に固定され、これにより、ゴム膜６はマスク本体１に気
密かつ固定的に取り付けられる。さらに、リング８には
閉塞用のキャップ１０が着脱自在に取り付けられる。

【００１３】前記ゴム膜６は、柔軟性に富みかつ薄い円
板状のゴム材の略中央部分が円状に打ち抜かれてなるも
のであり、中央の孔６ａの径ｍは、前記気管内チューブ
Ｔの径Ｍよりも若干小さな値に設定されている。つま
り、孔６ａに気管内チューブＴが挿入されたときに、気
管内チューブＴとゴム膜６との間が気密に保持されなが
らしかも、気管内チューブＴの軸方向の移動が可能なよ
うになっている。

【００１４】前記筒体７は、中央に鍔部７ｂが形成さ
れ、その先端側に前記雄ねじ部７ａが形成されると共
に、さらにその先端部分には内フランジ７ｃが形成され
ている。一方、前記リング８は、短筒部８ｂとその先端
に設けられた内フランジ８ｃとから構成されている。そ
して、前記したように、短筒部８ｂの内周に形成された
前記雌ねじ部８ａが筒体７の雄ねじ部７ａに螺合されて
締め付けられるとき、該リング８の内フランジ８ｃと筒
体７の内フランジ７ｃとの間で、ゴム膜６の周縁部６ｂ
を強く挟み込むようになっている。

【００１５】シール部材９は、チューブ挿入口５の径よ
りも大に設定された両外フランジ９ａ、９ｂの間で、マ
スク本体１のチューブ挿入口５の周辺を挟み込むこと
で、マスク本体１に取り付けられる。なお、シール部材
９はマスク本体１に組み付けるにあたり、シール部材９
自身の弾性を利用し適宜変形されて組み付けられる。

【００１６】なお、前記マスク本体１は、透明な合成樹
脂材から作られており、ほぼ卵の殻を長手方向に半等分
したカップ状に形成されている。また、前記筒体７、リ
ング８及びキャップ１０もそれぞれ透明な合成樹脂材か
ら作られる。軟質パッド部２は、合成ゴムから構成され
ており、中空環状なパッド本体２ａとこのパッド本体２
ａ内周部分に一体に形成されている取付縁部２ｂとから
なっている。パッド本体２ａは、環状に連続した管状部
材であり、その底面形状は標準的な患者の鼻口部の環状
周辺部分の起伏に沿う形状となっている。このパッド本
体２ａの一側部には柔軟チューブ２ｃが連結されてお
り、このパッド本体２ａの環状をなす内部空間２ｄに所
望量の空気を注入できるようになっている。そして、所
定量の空気を内部空間２ｄに注入し閉詮することによっ
て、パッド本体２ａに適度な弾性を付与することができ
るものである。

【００１７】次に、上記構成の気管内挿管用マスクの作
用について説明する。麻酔ガス源に接続された呼吸回路
のコネクター（図示略）をマスク本体１の麻酔ガス導入
口３に連結し、軟質パッド部２を患者の顔面に密着させ
ることで、麻酔ガスをマスク本体１内に充満させながら
患者に吸引させる。

【００１８】このとき、患者の経口あるいは経鼻から気
管内チューブＴを挿入する場合には、キャップ１０を外
し、気管内チューブＴをゴム膜６の中央の孔６ａに挿入
する。このとき、ゴム膜６はその周縁部６ｂが筒体７と
リング８との間に強く挟み込まれ、しかも、それ自身適
宜弾性を有しつつ孔６ａの径が気管内チューブＴの径よ
りも若干小に設定されていることから、気管内チューブ
Ｔがゴム膜の孔６ａを挿通したとしてもその挿通部分は
気密に保持される。したがって、気管内チューブＴの挿
通部分から麻酔ガスがマスク本体の外側に漏れることは
ない。

【００１９】また、例えば気管内チューブＴの先端を患
者の口や鼻の奥方へさらに深く押し込むときには、気管
内チューブＴ内にスコープを通してチューブ先端よりス
コープの先を出し、気管内の位置を確認しながら挿管を
行うが、このとき、ゴム膜６が適宜弾性を有するため必
要に応じ、孔６ａが広がって気管内チューブＴの挿入方
向の移動を許容することから、該気管内チューブＴの移
動は支障なく行われる。そして、気管内チューブＴが適
宜位置まで押し込まれた後は、ゴム膜６の孔６ａは自身
の弾性により狭まり、気管内チューブＴの外周に所定の
押圧力をもって当接するので、シール性は確保される。

【００２０】一方、前記気管内挿管用マスクを単なる麻
酔用マスクとして用いる場合には、キャップ１０によっ
てチューブ挿入口５を塞げば、このチューブ挿入口から
麻酔ガスが漏れるのを防止することができ、なんら支障
はない。

【００２１】なお、前記した実施の形態では、チューブ
挿入口５をマスク本体１の中央下部に設けているが、こ
れに限られることなく、マスク本体１の側部の中央ある
いは上部に設けても良い。また、前記した実施の形態で
は、筒体７をマスク本体１と別部材で設けているが、こ
れに限られることなく、マスク本体１と一体に設けても
よい。さらに、前記した実施の形態では、筒体７とリン
グ８を螺合させているが、これに限られることなく、そ
れらの合わせ部分を凹凸嵌合させて、それらの間にゴム
膜６を挟み込む構成にしてもよい。

【００２２】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、以
下の優れた効果を奏する。請求項１記載の発明によれ
ば、マスク本体に、麻酔ガス導入口とは別に患者の経口
または経鼻に挿入される気管内チューブを挿通させるチ
ューブ挿入口を設け、チューブ挿入口に、略中央に前記
気管内チューブの径よりも小径に設定された孔を有する
ドーナツ状のゴム膜を、その周縁部をマスク本体に対し
て気密に設けているので、ゴム膜がそれ自身の弾性によ
り気管内チューブの外周に適宜力で押し当たることか
ら、ゴム膜は、気管内チューブの移動を許容しつつ良好
なシール性が確保できる。また、キャップによってチュ
ーブ挿入口を塞げば、高いシール性を確保しつつ、この
気管内挿管用マスクを単なる麻酔用マスクとして用いる
こともでき、取扱いの面からも優れる。請求項２記載の
発明によれば、ゴム膜を、筒体とその先端に螺合される
リングとの間に、ゴム膜の周縁部を挟み込ませて固定し
ているので、ゴム膜をその周縁部を気密に保持しながら
容易にマスク本体に組み付けて固定することができる。
請求項３記載の発明によれば、筒体を、マスク本体に設
けた孔に、リング状のシール部材を介装した状態で挿入
固定しているので、筒体とリングとそれらの間に挟み込
まれるゴム膜とを一体に組み付けた状態で、マスク本体
に取り付けることができ、当該麻酔用マスクの組付作業
性の向上が図れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の麻酔用マスクの実施の形態を示す斜
視図。

【図２】 同実施の形態を示す分解斜視図。

【符号の説明】

１ マスク本体 ２ 軟質パッド部 ３ 麻酔ガス導入口 ５ チューブ挿入口 ６ ゴム膜 ７ 筒体 ８ リング ９ シール部材 Ｔ 気管内チューブ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 術中や治療中の患者の呼吸を確保すべ
   く、患者の経口あるいは経鼻から気管内に気管内チュー
   ブを挿入するための気管内挿管用マスクであって、 患者の口唇部及び鼻付近を覆いかつ麻酔ガス導入口
   （３）を有する透明なカップ状のマスク本体（１）と、 該マスク本体の周縁部に気密的に取り付けられ、使用時
   に患者の経口及び経鼻周辺部分を囲むようにして顔面に
   密着する軟質パッド部（２）とを備え、 前記マスク本体には、前記麻酔ガス導入口とは別に前記
   気管内チューブ（Ｔ）を挿通させるチューブ挿入口
   （５）が設けられ、 該チューブ挿入口には、略中央に前記気管内チューブの
   径よりも小径に設定された孔を有するドーナツ状のゴム
   膜（６）が、その周縁部を前記マスク本体に対して気密
   に設けられ、かつ、前記チューブ挿入口には、閉塞用の
   キャップ（１０）が着脱自在に取り付けられていること
   を特徴とする気管内挿管用マスク。
2. 【請求項２】 前記ゴム膜は、筒体（７）とその先端に
   螺合されるリング（８）との間に、ゴム膜の周縁部（６
   ｂ）を挟み込まれて前記マスク本体に固定されているこ
   とを特徴とする請求項１記載の気管内挿管用マスク。
3. 【請求項３】 前記筒体は、前記マスク本体に設けられ
   た前記チューブ挿入口（５）に、リング状のシール部材
   （９）を介装された状態で挿入固定されていることを特
   徴とする請求項２記載の気管内挿管用マスク。