JPH10294641A - 横結合多重モードｓａｗフィルタ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の横結合多重モードＳＡＷフィルタおい
て、帯域幅を広げる方法は結合間隙Ｇを狭めるか交差幅
Ｗを狭める手段の２つがある。結合間隙Ｇを狭めると結
合間隙部のバスバー電極が狭くなり前記フィルタの挿入
損失を増大させるという欠点がある。本発明はこの欠点
解決し、広帯域で低損失な横結合多重モードＳＡＷフィ
ルタを提供することを目的とする。 【解決手段】 圧電基板上に２組以上のＳＡＷ共振子を
併置して構成した横結合多重モードフィルタにおいて、
圧電基板の中央部に結合間隙部バスバーの幅にほぼ相当
する幅のグルーブを設け、該バスバーの電極の一部を埋
設し該電極の厚みを厚くしたことを特徴とする横結合多
重モードＳＡＷフィルタである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は携帯電話やコードレ
ス電話等に用いられる横結合多重モードＳＡＷフィルタ
（以下、横結合ＭＭＳフィルタと称す）に関し、特にバ
スバー電極を厚くしオーミックロスを軽減した横結合Ｍ
ＭＳフィルタに関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、携帯電話やコードレス電話等の通
信方式のデジタル化やその搬送波の高周波化に伴い、第
１ＩＦフィルタの中心周波数が数１００ＭＨｚ、通過帯
域幅が数１００ｋＨｚで、且つ群遅延偏差特性の平坦な
ＳＡＷフィルタの需要が増加している。図２に示す横結
合二重モードＳＡＷフィルタ（以下、横結合ＤＭＳフィ
ルタと称す）は小型であり、帯域外において高減衰量が
容易に得られるＩＦフィルタとして多くの無線機に利用
されている。

【０００３】図２（ａ）は従来の横結合ＤＭＳフィルタ
の構成を示す平面図であり、水晶等の圧電基板１９の主
面上に表面波の伝搬する方向に沿ってＩＤＴ２０とその
両側に反射器２０ａ、２０ｂを配して共振子としたもの
と、前記基板１９上に同様に構成したもう１組（ＩＤＴ
２１と反射器２１ａ、２１ｂ）の共振子とを近接して併
置したものである。 ＩＤＴ２０と２１はそれぞれ互い
に間挿し合う複数本の電極指を有する一対のくし形電極
により構成されており、ＩＤＴ２０、２１を構成する一
方のくし型電極はアース電位端子に接続され、他方のく
し形電極は入力または出力端子に電気的に接続されてい
る。ＩＤＴ２０と２１の両側に配置した反射器２０ａ、
２０ｂと２１ａ、２１ｂは、前記ＩＤＴ２０、２１で励
起された表面波をそれぞれのＩＤＴの中央方向に反射す
ることにより振動エネルギーを反射器間に閉じ込めてＱ
値を高めるように作用する。この２つのＩＤＴ２０、２
１を近接配置することによて、ＩＤＴ上に閉じ込められ
た振動エネルギーが音響的に結合し、これによって生ず
る２つの振動モードを利用したバンドパス・フィルタと
して機能する。

【０００４】図２（ｂ）は従来の他のＤＭＳフィルタの
構成を示す平面図であり、同図（ａ）と同様に２つの共
振子を併置したものであり、ＩＤＴ２２、２３の相隣接
したくし型電極のバスバーを共通化し、これをアース電
位端子に接続すると共に、それぞれの他方のくし型電極
を入力または出力端子に電気的に接続したものである。
図２（ａ）の構成のフィルタを平衡型ＤＭＳフィルタ、
同（ｂ）の構成のものを不平衡型ＤＭＳと称している。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記の横
結合ＤＭＳフィルタは比帯域幅（中心周波数に対する帯
域幅の比）が約０．１％と狭く広帯域化が望まれてい
た。このフィルタの帯域幅は併置したＩＤＴ間の振動エ
ネルギーの音響結合を強めることで広がることが知られ
ており、図２（ａ）、（ｂ）に示す結合間隙Ｇを狭める
か交差幅Ｗを狭めて、２つのＩＤＴの中心間間隔を近づ
ければよい。ところが、結合間隙Ｇを狭めると結合間隙
部のバスバー電極が細くなり、該電極のオーミックロス
が増えて前記横結合ＤＭＳフィルタの挿入損失を増大さ
せるという欠点がある。また、交差幅Ｗを狭めると該フ
ィルタのインピーダンスが大きくなり、該フィルタを終
端する外部回路が一般的に低インピーダンスであるた
め、整合が困難になるという欠点がある。また最近は、
通信機器が小型化されたため適切な箇所に接地を配線す
るためのスペースの確保が難しくなり、接地が不十分と
なったり、部品間の距離が短縮されたため部品相互の電
磁気的遮蔽が不完全になることが多い。平衡型ＤＭＳフ
ィルタを用いるとノイズ等が発生した場合に電子回路上
で互いに打ち消し合うため、不平衡型に比べ所謂雑音に
優れており、小型には平衡型が有利であると云われてい
る。このような理由から部品間の干渉を抑制するため平
衡入出力型のＳＡＷフィルタが要求されているが、横結
合ＭＭＳフィルタにおいて平衡入出力型横結合ＭＭＳフ
ィルタを構成するには、図２（ａ）に示すように結合間
隙部に２本のバスバー電極をそれぞれ独立して形成する
必要がある。このため結合間隙Ｇが不平衡型と同じ寸法
であっても平衡入出力型構成の結合間隙部のバスバー電
極は、図２（ｂ）に示す不平衡入出力型構成の場合に比
べより細幅になり、その結果オーミックロスが増加しフ
ィルタの挿入損失の増大を招くことになる。このため広
帯域で低損失のフィルタを実現するに当たっては、耐雑
音性に劣るものの不平衡型構成とせざるをえなかったの
である。

【０００６】また、図３（ａ）は図２（ａ）の平衡型横
結合二重モードフィルタのＣ−Ｃより見た断面図、図３
（ｂ）は図２（ｂ）の不平衡型横結合二重モードフィル
タのＤ−Ｄより見た断面図である。これらの図に示すよ
うに結合間隙部のバスバー電極２６、２７あるいは３０
のオーミックロスを減少する手段として、ＩＤＴパター
ンの電極膜厚Ｈを厚くする手段があるが、電極膜厚を厚
くすると高次モードが低次モードに近接するようにな
り、高次共振モードによるスプリアスが通過帯域外近傍
に発生し、帯域外減衰量を劣化させるという欠点がある
ためオーミックロスの改善にも限界があった。本発明は
上記欠点を解決するためになされたものであって、通過
域が広帯域であり、挿入損失の少ない平衡入出力型横結
合ＭＭＳフィルタを提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明に係る横結合多重モードＳＡＷフィルタの請求
項１記載の発明は、圧電基板上に表面波の伝搬方向に沿
ってＩＤＴとその両側に反射器を配置した共振器を２組
以上近接併置して構成した横結合多重モードフィルタに
おいて、相隣接した共振器間に配置されるバスバーをグ
ルーブ構造としたことを特徴とする横結合多重モードＳ
ＡＷフィルタである。請求項２記載の発明は、前記バス
バーを共振器の併置した方向に２分割して平衡型とした
ことを特徴とする横結合多重モードＳＡＷフィルタであ
る。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下本発明を図面に示した実施の
形態に基づいて詳細に説明する。図１（ａ）、（ｂ）は
本発明を不平衡型横結合ＤＭＳフィルタに適用した実施
例であって、同（ａ）は模式的平面図であり、図１
（ｂ）は同（ａ）のＡ−Ａ線における断面図である。圧
電基板上に表面波の伝搬する方向に沿ってＩＤＴ１とそ
の両側に反射器１ａ、１ｂを配置して共振子としたもの
と、ＩＤＴ２と反射器２ａ、２ｂとを同様に配置して構
成した共振子とを近接併置する。ＩＤＴ１と２はそれぞ
れ互いに間挿し合う複数本の電極指を有する一対のくし
形電極により構成されており、ＩＤＴ１、２を構成する
一方のくし型電極はアース電位端子に接続され、他方の
くし形電極は入力または出力端子に電気的に接続されて
いる。ＩＤＴ１、２の両側に配置した反射器１ａ、１ｂ
と２ａ、２ｂはそれぞれＩＤＴ１、２で励起された表面
波を中央のＩＤＴ方向に反射することにより振動エネル
ギーはそれぞれの反射器１ａ、１ｂと２ａ、２ｂ間に閉
じ込められ、音響的に結合し、これによって生ずる２つ
のモードを利用した横結合ＤＭＳフィルタとして機能す
る。

【０００９】図１（ａ）、（ｂ）が従来の不平衡型横結
合ＤＭＳフィルタと異なる点は、図１（ａ）のＡ−Ａ線
より見た断面図を同（ｂ）に示すように、共通バスバー
電極３としてグルーブ構造を採用した点にある。グルー
ブ構造とは基板を表面から所定の深さに掘り下げて形成
した溝に導電性部材を充填し、その上に通常の膜厚の電
極パターンを積層したものである。この手段を用いるこ
とにより、図１（ｂ）に示すように共通バスバー電極３
を実質的に厚くすることが可能である。従って、帯域幅
を広げるべく結合間隙Ｇを狭めることにより共通バスバ
ー電極３が細められても、該電極を他の電極より実質的
に厚くすることが可能となりオーミックロスの増加を抑
制することができる。

【００１０】図１（ｃ）、（ｄ）は本発明を平衡型横結
合ＤＭＳフィルタに適用した実施例であって、同（ｃ）
は模式的平面図であり、図１（ｄ）は同（ｃ）のＢ−Ｂ
線における断面図である。ＩＤＴ４、５と反射器４ａ〜
５ｂは従来の平衡型横結合ＤＭＳフィルタの場合と同様
に配置される。平衡型横結合ＤＭＳフィルタの場合は基
板中央に設けたバスバー電極６、７をグルーブ構造とし
た点で従来のものとは異なる。不平衡型あるいは平衡型
横結合ＤＭＳフィルタいずれの場合にも、共通バスバー
電極３あるいはバスバー電極６、７のオーミックロスは
該電極の幅と厚みの積即ち、断面積に逆比例する。従っ
てグルーブの深さをオーミックロスが十分に小さくなる
ように適切な厚さにすれば、横結合ＤＭＳフィルタの帯
域幅を広げるべく結合ギャップＧを狭め、その結果バス
バー電極（３あるいは６、７）が細くなってもオーミッ
クロスを十分に小さくすることが可能である。

【００１１】上記のよう横結合ＤＭＳフィルタの通過帯
域幅を広帯域化するため、結合間隙Ｇを狭めることによ
り共通バスバー電極（３あるいは６、７）を狭めても、
基板に設けた適切な深さのグルーブ構造を採用し、バス
バー電極（３あるいは６、７）の断面積を大きくするこ
とによりオーミックロスが小さくなり、ＩＤＴの交差幅
Ｗを狭くせずに広帯域の横結合ＤＭＳを構成することが
可能となる。また、ＩＤＴの電極膜厚Ｈ₀はバスバーの
オーミックロスを考慮することなく任意の適切な厚みに
設定することができるから高次共振モードによるスプリ
アスの発生、増大も防止することができる。

【００１２】以上、本発明を横結合二重モードフィルタ
（ＤＭＳフィルタ）で説明したが、横結合三重モードフ
ィルタ等の多重モードフィルタ（ＭＭＳフィルタ）に適
用できることはいうまでもない。圧電材料としは、水
晶、ＬｉＴａＯ３、ＬｉＮｂＯ３、ＬＢＯその他表面波
を励振できる圧電材料であるなら、本発明が適用できる
ことは言うまでもない。

【００１３】

【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成した
ので、横結合多重モードＳＡＷフィルタを広帯域化ある
いは平衡型入出力構成としても挿入損失の増加、インピ
ーダンスの上昇、通過帯域外の減衰量の劣化を招くこと
のない横結合多重モードフィルタが実現できるという優
れた効果を奏する。特に結合間隙部のバスバーが細幅と
なり、オーミックロスが増大するとして実用の範囲が限
定されていた平衡型のＭＭＳフィルタの実用性の拡大と
いう著効を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】（ａ）は本発明を不平衡型横結合二重モードフ
ィルタに適用した実施例を示す平面図、（ｂ）は（ａ）
のＡ−Ａ線における断面図、（ｃ）は本発明を平衡型横
結合二重モードフィルタに適用した実施例を示す平面
図、（ｄ）は（ｃ）のＢ−Ｂ線における断面図である。

【図２】（ａ）は従来の平衡型横結合二重モードフィル
タを示す平面図、（ｂ）は従来の不平衡型横結合二重モ
ードフィルタを示す平面図である。

【図３】（ａ）、（ｂ）は従来の平衡型及び不平衡型横
結合二重モードフィルタの電極を厚くした場合であり、
図２（ａ）、（ｂ）のそれぞれＣ−Ｃ線及びＤ−Ｄ線か
ら見た断面図を示した図である。

【符号の説明】

１、２、４、５・・ＩＤＴ １ａ、１ｂ、２ａ、２ｂ、４ａ、４ｂ、５ａ、５ｂ・・
反射器 ３・・埋設した共通バスバー ６、 ７・・埋設した分割バスバー Ａ−Ａ、Ｂ−Ｂ・・分割線

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 圧電基板上に表面波の伝搬方向に沿って
   ＩＤＴとその両側に反射器を配置した共振器を２組以上
   近接併置して構成した横結合多重モードフィルタにおい
   て、相隣接した共振器間に配置されるバスバーをグルー
   ブ構造としたことを特徴とする横結合多重モードＳＡＷ
   フィルタ。
2. 【請求項２】 前記バスバーを共振器の併置した方向に
   ２分割して平衡型としたことを特徴とする横結合多重モ
   ードＳＡＷフィルタ。