JPH10293573A

JPH10293573A - 楽器の共鳴壁処理法と、その処理法による楽器

Info

Publication number: JPH10293573A
Application number: JP9116145A
Authority: JP
Inventors: Kenji Ogawa; 堅二小川
Original assignee: Individual
Current assignee: Individual
Priority date: 1997-04-18
Filing date: 1997-04-18
Publication date: 1998-11-04
Also published as: EP0872825A2; EP0872825A3

Abstract

(57)【要約】【課題】楽器そのものの形態変化を伴わないで、楽器
性能の引上げ、具体的には音量の増大、音質の向上、音
のつながりの良さ、雑音の低減等をもたらし、優れた演
奏感を得られる楽器の共鳴壁処理法と、その処理法によ
る楽器を提供する。【解決手段】楽器１の共鳴壁２に、該共鳴壁２と空気
との間の摩擦係数を軽減させる潤滑材３の被膜層４を、
スプレ−、ディッピング、ブラッシング方式により一時
的に或いは恒久的に形成することを特徴とする楽器の共
鳴壁処理法である。また、その処理法を施した楽器１で
ある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、楽器の改善に係わ
る。

【０００２】

【従来の技術】楽器は、よりよい音質や音量を得るため
に、材質の選択や加工法が深く係わっており、又演奏者
は自分の技能によってその楽器のもつ性能を最大限引出
そうとする。しかし今日までの楽器の沿革において、材
質は金属なり、木なり、竹なり、プラスチックなりの単
独材料が基本とされ、それぞれの材質がもたらす音色を
楽器の生命として来た。

【０００３】そんな中で、内面層に炭素繊維強化樹脂か
ら成る層を有する管楽器が提案されている（実開昭６２
−６５６９２）。その目的は、「振動減衰率のよい炭素
繊維を内面層に有するために音量が大きく、音の切れが
よく、音のバランスを良くする効果があり、単に竹ある
いはプラスチックのみの層からなる場合に比較して音質
が良好となる」と説明されている（同明細書本文２頁５
行目乃至９行目）。しかしここで「音量が大きくなる」
とは、炭素繊維の持つ特性からもたらされたとしても、
本発明者の認識では、振動減衰率のよい炭素繊維からは
振動減衰率がよい故に音量の増大等は期待できない筈で
ある。

【０００４】加えて、炭素強化樹脂（ＣＦ）は、比較的
軽くて剛性を保持する利点を有するが、ガラス繊維（Ｇ
Ｆ）などと比べるとかなり高価であり、これを肉厚に形
成するとなると楽器そのものの製作費の高騰につなが
る。又、プラスチック製楽器以外は別成形して接着剤を
介して複合することになろうが、その製作手間は大変な
ものである。これら諸因が影響してか、実際に普及を見
ていない。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来のこの
ような実情に鑑みてなされたもので、楽器本体は単一材
料でこれまでの基本形態、構造を踏まえながら、極く簡
単な方式で、その共鳴壁の伝播特性を変えることを課題
とし、鋭意検討の結果、その役目を果す形成物質とし
て、シリコン等の潤滑材が共鳴壁と空気層との間の摩擦
係数を緩和、軽減する優れた作用を持つことに着目し、
これを楽器内外部の共鳴壁に、スプレ−、ディッピン
グ、ブラッシング方式により一時的或いは恒久的に被膜
形成することを着想し、本発明を完成したものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明は、楽器１の内外部の共鳴壁２に、該共鳴壁
２と空気層との間の摩擦係数を緩和、軽減するシリコン
等の潤滑材３の被膜層４を、スプレ−、ディッピング、
ブラッシング方式により一時的或いは恒久的に形成する
ことを特徴とする楽器１の共鳴壁処理法である。

【０００７】又、上記処理法により内外部の共鳴壁２
に、シリコン等の潤滑材３の被膜層４を形成したことを
特徴とする楽器１である。一般的には、上記被膜層４
は、管楽器の場合は外部でもよいが流速を上げる意味で
内部の共鳴壁２に形成することが望ましく、他の楽器に
あっては内部、外部を問わない。

【０００８】

【発明の実施の形態】今、管楽器について実施例を説明
すると、図１において１が楽器本体で、その共鳴壁２
に、スプレ−方式によりシリコン溶液を塗布するか或い
はディッピング、ブラッシング方式により附着させ、該
共鳴壁２にシリコンの被膜層４を形成する。その被膜層
４を一時的なものとするか恒久的なものとするかは、潤
滑材であるシリコン溶液の塗布或いは附着の態様による
が、概してスプレ−方式によるときは特定の演奏時間に
限られた時間内の効力を保持させて、その後は元の状態
に復元させられるものとし、ディッピング、ブラッシン
グ方式により充分なコ−ティング処理を施した場合は恒
久的な効力を保持するものとなろう。潤滑材としては、
シリコン以外に二硫化モリブデン、フッ素、グラファイ
ト、カルナバ蝋などが好ましい例として挙げられる。

【０００９】

【発明の作用並びに効果】管楽器を例に説明すると、発
生された振動は粗密波となり、反射し、戻って干渉を起
こし定常波となる。そしてこれが楽器の素材、形態と相
俟って種々の音色となるが、本発明にあっては、共鳴壁
２に、該共鳴壁２と空気との間の摩擦係数を軽減させる
高分子シリコン等の潤滑材３の被膜層４が形成されてい
るため、素材のみの共鳴壁と比べ伝播特性に変化をもた
らす。

【００１０】より具体的には、発音に伴う共鳴壁との摩
擦で失われるエネルギ−を軽減させて振動減衰を避け、
より振動を持続させる。さらに発生音に最も大きな影響
を与えるエア−ビ−ム流速を上げることができる。この
ことから音の抜けが良くなって音量を増大させ、またレ
スポンスが良好となって音のつながりがスム−ズにな
り、フル−ト等の管楽器においてはエッジに対する風切
り音が低減され、変化した伝播特性も音色に良い影響
（音質の向上）を与える。総じてこれまでの演奏感に趣
向変化をもたらし、演奏者、鑑賞者共に趣向満足を得ら
れるものである。

【００１１】実施面においても、楽器製作段階における
実施、完成楽器への実施のいずれを問わず、潤滑材とし
てのシリコン等の溶液を、スプレ−方式によりを塗布す
るか或いはディッピング、ブラッシング方式によりコ−
ティングさせることにより、容易に被膜層の形成ができ
るから、趣向に合った低廉な潤滑材を採択することによ
り充分な経済性を確保できる。先の製品効果と相俟って
普及性の高いものとなろう。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を施した管楽器の部分縦断側面図

【図２】本発明を施した弦楽器の部分切欠斜視図

【符号の説明】

１楽器本体２共鳴壁３共鳴壁と空気との間の摩擦係数を軽減させる潤滑
材４被膜層

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】楽器（１）の共鳴壁（２）に、該共鳴壁
（２）と空気との間の摩擦係数を軽減させる潤滑材
（３）の被膜層（４）を、スプレ−、ディッピング、ブ
ラッシング方式により、一時的に或いは恒久的に形成す
ることを特徴とする楽器（１）の共鳴壁処理法。
【請求項２】潤滑材（３）がシリコン溶液である請求
項１記載の楽器（１）の共鳴壁処理法。
【請求項３】請求項１の処理法により共鳴壁（２）
に、該共鳴壁（２）と空気との間の摩擦係数を軽減させ
る潤滑材（３）の被膜層（３）を形成したことを特徴と
する楽器（１）。