JPH1029000A - 下水処理における硫化水素の抑制方法 - Google Patents

下水処理における硫化水素の抑制方法

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JPH1029000A
JPH1029000A JP8207821A JP20782196A JPH1029000A JP H1029000 A JPH1029000 A JP H1029000A JP 8207821 A JP8207821 A JP 8207821A JP 20782196 A JP20782196 A JP 20782196A JP H1029000 A JPH1029000 A JP H1029000A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 下水処理において、汚泥消化槽における硫化
水素の発生を抑制する方法を提供する。 【解決手段】 水処理工程と汚泥処理工程とからなる下
水処理であって、前記水処理工程によって生成される沈
澱汚泥〔初沈汚泥(r)及び余剰汚泥(q)〕を、汚泥
濃縮槽(4)及び汚泥消化槽(5)で処理し、得られた
消化汚泥(v)を脱水機(6)で処理する下水処理にお
いて、3価鉄化合物を前記汚泥濃縮槽に添加し、汚泥濃
縮槽内の汚泥を、その中に含まれる鉄成分全体に対する
硫酸イオン全体のモル比が0.03以下になる条件を満
足する状態で、汚泥濃縮槽から排出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、下水処理における
硫化水素の抑制方法、特には、汚泥消化槽及び/又は長
距離送泥管における硫化水素の抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図1に示すように、下水処理は、通常、
水処理工程と、その工程で発生する汚泥を処理する汚泥
処理工程とからなる。水処理工程において、被処理水
(a)は、最初沈殿池(1)に送られ、前記被処理水
(a)中に含まれる固形物が十分に沈殿するまで貯留さ
れる。所定の貯留時間経過後に、最初沈殿池(1)の上
清(b)は、活性汚泥を含む曝気槽(2)に送られ、前
記上清(b)中に含まれる有機物が、活性汚泥中の微生
物の作用によって分解される。所定の処理時間経過後
に、曝気槽(2)の活性汚泥混合液は、最終沈殿池
(3)に送られ、前記活性汚泥混合液(c)中に含まれ
る固形物が十分に沈殿するまで貯留される。所定の貯留
時間経過後に最終沈殿池(3)の上清(d)は、放流水
(e)として、下水処理施設の外部に放出され、水処理
工程が完了する。
【0003】最終沈殿池(3)で生成する沈殿物の一部
は、返送汚泥(p)として曝気槽(2)に戻され、活性
汚泥として機能する。一方、前記沈殿物の残りは、余剰
汚泥(q)として以下の汚泥処理工程に送られる。ま
た、最初沈殿池(1)で沈殿により生成する初沈汚泥
(r)も、以下の汚泥処理工程に送られる。本明細書に
おいて、水処理工程を構成する各沈殿池[例えば、最初
沈殿池(1)又は最終沈殿池(3)など]で生成する汚
泥[例えば、余剰汚泥(q)又は初沈汚泥(r)など]
を、沈殿汚泥と称する。前記沈殿汚泥には、一般に、鉄
成分及び硫酸イオンが含まれており、沈殿汚泥中に含ま
れる鉄成分全体に対する硫酸イオン全体のモル比(硫酸
イオン/鉄成分)は、通常、0.1以上である。
【0004】沈殿汚泥は、場合により汚泥分配槽(図示
されていない)を経て、あるいは最初沈殿池(1)又は
最終沈殿池(3)から直接、汚泥濃縮槽(4)に送られ
る。汚泥濃縮槽(4)では、例えば、重力濃縮により、
沈殿汚泥を通常5〜6時間で3〜4倍に濃縮することが
できる。重力濃縮に代わり、機械濃縮によっても前記濃
縮処理を行なうことができる。
【0005】汚泥濃縮槽(4)から排出される濃縮汚泥
の処理は、代表的には、以下の4種の経路により実施す
ることができ、いずれの場合にも最終的にはケーキの形
で処分される。第1の経路では、汚泥濃縮槽(4)から
排出される濃縮汚泥(s)を脱水機(6)に移送し、そ
の中で、例えば、ベルトプレス又は遠心などにより水分
を除去し、ケーキ(x)を得ることができる。第2の経
路では、汚泥濃縮槽(4)から排出される濃縮汚泥
(t)を汚泥消化槽(5)に供給し、濃縮汚泥(t)中
に含まれる有機物を、微生物の作用によって嫌気条件下
で消化し、汚泥を減容化する。減容処理は、嫌気性微生
物による消化を効率的に実施することができる条件、例
えば、約37℃で30日間程度行なうことができる。所
定期間経過後に、汚泥消化槽(5)から排出される消化
汚泥(v)を脱水機(6)に移送し、その中で、例え
ば、ベルトプレス又は遠心などにより水分を除去し、ケ
ーキ(x)を得ることができる。これらの第1及び第2
の経路を含む下水処理は、一般に、個々の下水処理施設
内で、被処理水(a)からケーキ(x)までの処理を行
なうことができる、単独型下水処理である。
【0006】次の第3及び第4の経路は、汚泥処理工程
の最後の工程を、個々の下水処理施設内で実施する代わ
りに、集約的汚泥処理施設に集めて一括して実施する経
路である。第3及び第4の経路を含む下水処理は、一般
に、個々の下水処理施設内で、汚泥処理工程の最後の工
程を除く下水処理を実施し、続いて、集約的汚泥処理施
設内で、汚泥処理工程の最後の工程を実施することので
きる、集約型下水処理である。集約型下水処理施設は、
個別的下水処理施設に比べて、施設規模を大きくした場
合の処理能力当たりの建設費の低減幅が大きいメリット
がある。第3の経路では、汚泥濃縮槽(4)から排出さ
れる濃縮汚泥(u)を、長距離送泥管(7)により、例
えば、圧送などの手段によって集約的汚泥処理施設へ送
泥する。集約的汚泥処理施設では、長距離送泥管(7)
により汚泥濃縮槽(4)から送泥された濃縮汚泥(u)
を、その集約的汚泥処理施設内の汚泥消化槽(9)及び
それに続く脱水機(10)により、又は脱水機(10)
により処理して、ケーキ(y)の形にまで変えることが
できる。第4の経路では、汚泥濃縮槽(4)から排出さ
れる濃縮汚泥(t)を汚泥消化槽(5)に供給し、濃縮
汚泥(t)中に含まれる有機物を、前記と同様の条件で
減容化する。所定期間経過後に、汚泥消化槽(5)から
排出される消化汚泥(w)を長距離送泥管(8)によ
り、集約的汚泥処理施設内の脱水機(10)に、例え
ば、圧送などの手段により送泥する。集約的汚泥処理施
設では、長距離送泥管(8)により汚泥消化槽(5)か
ら送泥された消化汚泥(w)をケーキ(y)にまで処理
することができる。前記の集約的汚泥処理施設は、一般
に、複数の個々の下水処理施設からの濃縮汚泥(t)又
は消化汚泥(w)を一括して集中的に処理する施設であ
り、個々の下水処理施設からは離れた場所に設けられ、
個々の下水処理施設とは、長距離送泥管(7),(8)
によって連絡している。
【0007】汚泥処理工程の各工程において発生する各
分離液の内、個々の下水処理施設で発生する分離液、す
なわち、汚泥濃縮槽(4)から発生する濃縮離脱液
(f)、汚泥消化槽(5)から発生する消化離脱液
(g)、及び脱水機(6)から発生する脱水ろ液(h)
は、再び、最初沈殿池(1)に戻され、被処理水(a)
と一緒に水処理を受ける。また、集約的汚泥処理施設で
発生す分離液、すなわち、汚泥消化槽(9)から発生す
る消化離脱液(j)、及び脱水機(10)から発生する
脱水ろ液(k)は、集約的汚泥処理施設内の水処理槽
(11)に送られ、適当な水処理を受けた後、放流水
(m)として、集約的汚泥処理施設の外部に放出され
る。
【0008】前記下水処理を実施する下水処理施設にお
いて、下水処理中に発生する硫化水素は、下水処理施設
を腐食し、施設の機能に支障を与え、作業環境上でも問
題となることから、下水処理において硫化水素の発生を
抑制することは重要な課題である。一般的な下水の場合
には、硫化物(硫酸イオン)と有機物とが嫌気性状態で
存在すると、硫酸塩還元細菌の作用によって硫化水素が
発生する。硫化水素は、最初沈殿池(1)、汚泥分配槽
(図示せず)、汚泥濃縮槽(4)、汚泥消化槽(5)、
又は脱水機(6)などで発生し、特に汚泥消化槽(5)
で大量に発生する。また、集約型下水処理においては、
個別的下水処理施設で硫化水素が発生するのに加えて、
個別的下水処理施設と集約的汚泥処理施設とを連絡する
長距離送泥管内でも、硫化水素の発生とそれに起因する
施設の腐食が懸念される。なぜなら、前記集約型下水処
理では、汚泥を、圧送などの手段により、個別的下水処
理施設から汚泥集約処理施設まで長距離輸送する必要が
あり、この場合、個別的下水処理施設と集約的汚泥処理
施設とを連絡する長距離送泥管内は、一般的に、硫酸塩
還元細菌にとって都合のよい嫌気的条件下にあるので、
汚泥の変質又は腐敗がおこるからである。
【0009】汚泥消化槽で発生する硫化水素を除去する
方法としては、例えば、黄土を担体として酸化鉄を配し
た吸着剤、ダライ粉、若しくは活性炭により吸収除去す
る乾式脱硫法、又はアルカリ性水溶液を吸収剤とする湿
式脱硫法などが実施されている。しかし、これらの方法
は、汚泥消化槽において発生してしまった消化ガスを脱
硫設備に導くことにより、消化ガス中に含まれる硫化水
素を除去するものであり、汚泥消化槽内における硫化水
素の発生それ自体を抑制するものではない。従って、こ
れらの方法は、硫化水素の発生に伴って生じる汚泥消化
槽内の腐食、更には、消化脱離液に含まれる硫化水素に
より生じる処理場内返流水管路の腐食などを防ぐことが
できなかった。
【0010】硫化水素が汚泥から発生すること自体を直
接抑制する方法としては、汚泥消化槽を備えていない下
水処理施設において、曝気槽にポリ硫酸第二鉄を添加す
ることにより、リンを除去し、かつ濃縮汚泥からの硫化
水素の発生を抑制する方法が開示されている(第32回
下水道研究発表会講演集第547頁〜第549頁,19
95年)。しかし、この方法は、そもそも汚泥消化槽を
使用する方法ではなく、従って、前記文献には、汚泥消
化槽における硫化水素の発生及びその抑制に関する記載
はない。また、この文献と同様に、曝気槽にポリ硫酸第
二鉄を大量に添加すると、ポリ硫酸第二鉄に含まれる硫
酸根が、逆に硫化水素の発生を促進したり、汚泥消化槽
における消化工程に悪影響を与えたりすることが予想さ
れる。また、下水処理においてポリ硫酸第二鉄を利用す
る方法として、曝気槽にポリ硫酸第二鉄を添加すること
により、水中のリン酸を除去する方法が開示されている
(特開平7−232175号公報)が、この文献には、
前記方法が硫化水素の発生を抑制することの開示も示唆
もない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、下水処理において、汚泥消化槽における硫化水素の
発生を抑制し、硫化水素の発生に伴って生じる汚泥消化
槽内の腐食、更には、消化脱離液に含まれる硫化水素に
より生じる処理場内返流水管路の腐食などを防ぐ方法を
提供することにある。また、本発明の別の目的は、集約
型下水処理において、長距離送泥管における硫化水素の
発生を抑制し、硫化水素の発生に伴って生じる長距離送
泥管内の腐食を防ぐ方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記の目的は、本発明に
よる、水処理工程と汚泥処理工程とからなる下水処理で
あって、前記水処理工程によって生成される沈殿汚泥
を、汚泥濃縮槽及び汚泥消化槽で処理し、得られた消化
汚泥を脱水機で処理する下水処理において、3価鉄化合
物を前記汚泥濃縮槽に添加し、汚泥濃縮槽内の汚泥を、
その中に含まれる鉄成分全体に対する硫酸イオン全体の
モル比が0.03以下になる条件を満足する状態で、汚
泥濃縮槽から排出することを特徴とする、前記汚泥消化
槽における硫化水素の抑制方法によって達成することが
できる。また、本発明は、下水処理の水処理工程と汚泥
処理工程とを、個別的下水処理施設と集約的汚泥処理施
設とによって行う集約型下水処理であって、個別的下水
処理施設における水処理工程によって生成される沈殿汚
泥を、汚泥濃縮槽で処理して得られる濃縮汚泥を直接、
又は前記の沈殿汚泥を汚泥濃縮槽で処理した後、続いて
汚泥消化槽で処理して得られる消化汚泥を、長距離送泥
管を経て、別の場所に配置した集約的汚泥処理施設にお
ける汚泥処理槽へ送る集約型下水処理において、3価鉄
化合物を前記汚泥濃縮槽に添加するか、又はそれ以前の
工程で添加し、汚泥濃縮槽内の汚泥を、その中に含まれ
る鉄成分全体に対する硫酸イオン全体のモル比が0.0
3以下になる条件を満足する状態で、汚泥濃縮槽から排
出することを特徴とする、硫化水素の抑制方法にも関す
る。
【0013】本明細書において、下水処理とは、被処理
水を、清浄な放流水として自然環境に放出することがで
きるように、処理する水処理工程と、前記水処理工程に
よって生成される沈殿汚泥を処理する汚泥処理工程とか
ら主になる処理を意味する。また、前記下水処理には、
(1)前記水処理工程及び前記汚泥処理工程のすべての
工程を同一施設内で処理することのできる個別的下水処
理施設において、前記水処理工程及び前記汚泥処理工程
のすべての工程を実施する、単独型下水処理と、(2)
汚泥処理工程の最後の工程を除く下水処理を、個別的下
水処理施設で実施し、汚泥処理工程の最後の工程を、集
約的汚泥処理施設に集めて一括して実施する、集約型汚
水処理工程とが含まれる。なお、集約的汚泥処理施設と
は、前記個別的下水処理施設から離れた場所に配置した
施設であって、少なくとも2か所以上の前記個別的下水
処理施設から排出される濃縮汚泥及び/又は消化汚泥
を、長距離送泥管を経由してその施設に集め、その施設
で一括して、下水処理の最後の工程を実施することがで
きる施設を意味する。前記個別的下水処理施設と前記集
約的汚泥処理施設とは、通常、数km〜数十kmの距離
を隔てて配置されることが多い。
【0014】本明細書において、汚泥濃縮槽とは、水処
理工程において沈殿池(例えば、最初沈殿池、又は最終
沈殿池など)から発生する沈殿汚泥(例えば、初沈汚泥
又は余剰汚泥など)をその内部に滞留させ、適当な手段
により前記汚泥を濃縮することができる装置を意味す
る。汚泥濃縮槽には、例えば、重力濃縮槽及び機械濃縮
槽などが含まれる。ここで、濃縮とは、汚泥中の汚泥固
形分の量を実質的に一定に維持したまま、汚泥中の水分
量を減少させることを意味する。また、本明細書におい
て、濃縮汚泥とは、前記汚泥濃縮槽から排出される汚泥
を意味する。また、本明細書において、汚泥消化槽と
は、前記汚泥濃縮槽から排出された濃縮汚泥をその内部
に滞留させ、微生物の作用により嫌気条件下で前記汚泥
を消化し、汚泥の減容化を実施することができる装置を
意味する。また、本明細書において、消化汚泥とは、前
記汚泥消化槽から排出される汚泥を意味する。更に、本
明細書において、長距離送泥管とは、前記個別的下水処
理施設と前記集約的汚泥処理施設とを連絡し、前記個別
的下水処理施設で発生する濃縮汚泥及び/又は消化汚泥
を、前記個別的下水処理施設から前記集約的汚泥処理施
設に輸送することのできる装置を意味する。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明方法によれば、任意の被処
理水あるいは任意の沈殿汚泥を処理することができる。
被処理水は、通常の下水処理施設で処理することのでき
る下水であれば、特に限定されるものではなく、例え
ば、生活排水、農業排水、工場排水、又は天然流水など
を挙げることができる。また、沈殿汚泥も特に限定され
るものではなく、前記の被処理水を通常の水処理工程に
よって処理して生成される沈殿汚泥、すなわち、一般的
にその沈殿汚泥中に含まれる鉄成分全体に対する硫酸イ
オン全体のモル比(硫酸イオン/鉄成分)が0.1以上
となる沈殿汚泥である。また、前記沈殿汚泥中に含まれ
る鉄成分全体の内、3価鉄化合物の比率は、例えば、下
水処理施設の形式、又は被処理水原液の性状などによ
り、変動が大きい。
【0016】本発明方法においては、3価鉄化合物とし
て、例えば、3価鉄の無機塩を用いることができる。3
価鉄の無機塩としては、例えば、3価鉄の酸化物、塩化
物、硝酸塩、又は硫酸塩、具体的には、Fe23、Fe
Cl3、Fe(NO33、Fe2(SO43、又はポリ硫
酸第二鉄を挙げることができる。前記ポリ硫酸第二鉄
は、式: [Fe2(OH)n(SO43-n/2]m 〔式中、n<2であり、m>10であり、その塩基度は
(n/6)×100%で示される〕で表わされる化合物
である(特公昭51−17516号公報参照)。3価鉄
化合物としては、液状にすることができ、取り扱いが容
易である点で、FeCl3又はポリ硫酸第二鉄が好まし
く、配管腐食の原因となる塩素を含まず、pHの低下が
少ない点で、ポリ硫酸第二鉄が特に好ましい。
【0017】本発明方法においては、任意の3価鉄化合
物、特には3価鉄の無機塩を単独で、又は組み合わせて
用いることができる。また、3価鉄化合物を液体状、溶
液状若しくは固体状で、又はそれらを組み合わせて添加
することができる。3価鉄化合物を液体状又は溶液状で
加えると、速やかに拡散するので好ましい。
【0018】本発明方法において、単独型下水処理を実
施する場合には、3価鉄化合物を前記汚泥濃縮槽に添加
し、汚泥濃縮槽内の汚泥を、その中に含まれる鉄成分全
体に対する硫酸イオン全体のモル比(硫酸イオン/鉄成
分)が0.03以下になる条件を満足する状態で、汚泥
濃縮槽から排出する。すなわち、汚泥濃縮槽から排出さ
れる濃縮汚泥中の前記モル比が0.03以下になるよう
に、3価鉄化合物を汚泥濃縮槽に添加し、必要により濃
縮処理を行う。なお、前記の鉄成分又は鉄成分全体に
は、濃縮汚泥中における任意の存在状態におけるすべて
の鉄、例えば、溶存状態の鉄、又は結晶質状態若しくは
非晶質状態の酸化物若しくは水酸化物などの状態の鉄な
どが含まれ、原子価も3価に限定されるものではなく、
任意の原子価であることができる。前記濃縮汚泥中に含
まれる前記鉄成分のモル量は、例えば、誘導結合プラズ
マ発光分析装置(ICP)の方法によって、測定するこ
とができる。
【0019】3価鉄化合物として3価鉄含有硫酸塩(例
えば、硫酸第二鉄又はポリ硫酸第二鉄)を用いて、単独
型下水処理を実施する場合には、一般に、適当量の3価
鉄含有硫酸塩を汚泥濃縮槽に添加した後、汚泥濃縮槽内
の汚泥を、前記モル比(硫酸イオン/鉄成分)が0.0
3以下になるように適当に濃縮してから、汚泥濃縮槽か
ら排出する。すなわち、3価鉄含有硫酸塩では、3価鉄
イオンに対する硫酸イオンのモル比が、硫酸第二鉄の場
合には1.5であり、ポリ硫酸第二鉄の場合には通常
1.4〜1.45であるので、3価鉄含有硫酸塩から供
給される硫酸イオンのモル量は、3価鉄含有硫酸塩から
供給される3価鉄イオンのモル量よりも高い。従って、
濃縮汚泥にこれらの3価鉄含有硫酸塩を添加すると、添
加直後の硫酸イオン/鉄成分のモル比は、添加前の硫酸
イオン/鉄成分のモル比よりも、高くなる。このように
高いモル比を維持したまま、濃縮汚泥を排出すると、汚
泥消化槽や長距離送泥管において、硫酸イオンが硫酸還
元菌の作用により硫化水素に変化し、かえって硫化水素
の発生を促進してしまう。
【0020】従って、3価鉄含有硫酸塩を汚泥濃縮槽に
添加する場合には、汚泥濃縮槽内へ供給される個々の汚
泥における硫酸イオン/鉄成分のモル比、及び汚泥濃縮
槽内での濃縮効率に応じて、3価鉄化合物の添加量を決
定するか、あるいは、個々の汚泥における硫酸イオン/
鉄成分−モル比及び3価鉄化合物添加量に応じて、汚泥
濃縮槽における濃縮工程又は濃縮効率を決定する。具体
的には、汚泥濃縮槽へ供給される個々の汚泥における硫
酸イオン/鉄成分−モル比に応じて、汚泥濃縮槽への3
価鉄化合物添加量、及び汚泥の濃縮率を適宜調整して、
汚泥濃縮槽から排出される濃縮汚泥中の前記モル比(硫
酸イオン/鉄成分)を0.03以下にすることができ
る。例えば、本発明方法を実施する個別的下水処理施設
内の汚泥濃縮槽における汚泥濃縮率が一定あるいは一定
範囲内にある場合には、その濃縮率における鉄成分及び
硫酸イオンの残存率を、例えば、予備試験などにより、
予め測定しておく。続いて、水処理工程によって生成さ
れ、汚泥濃縮槽に供給される沈殿汚泥に含まれる鉄成分
及び硫酸イオンの濃度、並びにその沈殿汚泥の容量を測
定し、汚泥濃縮槽内の汚泥中に含まれる鉄成分全体に対
する硫酸イオン全体のモル比が0.03以下になるよう
に、前記測定値に応じて3価鉄化合物添加量を決定する
ことができる。
【0021】汚泥濃縮槽に供給される沈殿汚泥における
硫酸イオン/鉄成分−モル比が経時的に変化する場合に
は、その経時変化を、連続的若しくは断続的(一定間隔
若しくは不定間隔で)に測定して、3価鉄化合物添加量
を適宜調整することにより、汚泥濃縮槽から排出される
濃縮汚泥の前記モル比(硫酸イオン/鉄成分)を0.0
3以下に連続的に維持することができる。また、汚泥濃
縮槽から排出される濃縮汚泥中の前記モル比(硫酸イオ
ン/鉄成分)が、全体的に実質的に前記範囲内にある限
り、短時間及び/又は部分的に前記範囲をはずれること
ができる。例えば、汚泥濃縮槽から単位時間当たりに排
出される濃縮汚泥の総重量において、その約10重量%
部分の前記モル比が、前記の上限を1割程度上回ること
は何ら問題とならない。
【0022】以上のように、本発明方法において、3価
鉄含有硫酸塩を汚泥濃縮槽に添加する場合には、3価鉄
含有硫酸塩を汚泥濃縮槽に添加した後に、汚泥濃縮槽内
の汚泥を濃縮するので、鉄イオンはそのほとんどが、水
酸化鉄等の形で濃縮汚泥内に取り込まれる。一方、硫酸
イオンはそのほとんどが、濃縮汚泥内に取り込まれるこ
となく、濃縮離脱液の方に残り、濃縮離脱液として分離
除去されるので、濃縮汚泥の前記モル比(硫酸イオン/
鉄成分)は低下する。従って、こうして処理された濃縮
汚泥は、硫化水素の発生を促進することがない。
【0023】汚泥濃縮槽において汚泥を濃縮する方法
は、前記のモル比(硫酸イオン/鉄成分)を所定範囲に
することができる方法であれば特に限定されるものでは
なく、通常の汚泥濃縮方法、例えば、重力濃縮法、及び
機械濃縮法などを挙げることができる。重力濃縮法によ
れば、例えば、濁質の凝集、沈降、及び分離により、汚
泥濃縮槽内の汚泥を濃縮することができる。機械濃縮法
によれば、例えば、浮力又は遠心力を用いることによ
り、汚泥濃縮槽内の汚泥を濃縮することができる。機械
濃縮法は、重力濃縮法では充分に濃縮することが困難で
ある場合、例えば、汚泥の性状の変化などにより、汚泥
の沈降性及び濃縮性が悪い場合などに使用することがで
きる。
【0024】本発明方法において、3価鉄化合物とし
て、硫酸塩を含まない3価鉄化合物を用い、3価鉄化合
物を汚泥濃縮槽へ添加する場合は、汚泥濃縮槽内の個々
の汚泥における硫酸イオン/鉄成分−モル比に応じて、
汚泥濃縮槽への3価鉄化合物添加量、及び場合により汚
泥の濃縮率を適宜調整して、汚泥濃縮槽から排出される
濃縮汚泥中の前記モル比(硫酸イオン/鉄成分)を0.
03以下にすることができる。例えば、水処理工程によ
って生成され、汚泥濃縮槽に供給される沈殿汚泥に含ま
れる鉄成分全体及び硫酸イオン全体の濃度、並びにその
沈殿汚泥全体の容量を予め測定し、汚泥濃縮槽内の汚泥
中に含まれる鉄成分全体に対する硫酸イオン全体のモル
比が0.03以下になるように、前記測定値に応じて3
価鉄化合物添加量を決定することができる。
【0025】硫酸塩を含まない3価鉄化合物を汚泥濃縮
槽へ添加する場合には、汚泥濃縮槽内の汚泥の硫酸イオ
ン濃度が一般的に低いので、3価鉄化合物の添加後に濃
縮工程を実施する必要のない場合が多い。しかし、汚泥
濃縮槽に供給される沈殿汚泥における硫酸イオン/鉄成
分−モル比が経時的に変化する場合には、その経時変化
を、連続的若しくは断続的(一定間隔若しくは不定間隔
で)に測定して、3価鉄化合物添加量を適宜調整するこ
とにより、汚泥濃縮槽から排出される濃縮汚泥の前記モ
ル比(硫酸イオン/鉄成分)を前記と同様に0.03以
下に連続的に維持することができる。また、前記と同様
に、汚泥濃縮槽から排出される濃縮汚泥中の前記モル比
(硫酸イオン/鉄成分)が、全体的に実質的に前記範囲
内にある限り、短時間及び/又は部分的に前記範囲をは
ずれることができる。
【0026】本発明方法において、集約型下水処理を実
施する場合には、3価鉄化合物を前記汚泥濃縮槽に添加
するか、又はそれ以前の工程で添加し、汚泥濃縮槽内の
汚泥を、その中に含まれる鉄成分全体に対する硫酸イオ
ン全体のモル比(硫酸イオン/鉄成分)が0.03以下
になる条件を満足する状態で、汚泥濃縮槽から排出す
る。すなわち、汚泥濃縮槽から排出される濃縮汚泥中の
前記モル比が0.03以下になるように、3価鉄化合物
を汚泥濃縮槽又はそれ以前の工程で添加し、必要により
汚泥濃縮槽で濃縮処理を行う。
【0027】3価鉄化合物を前記汚泥濃縮槽に添加し
て、この集約型下水処理を実施する場合には、前記の単
独型下水処理で説明した操作をそのまま適用することが
できる。例えば、3価鉄化合物として3価鉄含有硫酸塩
を用いる場合には、一般に、適当量の3価鉄含有硫酸塩
を汚泥濃縮槽に添加した後、汚泥濃縮槽内の汚泥を、前
記モル比(硫酸イオン/鉄成分)が0.03以下になる
ように適当に濃縮してから、汚泥濃縮槽から排出する。
また、3価鉄含有硫酸塩の添加量や濃縮率なども前記と
同様に調整することができる。硫酸塩を含まない3価鉄
化合物を用いる場合は、汚泥濃縮槽内の個々の汚泥にお
ける硫酸イオン/鉄成分−モル比に応じて、3価鉄化合
物添加量、及び場合により汚泥の濃縮率を適宜調整し
て、汚泥濃縮槽から排出される濃縮汚泥中の前記モル比
(硫酸イオン/鉄成分)を前記の所定範囲に調整するこ
とができる。
【0028】汚泥濃縮槽より前の工程で3価鉄化合物を
添加して、本発明による前記集約型下水処理を実施する
こともできる。この場合には、例えば、水処理工程の任
意の段階、例えば、最初沈殿池、曝気槽、又は最終沈殿
池などに3価鉄化合物を添加することができる。また、
前記の水処理工程で生成した沈殿汚泥の分配工程、すな
わち、汚泥分配槽に3価鉄化合物を添加することができ
る。また、3価鉄化合物を、前記各工程の1箇所のみに
添加するだけでなく、複数箇所(例えば、汚泥濃縮槽、
水処理工程を構成する各処理槽、又は汚泥分配槽など)
に添加することができる。更に、汚泥濃縮槽より前の任
意の工程で3価鉄化合物を添加すると共に、汚泥濃縮槽
に3価鉄化合物を添加することもできる。
【0029】汚泥濃縮槽より前の工程で3価鉄化合物を
添加すること以外は、通常の水処理を実施して得られた
沈殿汚泥を汚泥濃縮槽に送泥した後、その汚泥濃縮槽内
の汚泥において前記硫酸イオン/鉄成分−モル比を測定
する。前記モル比(硫酸イオン/鉄成分)が0.03以
下でない場合には、3価鉄化合物の添加量を調整する
か、あるいは汚泥濃縮槽において前記と同様の濃縮工程
を実施することにより、前記モル比(硫酸イオン/鉄成
分)を0.03以下に調整することができる。汚泥濃縮
槽より前の工程で3価鉄化合物を添加する場合は、3価
鉄化合物として硫酸塩を使用しても、水処理の各工程で
硫酸イオンが上清や分離液中に移り、沈殿成分中には残
留しないので、汚泥濃縮槽に供給される沈殿汚泥内の硫
酸イオン/鉄成分−モル比が充分に低下しており、前記
の所定値(0.03)以下になっていることが多い。硫
酸塩を含まない3価鉄化合物を使用する場合は、汚泥濃
縮槽に供給される沈殿汚泥内の硫酸イオン/鉄成分−モ
ル比が一般的に前記の所定値(0.03)以下になって
いることが多い。
【0030】汚泥濃縮槽に供給される沈殿汚泥における
硫酸イオン/鉄成分−モル比が経時的に変化する場合に
は、その経時変化を、連続的若しくは断続的(一定間隔
若しくは不定間隔で)に測定して、3価鉄化合物添加量
を適宜調整することにより、汚泥濃縮槽から排出される
濃縮汚泥の前記モル比(硫酸イオン/鉄成分)を前記と
同様に0.03以下に連続的に維持することができる。
また、前記と同様に、汚泥濃縮槽から排出される濃縮汚
泥中の前記モル比(硫酸イオン/鉄成分)が、全体的に
実質的に前記範囲内にある限り、短時間及び/又は部分
的に前記範囲をはずれることができる。
【0031】本発明方法においては、硫酸イオン/鉄成
分−モル比を前記の所定範囲に調整した濃縮汚泥を、同
じ個別的下水処理施設内の汚泥消化槽へ送るか、あるい
は長距離送泥管を介して集約的汚泥処理施設内の汚泥消
化槽へ送ることができる。汚泥消化槽内の反応条件は、
濃縮汚泥の硫酸イオン/鉄成分−モル比が前記所定範囲
にあること以外は、通常の消化工程を実施するのに用い
られる条件をそのまま適用することができる。例えば、
好ましくは15〜65℃、より好ましくは30〜40℃
の範囲の温度で、好ましくは10〜40日間、より好ま
しくは25〜30日間反応させることができる。本発明
方法においては、処理汚泥中の硫酸イオン濃度が低いの
で、硫化水素の発生が抑制され、汚泥消化槽に脱硫塔を
設ける必要がない。しかも、消化反応に影響を与えるこ
とがない。本発明方法によって個別的下水処理を実施す
る場合には、前記の汚泥消化槽から排出される消化汚泥
を脱水機に送り、ケーキを形成し、更に、脱水工程の後
に、ケーキの焼却工程(図1には図示せず)を実施する
ことができる。
【0032】本発明方法において、集約型下水処理を実
施する場合には、汚泥処理工程の前半を個別的下水処理
施設で実施し、汚泥処理工程の後半を集約的汚泥処理施
設に集めて一括して実施する。例えば、汚泥濃縮工程を
個別的下水処理施設で実施し、汚泥消化工程及び脱水工
程を集約的汚泥処理施設で実施するか、あるいは、汚泥
濃縮工程及び汚泥消化工程を個別的下水処理施設で実施
し、脱水工程を集約的汚泥処理施設で実施することがで
きる。従って、この場合、個別的下水処理施設内の汚泥
濃縮槽で処理した濃縮汚泥を長距離送泥管を経て、集約
的汚泥処理施設における汚泥処理槽へ送るか、あるい
は、個別的下水処理施設内の汚泥濃縮槽及び汚泥消化槽
で処理した消化汚泥を、長距離送泥管を経て、集約的汚
泥処理施設における汚泥処理槽へ送ることができる。
【0033】集約的汚泥処理施設における汚泥処理槽に
は、例えば、受泥槽(図1には図示せず)、汚泥消化
槽、及び/又は脱水機などが含まれる。集約的汚泥処理
施設で実施することのできる汚泥処理工程は、個別的下
水処理施設から排出される汚泥の状態によって、適宜決
定することができる。この場合、集約的汚泥処理施設に
は、複数の個別的下水処理施設から排出される、種々の
状態の汚泥(例えば、濃縮汚泥又は消化汚泥)が供給さ
れることが一般的であるので、個別的下水処理施設で実
施する工程と、集約的汚泥処理施設で実施する工程とが
重複することがあり、そのような場合も本発明の範囲内
に含まれる。
【0034】長距離送泥管に供給される汚泥が、個別的
下水処理施設の汚泥濃縮槽から排出される濃縮汚泥であ
る場合には、集約的汚泥処理施設において、例えば、脱
水工程、又は汚泥消化工程及びそれに続く脱水工程を実
施することができる。この場合に、長距離送泥管から集
約的汚泥処理施設に供給されたところで、再び、汚泥濃
縮工程を実施してから、脱水工程、又は汚泥消化工程及
びそれに続く脱水工程を実施することもできる。また、
脱水工程の後に、更にケーキの焼却工程(図1には図示
せず)を実施することができる。
【0035】また、長距離送泥管に供給される汚泥が、
個別的下水処理施設の汚泥消化槽から排出される消化汚
泥である場合には、集約的汚泥処理施設において、例え
ば、脱水工程を実施することができる。この場合に、長
距離送泥管から集約的汚泥処理施設に供給されたところ
で、再び、汚泥濃縮工程を実施してから、脱水工程を実
施することができる。また、脱水工程の後に、更にケー
キの焼却工程(図1には図示せず)を実施することがで
きる。
【0036】一般的に、個別的下水処理施設と集約型下
水処理施設とを連絡する長距離送泥管は、嫌気性条件下
で、大量の汚泥をかなりの時間をかけて、圧送又は自然
流下などにより、輸送する。従って、汚泥の硫酸イオン
濃度が高いと、長距離送泥管内で大量の硫化水素が発生
してしまうことがある。これに対して、本発明方法で
は、個別的下水処理施設から排出される濃縮汚泥又は消
化汚泥の硫酸イオン/鉄成分−モル比が前記所定範囲に
あるので、硫化水素の発生を100ppm以下に抑制す
ることができる。
【0037】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。実施例1:3価鉄化合物添加による硫化水素発生の抑制
効果 主に一般生活排水を処理している個別的下水処理施設内
の重力式汚泥濃縮槽(容量170m3,処理汚泥量約8
0〜90m3/日)に、汚泥濃縮槽に投入する沈殿汚泥
[汚泥濃度(固形分含有量)約1%]に対して、ポリ硫
酸第二鉄(鉄含量11%)を2000mg/l若しくは
3000mg/l又は塩化第2鉄(鉄濃度13%)を3
000mg/lになるように、水溶液状態で添加し、滞
留時間11〜12時間で濃縮を行うことにより、汚泥濃
度2.2〜2.5%の濃縮汚泥約40〜45m3を得
た。この濃縮汚泥を2槽からなる消化槽(容量499m
3及び500m3)に投入し、35℃で滞留時間約30日
間で消化を実施した。汚泥消化槽に投入した直後の汚泥
組成、並びに消化を実施した後の汚泥消化槽内の硫化水
素濃度及び消化率を表1に示す。表1には、比較例とし
て、ポリ硫酸第二鉄を1000mg/lになるように添
加した場合の結果、及び対照例として、3価鉄化合物を
添加しなかった場合の結果も併せて示す。なお、表1〜
表3において、全鉄とは、鉄成分全体を示す。消化率X
(%)は、式: X={1−(A×B)/(C×D)}×100 [式中、Aは、汚泥濃縮槽に投入する濃縮汚泥中に含ま
れる無機分の重量百分率(重量%)を表わし、Bは、消
化汚泥中に含まれる有機分の重量百分率(重量%)を表
わし、cは、汚泥濃縮槽に投入する濃縮汚泥中に含まれ
る有機分の重量百分率(重量%)を表わし、Dは、消化
汚泥中に含まれる無機分の重量百分率(重量%)を表わ
す]で算出した。ここで、各汚泥中に含まれる無機分と
は、乾燥した汚泥を強熱処理した場合の残留物を意味
し、各汚泥中に含まれる有機分とは、乾燥した汚泥を強
熱処理した場合に消失するものを意味し、有機分又は無
機分の重量百分率は、下水試験方法[1984年版;
(社)日本下水道協会]に準拠して測定した。なお、強
熱処理は、電気炉中において蒸発皿の上で、600℃で
1時間加熱することにより実施した。表1に示すよう
に、消化汚泥槽に含まれる鉄成分に対する硫酸イオンの
モル比を0.03以下にすることにより、汚泥消化槽に
おける硫化水素の濃度を100ppm以下に抑制するこ
とができた。また、この場合に、消化に悪影響がないこ
とも判明した。
【0038】
【表1】 3価鉄塩添加量(mg/l) 消化槽投入後の汚泥組成 消化後の硫 消化率 ポリ硫酸 塩化 SO4 2- 全鉄 SO4 2-/全鉄 化水素濃度第2鉄 第2鉄 (mg/l) (mg/l) (mol/mol) (ppm) (%) 1000 0 25 318 0.045 800 64 2000 0 31 595 0.030 80 65 3000 0 37 821 0.026 20 64 0 3000 19 915 0.012 20 64 0 0 18 82 0.13 3000 65
【0039】実施例2:汚泥濃縮槽への添加による硫化
水素発生の抑制効果 実施例1と同様の個別的下水処理施設において、汚泥濃
縮槽に投入する直前の沈殿汚泥1リットルを採取し、ポ
リ硫酸第2鉄を500mg/lになるように添加した。
続いて、重力濃縮により汚泥固形分の濃度が5倍になる
ように濃縮し、濃縮汚泥200mlを得た。得られた濃
縮汚泥100mlと、同じ個別的下水処理施設内の汚泥
消化槽から採取した汚泥100mlとを混合し、試料
(a)を得た。これとは別に、以下の操作を実施するこ
とにより、比較例としての試料(b)、及び対照例とし
ての試料(c)を得た。すなわち、同じ個別的下水処理
施設において汚泥濃縮槽に投入する直前の沈殿汚泥1リ
ットルを採取し、重力濃縮により汚泥固形分の濃度が5
倍になるように濃縮し、得られた濃縮汚泥にポリ硫酸第
2鉄を2500mg/lになるように添加した。得られ
た混合物100mlと、個別的下水処理施設内の汚泥消
化槽から採取した汚泥100mlとを混合し、試料
(b)を得た。また、同じ個別的下水処理施設において
汚泥濃縮槽に投入する直前の沈殿汚泥1リットルを採取
し、重力濃縮により汚泥固形分の濃度が5倍になるよう
に濃縮し、得れらた濃縮汚泥100mlと、個別的下水
処理施設内の汚泥消化槽から採取した汚泥100mlと
を混合し、試料(c)を得た。得られた試料(a)、
(b)、及び(c)200mlを、別々に、500ml
の三角フラスコに入れ、35℃の恒温槽で24時間消化
した。消化前及び消化後の汚泥組成、消化中に発生する
硫化水素濃度、並びに消化率を表2に示す。汚泥濃縮槽
にポリ硫酸第2鉄を添加した後、硫酸イオンを濃縮離脱
液として除去することにより、消化処理を実施する汚泥
中に含まれる鉄成分に対する硫酸イオンのモル比を0.
03以下にすることができた。また、この場合に、消化
に悪影響がないことも判明した。
【0040】
【表2】 消化前汚泥組成 消化後(24時間後) 試料 SO4 2- 全鉄 SO4 2-/全鉄 H2 S SO4 2- 消化率 (mg/l) (mg/l) (mol/mol) (ppm) (mg/l) (%) (a) 19 362 0.028 25 5 66 (b) 514 353 0.84 2500 250 66(c) 16 78 0.12 425 8 66
【0041】実施例3:長距離送泥管における硫化水素
発生の抑制効果 長距離送泥管を想定した送泥管(長さ=60m,内径=
80mm)、1m3 の曝気槽、最終沈殿池、及び汚泥濃
縮槽を含むテスト装置を、標準活性汚泥法を実施するこ
とのできる下水処理場に設置した。前記テスト装置は、
前記下水処理場内の最初沈殿池から排出される上清を前
記テスト装置の曝気槽に供給することができるように、
設置した。前記テスト装置においては、主に一般生活排
水を処理している下水処理場内の最初沈殿池から排出さ
れる上清3000リットル/日を、活性汚泥混合液中の
固形分濃度(MLSS)2000mg/l、滞留時間8
時間の条件で、曝気槽内で曝気処理を実施した後、余剰
汚泥45〜50リットル/日を重力式汚泥濃縮槽に供給
して汚泥濃度2〜2.5%になるように濃縮処理を実施
し、続いて、汚泥濃縮槽から排出される濃縮汚泥20〜
30リットル/日を前記テスト装置の送泥管入口部に供
給し、ポンプにより送泥管内を20時間かけて送泥し、
濃縮汚泥を送泥管出口部から排出することができる。
【0042】前記テスト装置の曝気槽にポリ硫酸第2鉄
を10mg/lになるように添加し、送泥管入口部にお
ける硫酸イオン濃度、鉄成分濃度、及び硫化水素濃度、
並びに送泥管出口部における硫酸イオン濃度及び硫化水
素濃度を測定した。結果を表3に示す。比較例として、
汚泥濃縮槽から排出される濃縮汚泥に、1000mg/
lになるようにポリ硫酸第2鉄を添加した場合の結果
と、対照例として、ポリ鉄硫酸第2鉄を添加しなかった
場合の結果を、併せて表3に示す。比較例では、硫酸イ
オンがすべて送泥管に送り込まれるため、濃縮汚泥に含
まれる鉄成分に対する硫酸イオンのモル比を0.03以
下にすることができず、送泥管出口部における硫化水素
の発生を抑制することができなかった。それに対して、
曝気槽にポリ硫酸第2鉄を添加した場合には、濃縮汚泥
に含まれる鉄成分に対する硫酸イオンのモル比を0.0
3以下にすることができ、硫化水素の発生を抑制するこ
とができた。
【0043】
【表3】 送泥管入口部 送泥管出口部 SO4 2- 全鉄 SO4 2-/全鉄 H2 S SO4 2-2 (mg/l) (mg/l) (mol/mol) (ppm) (mg/l) (ppm) 実施例 11 260 0.025 0 6 2 比較例 125 256 0.28 0 65 450対照例 12 120 0.058 650 5 720
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、下水処理において、汚
泥消化槽における硫化水素の発生を抑制し、硫化水素の
発生に伴って生じる汚泥消化槽内の腐食、更には、消化
脱離液に含まれる硫化水素により生じる処理場内返流水
管路の腐食などを防ぐことができる。また、本発明によ
れば、集約型下水処理において、長距離送泥管における
硫化水素の発生を抑制し、硫化水素の発生に伴って生じ
る長距離送泥管内の腐食を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な下水処理施設の概要を示す説明図であ
る。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水処理工程と汚泥処理工程とからなる下
    水処理であって、前記水処理工程によって生成される沈
    殿汚泥を、汚泥濃縮槽及び汚泥消化槽で処理し、得られ
    た消化汚泥を脱水機で処理する下水処理において、3価
    鉄化合物を前記汚泥濃縮槽に添加し、汚泥濃縮槽内の汚
    泥を、その中に含まれる鉄成分全体に対する硫酸イオン
    全体のモル比が0.03以下になる条件を満足する状態
    で、汚泥濃縮槽から排出することを特徴とする、前記汚
    泥消化槽における硫化水素の抑制方法。
  2. 【請求項2】 下水処理の水処理工程と汚泥処理工程と
    を、個別的下水処理施設と集約的汚泥処理施設とによっ
    て行う集約型下水処理であって、個別的下水処理施設に
    おける水処理工程によって生成される沈殿汚泥を、汚泥
    濃縮槽で処理して得られる濃縮汚泥を直接、又は前記の
    沈殿汚泥を汚泥濃縮槽で処理した後、続いて汚泥消化槽
    で処理して得られる消化汚泥を、長距離送泥管を経て、
    別の場所に配置した集約的汚泥処理施設における汚泥処
    理槽へ送る集約型下水処理において、3価鉄化合物を前
    記汚泥濃縮槽に添加するか、又はそれ以前の工程で添加
    し、汚泥濃縮槽内の汚泥を、その中に含まれる鉄成分全
    体に対する硫酸イオン全体のモル比が0.03以下にな
    る条件を満足する状態で、汚泥濃縮槽から排出すること
    を特徴とする、硫化水素の抑制方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016190190A (ja) * 2015-03-31 2016-11-10 株式会社石垣 汚泥処理システム及び汚泥処理方法
JP2017000980A (ja) * 2015-06-12 2017-01-05 水ing株式会社 下排水処理方法及び下排水処理システム
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