JPH10282460A - 非線形光学素子の製作方法及び非線形光学素子 - Google Patents

非線形光学素子の製作方法及び非線形光学素子

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JPH10282460A
JPH10282460A JP8365397A JP8365397A JPH10282460A JP H10282460 A JPH10282460 A JP H10282460A JP 8365397 A JP8365397 A JP 8365397A JP 8365397 A JP8365397 A JP 8365397A JP H10282460 A JPH10282460 A JP H10282460A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】コアとクラッドとで形成される光導波路の前記
コアを、直流電源の高電圧の印加によって高電圧電場に
置き、ポーリング処理時に紫外光照射することによって
大きな非線形特性を有する平面型非線形光学素子の製造
方法を提供する。 【解決手段】平板基板11上に形成された屈折率の高い
コア12と、これを囲む屈折率の低いクラッド13とか
らなる光導波路10に、高電圧直流の外部電場を印加す
ることによって光学的異方性領域を誘起する非線形光学
素子を製作する。高電圧直流電源16の電場を印加する
ための陽及び陰の一対の電極14、15を光導波路10
を挟んで両側に形成する。光導波路10のクラッド13
上部の位置よりも電極14、15の位置を低くして、電
極14、15の位置をコア12の高さに近づける。これ
によりコア12に横方向の高電圧直流の電場を印加す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、通信、計測、情報
処理の分野に適した高機能で信頼性の高いSiO2 −G
eO2 ガラスを用いた光学素子、特に電気光学効果や第
二高調波発生などの非線形特性を具備した非線形光学素
子の製作方法及び非線形光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】光を使った通信システムの普及に伴い、
より低損失で高機能、しかも信頼性の高い光素子の開発
が求められている。特に石英系材料を用いた導波路型の
光素子は、その低損失性に加え複雑な回路を平面基板上
に一括して形成出来る可能性があることから最も注目を
集めている。
【0003】石英系の平面導波路型光素子は様々な製作
方法が適用されているが、一般に石英基板やあるいはバ
ッファ層(下部クラッド層)と呼ばれるSiO2 層を有
したSi基板を使用する。製作方法の一例を以下に説明
する。まずこれらの基板上に電子ビーム蒸着法やスパッ
タリング法によって厚さ数μmのコア層を形成する。コ
ア層は相対的に屈折率を高めるためにSiO2 にGeな
どのドーパントを添加している。次に、ホトリソグラフ
ィ法を用いて各種光回路のパターニングを行なった後、
反応性イオンエッチング法を用いて3次元のコア形状に
加工する。このようにして形成したコアを含めた基板の
上部に火炎堆積法を用いて上部クラッド層を形成する。
火炎堆積法は酸水素バーナーを用いた火炎加水分解反応
によって上部クラッド層を形成する。火炎堆積法は酸水
素バーナーを用いた火炎加水分解反応によって、P(リ
ン)やB(ホウ素)を添加したSiO2 ガラスの微粒子
を基板上に堆積させ、高温熱処理することによって透明
ガラス化する形成法である。Pの添加はSiO2 よりも
屈折率を上げ、Bの添加はSiO2 よりも屈折率を下げ
る。この結果、火炎堆積法によって形成した上部クラッ
ドはSiO2 とほぼ同じ屈折率を有している。このよう
にしてコアは埋め込まれ、3次元の光導波路が形成され
る。火炎堆積法は、ガラス微粒子の堆積とそれを溶融焼
結するためにクラッド表面が平坦化されるという特徴を
もつ。
【0004】ところで一般にシリカガラスのような無機
ガラスは光学的に等方性物質であり、その反転対称性の
ために本来電気光学効果や第二高調波の発生などの非線
形光学特性を持たないと考えられてきた。しかし最近こ
のような光学的等方体であるガラス材料でも、高電圧の
直流電場によるポーリング処理を行うことによって二次
の光非線形性が誘起することが明らかになった。
【0005】このように光学的等方性であるガラス材料
に異方的特徴を組み込むという新しい試みは、ますます
学問的及び実用的な興味を集めるようになった。特にS
iO2 を主成分とするシリカガラスは、低損失、信頼性
の点で現在のオプトエレクトロニクスの中枢部を担う材
料であり、既に光ファイバ化や平面光導波路化の製造技
術も確立している。またシリカガラスは特にバンドギャ
ップが広く通信分野以外でも紫外及び遠紫外領域でのデ
バイスとして将来的に大変期待できる材料と思われる。
【0006】ポーリング処理によって生ずる非線形光学
効果の要因は、ガラスの構造、組成、ポーリング条件な
どによって幾つか存在するものと思われる。これらのう
ち特にGeドープのSiO2 ガラスにおける非線形光学
効果は、SiO2 −GeO2ガラス中の酸素欠乏欠陥が
関わっているものと考えられる。この酸素欠乏欠陥はエ
キシマレーザなどの紫外光照射によってGeE´センタ
と呼ばれる常磁性中心とそれと同時に電気双極子を生成
する。この現象を利用し、紫外光照射と同時にポーリン
グ処理を行えば、大きな非線形光学効果を誘起できるこ
とがわかった。
【0007】図3は、これまでに検討されている石英系
光導波路のコアに光学的異方性領域を誘起するためのポ
ーリング方法の一例を示したものである。石英基板31
を用いてコア32とさらにその上のクラッド33によっ
て光導波路が構成されている。この光導波路の上部表面
に陽極となる金属電極34を、また基板裏面に陰極とな
る金属電極35を形成し、厚さ方向(図では上下方向)
に高電圧直流電源36を用いて電場を印加してポーリン
グ処理を行なったものである。あるいは図3のような石
英基板ではなく、バッファ層としてSiO2 膜を表面に
形成した低抵抗Si基板を使用し、Si基板そのものを
陰極電極とする構造も提案されている。
【0008】また図4は、石英基板41を用いて形成し
た光導波路において、火炎堆積法によって形成された平
坦な上部クラッド43の表面に、光導波路を挟んで両側
に陽及び陰の一対の金属電極44、45を形成し、横方
向に高電圧直流電場を印加してポーリング処理を行なっ
たものである。なお図4において、42はコア、46は
高電圧直流電源、47は紫外光である。
【0009】このようにこれまで様々な構造のポーリン
グ方法が提案、試作検討されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ガラス導波路、特に石
英系の光導波路に非線形光学効果を誘起できれば、機能
性光素子として幅広い応用が期待できる。しかしなが
ら、光変調器や光スイッチ、あるいは波長変換素子など
実用的な光素子を実現するためには、これまで報告され
ているガラス材料における非線形光学効果はまだまだ微
弱である。現状のレベルでは、例えば電気光学効果を利
用して光スイッチング機能を動作させるためには、素子
長が数十cmも必要だったり、あるいは導波光を制御する
駆動外部電圧が数百V以上も必要だったり現実的とは言
えない。少なくとも既に非線形光学素子として実用化さ
れているLiNbO3 のような強誘電体材料に匹敵する
非線形光学効果の実現と最適な素子構造の開発が望まれ
る。
【0011】図3の従来例では、比較的電極の形成方法
が容易で電極間に絶縁破壊を起こすことなく高電圧が印
加できる。しかし表面の陽極電極34によって光導波路
上部が覆われるため、これに邪魔され高電圧印加と同時
に上部方向からコア32に紫外光照射を行うことができ
ない。GeドープSiO2 ガラスはポーリングと同時に
紫外光照射することにより、コア32の光学的異方性領
域の誘起に重要な効果をもたらすので、これが有効に作
用しなければ大きな非線形光学効果は期待できない。側
面方向から紫外光を照射することも考えられるが、素子
の端とコア32との距離が離れていると、側面からの照
射では紫外光がコア32に達するまでにビームが拡がっ
てしまったり、減衰したりして高い光エネルギー密度で
照射できない。また、図3のような構造では、非線形光
学効果の誘起効率の問題だけでなく、裏面の陰極35の
面積が大きいため、この電極をそのまま導波光の伝搬制
御を行う駆動電極として使用すると導波光の制御速度に
無視できない制限を与える。
【0012】ポーリングに際しては、コア32にできる
だけ集中して大きな電場で印加することが重要である。
図3の石英基板を用いた構造では、上部陽極側電極34
と下部陰極側電極35との間隔は大きい。そのためコア
内に大きな電場の強さで印加するためには、非常に高圧
な電源を使用しなければならない。これに対し基板にバ
ッファ層としてSiO2 膜を表面に形成した低抵抗Si
基板を使用し、Si基板そのものを陰極電極とする構造
であれば、両者の電極間隔は接近し、より低い電圧の電
源でもコア32に大きな電場の強さを実現することがで
きる。しかし前記した紫外光照射の問題や導波光制御速
度の問題はいずれにせよ解決できない。また一般にコア
32を伝搬する導波光は、その電界の偏波方向がポーリ
ング時の高電圧電場の向きと一致したとき、より大きな
非線形光学効果が得られる。このため図3において導波
光の電界が金属電極面に対して垂直成分を持つ偏波(T
M波)で導波光を入射する必要がある。一般にTM波は
金属面に対して平行成分しか持たない偏波(TE波)よ
りも金属による損失の影響を受けやすい。そのためポー
リング時に使用した高電圧印加用の金属電極を、そのま
ま光導波路を伝搬する導波光を制御するための駆動電極
として利用したとき、あまりクラッド層の厚さを薄くし
て電極をコアに接近させると金属電極による導波光の伝
搬損失が無視できなくなる。
【0013】金属電極による伝搬光の伝搬損失の問題を
考えなければ、一般に電極はコアにできるだけ接近さ
せ、電極間隔の距離もできるだけ小さくなるようにした
方が、コアに有効に大きな電場が印加できる。またこの
ような電極の配置は、ポーリング用の高電圧印加陽電極
としてだけでなく、コア中の導波光の伝搬制御を行う駆
動用電極として使用するときもより低い電圧で駆動する
ので有利である。
【0014】図4の従来例では、上部クラッド43の表
面に光導波路を挟んで両側に陽及び陰の一対のポーリン
グ用金属電極44、45を形成しているため、この二つ
の電極の間隙を通して上部方向から垂直にコア42に効
率的にエキシマレーザなどの紫外光47を照射すること
ができる。また、電極44、45とコア42との距離が
比較的小さく、電極間に印加された電場は効率良くコア
42に印加すると期待される。ところが実際に高電圧の
直流電場を印加すると、表面付近において絶縁破壊が発
生し高い電圧で印加できない。これは空気の絶縁破壊電
場が高々3kV/mm程度で、電極間に介在する空気の絶縁
破壊が起こるためである。あるいは基板表面に汚れなど
が存在するとさらに低い電圧で絶縁破壊が発生してしま
う。このような状態では、コア42に集中して大きな電
場を印加することができず、結果として光学的異方性領
域を効率的に誘起することができない。
【0015】
【課題を解決しようとする手段】このような技術課題を
克服するために、本発明は主に次の二つの観点から考案
された。すなわちポーリングと同時に効率的にコアに紫
外光を照射すること、及びポーリング時の絶縁破壊を防
止しコアにできるだけ集中して大きな直流電場を印加す
ることである。
【0016】これらの要求を実現するため本発明では、
GeドープのSiO2 ガラスからなるコアに、ポーリン
グによって光学的異方性領域を誘起する製作方法におい
て、高電圧直流の電場を印加するための陽及び陰の一対
の電極を光導波路を挟んで両側に形成し、かつ光導波路
のクラッド上部の位置よりも電極の位置を低くして、電
極の位置をコアの高さに近づけ、これによりコアに横方
向の高圧直流電場を印加するようにした。このような構
造にすることにより空気の絶縁破壊を回避し、コアに大
きな電場強度で直流電場が印加できる。また金属電極の
膜厚は高々1μm程度であり、金属電極による導波光の
伝送損失への影響も無視しうる。
【0017】またさらに電極及び光導波路の汚れや不完
全形状などによる電界集中に起因する絶縁破壊電圧の低
下を抑制するために、コアに高電圧直流の電場を印加す
る電極及びこれに挟まれた光導波路上に、電極及び光導
波路の少なくとも一部が紫外光を透過する絶縁膜によっ
て被覆した。このような絶縁膜の材料として酸化珪素、
窒化珪素、あるいはパーフルオロアモルファスフッ素樹
脂のいずれかを用いた。これらの材料は、絶縁破壊電圧
が高く同時にエキシマレーザなどの紫外光に対しても高
い透過性を有する。この絶縁膜は光導波路の伝搬する光
に対しても透明性が高いため、光導波路のクラッドの一
部としても作用させることができる。
【0018】また、このような光導波路のクラッドの凸
形状を、熱あるいはプラズマCVD法または高周波バイ
アススパッタリング法を用いることによって容易に形成
できるようにした。
【0019】以上のような製造方法を採用することによ
り、GeドープのSiO2 ガラスにおいて非常に高い効
率で光学的異方性領域が形成できることがわかった。
【0020】またこのようにして、コアに光学的異方性
領域を形成するために使用した高電圧印加用電極を、そ
のままあるいはその一部を光導波路のコアを伝搬する光
を制御するための駆動用電極として使用した。これは単
に光素子の製作工程を簡略にするだけでなく、最も効率
の良い駆動用電極の配置を実現し、より低い電圧で導波
光の伝搬を制御することができる。
【0021】本発明では、以上のような非線形光学素子
の製作方法を提供すると共に、この製作方法に適した非
線形光学素子の構造も提供するものである。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図を用いて
以下に説明する。
【0023】図1は本発明によるコア−クラッド構造の
光導波路からなる非線形光学素子の製作方法及び構造を
説明するための断面図である。光導波路10は、平板な
石英基板11上にGeドープのSiO2 ガラスからなる
コア12とそれを囲むクラッド13とからなる。製作方
法は以下の通りである。まずGeO2 を含有したSiO
2 をターゲットとした高周波スパッタリング法によって
石英基板11上に5μmの膜厚のコア層を成膜する。そ
の後ホトリソグラフィ法による光導波路10のパターニ
ングとCHF3 ガスを用いた反応性イオンエッチング法
により、コア予定部を除いてコア層をエッチングして断
面を矩形形状に加工する。このときスパッタリングによ
って成膜したコア層だけでなく、石英基板11の部分も
オーバーエッチングする。石英基板11もオーバーエッ
チングするのは、コア12の下部に基板11の一部を残
すことにより、コア12を基板11のオーバーエッチン
グ面より高い位置に形成して、コア12の位置を後述す
る一対の電極14、15の位置に、より近づけるためで
ある。このようにして形成したコア12の上に、プラズ
マCVD法によってSiO2 のクラッド13を堆積させ
る。プラズマCVD法によるクラッド13の形成では、
火炎堆積法と異なりクラッド表面は完全に平坦化されな
い。このためクラッド13の上面の輪郭は基板11上の
凸形に対応して形成され、コア周辺のクラッドの断面形
状は両側の平坦な部分に対して突き出た台形となる。本
実施の形態ではコア12の断面寸法はおよそ5×5μ
m、またコアとクラッドの比屈折率差は0.8%とし
た。
【0024】このようにして形成されたクラッド13の
表面にコア12を挟んで両側に陽及び陰の一対の金属電
極14、15を形成した。この2つの電極14、15は
高電圧直流電源16に接続され、外部電場を光導波路1
0のコア12に対して横方向に印加する。またこれと同
時に、上方からコア12へ紫外光17を照射し、光導波
路10のコア12に光学的異方性領域を誘起した。高電
圧電場印加と同時にコア12に照射される紫外光には、
波長248nm、100〜200mJ、10pps のKrFエ
キシマレーザを用い照射時間は20〜30分間とした。
これ以外にも紫外光として例えばHgランプ光、ArF
エキシマレーザ、Arレーザー及び色素レーザの第二高
調波、あるいはNd3 + :YLFレーザの第四高調波に
よっても同様な非線形光学効果が誘起できる。紫外光1
7はシリンドリカルレンズにより線状に集光されコア1
2の長手方向にわたって照射した。あるいは集光された
紫外光の円形ビームをコア12の長手方向に走査させな
がら照射することにより、特定の長さの光学的異方性領
域をコア12内部に誘起することができる。ポーリング
処理時、すなわち高電圧の印加とそれと同時に行われる
紫外光照射の間(20〜30分間)は、基板全体をおよ
そ300℃に保持することによっても、コアに誘起され
る光学的異方性が増強される傾向が見られ、ポーリング
時の高温保持も有効である。
【0025】また電気双極子の生成過程の効率を高める
ために、高電圧を印加するポーリング工程の前処理とし
て、高温あるいは高圧水素雰囲気中に試料を一定時間保
持する工程、あるいは光導波路10の一部または全部を
酸水素バーナーによって炙る工程を行っても光学的異方
性が増強される効果が見られる。これはOH基の影響あ
るいは特定の酸素欠乏欠陥とH2 分子との反応によって
GeE´センタが生成するという過程が促進するためと
考えられる。
【0026】図1の実施形態では紫外光としてエネルギ
ー密度の高いKrFエキシマレーザを使用した。レーザ
光はコア12に主に照射されるが、電極14、15が光
導波路10に接近しているためその一部は電極部にも照
射され、これによって熱的な損傷を受ける危険性があ
る。これを防止するため本実施形態では電極14、15
の材料としてアルミニウムを採用した。エキシマレーザ
の波長帯での金属の反射率は、例えば金を材料として選
んだ場合では約32.9%であるのに対してアルミニウ
ムは92.4%と非常に高く、金属材料の中ではアルミ
ニウムが最も吸収による熱的損傷が起こりにくい。
【0027】コア12を囲む周辺のクラッド13の断面
形状を台形状にするためには、火炎堆積法により平坦な
クラッド層を形成したのちコアの上部のみをマスクしそ
の他の部分をエッチングすれば同様な形状が得られる。
しかし本発明のようにプラズマCVD法を用いれば、こ
のような複雑な工程を経ることなく、理想的な断面台形
状のクラッド13を形成できる。このような成膜のみに
よってコア周辺のクラッドの断面形状を台形にする形成
方法には、本実施形態で採用したプラズマCVD法以外
に熱CVD法や高周波バイアススパッタリング法を用い
ても可能である。これらの成膜方法は火炎堆積法よりも
平坦化作用は小さく、SiO2 をコア上部に堆積させる
だけで直接図1のような形状のクラッドを形成すること
ができる。
【0028】このように光導波路10のクラッド上部の
位置よりも電極の位置を低くして、電極の位置をコアの
高さに近づけた構造にすることによって、コア12内に
大きな電場強度で直流電場を印加できる。特に基板をオ
ーバーエッチングしてコアの位置をオーバーエッチング
面よりも高くして電極の位置により近づけた本実施形態
ではコア12に電場の強さがおよそ106V/cmまで絶
縁破壊を起こすことなく印加することができた。
【0029】図2の実施の形態は、金属電極の表面に絶
縁膜を被覆しポーリング時の絶縁耐圧をさらに向上させ
たものである。光導波路10の製作方法は、図1の場合
と同様であるが、高電圧直流の電場を印加する電極2
4、25及びこれに挟まれた光導波路20は、少なくと
もその一部が紫外光を透過する絶縁膜28によって被覆
されている。本実施形態では、このような絶縁膜材料と
して酸化珪素、窒化珪素、あるいはパーフルオロアモル
ファスフッ素樹脂材のいずれかを用いた。これらの絶縁
膜28の被覆は酸化珪素、窒化珪素の場合にはスパッタ
リングや電子ビーム蒸着あるいはCVD法によって、ま
たパーフルオロアモルファスフッ素樹脂材の場合はスピ
ンナー塗布によって容易に形成できる。このような絶縁
膜は、それ自体の絶縁破壊電圧が空気よりも大きく、さ
らに特に電極と光導波路境界の不連続部分を埋め込み局
所的な電界集中を抑制するので、安定したより高い絶縁
耐圧でコア22に高圧電場が印加できる。なおこれらの
材料の絶縁破壊電圧は、酸化珪素及び窒化珪素では約2
5〜40kV/mmであり、パーフルオロアモルファスフッ
素樹脂(一例として旭硝子製サイトップ)では110kV
/mmであった。またこれらの絶縁膜はどれも波長200
nmの紫外光領域において透過率90%以上を示し、高エ
ネルギーのエキシマレーザーを照射しても全く損傷を受
けることがなかった。なお図2において、21は石英基
板、23はクラッド、27は紫外光である。
【0030】図1及び図2の電極14、15及び24、
25は、コアに光学的異方性領域を形成するために使用
した高電圧加用の電極であるが、これはそのまま高電圧
直流電源16、26を適当な制御用電源に取り替えれ
ば、より小さな電圧で導波光を高速で制御する駆動用電
極として使用することができる。
【0031】図5は本発明により製作した非線形光学素
子の一例として、電気光学効果を用いたマッハ・ツェン
ダー(Mach−Zehnder)型光変調器を示した
ものである。
【0032】石英基板51上にコア52とクラッド53
が形成されており、さらに伝搬する導波光の入力側と出
力側にそれぞれY分岐54、55が形成されている。導
波光は入力側のY分岐54で2等分され、同じ長さの2
本の導波路アーム56、57を伝搬する。一方の導波路
アーム56の両側にはこれを挟んで2つの駆動用電極5
8、59が形成され、交流電源60と接続されている。
伝搬する導波光は外部印加電圧によって位相変化を受け
る。この導波光を出力側のY分岐55で、もう一方のア
ーム57を通過してきた参照導波光と合波・干渉させる
と、両者の位相差に対応して出力光強度が変化する。こ
こで素子に入射する導波光の偏光は、外部印加電場の向
きと同じになるようにする。なお、位相変化を生じさせ
るための駆動用電極58、59は、この電極で挟まれた
アーム56のコア内に光学的異方性領域を誘起させるポ
ーリング時に使用した高電圧印加用電極をそのまま使用
した。ポーリング時には電極間に高電圧直流電源が接続
され、数百〜数kVの高電圧を印加する。これに対し導
波光の伝搬を制御し変調器として動作させるには、数V
の駆動用交流電源60を接続すれば十分である。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば従
来にない様々な優れた効果が発揮される。すなわち、コ
アに効率よく紫外光を照射しながら、絶縁破壊を起こす
ことなくコアにできるだけ集中して大きな直流電場を印
加することができる。これによりこれまで微弱な非線形
光学効果しか実現されていなかったGeドープのSiO
2 ガラスにおいて、非常に大きな光学的異方性領域を効
率的に誘起できる。
【0034】また、このとき使用した高電圧印加用電極
をそのまま導波光の伝搬を制御する駆動用電極として使
用することができる。これは電極製作の工程上の簡略化
だけでなく、最も効率の良い駆動用電極の配置を実現
し、その結果、より低い電圧で導波光を制御することが
できる。さらに本発明の構造では金属電極による伝搬損
失への影響も小さくできる。
【0035】また本発明の製作方法及び構造を種々の光
回路に適用すれば、電気光学効果や第二高調波発生など
の非線形光学効果を利用した光のスイッチング、変調、
波長変換などの各種機能を石英系の平面光回路内部に集
積できる。その結果、低損失で信頼性が高く小型で駆動
エネルギーの小さい機能性光素子が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態によるコア−クラッド構造の光導波路
からなる非線形光学素子の製作方法及び構造を説明する
ための断面図である。
【図2】他の実施形態によるコア−クラッド構造の光導
波路からなる非線形光学素子の製作方法及び構造を説明
するための断面図である。
【図3】従来例のコア−クラッド構造の光導波路からな
る非線形光学素子の製作方法及び構造を説明するための
断面図である。
【図4】他の従来例のコア−クラッド構造の光導波路か
らなる非線形光学素子の製作方法及び構造を説明するた
めの断面図である。
【図5】実施形態による非線形光学素子の構成に基づく
マッハ・ツェンダー(Mach−Zehnder)型光
変調器の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 光導波路 11、21 石英基板 12、22 コア 13、23 クラッド 14、24 陽極電極 15、25 陰極電極 16、26 直流高電圧電源 20 光導波路 28 絶縁膜

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】平板基板上にコア層を形成し、コア予定部
    を除いてコア層をエッチングして断面略矩形のコアを形
    成し、コアを含む基板上に上面の輪郭を基板上の凸形に
    対応させて形成するとともに、その凸形の突き出た部分
    でコアを囲むクラッドを形成し、クラッドの突き出た部
    分の両側の平坦な部分に上記コアを挟む一対の電極を形
    成し、一対の電極に高電圧直流の電場を印加してコアに
    光学的異方性領域を誘起させる非線形光学素子の製作方
    法。
  2. 【請求項2】請求項1の非線形光学素子の製作方法にお
    いて、上記クラッドを、熱あるいはプラズマCVD法ま
    たは高周波バイアススパッタリング法によって上記基板
    の凸形に対応させて形成したことを特徴とする非線形光
    学素子の製作方法。
  3. 【請求項3】請求項1または2の非線形光学素子の製作
    方法において、上記一対の電極を形成した後で、一対の
    電極に高電圧直流の電場を印加する前に、上記一対の電
    極及びこれに挟まれたクラッドの突き出た部分の少なく
    とも一部を紫外光を透過する絶縁膜によって被覆したこ
    とを特徴とする非線形光学素子の製作方法。
  4. 【請求項4】請求項3の非線形光学素子の製作方法にお
    いて、紫外光を透過する絶縁膜に、酸化珪素、窒化珪
    素、あるいはパーフルオロアモルファスフッ素樹脂のい
    ずれかを用いたことを特徴とする非線形光学素子の製作
    方法。
  5. 【請求項5】請求項1〜4の非線形光学素子の製作方法
    において、上記一対の電極に高電圧直流の電場を印加す
    るとき、同時に上部方向からコアに紫外光を照射してコ
    アに光学的異方性領域を誘起させる非線形光学素子の製
    作方法。
  6. 【請求項6】請求項1〜5の非線形光学素子製作方法に
    おいて、上記コア予定部を除いてコア層をエッチングす
    る際、基板までオーバーエッチングしてコアの下部に基
    板の一部を残すことにより、コアを基板のオーバーエッ
    チング面より高い位置に形成するようにした非線形光学
    素子の製作方法。
  7. 【請求項7】請求項1ないし6の非線形光学素子の製作
    方法によって作製された非線形光学素子において、コア
    に光学的異方性領域を誘起するための高電圧印加用の一
    対の電極を使用した後、そのままあるいはその一部をコ
    アを伝搬する導波光を制御するための駆動用電極として
    利用したことを特徴とする非線形光学素子。
  8. 【請求項8】請求項3ないし7の非線形光学素子の製作
    方法によって作製された非線形光学素子において、紫外
    光を透過する絶縁膜を上記クラッドの一部として作用さ
    せたことを特徴とする非線形光学素子。
  9. 【請求項9】平板基板上に形成された屈折率の高いコア
    と、これを囲む屈折率の低いクラッドとからなる光導波
    路に、高電圧直流の電場を印加することによって光学的
    異方性領域を誘起する非線形光学素子において、 高電圧直流の電場をコアに横方向に印加するための高電
    圧印加用の一対の電極を光導波路を挟んで両側に形成
    し、かつ該光導波路のクラッド上部の位置よりも電極の
    位置を低くして、電極の位置をコアの高さに近づけたこ
    とを特徴とする非線形光学素子。
  10. 【請求項10】請求項7〜9のいずれかの非線形光学素
    子において、上記コアはGeをドープしたSiO2 を主
    成分とすることを特徴とする非線形光学素子。
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