JP3695054B2 - 非線形光学素子の製作方法及び非線形光学素子 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、通信、計測、情報処理の分野に適した高機能で信頼性の高いSiO2 −GeO2 ガラスを用いた光学素子、特に電気光学効果や第二高調波発生などの非線形特性を具備した非線形光学素子の製作方法及び非線形光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光を使った通信システムの普及に伴い、より低損失で高機能、しかも信頼性の高い光素子の開発が求められている。特に石英系材料を用いた導波路型の光素子は、その低損失性に加え複雑な回路を平面基板上に一括して形成出来る可能性があることから最も注目を集めている。
【0003】
石英系の平面導波路型光素子は様々な製作方法が適用されているが、一般に石英基板やあるいはバッファ層(下部クラッド層)と呼ばれるSiO2 層を有したSi基板を使用する。製作方法の一例を以下に説明する。まずこれらの基板上に電子ビーム蒸着法やスパッタリング法によって厚さ数μmのコア層を形成する。コア層は相対的に屈折率を高めるためにSiO2 にGeなどのドーパントを添加している。次に、ホトリソグラフィ法を用いて各種光回路のパターニングを行なった後、反応性イオンエッチング法を用いて3次元のコア形状に加工する。このようにして形成したコアを含めた基板の上部に火炎堆積法を用いて上部クラッド層を形成する。火炎堆積法は酸水素バーナーを用いた火炎加水分解反応によって上部クラッド層を形成する。火炎堆積法は酸水素バーナーを用いた火炎加水分解反応によって、P(リン)やB(ホウ素)を添加したSiO2 ガラスの微粒子を基板上に堆積させ、高温熱処理することによって透明ガラス化する形成法である。Pの添加はSiO2 よりも屈折率を上げ、Bの添加はSiO2 よりも屈折率を下げる。この結果、火炎堆積法によって形成した上部クラッドはSiO2 とほぼ同じ屈折率を有している。このようにしてコアは埋め込まれ、3次元の光導波路が形成される。火炎堆積法は、ガラス微粒子の堆積とそれを溶融焼結するためにクラッド表面が平坦化されるという特徴をもつ。
【0004】
ところで一般にシリカガラスのような無機ガラスは光学的に等方性物質であり、その反転対称性のために本来電気光学効果や第二高調波の発生などの非線形光学特性を持たないと考えられてきた。しかし最近このような光学的等方体であるガラス材料でも、高電圧の直流電場によるポーリング処理を行うことによって二次の光非線形性が誘起することが明らかになった。
【0005】
このように光学的等方性であるガラス材料に異方的特徴を組み込むという新しい試みは、ますます学問的及び実用的な興味を集めるようになった。特にSiO2 を主成分とするシリカガラスは、低損失、信頼性の点で現在のオプトエレクトロニクスの中枢部を担う材料であり、既に光ファイバ化や平面光導波路化の製造技術も確立している。またシリカガラスは特にバンドギャップが広く通信分野以外でも紫外及び遠紫外領域でのデバイスとして将来的に大変期待できる材料と思われる。
【0006】
ポーリング処理によって生ずる非線形光学効果の要因は、ガラスの構造、組成、ポーリング条件などによって幾つか存在するものと思われる。これらのうち特にGeドープのSiO2 ガラスにおける非線形光学効果は、SiO2 −GeO2 ガラス中の酸素欠乏欠陥が関わっているものと考えられる。この酸素欠乏欠陥はエキシマレーザなどの紫外光照射によってGeE´センタと呼ばれる常磁性中心とそれと同時に電気双極子を生成する。この現象を利用し、紫外光照射と同時にポーリング処理を行えば、大きな非線形光学効果を誘起できることがわかった。
【0007】
図3は、これまでに検討されている石英系光導波路のコアに光学的異方性領域を誘起するためのポーリング方法の一例を示したものである。石英基板31を用いてコア32とさらにその上のクラッド33によって光導波路が構成されている。この光導波路の上部表面に陽極となる金属電極34を、また基板裏面に陰極となる金属電極35を形成し、厚さ方向(図では上下方向)に高電圧直流電源36を用いて電場を印加してポーリング処理を行なったものである。あるいは図3のような石英基板ではなく、バッファ層としてSiO2 膜を表面に形成した低抵抗Si基板を使用し、Si基板そのものを陰極電極とする構造も提案されている。
【0008】
また図4は、石英基板41を用いて形成した光導波路において、火炎堆積法によって形成された平坦な上部クラッド43の表面に、光導波路を挟んで両側に陽及び陰の一対の金属電極44、45を形成し、横方向に高電圧直流電場を印加してポーリング処理を行なったものである。なお図4において、42はコア、46は高電圧直流電源、47は紫外光である。
【0009】
このようにこれまで様々な構造のポーリング方法が提案、試作検討されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ガラス導波路、特に石英系の光導波路に非線形光学効果を誘起できれば、機能性光素子として幅広い応用が期待できる。しかしながら、光変調器や光スイッチ、あるいは波長変換素子など実用的な光素子を実現するためには、これまで報告されているガラス材料における非線形光学効果はまだまだ微弱である。現状のレベルでは、例えば電気光学効果を利用して光スイッチング機能を動作させるためには、素子長が数十cmも必要だったり、あるいは導波光を制御する駆動外部電圧が数百V以上も必要だったり現実的とは言えない。少なくとも既に非線形光学素子として実用化されているLiNbO3 のような強誘電体材料に匹敵する非線形光学効果の実現と最適な素子構造の開発が望まれる。
【0011】
図3の従来例では、比較的電極の形成方法が容易で電極間に絶縁破壊を起こすことなく高電圧が印加できる。しかし表面の陽極電極34によって光導波路上部が覆われるため、これに邪魔され高電圧印加と同時に上部方向からコア32に紫外光照射を行うことができない。GeドープSiO2 ガラスはポーリングと同時に紫外光照射することにより、コア32の光学的異方性領域の誘起に重要な効果をもたらすので、これが有効に作用しなければ大きな非線形光学効果は期待できない。側面方向から紫外光を照射することも考えられるが、素子の端とコア32との距離が離れていると、側面からの照射では紫外光がコア32に達するまでにビームが拡がってしまったり、減衰したりして高い光エネルギー密度で照射できない。また、図3のような構造では、非線形光学効果の誘起効率の問題だけでなく、裏面の陰極35の面積が大きいため、この電極をそのまま導波光の伝搬制御を行う駆動電極として使用すると導波光の制御速度に無視できない制限を与える。
【0012】
ポーリングに際しては、コア32にできるだけ集中して大きな電場で印加することが重要である。図3の石英基板を用いた構造では、上部陽極側電極34と下部陰極側電極35との間隔は大きい。そのためコア内に大きな電場の強さで印加するためには、非常に高圧な電源を使用しなければならない。これに対し基板にバッファ層としてSiO2 膜を表面に形成した低抵抗Si基板を使用し、Si基板そのものを陰極電極とする構造であれば、両者の電極間隔は接近し、より低い電圧の電源でもコア32に大きな電場の強さを実現することができる。しかし前記した紫外光照射の問題や導波光制御速度の問題はいずれにせよ解決できない。また一般にコア32を伝搬する導波光は、その電界の偏波方向がポーリング時の高電圧電場の向きと一致したとき、より大きな非線形光学効果が得られる。このため図3において導波光の電界が金属電極面に対して垂直成分を持つ偏波(TM波)で導波光を入射する必要がある。一般にTM波は金属面に対して平行成分しか持たない偏波(TE波)よりも金属による損失の影響を受けやすい。そのためポーリング時に使用した高電圧印加用の金属電極を、そのまま光導波路を伝搬する導波光を制御するための駆動電極として利用したとき、あまりクラッド層の厚さを薄くして電極をコアに接近させると金属電極による導波光の伝搬損失が無視できなくなる。
【0013】
金属電極による伝搬光の伝搬損失の問題を考えなければ、一般に電極はコアにできるだけ接近させ、電極間隔の距離もできるだけ小さくなるようにした方が、コアに有効に大きな電場が印加できる。またこのような電極の配置は、ポーリング用の高電圧印加陽電極としてだけでなく、コア中の導波光の伝搬制御を行う駆動用電極として使用するときもより低い電圧で駆動するので有利である。
【0014】
図4の従来例では、上部クラッド43の表面に光導波路を挟んで両側に陽及び陰の一対のポーリング用金属電極44、45を形成しているため、この二つの電極の間隙を通して上部方向から垂直にコア42に効率的にエキシマレーザなどの紫外光47を照射することができる。また、電極44、45とコア42との距離が比較的小さく、電極間に印加された電場は効率良くコア42に印加すると期待される。ところが実際に高電圧の直流電場を印加すると、表面付近において絶縁破壊が発生し高い電圧で印加できない。これは空気の絶縁破壊電場が高々3kV/mm程度で、電極間に介在する空気の絶縁破壊が起こるためである。あるいは基板表面に汚れなどが存在するとさらに低い電圧で絶縁破壊が発生してしまう。このような状態では、コア42に集中して大きな電場を印加することができず、結果として光学的異方性領域を効率的に誘起することができない。
【0015】
【課題を解決しようとする手段】
このような技術課題を克服するために、本発明は主に次の二つの観点から考案された。すなわちポーリングと同時に効率的にコアに紫外光を照射すること、及びポーリング時の絶縁破壊を防止しコアにできるだけ集中して大きな直流電場を印加することである。
【0016】
これらの要求を実現するため本発明では、GeドープのSiO2 ガラスからなるコアに、ポーリングによって光学的異方性領域を誘起する製作方法において、高電圧直流の電場を印加するための陽及び陰の一対の電極を光導波路を挟んで両側に形成し、かつ光導波路のクラッド上部の位置よりも電極の位置を低くして、電極の位置をコアの高さに近づけ、これによりコアに横方向の高圧直流電場を印加するようにした。このような構造にすることにより空気の絶縁破壊を回避し、コアに大きな電場強度で直流電場が印加できる。また金属電極の膜厚は高々1μm程度であり、金属電極による導波光の伝送損失への影響も無視しうる。
【0017】
またさらに電極及び光導波路の汚れや不完全形状などによる電界集中に起因する絶縁破壊電圧の低下を抑制するために、コアに高電圧直流の電場を印加する電極及びこれに挟まれた光導波路上に、電極及び光導波路の少なくとも一部が紫外光を透過する絶縁膜によって被覆した。このような絶縁膜の材料として酸化珪素、窒化珪素、あるいはパーフルオロアモルファスフッ素樹脂のいずれかを用いた。これらの材料は、絶縁破壊電圧が高く同時にエキシマレーザなどの紫外光に対しても高い透過性を有する。この絶縁膜は光導波路の伝搬する光に対しても透明性が高いため、光導波路のクラッドの一部としても作用させることができる。
【0018】
また、このような光導波路のクラッドの凸形状を、熱あるいはプラズマCVD法または高周波バイアススパッタリング法を用いることによって容易に形成できるようにした。
【0019】
以上のような製造方法を採用することにより、GeドープのSiO2 ガラスにおいて非常に高い効率で光学的異方性領域が形成できることがわかった。
【0020】
またこのようにして、コアに光学的異方性領域を形成するために使用した高電圧印加用電極を、そのままあるいはその一部を光導波路のコアを伝搬する光を制御するための駆動用電極として使用した。これは単に光素子の製作工程を簡略にするだけでなく、最も効率の良い駆動用電極の配置を実現し、より低い電圧で導波光の伝搬を制御することができる。
【0021】
本発明では、以上のような非線形光学素子の製作方法を提供すると共に、この製作方法に適した非線形光学素子の構造も提供するものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図を用いて以下に説明する。
【0023】
図1は本発明によるコア−クラッド構造の光導波路からなる非線形光学素子の製作方法及び構造を説明するための断面図である。光導波路10は、平板な石英基板11上にGeドープのSiO2 ガラスからなるコア12とそれを囲むクラッド13とからなる。製作方法は以下の通りである。まずGeO2 を含有したSiO2 をターゲットとした高周波スパッタリング法によって石英基板11上に5μmの膜厚のコア層を成膜する。その後ホトリソグラフィ法による光導波路10のパターニングとCHF3 ガスを用いた反応性イオンエッチング法により、コア予定部を除いてコア層をエッチングして断面を矩形形状に加工する。このときスパッタリングによって成膜したコア層だけでなく、石英基板11の部分もオーバーエッチングする。石英基板11もオーバーエッチングするのは、コア12の下部に基板11の一部を残すことにより、コア12を基板11のオーバーエッチング面より高い位置に形成して、コア12の位置を後述する一対の電極14、15の位置に、より近づけるためである。このようにして形成したコア12の上に、プラズマCVD法によってSiO2 のクラッド13を堆積させる。プラズマCVD法によるクラッド13の形成では、火炎堆積法と異なりクラッド表面は完全に平坦化されない。このためクラッド13の上面の輪郭は基板11上の凸形に対応して形成され、コア周辺のクラッドの断面形状は両側の平坦な部分に対して突き出た台形となる。本実施の形態ではコア12の断面寸法はおよそ5×5μm、またコアとクラッドの比屈折率差は0.8%とした。
【0024】
このようにして形成されたクラッド13の表面にコア12を挟んで両側に陽及び陰の一対の金属電極14、15を形成した。この2つの電極14、15は高電圧直流電源16に接続され、外部電場を光導波路10のコア12に対して横方向に印加する。またこれと同時に、上方からコア12へ紫外光17を照射し、光導波路10のコア12に光学的異方性領域を誘起した。高電圧電場印加と同時にコア12に照射される紫外光には、波長248nm、100〜200mJ、10pps のKrFエキシマレーザを用い照射時間は20〜30分間とした。これ以外にも紫外光として例えばHgランプ光、ArFエキシマレーザ、Arレーザー及び色素レーザの第二高調波、あるいはNd3 + :YLFレーザの第四高調波によっても同様な非線形光学効果が誘起できる。紫外光17はシリンドリカルレンズにより線状に集光されコア12の長手方向にわたって照射した。あるいは集光された紫外光の円形ビームをコア12の長手方向に走査させながら照射することにより、特定の長さの光学的異方性領域をコア12内部に誘起することができる。ポーリング処理時、すなわち高電圧の印加とそれと同時に行われる紫外光照射の間(20〜30分間)は、基板全体をおよそ300℃に保持することによっても、コアに誘起される光学的異方性が増強される傾向が見られ、ポーリング時の高温保持も有効である。
【0025】
また電気双極子の生成過程の効率を高めるために、高電圧を印加するポーリング工程の前処理として、高温あるいは高圧水素雰囲気中に試料を一定時間保持する工程、あるいは光導波路10の一部または全部を酸水素バーナーによって炙る工程を行っても光学的異方性が増強される効果が見られる。これはOH基の影響あるいは特定の酸素欠乏欠陥とH2 分子との反応によってGeE´センタが生成するという過程が促進するためと考えられる。
【0026】
図1の実施形態では紫外光としてエネルギー密度の高いKrFエキシマレーザを使用した。レーザ光はコア12に主に照射されるが、電極14、15が光導波路10に接近しているためその一部は電極部にも照射され、これによって熱的な損傷を受ける危険性がある。これを防止するため本実施形態では電極14、15の材料としてアルミニウムを採用した。エキシマレーザの波長帯での金属の反射率は、例えば金を材料として選んだ場合では約32.9%であるのに対してアルミニウムは92.4%と非常に高く、金属材料の中ではアルミニウムが最も吸収による熱的損傷が起こりにくい。
【0027】
コア12を囲む周辺のクラッド13の断面形状を台形状にするためには、火炎堆積法により平坦なクラッド層を形成したのちコアの上部のみをマスクしその他の部分をエッチングすれば同様な形状が得られる。しかし本発明のようにプラズマCVD法を用いれば、このような複雑な工程を経ることなく、理想的な断面台形状のクラッド13を形成できる。このような成膜のみによってコア周辺のクラッドの断面形状を台形にする形成方法には、本実施形態で採用したプラズマCVD法以外に熱CVD法や高周波バイアススパッタリング法を用いても可能である。これらの成膜方法は火炎堆積法よりも平坦化作用は小さく、SiO2 をコア上部に堆積させるだけで直接図1のような形状のクラッドを形成することができる。
【0028】
このように光導波路10のクラッド上部の位置よりも電極の位置を低くして、電極の位置をコアの高さに近づけた構造にすることによって、コア12内に大きな電場強度で直流電場を印加できる。特に基板をオーバーエッチングしてコアの位置をオーバーエッチング面よりも高くして電極の位置により近づけた本実施形態ではコア12に電場の強さがおよそ106V/cmまで絶縁破壊を起こすことなく印加することができた。
【0029】
図2の実施の形態は、金属電極の表面に絶縁膜を被覆しポーリング時の絶縁耐圧をさらに向上させたものである。光導波路10の製作方法は、図1の場合と同様であるが、高電圧直流の電場を印加する電極24、25及びこれに挟まれた光導波路20は、少なくともその一部が紫外光を透過する絶縁膜28によって被覆されている。本実施形態では、このような絶縁膜材料として酸化珪素、窒化珪素、あるいはパーフルオロアモルファスフッ素樹脂材のいずれかを用いた。これらの絶縁膜28の被覆は酸化珪素、窒化珪素の場合にはスパッタリングや電子ビーム蒸着あるいはCVD法によって、またパーフルオロアモルファスフッ素樹脂材の場合はスピンナー塗布によって容易に形成できる。このような絶縁膜は、それ自体の絶縁破壊電圧が空気よりも大きく、さらに特に電極と光導波路境界の不連続部分を埋め込み局所的な電界集中を抑制するので、安定したより高い絶縁耐圧でコア22に高圧電場が印加できる。なおこれらの材料の絶縁破壊電圧は、酸化珪素及び窒化珪素では約25〜40kV/mmであり、パーフルオロアモルファスフッ素樹脂(一例として旭硝子製サイトップ)では110kV/mmであった。またこれらの絶縁膜はどれも波長200nmの紫外光領域において透過率90%以上を示し、高エネルギーのエキシマレーザーを照射しても全く損傷を受けることがなかった。なお図2において、21は石英基板、23はクラッド、27は紫外光である。
【0030】
図1及び図2の電極14、15及び24、25は、コアに光学的異方性領域を形成するために使用した高電圧加用の電極であるが、これはそのまま高電圧直流電源16、26を適当な制御用電源に取り替えれば、より小さな電圧で導波光を高速で制御する駆動用電極として使用することができる。
【0031】
図5は本発明により製作した非線形光学素子の一例として、電気光学効果を用いたマッハ・ツェンダー(Mach−Zehnder)型光変調器を示したものである。
【0032】
石英基板51上にコア52とクラッド53が形成されており、さらに伝搬する導波光の入力側と出力側にそれぞれY分岐54、55が形成されている。導波光は入力側のY分岐54で2等分され、同じ長さの2本の導波路アーム56、57を伝搬する。一方の導波路アーム56の両側にはこれを挟んで2つの駆動用電極58、59が形成され、交流電源60と接続されている。伝搬する導波光は外部印加電圧によって位相変化を受ける。この導波光を出力側のY分岐55で、もう一方のアーム57を通過してきた参照導波光と合波・干渉させると、両者の位相差に対応して出力光強度が変化する。ここで素子に入射する導波光の偏光は、外部印加電場の向きと同じになるようにする。なお、位相変化を生じさせるための駆動用電極58、59は、この電極で挟まれたアーム56のコア内に光学的異方性領域を誘起させるポーリング時に使用した高電圧印加用電極をそのまま使用した。ポーリング時には電極間に高電圧直流電源が接続され、数百〜数kVの高電圧を印加する。これに対し導波光の伝搬を制御し変調器として動作させるには、数Vの駆動用交流電源60を接続すれば十分である。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば従来にない様々な優れた効果が発揮される。すなわち、コアに効率よく紫外光を照射しながら、絶縁破壊を起こすことなくコアにできるだけ集中して大きな直流電場を印加することができる。これによりこれまで微弱な非線形光学効果しか実現されていなかったGeドープのSiO2 ガラスにおいて、非常に大きな光学的異方性領域を効率的に誘起できる。
【0034】
また、このとき使用した高電圧印加用電極をそのまま導波光の伝搬を制御する駆動用電極として使用することができる。これは電極製作の工程上の簡略化だけでなく、最も効率の良い駆動用電極の配置を実現し、その結果、より低い電圧で導波光を制御することができる。さらに本発明の構造では金属電極による伝搬損失への影響も小さくできる。
【0035】
また本発明の製作方法及び構造を種々の光回路に適用すれば、電気光学効果や第二高調波発生などの非線形光学効果を利用した光のスイッチング、変調、波長変換などの各種機能を石英系の平面光回路内部に集積できる。その結果、低損失で信頼性が高く小型で駆動エネルギーの小さい機能性光素子が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態によるコア−クラッド構造の光導波路からなる非線形光学素子の製作方法及び構造を説明するための断面図である。
【図2】他の実施形態によるコア−クラッド構造の光導波路からなる非線形光学素子の製作方法及び構造を説明するための断面図である。
【図3】従来例のコア−クラッド構造の光導波路からなる非線形光学素子の製作方法及び構造を説明するための断面図である。
【図4】他の従来例のコア−クラッド構造の光導波路からなる非線形光学素子の製作方法及び構造を説明するための断面図である。
【図5】実施形態による非線形光学素子の構成に基づくマッハ・ツェンダー(Mach−Zehnder)型光変調器の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 光導波路
11、21 石英基板
12、22 コア
13、23 クラッド
14、24 陽極電極
15、25 陰極電極
16、26 直流高電圧電源
20 光導波路
28 絶縁膜
Claims (8)
- 平板基板上にコア層を形成し、コア予定部を除いてコア層をエッチングする際、基板までオーバーエッチングしてコアの下部に基板の一部を残すことにより、断面略矩形のコアを基板のオーバーエッチング面より高い位置に形成し、コアを含む基板上に上面の輪郭を基板上の凸形に対応させて形成するとともに、その凸形の突き出た部分でコアを囲むクラッドを形成し、クラッドの突き出た部分の両側の平坦な部分に上記コアを挟む一対の電極をコア上部のクラッドよりも低くコアの高さに近い位置に形成し、一対の電極に高電圧直流の電場を印加してコアに光学的異方性領域を誘起させる非線形光学素子の製作方法。
- 請求項1の非線形光学素子の製作方法において、上記クラッドを、熱あるいはプラズマCVD法または高周波バイアススパッタリング法によって上記基板の凸形に対応させて形成したことを特徴とする非線形光学素子の製作方法。
- 請求項1または2の非線形光学素子の製作方法において、上記一対の電極を形成した後で、一対の電極に高電圧直流の電場を印加する前に、上記一対の電極及びこれに挟まれたクラッドの突き出た部分の少なくとも一部を紫外光を透過する絶縁膜によって被覆したことを特徴とする非線形光学素子の製作方法。
- 請求項3の非線形光学素子の製作方法において、紫外光を透過する絶縁膜に、酸化珪素、窒化珪素、あるいはパーフルオロアモルファスフッ素樹脂のいずれかを用いたことを特徴とする非線形光学素子の製作方法。
- 請求項1〜4の非線形光学素子の製作方法において、上記一対の電極に高電圧直流の電場を印加するとき、同時に上部方向からコアに紫外光を照射してコアに光学的異方性領域を誘起させる非線形光学素子の製作方法。
- 上記コアはGeをドープしたSiO 2 を主成分とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非線形光学素子の製造方法。
- 請求項1ないし6の非線形光学素子の製作方法によって作製された非線形光学素子において、コアに光学的異方性領域を誘起するための高電圧印加用の一対の電極を使用した後、そのままあるいはその一部をコアを伝搬する導波光を制御するための駆動用電極として利用したことを特徴とする非線形光学素子。
- 請求項3ないし7の非線形光学素子の製作方法によって作製された非線形光学素子において、紫外光を透過する絶縁膜を上記クラッドの一部として作用させたことを特徴とする非線形光学素子。
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