JPH10273748A - 方向性凝固用高耐食高耐酸化Ni基超合金及び高耐食高耐酸化方向性凝固鋳物 - Google Patents

方向性凝固用高耐食高耐酸化Ni基超合金及び高耐食高耐酸化方向性凝固鋳物

Info

Publication number
JPH10273748A
JPH10273748A JP7955997A JP7955997A JPH10273748A JP H10273748 A JPH10273748 A JP H10273748A JP 7955997 A JP7955997 A JP 7955997A JP 7955997 A JP7955997 A JP 7955997A JP H10273748 A JPH10273748 A JP H10273748A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resistant
less
oxidation
directional solidification
corrosion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP7955997A
Other languages
English (en)
Inventor
Kagehiko Kageyama
景弘 影山
Takehiro Oono
丈博 大野
Hideki Tamaoki
英樹 玉置
Akira Yoshinari
明 吉成
Noriyuki Watabe
典行 渡部
Akira Okayama
昭 岡山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Ltd
Proterial Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
Hitachi Metals Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Ltd, Hitachi Metals Ltd filed Critical Hitachi Ltd
Priority to JP7955997A priority Critical patent/JPH10273748A/ja
Publication of JPH10273748A publication Critical patent/JPH10273748A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Turbine Rotor Nozzle Sealing (AREA)
  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】特にS(硫黄)等の不純物を比較的多く含む燃
料中で使用され、かつ高温耐酸化性も同時に要求される
高温部品に適した耐食性及び耐酸化性の両方に優れたN
i基超合金を提供する。 【解決手段】重量%で、Cr:12.1〜16.5%,A
l:3.7〜5.5%,Nb:1.1〜5.0%,Ta:
4.1〜9.5%,Co:10.0%以下,W:5.0%
以下,Mo:2.0% 以下及びTiを実質的に含まず残
部がNiと不可避不純物からなることを特徴とする方向
性凝固用高耐食高耐酸化Ni基超合金。本発明は、硫黄
等の不純物を比較的多く含む燃料中で使用され、かつ高
温耐酸化性も同時に要求される高温部品に適した耐食性
及び耐酸化性の両方に優れ、ガスタービンの動翼,静翼
等の高温部材に適用され、発電効率及び信頼性が一層向
上される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガスタービン等の
高温機器の動翼,静翼等の高温部品に用いられる新規な
Ni基超合金に関し、特にS(硫黄)等の不純物を比較
的多く含む燃料中で使用され、かつ高温耐酸化性も同時
に要求される高温部品に適した耐食性及び耐酸化性の両
方に優れたNi基超合金に関する。
【0002】
【従来の技術】ガスタービンの燃焼ガス温度は、熱効率
の向上を目的に年々上昇する傾向にあり、ガスタービン
の各高温部材には従来より高温強度の優れた材料が必要
とされている。そのため、ガスタービンの高温部材中で
最も苛酷な環境に曝される動翼用の材料は、Ni基超合
金の普通鋳造材から柱状晶材へと変遷し、さらに航空機
用エンジンのガスタービンでは、より高温強度の優れた
単結晶材が実用化されている。ここで、柱状晶材及び単
結晶材は方向性凝固材の一種であり、どちらも一方向凝
固法と呼ばれる方法で鋳造される。柱状晶材では、米国
特許第3,260,505号公報等に示される方法で結晶粒を一
方向に細長く成長させ、主応力の作用方向に垂直な粒界
を極力少なくすることで高温強度の向上が可能となる。
また、単結晶材では、米国特許第3,494,709 号公報等に
示される方法により鋳物全体を一つの結晶とすることで
実質的に粒界をなくし、より一層の高温強度の向上が可
能となる。
【0003】前述のとおり、高温強度が最も優先される
航空機エンジン用のガスタービンでは、最も高温強度に
優れた単結晶材が実用化されている。一方、多様な燃料
が使われることで、S等の腐食性の高い元素を含む環境
で使用されることの多い発電用のガスタービンでは、高
温強度よりも耐食性を優先させたCr量の高い特開昭51
−34819 号公報に示される合金等からなる柱状晶材が使
用されている。
【0004】発電用のガスタービンにおいても燃焼ガス
温度の上昇に伴って、より高温強度の優れた単結晶材の
実用化が望まれている。しかし、航空機用と比べて大型
となる発電用ガスタービンの単結晶の製造が難しいこ
と、及び高温の発電用ガスタービンに要求される特性に
適した単結晶用の合金が存在しないことで、未だ発電用
ガスタービンでは単結晶材の本格的な実用化には至って
いない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の課題のうち、大
型単結晶の製造に関する課題は特開平4−124237 号公報
及び特開平7−145703 号公報等に示される技術により改
善が図られている。
【0006】単結晶用の合金については、発電用のガス
タービン用に耐食性を考慮してCr量を増やした特開昭
58−120758号公報,特開平2−247347 号公報,特開平4
−56741 号公報,特開平4−333540号公報及び特開平8−
41567 号公報等に示される合金が開発されている。しか
し、従来の使用温度(金属表面温度900℃以下)では
これらの合金で問題はなかったが、燃焼ガス温度の上昇
に伴って高温耐食性(硫酸化物が溶融塩として堆積して
起こる腐食)に加えて高温耐酸化性(酸素による酸化に
より生じる減肉等)が要求されるようになってくると、
これらの合金は必ずしも満足な耐酸化特性を示さないこ
とが明らかになってきた。また、高温強度の面でもさら
なる向上が望まれている。
【0007】一方、航空機用エンジンでの使用を目的に
開発された合金としては、特開昭60−211031号公報,特
開昭61−284545号公報及び特開平5−59474号公報等に示
される合金があるが、これらは高温強度,高温耐酸化性
の面では優れた特性を示すものの、何れの合金もCrの
添加量が少ないため高温耐食性が充分ではない。
【0008】
【課題を解決するための手段】現在、発電用ガスタービ
ンで用いられている合金及び上述の発電用ガスタービン
での使用を目的に開発された単結晶用合金は、析出強化
相であるγ′相を固溶強化するために多量のTiを含ん
でいる。これは、γ′相は基本的にはNI3Al の形からな
る金属間化合物であるが、Alの一部をTiで置換する
ことでより一層高温強度を向上させることが可能となる
ためである。さらに、Tiは高温腐食環境下で合金中に
侵入してくるSと硫化物を生成することでSを捕獲し、
高温腐食の進行を抑制する効果がある。しかし、燃焼ガ
ス温度の上昇に伴って高温耐食性に加えて高温耐酸化性
も必要な環境になってくると、Tiは高温耐酸化性に最
も効果のあるAl23皮膜の連続的な生成を妨害し、耐
酸化性を著しく低下させることが明らかになった。そこ
で、本発明の合金ではTiを実質的に無添加とすること
で、耐酸化性を向上させるとを可能とした。
【0009】しかし、単にTiを減らしただけでは高温
強度が低下してしまうので、Tiと同様にγ′相の固溶
強化に有効なNb,Taの効果について検討した。その
結果、耐食性に対する効果はTi>Nb>Taの順であ
るが、高温強度に対する効果はTi<Nb<Taの順で
あることが明らかになった。そこで、本発明合金では、
Cr量を12.1〜16.5%と航空機エンジン用の単結
晶合金より高めとすることで耐食性は十分であることか
ら、その分Tiを無添加とし、耐酸化性及び高温強度を
重視して、従来合金で用いられてきたTiに代わってN
b及びTaを添加することとした。しかし、Nb及びT
aを無制限に添加すると、合金の相安定性を確保するた
めにAlを減らさなくてはならなくなり、結果として、
析出強化相であるγ′相の安定性及び耐酸化性が低下す
る。従って、Nb,Ta及びAlの添加量は、重量比
で、(2×Nb+Ta)/(6.7×Al+2×Nb+
Ta)が0.15から0.45の範囲になるようにするこ
とが好ましい。また、さらに好適にはこの比率を0.2
〜0.3の範囲とすることが好ましい。ここで、この比
率が0.15 を下回ると言うことは、γ′相中のAlに
対するNb及びTaの割合が低くなり、γ′相の固溶強
化が充分でなくなり合金の高温強度が十分でなくなるこ
とを意味する。反対に、この比率が0.45 を超える
と、γ′相中のAlに対するNb及びTaの割合が過多
となり、γ′相の安定性が低下すると共に、高温(特に
金属表面温度が1000℃以上となる温度)での耐酸化
性に有効なAl23皮膜の連続的な生成が不可能となり
耐酸化性が著しく低下する。さらに、上記の関係を満た
すための必要条件として、高温強度確保に有効なγ′相
の析出量を確保し、かつAl23皮膜の連続的な生成を
可能とするためには、Alの添加量を最低でも3.7%
以上とする必要があり、γ′相の充分な固溶強化量を確
保し、かつ過剰な共晶γ′相の晶出を抑えるためには、
Alの添加量を5.5%以下とする必要がある。また、
同時に、上記の関係を満たすための必要条件として、
γ′相の固溶強化及び耐食性の面でNbを最低でも1.
1% 及びγ′相の固溶強化の面でTaを4.1% 以上
添加する必要がある。しかし、耐食性よりも高温強度を
重視する場合は、それぞれの最低量をNbは0.6%、
Taは5.1%とすることが望ましい。前述の通り、
γ′相中のNb及びTaの割合が過多になるとγ′相の
安定性が低下し、かつ耐酸化性に有効なAl23皮膜の
連続的な生成を阻害する。従って、Nb及びTaの添加
量は、各々、5.0%及び9.5%以下とする必要があ
る。しかし、耐食性よりも高温強度を重視する場合は、
Nbは4.5%以下、Taは10.5%以下とすることが
望ましい。なお、上記の比率を計算する際の各元素の係
数は、重量%を原子%に換算するための係数である。
【0010】以上のとおり、本発明の特徴は、耐食性を
重視したCrを12.1〜16.5%と比較的多く含む合
金系において、耐食性と同時に耐酸化性も両立させ、か
つ充分な高温強度を得るために、従来の高Cr合金で用
いられてきたTiを無添加とし、さらに最適なNbとT
aの添加量を見いだしたことにある。特に、Crは1
2.5〜15.0%が好ましい。
【0011】上記の発明の特徴を具体化する組成とし
て、重量%で、Cr:12.1〜16.5%,Al:3.7〜
5.5%,Nb:1.1〜5.0%,Ta:4.1〜9.5
%,Co:10.0%以下,W:5.0%以下,Mo:
2.0% 以下及びTiを実質的に含まず残部がNiと不
可避不純物からなることを特徴とする方向性凝固用高耐
食高耐酸化Ni基超合金があげられる。さらに、耐食性
より高温強度を重視する場合には、重量%で、Cr:1
2.1〜16.5%,Al:3.7〜5.5%,Nb:0.
6〜4.5%,Ta:5.1〜10.5%,Co:10.0
%以下,W:5.0%以下,Mo:2.0% 以下及びT
iを実質的に含まず残部がNiと不可避不純物からなる
ことを特徴とする方向性凝固用高耐食高耐酸化Ni基超
合金が適当である。
【0012】Co10%以下,W5.0%以下,Mo2.
0%以下加えることによって強化される。特に、Co
0.5〜5.5%,W1.5〜4.5%,Mo0.1〜1.0
%が望ましい。
【0013】さらに、Reは、γ相の固溶強化には最も
有効な元素であり、高温強度を特に重視する場合は添加
することが望ましい。しかし、本発明合金のように、C
rの添加量が12.1〜16.5%と比較的高い範囲にあ
る場合には、Reの添加はTCP相やα−(Cr,W,
Re)相等の有害相の析出を促進する傾向があるため、
添加量の上限を3.0% 以下とすることが好ましい。好
ましくは0.1〜1.5%である。
【0014】本発明の合金の最も望ましい使用形態は、
米国特許第3,494,709 号公報等に示される方法により鋳
物全体を1つの結晶とすることで実質的に粒界をなく
し、単結晶の状態で使用される形態である。この場合
は、合金の融点を低下させるため合金の強度向上に有効
な溶体化熱処理率を低下させ、最悪の場合には溶体化熱
処理を全く不可能にしてしまう、C,B,Hf及びZr
等の結晶粒界強化元素は故意に添加しないことが望まし
い。しかし、本発明の合金は、米国特許第3,260,505 号
公報等に示される方法で結晶粒を一方向に細長く成長さ
せ、柱状晶として使うことも可能である。この場合は、
重量%で、C:0.1%以下 ,B:0.035%以下,
Hf:0.5%以下,Zr:0.1% 以下を添加するこ
とが好ましい。また、単結晶として使用する場合にも、
場合によってはこれらの結晶粒界強化元素を添加するこ
とも可能である。
【0015】Y,La及びCeはAl23皮膜の密着性
を向上させ、合金の耐酸化性を高めるために有効な元素
である。しかし、これらの元素は合金の融点を著しく低
下させるため、これらの元素を添加する場合は、総量を
0.2% 以下とする必要がある。また、これらの元素は
鋳型材と反応しやすいため、鋳造中に鋳型材と反応し、
最終製品である鋳物中に目的の量が歩留まらない場合が
ある。従って、これらの元素の添加量は最終製品での添
加量で0.2% 以下とする必要があり、中間段階のマス
ターインゴット等では0.2% 以上添加することが必要
な場合がある。
【0016】
【発明の実施の形態】
[実施例1]各添加元素の組織安定性,高温強度及び耐
食性への効果を調べるために、表1に示すNo.1〜28
の28種の組成のマスターインゴットを真空中で約5kg
溶解した。なお、No.28はRene′80Hと呼ばれる航
空機用エンジン及び発電用ガスタービンで広く用いられ
ている、柱状晶用の耐食性に優れた市販合金であり、こ
の合金のみは市販のマスターインゴットを購入して用い
た。この合金の組成及び一般的な熱処理方法等は、例え
ば、“高性能ガスタービン用ブレード材料に関する研
究”;田中照司 他;川崎重工技報,No.112,(1
992年1月),pp8−12に示されている。
【0017】
【表1】
【0018】これらの28合金のうち、No.1〜9及び
25〜28は柱状晶試料で、No.10〜24は単結晶試
料で評価した。柱状晶用の試料は、マスターインゴット
を一方向凝固炉中で再溶解して鋳造した15mm×100
mm×100mmの一方向凝固平板から採取した。単結晶用
の試料は、マスターインゴットを一方向凝固炉中で再溶
解してセレクタ方式で鋳造した直径15mm×高さ180
mmの8本取りの単結晶丸棒から採取した。何れも、鋳造
後、塩酸+過酸化水素水によるマクロエッチングで結晶
性を確認した。また、単結晶試料については、背面ラウ
エX線で結晶方位を測定し、丸棒試料の軸方向の結晶方
位が<001>方位から10゜以内の試料のみを用い
た。
【0019】次に、これらの試料から約10mm×10mm
×10mm程度の試料を数個採取し、1220,123
0,1240,1250,1260,1270,128
0,1290,1300,1310℃の各温度で2時間
熱処理し、熱処理後の組織から最適な溶体化熱処理温度
を決定した。ここで、最適な溶体化熱処理温度とは、凝
固時に粗大に析出したγ′相のできるだけ多くをγ相中
に再固溶させ、かつ初期溶融温度以下の温度のことであ
る。なお、溶体化熱処理温度の決定に当たっては、必ず
しも100%の溶体化にはこだわらず、初期溶融の起こ
らない範囲での共晶組織及び粗大γ′相の残存は許容し
た。各試料は、各々の合金に対して決定された溶体化熱
処理温度で4時間熱処理され、溶体化熱処理後は空冷と
した。これに続く時効熱処理は全ての合金で共通とし、
条件は1080℃/4時間/空冷+871℃/20時間
/空冷とした。なお、市販合金であるNo.28について
は、溶体化熱処理1204℃/2時間/空冷,時効熱処
理1093℃/4時間/空冷+1052℃/4時間/空
冷+843℃/16時間/空冷とした。
【0020】これらの試料について、先ず、組織安定性
に及ぼす添加元素の影響を検討した。熱処理後の各試料
から切り出した約10mm×10mm×10mm程度のブロッ
クを982℃で3000時間熱処理し、熱処理後の組織
観察結果から組織安定性を評価した。結果を表1中の組
織安定性の項に示す。ここで、評価が〇となっている合
金は組織安定性が良好であることを示し、熱処理後もT
CP相あるいはα−(Cr,W,Re)相等の有害相の
析出はごく僅かで、γ′相も比較的立方体形状に近い形
状を示したものである。評価が×となっている合金は、
熱処理後に多量のTCP相あるいはα−(Cr,W,R
e)相等の有害相が析出した合金、あるいは、γ′相の
形状が立方体形状から大きく崩れていたことからγ′相
の安定性がきわめて悪いと判断された合金である。この
結果から、No.19のようにCrの添加量が16.9%
程度となるとα−(Cr,W,Re)相が多量に析出
し、合金の相安定性が保たれないことがわかる。また、
No.20のようにCr量が12.5%程度でも、Wの添
加量が5.5%程度となると、No.19と同様にα−
(Cr,W,Re)相が多量に析出してしまう。また、
Cr,Wと同族のMoも同様の傾向があり、Moの添加
量が2.5% のNo.21でも多量のα−(Cr,W,R
e)相の析出が認められた。従って、組織安定性の面か
ら、Cr,W,Moの上限を、各々Cr≦16.5% ,
W≦5%,Mo≦2%程度に制限することが好ましいと
考えられる。また、Coも自らはα−(Cr,W,R
e)相を形成することはないが、過剰に添加されると合
金の相安定性を乱してα−(Cr,W,Re)相の析出
を助長することが知られている。また、TCP相の一部
はCoを主体とする化合物である。No.24の結果か
ら、11%程度のCoはTCP相及びα−(Cr,W,R
e)相の析出につながっていることから、Coの上限は
10%程度とすることが好ましいと考えられる。一方、
No.26,27ではTCP相あるいはα−(Cr,W,
Re)相は析出しなかったが、熱処理後のγ′相が著し
く粗大化しており、これらの合金はγ′相の安定性が悪
い組成であると考えられる。これは、共にAl量が低
く、これに対してTaあるいはNbの添加量が相対的に
高いためと考えられる。従って、γ′相の長時間安定性
を確保するためには、(2×Nb+Ta)/(6.7×
Al+2×Nb+Ta)を0.45程度以下にする必要
があると考えられる。なお、組織安定性の結果が悪かっ
た合金の一部は、強度及び耐食性の評価を行わなかっ
た。
【0021】次に、高温強度を982℃−19.3kgf
/mm2の条件のクリープ破断試験で評価した。試料は、
柱状晶の場合は平板の長手方向に、単結晶の場合は丸棒
の軸方向に採取した。試験片は直径6.35mm,標点間
距離25.4mmのものを用い、試験温度に安定後2時間
保持の後に試験を開始した。試験結果を表1のクリープ
破断時間の項に示す。この結果から、No.25を除き、
市販の従来合金であるNo.28を大幅に上回るクリープ
破断強度を有していることがわかる。特に、柱状晶試料
で比較した場合、図1に示すように(2×Nb+Ta)/
(6.7×Al+2×Nb+Ta)の増加と共にクリープ
破断時間が長くなり、(2×Nb+Ta)/(6.7×A
l+2×Nb+Ta)が約0.2〜0.3の範囲で極大と
なることがわかる。これは、No.25のように、この値
が小さいとγ′相の固溶強化が充分ではないためクリー
プ破断強度が低く、逆にこの値が大きくなり過ぎると
γ′相の安定性が低下するためと考えられる。
【0022】また、Nb及びTaを含まないNo.28に
ついても、(3.8×Ti)/(3.8×Ti+6.7×A
l)の重量%比を用いて、他の合金と比較した(各元素
の係数は、重量%を原子%に換算するための係数)。そ
の結果、No.1と28を比較すると、この比率がほぼ同
一でありながら、クリープ破断時間はNo.1がNo.28
の約1.4 倍である。このことは、γ′相をTiで固溶
強化するよりもTaあるいはNbで固溶強化する方が有
効であることを示している。同様に、単結晶材のNo.1
2〜14で比較すると、同じ(2×Nb+Ta)/(6.7
×Al+2×Nb+Ta)比でもTa量の多い合金ほど
クリープ破断時間が長く、NbよりTaの方がγ′相の
固溶強化に有効であることがわかる。
【0023】次に、実機環境模擬燃焼試験(バーナリグ
試験)で合金の耐食性を評価した。この試験方法は、実
際に軽油焚きの燃焼ガス中に試料を曝す方法で、通常実
験室的に行われる溶融塩塗布試験等よりも実機環境に近
く、高温腐食と高温酸化が同時に起きる環境での試験が
可能である。試験片は直径9mm,長さ50mmの丸棒と
し、燃焼ガス雰囲気中で900℃/7時間/空冷×7回
試験後の脱スケール後の腐食減量で評価した。結果を表
1中の腐食減量の項に示す。この結果から、各合金と
も、市販の従来合金であるNo.28を上回る耐食性を示
していることがわかる。
【0024】試験後の試料表面を観察した結果、No.2
8では最表面はCr23皮膜で、その内側にはAlとT
iの複合酸化物が認められた。この複合酸化物はブロッ
ク状に成長しており、その周囲にはCrの硫化物が観察
され、加速度的ではないものの徐々に腐食が進行してい
た形跡があった。一方、同じ柱状晶材でありながらTi
を含まないNo.1〜9は、同じく最表面はCr23皮膜
だが、その内部にはAl23皮膜がほぼ層状に形成され
ており、さらにその内部にごく僅かのCrの硫化物が観
察された。これは、Tiを無添加としたことで、Cr2
3皮膜の内部に層状のAl23皮膜が形成可能とな
り、Sの侵入をCr23皮膜とAl23皮膜の2層の皮
膜で防ぐ形となり、耐食性が向上したと考えられる。こ
れに対して、Tiを含む場合、AlとTiの複合酸化物
がブロック状に形成されるため、部分的にはCr23
膜のみで保護される形となり、高温では必ずしもCr2
3皮膜の保護作用が完全ではないこともあって、Sが
侵入しやすく腐食が進行したものと考えられる。以上の
結果から、高温腐食と同時に高温酸化も起こる環境で
は、Tiを無添加とすることで、層状のAl23皮膜の
形成が可能となり、耐食性を向上できることがわかる。
【0025】一方、単結晶材のNo.10〜17及び23
は、全て比較的薄いAl23皮膜で表面が覆われてい
た。ただし、Cr量の低いNo.17及びCo量の低いN
o.23は一部にこの皮膜が破れて局部的にNiの硫化に
よる腐食が進行していた部分が観察された。また、Nb
量の高いNo.13及び14が最も優れた耐食性を示し
た。
【0026】[実施例2]実施例1の表1中のNo.6に
示す組成で150kgのマスターインゴットを真空中で
溶製した。マスターインゴットの溶製に当たっては、N
iあるいは添加元素中に含まれるために不可避的に混入
する主な不純物元素の量を下記のとおりに規制した。
【0027】Zr≦0.01%,Hf≦0.1%,Si≦
0.05%,Mn≦0.5%,P≦0.005%,S≦0.
003%,Mg≦0.01%,Ca≦0.01%,Ti≦
0.2%,Fe≦0.2%,Cu≦0.2% また、合金中のガス量も[N]:15ppm 未満,
[O]:15ppm 未満に規制した。
【0028】表2にマスターインゴット溶製後の分析結
果を示す。不純物量は全て上記の規制内に収まってた。
このマスターインゴットを用いて、図2に示す形状の発
電用ガスタービンの初段静翼を鋳造した。鋳造には、米
国特許第3,260,505 号公報に示される一方向凝固法を用
い、内周側サイドウォール(1)から外周側サイドウォ
ール(2)の方向に結晶粒が細長く伸びた柱状晶とし
た。なお、この静翼のサイドウォール間の翼長は70mm
である。
【0029】
【表2】
【0030】[実施例3]実施例1の表1中のNo.10
に示す組成で150kgのマスターインゴットを真空中で
溶製した。マスターインゴットの溶製に当たっては、N
iあるいは添加元素中に含まれるために不可避的に混入
する主な不純物元素の量を下記のとおりに規制した。
【0031】Zr≦0.01%,C≦0.1%,B≦0.
05%,Si≦0.05%,Mn≦0.5%,P≦0.0
05%,S≦0.003%,Mg≦0.01%,Ca≦0.
01%,Ti≦0.2%,Fe≦0.2%,Cu≦0.2
% また、合金中のガス量も[N]:15ppm 未満,
[O]:15ppm 未満に規制した。
【0032】表3にマスターインゴット溶製後の分析結
果を示す。不純物量は全て上記の規制内に収まってた。
このマスターインゴットを用いて、図3に示す形状の発
電用ガスタービンの初段動翼を鋳造した。鋳造には、特
開平4−124237 号公報に示される特殊な一方向凝固法を
用い、翼部(11)からシャンク部(12)の方向に成
長した単結晶とした。なお、この動翼の全長は170m
m、翼部の長さは70mmである。
【0033】
【表3】
【0034】
【発明の効果】本発明は、特にS(硫黄)等の不純物を
比較的多く含む燃料中で使用され、かつ高温耐酸化性も
同時に要求される高温部品に適した耐食性及び耐酸化性
の両方に優れたNi基超合金にある。本発明の合金をガ
スタービンの動翼,静翼等の高温部材に適用することに
より、ガスタービンの発電効率及び信頼性の一層の向上
を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】柱状晶材における(2×Nb+Ta)/(6.7×
Al+2×Nb+Ta)とクリープ破断時間との関係を
示す図。
【図2】合金No.6を用いて鋳造した、発電用ガスター
ビン用柱状晶静翼の斜視図。
【図3】合金No.10を用いて鋳造した、発電用ガスタ
ービン用単結晶動翼の斜視図。
【符号の説明】
1…内周側サイドウォール、2…外周側サイドウォー
ル、3,11…翼部、4…結晶粒界、12…シャンク
部、13…ブラットフォーム、14…シールフィン。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 玉置 英樹 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 吉成 明 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 渡部 典行 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 岡山 昭 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、Cr:12.1〜16.5%,A
    l:3.7〜5.5%,Nb:1.1〜5.0%,Ta:
    4.1〜9.5%,Co:10.0%以下,W:5.0%以
    下,Mo:2.0%以下及びTiを実質的に含まず残部
    がNiと不可避不純物からなることを特徴とする方向性
    凝固用高耐食高耐酸化Ni基超合金。
  2. 【請求項2】重量%で、Cr:12.1〜16.5%,A
    l:3.7〜5.5%,Nb:0.6〜4.5%,Ta:
    5.1〜10.5%,Co:10.0%以下,W:5.0%
    以下,Mo:2.0%以下及びTiを実質的に含まず残
    部がNiと不可避不純物からなることを特徴とする方向
    性凝固用高耐食高耐酸化Ni基超合金。
  3. 【請求項3】重量%で、Cr:12.1〜16.5%,A
    l:3.7〜5.5%,Nb:1.1〜5.0%,Ta:
    4.1〜9.5%,Co:10.0%以下,W:5.0%以
    下,Mo:2.0%以下,Ni:55〜70%及びTi
    を実質的に含まないことを特徴とする方向性凝固用高耐
    食高耐酸化Ni基超合金。
  4. 【請求項4】重量%で、Cr:12.1〜16.5%,A
    l:3.7〜5.5%,Nb:0.6〜4.5%,Ta:
    5.1〜10.5%,Co:10.0%以下,W:5.0%
    以下,Mo:2.0%以下,Ni:55〜70% 及び
    Tiを実質的に含まないことを特徴とする方向性凝固用
    高耐食高耐酸化Ni基超合金。
  5. 【請求項5】請求項1〜4に記載の方向性凝固用高耐食
    高耐酸化Ni基超合金において、重量%で3.0% 以下
    のReを含むことを特徴とする方向性凝固用高耐食高耐
    酸化Ni基超合金。
  6. 【請求項6】請求項1〜5に記載の方向性凝固用高耐食
    高耐酸化Ni基超合金において、重量%で、C:0.1
    %以下,B:0.035%以下,Hf:0.5%以下,Zr
    0.1%以下を含むことを特徴とする方向性凝固用高耐
    食高耐酸化Ni基超合金。
  7. 【請求項7】請求項1〜6に記載の方向性凝固用高耐食
    高耐酸化Ni基超合金において、YとLaとCeの何れ
    かを単独であるいは何れか2つ以上の混合物として、重
    量%で0.2% 以下含むことを特徴とする方向性凝固用
    高耐食高耐酸化Ni基超合金。
  8. 【請求項8】請求項1〜7に記載の方向性凝固用高耐食
    高耐酸化Ni基超合金において、Ru,Rh,Pd,O
    s,Ir及びPtの何れかを単独であるいは何れか2つ
    以上の混合物として、重量で5%以下含むことを特徴と
    する方向性凝固用高耐食高耐酸化Ni基超合金。
  9. 【請求項9】請求項1〜8に記載の方向性凝固用高耐食
    高耐酸化Ni基超合金において、重量比で(2×Nb+
    Ta)/(6.7×Al+2×Nb+Ta)が0.15か
    ら0.45 の範囲にあることを特徴とする方向性凝固用
    高耐食高耐酸化Ni基超合金。
  10. 【請求項10】請求項1〜8に記載の方向性凝固用高耐
    食高耐酸化Ni基超合金において、重量比で(2×Nb
    +Ta)/(6.7×Al+2×Nb+Ta)が0.2から
    0.3の範囲にあることを特徴とする方向性凝固用高耐
    食高耐酸化Ni基超合金。
  11. 【請求項11】少なくとも、重量で、Cr:12.1〜
    16.5%,Ti:0.5%未満,Ni:55〜70%を
    含むγ′相が体積率で50%以上析出したNi基超合金
    において、重量%比で(2×Nb+Ta)/(6.7×A
    l+2×Nb+Ta)が0.15から0.45 の範囲に
    あることを特徴とする方向性凝固用高耐食高耐酸化Ni
    基超合金。
  12. 【請求項12】少なくとも、重量で、Cr:12.1〜
    16.5%,Ti:0.5%未満 ,Ni:55〜70%
    を含むγ′相が体積率で50%以上析出したNi基超合
    金において、重量比で(2×Nb+Ta)/(6.7×
    Al+2×Nb+Ta)が0.2から0.3 の範囲にあ
    ることを特徴とする方向性凝固用高耐食高耐酸化Ni基
    超合金。
  13. 【請求項13】請求項1〜12に記載の方向性凝固用高
    耐食高耐酸化Ni基超合金からなる柱状晶鋳物。
  14. 【請求項14】請求項1〜12に記載の方向性凝固用高
    耐食高耐酸化Ni基超合金からなる単結晶鋳物。
JP7955997A 1997-03-31 1997-03-31 方向性凝固用高耐食高耐酸化Ni基超合金及び高耐食高耐酸化方向性凝固鋳物 Pending JPH10273748A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP7955997A JPH10273748A (ja) 1997-03-31 1997-03-31 方向性凝固用高耐食高耐酸化Ni基超合金及び高耐食高耐酸化方向性凝固鋳物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP7955997A JPH10273748A (ja) 1997-03-31 1997-03-31 方向性凝固用高耐食高耐酸化Ni基超合金及び高耐食高耐酸化方向性凝固鋳物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10273748A true JPH10273748A (ja) 1998-10-13

Family

ID=13693377

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP7955997A Pending JPH10273748A (ja) 1997-03-31 1997-03-31 方向性凝固用高耐食高耐酸化Ni基超合金及び高耐食高耐酸化方向性凝固鋳物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10273748A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004332116A (ja) * 2003-05-09 2004-11-25 General Electric Co <Ge> ニッケル基合金
WO2005028690A1 (en) * 2003-09-24 2005-03-31 Alstom Technology Ltd Braze alloy and the use of said braze alloy

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004332116A (ja) * 2003-05-09 2004-11-25 General Electric Co <Ge> ニッケル基合金
JP4579573B2 (ja) * 2003-05-09 2010-11-10 ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ ニッケル基合金
WO2005028690A1 (en) * 2003-09-24 2005-03-31 Alstom Technology Ltd Braze alloy and the use of said braze alloy

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0789087B1 (en) High strength Ni-base superalloy for directionally solidified castings
JP4885530B2 (ja) 高強度高延性Ni基超合金と、それを用いた部材及び製造方法
JP4036091B2 (ja) ニッケル基耐熱合金及びガスタービン翼
JP5299899B2 (ja) Ni基超合金及びその製造方法
JP4521610B2 (ja) Ni基一方向凝固超合金およびNi基単結晶超合金
EP2305846B1 (en) Ni-BASED SINGLE CRYSTAL SUPERALLOY AND ALLOY MEMBER OBTAINED FROM THE SAME
JP3184882B2 (ja) Ni基単結晶合金とその製造方法
US20070163682A1 (en) Ni-based superalloy having high oxidation resistance and gas turbine part
JP5252348B2 (ja) Ni基超合金とその製造方法およびタービンブレードまたはタービンベーン部品
JPWO2008111585A1 (ja) Ni基単結晶超合金及びこれを用いたタービン翼
JP3559670B2 (ja) 方向性凝固用高強度Ni基超合金
JP4266196B2 (ja) 強度、耐食性及び耐酸化特性に優れたニッケル基超合金
JP3084764B2 (ja) Ni基超合金部材の製造方法
JP5063550B2 (ja) ニッケル基合金及びそれを用いたガスタービン翼
JP4230970B2 (ja) 凝固方向強度と結晶粒界強度の優れた一方向凝固用Ni基超合金、鋳造物およびガスタービン用高温部品
JP5595495B2 (ja) ニッケル基超合金
JPH1121645A (ja) Ni基耐熱超合金、Ni基耐熱超合金の製造方法及びNi基耐熱超合金部品
JP2546324B2 (ja) 高温耐食性にすぐれたNi基単結晶超合金
JP5427642B2 (ja) ニッケル基合金及びそれを用いたランド用ガスタービン部品
JP4184648B2 (ja) 強度及び耐食性に優れたNi基単結晶合金とその製造法
JP2787946B2 (ja) 高温強度および高温耐食性にすぐれたNi基単結晶超合金
JPH10317080A (ja) Ni基耐熱超合金、Ni基耐熱超合金の製造方法及びNi基耐熱超合金部品
JP2579316B2 (ja) 強度および耐食性に優れた単結晶Ni基超合金
JPH10273748A (ja) 方向性凝固用高耐食高耐酸化Ni基超合金及び高耐食高耐酸化方向性凝固鋳物
JP2001294959A (ja) 単結晶Ni基耐熱合金およびタービン翼