JPH10155498A - 汚水の生物処理の簡易診断方法 - Google Patents

汚水の生物処理の簡易診断方法

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JPH10155498A
JPH10155498A JP33292496A JP33292496A JPH10155498A JP H10155498 A JPH10155498 A JP H10155498A JP 33292496 A JP33292496 A JP 33292496A JP 33292496 A JP33292496 A JP 33292496A JP H10155498 A JPH10155498 A JP H10155498A
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sludge
bacterium
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Abstract

(57)【要約】 【課題】生物処理の指標細菌となるバチルス属細菌を簡
易にかつ迅速に判断し、かつその栄養分解能等の判断も
容易に行うことができ、処理場等における日常の施設管
理に利用できる汚水の生物処理の簡易診断方法を提供す
ること。 【解決手段】本発明は、好気性で芽胞を形成する有用細
菌を用いて汚水を生物処理する生物処理系内の汚泥をサ
ンプリングし倍率を異ならせて希釈して作成した複数の
被検試料を、該汚泥中の生物処理に関わる多種多様な微
生物群が必要とする栄養源を配合してなる多菌種共存試
料の検査に適した培地Aと、前記培地Aにでんぷん及び
酵母エキスを加えた培地Bにて別々に培養し、汚泥中の
有用細菌の単離培養を行うことなく汚水の生物処理状況
の良否を判断することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生物処理の診断方
法に関し、詳しくは、下水、し尿等の汚水の生物処理の
簡易診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】下水、し尿等の汚水処理は、近年、微生
物を利用する生物処理が行われている。これらの生物処
理に関わる微生物は、多種多様であり、様々な特性・機
能を有する微生物が混在しており、生物処理の対象によ
って優占化する菌種も異なる。現実の汚水処理場等で
は、これらの混在する微生物群を効率良く利用し、優れ
た処理を行うために、生物処理の状況を把握しなければ
ならない。状況を適切に、迅速に把握し、例えば、処理
が良好に進行していない場合には、適切な処置を行い、
生物処理の悪化を防ぐことが必要である。
【0003】生物処理状況を把握するには、処理槽等に
棲息する細菌から原生動物まで、多岐にわたる微生物群
の質(特性)及び量(密度)についての測定を行うこと
が必要である。しかし、それぞれの特性にあった培地で
培養し、単離・培養後に各種生理学的検査を行うこと
は、煩雑であり、実用的ではない。
【0004】従来、生物処理微生物群のなかでも、有機
物の分解・資化の中心的役割を果たす細菌が、グラム陽
性桿菌で、内生胞子形成能を有する有用細菌であり、こ
の有機物の分解能力に優れた有用細菌が、反応槽内に1
6個/ml以上存在することが優れた生物処理を行う上
で望ましいことは知られている。
【0005】また、下水処理にバチルス属細菌が用いら
れることは特公平4-26834号にも記載されている。
【0006】従って、本発明者は、このバチルス属細菌
を生物処理における重要な指標細菌として、バチルス属
細菌の質(特性)及び量(密度)についての測定を行う
ことにより、生物処理の進行状況を把握することができ
ると考えた。
【0007】しかし、生物処理に関与するバチルス属細
菌は、30種以上存在することが確認されており、各々
のバチルス属細菌の分解能力を確認するには、まず被検
試料を希釈し、平板培地に通常4〜12日間培養させ、
発芽・増殖させた後に、発生したコロニーごとに顕微鏡
検査を行い、さらに単離・培養を経て、栄養ごとの分解
機能検査を行っており、最終的な結果が判明するまでに
は、4〜8週間もかかり、日々変化しているバチルス属
細菌の現状を把握できず、日常の施設管理には適してい
ないという問題があった。また、この方法は専門的知識
と検査技術を必要とするものなので、専門職員を配置す
る必要があり、日常の施設管理として用いることはコス
ト的に難しい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は生物
処理の指標細菌となるバチルス属細菌を簡易にかつ迅速
に判断し、かつその栄養分解能等の判断も容易に行うこ
とができ、処理場等における日常の施設管理に利用でき
る汚水の生物処理の簡易診断方法を提供することを課題
とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明に係る汚水の生物処理の簡易診断方法は、好気性で芽
胞を形成する有用細菌が棲息する反応槽に汚水を受け入
れ、前記汚水中の成分を生物学的に処理する反応工程
と、該反応工程から送られる汚泥を固液分離する固液分
離工程を有する生物処理系によって汚水を生物処理する
際に、前記生物処理系内の汚泥をサンプリングし、該汚
泥を倍率を異ならせて希釈して、複数の被検試料を作成
し、該複数の被検試料を、汚泥中の生物処理に関わる多
種多様な微生物群が必要とする栄養源を配合してなる多
菌種共存試料の検査に適した培地Aと前記培地Aにでん
ぷん及び酵母エキスを加えた培地Bにて別々に培養し、
一方の培地Aから、早期にコロニーが形成されるか否か
を視覚的に認定し、早期にコロニーが形成されている場
合には、該コロニーが有用細菌であるバチルス属細菌の
コロニーであるか否かを視覚的に認定することにより汚
泥中の有用細菌であるバチルス属細菌の存在を判断し、
該コロニーが該バチルス属細菌のコロニーである場合に
は、胞子を形成しているか否かを視覚的に認定し、次い
で前記培地A上の該バチルス属細菌のコロニー数をカウ
ントすることによりバチルス属細菌の密度を計測し、他
方の培地Bから、培地B上に形成されたコロニーのうち
バチルス属細菌のコロニーについて、でんぷん分解能を
有する細菌の出現率を計測することにより、汚泥中の有
用細菌の単離培養を行うことなく汚水の生物処理状況の
良否を判断することを特徴とする。
【0010】好ましくは、前記培地Aが、少なくとも肉
エキス、ペプトン、ぶどう糖及び食塩を含むことであ
る。
【0011】また、前記汚水が下水又はし尿であり、バ
チルス属細菌のコロニー数をカウントして密度を計測す
る際に、コロニー数をカウントした被検試料の希釈倍率
xと該カウント数yが下記の式を満たすことを指標とし
て汚水の生物処理状況の良否を簡易に判断することは好
ましい。 〔式〕y×10x≧105
【0012】更に好ましくは、でんぷん分解能を有する
細菌の出現率が10%以上であることである。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明において、生物処理系と
は、好気性で芽胞を形成する有用細菌が棲息する反応槽
に、下水やし尿等の汚水を受け入れ、汚水中の成分を生
物学的に処理する反応工程と、反応工程から送られる汚
泥を固液分離する固液分離工程を有する処理系を意味す
る。
【0014】これらの生物処理系における重要な指標細
菌は、バチルス属細菌であるが、このバチルス属細菌は
主に4種類の特性を有し、 炭水化物のみを選択的に分解する種、 蛋白質のみを選択的に分解する種、 炭水化物・蛋白質のいずれをも分解する種、 炭水化物・蛋白質のいずれをも分解しない種が認めら
れている。
【0015】汚泥の生物処理において、栄養の種類によ
って異なるが、主に上記の蛋白質のみを選択的に分解
する種が優占化し、次に多いのがの炭水化物のみを選
択的に分解する種である。尚、蛋白質を分解する種の大
部分は脂質についても同様に分解(可溶化)する。バチ
ルス属細菌は内生胞子形成性を有し、貧栄養状態などの
悪環境時には、胞子化し、低pH、乾燥、低酸素、高低
温度、圧力変化などに耐え得る。これとは逆に、富栄養
状態などの好環境時には、再び発芽し、増殖する。ま
た、その世代時間は14〜45分であり、適環境下で優
占化する。
【0016】更にバチルス属細菌の他の特性としては、
その増殖や胞子化に際して、抗生物質を分泌したり、特
殊な酵素を合成し、微塵蠅・蠅や蚊の増殖を抑制した
り、また、腐敗菌の細胞壁(膜)を直接攻撃し、腐敗菌
が増殖するのを防ぐ作用もある。
【0017】上述した生物処理に用いられるバチルス属
細菌は、その特性、性状、機能、生物学的特徴により3
0種以上が分類・確認されている。この多種類のバチル
ス属細菌の中には、栄養に対する分解能力に差があり、
本発明は、この栄養に対する分解能力の差を簡易にかつ
迅速に判断できる。
【0018】以下に本発明の生物処理の簡易診断方法に
ついて詳細に説明する。
【0019】まず、生物処理系内の反応工程内あるいは
固液分離工程内の汚泥をサンプリングする。サンプリン
グした汚泥は、倍率を異ならせて希釈する。希釈や培養
に際しては、器材は全て滅菌処理を行ったものを用い、
また操作は全て無菌的に行う。
【0020】汚泥の希釈用の水としては、滅菌処理を行
った蒸留水を用いる。汚泥を均一になるようによく攪拌
し、1mlを分取し、希釈水を加えて10mlにして10倍
の希釈試料を作成する。次にこの10倍の希釈試料をよ
く攪拌し、1mlを分取し、希釈水を加えて10mlにして
10倍の希釈試料を作成する。順次これを繰り返して
複数の被検試料を作成する。
【0021】次に、この被検試料を、以下に説明する汚
泥中の生物処理に関わる多種多様な微生物群が必要とす
る栄養源を配合してなる多菌種共存試料の検査に適した
培地Aと、培地Aにでんぷん及び酵母エキスを加えた培
地Bを用いて培養する。
【0022】本発明に用いられる培地Aは、汚泥中の多
種多様な微生物群、特に汚水の生物処理の有用細菌であ
る30種を越えるバチルス属細菌を簡易に発芽させ、増
殖させることができる培地である。即ち、培地Aは、上
述した微生物群、特にバチルス属細菌が必要とする栄養
源をバランス良く培地中に存在させているので、植菌後
24〜48時間で栄養分解が完了し、胞子を形成するに
適した栄養濃度であり、生物処理に有益な全てのバチル
ス属細菌を発芽、増殖させることができる。
【0023】本発明は、上述の培地Aを用いて、希釈調
製を行った汚泥を培養することによって、汚泥中に存在
する微生物群の状況を把握し、更に有効細菌であるバチ
ルス属細菌の存在を確認することができる。
【0024】本発明に用いられる培地Bは、上記培地A
にでんぷん及び酵母エキスを加えた培地であり、上記培
地A同様に、汚泥中の多種多様な微生物群、特に汚水の
生物処理の有用細菌である30種を越えるバチルス属細
菌を簡易に発芽させ、更に、バチルス属細菌の栄養分解
能のうちでんぷん分解能を有する細菌の出現率が簡易に
計測できる培地である。この培地Bによって汚泥中の有
用細菌の栄養源別の分解能が簡易に推測できる。即ち、
バチルス属細菌のなかでも優占化する種は主に蛋白質を
選択的に分解する種であるか、もしくは主に炭水化物を
選択的に分解する種であるので、炭水化物であるでんぷ
んを分解する種の出現率が計測できれば、その他の種は
蛋白質を分解可能な種であると推測することができる。
【0025】上述した培地Aは、少なくとも肉エキス、
ペプトン、ぶどう糖及び食塩を含むものであり、具体的
には、ニュートリエントブロスが0.5〜1.0%、ぶどう糖
0.5〜1.0%、食塩0.3〜1.0%で構成することができる。
好ましくは、ニュートリエントブロスが0.8%、ぶどう
糖0.8%、食塩0.6%で構成されることである。この培地
に寒天を1.5%加えて加熱(80℃)し、寒天を完全に
溶解させ、20mlづつシャーレに分取し、シャーレに広
げて冷却し、平板培地Aを作成する。
【0026】また、上述した培地Bは、上記培地Aにで
んぷん及び酵母エキスを加え調製するが、具体的には、
上記培地Aに、でんぷん0.3〜1.5%及び酵母エキス0.03
〜0.1%を加えることができる。好ましくは、ニュート
リエントブロスが0.8%、ぶどう糖0.8%、食塩0.6%、
でんぷん0.5%、酵母エキス0.05%で構成されることで
ある。この培地に寒天を1.5%加えて加熱(80℃)
し、寒天を完全に溶解させ、20mlづつシャーレに分取
し、シャーレに広げて冷却し、平板培地Bを作成する。
【0027】希釈した汚泥の被検試料を0.1ml取り、平
板培地Aと平板培地Bのそれぞれの培地全体に拡散さ
せ、恒温培養器内で30〜32℃の温度で培養する。
【0028】本発明では、上記の平板培地Aを用いて、
以下に説明する段階的認定を行う。第一段階の認定は、
平板培地Aに早期にコロニーが形成されるか否かを視覚
的に認定し、次いで早期に形成されたコロニーが存在す
る場合には、そのコロニーが有用細菌であるバチルス属
細菌のコロニーであるか否かを視覚的に認定する。早期
というのは、培養開始から48時間位までを意味する。
この早期に、培地上にバチルス属細菌のコロニーが形成
されていることが、まず第一に必要である。
【0029】これは肉眼及び形状顕微鏡で簡単に認定す
ることができ、具体的には、培地上に形成されたコロニ
ーを肉眼で観察し、表1に示すようなバチルス属細菌の
コロニー特有の色調及び形状等を示すものであれば、バ
チルス属細菌のコロニーであると判定することができ
る。
【0030】
【表1】
【0031】本発明において、第一段階の認定の結果、
早期にコロニーが形成されていない場合や、早期にコロ
ニーを確認したが、そのコロニーはバチルス属細菌のコ
ロニーであると判定できなかった場合には、汚泥の生物
処理が非常に悪いと判断することができる。この対策と
しては珪酸塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、マグネ
シウム塩等のミネラルを添加し、バチルス属細菌の培
養、増殖を促進することや、反応工程での曝気量を変化
させることが挙げられる。また、固液分離した汚泥を返
送する量をコントロールすることも重要である。その
他、投入汚水量のコントロールも必要な場合は行う。
【0032】次に、第一段階の認定の結果、コロニーが
バチルス属細菌のコロニーである場合には、胞子を形成
しているか否かという第二段階の認定を行う。これは、
肉眼でも、コロニーの中心部から胞子を形成しているこ
とが確認できるが、詳しくは顕微鏡観察によって確認す
る。
【0033】この平板培地Aでの胞子形成速度と、その
バチルス属細菌の特性である栄養源の分解速度との間に
は比例関係が存在することが本発明者の研究により明ら
かとなった。よって、本発明は、早期(培養から48時
間位まで)に、バチルス属細菌が胞子を形成しているこ
とから、そのバチルス属細菌が栄養源分解能力の高い種
であるという判断ができるのである。これは従来のよう
に、平板培地に培養したコロニーから細菌を単離し、各
々について栄養分解試験を行う手間をはぶき、非常に簡
易にしかも迅速に生物処理の有用細菌であるバチルス属
細菌の栄養分解能の優劣を判断することができる。栄養
分解能が比較的高いバチルス属細菌では、そのコロニー
自体は、わずか24時間でも確認することができるが、
胞子形成が確認されるのは、ほぼ48時間培養後とな
る。
【0034】従って、栄養分解能の高いバチルス属細菌
であれば、サンプリングから48時間程度で、生物処理
の診断結果がわかるので、処理場等の日常の施設管理に
十分利用することができる。
【0035】また、バチルス属細菌の栄養分解能力は、
培養した培地Aのコロニー周辺の培地の溶解状況を観察
することによっても確認することができる。栄養分解能
の高い種は、コロニー周辺の培地を溶解し、コロニーの
中心が下方に沈んだようになるという特徴があるので、
上述の胞子形成の確認と合わせて、更に詳しくバチルス
属細菌の栄養分解能を知ることができる。
【0036】第二段階の認定の結果、早期(培養から4
8時間位まで)に、胞子の形成が確認されなかった場合
には、バチルス属細菌は存在するが、栄養分解能の低い
種であるので、汚泥の生物処理は、良好に進まない可能
性がある。よって、栄養分解能の優れた種が優占化する
ように、適切な処置を行う必要がある。適切な処理と
は、前述の対策と同様である。更に、分解能の良いバチ
ルス属細菌汚泥をシーディング(種付)することが好ま
しい。なお、早期(培養から48時間位まで)に、胞子
の形成が確認されなかった場合には、継続して培養を続
け、胞子の形成が確認された時点を記録し、次の第三段
階の認定に進む。
【0037】次いでバチルス属細菌のコロニー数をカウ
ントし、菌体密度を計測する。密度の測定は、平板培養
法による生菌数の測定方法に従って、コロニー数を数え
ることによって行う。この計測によって、第一及び第二
段階の認定で栄養分解能力が高いと判定されたバチルス
属細菌の量(密度)が簡易に測定できる。
【0038】具体的には、コロニー数をカウントした被
検試料の希釈倍率xとカウント数yによって計測するこ
とができる。下水やし尿処理の場合には、xとyが
(式)y×10x≧105を満たすか否かによって有用な
バチルス属細菌の菌体密度が適切か、または適切でない
かが判断できる。これが第三段階の認定である。コロニ
ー数をカウントする際には、培地上にコロニーが5〜10
0個、好ましくは10〜30個存在している培地を選ん
でカウントすることが好ましい。100個を越えるコロニ
ーが平板培地上に存在していると、カウント誤差が出や
すく、またコロニー数が5個未満であると、希釈による
誤差が出る。
【0039】第三段階の認定の結果、コロニー数をカウ
ントした被検試料の希釈倍率xとカウント数yが上式を
満たさない場合には、汚水の生物処理におけるバチルス
属細菌の密度が適切ではないと判断することができる。
よって密度を増加させるために適切な処置を行う必要が
ある。適切な処理とは、前述の対策と同様である。
【0040】次に、平板培地Aでの培養と平行して行わ
れる平板培地Bでは、バチルス属細菌の中でも、でんぷ
ん分解能を有する細菌の出現率がわかる。その方法は、
まず希釈した被検試料を植菌し、培養後にコロニーを出
現させる。この培地上にはバチルス属細菌のコロニーや
他の雑菌のコロニーも混在している。バチルス属細菌の
コロニーであるか否かは、前述した肉眼観察と同様の手
法により確認できる。このバチルス属細菌のコロニー数
をカウントし、全コロニー数とする。次に、この培地
及びコロニー上にルゴール液(ヨードカリウム2g、ヨ
ード1g、蒸留水80ml)を噴霧し、青紫色に変色した
コロニー数をカウントし、変色コロニー数とする。全
コロニー数から変色コロニー数を引いた数がでんぷん分
解菌のコロニー数である。よって、でんぷん分解能を有
する細菌の出現率(%)は、(−)÷×100から
求めることができる。
【0041】本発明では、上述の平板培地Aでの認定に
加えて、平板培地Bによる培養を平行して行うことによ
って、バチルス属細菌の栄養分解能力の中でも、特に炭
水化物(でんぷん)分解能を有する菌の出現率を知るこ
とができ、生物処理の状況をより詳しく、しかも簡易に
把握することができる。
【0042】でんぷん分解能を有する菌の出現率が10
%以上であると生物処理の状況が非常に良好であると判
断できる。
【0043】平板培地Bによる培養の結果、でんぷん分
解能を有する菌が認められない場合には、種汚泥として
でんぷん分解能を有するバチルス属細菌を有する脱水汚
泥、乾燥汚泥、発酵汚泥等を処理槽にシーディング(種
付)し、それらを増殖させる手段を構じることが好まし
い。
【0044】本発明の生物処理の簡易診断方法は、1回
の検査で、生物処理の状況を絶対的に判断することがで
き、例えば、長野県の処理場と、奈良県の処理場との比
較を行うことができる。また、この診断は、1回限りの
診断ではなく、継続して検査することも重要である。継
続して検査を行うことによって、今回の状況(データ
ー)を前回の状況(データー)と比較することができ
る。前回のデーターと比較することによって、一時的な
状況の判断のみならず、生物処理の状況をある程度予測
することができ、改善が必要な場合には、適切な処置を
行うことができる利点がある。
【0045】本発明では、簡易にバチルス属細菌の状態
を肉眼、顕微鏡観察により、確認することによって、簡
易に生物処理の状況を把握することができ、日常の施設
管理において、適切な処置をとることができる。また、
学識・専門知識、検査技術のない者でも、短期のトレー
ニングによって簡単に本発明の操作を行うことができ
る。本発明の診断方法は、汚泥を単離培養することな
く、希釈しただけの汚泥を用いて簡易にバチルス属細菌
の栄養分解能の優劣等を判断することができるので、診
断にかかる日数および手間が削減され、迅速にまた簡易
に汚水の生物処理の状況の良否が判断できるが、さらに
詳しく、本発明の培地から細菌を単離して、各菌の栄養
毎の分解能や生物学的検査を行ってもよい。
【0046】
【実施例】本発明の実施例について説明する。かかる実
施例によって本発明が限定されるものではない。
【0047】実施例1 下水処理施設の曝気槽出口の流出部から採取した被検試
料20mlをホモジナイザーを用いレベル3で30秒間混
合破砕し、試験用原水とする。試験用原水から1mlを分
取し、希釈水を加えて10mlとして10倍希釈水を調製
する。更に、10倍希釈水を良く混合し、この10倍希
釈水から1mlを分取し、希釈水を加えて10mlとして1
2倍希釈水を調製する。これを順次繰り返し、1012
倍希釈水まで用意する。
【0048】これを下記のように調製した平板培地A及
び平板培地Bに、希釈倍率の高いものから低いものへ順
に、それぞれ希釈サンプル0.1ml ずつ培地上に入れる。
希釈サンプルが培地全面に拡散するように、コーンラー
ジ棒等を用いて広げる。恒温培養器内で30〜32℃の
温度で培養する。
【0049】平板培地A組成 ニュートリエントブロス(Difco社製 CM-1) 8g ぶどう糖 8g 食塩 6g 上記に蒸留水を加え1リットルにする。寒天を15g加
えて加熱(80℃)し、寒天を完全に溶解させ、20ml
づつシャーレに分取し、シャーレに広げて冷却し、平板
培地Aを作成する。
【0050】平板培地B組成 ニュートリエントブロス(Difco社製 CM-1) 8g ぶどう糖 8g 食塩 6g でんぷん 5g 酵母エキス 0.5g 上記に蒸留水を加え1リットルにする。寒天を15g加
えて加熱(80℃)し、寒天を完全に溶解させ、20ml
づつシャーレに分取し、シャーレに広げて冷却し、平板
培地Bを作成する。
【0051】平板培地A上に、培養48時間後に発生し
たコロニーは、肉眼で観察すると、色調は白色であり、
形状は円形であり、周辺は鮮明、隆起の様子は中央が盛
り上がり、光沢は艶なしで、表面は皺状であったので、
バチルス属細菌のコロニーが存在することがわかった。
【0052】バチルス属細菌以外の雑菌はノカルジア型
細菌、酵母が若干認められた。
【0053】バチルス属細菌のコロニーは、希釈倍率1
8のシャーレにおいて、15個であった。このバチル
ス属細菌のコロニーを白金耳で採菌し、顕微鏡で観察す
ると、胞子化しているもの2種、内生胞子形成している
もの5種、桿菌状のもの2種が認められた。
【0054】また、平板培地B上に、培養24時間後に
発生したコロニーのうち、バチルス属細菌であるという
簡易認定を肉眼で行い、その後、培地全体にルゴール液
(ヨードカリウム2g、ヨード1g、蒸留水80ml)を塗
布する。
【0055】その結果、バチルス属細菌であるという認
定をしたコロニー15個の内、12個が青紫色に変色
し、3個が変色しなかった。従って、でんぷん分解能を
有する菌の出現率は、20%であった。実施例1の結果
から判断すると、この下水処理施設における生物処理の
状況は良好かつ安定であると診断できる。
【0056】
【発明の効果】以上の如く、本発明によれば、生物処理
の指標細菌となるバチルス属細菌を簡易にかつ迅速に判
断し、かつその栄養分解能等の判断も容易に行うことが
でき、処理場等における日常の施設管理に利用できる汚
水の生物処理の簡易診断方法を提供することができる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】好気性で芽胞を形成する有用細菌が棲息す
    る反応槽に汚水を受け入れ、前記汚水中の成分を生物学
    的に処理する反応工程と、該反応工程から送られる汚泥
    を固液分離する固液分離工程を有する生物処理系によっ
    て汚水を生物処理する際に、前記生物処理系内の汚泥を
    サンプリングし、該汚泥を倍率を異ならせて希釈して、
    複数の被検試料を作成し、該複数の被検試料を、汚泥中
    の生物処理に関わる多種多様な微生物群が必要とする栄
    養源を配合してなる多菌種共存試料の検査に適した培地
    Aと前記培地Aにでんぷん及び酵母エキスを加えた培地
    Bにて別々に培養し、一方の培地Aから、早期にコロニ
    ーが形成されるか否かを視覚的に認定し、早期にコロニ
    ーが形成されている場合には、該コロニーが有用細菌で
    あるバチルス属細菌のコロニーであるか否かを視覚的に
    認定することにより汚泥中の有用細菌であるバチルス属
    細菌の存在を判断し、該コロニーが該バチルス属細菌の
    コロニーである場合には、胞子を形成しているか否かを
    視覚的に認定し、次いで前記培地A上の該バチルス属細
    菌のコロニー数をカウントすることによりバチルス属細
    菌の密度を計測し、他方の培地Bから、培地B上に形成
    されたコロニーのうちバチルス属細菌のコロニーについ
    て、でんぷん分解能を有する細菌の出現率を計測するこ
    とにより、汚泥中の有用細菌の単離培養を行うことなく
    汚水の生物処理状況の良否を判断することを特徴とする
    汚水の生物処理の簡易診断方法。
  2. 【請求項2】前記培地Aが、少なくとも肉エキス、ペプ
    トン、ぶどう糖及び食塩を含むことを特徴とする請求項
    1記載の汚水の生物処理の簡易診断方法。
  3. 【請求項3】前記汚水が下水又はし尿であり、バチルス
    属細菌のコロニー数をカウントして密度を計測する際
    に、コロニー数をカウントした被検試料の希釈倍率xと
    該カウント数yが下記の式を満たすことを指標として汚
    水の生物処理状況の良否を簡易に判断することを特徴と
    する請求項1又は2記載の汚水の生物処理の診断方法。 〔式〕y×10x≧105
  4. 【請求項4】でんぷん分解能を有する細菌の出現率が1
    0%以上であることを指標として汚水の生物処理状況の
    良否を簡易に判断することを特徴とする請求項1、2又
    は3記載の汚水の生物処理の診断方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001014587A1 (fr) * 1999-08-25 2001-03-01 National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology PROCEDE DE DETECTION DANS UN ENVIRONNEMENT NATUREL ET DE QUANTIFICATION D'UN MICRO-ORGANISME A FONCTION SPECIFIQUE ET DE SON GENE, DONNEES SUR UN NOUVEAU GENE A ARN 16Sr ET NOUVELLES SONDES
JP2009142786A (ja) * 2007-12-17 2009-07-02 Ina Seibutsu Kagaku Kenkyusho:Kk 有機性廃水の処理方法
JP2009214037A (ja) * 2008-03-11 2009-09-24 Toshiba Corp 水処理方法及び水処理装置

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