JPH10137915A - 鋳造用金型 - Google Patents

鋳造用金型

Info

Publication number
JPH10137915A
JPH10137915A JP30740396A JP30740396A JPH10137915A JP H10137915 A JPH10137915 A JP H10137915A JP 30740396 A JP30740396 A JP 30740396A JP 30740396 A JP30740396 A JP 30740396A JP H10137915 A JPH10137915 A JP H10137915A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
casting
core
crn
surface treatment
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP30740396A
Other languages
English (en)
Inventor
Yoshiaki Kagami
嘉晃 各務
Takanori Kamiya
孝則 神谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Aisin Corp
Original Assignee
Aisin Seiki Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Aisin Seiki Co Ltd filed Critical Aisin Seiki Co Ltd
Priority to JP30740396A priority Critical patent/JPH10137915A/ja
Publication of JPH10137915A publication Critical patent/JPH10137915A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Molds, Cores, And Manufacturing Methods Thereof (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 離型抵抗を大幅に低減することができ,寸法
安定性に優れかつ安価な鋳造用金型を提供すること。 【解決手段】 溶融金属を注入するためのキャビティを
有する金属製の鋳造用金型において,キャビティの内壁
にはCrNよりなる表面処理膜2を形成してある。表面
処理膜はホローカソード式イオンプレーティングにより
形成してあることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,例えばダイカスト用金型等の鋳
造用金型,特に離型性に優れる鋳造用金型に関する。
【0002】
【従来技術】例えばダイカスト鋳造においては,鋳物を
金型から離型する際に生じる抵抗力を低減するために,
潤滑成分を含んだ離型剤を予め金型表面に塗布してい
る。しかし,離型剤の潤滑効果は,その塗布の仕方等に
よって変動しやすい。そのため,離型剤の潤滑効果を十
分に発揮できなかった場合には,鋳物にカジリが生じ,
鋳物の面粗度が悪化してしまう。
【0003】このような不具合を防止するため,従来
は,鋳造用金型からの鋳物の離型性を向上させるため,
いわゆる抜勾配(鋳物の引き抜き方向に向かって所望す
る形状よりも拡開させた形状にした場合のその拡開角度
をいう)を大きくとる対策を講じていた。しかしなが
ら,この抜勾配を大きくするためには,得ようとする鋳
物形状にかかわらず金型形状を変更する必要がある。そ
のため,最終的に得ようとする製品の形状と鋳物形状と
の相違点が大きくなり,切削等の後加工により大幅に形
状を修正する必要があった。
【0004】これに対し,鋳造用金型自体に潤滑効果を
負荷して上記抜勾配の減少を図る技術として,特開平5
−7983号公報に示された鋳造用金型が提案されてい
る。この鋳造用金型は,金型の構成材料としてタングス
テン合金を用いたことに最大の特徴がある。そして,鋳
造用金型へ溶湯を注入した際に,溶湯の熱によって表面
に酸化タングステン粉末を析出させる。この酸化タング
ステン粉末が固体潤滑剤として作用し,鋳物の離型抵抗
を大幅に減少させることができる。
【0005】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の鋳
造用金型においては,次の問題がある。即ち,上記固体
潤滑剤として作用する酸化タングステンは,鋳造用金型
温度の変動等によりその析出反応が不安定となり,安定
的に均一に析出させることが困難である。
【0006】また,酸化タングステン粒子が析出した場
合には,徐々に金型形状が変化していき,寸法安定性に
欠ける。さらに,金型をタングステン合金により作製す
るため,金型コストが高くなり,大型製品への適用が困
難となる。
【0007】本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてな
されたもので,離型抵抗を大幅に低減することができ,
寸法安定性に優れかつ安価な鋳造用金型を提供しようと
するものである。
【0008】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,溶融金属を注入
するためのキャビティを有する金属製の鋳造用金型にお
いて,上記キャビティの内壁にはCrNよりなる表面処
理膜を形成してあることを特徴とする鋳造用金型にあ
る。
【0009】本発明において最も注目すべきことは,上
記キャビティの内壁にはCrN(クロムナイトライド)
よりなる表面処理膜を形成してあることである。即ち,
後述する種々の実験結果を基に,多数存在する表面処理
用材質の中から,鋳造用金型への表面処理膜としてCr
Nを選択したことである。
【0010】この表面処理膜の厚みは5〜10μmであ
ることが好ましい。5μm未満の場合には膜特性が低下
するという問題があり,一方,10μmを超える場合に
は膜の剥離を生じやすいという問題がある。
【0011】また,CrNよりなる表面処理膜と母材と
の間には,他の材質の膜を介在させてもよい。例えば,
CrNの形成方法によっては,母材上にCr膜,Cr2
N膜が順次形成される場合があるが,少なくとも最表面
の表面処理膜がCrNにより形成されていればよい。
【0012】なお,上記鋳造用金型とは,中空部を有す
る鋳物を鋳造する際に用いる中子をも含む概念である。
また,上記表面処理膜は,鋳物形状等に応じて,キャビ
ティの内壁全体に設けてもよいし,例えば中子等の一部
分だけに設けてもよい。
【0013】次に,本発明における作用につき説明す
る。本発明においては,鋳造用金型のキャビティの内壁
にはCrNよりなる表面処理膜を形成してある。このC
rNの表面処理膜は,後述する実施形態例に示すごと
く,鋳物材料の付着,堆積を従来の鋳造用金型に比べて
大幅に低減することができる。さらに,付着した鋳物材
料の剥離強度を他の表面処理膜等に比べて低くすること
ができる。また,表面処理膜の摩擦係数μも従来の金型
に比べて大幅に低下する。
【0014】そのため,本発明の鋳造用金型から鋳物を
離型する際の引抜力は,従来の鋳造用金型及び他の表面
処理品に比べて大幅に低くなる。更に,得られる鋳物の
表面は,カジリを生じることがなく,良好な面粗度状態
を確保することができる。
【0015】それ故,金型形状の設計において,従来の
ような離型性を補うための大きな抜勾配を設ける必要が
なく,鋳物形状を製品形状に近づけて後加工を省略する
ことも可能となる。また,従来大量に使用していた離型
剤の塗布量も大幅に減少させることができ,鋳物の製造
コストの低減を図ることもできる。
【0016】また,本発明においては,上記CrNの表
面処理膜を形成することにより上記優れた離型性を発揮
させることができる。そのため,金型の母材材質として
は,例えば,従来と同様に通常の工具鋼等を適用するこ
とができる。それ故,上記の優れた特性を有する鋳造用
金型を,安価に製造することができる。
【0017】次に,請求項2の発明のように,上記表面
処理膜はホローカソード式イオンプレーティングにより
形成してあることが好ましい。これにより,平滑で緻密
な優れた表面処理膜を容易に形成することができる。こ
こで,ホローカソード式イオンプレーティングは,いわ
ゆるPVD法(物理的プロセスにおける気相被覆法)の
一種であり,特にホローカソード式のイオンプレーティ
ング装置を用いて行う表面処理法をいう。
【0018】また,請求項3の発明のように,上記キャ
ビティの抜勾配は0.2度以下であることが好ましい。
これにより,金型形状による鋳物形状への制約を大幅に
減少させることができ,鋳物の後加工を省略することも
できる。それ故,鋳造製品のいわゆるニア・ネット・シ
ェイプ化を図ることができ,製造コストの低減に寄与す
ることができる。尚,抜勾配の下限値は,金型の熱膨張
の関係から0.04度であることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
実施形態例1 本発明の実施形態例にかかる鋳造用金型につき,図1〜
図5を用いて説明する。まず,本例の鋳造用金型により
得ようとする鋳物7は,図3,図4に示すごとく,左右
に貫通する貫通穴710を有する円筒状の本体部71
と,その上方に突設した内腔720を有する突出部72
とよりなる。
【0020】本例の鋳造用金型1は,図1に示すごと
く,上記鋳物7をダイカスト法により製造するダイカス
ト用金型であり,溶融金属(溶湯)を注入するためのキ
ャビティ19を有する金属製の金型である。この鋳造用
金型1は,外形形状を形成するための左右一対の金型1
1,12と,上記鋳物7の突出部72の内腔720(図
3)を形成するための中子13と本体部71の貫通穴7
10を形成するための中子14とより構成されている。
【0021】また,鋳造用金型1には,溶湯を加圧しな
がらキャビティ19内に注入するためのプランジャ17
がゲート18に連通して設けられている。プランジャ1
7は,図示しない油圧シリンダに連結され,スリーブ1
71内に摺動可能に配設されている。また,鋳造用金型
1には,キャビティ19内の溶湯の温度を随時検出する
ための温度センサ15と,溶湯圧力を随時検出するため
の圧力センサ16も配設されている。符号151は温度
センサの出力値を外部に伝える導線である。
【0022】そして,本例においては,図2に示すごと
く,キャビティ19の内壁を形成する一部分である上記
中子13の表面にCrNよりなる表面処理膜2を形成し
てある。中子13は,図1,図2に示すごとく,これを
抜き差しするための油圧シリンダにロッド18(図1)
を介して連結される頭部131と,実際に鋳物7の内腔
720を形成するための先端部132とより構成されて
いる。また,中子13を接続するロッド18には後述す
る中子13の引抜力を測定するためのロードセル181
を配設してある。
【0023】また,図2に示すごとく,中子13の先端
部132の外周側表面には,次のようにホローカソード
式イオンプレーティングによりCrNの表面処理膜2を
形成した。なお,中子13の母材139(図2)として
は,材質がJIS SKD61(焼入焼戻材),硬度が
HRC43〜46,面粗度がRz1.0〜3.0μmの
ものを用いた。
【0024】まず,中子13を,前処理として,温度8
0℃のトリクレンにより10分間洗浄し,次いでアルコ
ールによる超音波洗浄を常温で15分間行い,さらに真
空洗浄(イオンボンバードメント)を行った。真空洗浄
は,プラズマガン出力40V×40A,バイアス電圧4
00V×20分の条件により行った。
【0025】次に,本処理として以下の条件によりホロ
ーカソード式イオンプレーティングを行った。 ベース真空度;2.0×10-5(Torr), 処理真空度;6.2×10-4(Torr), プラズマガン出力;55V×170A, キャリアガス流量(Ar);20cc/分, 反応ガス流量(N2 );70cc/分,
【0026】上記の処理により中子13の表面に得られ
た表面処理膜2は以下のような状態となった。 膜厚;8〜10μm(金属Cr膜,Cr2 N膜を含
む), 硬度,Hv(10g);1700〜1900, 膜組成;母材側から2μm厚みの金属Cr膜,3〜4μ
m厚みのCr2 N膜,3〜4μm厚みのCrN膜を順次
積層, 表面粗度,Rz;1.0〜3.0μm(母材と同等),
【0027】次に,上記のごとき表面処理膜2を施した
中子13を有する鋳造用金型1を用いて実際に鋳物7を
作製した。そして,図5に示すごとく,中子13を引き
抜いた後の鋳物7における突出部72の内腔720の内
表面にカジリ等の発生があるか否か等の外観状態を観察
した。また,比較のために,表面処理膜を形成していな
い母材(SKD61)のままの中子を用いて同様の観察
を行った。なお,離型剤は一切使用しなかった。また,
いずれの中子も抜勾配は0.2度とした。
【0028】また,ダイカスト条件は,型締力1.3M
N,溶湯温度923K,鋳造圧力49MPa,ゲート速
度30m/秒とした。また,使用した鋳物材料は,AD
C12(ダイカスト用アルミニウム合金)である。
【0029】外観観察の結果,図5(a)に示すごと
く,CrNの表面処理膜2を施した中子13を用いた場
合には,鋳物7の内腔720の内表面に殆どカジリが発
生せず,非常に良好であった。一方,図5(b)に示す
ごとく,中子に表面処理を何ら施していない場合には,
激しいカジリ99が発生した。
【0030】また,CrNの表面処理膜2を施した中子
13の表面には,引き抜き後に材料の付着が少なく,一
方,表面処理無しの中子には引き抜き後に多量の鋳物材
料が付着していることも観察された。このことは,中子
の引き抜き作業が,CrNの表面処理膜を設けた場合の
方が,設けない場合に比べてスムーズに行われたことを
示している。
【0031】以上のことから,金型の表面にCrNの表
面処理膜2を設けることにより,金型自体に優れた潤滑
効果が得られることがわかる。この効果をさらに定量的
に評価すべく,以下の実施形態例2〜7において,種々
の試験を行った。
【0032】実施形態例2 本例は,表1及び図6に示すごとく,実施形態例1に示
した鋳造用金型1において,CrN及びそれ以外の多数
の表面処理材により表面処理膜を形成した種々の中子を
準備し,その離型性を評価した。準備した中子の表面処
理の種類を表1に示す。表1には,処理プロセス,表面
処理膜の材質,膜厚,面粗度を示している。
【0033】次に,これら各種の表面処理膜を施した中
子を用いて実際に鋳物7を作製し,中子の引抜力と,得
られた鋳物7の内腔720の面粗度とを測定し,離型性
の評価を行った。鋳造用金型としては,上記実施形態例
1の鋳造用金型1の中子13を上記各種表面処理した中
子に代えたものを用いた。各中子は,全て抜勾配0.2
とした。また,離型剤は一切使用しなかった。その他
は,実施形態例1と同様とした。
【0034】中子引抜力と面粗度の測定結果を図6に示
す。同図は,横軸に内腔72の内表面の面粗度を,縦軸
に中子引抜力をとった。同図より知られるごとく,全体
的にみて,鋳物の面粗度と中子引抜力との間には,正の
相関関係があることがわかる。即ち,中子引抜力が大き
いほど鋳物にカジリ等が発生して面粗度が悪化すること
がわかる。
【0035】次に,同図より知られることは,評価した
各種表面処理は,大まかに3つのグループに分けること
ができることである。即ち,Aグループに属する表面処
理膜は,中子引抜力を小さくすることができ,また鋳物
の表面状態を面粗度が小さくかつカジリの少ない平滑で
良好な状態にすることができる。このことは,Aグルー
プの場合には,一般的に非常に硬質で緻密な膜を設ける
ことができ,また,表面処理膜の剥離も殆ど生じないか
らであると考えられる。この剥離については,鋳物7の
上記内腔720をEDX分析することにより,全く生じ
ていないことが確認された。
【0036】また,Bグループに属する表面処理膜は,
Aグループよりも中子への鋳物材料(ADC12)の付
着が多くなり,また中子引抜力の増加,面粗度の悪化を
引き起こした。このことは,Bグループの場合には,A
グループと同様に膜の剥離は生じないが,膜の緻密性が
劣るために鋳物材料の中子への付着がAグループより多
くなるためであると考えられる。
【0037】また,Cグループに属する表面処理膜は,
中子引抜力が非常に大きくなり,また鋳物の面粗度が悪
化すると共に広い範囲にカジリを生じた。また,表面処
理膜自体がモザイク状に剥離した。これは,鋳物の内腔
をEDX分析することにより確認された。
【0038】このように中子引抜力の増加及び面粗度の
悪化が激しくなったことは,Cグループの場合には,表
面処理膜の緻密性が十分でないため鋳物材料が中子に付
着しやすいことと,表面処理膜自体の母材への密着力も
不足していることに起因すると考えられる。即ち,中子
への鋳物材料の付着と表面処理膜の剥離とが,中子を引
き抜く際の強いアンカー効果を発揮させ,鋳物の内腔に
広範囲にカジリを発生させると共に中子引抜力の増大を
来したと考えられる。
【0039】以上の結果から,鋳造用金型への表面処理
膜としては,Aグループに属する表面処理が適している
ことがわかる。次に,Aグループ内において実験結果を
比較すると,特にCrNのPVD処理(ホローカソード
式イオンプレーティング)による表面処理膜が,最も中
子引抜力が小さく,また鋳物の面粗度も小さく表面状態
が平滑で良好であることがわかる。したがって,本例に
おいては,CrNの表面処理膜(E2)が鋳造用金型に
おいて非常に優れた潤滑効果を発揮し,離型性に優れる
ことがわかる。
【0040】
【表1】
【0041】実施形態例3 本例は,図7に示すごとく,実施形態例2において鋳造
用金型(中子)の表面処理膜として優れているAグルー
プの中から,CrN(図6のE2)とTiN(図6のC
21)とを選び,鋳物温度に対する中子引抜力を詳細に
測定した。なお,比較のため,表面処理膜を施していな
いSKD61の母材のままの中子も準備して同様に測定
した。以下,説明の便宜のため,適宜,CrNの表面処
理膜を施した中子を「CrN品」と,TiNの表面処理
膜を施した中子を「TiN品」と,表面処理膜を施して
いない中子を「未処理品」という。
【0042】また,鋳物温度は,523〜643Kの範
囲とした。なお,抜勾配は0.2度とし,離型剤は一切
使用しなかった。その他は実施形態例1,2と同様にし
た。測定結果を図7に示す。同図は,横軸に鋳物温度
を,縦軸に中子の引抜力を取った。
【0043】同図より知られるごとく,未処理品(C3
2)は,鋳物温度が低いほど中子引抜力が著しく高くな
るという傾向を示した。これに対し,CrN品(E3)
とTiN品(C31)の場合には,いずれも全体的に低
い中子引抜力となり殆ど温度依存性が見られない良好な
結果となった。特に,CrN品(E3)の場合には,T
iN品(C31)の場合よりもさらに低い引抜力を示
し,非常に優れた離型性を示した。
【0044】実施形態例4 本例は,図8に示すごとく,実施形態例3と同様にCr
N品,TiN品,未処理品の3種類の中子を準備し,溶
湯圧力に対する中子の引抜力を詳細に測定した。溶湯圧
力は36〜53MPaの範囲とした。また,抜勾配は
0.2度とし,離型剤は一切使用しなかった。その他は
実施形態例1,2と同様にした。
【0045】測定結果を図8に示す。同図は,横軸に溶
湯圧力を,縦軸に中子の引抜力をとった。同図より知ら
れるごとく,未処理品(C42)の場合は,溶湯圧力の
増加に伴って中子引抜力が著しく高くなった。一方,C
rN品(E4)とTiN品(C41)の場合には,いず
れも全体的に低い中子引抜力となり,良好な結果となっ
た。
【0046】実施形態例5 本例は,図9,図10に示すごとく,CrN品,TiN
品及び未処理品の3種類の中子を準備し,上記実施形態
例3,4において評価した鋳物温度及び溶湯圧力をほぼ
一定条件に固定して,得られた鋳物の面粗度及び中子の
摩擦係数μを求めた。鋳物温度は,523〜623Kの
範囲内とし,溶湯圧力は40〜50MPaの範囲内に収
まるようにそれぞれ制御した。その他は,実施形態例
1,2と同様である。
【0047】まず,鋳物の面粗度の測定は,いずれの場
合も11〜15ショット目の鋳造品を用い,その内腔7
20(図4)の内表面において行った。測定結果を図9
に示す。同図は,横軸に中子の表面処理膜の種類を,縦
軸に鋳物の面粗度をとった。同図より知られるごとく,
CrN品(E51)の場合が最も面粗度が低く,次い
で,TiN品(C51),未処理品(C52)の順に面
粗度が大きくなった。
【0048】次に,中子の摩擦係数μを求めた。この摩
擦係数μは,いわゆる金子の式により求めた。その測定
結果を図10に示す。同図は,横軸に中子の表面処理膜
の種類を,縦軸に中子の摩擦係数μをとった。同図より
知られるごとく,未処理品(C54)に比べて,TiN
品(C53)の方が格段に摩擦係数μが減少している
が,さらにCrN品(E51)の方が摩擦係数μが減少
し,非常に離型性の向上に有利であることがわかる。
【0049】以上の結果から,TiNよりもCrNを表
面処理膜とした方が鋳造用金型の表面処理としては有利
であることが明らかとなった。即ち,実施形態例3,4
の結果においては,表面処理膜を施さない場合に比べ
て,CrN品又はTiN品の場合には格段に中子引抜力
が低下することが分かったが,CrNとTiNとの効果
の差が余り明確ではなかった。これに対し,本例におい
ては,実際に得られる鋳物の面粗度を評価した結果,T
iN品よりもCrN品の場合の方がさらに優れた離型性
を有していることが明確となった。また,得られる鋳物
の面粗度は摩擦係数μと相関があることもわかった。
【0050】実施形態例6 本例は,図11,図12に示すごとく,前記の各実施形
態例によって明確になったCrN表面処理膜の優位性を
さらに明確にするため,中子への鋳物材料(ADC1
2)の付着,堆積の特性を調査した。使用した中子は実
施形態例3〜5と同様に,CrN品,TiN品,未処理
品の3種類である。また,その他の鋳造条件等は実施形
態例1,2と同様とした。
【0051】そして,中子への鋳物材料の付着,堆積の
評価は,鋳造ショットに対する鋳物材料の付着面積率
(付着面積率),及び単位面積当たりの鋳物材料の付着
量(付着量)の推移を測定することにより行った。測定
結果を図11に示す。同図は,横軸に鋳造ショット数
を,左縦軸に付着面積率を,右横軸に付着量を,それぞ
れとった。そして,付着面積率を折れ線E61,C6
1,C62により,付着量を棒グラフE62,C63,
C64によりそれぞれ示した。なお,付着量の測定は,
鋳造10ショット以降に行った。
【0052】同図より知られるごとく,付着面積は,い
ずれの中子(E61,C61,C62)においても10
ショット後には中子表面積のほぼ90%の面積となっ
た。一方,鋳物材料の単位面積当たりの付着量は,いず
れも鋳造ショットの増加に伴い増加したが,未処理品
(C64)及びTiN品(C63)に比べ,CrN品
(E62)の増加割合が非常に小さい結果となった。そ
して,鋳造30ショット後においては,CrN品が他に
比べて,中子への付着面積,付着量ともに最も少ない結
果となった。
【0053】次に,図12に示すごとく,中子に堆積し
た鋳物材料の付着力を測定すべく,簡易的に剥離試験を
行った。剥離試験は,中子に付着した鋳物材料の表面に
耐熱性接着剤を塗布しておき,次いで中子を引抜時と同
等の573Kの温度に加熱し,次いで上記接着剤を剥が
す際の応力を測定して,これを付着力とした。
【0054】測定結果を図12に示す。同図は,横軸に
中子の表面処理膜の種類を,縦軸に鋳物材料の中子への
付着力をとった。同図より知られるごとく,未処理品
(C66)に比べてTiN品(C65)の方が鋳物材料
の付着力が小さく,更にCrN品(E63)の鋳物材料
付着力が小さい結果となった。
【0055】このように,本例においては,CrN品
は,図11に示すごとく,他の試験品に比べて鋳物材料
が最も付着し易く,かつ図12に示すごとく,付着した
鋳物材料が最も剥離されやすいことがわかった。このこ
とは,CrNの表面処理膜は,表面処理を施さない場合
及びTiNの表面処理を施した場合よりも,鋳物のカジ
リ発生の防止及び離型性の向上に極めて有利であること
を示している。
【0056】実施形態例7 本例は,図13,図14に示すごとく,CrNの表面処
理膜の有効性を耐久性の面から評価すべく,鋳造を10
00ショットまで行って,中子引抜力と鋳物の面粗度と
を測定した。また,本例において用いた中子は,実施形
態例1〜6の中子に代えて,先端部132(図2)の長
さを約2倍の135mmにしたものを用いた。その他
は,実施形態例1,2と同様にした。
【0057】まず,鋳造ショット数に対する中子引抜力
の測定結果を図13に示す。同図は,横軸に鋳造ショッ
ト数,縦軸に中子引抜力をとった。同図より知られるご
とく,未処理品(C72)とTiN品(C71)とは,
いずれも100ショット以降に急激に中子引抜力が増加
した。一方,CrN品(E71)は,100ショットま
では徐々に中子引抜力が増加したが,100ショット目
をピークにしてそれ以上増加しなかった。
【0058】この結果は,前述の実施形態例6に示し
た,鋳物材料の中子への付着のし易さ及び鋳物材料の剥
離強度の関係から,CrN品は表面に付着する鋳物材料
の量を一定量以下に維持することができるのに対し,未
処理品及びTiN品は,鋳物材料の付着が増加の一途を
辿るということを示していると考えられる。
【0059】次に,鋳造ショットに対する鋳物の内腔7
20(図4)の面粗度の測定結果を図14に示す。同図
は,横軸に鋳造ショット数,縦軸に鋳物の面粗度をとっ
た。同図より知られるごとく,中子引抜力の場合と同様
に,未処理品(C74)とTiN品(C73)とは,い
ずれも100ショット以降に急激に面粗度が悪化した。
一方,CrN品(E72)は,最初から徐々に面粗度が
低下し,鋳造ショットの回数の増加に伴ってますます面
粗度が低下していき,鋳造ショットが増加するほど良好
となった。
【0060】この結果は,未処理品及びTiN品は,中
子への鋳物材料の付着量の増加によって中子自体の面粗
度も徐々に増加するが,一方CrN品の場合には,鋳物
材料の付着が一定量以下に維持される結果その付着によ
る面粗度の増加は抑制され,逆に摩耗による表面処理膜
自体の面粗度の低下が全体の面粗度に現れたのではない
かと考えられる。
【0061】以上の各実施形態例の結果から,数ある表
面処理材の内,特にCrNが鋳造用金型の離型性向上に
極めて有効であることがわかった。
【0062】
【発明の効果】上記のごとく,本発明によれば,離型抵
抗を大幅に低減することができ,寸法安定性に優れかつ
安価な鋳造用金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1の鋳造用金型の全体構成を示す縦
断面から見た説明図。
【図2】実施形態例1における,中子の一部切欠き断面
図。
【図3】実施形態例1にいて鋳造した鋳物の斜視図。
【図4】図3のA−A線矢視断面図。
【図5】実施形態例1における,(a)CrN品,
(b)未処理品の中子を用いた場合の鋳物の表面状態を
示す説明図。
【図6】実施形態例2における,鋳物面粗度と中子引抜
力との関係を示す説明図。
【図7】実施形態例3における,鋳物温度と中子引抜力
との関係を示す説明図。
【図8】実施形態例4における,溶湯圧力と中子引抜力
との関係を示す説明図。
【図9】実施形態例5における,各表面処理膜と鋳物面
粗度との関係を示す説明図。
【図10】実施形態例5における,各表面処理膜と中子
の摩擦係数μとの関係を示す説明図。
【図11】実施形態例6における,鋳造ショット数に対
する,鋳物材料の付着面積率と付着量との関係を示す説
明図。
【図12】実施形態例6における,各表面処理膜と鋳物
材料の付着力との関係を示す説明図。
【図13】実施形態例7における,鋳造ショット数と中
子引抜力との関係を示す説明図。
【図14】実施形態例7における,鋳造ショット数と鋳
物面粗度との関係を示す説明図。
【符号の説明】
1...鋳造用金型, 13...中子, 2...表面処理膜,

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶融金属を注入するためのキャビティを
    有する金属製の鋳造用金型において,上記キャビティの
    内壁にはCrNよりなる表面処理膜を形成してあること
    を特徴とする鋳造用金型。
  2. 【請求項2】 請求項1において,上記表面処理膜はホ
    ローカソード式イオンプレーティングにより形成してあ
    ることを特徴とする鋳造用金型。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において,上記キャビテ
    ィの抜勾配は0.2度以下であることを特徴とする鋳造
    用金型。
JP30740396A 1996-11-01 1996-11-01 鋳造用金型 Pending JPH10137915A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP30740396A JPH10137915A (ja) 1996-11-01 1996-11-01 鋳造用金型

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP30740396A JPH10137915A (ja) 1996-11-01 1996-11-01 鋳造用金型

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10137915A true JPH10137915A (ja) 1998-05-26

Family

ID=17968640

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP30740396A Pending JPH10137915A (ja) 1996-11-01 1996-11-01 鋳造用金型

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10137915A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003010958A (ja) * 2001-06-28 2003-01-15 Mitsui Mining & Smelting Co Ltd ダイカスト鋳造用金型、ダイカスト鋳造方法及び鋳造製品
EP1626104A1 (en) 2004-08-10 2006-02-15 Hitachi Metals, Ltd. Member with coating layers used for casting
JP2008188608A (ja) * 2007-02-02 2008-08-21 Daido Steel Co Ltd ダイカスト金型およびその表面処理方法
US7744056B2 (en) 2006-09-27 2010-06-29 Hitachi Metals, Ltd. Hard-material-coated member excellent in durability
JP2012183548A (ja) * 2011-03-04 2012-09-27 Daido Steel Co Ltd ダイカスト用金型

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003010958A (ja) * 2001-06-28 2003-01-15 Mitsui Mining & Smelting Co Ltd ダイカスト鋳造用金型、ダイカスト鋳造方法及び鋳造製品
EP1626104A1 (en) 2004-08-10 2006-02-15 Hitachi Metals, Ltd. Member with coating layers used for casting
US7159640B2 (en) 2004-08-10 2007-01-09 Hitachi Metals, Ltd. Member used for casting
US7744056B2 (en) 2006-09-27 2010-06-29 Hitachi Metals, Ltd. Hard-material-coated member excellent in durability
JP2008188608A (ja) * 2007-02-02 2008-08-21 Daido Steel Co Ltd ダイカスト金型およびその表面処理方法
JP2012183548A (ja) * 2011-03-04 2012-09-27 Daido Steel Co Ltd ダイカスト用金型

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8900340B2 (en) Tubular target and production method
US20140044944A1 (en) Coating material for aluminum die casting mold and method of manufacturing the coating material
EP1626104B1 (en) Member with coating layers used for casting
EP2072636A2 (en) Method of making a coated cutting tool, and cutting tools thereof
EP0774525B1 (en) Copper alloy mold for casting aluminium or aluminium alloy
KR20070010024A (ko) 주조기계 부품용 금속재료 및 알루미늄 용탕 접촉부재와 그제조방법
HU219541B (hu) Alumíniumöntvény, eljárás annak előállítására, valamint készülék az eljárás foganatosítására
JPH10137915A (ja) 鋳造用金型
CA2298278A1 (en) Composite film and process for its manufacture
JP4481463B2 (ja) 高硬度耐食性合金部材およびその製造方法
EP2952609A1 (en) Hard coating film having adhesion resistance to soft metal
JP2823169B2 (ja) コイルばねとその製造方法
JP2005046975A (ja) バナジウム系被覆工具
JP4883400B2 (ja) 鋳造用部材
EP0139732B1 (en) Hard layer formed by incorporating nitrogen into mo or w metal and method for obtaining this layer
JP2012183548A (ja) ダイカスト用金型
US20220072605A1 (en) Process for making a composite liner for cold chamber die casting application
JP3638332B2 (ja) 被覆硬質合金
WO2019039225A1 (ja) アルミダイカスト金型用部品
CZ415698A3 (cs) Způsob výroby tělesa kokily a těleso kokily
JP2619231B2 (ja) 真空装置
JP2767066B2 (ja) 溶接性とリン酸亜鉛処理性に優れた表面処理アルミニウム板
CN117587405B (zh) 一种压铸模具用防铝液黏附抗冲蚀复合涂层及其制备方法
JP2009101385A (ja) ダイカスト用金型及びその製造方法
JP7244719B2 (ja) 硬度及び耐型かじり性に優れた亜鉛めっき鋼板、その製造方法