JPH10132794A - 防毒マスク用吸収缶の残存能力の評価方法 - Google Patents

防毒マスク用吸収缶の残存能力の評価方法

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JPH10132794A JP29021496A JP29021496A JPH10132794A JP H10132794 A JPH10132794 A JP H10132794A JP 29021496 A JP29021496 A JP 29021496A JP 29021496 A JP29021496 A JP 29021496A JP H10132794 A JPH10132794 A JP H10132794A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 より正確に「破過時間残存率」を求める方法
を提供すること。 【解決手段】 被試験物である吸収缶中に試験用有機物
質(以下、試験ガスという)を含む気体を通気させ、透
過気体中の前記試験ガスの濃度を測定することで、前記
吸収缶の残存吸収能力を測定する方法であって、試験ガ
スとして、被試験物である吸収缶が使用された環境中に
存在する有機物質と同等またはそれ以下の沸点を有する
有機物質を用いる方法。被試験物である吸収缶中に試験
ガスを含む気体を通気させ、透過気体中の前記試験ガス
の濃度を測定することで、前記吸収缶の残存吸収能力を
測定する方法であって、試験ガスとして、沸点が70℃
以下の有機物質を用いる方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、防毒マスク用の活
性炭等を充填した吸収缶の残存能力を評価する新規の方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】ガス状有機物質が存在する環境中では、
作業者の健康を損なわないように、活性炭等を充填した
吸収缶を備えた防毒マスクが使用される。吸収缶の流入
口から流入するガス状有機物質は、缶内を通過する間に
徐々に吸収剤に捕えられ、ついには清浄な空気になって
吸収缶を出ていく。従って、缶内を流れている空気中の
ガス状有機物質濃度は、気流入口近くの層ほど濃く、気
流出口に向かって薄くなり、ついには濃度ゼロとなる面
が存在することになる。この面は、ガス状有機物質が流
入し続けるにつれて徐々に移動し、吸収剤の気流出口に
達するとガス状有機物質の漏れがおきてくる。吸収缶の
気流出口における対象ガス濃度が、最高許容透過濃度を
超えるようになる現象を「破過」という。また、被吸収
ガスを含む空気を、吸収缶に通じ初めてから破過が見ら
れるまでの時間を「破過時間」という。防毒マスク用吸
収缶が、ある作業環境中でどの位の時間使用できるか、
即ち、「破過時間」までの残存時間は、作業者の健康や
生命に係わることであるため、極めて重要な情報の一つ
である。
【0003】環境中のガスが1種類に特定されていて、
かつその濃度がほぼ一定であるならば、吸収缶の大略の
残存能力は、そのガスに対して事前に行った試験によっ
て得られた環境中のガス濃度における破過時間から、そ
れまでに吸収缶を使用した時間を差し引くことによって
推測することができる。しかしながら、通常の作業環境
中(例えば、塗装作業現場など)では、複数のガス状有
機物質が混在している場合が多く、そのガス濃度も空間
的や時間的に変動することがほとんどである。この場
合、吸収缶の残存能力を、上述のような一種類のガスに
よる事前の試験から推定することは、事実上不可能であ
る。
【0004】そこで、実際に使用されている吸収缶の残
存能力を、より正確に求めようとする方法のひとつとし
て、「質量測定法」がある。質量測定法は、使用開始前
及び使用中の吸収缶の質量を測定し、その増量を事前の
試験による破過時の増量値と対比することによって残存
能力を評価する方法である。この方法は、非破壊検査で
あるため、検査によって残存能力が有ると評価された場
合は、引き続いてその吸収缶を使用できるという大きな
利点があるが、次のような弱点も存在する。 1)ガスの種類によって分子量が異なるため、ガスの種
類が複数又は不明の場合は、吸収缶の質量増加分から、
吸収缶の残存能力を導くことができない。 2)吸着物質は、時間の経過に伴い、吸収缶内で拡散移
動することが知られており、吸着量(吸収缶の質量変
化)が小さくても、残存能力がきわめて低下しているお
それがある。 3)環境中に存在する水蒸気の吸着による質量増加分も
あるため、これによる能力低下を考慮する必要がある。
これらの理由から、質量測定法による残存能力の評価
は、あまり精度の高いものとは言えない。しかも、条件
をきちんと把握していないと、残存能力を誤って測定し
てしまうおそれもある。
【0005】質量測定法以外の方法として、ある特定の
ガス状物質を用いて求めた「未使用吸収缶の破過時間T
0 」と「使用した吸収缶のその後の破過に至るまでの時
間T1 」とを測定し、(T1 /T0 )×100(%)か
ら使用を止めた時点での吸収缶の残存能力を評価する方
法がある。この割合を、本明細書では「破過時間残存
率」という。例えば、あるガスに対する未使用吸収缶の
破過時間が100分で、使用した吸収缶のその後の破過
時間が20分である場合、その吸収缶の破過時間残存率
は、20%〔(20/100)×100〕と評価され
る。この方法は、ガスを用いた試験であることから理解
し易いため、従来から一般に用いられてきた方法であ
る。
【0006】吸収物質の不明な吸収缶に対して、「破過
時間残存率」を求める場合、従来は防毒マスク用吸収缶
(有機ガス用)の国家検定の試験条件(通気温度:20
±2℃、通気湿度、50±5%RH、試験ガス:シクロ
ヘキサン)が一般に用いられて来た。ところが、使用し
た吸収缶に、試験ガスであるシクロヘキサン含有空気を
通気すると、シクロヘキサンが吸収され、吸収缶に前も
って吸収されていたシクロヘキサン以外の物質が、透過
側で検出されることがある。このことは、シクロヘキサ
ンに対して破過に至る前に、他の吸収されていた物質が
漏出する危険性があることを示すものである。従って、
このような条件下でシクロヘキサンにより求めた「破過
時間残存率」からは、吸収缶の残存能力を適切に評価す
ることはできない。
【0007】そこで、本発明の目的は、より正確に「破
過時間残存率」を求める方法を提供することにある。即
ち、吸収缶に吸収されている物質の種類が不明であって
も、試験ガスの通気による漏洩を防ぐことによって、よ
り正確な「破過時間残存率」が求められ、その残存時間
を適切に評価することができる方法を提供することであ
る。
【0008】本発明者らは、上記現象が、吸着されてい
た物質の沸点が、シクロヘキサンのそれ(81℃)より
低い場合に見られること、さらには、吸着されていた物
質がシクロヘキサンと置換することで、吸収缶から排出
されることに起因すると推定し、種々の検討をした結
果、本発明に到達した。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下のとおり
である。 〔請求項1〕 被試験物である吸収缶中に試験ガスを含
む気体を通気させ、透過気体中の前記試験ガスの濃度を
測定することで、前記吸収缶の残存吸収能力を測定する
方法であって、試験ガスとして、被試験物である吸収缶
が使用された環境中に存在するガス状有機物質と同等ま
たはそれ以下の沸点を有するガス状有機物質を用いるこ
とを特徴とする方法。 〔請求項2〕 環境中に存在する2種以上のガス状有機
物質の内、最も沸点の低い有機物質と同等またはそれ以
下の沸点を有するガス状有機物質を、前記試験ガスとし
て用いる請求項1に記載の方法。 〔請求項3〕 被試験物である吸収缶中に試験ガスを含
む気体を通気させ、透過気体中の前記試験ガスを測定す
ることで、前記吸収缶の残存吸収能力を測定する方法で
あって、試験ガスとして、沸点が70℃以下のガス状有
機物質を用いることを特徴とする方法。 〔請求項4〕 試験ガスとしてジクロルメタン(沸点4
0℃)を用いる請求項3に記載の方法。
【0010】
【発明の実施の態様】本発明の方法は、被試験物である
吸収缶中に試験ガスを含む気体を通気させ、透過気体中
の前記試験ガスの濃度を測定することで、前記吸収缶の
残存吸収能力を測定する方法である。本発明の方法で、
残存吸収能力を測定する対象である吸収缶は、活性炭の
種類や量さらには吸収缶の構造等に特に制限はない。本
発明の方法は、既存の吸収缶試験装置を利用して実施で
きる。例えば、図1に示す装置を用いて測定する場合を
例に、本発明の方法について説明する。コンプレッサー
10、ドライヤー11、ろ過筒12、温度・湿度調節槽
13を経て、所定の温度及び湿度に調節した空気を、流
量計14、15を経由して試験溶剤22を含む洗気ビン
21に導入して試験ガスを含む気体を調製する。試験ガ
スを含む気体は、再び流量計14からの空気と合流し、
被試験物である吸収缶23中を通気させる。流量計15
の流量を調節することで吸収缶23中を通気させる気体
中の試験ガスの濃度を調整する。この濃度は、測定口A
またはBからサンプリングした気体を分析することで測
定できる。吸収缶23中を透過した気体を電磁弁25で
サンプリングして、検出器で気体中のガス濃度を分析す
る。ガスの分析は、例えば、ガスクロマトグラフィーを
用いて行うことができる。吸収缶の残存吸収能力は、測
定された透過気体中の試験ガスの濃度が最高許容濃度に
達した時点を破過として「使用した吸収缶のその後の破
過に至るまでの時間」を求め、別途求めた「未使用吸収
缶の破過時間」に対する割合として算出される。
【0011】本発明の方法の特徴は、上記の方法におい
て、試験ガスとして、被試験物である吸収缶が使用され
た環境中に存在するガス状有機物質と同等またはそれ以
下の沸点を有するガス状有機物質を用いることである。
さらに、環境中に2種類以上のガス状有機物質が存在す
る場合には、それらのうちの最も沸点の低い有機物質と
同等またはそれ以下の沸点を有するガス状有機物質を前
記試験ガスとして用いる。このようにすることで、試験
ガスについて破過に至る前に、先に吸収されていた他の
物質が吸収缶から流出することなく、残存する破過時間
を求めることができ、試験対象である吸収缶の残存能力
を適切に評価することができる。一般産業で用いられる
主な有機ガスの種類と沸点をまとめたものを表1に示
す。環境中に存在する有機物質が、メチルエチルケトン
(沸点80℃)である場合、試験ガスとして沸点が80
℃以下の物質、例えば、n−ヘキサン(沸点69℃)を
選択することができる。また、環境中に存在する有機物
質が、トリクロルエチレン(沸点89〜90℃、1,2
−ジクロルエタン(沸点84℃)、メチルエチルケトン
(沸点80℃)の3種類である場合、試験ガスとして沸
点の最も低いメチルエチルケトン(沸点80℃)より沸
点が低い、例えば、四塩化炭素(沸点77℃)を選択す
ることができる。
【0012】
【表1】
【0013】また、本発明の別の態様は、被試験物であ
る吸収缶中に試験ガスを含む気体を通気させ、透過気体
中の前記試験ガスの濃度を測定することで、前記吸収缶
の残存能力を測定する方法であって、試験ガスとして、
沸点が70℃以下の有機物質を用いることを特徴とする
方法である。前記の方法では、環境中に存在するガス状
有機物質が既知である必要があるが、実際には、環境中
に存在する有機物質の種類が不明であることも多い。そ
のような場合でも、比較的低沸点である沸点70℃以下
の有機物質を試験ガスとして用いることで、試験ガスに
ついて破過に至る前に、先に吸収されていた他の物質が
吸収缶から流出することを防げるため、試験対象である
吸収缶の残存能力を適切に評価することができる。試験
ガスとしては、沸点が低いもの程、残存する破過時間を
求めることができ、例えば、沸点60℃以下の有機物質
を試験ガスとして用いることが好ましい。例えば、ジク
ロルメタン(沸点40℃)を用いることが、より好まし
い。ジクロルメタンは、安全性の点で、他の低沸点の有
機物質、例えば、エチルエーテルや二硫化炭素より優れ
ている。
【0014】なお、破過は、前述のように、「最高許容
透過濃度」を超える現象を言うが、「最高許容透過濃
度」は、対象となる物質や規範となる法規等により異な
る。「最高許容透過濃度」の例を以下の表2に示す。本
発明の方法は、「最高許容透過濃度」の値に係わらず実
施することができる。
【0015】
【表2】 注(1) シクロヘキサンは、防毒マスクの国家検定の試験
ガスである。
【0016】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに説明す
る。以下の実施例において「最高許容透過濃度」は、上
記表2の値として、破過を決定した。 (1)残存能力試験 (a)吸収物質が1成分(トルエン)の場合 図1に示す装置を用い、椰子殻活性炭を充填した吸収缶
(内径φ77.6mm,充填量41g)に、通気温度20
±2℃、通気湿度50±5%RH、通気流量30l/mi
n 、ガス濃度300ppm の試験条件で、トルエン(沸点
111℃)含有空気を通気して、破過時における吸着量
に対して100、75及び20%の吸収となるように前
処理を行った。(以下、これらの率を吸収率という。)
この吸収缶に対して、沸点の異なる3種類の有機ガスを
用いて、残存能力試験を行った。 (b)吸収物質が2成分(トルエン及びn−ヘキサン
〔沸点69℃〕)の場合上記(a)と同様の吸収缶に同
様の通気温度、湿度及び流量で、トルエン(150ppm)
及びシクロヘキサン(150ppm)の2成分を吸収缶に吸
収させて、沸点の異なる3種類の有機ガスを用いて、
(a)と同様の残存能力試験を行った。 (2)試験結果 (a)及び(b)の試験結果を表3に示す。
【0017】
【表3】
【0018】表3から、トルエンより沸点の高いクロル
ベンゼン(沸点132℃)を試験ガスとした場合の残存
能力測定値は、トルエン吸着量から得られる予想値より
明らかに長くなることが分かる。これは、トルエンとの
置換による、クロルベンゼンの過剰吸収があったためと
推測される。表3(a)から、既吸収物質であるトルエ
ン(沸点111℃)より低い沸点を有するシクロヘキサ
ン及びジクロルメタンが試験ガスの場合は、予想値に比
較的近い残存能力の評価を得ることができた。また、表
3(b)から、吸収ガスが2成分の場合には、ジクロル
メタンガスによる残存能力評価が、最も理論値に近くな
ることが分かった。上記の試験結果から、吸収物質が2
成分以上の場合でも、吸収物質の沸点より低い物質を試
験ガスに用いることによって、予想値に近い残存能力の
評価を得ることができることが証明された。
【0019】
【発明の効果】実際の作業現場(特に塗装作業現場)で
は、トルエンやキシレンなど高沸点有機溶剤だけでな
く、メタノールなどのアルコール類やアセトンなど、比
較的沸点の低い物質が存在していることが多い。これら
の低沸点物質が多く吸着している吸収缶に対しては、シ
クロヘキサンは、残存能力評価に対して、有効な試験ガ
スになり得ない。一方、ジクロルメタンより沸点が低
く、かつ作業現場で防毒マスクを必要とするガス状有機
物質は、非常に限定される。以上のことから、シクロヘ
キサンより沸点が低く、吸収物質との置換が起こりにく
いジクロルメタンを、試験ガスに用いることによって、
吸収物質が未知の場合でも、精度の高い測定値が、短時
間で得られることになる。さらに、本発明による低沸点
有機物質を試験ガスとして用いる残存能力評価方法は、
試験ガスによる吸収物質との置換がなくなるため、試験
前に吸収缶が有する残存能力を表すことができる。ま
た、有機ガスに対する吸収缶の破過時間は、沸点が低い
ほど短くなることは周知のことであるから、評価に要す
る試験時間を短縮できることについても、有効な方法と
いえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 吸収缶試験装置の説明図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 塚田 鋼二 埼玉県岩槻市谷下267 株式会社重松製作 所技術研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被試験物である吸収缶中に試験用有機物
    質(以下、試験ガスという)を含む気体を通気させ、透
    過気体中の前記試験ガスの濃度を測定することで、前記
    吸収缶の残存吸収能力を測定する方法であって、 試験ガスとして、被試験物である吸収缶が使用された環
    境中に存在する有機物質と同等またはそれ以下の沸点を
    有する有機物質を用いることを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】 環境中に存在する2種以上の有機物質の
    内、最も沸点の低い有機物質と同等またはそれ以下の沸
    点を有する有機物質を前記試験ガスとして用いる請求項
    1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 被試験物である吸収缶中に試験ガスを含
    む気体を通気させ、透過気体中の前記試験ガスの濃度を
    測定することで、前記吸収缶の残存吸収能力を測定する
    方法であって、 試験ガスとして、沸点が70℃以下の有機物質を用いる
    ことを特徴とする方法。
  4. 【請求項4】 試験ガスとしてジクロルメタン(沸点4
    0℃)を用いる請求項3に記載の方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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