JPH10130844A - 撥水性酸化シリコン皮膜、および撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法、並びに硬質撥水性酸化シリコン皮膜 - Google Patents

撥水性酸化シリコン皮膜、および撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法、並びに硬質撥水性酸化シリコン皮膜

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JPH10130844A
JPH10130844A JP6876697A JP6876697A JPH10130844A JP H10130844 A JPH10130844 A JP H10130844A JP 6876697 A JP6876697 A JP 6876697A JP 6876697 A JP6876697 A JP 6876697A JP H10130844 A JPH10130844 A JP H10130844A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 撥水性酸化シリコン皮膜を容易に、低温でか
つ母材と密着性良く製造する方法を提供する。 【解決手段】 シリコン化合物を気相中で分解反応させ
て生成したシリコン含有分解反応物と、フッ素化合物を
気相中で分解反応させて生成したフッ素含有分解反応物
と、からなり、酸化シリコンと、互いに結合したフッ素
と炭素と、を含む。また、本撥水性酸化シリコン皮膜の
製造方法は、シリコン化合物およびフッ素化合物の少な
くとも一方が酸素を含み、かつ少なくとも一方が炭素を
含むシリコン化合物およびフッ素化合物ガスをそれぞれ
調製して原料ガスとし、原料ガスに含まれるシリコン化
合物とフッ素化合物とを気相中で分解反応させ、得られ
る分解反応物を母材上に堆積させて皮膜を形成する。さ
らに、本発明の硬質撥水性酸化シリコン皮膜は、本撥水
性酸化シリコン皮膜と同じ成分をもつ撥水層と、酸化シ
リコン系化合物からなる硬質層と、からなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、撥水性、耐摩耗性
および耐擦傷性を有する撥水性酸化シリコン皮膜、およ
びその撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法、並びに硬質
撥水性酸化シリコン皮膜に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ガラス製品、樹脂製品、金属製
品、半導体製品、木材製品、繊維、建材等の表面におい
て、水などをはじくことを目的として、撥水性皮膜を形
成するなどの表面改質による撥水処理がなされている。
こうした撥水性皮膜としては、テフロンや、表面科学V
ol.14,No.9,pp540−545,1993
で開示されているフッ素含有SiO2薄膜などが知られ
ている。
【0003】テフロンは、水滴の静的接触角が108°
であり、撥水性に優れた材料であるが、耐摩耗性に劣る
という問題があった。一方、前記フッ素含有SiO2
膜は、テトラエトキシシランとフルオロアルキルシラン
等を液体状態で混合して調製されたコーティング溶液
と、ガラス基板と、を用いてゾル−ゲル法により形成さ
れ、酸化シリコンを主成分とし、フッ素を含有するもの
で、酸化シリコンを主成分とするため耐摩耗性に優れ、
かつフッ素を含有するため撥水性に優れる材料として知
られている。
【0004】しかし、このゾル−ゲル法を用いた撥水性
酸化シリコン皮膜の形成では、コーティング溶液の調製
時にエタノール等の溶媒が必要となり、また液体状態に
あるテトラエトキシシランとフルオロアルキルシランを
用いるため、揮発性の高いものでは、コーティング溶液
の濃度調節等が困難である。さらに、コーティング溶液
を表面に塗布した後において350℃以上の高温の熱処
理を必要とするため、耐熱温度の低い製品においては、
この高温の熱処理によりその品質が低下してしまうとい
う不具合があった。また、この方法では、乾燥、硬化時
における溶媒の蒸発に伴ってフッ素が皮膜の表面付近に
濃縮してしまうため、フッ素が皮膜中に均一に分散した
形態の撥水性酸化シリコン皮膜を得ることが困難であっ
た。このフッ素が表面付近に濃縮した形態の撥水性酸化
シリコン皮膜は、摩耗等によりフッ素濃縮部分が削り取
られてしまうと、撥水性が低下してしまうという不具合
がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記実情に鑑
みてなされたものであり、撥水性酸化シリコン皮膜の形
成に必要な最小限の原料からなり、かつコーティング溶
液の調製等を経ずに形成され、撥水性、耐摩耗性および
耐擦傷性に優れる撥水性酸化シリコン皮膜を提供するこ
とを目的とする。
【0006】また、撥水性酸化シリコン皮膜の形成にお
いて、コーティング溶液の調製、高温の熱処理等を必要
とせず、撥水性、耐摩耗性および耐擦傷性に優れる撥水
性酸化シリコン皮膜を容易に、低温でかつ母材と密着性
良く製造する方法を提供することを目的とする。さら
に、撥水性および耐擦傷性に優れ、とりわけ耐摩耗性に
極めて優れる硬質撥水性酸化シリコン皮膜を提供するこ
とを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、シリコン化
合物を含むシリコン化合物ガスとフッ素化合物を含むフ
ッ素化合物ガスとを用い、気相中でシリコン化合物およ
びフッ素化合物を分解することにより、シリコン含有分
解反応物とフッ素含有分解反応物の少なくとも一方が酸
素を含み、また少なくとも一方が炭素を含む形態で、そ
れぞれシリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物
を生成した。そして、これらのシリコン含有分解物とフ
ッ素含有分解反応物とを母材上に堆積させることにより
形成した撥水性酸化シリコン皮膜が撥水性、耐摩耗性お
よび耐擦傷性に優れることを発見し、かつ容易に、低温
でかつ母材と密着性良くこのような性質をもつ撥水性酸
化シリコン皮膜を形成できることを見出し、本発明に至
ったものである。
【0008】即ち、本発明の撥水性酸化シリコン皮膜
は、シリコン化合物を気相中で分解反応させることによ
り生成したシリコン含有分解反応物と、フッ素化合物を
気相中で分解反応させることにより生成したフッ素含有
分解反応物と、からなり、該シリコン化合物および該フ
ッ素化合物の少なくとも一方は酸素を含む化合物であ
り、かつ該シリコン化合物および該フッ素化合物の少な
くとも一方は炭素を含む化合物であって、該シリコンは
該シリコン含有分解反応物および該フッ素含有分解反応
物の少なくとも一方に含まれる該酸素と結合した酸化シ
リコンの形態で含まれ、かつ該フッ素は該シリコン含有
分解反応物および該フッ素含有分解反応物の少なくとも
一方に含まれる該炭素と結合した形態で含まれることを
特徴とする。
【0009】また、本発明の撥水性酸化シリコン皮膜の
製造方法は、シリコン化合物およびフッ素化合物の少な
くとも一方は酸素を含み、かつ該シリコン化合物および
該フッ素化合物の少なくとも一方は炭素を含む化合物を
それぞれ用い、該シリコン化合物を含むシリコン化合物
ガスと、該フッ素化合物を含むフッ素化合物ガスと、を
調製し、それぞれを原料ガスとする原料ガス調製工程
と、該原料ガスに含まれる該シリコン化合物と該フッ素
化合物とを気相中で分解反応させることにより、シリコ
ン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物の少なくとも
一方が酸素を含有し、かつ該シリコン含有分解反応物と
該フッ素含有分解反応物の少なくとも一方が炭素を含有
する形態で該シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分
解反応物を生成する分解反応物生成工程と、前記分解反
応物生成工程で生成した該シリコン含有分解反応物と該
フッ素含有分解反応物とを母材上に堆積させることによ
り、該シリコンが該シリコン含有分解反応物および該フ
ッ素含有分解反応物の少なくとも一方に含まれる該酸素
と結合した酸化シリコンと、該フッ素が該シリコン含有
分解反応物および該フッ素含有分解反応物の少なくとも
一方に含まれる該炭素と結合した該フッ素および該炭素
と、を含む皮膜を形成する皮膜形成工程と、からなるこ
とを特徴とする。
【0010】さらに、本発明の硬質撥水性酸化シリコン
皮膜は、シリコン化合物を気相中で分解反応させること
により生成したシリコン含有分解反応物と、フッ素化合
物を気相中で分解反応させることにより生成したフッ素
含有分解反応物と、からなり、該シリコン化合物および
該フッ素化合物の少なくとも一方は酸素を含む化合物で
あり、かつ該シリコン化合物および該フッ素化合物の少
なくとも一方は炭素を含む化合物であって、該シリコン
は該シリコン含有分解反応物および該フッ素含有分解反
応物の少なくとも一方に含まれる該酸素と結合した酸化
シリコンの形態で含まれ、かつ該フッ素は該シリコン含
有分解反応物および該フッ素含有分解反応物の少なくと
も一方に含まれる該炭素と結合した形態で含まれる撥水
層と、酸化シリコン系化合物を主成分とする硬質層と、
からなり、該撥水層の表面が最表面となるように基材上
にそれぞれ配置されて成ることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の撥水性酸化シリコン皮膜
およびその製造方法、並びに硬質撥水性酸化シリコン皮
膜についての実施の形態を以下にそれぞれ説明する。 (撥水性酸化シリコン皮膜)本発明の撥水性酸化シリコ
ン皮膜は、シリコン化合物を気相中で分解反応させるこ
とにより生成したシリコン含有分解反応物と、フッ素化
合物を気相中で分解反応させることにより生成したフッ
素含有分解反応物と、からなる皮膜である。シリコン化
合物およびフッ素化合物は、これら化合物の少なくとも
一方が酸素を含む化合物であり、かつこれら化合物の少
なくとも一方が炭素を含む化合物である。シリコンはこ
れら分解反応物の少なくとも一方に含まれる酸素と結合
した酸化シリコンの形態で含まれ、かつフッ素はこれら
分解反応物の少なくとも一方に含まれる炭素と結合した
形態で含まれる。
【0012】このとき用いるシリコン化合物は、その種
類において特に限定されるものでないが、有機シリコン
化合物であることが望ましい。有機シリコン化合物は、
室温で気体状態のものが多く、気相中で分解反応させや
すいため好ましい。また、有機シリコンはシリコンだけ
でなく炭素を含み、この炭素をフッ素との結合に利用で
きるため好ましい。
【0013】また、このとき用いる有機シリコン化合物
はオルガノアルコキシシランであることが望ましい。オ
ルガノアルコキシシランは、蒸気圧が高いため蒸発しや
すく、加熱したりキャリアガス等を用いたりしなくても
安定して原料の供給ができ、また安全性に優れるため扱
いやすく、安価であるため製造コストを低減することが
できる。
【0014】また、このオルガノアルコキシシランとし
ては、テトラメチルシラン((CH 34Si)、テトラ
エトキシシラン(Si(OC254)、テトラメトキ
シシラン(Si(OCH34)、メチルトリメトキシシ
ラン(CH3Si(OCH3 3)、ジメチルジメトキシ
シラン((CH32Si(OCH32)、トリメチルメ
トキシシラン((CH33Si(OCH3))、ヘキサ
メチルジシラン((CH3 6 Si2 )およびヘキサメ
チルジシロキサン((CH36OSi2)の少なくとも
一種であることが望ましい。
【0015】これら上記のオルガノアルコキシシランは
沸点が低く、蒸気圧が高いため好ましい。また、オルガ
ノアルコキシシランの中でも、テトラエトキシシラン、
テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジ
メチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシランは
酸素を含むため、この酸素をシリコンと結合させて酸化
シリコンを形成できるため好ましい。さらに、テトラエ
トキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメト
キシシランより生成したシリコン含有分解反応物からな
る撥水性酸化シリコン皮膜は、擦傷性に優れるため好ま
しい。
【0016】フッ素化合物は、その種類において特に限
定されるものでないが、パーフルオロアルキル基を有す
るシリコン化合物であることが望ましい。パーフルオロ
アルキル基を有するシリコン化合物は、沸点が低く、蒸
気圧が高いため好ましい。また、シリコンを含むため、
このシリコンを酸素と結合させて酸化シリコンを形成で
きるため好ましい。また、ポリテトラフルオロエチレン
(PTFE)のような低い表面自由エネルギーをもつ表
面を形成し、撥水性、潤滑性、離型などの性質が向上
し、さらに撥油性も発現する。
【0017】また、このパーフルオロアルキル基を有す
るシリコン化合物は、フルオロアルキルシラン(Cn
2n+1CH2CH2Si(OCH33(但し、nは任意の正
の整数である。))の少なくとも一種であることが望ま
しい。パーフルオロアルキル基を有するシリコン化合物
の中でも、Cn2n+1CH2CH2Si(OCH33は、
例えばCn2n+1CH2CH2SiCl3と比較しても加水
分解速度が低く、母材表面と化学的に反応して耐久性の
ある表面エネルギーの低い皮膜を形成する。
【0018】さらに、このフルオロアルキルシランのn
の値は8以上であることが望ましい。このようなnの値
をもつものは、フルオロアルキルシランの中でも、特に
撥水性が優れるため、さらに好ましい。さらには、シリ
コン化合物はテトラメチルシランであり、かつフッ素化
合物はnの値が8であるフルオロアルキルシラン(CF
3(CF27CH2CH2Si(OCH33であって、水
滴の静的接触角が150°以上であることが望ましい。
テトラメチルシランは酸素を含まないが、フルオロアル
キルシランは酸素を含み、この酸素をシリコンと結合さ
せて酸化シリコンを生成できるため好ましい。また、撥
水性酸化シリコン皮膜では、水滴との接触角がさらに大
きくなり、水滴の静的接触角を150°以上とすること
により、超撥水性をもたせることができる。
【0019】本発明の撥水性酸化シリコン皮膜では、膜
形状、膜面積、膜厚等は特に限定されるものでなく、用
途に応じてそれぞれ任意に選択することができる。本発
明の撥水性酸化シリコン皮膜では、シリコン含有分解反
応物とフッ素含有分解反応物の共存形態は特に限定され
るものではないが、シリコン含有分解反応物がシリコン
と酸素が結合している酸化シリコンを含まない場合や、
フッ素含有分解反応物が互いに結合しているフッ素と炭
素を含まない場合、シリコン含有分解反応物とフッ素含
有分解反応物とが互いに化学反応し、酸化シリコンや互
いに結合したフッ素と炭素が生成された皮膜とすること
ができる。
【0020】また、本発明の撥水性酸化シリコン皮膜で
は、酸化シリコンはSi−O−Siで表される結合形態
のものであることが望ましい。この酸化シリコンは結合
力が大きく、皮膜の硬さを大きくし、耐摩耗性および耐
擦傷性を向上させる。また、本発明の撥水性酸化シリコ
ン皮膜では、該フッ素および該炭素は、C−F結合を有
する官能基を形成していることが望ましい。フッ素原子
Fは原子半径が小さく、電気陰性度が高いためC−F結
合エネルギーは大きく、結合距離が短い。従って、分子
内では極めて弱い相互作用しかもたない。このため、極
性分子である水との相互作用が弱くなり、撥水性が向上
する。
【0021】このとき、C−F結合を有する官能基は、
CF3−で表される官能基、あるいは/また−CF2−で
表される官能基であることが望ましい。これら官能基で
覆われた表面は臨界表面張力(表面エネルギー)が低く
なるため、撥水性がさらに向上する。さらに、本発明の
撥水性酸化シリコン皮膜では、疎水性の大きい炭素と水
素とからなる官能基を含有することが望ましい。撥水性
酸化シリコン皮膜がその組織中にパーフルアルキル基の
ように構造が長く、剛直な官能基を有する場合、皮膜の
構造形態が隙間の多いものとなり、緻密な構造形態を作
りにくくなる。このことは、撥水性を低下させる原因と
なり好ましくない。そこで、このような隙間を疎水性の
大きい官能基で埋めることにより、撥水性を向上するこ
とができる。特に、炭素と水素からなる官能基には、疎
水性の大きいものが多く、また化学的にも安定である。
【0022】このような官能基としてはメチル基である
ことが望ましい。メチル基は疎水性が大きく、また構造
的に小さいため前記皮膜構造中の隙間を埋めやすく、非
常に緻密な構造形態を作ることができる。さらに化学的
にも非常に安定である。また、本発明の撥水性酸化シリ
コン皮膜では、互いに結合したフッ素と炭素が皮膜中に
均一に分散していることが望ましい。これにより、摩耗
等により皮膜の表面となる部分が繰り返し削り取られて
も、新たに表面となる部分は常に互いに結合したフッ素
と炭素が均一に含まれる形態となり、撥水性が持続され
る。
【0023】また、皮膜中に含まれるフッ素の含有量は
特に限定されるものではないが、フッ素が10〜50a
t%含まれるものが望ましい。これにより、表面エネル
ギーの低い皮膜を形成することができ、撥水性を向上さ
せることができる。このとき、フッ素が10at%未満
しか含まれていないと、表面エネルギーの低下が不十分
となり、十分な撥水性が得られなくなる。また、フッ素
が50at%を超えて含まれると硬さが小さくなり、耐
摩耗性が低下する。
【0024】また、可視光の透過率については特に限定
されるものではないが、可視光の透過率は90〜95%
が望ましい。この撥水性酸化シリコン皮膜は透光性に優
れ、透光性の要求される材料、例えばポリカーボネイト
のような透明プラスチック、透明ガラス等への利用が可
能となる。 (撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法)次に、本発明の
撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法について、その実施
の形態を以下に説明する。本製造方法は、原料ガス調製
工程、分解反応物生成工程および皮膜形成工程の3つの
工程からなる。
【0025】原料ガス調製工程は、シリコン化合物およ
びフッ素化合物の少なくとも一方は酸素を含み、かつ該
シリコン化合物および該フッ素化合物の少なくとも一方
は炭素を含む化合物をそれぞれ用い、該シリコン化合物
を含むシリコン化合物ガスと、該フッ素化合物を含むフ
ッ素化合物ガスと、を調製し、それぞれを原料ガスとす
る工程である。
【0026】この工程で使用するシリコン化合物ガス
は、室温で液体状態のシリコン化合物を気化させるなど
して用意することができ、シリコン化合物ガス中のシリ
コン化合物の濃度、ガス温度、ガス圧等は特に限定され
るものではないが、用途に応じて選択することができ
る。同様に、フッ素化合物ガスは、室温で液体状態のフ
ッ素化合物を気化させるなどして用意することができ、
フッ素化合物ガス中のフッ素化合物の濃度、ガス温度、
ガス圧等は特に限定されるものではないが、用途に応じ
て選択することができる。なお、使用するシリコン化合
物あるいは/またフッ素化合物の沸点が高い場合には、
アルゴンガス等の不活性ガスをキャリアガスとして利用
したり、加熱するなどして蒸発、気化させることができ
る。
【0027】さらに、このフッ素化合物ガスは水素ガス
をさらに含むことが望ましい。この水素ガスは、後の分
解反応物生成工程において、フルオロアルキルシラン中
のC−F結合から分解して生成したF原子と反応し、H
Fの形で真空中から排気される。それゆえ皮膜のエッチ
ングが抑制される。また、これにより、皮膜形成工程で
皮膜中に取り込まれる酸素の量が減る。それゆえ、酸素
含有量の少ない撥水性酸化シリコン皮膜を得ることがで
きる。
【0028】分解反応物生成工程は、該原料ガスに含ま
れる該シリコン化合物と該フッ素化合物とを気相中で分
解反応させることにより、シリコン含有分解反応物とフ
ッ素含有分解反応物の少なくとも一方が酸素を含有し、
かつ該シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分解反応
物の少なくとも一方が炭素を含有する形態で該シリコン
含有分解反応物と該フッ素含有分解反応物を生成する工
程である。
【0029】この工程は、あらかじめロータリーポンプ
等の真空ポンプにより高真空にするなどして空気等の不
純物ガスがほとんど存在しない状態となった雰囲気下に
おいて行う。原料ガスに含まれるシリコン化合物とフッ
素化合物とを気相中で分解反応させる方法は、特に限定
されないが、プラズマ、高熱、光等を用いて分解反応さ
せることができる。プラズマ、高熱、光等は高エネルギ
ーを有するため、原料ガスに含まれるシリコン化合物と
フッ素化合物を、この高エネルギーにより分解すること
ができる。
【0030】このときプラズマを用いる場合、プラズマ
の温度等の状態は特に限定されるものではないが、シリ
コン化合物およびフッ素化合物の少なくとも一方は、低
温プラズマを用いて気相中で分解反応させることが望ま
しく、特に、シリコン化合物およびフッ素化合物の両方
を低温プラズマを用いて気相中で分解反応させることが
好ましい。撥水性酸化シリコン皮膜を形成する製品が耐
熱温度が低い場合、高温のプラズマを用いると、このプ
ラズマの高熱により製品の品質が低下する恐れがあるの
で、皮膜形成工程において製品を高温のプラズマの高熱
の影響を受けない位置に設置してシリコン含有分解反応
物とフッ素含有分解反応物を堆積させるなどの注意が必
要である。しかし、低温のプラズマを用いる場合はこの
ような注意を必要としないため、任意の製品を任意の位
置に設置してシリコン含有分解反応物とフッ素含有分解
反応物を堆積させることができ、好ましい形態である。
【0031】また、低温プラズマの発生方法は特に限定
されないが、マイクロ波あるいは/また高周波を用いた
真空放電により発生させることが望ましい。これによ
り、ガス温度が低いが電子温度の高いプラズマを得るこ
とができる。また、この工程では、シリコン化合物ガス
とフッ素化合物ガスとを混合した形態でシリコン含有分
解反応物とフッ素含有分解反応物とを生成することが望
ましい。これにより、同じ容器内で、かつ同じ作業で行
うことができるので、撥水性酸化シリコン皮膜を形成す
る装置が簡便なものとなり、かつ作業効率も向上し、シ
リコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物の生成が
容易となる。
【0032】このとき、シリコン化合物ガスおよびフッ
素化合物ガスの全圧、分圧比等は特に限定されるもので
はないが、これらの全圧、分圧比等に対応してシリコン
含有分解反応物とフッ素含有分解反応物と生成速度がそ
れぞれ決まるため、これら分解反応物の所望の生成速度
に応じて全圧、分圧比等を選択することができる。この
とき、シリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物
との生成は、該シリコン化合物ガスと該フッ素化合物ガ
スとの全圧が10Pa以上の圧力下でおこなうことが望
ましい。この圧力下でシリコン含有分解反応物とフッ素
含有分解反応物を生成することにより、低温プラズマ中
で均一核生成が行われ、粒成長が著しくなり、皮膜形成
工程において形成される撥水性酸化シリコン皮膜の表面
の凹凸が大きくなる。
【0033】皮膜形成工程は、前記分解反応物生成工程
で生成した該シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分
解反応物とを母材上に堆積させることにより、該シリコ
ンが該シリコン含有分解反応物および該フッ素含有分解
反応物の少なくとも一方に含まれる該酸素と結合した酸
化シリコンと、該フッ素が該シリコン含有分解反応物お
よび該フッ素含有分解反応物の少なくとも一方に含まれ
る炭素と結合した該フッ素および該炭素と、を含む皮膜
を形成する工程である。
【0034】この工程では、シリコン含有分解反応物と
フッ素含有分解反応物とを分子レベルで母材上に堆積さ
せるため、母材と密着性よく皮膜を形成することができ
る。また、シリコン含有分解反応物がシリコンと酸素が
結合している酸化シリコンを含まない場合や、フッ素含
有分解反応物が互いに結合しているフッ素と炭素を含ま
ない場合、シリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反
応物とを母材上に堆積させ、互いに化学反応させて酸化
シリコンや互いに結合したフッ素と炭素とを皮膜中に生
成することができる。
【0035】この工程では、母材の皮膜を形成する表面
の温度は特に限定されるものではないが、少なくとも母
材の皮膜を形成する表面を加熱することにより、この表
面を50〜350℃の温度にすることが望ましい。これ
により、熱分解反応が進むため膜が緻密化し、得られる
皮膜の硬さが大きくなる。また、この工程で使用する母
材の材質については特に限定されるものではないが、ガ
ラス材料、樹脂材料、金属材料、半導体材料、木材、繊
維、建材の少なくとも一種からなるものが望ましい。撥
水性、耐摩耗性および耐擦傷性が要求される製品には、
これらの材料からなるものが多く、望ましい形態であ
る。
【0036】また、母材の形状、大きさについても特に
限定されるものではなく、母材の形状、大きさに応じて
母材を固定したり一次元、二次元あるいは三次元的に動
かすなどしてシリコン含有分解反応物およびフッ素含有
分解反応物を堆積させることにより、任意の形状、大き
さをもつ母材に撥水性酸化シリコン皮膜を形成すること
ができる。
【0037】なお、生成されたシリコン含有分解反応物
とフッ素含有分解反応物の母材表面への移動形態は特に
限定されるものではないが、気流等により移動させたり
するなどして母材上に堆積することができる。母材の設
置形態については特に限定されるものではないが、シリ
コン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物が最も多く
生成され、かつ移動距離ができるだけ短くなる位置に母
材を設置してシリコン含有分解反応物およびフッ素含有
分解反応物を堆積させることが望ましい。このとき、母
材表面において皮膜が成長する方向は、特に限定される
ものではないが、シリコン含有分解反応物およびフッ素
含有分解反応物の移動方向に応じて母材表面の面方向を
選択し、シリコン含有分解反応物およびフッ素含有分解
反応物を堆積させることにより、母材表面に対して任意
の方向に皮膜を成長させることができる。
【0038】具体的には、例えば低温プラズマを用いた
場合、低温プラズマの終端付近に母材を設置することに
より、プラズマ中で生成されたシリコン含有分解反応物
とフッ素含有分解反応物とを、移動距離がほとんどない
状態で堆積させることができる。このとき、低温プラズ
マの終端付近から離れた位置に設置すると、プラズマ中
で生成したシリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反
応物の移動距離が長くなり、容器等に付着するなどし
て、効率的にシリコン含有分解反応物とフッ素含有分解
反応物を母材上に堆積させることができなくなる。
【0039】また、前記分解反応物生成工程において、
シリコン含有分解反応物およびフッ素含有分解反応物を
それぞれ任意の生成速度で生成することができるため、
皮膜形成工程において、シリコン含有分解反応物および
フッ素含有分解反応物をそれぞれ所望の堆積速度で堆積
することができ、任意の成膜速度で皮膜を形成すること
ができる。 (硬質撥水性酸化シリコン皮膜)本発明の硬質撥水性酸
化シリコン皮膜は、前記の如く撥水層および硬質層の少
なくとも2層から構成され、それぞれの層は皮膜の最表
面に撥水層が位置するように基材上に配置される。この
撥水層は高い撥水性能をもつ層である。一方、この硬質
層は高い硬質性能をもつ層である。
【0040】それゆえ、本硬質撥水性酸化シリコン皮膜
では、撥水層を硬質層で裏打ちした構成となっており、
高い撥水性および高い硬質性が得られる。さらに、双方
の層とも酸化シリコン系化合物を主成分とするため互い
に高い整合性をもち、それらの層の密着性が高い。な
お、この撥水層でも、本発明の撥水性酸化シリコン皮膜
と同様、互いに結合したフッ素と炭素が皮膜中に均一に
分散していることが望ましい。
【0041】また、いずれの層も可視光の高い透過率を
もちうる。それゆえ、本硬質撥水性酸化シリコン皮膜で
は可視光の高い透過性を得ることができる。それぞれの
層の厚さについては特に限定されるものではないが、硬
質層が薄すぎたり、あるいは逆に撥水層が厚すぎたりす
ることがないようにそれぞれの層の厚さを適切に選択す
ることが好ましい。硬質層が薄すぎたりするとその硬質
性能を十分に得ることができなくなる。また、逆に撥水
層が厚すぎたりすると、これによって硬質層の硬質性能
の発揮が妨げられる。
【0042】本硬質撥水性酸化シリコン皮膜は、基材の
上に最初に硬質層を形成し、この硬質層の上に撥水層を
形成することによって作製することができる。このと
き、硬質層を形成には、公知の形成手段を用いることが
できる。また、撥水層の形成には、本発明の撥水性酸化
シリコン皮膜の製造方法による形成手段を用いることが
できる。
【0043】このとき、前記フッ素および前記炭素を全
体に一様に含む撥水層と、硬質層と、を組み合わせて本
硬質撥水性酸化シリコン皮膜を構成してもよいが、高い
整合性が得られるとは言え、完璧な整合性とは言えな
い。そこで、本硬質撥水性酸化シリコン皮膜では、前記
撥水層は、前記硬質層との境界部分に、前記炭素および
前記フッ素の含有濃度が境界方向に向かうにつれ傾斜的
に低下してその境界面においてほぼゼロとなる傾斜層を
もつことが望ましい。この傾斜層により、硬質層との境
界面でほぼ完璧な整合性が得られる。それゆえ、それら
の層の密着性が極めて高くなる。
【0044】
【作用】本発明の撥水性酸化シリコン皮膜は、酸化シリ
コンを含むため耐摩耗性および耐擦傷性に優れる。ま
た、フッ素と炭素の結合を含有するため撥水性に優れ
る。さらに、コーティング溶液の調製等を経ずに形成さ
れ、必要最小限の原料から生成された分子レベルの分解
反応物からなるため、皮膜中に含まれる不純物が少ない
ことや、組成のむらがないなどの理由により、従来の撥
水性酸化シリコン皮膜より撥水性に優れる。
【0045】この撥水性酸化シリコン皮膜で、互いに結
合したフッ素と炭素が皮膜中に均一に分散している形態
のものは、撥水性の持久性および耐候性に優れる。ま
た、フッ素が10〜50at%含まれるものは撥水性に
優れる。さらに、可視光の透過率が90〜95%である
ものは透光性に優れる。本発明の撥水性酸化シリコン皮
膜の製造方法により、撥水性および耐摩耗性に優れる撥
水性酸化シリコン皮膜を、容易に、低温でかつ母材と密
着性良く形成することができる。また、皮膜形成工程に
おいて、シリコン含有分解反応物およびフッ素含有分解
物をそれぞれ任意の堆積速度で同時に母材上に堆積する
ことができ、また任意の膜厚の撥水性酸化シリコン皮膜
を形成することができるため、フッ素が皮膜中に均一に
分散した形態のものや、任意のフッ素含有量のもの、任
意の透過率のもの等を形成することができる。具体的に
は、フッ素が10〜50at%含まれるものや、可視光
の透過率が90〜95%であるものなどを製造すること
ができる。
【0046】本発明の硬質撥水性酸化シリコン皮膜で
は、撥水層が高い撥水性能を発揮し、硬質層が高い硬質
性能を発揮するため、高い撥水性および高い硬度が得ら
れる。また、これらの層が高い密着性で接着されてお
り、互いに剥がれにくいため、高い機械的強度が得られ
る。さらに、いずれの層にも可視光の高い透過率をもつ
ものを用いることにより、可視光の高い透過性を得るこ
とができる。
【0047】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 (実施例1)本実施例の撥水性酸化シリコン皮膜の形成
には、シリコン化合物としてテトラメチルシラン(関東
化学製)を用い、フッ素化合物としてnの値が8のフル
オロアルキルシラン(以下、FAS−17と称する)
(CF3(CF27CH2CH2Si(OCH33)(信
越化学製;KBM7803)を用い、母材としてSi基
板(サイズ;30×30×0.5mm)を用いた。
【0048】また、皮膜形成装置としては、マイクロ波
により真空放電を起こさせて低温プラズマを発生するこ
とができるマイクロ波プラズマCVD装置を使用した。
なお、この装置では、原料ガスをマイクロ波プラズマに
より化学反応を起こさせ、この化学反応により生成した
反応生成物を下方に設置した基板等の表面上に移動させ
て堆積させることにより基板等に皮膜を形成するダウン
ストリーム方式を採用した皮膜形成装置である。図1
に、この皮膜形成装置1の概略図を示す。
【0049】この皮膜形成装置1は、シリコン化合物ガ
スおよびフッ素化合物ガスが分解反応される反応容器2
と、基板4が設置され反応容器2内で生成した分解反応
物を基板4上に堆積させる堆積容器6と、マイクロ波を
発生することができるマイクロ波電源8と、真空引き用
のロータリーポンプ10と、シリコン化合物を供給する
ことができるシリコン化合物供給源12と、フッ素化合
物を供給することができるフッ素化合物供給源14と、
を主要な構成としてなる。
【0050】反応容器2は、一端が閉じ、かつ他端が開
口した筒状の石英管(サイズ;長さ270mm、内径5
1mm、外径57mm)からなり、開口端部分16が堆
積容器6の天井部分18を貫通して連結されている。反
応容器2の内部はこの開口端部分16を通して堆積容器
6内と連通している。また、堆積容器6では、容器内に
基板ホルダー20が設けられ、この基板ホルダー20上
に基板4を設置することができる。この基板ホルダー2
0では、基板4を反応容器2の中心部分から100〜4
50mmの位置に設置することができる。
【0051】マイクロ波電源8は導波管22を介して反
応容器2と連結され、マイクロ波電源8で発生させた所
定の出力のマイクロ波は導波管22を通して反応容器2
内に送ることができる。このとき、反応容器2はその中
央付近で導波管22のキャビティー24に固定され、導
波管22に取り付けられたスリースタブチューナー26
およびプランジャー27によりマイクロ波の入射波と反
射波を調節して一定の強さのマイクロ波を反応容器2内
に送ることができる。なお、キャビティー24は、マイ
クロ波電源8およびスリースタブチューナー26を連
結、固定するだけでなく、導波管22を通過してくるマ
イクロ波を反応容器に効率よく伝える役割を果たす。こ
のマイクロ波により反応容器2内に真空放電を生じさ
せ、安定した低温プラズマ28を反応容器2内に発生さ
せることができる。
【0052】また、ロータリーポンプ10、シリコン化
合物供給源12およびフッ素化合物供給源14は、堆積
容器6に連結されており、ロータリーポンプ10により
堆積容器6と直結する反応容器2内を最高1Paの真空
度にすることができ、シリコン化合物供給源12および
フッ素化合物供給源14により堆積容器6内にシリコン
化合物ガスおよびフッ素化合物ガスを供給することがで
きる。
【0053】シリコン化合物供給源12では、液体状態
のシリコン化合物が容器内に入れられており、これを蒸
発、気化させることにより、シリコン化合物ガスを供給
することができる。また、フッ素化合物供給源14で
は、液体状態のフッ素化合物が容器内に入れられてお
り、これを蒸発、気化させることにより、フッ素化合物
ガスを供給することができる。なお、フッ素化合物の沸
点が高い場合、容器の外に巻き付けて取り付けられたリ
ボンヒーターを用いて所定の加熱温度で容器内の液体状
態にあるフッ素化合物を加熱して蒸発、気化させること
ができる。さらに、フッ素化合物供給源14には、キャ
リアガス供給源29よりキャリアガスを導入できるよう
に配管が施されており、液体状態にあるフッ素化合物を
通じて容器内に導入し、導入管から堆積容器6内へと移
動させることができる。このキャリアガスは真空放電を
安定させるガスとして働き、フッ素化合物ガスの輸送を
促進することにより、気体状態にあるフッ素化合物を安
定して供給することができる。なお、本実施例では、キ
ャリアガスとしてアルゴンガスを用いた。
【0054】これらシリコン化合物ガスおよびフッ素化
合物ガスは、それぞれ導入管を通じて堆積容器6へそれ
ぞれ導入され、堆積容器6を通して反応容器2内に混合
ガスの状態で充満される。このとき、シリコン化合物ガ
スおよびフッ素化合物ガスの導入量は、それぞれの導入
管に取り付けられたニードルバルブ30、30で調節す
ることができる。そして、それぞれの導入量を調節する
ことによりシリコン化合物ガスおよびフッ素化合物ガス
を所望の分圧に調節することができ、反応容器2内の圧
力を所定の圧力とすることができる。
【0055】反応容器2内のシリコン化合物ガスおよび
フッ素化合物ガスは、低温プラズマによりシリコン化合
物およびフッ素化合物が分解され、シリコン含有分解反
応物およびフッ素含有分解反応物が生成される。これら
生成されたシリコン含有分解反応物およびフッ素含有分
解反応物は、堆積容器6内の基板4上に移動させて堆積
させることができる。
【0056】また、基板温度は、外部からの加熱を特に
行わない場合、低温プラズマ28の放射熱などにより最
高で80℃程度になる。そこで、基板温度を100〜4
00℃の温度範囲で加熱できる抵抗加熱装置(図示せ
ず)が基板ホルダー20に取り付けられており、基板温
度をこの温度範囲で任意に制御することができる。本実
施例では、基板4を低温プラズマ28の中心付近から1
00mmの位置に設置し、ロータリーポンプ10によっ
て反応容器2および堆積容器6内を1Paまで真空引き
した後、ロータリーポンプ10による真空引き速度を調
節しながらシリコン化合物供給源12よりテトラメチル
シランガスを反応容器2内に導入し、反応容器2内の圧
力を所定の圧力でほぼ一定に維持した。続いて、フッ素
化合物供給源14をリボンヒーターにより70〜80℃
程度で加熱することにより、容器内の液体状態にあるF
AS−17を蒸発、気化させ、このFAS−17ガスを
反応容器2内に導入し、先に導入したテトラメチルシラ
ンガスと混合して混合ガスの全圧を所定の圧力とした。
なお、このとき20〜50sccmのアルゴンガスをキ
ャリアガスとして用いた。
【0057】マイクロ波電源8の出力を300Wとして
真空放電を起こさせ、この出力で真空放電を維持して低
温プラズマ28を発生させ、基板温度を50℃でほぼ一
定に維持しながら撥水性酸化シリコン皮膜の形成を15
分間行った。このとき、テトラメチルシランガスの所定
の圧力を12.5Pa、15.0Pa、20.0Pa、
25.0Paから選択し、またこのテトラメチルシラン
ガスの所定の圧力に対応させてFAS−17ガスの分圧
を12.5Pa、15.0Pa、20.0Pa、25.
0Paから選択し、混合ガスの全圧を25.0Pa、3
0.0Pa、40.0Pa、50.0Paとして4種類
の撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0058】これらの撥水性酸化シリコン皮膜につい
て、膜厚、接触角および可視光透過率の評価を行った。
なお、それぞれの測定は次の手段を用いて行った。な
お、後述する他の実施例のものについても、これと同様
に評価を行った。膜厚は表面粗さ計(Mitsutoy
o製、Surftest SV−600)を用いて測定
した。撥水性は蒸留水の静的接触角(液滴径約2mm
φ)を液滴法により25℃の雰囲気下で接触角計(協和
界面科学製、CA−X150型)により測定した。可視
光透過率はダブルビーム分光光度計(島津製作所製、U
V−3101PC)を用いて測定した。
【0059】図2に、得られた4種類の撥水性酸化シリ
コン皮膜の水滴との静的接触角を示す。図2より、これ
らの撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角は1
15〜160°であることがわかる。この水滴との静的
接触角は、テフロンの水滴との静的接触角の108°を
超えており、得られた4種類の撥水性酸化シリコン皮膜
は撥水性に非常に優れることがわかる。特に、混合ガス
の全圧を50.0Paとして作製した撥水性酸化シリコ
ン皮膜は160°の水滴との静的接触角をもち、150
°を超える非常に高い撥水性(超撥水性)をもつことが
わかった。
【0060】また、図2より、これらの撥水性酸化シリ
コン皮膜の成膜速度は25〜120nm/minで、混
合ガスの全圧が大きくなるに従って成膜速度が大きくな
ることがわかった。さらに、混合ガスの全圧を25.0
Pa、30.0Paとして作製した撥水性酸化シリコン
皮膜は、可視光の透過率が93%であり、透光性に優れ
ることがわかった。 (実施例2)シリコン化合物としてトリメチルメトキシ
シラン(関東化学製)を用い、トリメチルメトキシシラ
ンの所定の圧力を25.0Paとし、また、フルオロア
ルキルシランの分圧を25.0Paとして、混合ガスの
全圧を50.0Paとし、基板温度を50℃、100
℃、200℃、300℃から選択して一定とする以外は
実施例1と同様にして、基板温度の異なる4種類の撥水
性酸化シリコン皮膜を作製した。これらの基板温度はア
ルメル・クロメル熱電対により測定した。なお、断らな
い限り、以下の基板温度はすべてこの測定手段により測
定した。
【0061】このとき基板温度50℃で作製した撥水性
酸化シリコン皮膜について、赤外線吸収分析法(IR)
により赤外線の透過率の測定を行い、赤外線吸収スペク
トルを透過率より求め、皮膜中の結合形態を調べた。こ
の測定結果を図3に示す。なお、図3では横軸に赤外線
の波数を示し、縦軸には透過率を示した。図3により、
Si−O−Siの結合間の伸縮振動に起因する赤外線の
吸収ピークが、1070/cm、800/cm、および
460〜410/cmの波数付近で確認され、さらに、
Si−Oの結合間の伸縮振動に起因する赤外線の吸収ピ
ークが850/cmの波数付近で確認されたことより、
皮膜中に酸化シリコンが含まれていることがわかった。
また、CF3−、−CF2−中のC−Fの結合間の伸縮振
動に起因する赤外線の吸収ピークが、1260〜120
0/cmおよび1120/cmの波数付近で確認された
ことより、フッ素と炭素が互いに結合してC−F結合の
形態で皮膜中に含まれていることがわかった。
【0062】また、静的接触角を図4に示す。図4よ
り、これらの撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接
触角は102〜110°であることがわかり、いずれの
撥水性酸化シリコン皮膜についても優れた撥水性をもつ
ことがわかる。 (実施例3)シリコン化合物として、ジメチルジメトキ
シシラン(関東化学製)を用いる以外は実施例2と同様
にして4種類の撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0063】このとき得られた4種類の撥水性酸化シリ
コン皮膜について、水滴との静的接触角を図5に示す。
図5より、これらの撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との
静的接触角は95〜100°であることがわかり、いず
れの撥水性酸化シリコン皮膜についても優れた撥水性を
もつことがわかる。 (実施例4)シリコン化合物として、メチルトリメトキ
シシラン(関東化学製)を用いる以外は実施例2と同様
にして4種類の撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0064】このとき得られた4種類の撥水性酸化シリ
コン皮膜について、水滴との静的接触角を図6に示す。
図6より、これらの撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との
静的接触角は90〜94°であることがわかり、いずれ
の撥水性酸化シリコン皮膜についても優れた撥水性をも
つことがわかる。また、ステンレス鋼製のチップによる
ひっかき試験の結果、耐擦傷性に優れていることがわか
った。 (実施例5)シリコン化合物として、テトラメトキシシ
ラン(以下、TMSと称する)(関東化学製)を用いる
以外は実施例2と同様にして4種類の撥水性酸化シリコ
ン皮膜を作製した。
【0065】このとき得られた4種類の撥水性酸化シリ
コン皮膜について、水滴との静的接触角を図7に示す。
図7より、これらの撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との
静的接触角は80〜93°であることがわかり、いずれ
の撥水性酸化シリコン皮膜についても優れた撥水性をも
つことがわかる。また、ステンレス鋼製のチップによる
ひっかき試験の結果、耐擦傷性に優れていることがわか
った。 (実施例6)シリコン化合物として、テトラエトキシシ
ラン(関東化学製)を用いる以外は実施例2と同様にし
て4種類の撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0066】このとき得られた4種類の撥水性酸化シリ
コン皮膜の水滴との静的接触角については図示しない
が、実施例5の撥水性酸化シリコン皮膜とほぼ同じ水滴
との静的接触角をもつことがわかり、いずれの撥水性酸
化シリコン皮膜についても優れた撥水性をもつことがわ
かった。また、ステンレス鋼製のチップによるひっかき
試験の結果、耐擦傷性に優れていることがわかった。 (実施例7)TMSの代わりにヘキサメチルジシラン
(以下、HMDSと称する)を用いる他は、実施例1と
同様にして撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0067】この撥水性酸化シリコン皮膜膜は、実施例
1のものとほぼ同じ接触角をもつことがわかった。 (実施例8)FAS−17ガスのキャリアガスとしてA
rガスの代わりにH2ガスを使用して、このFAS−1
7ガス中に水素ガスを含ませる他は、実施例1と同様に
して撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0068】これらの撥水性酸化シリコン皮膜は、どれ
もアルゴンを用いた膜よりも高い撥水性をもつことがわ
かった。特に、基板温度200℃以上では単独の撥水膜
と同様の接触角が得られた。また、XPS測定の結果、
上層の酸素含有量がアルゴンを用いた場合と比べて大幅
に低下していることが確認された。 (実施例9)本実施例では、撥水層と硬質層とからな
り、該撥水層の表面が最表面となるように基材上にそれ
ぞれ配置されてなる硬質撥水性酸化シリコン皮膜を作製
した。この皮膜は、この撥水層が、硬質層との境界部分
に、前記炭素および前記フッ素の含有濃度が境界方向に
向かうにつれ漸次低下してその境界面においてほぼゼロ
となる傾斜層をもつ。
【0069】本実施例では、まず最初に硬質層を基板上
に形成してからこの撥水層の上に傾斜層を形成し、続い
て撥水層をその傾斜層の上に形成して硬質撥水性酸化シ
リコン皮膜を作製した。この硬質層の形成にはTMSガ
スと酸素ガスとを原料ガスとして用い、これらの原料ガ
スを気相反応させて形成した。また、撥水層の形成には
FAS−17ガスとTMSガスとを原料ガスとして用
い、これらの原料ガスを気相反応させて形成した。これ
ら一連の層形成過程を図8に模式的に示す。
【0070】本実施例の硬質撥水性酸化シリコン皮膜の
作製手順を図1および図8を用いながら以下に説明す
る。なお、これらの層の形成には、いずれも図1に示し
たマイクロ波プラズマCVD装置を使用した。また、硬
質撥水性酸化シリコン皮膜の作製に先立ち、基板として
シリコンウエハー(10mm×10mm×0.5mm)
を用意し、プラズマ中心から約100mm離れた位置に
この基板を設置した。また、約5分間基板を酸素プラズ
マ(20Pa)に曝し、あらかじめ基板表面の不純物を
除去した。
【0071】まず、反応容器6をロータリーポンプ10
により1Paまで排気した後、TMSガス用のシリコン
化合物供給源12を室温に保持し、その蒸気を反応容器
6内に導入した。このとき、基板4の上部約10mmか
らTMSガスを、また、酸素ガスは石英管2の上部から
導入した。これら原料ガスを導入した後、成膜条件を次
のように設定して成膜を行った。
【0072】全圧およびマイクロ波出力はそれぞれ50
Pa、300Wと一定にした。酸素分圧比(O2 (P
a)/全圧(Pa))は、本発明者らの研究により最適
硬さが得られることがわかっている80%を採用した。
基板温度は後述する温度で一定に保持した。成膜時間は
膜厚が1.0μm以上となるように選択した。こうして
図8の(a)に示すように、基板上に硬質層100が形
成された。この硬質層100は、後述の比較例1におい
て得られる皮膜と同じものである。
【0073】次に、先に保持した基板温度を維持しつ
つ、酸素ガスの供給をニードルバルブ30により徐々に
減少させ、代わりにFAS−17をキャリアガスのAr
を用いて反応容器6内に導入した。ここでは、FAS−
17用のフッ素化合物供給源14を約70℃に保持し、
その蒸気を反応容器6内に導入した。また、FAS−1
7蒸気の凝縮を避けるため、ガス導入管も約70℃に保
持した。一方、Ar流量はマスフローコントローラーに
より20sccmに制御した。こうして図8の(b)に
示すように、硬質層100の上に傾斜層200が形成さ
れた。
【0074】続いて、全圧が50PaでTMSとFAS
−17/Arの分圧比が25Pa:25Paになるよう
にニードルバルブ30で調整し、1〜5分間成膜を実施
した。こうして図8の(c)に示すように、傾斜層20
0の上に撥水層300が形成された。本実施例では、基
板温度を制御しない条件(約70℃)と、外部からの抵
抗加熱により100℃、200℃および300℃と、の
ように350℃までの温度範囲でほぼ一定に制御した条
件とでそれぞれ4種類の硬質撥水性酸化シリコン皮膜を
作製した。以下、特に断らない限り、4種類とはこれら
の基板温度の種類を指す。
【0075】これらの硬質撥水性酸化シリコン皮膜で
は、いずれも約1.0μm以上の膜厚を有した。また、
これらの皮膜では、基板/皮膜、硬質層/傾斜層ともそ
れぞれ良好な密着性をもつことがわかった。これは、碁
盤目剥離試験において、基板/皮膜、硬質層/傾斜層の
境界(界面)での剥離が観察されなかったことで確認し
た。次に、それらの接触角および硬度について、それぞ
れ以下のように評価を行った。
【0076】まず、接触角の測定結果を図9に示す。比
較のために、実施例5の撥水性酸化シリコン皮膜の接触
角を図9に併せて示した。図9より、いずれも100°
以上の高い接触角をもつことがわかる。ただし、実施例
5のものに比べるとやや劣る。また、基板温度が低温で
あるほど、より高い接触角が得られることもわかる。
【0077】次に、硬度の測定結果を図10に示す。な
お、ここでは、ダイナミック超微小硬度計(島津製作所
製,DUH−200)を用いて超微小硬度を測定した。
圧子はヌープ圧子を用い、最大荷重は0.50gfに設
定した。図10より、いずれの皮膜も高い硬度をもつこ
とがわかる。特に、200℃以上の基板温度で得られた
ものは比較例1の皮膜と同等の硬度をもち、その硬度は
極めて高いことがわかる。
【0078】一方、100℃以下の基板温度で得られた
ものは、200℃以上の基板温度で得られたものと比べ
ると硬度が小さいことが確認された。これは、撥水層の
厚さの違いによるものと考える。前者の形成速度は、後
者のものに比べると、約60〜100nm/minと非
常に早いことがわかっている。ここでは、それぞれの成
膜時間が同じであるため、前者の方が、後者に比べて厚
い撥水層が形成されている。それゆえ、100℃以下の
基板温度で得られたものは、撥水層の硬さが反映されて
いないために硬度が小さくなったと考えられる。
【0079】そこで、100℃以下の基板温度で得るも
のにおいて、撥水層の成膜時間を1分間と、先のものよ
り成膜時間を小さくして成膜を実施したところ、硬度は
200℃以上の基板温度で得られたものとほぼ同等の値
を示した。それらの皮膜の硬度を図10に併せて示した
(図中の△印)。このときの接触角は、撥水層の成膜時
間が短くなるに従い若干低下したものの、105〜11
2°とPTFE(108°)並みの高い撥水性を示し
た。
【0080】以上のように、本実施例の硬質撥水性酸化
皮膜は、実施例5の撥水性酸化シリコン皮膜に比べると
やや接触角で劣るものの、優れた撥水性をもち、かつ極
めて高い硬度をもつことがわかった。また、成膜時の基
板温度の違いによって、接触角および硬度に違いが出て
くることもわかった。そこで、本実施例の皮膜が実施例
5のものに比べてやや接触角で劣る原因、並びに基板温
度によって接触角および硬度が違ってくる原因を突き止
めるべく、これらの皮膜での化学結合状態および化学組
成についてそれぞれ以下のように評価した。
【0081】まず、本実施例の皮膜と実施例5の皮膜と
について、それらの表面部分の化学結合状態を測定し
た。その分析結果を表1に示す。なお、化学結合状態の
分析には、XPS(島津製作所製、ESCA1000)
およびFTIR(JASCO製、FT/TR5300)
を用いた。
【0082】
【表1】 表1より、本実施例のいずれの皮膜においても、その表
面では、撥水性に寄与するF/SiおよびF/C値が減
少していること、親水性の増加に寄与するO/F値が増
加していること、並びに皮膜の無機化を示すC/Si値
が減少していることがそれぞれ確認された。この測定結
果からも明らかなように、本実施例で得られた皮膜の表
面は、実施例5の皮膜の表面よりも親水化していること
がわかる。これは、成膜途中で反応容器内に導入するガ
スを酸素からFAS−17/Arに切り替える際、プラ
ズマ雰囲気中に残存する酸素がFAS−17の分解およ
び皮膜中への極性基(水素基等)の生成を促進したため
と考えられる。それゆえ、本実施例の皮膜の接触角が低
下したものと考えられる。
【0083】次に、70℃の基板温度で得られた皮膜
と、300℃の基板温度で得られた皮膜とについて、そ
れぞれ皮膜の深さ方向の化学組成を分析した。それらの
分析結果をそれぞれ図11および図12に示す。なお、
皮膜の深さ方向の化学組成変化はXPSのArイオンエ
ッチング(2.0kV、30mA)により測定した。こ
の測定では、エッチング深さはエッチング時間に比例し
て大きくなる。
【0084】図11から明らかなように、70℃の基板
温度で得られた皮膜では、エッチング時間が約120分
を越えたあたりから、フッ素および炭素濃度の著しい減
少が観察され、反対に、シリコンおよび酸素濃度の増加
が確認された。一方、図12から明らかなように、30
0℃の基板温度で得られた皮膜では、エッチング時間が
約30分を越えたあたりから、同様の傾向が観察され
た。
【0085】以上の化学組成の分析結果から、70℃の
基板温度で得られた皮膜の方が300℃の基板温度で得
られたものよりも撥水層の厚さが大きいことがわかる。
即ち、100℃以下の基板温度で得られた皮膜の方が2
00℃以上の基板温度で得られたものよりも撥水層の厚
さが大きい。このように選択する基板温度によって、そ
の撥水層の質および厚さが異なってき、ひいては皮膜の
撥水性および硬度が異なってくる。
【0086】最後に、本実施例で得られた皮膜の可視光
透過率について測定した。その測定の結果、いずれの皮
膜においても、可視光領域での透過率が90%以上で、
未処理のガラス基板と変わらないことがわかった。図1
3に、200℃の基板温度で得られた皮膜の可視光透過
率の測定結果を一例として示した。なお測定にあたって
は、リファレンスに空気を使用した。
【0087】以上の評価により、本実施例の硬質撥水性
酸化シリコン皮膜は、撥水性に優れかつ硬度が大きく、
さらに可視光の透過率も大きいことが明らかとなった。 (比較例1)傾斜層300および撥水層を形成しない以
外は、実施例9と同様にして4種類の皮膜を形成した。
【0088】これらの皮膜はいずれも膜中にSi−O−
Siの結合をもち、そのシリコンおよび酸素濃度がそれ
ぞれ、30at.%および60at.%であることがわ
かった。さらに、これらの硬質酸化シリコン皮膜は、い
ずれもホウ珪酸ガラスに匹敵する硬さをもつことがわか
った。さらに緻密な皮膜であることも確認された。 (実施例10)TMSの代わりにヘキサメチルジシラン
(以下、HMDSと称する)を用いる他は、実施例9と
同様にして4種類の硬質撥水性酸化シリコン皮膜を作製
した。
【0089】また、これらの硬質撥水性酸化シリコン皮
膜では、いずれも実施例9で同じ基板温度条件で得られ
たものとほぼ同じ接触角および硬度をそれぞれもつこと
がわかった。しかし、実施例9での撥水層の成膜速度
は、約10〜25nm/minであったのに対し、本実
施例のものでは約70〜100nm/minと非常に大
きかった。 (実施例11)FAS−17ガスのキャリアガスとして
Arガスの代わりにH2ガスを使用して、このFAS−
17ガス中に水素ガスを含ませる他は、実施例9と同様
にして4種類の硬質撥水性酸化シリコン皮膜を作製し
た。
【0090】これらの撥水性酸化シリコン皮膜では、い
ずれも実施例9で同じ基板温度条件で得られたものより
も高い撥水性をそれぞれもつことがわかった。特に、基
板温度200℃以上では単独の撥水膜と同様の接触角が
得られた。また、XPS測定の結果、いずれの撥水層の
酸素含有量も、実施例9でそれぞれで得られたものと比
べて大幅に低下していることが確認された。 (実施例12)TMSの代わりにHMDSを用いる他
は、実施例11と同様にして4種類の硬質撥水性酸化シ
リコン皮膜を作製した。
【0091】これらの硬質撥水性酸化シリコン皮膜につ
いて、それぞれの接触角を測定した。その測定結果を図
14に示す。比較のために、実施例7および実施例10
で得られたものの測定結果についても図14に併せて示
した。図14より、本実施例のいずれの皮膜も優れた撥
水性をもち、特に実施例10の同じ基板温度の条件で得
られた皮膜よりも高い撥水性をそれぞれもつことがわか
った。この結果より、キャリアガスにH2ガスを用いた
ほうが、アルゴンガスを用いるよりも高い撥水性が得ら
れることがわかる。
【0092】ただし、200℃以下の基板温度で得られ
た皮膜は、実施例7の同じ基板温度の条件で得られた皮
膜よりもそれぞれ撥水性でやや劣ることがわかった。し
かしながら、硬度についてはここでは図示しないが、い
ずれも実施例7の同じ基板温度条件で得られた皮膜より
も高いことがわかった。
【0093】
【発明の効果】本発明の撥水性酸化シリコン皮膜は、撥
水性、耐摩耗性および耐擦傷性に優れるため、これらの
ような性能に劣る製品等に用いることにより、これらの
製品の撥水性、耐摩耗性および耐擦傷性を向上させるこ
とができる。また、本発明の撥水性酸化シリコン皮膜
は、撥水性の持久性および耐候性に優れるため、摩耗頻
度が大きい環境下や雪や氷の付着の著しい環境下などで
使用される製品等に用いることにより、これらの製品の
撥水性の持久性および耐候性を向上させることができ
る。
【0094】本発明の撥水性酸化シリコン皮膜の製造方
法により、撥水性および耐摩耗性に優れる撥水性酸化シ
リコン皮膜を、容易に、低温でかつ母材と密着性良く形
成することができるため、製造コスト等を低減すること
ができ、また、耐熱温度の低い製品においても、品質を
低下させることなく、撥水性、耐摩耗性および耐擦傷性
に優れた撥水性酸化シリコン皮膜を製造することができ
る。
【0095】具体的には、300以下の低温で硬質な撥
水性酸化シリコン皮膜が作製できるため、耐熱性、耐摩
耗性の低い材料の表面硬質、高機能化に有効な方法であ
る。特に、100℃以下の低温でこうした皮膜を作製で
きることから、プラスチックのような材料に適用でき
る。また、フッ素が皮膜中に均一に分散した形態の撥水
性酸化シリコン皮膜を、容易に、低温でかつ密着性良く
形成することができるため、撥水性の持久性および耐候
性に優れた撥水性酸化シリコン皮膜を、低コストで、か
つ耐熱温度の低い製品においても、品質を低下させるこ
となく製造することができる。
【0096】また、任意のフッ素含有量の撥水性酸化シ
リコン皮膜を、容易に、低温でかつ密着性良く形成する
ことができるため、撥水性に優れた撥水性酸化シリコン
皮膜を、低コストで、かつ耐熱温度の低い製品において
も、品質を低下させることなく製造することができる。
さらに、母材上に有機塗料等を用いて描かれた文字、絵
画等の上に、透光性に優れた撥水性酸化シリコン皮膜を
低温で形成できるため、文字、絵画の変色、劣化等を生
じさせることなく、撥水性酸化シリコン皮膜を形成でき
る。
【0097】本発明の硬質撥水性酸化シリコン皮膜は、
撥水性および耐摩耗性に極めて優れ、かつ機械的強度に
も優れるため、撥水性、耐摩耗性の低い材料に用いるこ
とによってその性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この図は、本実施例で使用した皮膜形成装置を
示す概略図である。
【図2】この図は、実施例1で得られた撥水性酸化シリ
コン皮膜の水滴との静的接触角を示すグラフである。
【図3】この図は、実施例2で得られた撥水性酸化シリ
コン皮膜について、赤外線吸収分析法(IR)により赤
外線の透過率を測定した結果を示す図である。
【図4】この図は、実施例2で得られた4種類の撥水性
酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角を示すグラフで
ある。
【図5】この図は、実施例3で得られた4種類の撥水性
酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角を示すグラフで
ある。
【図6】この図は、実施例4で得られた4種類の撥水性
酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角を示すグラフで
ある。
【図7】この図は、実施例5で得られた4種類の撥水性
酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角を示すグラフで
ある。
【図8】この図は、実施例9の撥水性酸化シリコン皮膜
の作製過程を模式的に示した図である。
【図9】この図は、実施例5および実施例9で得られた
撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角をそれぞ
れ示すグラフである。
【図10】この図は、実施例9および比較例1で得られ
た撥水性酸化シリコン皮膜の硬度をそれぞれ示すグラフ
である。
【図11】この図は、実施例9で得られた撥水性酸化シ
リコン皮膜のひとつの深さ方向の組成変化を示す図であ
る。
【図12】この図は、実施例9で得られた撥水性酸化シ
リコン皮膜のひとつの深さ方向の組成変化を示す図であ
る。
【図13】この図は、実施例9で得られた撥水性酸化シ
リコン皮膜について、それらの可視光透過率の一例を示
すグラフである。
【図14】この図は、実施例7、実施例10および実施
例12で得られた撥水性酸化シリコン皮膜、もしくは硬
質撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角をそれ
ぞれ示すグラフである。
【符号の説明】
1:皮膜形成装置 2:反応容器 4:基板 6:堆積
容器 8:マイクロ波電源 10:ロータリーポンプ
12:シリコン化合物供給源 14:フッ素化合物供給
源 16:開口端部分 18:天井部分 20:基板ホ
ルダー 22:導波管 24:キャビティー 26:ス
タブチューナー 27:プランジャー 28:低温プラズマ 29:アルゴンガス供給源 3
0:ニードルバルブ

Claims (26)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】シリコン化合物を気相中で分解反応させる
    ことにより生成したシリコンを含有する分解反応物(以
    下、シリコン含有分解反応物と称する。)と、 フッ素化合物を気相中で分解反応させることにより生成
    したフッ素を含有する分解反応物(以下、フッ素含有分
    解反応物と称する。)と、 からなり、該シリコン化合物および該フッ素化合物の少
    なくとも一方は酸素を含む化合物であり、かつ該シリコ
    ン化合物および該フッ素化合物の少なくとも一方は炭素
    を含む化合物であって、該シリコンは該シリコン含有分
    解反応物および該フッ素含有分解反応物の少なくとも一
    方に含まれる該酸素と結合した酸化シリコンの形態で含
    まれ、かつ該フッ素は該シリコン含有分解反応物および
    該フッ素含有分解反応物の少なくとも一方に含まれる該
    炭素と結合した形態で含まれることを特徴とする撥水性
    酸化シリコン皮膜。
  2. 【請求項2】該シリコン化合物は有機シリコン化合物で
    ある請求項1に記載の撥水性酸化シリコン皮膜。
  3. 【請求項3】該有機シリコン化合物はオルガノアルコキ
    シシランである請求項2に記載の撥水性酸化シリコン皮
    膜。
  4. 【請求項4】該オルガノアルコキシシランは、テトラメ
    チルシラン((CH 34Si)、テトラエトキシシラン
    (Si(OC254)、テトラメトキシシラン(Si
    (OCH34)、メチルトリメトキシシラン(CH3
    i(OCH3 3)、ジメチルジメトキシシラン((CH
    32Si(OCH32)、トリメチルメトキシシラン
    ((CH33Si(OCH3))、ヘキサメチルジシラ
    ン((CH3 6 Si2 )およびヘキサメチルジシロキ
    サン((CH36OSi2)の少なくとも一種である請
    求項3に記載の撥水性酸化シリコン皮膜。
  5. 【請求項5】該フッ素化合物はパーフルオロアルキル基
    を有するシリコン化合物である請求項1に記載の撥水性
    酸化シリコン皮膜。
  6. 【請求項6】前記パーフルオロアルキル基を有するシリ
    コン化合物は、フルオロアルキルシラン(Cn2n+1
    2CH2Si(OCH33(但し、nは任意の正の整数
    である。))の少なくとも一種である請求項5に記載の
    撥水性酸化シリコン皮膜。
  7. 【請求項7】前記nの値は8以上である請求項6に記載
    の撥水性酸化シリコン皮膜。
  8. 【請求項8】該シリコン化合物はテトラメチルシランで
    あり、かつ該フッ素化合物はnの値が8であるフルオロ
    アルキルシラン(CF3(CF27CH2CH 2Si(O
    CH33)であって、水滴の静的接触角が150°以上
    である請求項1に記載の撥水性酸化シリコン皮膜。
  9. 【請求項9】該酸化シリコンは、Si−O−Siで表さ
    れる結合形態のものである請求項1に記載の撥水性酸化
    シリコン皮膜。
  10. 【請求項10】該フッ素および該炭素は、C−F結合を
    有する官能基を形成している請求項1に記載の撥水性酸
    化シリコン皮膜。
  11. 【請求項11】前記C−F結合を有する官能基は、CF
    3−で表される官能基、あるいは/また−CF2−で表さ
    れる官能基である請求項10に記載の撥水性酸化シリコ
    ン皮膜。
  12. 【請求項12】疎水性の大きい炭素と水素とからなる官
    能基を含有する請求項1に記載の撥水性酸化シリコン皮
    膜。
  13. 【請求項13】該官能基はメチル基である請求項12に
    記載の撥水性酸化シリコン皮膜。
  14. 【請求項14】前記互いに結合した該フッ素と該炭素が
    皮膜中に均一に分散している請求項1に記載の撥水性酸
    化シリコン皮膜。
  15. 【請求項15】該フッ素が10〜50at%含まれる請
    求項1に記載の撥水性酸化シリコン皮膜。
  16. 【請求項16】可視光の透過率が90〜95%である請
    求項1に記載の撥水性酸化シリコン皮膜。
  17. 【請求項17】シリコン化合物およびフッ素化合物の少
    なくとも一方は酸素を含み、かつ該シリコン化合物およ
    び該フッ素化合物の少なくとも一方は炭素を含む化合物
    をそれぞれ用い、該シリコン化合物を含むシリコン化合
    物ガスと、該フッ素化合物を含むフッ素化合物ガスと、
    を調製し、それぞれを原料ガスとする原料ガス調製工程
    と、 該原料ガスに含まれる該シリコン化合物と該フッ素化合
    物とを気相中で分解反応させることにより、シリコン含
    有分解反応物とフッ素含有分解反応物の少なくとも一方
    が酸素を含有し、かつ該シリコン含有分解反応物と該フ
    ッ素含有分解反応物の少なくとも一方が炭素を含有する
    形態で該シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分解反
    応物を生成する分解反応物生成工程と、 前記分解反応物生成工程で生成した該シリコン含有分解
    反応物と該フッ素含有分解反応物とを母材上に堆積させ
    ることにより、該シリコンが該シリコン含有分解反応物
    および該フッ素含有分解反応物の少なくとも一方に含ま
    れる該酸素と結合した酸化シリコンと、該フッ素が該シ
    リコン含有分解反応物および該フッ素含有分解反応物の
    少なくとも一方に含まれる該炭素と結合した該フッ素お
    よび該炭素と、を含む皮膜を形成する皮膜形成工程と、 からなることを特徴とする撥水性酸化シリコン皮膜の製
    造方法。
  18. 【請求項18】前記分解反応物生成工程において、該シ
    リコン化合物および該フッ素化合物の少なくとも一方
    は、低温プラズマを用いて気相中で分解反応させる請求
    項17に記載の撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法。
  19. 【請求項19】該低温プラズマは、マイクロ波、高周
    波、低周波、直流、交流の少なくとも一種を用いた真空
    放電により発生させる請求項18に記載の撥水性酸化シ
    リコン皮膜の製造方法。
  20. 【請求項20】前記分解反応物生成工程において、該シ
    リコン化合物ガスと該フッ素化合物ガスとを混合して該
    シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分解反応物とを
    生成する請求項17に記載の撥水性酸化シリコン皮膜の
    製造方法。
  21. 【請求項21】前記分解反応物生成工程において、該シ
    リコン含有分解反応物と該フッ素含有分解反応物との生
    成は、該シリコン化合物ガスと該フッ素化合物ガスとの
    全圧が10Pa以上の圧力下でおこなう請求項20に記
    載の撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法。
  22. 【請求項22】前記皮膜形成工程において、該母材の少
    なくとも皮膜を形成する表面部分を50〜350℃の温
    度にする請求項17に記載の撥水性酸化シリコン皮膜の
    製造方法。
  23. 【請求項23】該母材は、ガラス材料、樹脂材料、金属
    材料、半導体材料、木材、繊維、建材の少なくとも一種
    からなる請求項17に記載の撥水性酸化シリコン皮膜の
    製造方法。
  24. 【請求項24】前記フッ素化合物ガスは、水素ガスをさ
    らに含む請求項17に記載の撥水性酸化シリコン皮膜。
  25. 【請求項25】シリコン化合物を気相中で分解反応させ
    ることにより生成したシリコン含有分解反応物と、フッ
    素化合物を気相中で分解反応させることにより生成した
    フッ素含有分解反応物と、からなり、該シリコン化合物
    および該フッ素化合物の少なくとも一方は酸素を含む化
    合物であり、かつ該シリコン化合物および該フッ素化合
    物の少なくとも一方は炭素を含む化合物であって、該シ
    リコンは該シリコン含有分解反応物および該フッ素含有
    分解反応物の少なくとも一方に含まれる該酸素と結合し
    た酸化シリコンの形態で含まれ、かつ該フッ素は該シリ
    コン含有分解反応物および該フッ素含有分解反応物の少
    なくとも一方に含まれる該炭素と結合した形態で含まれ
    る撥水層と、 酸化シリコン系化合物を主成分とする硬質層と、 からなり、該撥水層の表面が最表面となるように基材上
    にそれぞれ配置されて成ることを特徴とする硬質撥水性
    酸化シリコン皮膜。
  26. 【請求項26】前記撥水層は、前記硬質層との境界部分
    に、前記炭素および前記フッ素の含有濃度が境界方向に
    向かうにつれ漸次低下してその境界面においてほぼゼロ
    となる傾斜層をもつ請求項25に記載の硬質撥水性酸化
    シリコン皮膜。
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