JPH10123096A - シアロオリゴ糖の質量分析法 - Google Patents
シアロオリゴ糖の質量分析法Info
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- JPH10123096A JPH10123096A JP27940096A JP27940096A JPH10123096A JP H10123096 A JPH10123096 A JP H10123096A JP 27940096 A JP27940096 A JP 27940096A JP 27940096 A JP27940096 A JP 27940096A JP H10123096 A JPH10123096 A JP H10123096A
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- sialooligosaccharide
- sialo
- oligosaccharide
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Abstract
(57)【要約】
【課題】微量な試料の場合において、シアロオリゴ糖の
検出および分子量の確認が可能であり、またシアロオリ
ゴ鎖の構造を詳細に解析することができる分析方法を提
供すること。 【解決手段】シアロオリゴ糖の還元末端に2−アミノピ
リジンを作用させて得られうるシアロオリゴ糖誘導体を
衝撃イオン化法によりイオン化する工程を含むことを特
徴とするシアロオリゴ糖の質量分析法、さらに該質量分
析法による質量スペクトルの情報からシアロオリゴ糖の
構造を解析することを特徴とするシアロオリゴ糖の分析
方法。
検出および分子量の確認が可能であり、またシアロオリ
ゴ鎖の構造を詳細に解析することができる分析方法を提
供すること。 【解決手段】シアロオリゴ糖の還元末端に2−アミノピ
リジンを作用させて得られうるシアロオリゴ糖誘導体を
衝撃イオン化法によりイオン化する工程を含むことを特
徴とするシアロオリゴ糖の質量分析法、さらに該質量分
析法による質量スペクトルの情報からシアロオリゴ糖の
構造を解析することを特徴とするシアロオリゴ糖の分析
方法。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シアロオリゴ糖の
質量分析法及びその利用に関するものである。
質量分析法及びその利用に関するものである。
【0002】
【従来の技術】シアロオリゴ糖とは、シアル酸を含むオ
リゴ糖のことを言い、そのオリゴ糖の重合度(DP)は、2
から数10程度である。このようなシアロオリゴ゛糖が
有する構造は極めて多様かつ複雑である。近年、糖タン
パク質のシアロオリゴ糖鎖が生体の分化、増殖、受精、
免疫や細胞、ウィルス、細菌等との相互作用に関与すること
が明らかになってきており、この糖鎖を医薬品として利
用しようという研究が盛んになってきている。これは、
シアロオリゴ糖鎖の極めて多様かつ複雑な構造が種々の
生理作用、機能と深く関連するためであり、シアロオリ
ゴ糖鎖の構造を明らかにすることは極めて重要である。
従来、シアロオリゴ糖鎖の構造を明らかにする方法とし
ては、1)糖鎖切断酵素の一つであり、シアル酸のグリ
コシド結合を特異的に切断するシアリダーゼを用いる酵
素消化法、2)シアロオリゴ糖の還元末端を2−アミノ
ピリジンで誘導体化した後、溶出原理の異なる3種のカ
ラムを用いたHPLCを行い、各々の溶出時間をx、y、z
軸の座標にプロットし、これを既知の構造の糖鎖の溶出
時間と対比させることにより構造を明らかにするという
三次元マップ手法を利用する高速液体クロマトグラフィ
ー法、3)シアロオリゴ糖鎖をマトリクス支援レーザ脱
離イオン化(MALDI)法でイオン化することにより分子
量情報を得る質量分析法等が知られている。
リゴ糖のことを言い、そのオリゴ糖の重合度(DP)は、2
から数10程度である。このようなシアロオリゴ゛糖が
有する構造は極めて多様かつ複雑である。近年、糖タン
パク質のシアロオリゴ糖鎖が生体の分化、増殖、受精、
免疫や細胞、ウィルス、細菌等との相互作用に関与すること
が明らかになってきており、この糖鎖を医薬品として利
用しようという研究が盛んになってきている。これは、
シアロオリゴ糖鎖の極めて多様かつ複雑な構造が種々の
生理作用、機能と深く関連するためであり、シアロオリ
ゴ糖鎖の構造を明らかにすることは極めて重要である。
従来、シアロオリゴ糖鎖の構造を明らかにする方法とし
ては、1)糖鎖切断酵素の一つであり、シアル酸のグリ
コシド結合を特異的に切断するシアリダーゼを用いる酵
素消化法、2)シアロオリゴ糖の還元末端を2−アミノ
ピリジンで誘導体化した後、溶出原理の異なる3種のカ
ラムを用いたHPLCを行い、各々の溶出時間をx、y、z
軸の座標にプロットし、これを既知の構造の糖鎖の溶出
時間と対比させることにより構造を明らかにするという
三次元マップ手法を利用する高速液体クロマトグラフィ
ー法、3)シアロオリゴ糖鎖をマトリクス支援レーザ脱
離イオン化(MALDI)法でイオン化することにより分子
量情報を得る質量分析法等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
最新の方法でも、極めて多様かつ複雑な構造であるシア
ロオリゴ糖を分析した際に得られる情報には制限があ
り、より詳細な構造を解析するにはいまだ充分満足でき
るものではなかった。
最新の方法でも、極めて多様かつ複雑な構造であるシア
ロオリゴ糖を分析した際に得られる情報には制限があ
り、より詳細な構造を解析するにはいまだ充分満足でき
るものではなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】このような状況下、本発
明者らは鋭意検討を行った結果、シアロオリゴ糖の還元
末端にある種の試薬を作用させて得られうる誘導体を特
定なイオン化法によってイオン化し、該イオン化により
生成する親イオンにアルゴン、ヘリウムなどの不活性ガ
スを衝突させた際に生成する多数のプロダクトトイオン
を質量数/電荷数(m/z)に従って分離し、各イオン
の強度を記録して m/z の順序に並べた質量スペクト
ルから有益な情報が得られることを見い出し、該情報か
らシアロオリゴ糖の構造をより詳細に解析することがで
きることを見い出し、本発明を完成した。即ち、本発明
は、シアロオリゴ糖の還元末端に2−アミノピリジンを
作用させて得られうるシアロオリゴ糖誘導体を衝撃イオ
ン化法によりイオン化する工程を含むことを特徴とする
シアロオリゴ糖の質量分析法(以下、本発明質量分析法
と記す。)、さらに該質量分析法による質量スペクトル
の情報からシアロオリゴ糖の構造を解析することを特徴
とするシアロオリゴ糖の分析方法を提供するものであ
る。
明者らは鋭意検討を行った結果、シアロオリゴ糖の還元
末端にある種の試薬を作用させて得られうる誘導体を特
定なイオン化法によってイオン化し、該イオン化により
生成する親イオンにアルゴン、ヘリウムなどの不活性ガ
スを衝突させた際に生成する多数のプロダクトトイオン
を質量数/電荷数(m/z)に従って分離し、各イオン
の強度を記録して m/z の順序に並べた質量スペクト
ルから有益な情報が得られることを見い出し、該情報か
らシアロオリゴ糖の構造をより詳細に解析することがで
きることを見い出し、本発明を完成した。即ち、本発明
は、シアロオリゴ糖の還元末端に2−アミノピリジンを
作用させて得られうるシアロオリゴ糖誘導体を衝撃イオ
ン化法によりイオン化する工程を含むことを特徴とする
シアロオリゴ糖の質量分析法(以下、本発明質量分析法
と記す。)、さらに該質量分析法による質量スペクトル
の情報からシアロオリゴ糖の構造を解析することを特徴
とするシアロオリゴ糖の分析方法を提供するものであ
る。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、さらに詳細に本発明を説明
する。まず、分析目的であるは、シアロオリゴ糖は衝撃
イオン化法による質量分析に適するように、その還元末
端に2−アミノピリジンを作用させる前処理を行う。該
前処理は、シアロオリゴ糖、2−アミノピリジン及び還
元剤を通常溶媒に混合して反応を行う。本反応に用いら
れる溶媒としては、例えば、メタノール、トルエン等の
有機溶媒、トリエチルアミン等の有機塩基、及び酢酸等
の有機酸との混合溶媒等があげられる。ここで混合され
る有機溶媒の量は、2−アミノピリジンを溶解させるの
に必要な少量を意味し、例えば、2−アミノピリジンが
0.4%(重量比)程度以下になるような量をあげること
ができる。本反応に用いられる2−アミノピリジンの量
は、シアロオリゴ糖に対して大過剰量、好ましくは約80
0倍モル量から約800000倍モル量である。また、還元剤
としては、例えば、ボランージメチルアミン錯体等を用
いることができる。ボランージメチルアミン錯体の場
合、シアロオリゴ糖に対して、約200倍モル量から約300
倍モル量、好ましくは約240倍モル量から約260倍モル量
を使用するとよい。上記処理温度は、通常約70℃から約
90℃、好ましくは約75℃から約85℃の範囲であり、処理
時間は通常約15分間から約90分間である。処理終了後
は、メタノール、トルエン等の有機溶媒により未反応2
−アミノピリジンを、減圧下で除去(例えば、共沸など
の方法)することにより、所望のシアロオリゴ糖誘導体
を得ることができる。また、必要に応じて、再結晶、ク
ロマトグラフィー等の通常の方法によりさらに精製する
こともできる。
する。まず、分析目的であるは、シアロオリゴ糖は衝撃
イオン化法による質量分析に適するように、その還元末
端に2−アミノピリジンを作用させる前処理を行う。該
前処理は、シアロオリゴ糖、2−アミノピリジン及び還
元剤を通常溶媒に混合して反応を行う。本反応に用いら
れる溶媒としては、例えば、メタノール、トルエン等の
有機溶媒、トリエチルアミン等の有機塩基、及び酢酸等
の有機酸との混合溶媒等があげられる。ここで混合され
る有機溶媒の量は、2−アミノピリジンを溶解させるの
に必要な少量を意味し、例えば、2−アミノピリジンが
0.4%(重量比)程度以下になるような量をあげること
ができる。本反応に用いられる2−アミノピリジンの量
は、シアロオリゴ糖に対して大過剰量、好ましくは約80
0倍モル量から約800000倍モル量である。また、還元剤
としては、例えば、ボランージメチルアミン錯体等を用
いることができる。ボランージメチルアミン錯体の場
合、シアロオリゴ糖に対して、約200倍モル量から約300
倍モル量、好ましくは約240倍モル量から約260倍モル量
を使用するとよい。上記処理温度は、通常約70℃から約
90℃、好ましくは約75℃から約85℃の範囲であり、処理
時間は通常約15分間から約90分間である。処理終了後
は、メタノール、トルエン等の有機溶媒により未反応2
−アミノピリジンを、減圧下で除去(例えば、共沸など
の方法)することにより、所望のシアロオリゴ糖誘導体
を得ることができる。また、必要に応じて、再結晶、ク
ロマトグラフィー等の通常の方法によりさらに精製する
こともできる。
【0006】上記のように調製されたシアロオリゴ糖誘
導体を衝撃イオン化法のイオン源を装備した質量分析計
に導入することによって質量分析する。本発明で用いら
れるイオン化法としては、例えば、高速原子衝撃イオン
化(FAB)法又は二次イオン化(SIMS)法等の衝撃イオン
化法をあげることができる。市販のイオン源としては、
例えば、日本電子社製のFABイオン源又は日立製作所製
のSIMSイオン源等があげられる。また、質量分析計とし
ては、磁場型、四重極型、イオントラップ型、フーリエ
変換−イオンサイクロトロン共鳴型、飛行時間型等の質
量分析計をあげることができるが、好ましくは、磁場極
型質量分析計をあげることができる。より好ましくは、
タンデム型の磁場型質量分析計をあげることができる。
尚、市販の磁場型質量分析計としては、例えば、HXー110
/HXー110型タンデム型質量分析計(日本電子社製)等が
あげられる。試料を衝撃イオン化法のイオン源を装備し
た質量分析計に導入する方法としては、例えば、高速液
体クロマトグラフ、フリット導入法、直接導入法、シリ
ンジポンプ等をあげることができる。好ましくはフリッ
ト導入法または直接導入法を用いることがよい。
導体を衝撃イオン化法のイオン源を装備した質量分析計
に導入することによって質量分析する。本発明で用いら
れるイオン化法としては、例えば、高速原子衝撃イオン
化(FAB)法又は二次イオン化(SIMS)法等の衝撃イオン
化法をあげることができる。市販のイオン源としては、
例えば、日本電子社製のFABイオン源又は日立製作所製
のSIMSイオン源等があげられる。また、質量分析計とし
ては、磁場型、四重極型、イオントラップ型、フーリエ
変換−イオンサイクロトロン共鳴型、飛行時間型等の質
量分析計をあげることができるが、好ましくは、磁場極
型質量分析計をあげることができる。より好ましくは、
タンデム型の磁場型質量分析計をあげることができる。
尚、市販の磁場型質量分析計としては、例えば、HXー110
/HXー110型タンデム型質量分析計(日本電子社製)等が
あげられる。試料を衝撃イオン化法のイオン源を装備し
た質量分析計に導入する方法としては、例えば、高速液
体クロマトグラフ、フリット導入法、直接導入法、シリ
ンジポンプ等をあげることができる。好ましくはフリッ
ト導入法または直接導入法を用いることがよい。
【0007】このようにして、シアロオリゴ糖の還元末
端に2−アミノピリジン(以下、PAと記す。)を作用さ
せて得られうるシアロオリゴ糖誘導体を衝撃イオン化法
によってイオン化し、該イオン化により生成する親イオ
ンにアルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを衝突させた
際に生成する多数のプロダクトトイオンを質量数/電荷
数(m/z)に従って分離し、各イオンの強度を記録し
て m/z の順序に並べた質量スペクトルの有益な情報
(例えば、還元又は非還元末端側の各々のフラグメント
イオンの質量差)からシアロオリゴ糖の構造(例えば、
構成単糖の配列、分岐位置)を詳細に解析することがで
きる。さらに必要に応じて、酵素や抗体を用いる生化学
的手法やNMR等のスペクトルによる解析手法、その他
の構成単糖成分分析手法等による解析を相補的に用いる
と一層確実な構造解析が可能になる。また、従来の質量
分析方法による質量スペクトルでは、マトリクスや不純
物のイオンが混在することから解析が難しくなる場合が
あったが、本発明質量分析法による質量スペクトルで
は、プロダクトイオンを表すシグナルピークが明瞭にな
るために解析が容易になる。これは未知なシアロオリゴ
糖の構造解析上きわめて有用なことである。以下、実施
例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定される
ものではない。
端に2−アミノピリジン(以下、PAと記す。)を作用さ
せて得られうるシアロオリゴ糖誘導体を衝撃イオン化法
によってイオン化し、該イオン化により生成する親イオ
ンにアルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを衝突させた
際に生成する多数のプロダクトトイオンを質量数/電荷
数(m/z)に従って分離し、各イオンの強度を記録し
て m/z の順序に並べた質量スペクトルの有益な情報
(例えば、還元又は非還元末端側の各々のフラグメント
イオンの質量差)からシアロオリゴ糖の構造(例えば、
構成単糖の配列、分岐位置)を詳細に解析することがで
きる。さらに必要に応じて、酵素や抗体を用いる生化学
的手法やNMR等のスペクトルによる解析手法、その他
の構成単糖成分分析手法等による解析を相補的に用いる
と一層確実な構造解析が可能になる。また、従来の質量
分析方法による質量スペクトルでは、マトリクスや不純
物のイオンが混在することから解析が難しくなる場合が
あったが、本発明質量分析法による質量スペクトルで
は、プロダクトイオンを表すシグナルピークが明瞭にな
るために解析が容易になる。これは未知なシアロオリゴ
糖の構造解析上きわめて有用なことである。以下、実施
例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定される
ものではない。
【0008】
実施例1 (2−アミノピリジンを用いるシアロオリゴ
糖の前処理方法) 近藤らの方法[A.Kondo,J.Suzuki,N.Kuraya,S.Hase,I.K
ato,T.Ikenaka,Agric.Biol.Chem.,54,2169(1990)]に準
じて行った。尚、本誘導体化は市販キット(Takara Pal
Station Pyridyl amination reagent:糖鎖分析用)及び
市販装置(Takara Pal Station モデル4000:糖鎖ピリ
ジルアミノ化自動装置)を用いて行った。シアロオリゴ
糖45ng−45μg(50pmolー50nmol相
当量)にカップリング試薬(PA/酢酸:3mg/ml)
20μlを加え、90℃で60分反応した。反応終了
後、該反応混合物に還元試薬(Borane-dimethylamine c
omplex/酢酸)20μlを添加し、80℃、60分間反
応した。反応終了後、トリエチルアミン/メタノール2
0μl及びトルエン40μlを加えて混合した後、この
混合液に窒素ガスを流しながら、60℃で10分間減圧
下で乾固した。得られた残さにメタノール20μl及び
トルエン40μlを加えて再び混合した後、この混合物
に窒素ガスを流しながら、60℃で10分間減圧下で乾
固することによってPAによるシアロオリゴ糖誘導体を
得た。
糖の前処理方法) 近藤らの方法[A.Kondo,J.Suzuki,N.Kuraya,S.Hase,I.K
ato,T.Ikenaka,Agric.Biol.Chem.,54,2169(1990)]に準
じて行った。尚、本誘導体化は市販キット(Takara Pal
Station Pyridyl amination reagent:糖鎖分析用)及び
市販装置(Takara Pal Station モデル4000:糖鎖ピリ
ジルアミノ化自動装置)を用いて行った。シアロオリゴ
糖45ng−45μg(50pmolー50nmol相
当量)にカップリング試薬(PA/酢酸:3mg/ml)
20μlを加え、90℃で60分反応した。反応終了
後、該反応混合物に還元試薬(Borane-dimethylamine c
omplex/酢酸)20μlを添加し、80℃、60分間反
応した。反応終了後、トリエチルアミン/メタノール2
0μl及びトルエン40μlを加えて混合した後、この
混合液に窒素ガスを流しながら、60℃で10分間減圧
下で乾固した。得られた残さにメタノール20μl及び
トルエン40μlを加えて再び混合した後、この混合物
に窒素ガスを流しながら、60℃で10分間減圧下で乾
固することによってPAによるシアロオリゴ糖誘導体を
得た。
【0009】実施例2 (各種質量分析法によるシアロ
オリゴ糖の分析) シアロオリゴ糖鎖として3’-SLN,6’-SLN,L
ST Bを用いた(図1参照)。これらシアロオリゴ糖
にPAを作用させシアロオリゴ糖誘導体を調製した。誘導
体化方法は実施例1に示した。調製された各種シアロオ
リゴ糖誘導体をFAB法[正・負モード],MALDI法[正・
負モード],エレクトロスプレ・イオン化(ESI)法
[正・負モード]によって質量分析した。そして、調製
されたシアロオリゴ糖誘導体の各イオン化法におけるイ
オン化効率(親イオンの強度)を比較した。その結果を
表1に示す。表1から明らかなように、本発明質量分析
法(FAB法[正・負モード])は他質量分析法(MALDI法
[正・負モード],エレクトロスプレ・イオン化(ES
I)法[正・負モード])に比較して、正負いずれのモ
ードにおいても約200pmolという微量の試料でS/N(シグ
ナル/ノイズ比)10以上という良好なスペクトルが得ら
れることが判った。
オリゴ糖の分析) シアロオリゴ糖鎖として3’-SLN,6’-SLN,L
ST Bを用いた(図1参照)。これらシアロオリゴ糖
にPAを作用させシアロオリゴ糖誘導体を調製した。誘導
体化方法は実施例1に示した。調製された各種シアロオ
リゴ糖誘導体をFAB法[正・負モード],MALDI法[正・
負モード],エレクトロスプレ・イオン化(ESI)法
[正・負モード]によって質量分析した。そして、調製
されたシアロオリゴ糖誘導体の各イオン化法におけるイ
オン化効率(親イオンの強度)を比較した。その結果を
表1に示す。表1から明らかなように、本発明質量分析
法(FAB法[正・負モード])は他質量分析法(MALDI法
[正・負モード],エレクトロスプレ・イオン化(ES
I)法[正・負モード])に比較して、正負いずれのモ
ードにおいても約200pmolという微量の試料でS/N(シグ
ナル/ノイズ比)10以上という良好なスペクトルが得ら
れることが判った。
【0010】
【表1】
【0011】実施例3 (PAによるシアロオリゴ糖誘導
体の質量スペクトル情報に基づく構造解析) 実施例1によって得られるPAによるシアロオリゴ糖誘導
体をFAB用イオン源でイオン化させた際に生じる[M−
H]-イオン及び[MH]+イオンを親イオンとしたプロダ
クトイオンの質量スペクトルを測定した。LST BのPAに
よるシアロオリゴ糖誘導体誘導体の負イオンモードの質
量スペクトルを図2に、正イオンモードの質量スペクト
ルを図3に示す。負イオンモードでの質量スペクトル
(図2)では、シアロオリゴ糖の非還元末端からの構造
情報を示すB及びCシリーズ(図4参照)のシークエン
スイオンのシグナルピークが認められた。該スペクトル
では、2ヶ所の結合が切断されたInner fragment ionの
シグナル(m/z 493.3)も顕著に認められため、分岐
しているにもかかわらず直鎖構造の様な質量スペクトル
を与え、分岐位置に関する情報は得られなかった。した
がって、負イオンモードの測定では、分岐しているシア
ロオリゴ糖鎖の場合は、直鎖構造であると誤って解析し
てしまう可能性があることが示された。ただし、上記シ
グナル間の質量差から、構成単糖の情報を得ることがで
きた(表2及び図2参照)。一方、正イオンモードでの
質量スペクトル(図3)には、シアロオリゴ糖鎖の還元
末端からの構造情報を有する1,5XとYシリーズのシー
クエンスイオンを表すシグナルピークが認められ、上記
シークエンスイオン間の質量差から、分子イオン[M
H]+から単糖単位での脱離が生じるという化学構造上
での情報を得ることができた(表3、4及び図3参
照)。また、Y3β、Y3α、1.5X3αのイオンの
存在から、このものが分岐構造をとることが容易に解析
できることが明らかになった。以上のような結果から、
正・負両モードの測定を行うことで分岐位置を含めた一
次構造の詳細な解析が可能になることが判った。このよ
うな特徴は、分岐構造を有することが多いシアロオリゴ
糖の解析には極めて重要なことである。一方、実施例2
に記載されるFAB法以外のイオン化(MALDI法[正・負モ
ード],エレクトロスプレ・イオン化(ESI)法[正・
負モード])について、質量スペクトルを測定したが、
親イオンの強度不足より負イオンモードのスペクトルし
か測定できなかった。その結果、非還元末端からの構造
情報しか得られず、直鎖構造のシアロオリゴ糖にしか対
応できず、分岐位置を含めた一次構造の詳細な解析とい
う面においても劣った。
体の質量スペクトル情報に基づく構造解析) 実施例1によって得られるPAによるシアロオリゴ糖誘導
体をFAB用イオン源でイオン化させた際に生じる[M−
H]-イオン及び[MH]+イオンを親イオンとしたプロダ
クトイオンの質量スペクトルを測定した。LST BのPAに
よるシアロオリゴ糖誘導体誘導体の負イオンモードの質
量スペクトルを図2に、正イオンモードの質量スペクト
ルを図3に示す。負イオンモードでの質量スペクトル
(図2)では、シアロオリゴ糖の非還元末端からの構造
情報を示すB及びCシリーズ(図4参照)のシークエン
スイオンのシグナルピークが認められた。該スペクトル
では、2ヶ所の結合が切断されたInner fragment ionの
シグナル(m/z 493.3)も顕著に認められため、分岐
しているにもかかわらず直鎖構造の様な質量スペクトル
を与え、分岐位置に関する情報は得られなかった。した
がって、負イオンモードの測定では、分岐しているシア
ロオリゴ糖鎖の場合は、直鎖構造であると誤って解析し
てしまう可能性があることが示された。ただし、上記シ
グナル間の質量差から、構成単糖の情報を得ることがで
きた(表2及び図2参照)。一方、正イオンモードでの
質量スペクトル(図3)には、シアロオリゴ糖鎖の還元
末端からの構造情報を有する1,5XとYシリーズのシー
クエンスイオンを表すシグナルピークが認められ、上記
シークエンスイオン間の質量差から、分子イオン[M
H]+から単糖単位での脱離が生じるという化学構造上
での情報を得ることができた(表3、4及び図3参
照)。また、Y3β、Y3α、1.5X3αのイオンの
存在から、このものが分岐構造をとることが容易に解析
できることが明らかになった。以上のような結果から、
正・負両モードの測定を行うことで分岐位置を含めた一
次構造の詳細な解析が可能になることが判った。このよ
うな特徴は、分岐構造を有することが多いシアロオリゴ
糖の解析には極めて重要なことである。一方、実施例2
に記載されるFAB法以外のイオン化(MALDI法[正・負モ
ード],エレクトロスプレ・イオン化(ESI)法[正・
負モード])について、質量スペクトルを測定したが、
親イオンの強度不足より負イオンモードのスペクトルし
か測定できなかった。その結果、非還元末端からの構造
情報しか得られず、直鎖構造のシアロオリゴ糖にしか対
応できず、分岐位置を含めた一次構造の詳細な解析とい
う面においても劣った。
【0012】
【表2】
【0013】
【表3】
【0014】
【表4】
【0015】
【発明の効果】本発明質量分析法により、微量な試料の
場合においても、シアロオリゴ糖の検出および分子量の
確認が可能になった。また、該分析法による質量スペク
トルの有益な情報からシアロオリゴ鎖の構造を詳細に解
析することができるようになった。
場合においても、シアロオリゴ糖の検出および分子量の
確認が可能になった。また、該分析法による質量スペク
トルの有益な情報からシアロオリゴ鎖の構造を詳細に解
析することができるようになった。
【図1】今回の実施例に用いたシアロオリゴ糖の化学構
造を示す図である。
造を示す図である。
【図2】LST BのPAによるシアロオリゴ糖誘導体をFAB用
イオン源でイオン化させた際に生じる[M−H]-を親
イオンとしたプロダクトイオンに関する負イオンモード
における質量スペクトルを示す図である。
イオン源でイオン化させた際に生じる[M−H]-を親
イオンとしたプロダクトイオンに関する負イオンモード
における質量スペクトルを示す図である。
【図3】LST BのPAによるシアロオリゴ糖誘導体をFAB用
イオン源でイオン化させた際に生じる[MH]+ を親イ
オンとしたプロダクトイオンに関する正イオンモードに
おける質量スペクトルを示す図である。
イオン源でイオン化させた際に生じる[MH]+ を親イ
オンとしたプロダクトイオンに関する正イオンモードに
おける質量スペクトルを示す図である。
【図4】質量スペクトルにおけるシアロオリゴ糖の各フ
ラグメントに関する系統的な命名法を表す図である。非
還元末端側に、A,B,Cと名付け、還元末端側に電荷
を有するフラグメントイオンはX,Y,Zとする。Aと
Xは環開裂を示すフラグメントイオンで、コンマで区切
った上付き文字により開裂した2本の結合を示す。
ラグメントに関する系統的な命名法を表す図である。非
還元末端側に、A,B,Cと名付け、還元末端側に電荷
を有するフラグメントイオンはX,Y,Zとする。Aと
Xは環開裂を示すフラグメントイオンで、コンマで区切
った上付き文字により開裂した2本の結合を示す。
Claims (2)
- 【請求項1】シアロオリゴ糖の還元末端に2−アミノピ
リジンを作用させて得られうるシアロオリゴ糖誘導体を
衝撃イオン化法によりイオン化する工程を含むことを特
徴とするシアロオリゴ糖の質量分析法。 - 【請求項2】請求項1記載のシアロオリゴ糖の質量分析
法による質量スペクトルの情報からシアロオリゴ糖の構
造を解析することを特徴とするシアロオリゴ糖の分析方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27940096A JPH10123096A (ja) | 1996-10-22 | 1996-10-22 | シアロオリゴ糖の質量分析法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27940096A JPH10123096A (ja) | 1996-10-22 | 1996-10-22 | シアロオリゴ糖の質量分析法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10123096A true JPH10123096A (ja) | 1998-05-15 |
Family
ID=17610596
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP27940096A Pending JPH10123096A (ja) | 1996-10-22 | 1996-10-22 | シアロオリゴ糖の質量分析法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH10123096A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003529059A (ja) * | 2000-03-14 | 2003-09-30 | イグジィリオン ゲーエムベーハー アンド コー.カーゲー | 質量ラベル |
JP2006226880A (ja) * | 2005-02-18 | 2006-08-31 | Hitachi High-Technologies Corp | 液体クロマトグラフ質量分析方法 |
JP2006317464A (ja) * | 2000-07-11 | 2006-11-24 | Japan Science & Technology Agency | 液状試料の質量分析用プローブ |
JP2010256101A (ja) * | 2009-04-23 | 2010-11-11 | Shimadzu Corp | 糖ペプチド構造解析方法及び装置 |
JP2015091953A (ja) * | 2013-10-01 | 2015-05-14 | Jcrファーマ株式会社 | 2−アミノピリジンによる糖鎖の標識法 |
-
1996
- 1996-10-22 JP JP27940096A patent/JPH10123096A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003529059A (ja) * | 2000-03-14 | 2003-09-30 | イグジィリオン ゲーエムベーハー アンド コー.カーゲー | 質量ラベル |
JP2006317464A (ja) * | 2000-07-11 | 2006-11-24 | Japan Science & Technology Agency | 液状試料の質量分析用プローブ |
JP2006226880A (ja) * | 2005-02-18 | 2006-08-31 | Hitachi High-Technologies Corp | 液体クロマトグラフ質量分析方法 |
JP4519675B2 (ja) * | 2005-02-18 | 2010-08-04 | 株式会社日立ハイテクノロジーズ | 液体クロマトグラフ質量分析方法及び液体クロマトグラフ質量分析装置 |
JP2010256101A (ja) * | 2009-04-23 | 2010-11-11 | Shimadzu Corp | 糖ペプチド構造解析方法及び装置 |
JP2015091953A (ja) * | 2013-10-01 | 2015-05-14 | Jcrファーマ株式会社 | 2−アミノピリジンによる糖鎖の標識法 |
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