JPH10101807A - 撥水性樹脂複合材の製造方法および撥水性樹脂複合材 - Google Patents

撥水性樹脂複合材の製造方法および撥水性樹脂複合材

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JPH10101807A
JPH10101807A JP28014096A JP28014096A JPH10101807A JP H10101807 A JPH10101807 A JP H10101807A JP 28014096 A JP28014096 A JP 28014096A JP 28014096 A JP28014096 A JP 28014096A JP H10101807 A JPH10101807 A JP H10101807A
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圭太 中西
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光昭 山田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 撥水成分としてのフッ化ピッチと、マトリッ
クス樹脂との均一分散性を高め、撥水性の乏しい樹脂を
母材とした場合であっても、少ない量の撥水成分の添加
で効率よく撥水性を高めることのできる樹脂複合材の製
造方法を提供すること、及び高度な撥水性の要求される
用途において好適に使用できる撥水性樹脂複合材を提供
すること。 【解決手段】 液状フッ化ピッチ又はフッ化ピッチ溶液
と、軟化乃至溶融状態のマトリックス樹脂とを混合及び
/又は混練してフッ化ピッチ・樹脂複合物となす工程を
備える撥水性樹脂複合材の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、撥水性樹脂複合材
に関し、より詳しくはパイプ、トレイなどの流体流路部
材、水周り部材、外部環境に面する外装部材などの素材
として利用可能な撥水性樹脂複合材に関する。
【0002】
【従来の技術】パイプ、樋、ロート、テーパー部を有す
るトレイなどの流体流路部材、或いは外部環境との間で
温度差、湿度差が生じて結露するような部位に使用する
部材、例えば水周り部材や機械・装置等の外装部材など
では、流体の流動抵抗を少なくし、また結露した水滴を
速やかに流去させる必要がある。このため、従来よりこ
の種の部材には、撥水性に優れかつ成形性の良いフッ素
樹脂などが使用され、また主にコスト低減を目的とし
て、撥水性に優れたフッ素樹脂と安価ではあるが撥水性
に乏しい樹脂とを混合して複合材となしたものが使用さ
れている。更に、部材強度上の理由やコスト低減等のた
め、金属や安価な樹脂を用いて予め下地成形体を作製
し、この成形体にフッ素樹脂を被覆し部材表面の撥水性
を高める方法が使用されている。
【0003】しかしながら、フッ素樹脂は高価であり、
それ自身の撥水性も必ずしも十分とは言い難い。また、
撥水成分としてフッ素樹脂を配合した従来の複合材は、
フッ素樹脂がマトリックス材である他の樹脂に均一に分
散し難い。このため、十分に撥水性を高めるには、フッ
素樹脂の配合量を多くする必要があり、撥水性とコスト
低減の両方を充足する複合材を得られ難い。他方、金属
や他の樹脂等で予め下地成形体を作製し、この表面にフ
ッ素樹脂を塗布する方法は、フッ素樹脂被膜が下地成形
体から剥がれ易いという欠点を有している。よって、こ
の方法では、長期間にわたって安定した撥水性を有する
部材が得られ難い。
【0004】このような事情から、撥水性、成形性に優
れ且つコスト低減が可能な樹脂複合材の開発が待たれて
いた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記に鑑み
なされたものであり、撥水成分とマトリックス樹脂との
均一分散性を高め、撥水性の乏しい樹脂を母材とした場
合であっても、少ない量の撥水成分でもって効率よく撥
水性を高めることのできる樹脂複合材の製造方法を提供
し、もって高度な撥水性の要求される用途において好適
に使用できる撥水性樹脂複合材を提供することを目的と
する。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意研究した結果、樹脂複合材の撥水
成分としてフッ化ピッチが好適であることを見いだし、
下記構成の本発明を完成した。
【0007】請求項1記載の発明は、撥水性樹脂複合材
に対し15重量%以上の固体状フッ化ピッチと、樹脂と
を混合及び/又は混練してフッ化ピッチ・樹脂複合物と
なす工程を備えた撥水性樹脂複合材の製造方法である。
【0008】請求項2記載の発明は、液状フッ化ピッチ
及び/又はフッ化ピッチを溶媒に実質的に溶解してなる
溶液状フッ化ピッチと、樹脂とを混合及び/又は混練し
てフッ化ピッチ・樹脂複合物となす工程を備えた撥水性
樹脂複合材の製造方法である。
【0009】請求項3記載の発明は、請求項1又は2記
載の撥水性樹脂複合材の製造方法において、前記樹脂と
して、ポリスチレン又はポリプロピレンを用いることを
特徴とする。
【0010】請求項4記載の発明は、請求項1、2又は
3記載の撥水性樹脂複合材の製造方法において、前記樹
脂として軟化乃至溶融状態の樹脂を用いることを特徴と
する。
【0011】請求項5記載の発明は、フッ化ピッチと重
合性高分子とを混合した後、重合性高分子を重合硬化し
てフッ化ピッチ・樹脂複合物と成す工程を備えた撥水性
樹脂複合材の製造方法である。
【0012】請求項6記載の発明は、請求項5記載の撥
水性樹脂複合材の製造方法において、前記重合性高分子
が、液状であることを特徴とする。
【0013】請求項7記載の発明は、請求項6記載の撥
水性樹脂複合材の製造方法において、前記液状の重合性
高分子として不飽和ポリエステルを用いることを特徴と
する。
【0014】請求項8記載の発明は、請求項5、6、又
は7記載の撥水性樹脂複合材の製造方法において、前記
フッ化ピッチとして、液状フッ化ピッチ及び/又は実質
的にフッ化ピッチが溶解してなる溶液状フッ化ピッチを
用いることを特徴とする。
【0015】請求項9記載の発明は、樹脂をマトリック
ス相とし、フッ化ピッチを分散相とする撥水性樹脂複合
材である。
【0016】請求項10記載の発明は、請求項9記載の
撥水性樹脂複合材において、前記フッ化ピッチの撥水性
樹脂複合材に対する重量%が、1〜50%であることを
特徴とする。
【0017】請求項11記載の発明は、請求項9又は1
0記載の撥水性樹脂複合材において、前記樹脂が、ポリ
スチレン又はポリプロピレンであることを特徴とする。
【0018】請求項12記載の発明は、請求項9、1
0、又は11記載の撥水性樹脂複合材において、前記撥
水性樹脂複合材の水による液滴法での接触角が、105
度以上であることを特徴とする。
【0019】請求項13記載の発明は、請求項9、1
0、11、又は12記載の撥水性樹脂複合材において、
前記撥水性樹脂複合材は、倍率1000倍の走査型電子
顕微鏡によりフッ化ピッチ粒子が確認されないものであ
ることを特徴とする。
【0020】ここで、上記「混練」は、「混合」と比較
した場合における相対的な概念として使用されており、
混合よりも強力な剪断力や物理的圧力の作用する条件に
おける混合(練り合わせ)を意味する。「液状フッ化ピ
ッチ」とは、溶液状フッ化ピッチと区別される概念であ
り、フッ化ピッチ自体が液状のものをいい、液状である
か否かは、使用時(製造時)に判断する。「フッ化ピッ
チを溶媒に実質的に溶解してなる溶液状フッ化ピッチ」
とは、不溶性の残渣が30重量%以下になるようにして
フッ化ピッチが溶解されたフッ化ピッチ溶液をいう。フ
ッ化ピッチは製造条件により分子量分布が異なり、溶媒
に溶解し難い高分子量のものを含むことがある。しか
し、不溶性の残渣が30重量%以下であれば、実質的に
樹脂との均一混合が可能な溶液とでき、この溶液状フッ
化ピッチを用いれば、十分に本発明効果を奏する。
【0021】また、上記「重合性高分子」とは、重合硬
化剤の添加および/または熱、光、電子線などの作用に
より分子間に架橋反応が起こり不融化(硬化)するもの
をいう。更に、上記「フッ化ピッチ・樹脂複合物」と
は、本発明にかかる撥水性樹脂複合材と等価なものであ
り、このものが本発明撥水性樹脂複合材である場合もあ
る。本発明をこのように構成したのは、通常、このフッ
化ピッチ・樹脂複合物を一旦ペレット状やシート状に成
形して本発明にかかる素材と成すが、ペレット等に成形
することなく、溶融状態等のフッ化ピッチ・樹脂複合物
を用いて直接的に部材成形体(2次成形品)と成すこと
も可能であるからである。なお、直接的に部材成形体を
成形する場合においては、フッ化ピッチ・樹脂複合物が
生成された段階で本発明が実施されたことになる。
【0022】
【実施の形態】製造方法を中心にして本発明の実施の形
態を説明する。以下では説明の都合上、液状フッ化ピッ
チ又は溶液状フッ化ピッチを用い、これを樹脂と混合及
び/又は混練しフッ化ピッチ・樹脂複合材を形成する方
法を第1の製法発明とする。また、固体状フッ化ピッチ
を用い、かつ樹脂複合材中のフッ化ピッチ含有量が15
重量%以上となるように混合及び/又は混練してフッ化
ピッチ・樹脂複合材を形成する方法を第2の製法発明と
する。更に、液状の重合性高分子とフッ化ピッチとを混
合した後、重合性高分子を重合硬化させてフッ化ピッチ
・樹脂複合材を形成する方法を第3の製法発明とする。
この説明により、本発明の意義および各構成要素の作用
が明らかになる。なお、「本発明製造方法」の語は、第
1〜第3の製法発明の全てを含む意味で使用する。
【0023】第1の製法発明 第1の製法発明では、液状フッ化ピッチまたは溶液状フ
ッ化ピッチを用い、これらのフッ化ピッチを軟化乃至溶
融状態の樹脂と混合及び/又は混練してフッ化ピッチ・
樹脂複合物を作製する構成としたが、この構成である
と、撥水成分である液状または溶液状のフッ化ピッチ
と、軟化乃至溶融状態の他の樹脂とを混合等するので、
両成分の均一混合が容易であり、マトリックス樹脂とフ
ッ化ピッチとが相溶し合った複合材が得られる。そし
て、このように形成された複合材中のフッ化ピッチは、
極めて撥水性に富む物質であるので、少ない量で撥水性
向上効果を十分に発揮する。
【0024】つまり、第1の製法発明によれば、少ない
配合量で樹脂複合材の撥水性を向上させることができる
ので、撥水性樹脂複合材の低コスト化が図れる。また、
フッ化ピッチの配合量を多くした場合であっても、フッ
化ピッチとマトリックス樹脂とが均一に混ざり合うの
で、高度な撥水性を有する撥水性樹脂複合材が得られ
る。なお、溶液状フッ化ピッチを用いた場合、溶媒は混
練時の熱により蒸発・除去される。
【0025】ところで、従来のフッ素樹脂、例えば熱可
塑性樹脂であるPTFEは、溶媒に溶解せず、またそれ
自体が液状ではない。よって、本発明の如く液状や溶液
状として他の樹脂と混練することができない。また、P
TFEは、温度を加えて溶融しても殆ど流動性を示さな
い。よって、加熱溶融したとしても、マトリックス樹脂
との均一混合を成し得ない。これに対し、上述の如く、
本発明で使用するフッ化ピッチは液状又は溶液状で使用
でき、しかもPTFE等の従来の撥水材よりも撥水性に
優れている。つまり、第1の発明では、従来の撥水成分
と異なるフッ化ピッチの特性を都合良く利用するので、
従来の複合材に比較して格段に撥水性に優れた樹脂複合
材と成し得るのである。
【0026】第2の製法発明 上記第1の製法発明では、フッ化ピッチとして、液状フ
ッ化ピッチまたは溶液状フッ化ピッチを用いたが、本発
明製造方法では、固体状のフッ化ピッチを用いることも
でき、固体状のフッ化ピッチを用いる場合には、樹脂複
合材に対するフッ化ピッチ含有量を15重量%以上とす
る。固体状のフッ化ピッチを用いた場合であっても、混
練時の剪断力や物理的圧力により、固体状フッ化ピッチ
と樹脂とが押し潰され又は微細化される結果、均一な分
散混合が可能であり、15重量%以上の配合量とすれ
ば、十分に撥水性を高めることができる。但し、固体状
のフッ化ピッチを用いた場合、液状又は溶液状に比べ添
加量との関係における撥水性向上効果が縮小する傾向が
あるので、混合効率及び撥水性向上効果を高める観点か
ら、好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下
に微細化した固体状フッ化ピッチ(フッ化ピッチ粉末)
を用いるのがよい。
【0027】上記第1〜第2の製法発明において、マト
リックス樹脂を軟化乃至溶融状態とするには、熱可塑性
樹脂の場合には軟化温度以上の温度を加えればよい。こ
の温度としては、通常200℃〜350℃程度の温度を
用いる。そして、一般には、このようにして軟化乃至溶
融状態とした樹脂に対して液状、溶液状又は固体状のフ
ッ化ピッチを加えて混合又は/及び混練するが、軟化前
の樹脂にフッ化ピッチを添加して加熱・混練し、外部か
ら加えた熱と混練時に発生する熱とにより樹脂を軟化乃
至溶融状態とし、さらに混合及び/又は混練を続行する
のもよい。ここで重要なのは、軟化乃至溶融状態とした
樹脂とフッ化ピッチとを十分に混合及び/又は混練する
ことにある。なお、熱硬化性樹脂では、常温で液状(溶
融状態)のものがあり、このような熱硬化性樹脂をマト
リックス樹脂として使用する場合には、フッ化ピッチと
熱硬化性樹脂を十分に混合及び/又は混練した後に加熱
硬化させればよい。
【0028】第3の製法発明 第3の製法発明では、液状の重合性高分子を用い、重合
性高分子にフッ化ピッチを分散混合した後に重合硬化す
る構成を採用した。この構成であると、フッ化ピッチを
と取り込んだ形で重合性高分子が重合硬化されるので、
樹脂に対するフッ化ピッチの均一分散が一層容易に実現
する。この第3の製法発明においても、フッ化ピッチと
して液状フッ化ピッチ又は溶液状フッ化ピッチを用いる
のが好ましい。液状又は溶液状のフッ化ピッチを使用す
ると、重合性高分子とフッ化ピッチとが分子レベルで均
一混合されるので、フッ化ピッチがマトリックス樹脂と
一体化した極めて撥水性に優れた樹脂複合材が得られ
る。
【0029】以下、本発明の各構成要素について順次説
明する。初めに、本発明で撥水成分として使用するフッ
化ピッチ(固体状フッ化ピッチおよび液状フッ化ピッ
チ)について詳説する。
【0030】固体状フッ化ピッチ 本発明で使用する固体状フッ化ピッチとしては、例えば
特開昭62−275190号公報に記載のものが使用で
き、具体的には原料ピッチとフッ素ガスとを0〜350
℃の温度下で反応させることによって得られるものが使
用できる。この反応における一次原料としてのピッチ
は、石油蒸留残渣、ナフサ熱分解残渣、エチレンボトム
油、石炭液化油、コールタールなどの石油系または石炭
系重質油を蒸留し、沸点200℃未満の低沸点成分を除
去したもの、更にこのものを熱処理及び/又は水添加処
理したものなどが使用できる。フッ化ピッチの種類とし
ては、いわゆる等方性ピッチ、メソフェーズピッチ、水
素化メソフェーズピッチ、メソフェーズ球体からなるメ
ソカーボマイクロビーズなどの何れであってもよい。
【0031】反応温度としては、通常ピッチの軟化点以
下の温度を使用し、反応時のフッ素ガスの圧力として
は、通常0.07〜1.5気圧を使用する。また、反応
原料としてのフッ素ガスは、そのまま用いるか、或いは
窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオンなどの不活性ガスで
希釈して用いる。
【0032】上記条件で作製した固体状フッ化ピッチ
は、実質的に炭素原子及びフッ素原子で構成されたF/
C原子比が0.5〜1.8程度のものとなる。そして、
下記イ〜ホで特定できるフッ化ピッチが、本発明にいう
固体状フッ化ピッチとして好適に使用でき、このものは
耐水性、耐薬品性に優れた非常に安定な化合物である。
【0033】(イ) 粉末X線回折において、2θ=13
°付近に最大強度のピークを示し、θ=40°付近に前
記最大強度のピークよりも強度の小さいピークを示す。 (ロ) X線光電子分光分析において、290.5±1.
0eVにCF基に相当するピークを示し、また、29
2.5±0.9eV付近にCF2 基に相当するピークを
示し、CF基に相当するピークに対するCF2 基に相当
するピークの強さの比が、0.15〜1.5程度であ
る。 (ハ) 真空蒸着によって膜を形成することができる。 (ニ) 30℃における水に対する接触角が141°±8
℃である。 (ホ) 白色ないし黄白色若しくは褐色の分子量1000
〜3000の固体状のものである。
【0034】また、本発明においては、下記特性を有す
る透明樹脂状のフッ化ピッチ(固体)も好適に使用でき
る。この透明状のフッ化ピッチは、例えば上記方法で作
製したフッ化ピッチを更にフッ素ガス含有雰囲気下で
0.1〜3℃/分、好ましくは0.5〜1.5℃/分程
度の昇温速度で250〜400℃程度まで昇温し、1〜
18時間程度、好ましくは6〜112時間程度反応させ
ることにより得ることができる。
【0035】透明樹脂状フッ化ピッチの特性 F/C原子比: 1.5〜1.7 光透過率(250〜900nm): 90% 分子量: 1500〜2000 軟化点: 150〜250℃
【0036】液状フッ化ピッチ 液状フッ化ピッチとしては、例えば特開平2−2719
07号公報に記載された液状フッ化ピッチが使用でき
る。具体的には、例えば前記固体状フッ化ピッチを、更
に固体状フッ化ピッチの前記反応温度を超えて約550
℃まで昇温し、この温度で一定時間保持することにより
作製することができる。また、前記ピッチをフッ素ガス
雰囲気中に置き、200℃前後から550℃位まで昇温
してピッチとフッ素を反応させる方法によっても作製で
きる。なお、反応温度としては、前記固体状フッ化ピッ
チの場合と同様、好ましくはピッチの軟化点以下の温度
とし、反応時のフッ素ガスの圧力としては、一般に0.
07〜1.5気圧を使用する。また、反応原料としての
フッ素ガスは、そのまま用いるか、または窒素、ヘリウ
ム、アルゴン、ネオンなどの不活性ガスに希釈して用い
る。
【0037】上記方法で作製した液状フッ化ピッチは、
下記ヘ〜ルで特定でき、このものは前記固体状フッ化ピ
ッチと同様、耐水性、耐薬品性に優れた非常に安定な化
合物である。
【0038】(へ) 実質的に炭素元素及びフッ素原子か
らなり、かつ二重結合を持たない。 (ト) 分子量が、680〜950である。 (チ) F/C原子比が、1.50〜1.93程度であ
る。 (リ) 赤外線吸収スペクトルにおいて、1215±7c
-1付近にもっとも高い強度の吸収ピークα、1025
±7cm-1付近に前記ピークαよりも低い強度の吸収ピ
ークβ、971±7cm-1に前記ピークβよりも低い強
度の吸収ピークγを持つ。 (ヌ) 熱分析において、420℃まで発熱しながら重量
減少を示し、420℃で100%の重量減少を示す。 (ル)19 F−NMRスペクトルにおいて、ベンゾトリフ
ルオライドのCF3 基をケミカルシフトの基準として、
ケミカルシフトが0〜30ppmの範囲にCF3CF基
およびCF3 CF2 基にそれぞれ相当する2本のピー
ク、−30〜−90ppmの位置にCF2 基に相当する
ブロードなピーク、−100〜−150ppmの位置に
CF基のピークを示す。
【0039】既に説明したように、本発明製造方法にお
いては、液状フッ化ピッチや固体状フッ化ピッチ(粉砕
品を含む)をそのまま用いることもできるが、特に固体
状フッ化ピッチでは、樹脂に対する分散性の点から、溶
媒に実質的に溶解させて用いるのが好ましい。この場
合、溶液状フッ化ピッチとなすための溶媒としては、マ
トリックス樹脂の溶融温度以上の沸点を有する溶媒を使
用するのが好ましい。溶媒の沸点がマトリックス樹脂の
溶融温度未満であると、加熱溶融状態の樹脂に溶液状フ
ッ化ピッチを添加したとき、直ちに溶媒が蒸発してしま
うので、均一混合が困難になるからである。フッ化ピッ
チを溶解でき且つ比較的高沸点の溶媒として、例えばト
リフルオロブチルアミン、パーフルオロジメチルデカヒ
ドロナフタレン、パーフルオロ1,3ジメチルシクロヘ
キサン、2,5−ジフルオロベンゾトリフロライド、パ
ーフルオロデカリン、パーフルオロ1−メチルデカリン
等が例示できる。
【0040】他方、本発明で使用するマトリックス樹脂
としては、種々の熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が使
用でき、その種類は特に限定されない。熱可塑性樹脂と
しては、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレ
ン)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレ
ン)、PS(ポリスチレン)、ABS(アクロニトリ
ル、ブタジエン、スチレン3元ポリマー系樹脂)、PC
(ポリカーボネート)、PA(ポリアミド)、PMMA
(ポリメチルメタクリレート)、PPS(ポリフェニレ
ンスルフィド)、POM(ポリオキシメチレン)、PP
E(ポリフェニレンエーテル)、PET(ポリエチレン
テレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレー
ト)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PE
S(ポリエーテルスルホン)、PEK(ポリエーテルケ
トン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、
ETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン共重合
体)、ポリイミド、ポリウレタン等の樹脂が使用でき
る。このうち、家庭用電器製品や生活雑貨、各種機械・
装置などの用途に用いる撥水性樹脂複合材料とする場合
には、安価で比較的強度が強くかつ撥水性がよいことか
ら、好ましくはポリスチレンまたはポリプロピレンを用
い、より好ましくは耐衝撃性ポリスチレンを用いるのが
よい。
【0041】また、熱硬化性樹脂としては、例えばフェ
ノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエス
テル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂などが使用
できる。
【0042】熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として用
いる場合、押出機、バンバリーミキサ、コニーダー、カ
レンダーロールなどの混合又は混練機を使用し、予め加
温して樹脂を溶融状態とし、この樹脂にフッ化ピッチ
(液状、溶液状、又は固体状の何れか)を加え、混合又
は混練して、フッ化ピッチ・樹脂複合物(溶融状態)と
成す。次いでこの複合物を棒状やシート状に押し出し成
形等し、更にペレタイザーなどでペレット状等の形状に
加工して、本発明にかかる撥水性樹脂複合材と成す。な
お、前記溶融混合状態のフッ化ピッチ・樹脂複合物をそ
のまま用いて直接成形品(部材等)を作製することもで
きる。
【0043】一方、熱硬化性樹脂を用いる場合には、通
常、温度を加えることなく、固体又は液状の樹脂にフッ
化ピッチを加えて混練し、フッ化ピッチ・樹脂複合物と
成し、これを加熱圧縮成形、又は射出成形等により成形
品(部材等)と成す。
【0044】また、例えばPTFE粉末、フェノール樹
脂粉末、超高分子量ポリエチレン粉末などの粉末状樹脂
と溶液状フッ化ピッチとを高速ミキサーで混合してフッ
化ピッチ・樹脂複合物と成し、乾燥(溶媒除去)した
後、冷間成形法で成形品を成形するか、又は乾燥したフ
ッ化ピッチ・樹脂複合物を加熱加圧して成形品と成すこ
ともできる。
【0045】前記第2の製法発明で使用する重合性高分
子としては、各種の重合性高分子が使用でき、例えば、
不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹
脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹
脂、ジアリルフタレート樹脂等が使用可能である。この
うち常温で液体である不飽和ポリエステルが、均一混合
性の点で特に好ましい。なお、重合性高分子が、上記で
例示した熱硬化性樹脂である場合もあるが、「熱硬化性
樹脂」とした場合には、熱硬化前のものであるか、熱硬
化後のものであるかを問題としない。他方、「重合性高
分子」とした場合には、熱硬化前のもののみを指し、第
2の発明では硬化前の重合性高分子に対してフッ化ピッ
チを添加して混合及び/又は混練することが必須要件と
なる。ここで重合性高分子の重合硬化の方法は特に限定
されないが、通常、重合性高分子とフッ化ピッチの混合
物に対し、例えば、過酸化物、アミン、酸、塩基、ヘキ
サメチレンテトラミン等の重合剤や重合開始剤を添加
し、及び/又は熱、光、電子線などを照射することによ
り行う。
【0046】本発明においては、撥水性樹脂複合材のフ
ッ化ピッチと樹脂との配合比率は特に限定されない。よ
って、フッ化ピッチと樹脂との配合比率は撥水性樹脂複
合材の使用用途に応じて適当に設定すればよい。具体的
には、より高度の撥水性を必要とする場合には、フッ化
ピッチ含有量を多くする。他方、コスト低減を図りたい
場合にはフッ化ピッチ含有量を少なくすればよい。但
し、撥水性樹脂複合材中のフッ化ピッチの含有量が50
重量%を超えるようにすると、マトリックス樹脂との均
一混合性に支障が生じるので、撥水性付与効率が悪くな
り、1重量%未満とすると、十分な撥水性が得られな
い。よって、撥水性樹脂複合材中のフッ化ピッチ含有量
としては、1〜50重量%とするのが好ましい。
【0047】ところで、既に説明した如く、液状又は溶
液状のフッ化ピッチを用いる第1の製法発明によると、
フッ化ピッチをマトリックス樹脂中に極めて均一かつ良
好に分散できるが、このことは顕微鏡的に確認できる。
即ち、後記するが、第1の製法発明によれば、倍率10
00倍の走査型電子顕微鏡で観察したとき、フッ化ピッ
チ粒子が確認できない程度にマトリックス樹脂とフッ化
ピッチとが一体化した樹脂複合材が得られる。なお、P
TFE等を用いた従来の撥水性樹脂複合材ではこのよう
な一体化分散は実現できない。
【0048】また、後記する接触角のデータから明白な
ように、本発明にかかる撥水性樹脂複合材は、従来品
(比較例)に比べて顕著に大きい接触角(撥水性の指
標)を有するが、接触角を105以上の樹脂複合材とす
れば、十分な有用性をもって従来品と代替し得るものと
なる。
【0049】
【実施例】実施例に基づいて、本発明を更に具体的に説
明する。
【0050】〈実施例1〉先ず、表1の物性を有する固
体状フッ化ピッチを用意し、この固体状フッ化ピッチ3
00gを、溶媒700g(旭硝子(株)製アフルード・
E−18)に溶解して溶液状フッ化ピッチと成した。マ
トリックス樹脂としては、耐衝撃性ポリスチレン(旭化
成(株)製、商品名“AG102”)を用いた。
【0051】
【表1】
【0052】製造方法は次の通りである。2軸異方向ス
クリュ押出機(ナカタニ機械(株)製、AS20)に、
耐衝撃性ポリスチレンを700g/hの割合で供給し、
加熱・加圧温度を230℃にし、耐衝撃性ポリスチレン
を溶融させた。この溶融状態の耐衝撃性ポリスチレンに
対し、押出機の中間部にあるベントより、前記溶液状フ
ッ化ピッチをフッ化ピッチ・樹脂混練物(溶媒を含まな
いもの)中のフッ化ピッチ含有量が2.7重量%となる
ように調整しながら徐々に注加し混練した。次いでこの
フッ化ピッチ・樹脂混練物を、順次押し出しヘッド部か
ら棒状に押し出し、更にペレタイザーで約3mmに切断
して、実施例1にかかる撥水性樹脂複合材ペレットと成
した。
【0053】接触角の測定 上記ペレットを、射出成形機(住友重機(株)製、商品
名“ネスタール”)を用い、射出圧力950Kg/cm
2 、最高温度230℃、型締め圧力15トンの条件で、
12.4mm×13mm×3mmの大きさの平板に成形
し、これを接触角測定用の試験片とした。接触角の測定
は、試験片表面を水を含ませたガーゼで拭き取り、水分
を乾燥さた後、協和界面科学 (株) 製のFACE接触角
測定装置(CA-A型)を用い、水を用いた液滴法によって
行った。
【0054】測定結果を、製造条件と共に後記表3に一
覧表示する。なお、表3には、他の実施例および比較例
の結果等についも同様に記載してある。また、実施例1
および後記実施例2、比較例1〜3については、試験片
をそのまま用いた接触角(拭き取り前の接触角)も測定
したので、その結果を表4に示す。
【0055】〈実施例2〉溶液状フッ化ピッチの代わり
に、表2に示す物性の液状フッ化ピッチを用いたこと、
及びフッ化ピッチ・樹脂混練物中のフッ化ピッチ含有量
が3.0重量%となるように液状フッ化ピッチを添加し
たこと以外については、実施例1と同様にして、実施例
2にかかる撥水性樹脂複合材ペレットを作製した。ま
た、実施例1と同様にして接触角の測定を行った。
【0056】
【表2】
【0057】〈実施例3〉耐衝撃性ポリスチレンに代え
て、ポリプロピレン(三菱化学(株)製、商品名“BC
4”)を用いたこと、フッ化ピッチ・樹脂混練物に対す
るフッ化ピッチの含有量が15重量%となるように溶液
状フッ化ピッチを添加したこと、及び混練温度を240
℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3
にかかる撥水性樹脂複合材ペレットを作製した。また、
実施例1と同様にして接触角を測定した。
【0058】〈実施例4〉耐衝撃性ポリスチレンに代え
て、通常のポリスチレン(旭化成 (株) 製、商品名“G
P666”)を用いたこと、及びフッ化ピッチ・樹脂混
練物中のフッ化ピッチ含有量が20重量%となるように
溶液状フッ化ピッチを添加したこと以外は、実施例1と
同様にして、実施例3にかかる撥水性樹脂複合材ペレッ
トを作製した。また、実施例1と同様にして接触角を測
定した。
【0059】〈実施例5〉耐衝撃性ポリスチレンに代え
て、ポリプロピレン(三菱化学(株)製、商品名“BC
4”)を用いたこと、フッ化ピッチ・樹脂混練物に対す
るフッ化ピッチの含有量が25重量%となるように溶液
状フッ化ピッチを添加したこと、及び混練温度を240
℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3
にかかる撥水性樹脂複合材ペレットを作製した。また、
実施例1と同様にして接触角を測定した。なお、この実
施例5と前記実施例3とは、フッ化ピッチ含有量のみが
異なる。
【0060】〈実施例6〉溶液状フッ化ピッチに代えて
粉末フッ化ピッチ(平均粒子径約1μm)を用いたこ
と、フッ化ピッチ・樹脂混練物に対する含有量を15重
量%としたこと以外については、実施例1と同様にし
て、実施例6にかかる撥水性樹脂複合材ペレットを作製
した。また、実施例1と同様にして接触角を測定した。
【0061】〈実施例7〉溶液状フッ化ピッチに代え
て、粉末フッ化ピッチ(平均粒子径約1μm)を用いた
こと、フッ化ピッチ・樹脂混練物に対する含有量を15
重量%としたこと、及び耐衝撃性ポリスチレンに代えて
ポリプロピレン(三菱化学(株)製、商品名“BC
4”)を用いたこと、並びに混練温度を240℃とした
こと以外は、実施例1と同様にして、実施例7にかかる
撥水性樹脂複合材ペレットを作製した。また、実施例1
と同様にして接触角を測定した。なお、この実施例7と
前記実施例3とは、添加フッ化ピッチの性状(粉末:溶
液)のみが異なる。
【0062】〈実施例8〉フッ化ピッチ含有量を30重
量%としたこと以外は、実施例7と同様にして、実施例
8にかかる撥水性樹脂複合材ペレットを作製した。その
他の事項については実施例1と同様である。
【0063】〈実施例9〉不飽和ポリエステル(武田薬
品工業(株)製、商品名“ポリマール”)に対し、フッ
化ピッチ・樹脂混練物中のフッ化ピッチ含有量が40重
量%となるように、粉末フッ化ピッチ(平均粒子径約1
μm)を加え、更に不飽和ポリエステルに対し0.2重
量%の重合硬化剤(メチルエチルケトンパーオキサイ
ド)を加え、常温で混練して不飽和ポリエステル硬化さ
せた。この硬化物を前記ペレタイザーで約3mmに切断
し、実施例9にかかる撥水性樹脂複合材ペレットと成し
た。その他の事項については、実施例1と同様に行っ
た。
【0064】〈比較例1〉撥水性成分を添加しないで、
耐衝撃性ポリスチレンのみ(混練温度230℃)で比較
例1にかかるペレット及び試験片を作製した。その他の
事項については、実施例1と同様に行った。
【0065】〈比較例2〉撥水性成分を添加しないで、
ポリプロピレンのみ(混練温度240℃)で比較例2に
かかるペレット及び試験片を作製した。その他の事項に
ついては、実施例1と同様に行った。
【0066】〈比較例3〉ペレット状の耐衝撃性ポリス
チレンにシリコーン油(東芝シリコーン(株)製、商品
名“TSF451−1000”)を0.2重量%添加
し、ヘンシェルミキサー中で1000rpmで30秒間
混合し、このものに粉末状フッ化ピッチ(平均粒子径約
1μm)をフッ化ピッチ・樹脂混練物中のフッ化ピッチ
含有量が4重量%となるように添加し、更に1000r
pmで30秒間混合した。この混合物を実施例1と同様
の押出機(混練温度230℃)を用いて混練し、比較例
3にかかる複合材と成した。その他の事項については実
施例1と同様に行った。
【0067】〈比較例4〉フッ化ピッチの代わりに、ポ
リテトラフルオロエチレン粉末(ダイキン(株)製、商
品名“ルブロンL5”)を前記ベントから投入したこと
以外は、実施例1と同様にして、比較例4にかかる樹脂
複合材を作製した。
【0068】
【表3】
【0069】接触角の測定結果 表3から次のことが明らかになる。先ず、耐衝撃性ポリ
スチレンのみ、またはポリプロピレンのみからなる比較
例1及び2と、樹脂にフッ化ピッチを配合してなる実施
例1〜9との比較から、フッ化ピッチを配合して複合材
と成すと、撥水性が顕著に高まることが確認された。
【0070】次に、液状又は溶液状のフッ化ピッチを用
いた実施例1〜2と、粉末状フッ化ピッチを用いた比較
例3及びPTFE粉末を用いた比較例4との比較から、
液状又は溶液状のフッ化ピッチを用いた場合には、少量
の添加で撥水性を高めることができることが確認され
た。
【0071】他方、粉末状(固体状)フッ化ピッチを樹
脂複合材に対し15重量%以上添加してなる実施例6〜
8と、比較例3〜4及び実施例1との比較から、粉末状
フッ化ピッチを用いた場合であっても、フッ化ピッチを
樹脂複合材に対し15重量%以上とすれば、十分に撥水
性を高めることができることが確認された。
【0072】更に、重合性高分子(不飽和ポリエステ
ル)にフッ化ピッチ粉末を分散混合してなる実施例9の
結果から、重合性高分子にフッ化ピッチ粉末を分散混合
して樹脂複合材となす方法によると、高度な撥水性を有
する複合材が得られることが判る。なお、実施例9で
は、粉末フッ化ピッチを用いたが、液状又は溶液状のフ
ッ化ピッチを用いれば、より少ない量のフッ化ピッチで
高度な撥水性を有する複合材が得られることが確認され
ている。
【0073】表4に、参考資料として試験片をそのまま
用いて測定した接触角と、試験片を水を含ませたガーゼ
で拭き取った後に測定した接触角、及び両者の差を示
す。表4において、本発明品の拭き取り前後の接触角の
変動値は、比較例品のそれと同等乃至それ以下であっ
た。なお、拭き取りによる接触角の変動の大小は、フッ
化ピッチの分散不均一状態を反映すると考えられる。
【0074】
【表4】
【0075】電子顕微鏡での観察 溶液状のフッ化ピッチを用いた実施例1と、粉末状フッ
化ピッチを用いた比較例3について、走査型電子顕微鏡
(倍率1000倍)を用いて、複合材中におけるフッ化
ピッチの分散状態を観察した。観察方法は、実施例1及
び比較例3の樹脂複合材に白金スパッタリングを施した
ものを検体とし、この検体を (株) 日立製作所製の電界
放電型走査型電子顕微鏡“S−4000”を用いて10
00倍に拡大して観察する方法によった。
【0076】観察結果を図1〜図6に顕微鏡写真で示
す。図1〜図6うち、図1及び図4は、それぞれ実施例
1、比較例3の樹脂複合材の性状を示す顕微鏡写真その
ものであり、図2(実施例1)と図5(比較例3)、及
び図3(実施例1)と図6(比較例3)は、実施例1と
比較例3の性状(フッ化ピッチ分散状態)の違いを分か
りやすくするために、前記図1と図4をぞれぞれ同一条
件で画像処理(コピー法による)した図である。このう
ち、図3と図6はそれぞれ図2、図5をネガポジ反転し
た図であり、図5、図6については、フッ化ピッチ粒子
の分散状態を判り易くするために、フッ化ピッチ粒子部
分の濃淡を強調してある。
【0077】図1〜図6から明らかな如く、実施例1の
フッ化ピッチ・樹脂複合材については、粒子状のフッ化
ピッチが確認されなかった。他方、比較例3の樹脂複合
材ではフッ化ピッチ微粒子(1μm前後の球状粒子)が
多数観察された。この結果から、溶液状のフッ化ピッチ
を用いる本発明製造方法によれば、フッ化ピッチとマト
リックス樹脂とが相溶状態で一体化した撥水性樹脂複合
材と成し得ることが判る。
【0078】
【発明の効果】以上から明らかなように、液状または溶
液状のフッ化ピッチを用いる第1の製法発明によれば、
優れた撥水機能を有するフッ化ピッチをマトリックス樹
脂と完全に親和させ、一体化させることができる。よっ
て、撥水性に乏しい樹脂に対し、少量のフッ化ピッチを
配合して複合材と成せば、PTFE等の従来の撥水成分
を用いた樹脂複合材に比べて、格段に優れた撥水性を有
する撥水性樹脂複合材が得られる。
【0079】また、第1の製法発明によれば、大量のフ
ッ化ピッチとマトリックス樹脂とを一体化させることも
可能であるので、高度な撥水性が要求される用途で使用
可能な撥水性樹脂複合材が得られる。
【0080】更に、粉末状フッ化ピッチを樹脂複合材に
対し15重量%以上配合する第2の製法発明、及び重合
性高分子にフッ化ピッチ(液状、溶液状又は粉末状)を
分散混合した後、重合性高分子を重合硬化する第3の製
法発明によっても、PTFE等を撥水成分とする樹脂複
合材では得ることのできない優れた撥水特性を有する撥
水性複合樹脂材が得られる。
【0081】以上から、本発明によると、樹脂複合材の
使用用途に応じてフッ化ピッチ量やマトリックス材の種
類を選択することにより、撥水性、強度、価格等を任意
に設定できるので、広範な分野で使用可能な新規な撥水
性樹脂複合材が提供できることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1にかかる撥水性樹脂複合材の性状(フ
ッ化ピッチの分散状態)を示す走査型電子顕微鏡写真で
ある。
【図2】図1の走査型電子顕微鏡写真のコントラストを
変えた図である。
【図3】図2をポジネガ反転した図である。
【図4】比較例3にかかる樹脂複合材の性状(フッ化ピ
ッチの分散状態)を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】図4の走査型電子顕微鏡写真のコントラストを
変化させた図である。
【図6】図5をポジネガ反転した図である。

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 撥水性樹脂複合材に対し15重量%以上
    の固体状フッ化ピッチと、樹脂とを混合及び/又は混練
    してフッ化ピッチ・樹脂複合物となす工程を備えた撥水
    性樹脂複合材の製造方法。
  2. 【請求項2】 液状フッ化ピッチ及び/又はフッ化ピッ
    チを溶媒に実質的に溶解してなる溶液状フッ化ピッチ
    と、樹脂とを混合及び/又は混練してフッ化ピッチ・樹
    脂複合物となす工程を備えた撥水性樹脂複合材の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 前記樹脂として、ポリスチレン又はポリ
    プロピレンを用いることを特徴とする、請求項1又は2
    記載の撥水性樹脂複合材の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記樹脂として、軟化乃至溶融状態の樹
    脂を用いることを特徴とする、請求項1、2又は3記載
    の撥水性樹脂複合材の製造方法。
  5. 【請求項5】 フッ化ピッチと重合性高分子とを混合し
    た後、重合性高分子を重合硬化してフッ化ピッチ・樹脂
    複合物と成す工程を備えた撥水性樹脂複合材の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 前記重合性高分子が、液状であることを
    特徴とする、請求項5記載の撥水性樹脂複合材の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 前記液状の重合性高分子として、不飽和
    ポリエステルを用いることを特徴とする、請求項6記載
    の撥水性樹脂複合材の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記フッ化ピッチとして、液状フッ化ピ
    ッチ及び/又は実質的にフッ化ピッチが溶解してなる溶
    液状フッ化ピッチを用いることを特徴とする、請求項
    5、6、又は7記載の撥水性樹脂複合材の製造方法。
  9. 【請求項9】 樹脂をマトリックス相とし、フッ化ピッ
    チを分散相とする撥水性樹脂複合材。
  10. 【請求項10】 前記フッ化ピッチの撥水性樹脂複合材
    に対する重量%が、1〜50%である、請求項9記載の
    撥水性樹脂複合材。
  11. 【請求項11】 前記樹脂が、ポリスチレン又はポリプ
    ロピレンである、請求項9又は10記載の撥水性樹脂複
    合材。
  12. 【請求項12】 前記撥水性樹脂複合材の水による液滴
    法での接触角が、105度以上である、請求項9、1
    0、又は11記載の撥水性樹脂複合材。
  13. 【請求項13】 前記撥水性樹脂複合材は、倍率100
    0倍の走査型電子顕微鏡によりフッ化ピッチ粒子が確認
    されないものである、請求項9、10、11、又は12
    記載の撥水性樹脂複合材。
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