JPH0993686A - スピーカ装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 バスレフ型スピーカ装置の特性（変換効率の
高さ、音の遅れ感のなさ）を維持しつつ、耐入力特性、
周波数特性を改善する。 【解決手段】 音響抵抗体３が設けられた前方側開口部
２を有する前室部１と、この前室部１に隔壁部９を介し
て設けられた後室部４と、隔壁部９に取付けられたスピ
ーカユニット１１と、後室部４を前方側外方に通じさせ
る中空ダクト５とにより構成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、電気信号を音響に
変換するスピーカ装置に関する技術分野に属する。

【０００２】

【従来の技術】従来、スピーカユニットをエンクロージ
ャに取付けて構成されたスピーカ装置が提案されてい
る。

【０００３】上記スピーカユニットは、図３に示すよう
に、ボイスコイルが取付けられた振動板１１３と磁気回
路１１２とを有し、該ボイスコイルに電気信号を供給さ
れると、該磁気回路１１２の作用により該ボイスコイル
が該振動板１１３を伴って振動させられて、音響を発生
するように構成されている。上記磁気回路１１２及び上
記振動板１１３は、フレーム１１４に取付けられて支持
されている。

【０００４】上記スピーカユニット１１１において、上
記振動板１１３は、放音部となる前面側及び背面側の双
方に対して、音響を放射する。このように上記振動板１
１３の前後において発生される音響は、互いに逆位相で
あるため、互いに打ち消し合ってしまい、良好な音響再
生を阻害する。

【０００５】そして、上記エンクロージャは、筐体状に
構成され、前面側の壁部に上記スピーカユニットが取付
けられる。上記スピーカユニット１１１は、背面側を上
記エンクロージャ内に臨ませて、このエンクロージャに
取付けられる。

【０００６】このスピーカ装置において、上記エンクロ
ージャを密閉された筐体（いわゆる密閉型エンクロージ
ャ）とした場合においては、上記スピーカユニット１１
１の背面側より放射される音響、いわゆる背圧は、該エ
ンクロージャ内に閉じ込められて減衰され、外方側に放
射されることがない。したがって、このように上記エン
クロージャを有するスピーカ装置においては、上記背圧
の影響を受けることのない良好な音響再生が行える。

【０００７】また、上記スピーカ装置においては、上記
エンクロージャを密閉されたものとせず、図３に示すよ
うに、このエンクロージャ１０８の内室部１０４を中空
ダクト１０５を介して前方側外方に通じさせた、いわゆ
るバスレフ型のスピーカ装置が提案されている。

【０００８】このようなバスレフ型のスピーカ装置は、
特に、低周波数帯域の音響を再生するウーファースピー
カ装置、または、いわゆるスーパーウーファースピーカ
装置として構成される。

【０００９】このスピーカ装置において、上記スピーカ
ユニット１１１は、上記エンクロージャ１０８の前壁部
１１６に上記フレーム１１４を取付けられ、この前壁部
１１６に設けられた開口部１１０を介して、放音部であ
る上記振動板１１３の前面部を前方側外方に臨ませてい
る。

【００１０】このバスレフ型のスピーカ装置において
は、上記スピーカユニット１１１より発せられる背圧
は、上記内室部１０４内より、上記中空ダクト１０５の
音導孔１０６内を経て、前方側外方に放射される。この
とき、上記背圧は、この音導孔１０６内を経ることによ
り、上記スピーカユニット１１１より前方側に放射され
る音響と同位相となされる。

【００１１】このバスレフ型のスピーカ装置において
は、電気信号の音響への変換効率が良好であり、また、
再生音響の音質については、いわゆる音の遅れ感のない
良好な音質の音響再生が行える。

【００１２】また、図５に示すように、上記バスレフ型
のスピーカ装置のエンクロージャに、さらに、前室部１
０１を設けて構成したスピーカ装置が提案されている。

【００１３】すなわち、このスピーカ装置においては、
上記スピーカユニット１１１は、上記エンクロージャ１
０８内を前室部１０１及び後室部１０４に分割する隔壁
部１０９に上記フレーム１１４を取付けられ、この隔壁
部１０９に設けられた開口部１１０を介して、放音部で
ある上記振動板１１３の前面部を該前室部１０１内に臨
ませている。

【００１４】また、上記後室部１０４は、上記隔壁部１
０９を貫通してこの隔壁部１０９に取付けられた中空ダ
クト１０５を介して、上記前室部１０１内に通じさせら
れている。

【００１５】そして、上記前室部１１０は、放音ダクト
１１７を介して、前方側外方に通じさせられている。こ
の放音ダクト１１７は、音導孔１１８を有し、上記エン
クロージャ１０８の前壁部を貫通してこの前壁部に取付
けられている。

【００１６】このスピーカ装置においては、上記スピー
カユニット１１１より発せられる背圧は、上記内室部１
０４内より、上記中空ダクト１０５の音導孔１０６内を
経て、上記前室部１０１内に至る。そして、この背圧
は、上記スピーカユニット１１１より前方側に放射され
る音響とともに、上記放音ダクト１１７の音導孔１１８
を経て、前方側外方に放射される。

【００１７】このスピーカ装置においては、耐入力特性
（制動特性）が良好である。そして、このスピーカ装置
の再生音響の周波数−音圧特性においては、図６に示す
ように、上記前室部１０１の共振周波数である周波数に
ピーク（共振峰）が生じている。

【００１８】なお、このスピーカ装置において上記前室
部１０１の共振周波数に対応して生ずるピークの周波数
は、この前室部１０１と上記後室部１０４との容積比、
及び、上記放音ダクト１１７の音導孔１１８の断面積
（すなわち、該前室部１０１の前方側に向いた開口部の
大きさ）により、図６中矢印Ｇで示すように、変化す
る。

【００１９】すなわち、上記後室部１０４の容積の上記
前室部１０１の容積に対する比率が小さくなると、該前
室部１０１の共振周波数は、低くなる。また、上記放音
ダクト１１７の音導孔１１８の断面積が小さくなると、
上記前室部１０１の共振周波数は、低くなる。

【００２０】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したバ
スレフ型のスピーカ装置においては、耐入力特性（制動
特性）が良好とはいえない。また、このバスレフ型のス
ピーカ装置における再生音響の周波数−音圧特性は、図
４に示すように、カット周波数が高く、ウーファースピ
ーカ装置としては問題がある。

【００２１】そして、上述のように、上記バスレフ型の
スピーカ装置に上記前室部１０１を追加して構成された
スピーカ装置においては、電気信号の音響への変換効率
が良好とはいえず、また、再生音響の音質については、
いわゆる音の遅れ感があり、充分に良好な音質とはいえ
ない。

【００２２】そこで、本発明は、上述の実情に鑑みて提
案されるものであって、上記バスレフ型のスピーカ装置
における良好な電気−音響変換効率、及び、良好な音質
の音響再生特性を維持しつつ、耐入力特性が向上され、
また、再生音響の周波数−音圧特性の改善が図られたス
ピーカ装置の提供という課題を解決しようとするもので
ある。

【００２３】

【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
め、本発明に係るスピーカ装置は、前方側に開口部を有
する前室部と、該開口部を閉塞して取付けられた音響抵
抗部材と、該前室部に対して隔壁部を介してこの前室部
の後方側に設けられた後室部と、該隔壁部に取付けられ
放音部を該前室部内に臨ませ背面部を該後室部内に臨ま
せたスピーカユニットと、該後室部内より前方側に向け
て配設され該後室部内を前方側外方に通じさせる中空ダ
クトとを備えたものである。

【００２４】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照しながら説明する。

【００２５】本発明に係るスピーカ装置は、図１に示す
ように、隔壁部９により前室部１と後室部４とに分割さ
れたエンクロージャ８を有して構成される。このエンク
ロージャ８は、中空の筐体状に構成されている。上記後
室部４は、上記前室部１に対して上記隔壁部９を介して
この前室部１の後方側に設けらていることとなる。

【００２６】上記前室部１は、前方側に開口部２を有し
ている。この開口部２は、上記エンクロージャ８の前壁
部に取付けられた音響抵抗部材（吸音フィルタ）３によ
り閉塞されている。この音響抵抗部材３は、いわゆるウ
レタンフォームやスポンジの如き多孔性、または、綿状
のの材料により形成されている。

【００２７】上記隔壁部９には、放音部を上記前室部１
内に臨ませ、背面部を上記後室部４内に臨ませたスピー
カユニット１１が取付けられている。

【００２８】上記スピーカユニット１１は、ボイスコイ
ルが取付けられた振動板１３と磁気回路１２とを有し、
該ボイスコイルに電気信号を供給されると、該磁気回路
１２の作用により該ボイスコイルが該振動板１３を伴っ
て振動させられて、音響を発生するように構成されてい
る。上記磁気回路１２及び上記振動板１３は、フレーム
１４に取付けられて支持されている。

【００２９】すなわち、上記スピーカユニット１１は、
上記隔壁部９に上記フレーム１４を取付けられ、この隔
壁部９に設けられた開口部１０を介して、放音部である
上記振動板１３の前面部を該前室部１内に臨ませてい
る。

【００３０】そして、このスピーカ装置においては、上
記後室部４内より前方側に向けて配設され、該後室部４
内を前方側外方に通じさせる中空ダクト５が設けられて
いる。この中空ダクト５は、上記隔壁部９に設けられた
透孔１５及び上記エンクロージャ８の前壁部に設けられ
た透孔７に挿通されて、これら隔壁部９及び前壁部に取
付けられている。

【００３１】このスピーカ装置においては、上記スピー
カユニット１１より発せられる背圧は、上記後室部４内
より、上記中空ダクト５の音導孔６内を経て、前方側外
方に放射される。このとき、上記背圧は、この音導孔６
内を経ることにより、上記スピーカユニット１１より前
方側に放射され上記前室部１内及び上記音響抵抗体３を
経て前方側に放射される音響と同位相となされる。

【００３２】なお、このスピーカ装置においては、上記
後室部４の容積をｍとし、上記前室部１の容積をｎとす
ると、該容積ｍの該容積ｎに対する比率は、１乃至８程
度（すなわち、１≦（ｍ／ｎ）≦８）が適当である。

【００３３】このスピーカ装置においては、前述したバ
スレフ型のスピーカ装置と同様に、電気信号の音響への
変換効率が良好であり、また、再生音響の音質について
は、いわゆる音の遅れ感のない良好な音質の音響再生が
行える。

【００３４】また、このスピーカ装置においては、上記
開口部２が上記音響抵抗部材３により閉塞されているこ
とにより、耐入力特性（制動特性）が良好となってお
り、また、歪率も改善されている。

【００３５】そして、このスピーカ装置の周波数−イン
ピーダンス特性においては、上記音響抵抗部材３によっ
て制動特性が改善されていることにより、図７に示すよ
うに、Ｈで示す周波数帯域に、上記前室部１の共振ピー
クがない。そのため、このスピーカ装置における再生音
響の周波数−音圧特性においては、図８に示すように、
図７中にＨで示した周波数帯域に、ピーク（共振峰）が
生ずることがなく、滑らかで良好な周波数−音圧特性と
なっている。

【００３６】なお、上記音響抵抗部材３を厚くする等に
よりこの音響抵抗部材３の音響抵抗を大きくすると、上
記スピーカユニット１１に対する制動が大きくなり、再
生音響の周波数−音圧特性においては、図８中矢印Ｊで
示すように、カット周波数が低くなり、ウーファースピ
ーカ装置として良好な周波数−音圧特性を実現できる。

【００３７】

【実施例】以下、本発明の具体的な実施例を挙げる。

【００３８】上述のように構成された本発明に係るスピ
ーカ装置を、上記後室部４の容積ｍの上記前室部１の容
積ｎに対する比率（ｍ／ｎ）を４．１５として作製し
た。

【００３９】このスピーカ装置の周波数−音圧特性は、
図２において、曲線Ａで示すように、前述したように、
良好な特性となっている。また、このスピーカ装置の周
波数−インピーダンス特性は、図２中曲線Ｄで示すよう
に、上記前室部１の共振ピークを生じていないものとな
っている。

【００４０】前述したバスレフ型のスピーカ装置の周波
数−音圧特性は、図２中曲線Ｃで示すものであり、ま
た、このスピーカ装置の周波数−インピーダンス特性
は、図２中曲線Ｆで示すものであって、耐入力特性（制
動特性）及び周波数−音圧特性に問題のある状態となっ
ている。

【００４１】さらに、前述したバスレフ型のスピーカ装
置に前室部を追加して構成したスピーカ装置の周波数−
音圧特性は、図２中曲線Ｂで示すものであり、また、こ
のスピーカ装置の周波数−インピーダンス特性は、図２
中曲線Ｅで示すものであって、該前室部の共振（３００
Ｈｚ乃至４００Ｈｚ程度）により、対応する周波数帯域
において周波数−音圧特性に共振ピークが生じている。

【００４２】

【発明の効果】上述のように、本発明に係るスピーカ装
置は、音響抵抗部材が取付けられた開口部を有する前室
部と、この前室部に対して隔壁部を介して設けられた後
室部と、該隔壁部に取付けられたスピーカユニットと、
該後室部内を前方側外方に通じさせる中空ダクトとを備
えているので、耐入力特性（制動特性）が良好であり、
電気信号の音響への変換効率が良好であり、また、再生
音響の周波数−音圧特性が良好であり、さらに、音の遅
れ感のない良好な音質の音響再生が行える。

【００４３】すなわち、本発明に係るスピーカ装置にお
いては、小型、かつ、簡単な構成により、いわゆるスー
パーウーファースピーカ装置を構成することができる。
また、このスピーカ装置においては、再生音響の音圧を
高くできるので、このスピーカ装置に供給する電気信号
を増幅するアンプ（増幅回路）の負担を軽減することが
できる。

【００４４】なお、このスピーカ装置おいて、上記音響
抵抗部材は、このスピーカ装置のいわゆるフロントグリ
ルとして構成されたものとすることができる。

【００４５】したがって、本発明は、上記バスレフ型の
スピーカ装置における良好な電気−音響変換効率、及
び、良好な音質の音響再生特性を維持しつつ、耐入力特
性が向上され、また、再生音響の周波数−音圧特性の改
善が図られたスピーカ装置を提供することができるもの
である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るスピーカ装置の構成を示す縦断面
図である。

【図２】上記スピーカ装置の周波数−音圧特性及び周波
数−インピーダンス特性を従来のスピーカ装置の特性と
比較して示すグラフである。

【図３】従来のバスレフ型のスピーカ装置の構成を示す
縦断面図である。

【図４】上記バスレフ型のスピーカ装置の周波数−音圧
特性を模式的に示すグラフである。

【図５】従来の前室部を有するスピーカ装置の構成を示
す縦断面図である。

【図６】上記従来の前室部を有するスピーカ装置の周波
数−音圧特性を模式的に示すグラフである。

【図７】本発明に係るスピーカ装置の周波数−インピー
ダンス特性を模式的に示すグラフである。

【図８】本発明に係るスピーカ装置の周波数−音圧特性
を模式的に示すグラフである。

【符号の説明】

１ 前室部 ２ 開口部 ３ 音響抵抗部材 ４ 後室部 ５ 中空ダクト ８ エンクロージャ ９ 隔壁部 １１ スピーカユニット

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 前方側に開口部を有する前室部と、 上記開口部を閉塞して取付けられた音響抵抗部材と、 上記前室部に対して隔壁部を介してこの前室部の後方側
   に設けられた後室部と、 上記隔壁部に取付けられ、放音部を上記前室部内に臨ま
   せ、背面部を上記後室部内に臨ませたスピーカユニット
   と、 上記後室部内より前方側に向けて配設され、該後室部内
   を前方側外方に通じさせる中空ダクトとを備えたスピー
   カ装置。