JPH0961594A - 放射性廃棄物保管処分施設及び該施設を用いた放射性廃棄物の地層処分方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 崩壊熱が除去されるまで放射性廃棄物を冷却
保管し、崩壊熱が除去された後、放射性廃棄物を地層処
分できるようにする。 【解決手段】 冷却水５を貯留し得られ且つ放射性廃棄
物を封入した複数の放射性廃棄物封入容器４を保管し得
るように地中岩盤３の内部に形成した封入容器貯蔵室１
と、地表２から封入容器貯蔵室１へ延びる封入容器搬送
坑１０と、封入容器貯蔵室１に貯留される冷却水５を循
環させ得る循環ポンプ２０及び管路２１，２３，２４，
２５と、管路２３，２４の間に設けられ且つ冷却水５を
冷却する熱交換器１９とを備え、放射性廃棄物の崩壊熱
が除去された後、封入容器貯蔵室１の冷却水５を排出
し、封入容器貯蔵室１及び封入容器搬送坑１０の内部に
ベントナイト系充填材を充填させて放射性廃棄物を地層
処分する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は放射性廃棄物を安定
した状態で封入する放射性廃棄物保管処分施設及び該施
設を用いた放射性廃棄物の地層処分方法に関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】発電プラントの原子炉において使用され
る燃料は、３〜４年程度供用されると、燃料中に核分裂
生成物が蓄積して燃焼に限界が生じ、新しいものに交換
される。

【０００３】また、燃焼に限界が生じた燃料等の放射性
廃棄物は、発電プラントに設けられた放射性廃棄物貯蔵
プールにおいて水に浸漬した状態で保管される。

【０００４】この放射性廃棄物には、未燃焼のウランや
燃料の燃焼に際して生成されるプルトニウムが核分裂生
成物に混在した状態で含まれており、放射性廃棄物から
未燃焼のウラン等を回収する再処理作業を行い、これに
より得られるウラン等を原子炉の燃料として再利用する
ことが実施されようとしている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、放射性
廃棄物の再処理作業は、現時点においては本格的に実施
されておらず、また、放射性廃棄物貯蔵プールに保管さ
れる放射性廃棄物の総量は、年々増加する傾向を呈して
いる。

【０００６】そこで、放射性廃棄物を、地表から約１０
００ｍ程度の地中岩盤に埋設する地層処分を行うことが
検討されているが、放射性廃棄物の崩壊熱が除去される
までには、３０年〜５０年程度の期間を要するので、上
述した地層処分を行うのにあたっては、崩壊熱が除去さ
れるまでの間、放射性廃棄物を冷却保管する必要があ
る。

【０００７】本発明は上述した実情に鑑みてなしたもの
で、崩壊熱が除去されるまで放射性廃棄物を冷却保管
し、崩壊熱が除去された後、地層処分することが可能な
放射性廃棄物保管処分施設を提供し、該放射性廃棄物保
管施設を用いて放射性廃棄物を安定した状態で地層処分
できるようにすることを目的としている。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の請求項１に記載した放射性廃棄物保管処分
施設においては、冷却水を貯留し得られ且つ放射性廃棄
物を封入した複数の放射性廃棄物封入容器を保管し得る
ように地中岩盤の内部に形成した封入容器貯蔵室と、地
表から前記の封入容器貯蔵室へ延びる封入容器搬送坑
と、前記の封入容器貯蔵室に貯留される冷却水を循環さ
せ得る冷却水循環装置と、該冷却水循環装置により循環
する冷却水を冷却する冷却装置とを備えている。

【０００９】また、本発明の請求項２に記載した放射性
廃棄物保管処分施設においては、上述した請求項１に記
載の放射性廃棄物保管処分施設の構成に加え、封入容器
貯蔵室の外方の地層内に連通する管路と、該管路を冷却
水循環装置に連通させ得る流路切換弁とを有する。

【００１０】更に、本発明の請求項３に記載した放射性
廃棄物保管処分施設を用いた放射性廃棄物の地層処分方
法においては、封入容器貯蔵室に保管された放射性廃棄
物封入容器内の放射性廃棄物の崩壊熱が除去された後、
封入容器貯蔵室に貯留されている冷却水を排出し、封入
容器貯蔵室及び封入容器搬送坑の内部にベントナイト系
充填材を充填する。

【００１１】本発明の請求項１に記載の放射性廃棄物保
管処分施設では、封入容器貯蔵室に貯留されている冷却
水を、冷却水循環装置によって循環させるとともに冷却
装置により冷却し、封入容器貯蔵室に保管されている放
射性廃棄物封入容器に封入された放射性廃棄物の崩壊熱
を除去する。

【００１２】また、本発明の請求項２に記載の放射性廃
棄物保管処分施設では、流路切換弁を切り換えることに
より地層内に連通する管路を冷却水循環装置に接続し、
地下水を冷却水として汲み上げる。

【００１３】更に、本発明の請求項３に記載の放射性廃
棄物保管処分施設を用いた放射性廃棄物の地層処分方法
では、放射性廃棄物の崩壊熱が除去された後、封入容器
貯蔵室に貯留されている冷却水をベントナイト系充填材
に置換し、更に封入容器貯蔵室及び封入容器搬送坑の内
部にベントナイト系充填材を充填させることにより、放
射性廃棄物を封入した放射性廃棄物封入容器を地層処分
する。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照しつつ説明する。

【００１５】図１及び図２は本発明の放射性廃棄物保管
処分施設の実施の形態の一例を示すものである。

【００１６】１は封入容器貯蔵室であり、該封入容器貯
蔵室１は、地表２から約１０００ｍ程度の地中岩盤３の
内部に開削した空間の内壁面に、炭素鋼板製あるいはス
テンレス鋼板製のライナ部材を張設することによって形
成されている。

【００１７】この封入容器貯蔵室１を形成するライナ部
材と地中岩盤３との間には、止水性に優れたベントナイ
ト系充填材が充填されている。

【００１８】封入容器貯蔵室１の内底面の大部分は、他
の部分の内底面よりも下方に掘り下げられ、放射性廃棄
物封入容器４を冷却水５に浸漬させた状態で保管し得る
容器貯蔵プール６を形成している。

【００１９】封入容器貯蔵室１の内底面の残りの部分
は、容器貯蔵プール６への放射性廃棄物封入容器４を移
送準備作業を行う作業フロア７となっており、該作業フ
ロア７には、搬送台車８が備えられている。

【００２０】封入容器貯蔵室１の天井部には、作業フロ
ア７のプール近傍部分直上から容器貯蔵プール６の直上
に位置するように、天井クレーン９が設けられている。

【００２１】上記の放射性廃棄物封入容器４は、図３に
示すように、上方に開口部を有し且つ放射性廃棄物Ｓを
内装可能な封入容器本体４ａと、該封入容器本体４ａの
開口部に嵌入可能な一次蓋４ｂ及び二次蓋４ｃとによっ
て構成されている。

【００２２】１０は封入容器搬送坑であり、該封入容器
搬送坑１０は、地表２から封入容器貯蔵室１の作業フロ
ア７に向って開削した空間の内壁面に、炭素鋼板製ある
いはステンレス鋼板製のライナ部材を張設することによ
り形成されている。

【００２３】この封入容器搬送坑１０を形成するライナ
部材と地中岩盤３との間には、止水性に優れたベントナ
イト系充填材が充填されている。

【００２４】１１は昇降機であり、該昇降機１１は、封
入容器搬送坑１０の内部に、地表２に構築された建屋１
２と前記の作業フロア７との間を昇降し得るように配置
されている。

【００２５】この昇降機１１には、建屋１２の内部に設
けた巻上げ装置３１から封入容器搬送坑１０に垂下させ
たワイヤロープ１３の先端部が連結されている。

【００２６】１４は給気坑、１５は排気坑であり、これ
ら給気坑１４及び排気坑１５は、地表２から封入容器貯
蔵室１の作業フロア７に向って開削した空間の内壁面
に、炭素鋼板製あるいはステンレス鋼板製のライナ部材
を張設することにより形成されている。

【００２７】これら給気坑１４及び排気坑１５を形成す
るライナ部材と地中岩盤３との間には、止水性に優れた
ベントナイト系充填材が充填されている。

【００２８】また、地表２には、給気坑１４へ地上の空
気（外気）を給気する給気塔１６と、排気坑１５から封
入容器貯蔵室１の内部の空気を排気する排気塔１７が構
築されている。

【００２９】１８は流路切換弁（３ポート２位置切換
弁）、１９は熱交換器、２０は循環ポンプであり、流路
切換弁１８及び循環ポンプ２０は、作業フロア７に設置
され、熱交換器１９は、放熱部が給気坑１４及び排気坑
１５の開口部に対峙するように作業フロア７の上方に配
置されている。

【００３０】流路切換弁１８の一方の入口ポートには、
上流端が前記の容器貯蔵プール６の内部に連通する管路
２１の下流端が接続され、流路切換弁１８の他方の入口
ポートには、上流端が封入容器貯蔵室１の外方の地層内
に位置する管路２２の下流端が接続されている。

【００３１】熱交換器１９の一次流体入口には、上流端
が流路切換弁１８の出口ポートに連通する管路２３の下
流端が接続され、熱交換器１９一次流体出口には、下流
端が循環ポンプ２０の吸入口に連通する管路２４の上流
端が接続されている。

【００３２】循環ポンプ２０の吐出口には、下流端が前
記の容器貯蔵プール６の内部に連通する管路２５の上流
端が接続されている。

【００３３】２６はポンプ室であり、該ポンプ室２６
は、地表２の近傍から封入容器貯蔵室１の近傍までの間
を開削した空間の内壁面に、炭素鋼板製あるいはステン
レス鋼板製のライナ部材を張設することにより形成され
ている。

【００３４】３０は排水機構であり、該排水機構３０
は、前記の容器貯蔵プール６から冷却水５を順次地表２
へ向って汲み上げるように直列に配置された多数台の揚
水ポンプ２７、該揚水ポンプ２７に付随する受水槽２
８、各揚水ポンプ２７と容器貯蔵プール６あるいは受水
槽２８とを結ぶ管路２９等から構成されている。

【００３５】これら揚水ポンプ２７、受水槽２８、管路
２９のうち、最上段のもの以外は、先に述べたポンプ室
２６の内部に配置されている。

【００３６】なお、図２において、３２はベントナイト
系充填材を表している。

【００３７】以下、図１及び図２に示す放射性廃棄物保
管処分施設に放射性廃棄物Ｓを保管する手順を説明す
る。

【００３８】保管すべき放射性廃棄物Ｓを封入容器本体
４ａに内装し、該封入容器本体４ａの開口部に一次蓋４
ｂを嵌入した後、封入容器本体４ａの内部にヘリウム
（Ｈｅ）等の不活性ガスを充填するとともに、ボルト等
の機械的締結手段（図示せず）により一次蓋４ｂを封入
容器本体４ａに対して固着する（図３参照）。

【００３９】次いで、封入容器本体４ａの開口部に二次
蓋４ｃを嵌入し、該二次蓋４ｃの外周部全周を封入容器
本体４ａの開口部縁部に対して溶接密封し、放射性廃棄
物封入容器４に放射性廃棄物Ｓを封入する。

【００４０】また、流路切換弁１８をその他方の入口ポ
ートが出口ポートに連通するように設定したうえ、循環
ポンプ２０を運転させる。

【００４１】循環ポンプ２０を運転すると、封入容器貯
蔵室１の外方の地層内の地下水が、管路２２、流路切換
弁１８、管路２３、熱交換器１９、管路２４、循環ポン
プ２０、管路２５を経て、容器貯蔵プール６に冷却水５
として流入する。

【００４２】循環ポンプ２０によって汲み揚げられる地
下水は、高温であるが、熱交換器１９を通過する際に、
給気坑１４から自然通風される外部の空気により、放射
性廃棄物貯蔵プールの水と同程度の温度（約４０℃）に
冷却される。

【００４３】一方、地下水を冷却することにより温度が
上昇した空気は、排気坑１５を経て外部に排出される。

【００４４】容器貯蔵プール６に所定量の冷却水５が貯
留されたならば、流路切換弁１８をその一方の入口ポー
トが出口ポートに連通するように設定し、容器貯蔵プー
ル６に貯留されている冷却水５を、管路２１、流路切換
弁１８、管路２３、熱交換器１９、管路２４、循環ポン
プ２０、管路２５、容器貯蔵プール６の順で循環させ
る。

【００４５】また、放射性廃棄物Ｓ（図３参照）を封入
した放射性廃棄物封入容器４を、昇降機１１を用いて地
上から封入容器貯蔵室１の作業フロア７へ移送し、搬送
台車８によって容器貯蔵プール６の近傍まで移送する。

【００４６】更に、放射性廃棄物封入容器４を天井クレ
ーン９によって、容器貯蔵プール６に貯留されている冷
却水５に浸漬させ、該冷却水５により放射性廃棄物封入
容器４の内装されている放射性廃棄物Ｓ（図３参照）の
崩壊熱を除去する。

【００４７】このように、図１及び図２に示す放射性廃
棄物保管処分施設では、放射性廃棄物封入容器４を、地
下の封入容器貯蔵室１に保管するので、放射性廃棄物封
入容器４を長期間にわたって保管する施設を地表２に構
築する必要がなく、地表２を有効に利用することができ
る。

【００４８】放射性廃棄物Ｓ（図３参照）の崩壊熱が除
去されたならば、循環ポンプ２０の運転を中止し、排水
機構３０を構成する各揚水ポンプ２７を運転して容器貯
蔵プール６の内部の冷却水５を地上へ汲み出す。

【００４９】このとき、地上に汲み出される冷却水５の
放射線量等をモニタリングし、冷却水５をそのままの状
態で排出処理できるか否かを判断する。

【００５０】上記の冷却水５のモニタリングは、放射性
廃棄物封入容器４を容器貯蔵プール６に保管している
間、適宜の間隔で実施するようにしてもよい。

【００５１】また、容器貯蔵プール６から冷却水５の汲
み上げとともに、搬送台車８、天井クレーン９、昇降機
１１、流路切換弁１８、熱交換器１９、循環ポンプ２０
等の封入容器貯蔵室１及び封入容器搬送坑１０の内部に
ある機器と、管路２３，２４、及び管路２１，２２，２
５，２９の封入容器貯蔵室１の内部に位置している部分
を必要に応じて撤去する。

【００５２】これらの機器等を撤去した後、封入容器貯
蔵室１、封入容器搬送坑１０、給気坑１４、排気坑１５
等の内部にベントナイト系充填材３２を充填し、放射性
廃棄物Ｓ（図３参照）内装した放射性廃棄物封入容器４
を安定した状態で地層処分する。

【００５３】このように、図１及び図２に示す放射性廃
棄物保管処分施設では、放射性廃棄物封入容器４が保管
されている封入容器貯蔵室１を地層処分に利用するの
で、放射性廃棄物封入容器４の移送作業等を改めて行う
ことなく該放射性廃棄物封入容器４の地層処分を極めて
合理的に実施することができる。

【００５４】なお、本発明の放射性廃棄物保管処分施設
及び該施設を用いた放射性廃棄物の地層処分方法は、上
述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発
明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を加え得る
ことは勿論である。

【００５５】

【発明の効果】以上述べたように、本発明の放射性廃棄
物保管処分施設及び該施設を用いた放射性廃棄物の地層
処分方法においては、下記のような種々の優れた効果を
奏し得る。

【００５６】（１）本発明の請求項１及び請求項２に記
載した放射性廃棄物保管処分施設のいずれにおいても、
放射性廃棄物を封入した放射性廃棄物封入容器を、地下
の封入容器貯蔵室に保管するので、放射性廃棄物封入容
器を長期間にわたって保管する施設を地表上に構築する
必要がなく、地表を有効に利用することができる。

【００５７】（２）本発明の請求項２に記載の放射性廃
棄物保管処分施設では、流路切換弁を切り換えることに
より地層内に連通する管路から地下水を冷却水として汲
み上げることができるので、冷却水の張水作業を容易に
行うことができる。

【００５８】（３）本発明の請求項３に記載した放射性
廃棄物保管処分施設を用いた放射性廃棄物の地層処分方
法では、放射性廃棄物封入容器が保管されている封入容
器貯蔵室を地層処分に利用するので、放射性廃棄物封入
容器の移送作業等を改めて行うことなく該放射性廃棄物
封入容器の地層処分を極めて合理的に実施することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の放射性廃棄物保管処分施設の一例にお
いて放射性廃棄物を封入した放射性廃棄物封入容器を保
管している状態を示す概念図である。

【図２】本発明の放射性廃棄物保管処分施設の一例にお
いて放射性廃棄物を封入した放射性廃棄物封入容器を地
層処分した状態を示す概念図である。

【図３】放射性廃棄物封入容器の一例を示す概念図であ
る。

【符号の説明】

１ 封入容器貯蔵室 ２ 地表 ３ 地中岩盤 ４ 放射性廃棄物封入容器 ５ 冷却水 １０ 封入容器搬送坑 １８ 流路切換弁 １９ 熱交換器（冷却装置） ２０ 循環ポンプ（冷却水循環装置） ２１ 管路（冷却水循環装置） ２２ 管路 ２３ 管路（冷却水循環装置） ２４ 管路（冷却水循環装置） ２５ 管路（冷却水循環装置） ３２ ベントナイト系充填材 Ｓ 放射性廃棄物

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 冷却水を貯留し得られ且つ放射性廃棄物
   を封入した複数の放射性廃棄物封入容器を保管し得るよ
   うに地中岩盤の内部に形成した封入容器貯蔵室と、地表
   から前記の封入容器貯蔵室へ延びる封入容器搬送坑と、
   前記の封入容器貯蔵室に貯留される冷却水を循環させ得
   る冷却水循環装置と、該冷却水循環装置により循環する
   冷却水を冷却する冷却装置とを備えてなることを特徴と
   する放射性廃棄物保管処分施設。
2. 【請求項２】 封入容器貯蔵室の外方の地層内に連通す
   る管路と、該管路と冷却水循環装置を連通させ得る流路
   切換弁とを有する請求項１に記載の放射性廃棄物保管処
   分施設。
3. 【請求項３】 封入容器貯蔵室に保管された放射性廃棄
   物封入容器内の放射性廃棄物の崩壊熱が除去された後、
   封入容器貯蔵室に貯留されている冷却水を排出し、封入
   容器貯蔵室及び封入容器搬送坑の内部にベントナイト系
   充填材を充填する請求項１に記載の放射性廃棄物保管処
   分施設を用いた放射性廃棄物の地層処分方法。