【発明の詳細な説明】
新規なポリアミノカルボキシレートキレート化剤
本発明は、金属イオンを、ペプチドやタンパク質(例えばアルブミン、トラン
スフェリン、抗体及び抗体断片)に結合するための新規なキレート化剤に関する
。
発明の背景
金属イオンをタンパク質に結合すると、数種の有用な生成物が得られる。これ
らには、蛍光、放射性及び常磁性金属イオンに結合して、生物系のin viv o
プローブや、ラジオイムノアッセイのような分析系のin vitroプロー
ブとして使用できるタンパク質が含まれる。例えば、腫瘍関連抗原を認識するモ
ノクローナル抗体に放射性核種を結合すると、癌の診断や治療に有用な放射性免
疫接合体が得られる。モノクローナル抗体は、in vivoで特異部位に対す
る所望物質のキャリヤーとして使用される。ジエチレントリアミンペンタ酢酸(
DTPA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及び大環状物質のように
タンパク質に結合すると安定な複合体を形成すると報告されたキレート化剤もあ
る。しかしながら、放射性免疫接合体又はキレート化合物は生理学的条件下では
動力学的に不
安定なので、これらの複合体は分解する。結合方法やキレート化合物の構造等を
変えようと何度か試みられたが、このような放射性免疫接合体をin vivo
投与すると、非標的組織、特に肝臓に放射能が蓄積した。従って、明らかに、患
者に投与したときに解離しない複合体を形成するように放射性金属を抗体に結合
する新規なキレート化剤が必要となる。
金属イオンをタンパク質に結合するための新規な1組のキレート化剤を提供し
、それによりin vivoで安定な抗体−キレート化合物接合体を含む水溶液
を提供することが本発明の目的である。
種々の金属イオン(例えばIn、Y、Gd、Tb、Eu、Cu、Co、Sm、
Rh、Ru、Re、Bi、Tl、Tc、Fe、Pb、Ba、Lu、並びに他のア
クチニド、ランタニド及び遷移金属イオン)と結合する1組のキレート化剤を提
供することが本発明の別の目的である。
金属イオンをタンパク質(例えばモノクローナル抗体)に結合するのに有用な
新規なキレート化構造体を合成することが本発明の別の目的である。
低分子量タンパク質(例えばアルブミン及びIgG)だ
けでなく、高分子量タンパク質(例えばIgM(9×105)及びリポタンパク
質(2×106))との結合にも適した多目的なキレート化剤を得ることが本発
明の他の目的である。
金属キレート化合物に接合した抗体を製造するための改良された方法を得るこ
とが本発明の更に別の目的である。
本発明の更なる目的は、接合タンパク質の生物活性をそれほど損なわずに、抗
体分子当たりの金属イオン濃度を高くするキレート化構造体を得ることである。
蛍光/発光金属イオンをタンパク質−キレート化合物接合体に結合することに
よって蛍光標識タンパク質を得ることが本発明の更に別の目的である。
クロマトグラフィーカラム材料(例えばポリマー及びゲル)に結合して、キレ
ート化合物親和性カラムを形成し得る金属イオン結合試薬を得ることが本発明の
別の目的である。
上記目的及び他の目的は本発明の一つ以上の実施態様によって達成されよう。
図面の簡単な説明
図1はポリアミンの構造を示す。
図2は、LiLo2’の構造を示す。
図3はHETA2の構造を提供する。
図4は、HETA2及びLiLo2’の製造に使用される合成法を示す。
図5は、ヒト血清でのY(90)標識16.88−LiLo2’の安定性を示
す。この図では、インキュベーション時間(37℃)を16.88−LiLoに
結合したY(90)のパーセンテージに対してプロットする。
表1は、過剰DTPA(インジウム−111.MoAb:DTPA=1:>5
000)の存在下及び1%HSA溶液を含むリン酸緩衝食塩水中に37℃で16
.88−LiLo2’に結合したインジウム(111)のパーセンテージをイン
キュベーション時間の関数として示す。
表2は、数種の溶液:過剰DTPA(インジウム−111.MoAb:DTP
A=1:>5000)の存在下、正常ヒト血清中及び1%HSA溶液を含むリン
酸緩衝食塩水中での37℃での88BV59−HETA2.In(111)の安
定性を示す。
発明の要約
本発明は、新規なポリアザ大環状試薬及びポリアミノカ
ルボキシレートに関する。HETA2及びLiLo2’は、金属をタンパク質に
結合するのに適した2種のポリアミノカルボキシレート型キレート化剤である。
特に、これらの化合物は、放射性金属(例えばインジウム−111、イットリウ
ム−90、テクネチウム−99m、レニウム−186、レニウム−188、銅−
64、銅−67、ルテニウム−93、ロジウム、ガロジニウム、サマリウム−1
53、ビスマス−212、鉛−213及びアクチニウム−225)をタンパク質
(例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及びこれから誘導される断片
、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、合成ポリマー並びにコポリマー)に
結合するのに有用である。
好ましい実施態様の説明
EDTA及びDTPAのようなポリアミノカルボキシレートは、金属イオン(
例えば銅、テクネチウム、インジウム及びイットリウム)を結合するためのキレ
ート化剤として使用されている。TETAのような大環状試薬(例えばMear
es等、米国特許第4,678,667号、1987年7月7日を参照されたい
)が医薬用途でのin vivo使用に適した安定な放射性免疫診断用及び治療
用試
薬を生成することも知見されている。本発明者らは、ポリアミノカルボキシレー
ト枝が窒素に結合しており、金属をキレート化すると安定な構造が得られると考
えられる新規なキレート化剤を発見した。本発明は、新規なポリアザ大環状試薬
及びポリアミノカルボキシレートを包含する。
本発明の新規化合物は、金属をアミノ酸配列に結合するのに有用である。これ
らの化合物の好ましい用途は、in vivo免疫診断又は放射性免疫治療のた
めの放射性金属で標識した抗体又は抗体断片の製造である。他の用途、例えばカ
ラム精製は当業者には公知である。本発明の目的のために、「金属」とは、放射
性金属、非放射性金属、金属錯体、及び結合のために金属イオンにさらされる化
合物を指す。キレート化剤の反対側はアミノ酸配列(ペプチド、ポリペプチド、
タンパク質、糖タンパク質又は類似化合物であり得る)に結合する。唯一の限定
事項は、−NCS−基又は他の適切な反応性部分に結合することである。本発明
の目的のために、「ポリペプチド」という用語はこれら全ての化合物を包含する
ために使用する。好ましい「ポリペプチド」は抗体又は断片である。
本発明のポリアザ大環状化合物及びポリアミノカルボキ
シレートは、図1に示す一般式で表されるポリアミンを誘導体化することによっ
て製造され得る。ポリアミン中間体化合物は、(p−ニトロフェニル)エチルア
ミンのような出発材料から製造され得る。ブロモエチルアセテート又は同等試薬
を用いてこれらの第一級アミンをカルボキシメチル化すると、カルボキシメチル
化アミン誘導体が得られ、この誘導体は第一級アミンに変換することができる。
Subramanian等,Bioconjugate Chemistry,
3,248−255(1992)に記載の方法と同様の方法を用いて、これらの
化合物をジエチレントリアミンペンタ酢酸二無水物で縮合する。この反応経路に
より、HETA2及びLiLo2’のような二官能キレート化剤が得られる。上
述のポリアミン構造(図1)中のメチレン主鎖の炭素数を変える(l、q、m、n
を変える)と、本発明の種々の二官能キレート化剤を合成することができる。
実施例:
I(ジエステルアミン)の合成:15gの4−ニトロベンジル−エチルアミン
塩酸塩、21mlのエチルブロモ酢酸塩及び26gの炭酸カリウムを200ml
のアセトニト
リル中に合わせ、強く攪拌しながら還流加熱した。連続攪拌しながら一晩反応混
合物を還流させた。次いで、反応混合物を室温に冷却し、次いで濾過し、酢酸エ
チルを添加しながら回転蒸発させた。生成物をシリカゲルカラム(塩化メチレン
中0.2%メタノール)に通した。純粋画分を合わせ、回転蒸発させた。収量1
6.5g。IR(KBrペレット):1742.9cm-1,1600.2cm-1
,1519.5cm-1,1346.3cm-1,1189.8cm-1,1030.
4cm-1。1H NMR(CDCl3):1.3(t,6H),3(s,4H)
,3.6(s,4H),4.3(q,4H),7.5(d,2H),8.3(d
,2H)。Rf,0.61(塩化メチレン中0.1%メタノール)。
II(ジエステルアミド)の合成:14.3gのジステルアミン(I)を500
mlのメタノールに溶解し、氷浴中に冷却した。飽和点までアンモニアガスを溶
液中にバブリングし、この溶液を30分間氷中冷却し、アンモニアガスを再度飽
和点まで溶液中にバブリングさせた。次いで、これを冷却器内(2〜8℃)に一
晩置いた。次いで、この溶液を蒸発により30mlまで濃縮した。これにより、
白色
沈殿物が発生した。これを濾去し、少量のメタノールで洗浄し、乾燥した。収量
は6.1gであった。この溶液を塩化メチレンで希釈し、フリーザー(−25℃
)内に置くと、結晶産物が生成した。収量は4.6g(総収率は9%)であった
。TR(KBrペレット):3382.9cm-1,3263.2cm-1,283
2.5cm-1,1652.8cm-1,1513.8cm-1,1343.7cm-1
,1136cm-1。1H NMR(MeOD):2.9(s,4H),3.3(
s,4H),7.4(d,2H),8.1(d,2H)。
III(トリアミン)の合成:窒素雰囲気下で攪拌しながら、200mlの1M
ボランテトラヒドロフラン溶液を10.7gのジアミド−アミン(II)に添加し
た。この溶液を還流加熱し、還流を一晩継続した。反応溶液を冷却し、濃縮した
。HCl(150ml)をこの溶液に添加して過剰BH3をクエンチさせた。こ
の溶液を回転蒸発乾固した。塩基性になるまで水酸化ナトリウム溶液を添加し、
塩化メチレンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。更に沈殿物が生
成した。この沈殿物を濾去し、乾燥し、真空デシケーター内に置いた。固体を5
M HCl溶液中で再
結晶化させ、フリーザー(−25℃)内で一晩冷却した。白色固体を濾去し、冷
5M HClで洗浄し、乾燥した。IR(KBrペレット):3474.6cm-1
,3374.6cm-1,2941cm-1,1646.5cm-1,1604cm-1
,1513.1cm-1,1349.4cm-1。
HETA2の合成:
HETA2及びLiLo2’は共に、トリアミン(III)を出発材料として同
一の合成手順を用いて得ることができるが、HETA2の製造には以下の方法が
好ましい。
IV(ニトロHETA2エステル)の合成:DMF及び塩化メチレンの1:1混
合物50mlに1gのトリアミン(III)を溶解した。この反応混合物に10m
lのトリエチルアミンを添加した。窒素雰囲気下で強く攪拌しながら、この溶液
を800mlのアセトニトリルに添加すると、不透明な溶液が生じた。これを室
温で攪拌した。この溶液を真空下で回転蒸発させて、全ての溶媒を除去した。2
00mlの無水エタノールを反応混合物に添加し、塩化水素ガスを飽和点まで溶
液中にバブリングした。次いで、溶液を強く攪拌しながら還流加熱した。この方
法を一晩継続した。還流を停止し、溶液を回転蒸発させて油状物を得た。次い
で、この油状物を炭酸ナトリウム飽和溶液に溶解し、塩化メチレンで抽出し、硫
酸マグネシウムで乾燥し、回転蒸発させた。溶離用溶媒混合物として1%メタノ
ールを含む塩化メチレン溶液を用いて、この混合物をシリカゲルカラムに通した
。IR(KBrペレット):1735.9cm-1,1665.2cm-1,160
0.8cm-1,1518.6cm-1,1345.9cm-1,1193.9cm-1
。FAB−MS,M+1,694.2,Rf=0.66(塩化メチレン中0.5
%メタノール),1H NMR 1.3(t,9H),2.8(s,10H),
3.1−3.9(m,20H),4.2(q,6H),7.8(d,2H),8
.2(d,2H)。
アミノ−HETA2エステル(V)の合成:1.86のHETA2−ニトロエ
ステル(IV)を塩化メチレンに溶解し、200mgの10%パラジウム炭を含む
攪拌エタノール溶液に添加し、水素ガスでバブリングした。水素のバブリングを
更に3時間継続し、その後TLC分析を行うと、フルオレスカミン陽性試験によ
って指摘されるようなアミン基の存在が判明した。UV分析もアミノ基の存在を
示した。触媒を濾去し、溶液を回転蒸発させた。
イソチオシアネート−HETA2エステル(VI)の合成:
アミノ−HETA2エステル(V)を200mlの塩化メチレンに溶解し、窒素
雰囲気下で攪拌しながらこの溶液にチオホスケンを添加した。これを室温で一晩
反応させた。最後にこの溶液にメタノールを添加した。10分後、この溶液を回
転蒸発させた。これを炭酸ナトリウム飽和水溶液に溶解し、塩化メチレンで抽出
し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、回転蒸発させた。生成物をシリカゲル
カラム(塩化メチレン中1−3%メタノール)に通した。VIのためにTLCで主
要スポットを示す画分を合わせて回転蒸発させた。
HETA2(VII)の合成:
上述の手順(Subramanian等,Bioconjugate Che mistry
,3,248,1992)と同様の手順を用いて、イソチオシアネ
ート−HETA2エステルをHClで加水分解してHETA2を得た。NMR(
1H)スペクトル分析によりエステル基の加水分解が確認された。赤外スペクト
ル分析により、イソチオシアネート基の存在が判明した。IR(KBrペレット
):3418.2cm-1,2114.3cm-1,17
35.7cm-1,1670.3cm-1,1400.8cm-1,1215.7cm-1
。
この材料(HETA2)は、ニトロHETA2エステル(IV)を塩基加水分解
し、次いで還元し、イソチオシアネートに変換することによって製造することも
できる。
LiLo2’(X)の合成:
HETA2及びLiLo2は共に同一の手順を用いて得ることができるが、L
iLo2’の製造には以下の方法が好ましい。
ニトロLiLo2’エステル(VIII)の合成:窒素雰囲気下で、トリエチルア
ミン(50ml)、ジメチルホルムアミド(60ml)及びアセトニトリル(5
0ml)を含む攪拌溶液に25gのDTPA二無水物を添加した。約15分後、
反応混合物に3.8gのトリアミンIIIを1時間に320mgずつ添加した。計
12回添加し、溶液を室温で攪拌した。反応終了後、大半のDMFが除去される
まで溶液を回転蒸発させた。エタノール処理により、反応混合物を更にエステル
化した。
反応混合物に300mlの無水エタノールを添加し、飽和点まで塩化水素ガス
を溶液中にバブリングした。これを
還流加熱した。5時間後、反応混合物を回転蒸発させて油状物を得た。次いで、
この油状物を別の300mlのエタノールに再度溶解し、再度還流加熱した。還
流を一晩継続した。次いで、この溶液を回転蒸発し、200mlの炭酸ナトリウ
ム飽和溶液を添加し、全てが溶解するまでフラスコを強く振盪した。水性層を塩
化メチレンで4度抽出し、これを硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、回転蒸発
させて油状溶液を得た。この油状溶液をシリカゲルカラム(塩化メチレン中1%
メタノール)に通した。メタノール含量を非常にゆっくりと増した。TLC分析
によりLiLo2’ニトロエステルを示す画分を合わせた。
このようにして製造したLiLo2’ニトロエステル(VIII)を、上記手順と
同様の手順を用いて活性炭上パラジウムで還元した。これにより、LiLo2’
アミノエステル(IX)が生成した。
約860mgのLiLo2’ニトロエステル(VIII)を30mlの無水エタノ
ールに溶解し、水素ガスでバブリングした300mgの10%パラジウム炭のエ
タノール攪拌溶液に添加した。強く攪拌しながら、この溶液に水素ガスを連続的
に添加した。約2.5時間後に吸収スペクトルを測
定すると、237nmで最大吸収を示した。反応混合物を濾過し、回転蒸発させ
た。TLC分析は単一のスポットを示し、これはフルオレスカミン陽性であった
。
LiLo2’アミノエステル(IX)をまずイソチオシアネート誘導体に変換し
、次いで酸加水分解によってLiLo2’に変換することにより、LiLo2’
(X)を生成した。まずニトロ又はアミノLiLo2’エステル誘導体を塩基(
NaOH)で加水分解し、次いでLiLo2’に変換することによっても製造す
ることができた。通常の酸加水分解反応を以下のように実施した。73mgのL
iLo2’イソチオシアネートエステルに2mlの1M HClを添加し、完全
に溶解するまで振盪させた。これを室温で放置した。必要に応じて混合物に更に
HClを添加して、反応を更に継続した。最後に、溶液を凍結乾燥した。赤外ス
ペクトル分析により、イソチオシアネート基の存在が確認された。
HETA2及びLiLo2’とタンパク質との接合(conjugation
):
当業界でよく知られた方法を用いて、HETA2及びLiLo2’のようなキ
レート化剤を16.88のようなタ
ンパク質に結合することができる。例えば、Subramanian,R.及び
Meares,C.F.,「Bifunctional Chelating
Agents for Radiometal Labeled Monocl
onal Antibodies」Cancer Imaging with
Radiolabeled Antibodeis(D.M.Goldenbe
rg編)pp183−199,Kluwer Academic publis
hers,Boston,1990を参照されたい。通常の接合反応は、キレー
ト化合物及び抗体溶液(比率は100:1〜1:1)を2℃〜37℃の温度で適
当な時間(5分〜24時間又はそれ以上)インキュベートすることからなる。こ
のようにして得られた接合体をゲル濾過又はイオン交換クロマトグラフィーによ
り精製することができる。
HETA2の88BV59との接合:
HETA2と16.88及び88BV59のようなモノクローナル抗体とを2
〜37℃の温度で5分〜48時間、pH4〜9でインキュベートして、これら2
種の反応体を接合した。反応終了後、HETA2に結合した抗体をサイ
ズ排除カラムクロマトグラフィーで精製した。イオン交換クロマトグラフィーの
ような他の方法も使用できる。画分の吸光度を280nmで測定し、MoAb−
HETA2を含む画分(サイズ排除クロマトグラフィーを使用すると、抗体接合
体が第1ピークでカラムから溶離する)をプールし、必要時に濃縮した。通常の
接合反応を以下に示す:
88BV59(2.5mL,9.6mg/mL)とHETA2(50μL,3
7.5mg/mL)をリン酸緩衝食塩水(0.05M,pH7.2)中で合わせ
た。反応混合物のpHを飽和リン酸ナトリウム溶液でpH8.5〜9.0に調整
した。反応混合物を2〜8℃で約5時間インキュべートした。最後に、セファク
リル高分解能S−300カラムクロマトグラフィーを用いたゲル濾過クロマトグ
ラフィーで、抗体接合体を含む混合物を精製した。抗体接合体を含む画分(88
BV59−HETA2)は、第1ピークでカラムから溶離した。280nmの吸
光度測定で同定したこれらの画分を合わせ、amicon/centricon
メンブランフィルターを用いて6.8mg/mLの最終濃度まで濃縮した。
88BV59−HETA2の分析:
Phenomenex SEC 3000カラムを用いるHPLCで、抗体接
合体を更に分析した。接合体はほぼ純粋で、凝集物(aggregate)がな
いことが判明した。88BV59−HETA2と抗体に対する同族(cogna
te)抗原との結合能力を非接合天然抗体88BV59の場合と比較する同定ア
ッセイで、接合体の免疫反応性を分析した。88BV59−HETA2も88B
V59も同様に挙動しており、このことは接合が抗体の免疫反応性に影響しなか
ったことを示している。
MoAb−HETA2のインジウム−111による標識化:
酢酸塩/クエン酸塩緩衝液(pH5〜7)中、2〜37℃の温度で5分〜2時
間免疫接合体(例えば88BV59−HETA2及び16.88−HETA2)
を放射性標識した。通常の放射性標識反応を以下に示す:
0.9mCiの塩化インジウム−111(NEN,DuPont)に、20u
Lの0.6M酢酸ナトリウム/0.06Mクエン酸ナトリウム緩衝溶液を添加し
た。この混合物に0.1mlの88BV59−HETA2溶液(6.2mg/m
l)を添加し、室温で約1時間反応させた。反応
終了後、1mM DTPA溶液のアリコートを反応混合物に添加した。DTPA
を添加して、遊離した未結合の又は緩やかに結合したインジウム−111を反応
混合物から掃去した。(DTPA溶液をスキャベンジャーとして使用せずとも放
射性標識反応させることができる。)混合物をゲル濾過カラムに通すと、インジ
ウム−111で標識した88BV59−HETA2が第1ピークでカラム(Se
phadex G−50ゲル濾過カラム)から溶離した。画分をプールし、リン
酸緩衝食塩水(pH7)を緩衝液として使用してITLCで分析した。放射性同
位体検出器に結合したBioSep SEC 3000カラムを使用して、HP
LC分析を実施した。カラム精製後のITLC分析は、88BV59−HETA
2に結合したインジウム−111のパーセンテージが99.5%であることを示
した。HPLC分析は、88BV59−HETA2.In(111)の純度が9
5%以上であることを示した。
88BV59に対する同族抗原(CTA−1)に共有結合したセファロースビ
ーズを含む親和性カラムを用いた反応性画分アッセイにより、88BV59−H
ETA2.In(111)の免疫反応性を評価した。1%BSAを含む
0.05Mリン酸緩衝食塩水(pH7)を洗液として使用すると、カラムに結合
した放射性標識抗体の反応性画分及び非反応性画分が流出した。洗液及び親和性
カラム中の放射能の量を測定することにより、インジウム−111で標識した8
8BV59−HETA2.In(111)の免疫反応性を調べた。全放射能[8
8BV59−HETA.In(111)]の83.3%が親和性カラムに結合し
たままであることが判明した。このことから更に、インジウム−111を88B
V59に結合するためにHETA−2を使用しても、88BV59の抗原との結
合能力にはそれほど影響しないことが確認された。
安定性の研究:
(a)過剰DTPA溶液を含むリン酸緩衝食塩水及び(b)正常ヒト血清溶液
中で、インジウム−111で標識した88BV59−HETA2の安定性を評価
した。いずれの場合も、ITLC法を用いて、88BV59に結合したインジウ
ム−111のパーセンテージを時間の関数として調べた。
(a)88BV59−HETA2.In(111)のアリコートに少量の1m
M DTPA溶液を添加し、この混
合物を37℃で6日間インキュベートした。
(b)正常ヒト血清を含む溶液に88BV59−HETA2.In(111)
のアリコートを添加し、この混合物を37℃で6日間インキュベートした。
37℃での安定性研究の結果を表1に示す。これらの研究は、88BV59−
HETA2.In(111)が血清中でも過剰DTPA溶液の存在下のリン酸緩
衝食塩水中でも37℃で6日間以上安定であったことを示している。
Y−90による放射性標識化:
酢酸ナトリウム/クエン酸ナトリウム緩衝液の組み合わせの代わりに0.1M
酢酸アンモニウム溶液(pH5)を緩衝液として用いることを除いて上記と同様
の手順を用いて、イットリウムによる88BV59−HETA2の放射性標識を
実施した。Y−90で標識した接合体をG50ゲル濾過クロマトグラフィーで精
製すると、放射化学的に純粋で、免疫反応性であることが判明した。安定性の研
究により更に、88BV59−HETA2.Y(90)が血清中で48時間以上
は安定であることが実証された。
LiLo2’での研究:
参考として本明細書の一部を構成するものとする親出願のUSSN08/04
4,875号にHETA2の接合(例えば13ページを参照されたい)及びLi
Loと16.88との接合について記載されたのと同様の手順を用いて、LiL
o2’を16.88に接合した。LiLo2’と16.88との接合の場合、G
−50セファデックスゲル濾過クロマトグラフィーを精製のために使用した。上
述の手順を用いてインジウム−111及び/又はイットリウム−90による放射
性標識実験を行った。正常ヒト血清中での
16.88−LiLo2’.Y(90)の安定性を図2に示す。16.88−L
iLo2’.In(111)の安定性分析を表2に示す。
これらの実験は、インジウム−111及びイットリウム−90のような放射性
金属を88BV59及び16.88のようなモノクローナル抗体に結合して安定
な放射性免疫接合体を形成するためにLiLo2’を使用できることを
示している。
これらの結果は明らかに、HETA2及びLiLo2’によって例示されるよ
うな本発明のポリアミノカルボキシレート試薬が安定な複合体をin vivo
生成することを示している。従って、これらの試薬はin vivo用途に適し
ている。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C07C 237/10 9547−4H C07C 237/10
281/02 9451−4H 281/02
331/28 7106−4H 331/28
C07H 21/00 8615−4C C07H 21/00
C07K 16/00 9356−4H C07K 16/00
C09K 3/00 108 7419−4H C09K 3/00 108C