【発明の詳細な説明】
第三ヘキシルメチルエーテルの自動車用ガソリン添加剤としての使用
本発明は、2-メトキシ-2,3-ジメチルブタンである第三ヘキシルメチルエーテ
ルの1異性体の自動車用ガソリン中のオクタンブースター(octane booster)とし
ての使用に関する。
一般に、105を越えるリサーチ法オクタン価(research octane number)及び95
を越えるモーター法オクタン価(motor octane number)を有する成分は自動車用
ガソリン中で使用するためのオクタンブースターとして考えられている。C4及
びC5のオレフィンから製造されたエーテルが優れたオクタンブースターである
ことは本技術分野において公知である。Unzelman,Oil & Gas Journal、第44巻
、1991年4月15日によれば、C4オレフィンであるイソブテンから製造されたメ
チル第三ブチルエーテル(MTBE)は118のリサーチ法オクタン価(RON)
と100のモーター法オクタン価(MON)を有し;そしてC5オレフィンから製造
された第三アミルメチルエーテル(TAME)は111のRONと98のMONを有
する。
これらのエーテルがそれらの対応するオレフィンよりも高いオクタンブースタ
ー価(octane booster number)を有することも知られている。「炭化水素及び非
炭化水素化合物の物理定数(Physical Constants of Hydrocarbon and Non-Hydro
carbon Compounds)」ASTMデータシリーズ刊行物DS 4B、1991には、T
AMEの元のオレフィンの1つである2-メチル-2-ブテンのRONオクタン価は9
7であり、MONオクタン価は82であることが記載されている。このC5オレフィ
ンのエーテル化はRONオクタン価を111まで増加させ、MONオクタン価を98
まで増加させる。従来技術はC4及びC5のオレフィンから製造されたエーテルが
優れたオクタンブースターであることを教示しているが、C6及びそれより重質
のオレフィンから製造されたエーテルの使用は教示していない。
例えば、ペスカロロ(Pescarollo)らの論文である“Etherify light gasolines
”Hydrocarbon Processing、1993年2月、53〜60頁においては、「・・・C6及
びそれより重質のオレフィンから誘導されたエーテルは元のオレフィンと比較し
て
それほどオクタン価を改善しない」と記載されている。
また、米国特許第4,193,770号及びその対応出願であるDE-A-2,854,250(1979
)には、C6エーテルのオクタン価は等量のメタノールと混合された元のオレフ
ィンのものよりも高くないことが教示されている。C6オレフィンから製造され
た第三ヘキシルメチルエーテルの混合オクタン価(blending octane numbers)
はRONについては100でありMONについては90であることが報告されている
が、2-メトキシ-2,3-ジメチルブタン(MDMB)を含む特定の異性体には言及
されていない。従って、MDMBがオクタンブースターとして有効であることは
認識されていないし教示もされていない。報告された価は、C6又はC7オレフィ
ンから製造されたエーテルの性能を研究する気を無くさせるものである。
この引用例は、異なる反応速度のために、C4及びC5のオレフィンをお互いに
別々にエーテル化することが重要であると教示している。また、これらのフラク
ションの各々を第三ヘキシルメチルエーテルを形成するC6オレフィンフラクシ
ョンから分離しておくことの重要性が強調されている。なぜならば、C4及びC5
のオレフィンからのエーテルと比較してオクタン価の改善が見られないからであ
る。この引用例は、さらに、C6又はC7オレフィンからのエーテルについてのオ
クタン価の報告された増加は「錯覚に基づくものである(illusory)」とさえ述べ
ている。第3欄5乃至13行及び26乃至37行を参照のこと。
この引用例は、C6エーテルの自動車用ガソリンのオクタンブースターとして
の使用に対して大きな偏見を述べている。そして、MDMBには全く言及されて
いない。
Energy Res.Abstr.、13(22)、Abstr.No.5031、1988からのMICROLOG-88-033
91にも、C6オレフィンから製造されたエーテルの使用に対して、「その先駆体
と比較したときオクタン価に関する改善が実質的にないので、C6エーテルにつ
いての予測は行わなかった。」と教示されている。
EP-A-O 036 260には、7%がC6オレフィンであるC4からC7のオレフィンの
混合物から製造されたエーテルの、精油所接触分解装置からの自動車用ガソリン
ブレンド中の成分としての使用が開示されているが、オクタンブースター効果が
C6又はC7のオレフィンから製造されたエーテルではなくC4及びC5の
オレフィンから製造されたエーテルによるものであるという考えを強化している
。
C6オレフィンから製造されたエーテルが自動車用オクタンブースターとして
使用できるならば望ましい。現在の市場の予測は、次の10年間は市場においてC6
オレフィンの製造に使用できるプロピレンが供給過剰であることを示している
。現在、プロピレンは精油所接触分解装置から自動車用ガソリンプールに送られ
ているが、プロピレンはオクタン価を高めない。プロピレンをオクタンブースタ
ーに転化する方法が発見されれば非常に有益であろう。
発明の要旨
本発明は、
(a) 自動車用ガソリン又は自動車用ガソリン供給原料、及び
(b) オクタン価上昇量(octane boosting amount)の第三ヘキシルメチルエーテル
成分であって、第三ヘキシルメチルエーテルの総重量に基づいて少なくとも10重
量%の量の2-メトキシ-2,3-ジメチルブタン(MDMB)を含む成分、
を含む成分を提供できる2-メトキシ-2,3-ジメチルブタン(MDMB)を含む第
三ヘキシルメチルエーテルのオクタン価上昇量の使用であって、成分(b)が成分(
a)よりも大きいリサーチ法オクタン価(RON)及び/又はモーター法オクタン
価(MON)を有する、使用に関する。
1つの実施態様は、組成物(b)の第三ヘキシルメチルエーテル成分が、10重量
%より多く、好ましくは20乃至100重量%、より好ましくは50重量%より多く、
さらに好ましくは60乃至100重量%、そして最も好ましくは80重量%より多くを
包含する種々の量と範囲のMDMBを含むブレンドを提供することを含む。
もう1つの実施態様は、組成物(b)が50重量%より多く、好ましくは60乃至100
重量%、そしてより好ましくは80重量%より多くの第三ヘキシルメチルエーテル
を含むブレンドを提供することである。
さらにもう1つの実施態様は、自動車用ガソリンのオクタン価を上昇させる方
法であって、MDMBを自動車用ガソリン又は自動車用ガソリン供給原料とブレ
ンドして自動車用ガソリン又は自動車用ガソリン供給原料のオクタン価を上昇さ
せることを含み、成分(a)のオクタン価を少なくとも1、好ましくは少なくとも
2、より好ましくは少なくとも3単位上昇させるのに十分な量の成分(b)を含む
方法を提供することを含む。
さらに別の実施態様は、MDMBを含み100より大きい混合RON及び90より
大きい混合MONを有する第三ヘキシルメチルエーテル成分を自動車用ガソリン
用のオクタンブースターとして使用することを含む。
MDMBを含む第三ヘキシルメチルエーテル成分はプロピレンを二量化するこ
とによって調製でき、本発明の追加の実施態様は、成分(b)が、
(i)プロピレンを二量化してジメチルブテンを形成すること、及び
(ii)ジメチルブテンをメタノールでエーテル化して、所望の組成物及び/又は
ブレンドを形成すること、
を含む方法によって製造されるブレンドを含む。
さらに、もう1つの実施態様は、工程(ii)が部分エーテル化を含み、その後に
(iii))エーテル化されていないジメチルブテンを水素添加して、MDMBとジ
メチルブタンを含む第三ヘキシルメチルエーテル組成物を形成する工程が続く追
加の処理を含む。
発明の詳細な説明
C6オレフィンから製造された第三ヘキシルメチルエーテルの全ての異性体が
オクタンブースターとしての使用に適しているわけではない。第三ヘキシルメチ
ルエーテル(C6H13−OCH3)の4種類の異性体は以下の通りである。
1) 2-メトキシ-2,3-ジメチルブタン(MDMB)
2) 2-メトキシ-2-メチルペンタン(2MMP)
3) 3-メトキシ-3-メチルペンタン(3MMP)
4) 1-メトキシ-1-メチルシクロペンタン(MMCP)
1-メトキシ-1-メチルシクロペンタン(MMCP)は水素原子の数が2個少な
いが、第三ヘキシルメチルエーテルの異性体として考える。
第三ヘキシルメチルエーテルの1つの異性体が自動車用ガソリン中で使用する
ために非常に有用で高オクタンブースターであることが判明した。その特別の異
性体とは2-メトキシ-2,3-ジメチルブタン(MDMB)である。
以下の反応式中に示されているように、MDMBはプロピレンとメタノールか
ら、初めにプロピレンをジメチルブテン(2,3-ジメチル)−(1及び/又は2)−
ブテン)に二量体化し、その後ジメチルブテンをメタノールでエーテル化するこ
とによって調製できる。2,3-ジメチル-1-ブテンと2,3-ジメチル-2-ブテンの両方
がメタノールと反応して所望の生成物のエーテルを形成する。
オレフィンの二量化及び共二量化(codimerization)は本技術分野において公知
である。プロピレンは、米国特許第5,059,739号に開示されているようなタング
ステン触媒を使用してジメチルブテン(DMB)に二量化できる。ジメチルブテ
ン(DMB)は特定の有機ホスフィン配位子を有するニッケルを使用しても製造
できる。
タングステン触媒が使用される場合、オレフィンのタングステンに対する比率
は、触媒量(catalytic amount)のタングステン錯体が使用されるようなものでな
ければならない。反応は回分式又は連続式で行うことができる。反応圧力は通常
反応温度でオレフィンによって発生する圧力であるが、不活性気体で加圧するこ
ともできる。反応温度は例えば約40乃至100℃の範囲内でよく、50乃至80℃が好
ましい。反応時間又は滞留時間は例えば5分乃至約3時間でよく、0.5乃至2.0時
間が好ましい。好ましい実施態様は、タングステン塩とアニリンからタングステ
ン塩とアニリンの錯体を形成することによって調製された触媒を使用する。この
反応中に生成した塩化水素の実質的に全てが反応の間中溶液から除去される。タ
ングステンとアニリンの錯体の形成後、アルキルアルミニウムハリドを溶液に添
加して、本発明の活性な触媒系を形成させる。好ましい供給原料は、水及びその
他の触媒毒を十分に除去した後の精油所グレードプロピレンである。
MDMBを製造するためのジメチルブテンのメタノールによるエーテル化は、
イソブチレンからのメチル第三ブチルエーテル(MTBE)の調製又はイソアミ
レンからの第三アミルメチルエーテル(TAME)の調製と類似の方法で起こる
。
この反応はイオン交換樹脂の酸形態の上で起こる。
本発明は、DMBとメタノールを含む混合物を反応器(即ち、固定床ガードリ
アクター)の反応領域に供給すること、及び反応領域においてDMBとメタノー
ルの得られた混合物を固定床酸性カチオン交換樹脂(例えば、アンバーリスト
ルを2-メトキシ-2,3-ジメチルブタン(MDMB)が形成するのに適する条件下
において触媒的に反応させる。
本発明のエーテル化工程が触媒蒸留プロセス(catalytic distillation proce
ss)中において実施される場合、触媒物質は固定床のような蒸留塔に組み入れる
ことが可能などのような形態でもよいが、例えば、リング、サドル、球、不規則
片、シート、チューブ、らせん、袋に詰められた形態、グリル又はスクリーン上
に被覆した形態、及び網状ポリマーフォームのような蒸留充填物として役立つ形
態でもよい。
本発明のエーテル化工程において使用するのに適することが判明した触媒は、
カチオン交換樹脂触媒、酸性樹脂触媒、マクロ網状スルホン酸カチオン交換樹脂
触媒、及び固体酸触媒のような樹脂触媒である。さらにゼオライトもエーテル化
触媒として使用されてきた。しかしながら、本発明の目的に対して好ましい触媒
は酸性樹脂触媒のような酸触媒である。本発明の目的に対してより好ましい触媒
は、ポリスチレン−ジビニルベンゼンのスルホン化されたコポリマーのようなマ
クロ網状スルホン酸カチオン交換樹脂である。そのような触媒には、アンバーリ
て市販されている)、リューワタイト(Lewatit)SPC 118 及びSPC 118 BG(マイ
ルズ/ベイヤー(Miles/Bayer)によって市販されている)、及びダウェックス(Do
wex)M-31及びM-32(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー(the Dow Chemical Co.)に
よって市販されている)を含む。このタイプの触媒の特定の種、即ち、ダウェッ
クスDR-2040(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーによって市販されている)は反
応性蒸留用に特に使用される。
エーテルへの平衡転化率はわずか50〜60%であることが判明したため、エーテ
ル化工程においては触媒蒸留(catalytic distillation)が有利であろうと推測さ
れる。触媒蒸留はMTBEの製造において商業的に実施されており、このプロセ
スはTAMEに関して広く研究されている。従って、C6オレフィンからエーテ
ルを製造するプロセスに適用されたとき触媒蒸留が有利であることを予測する全
ての理由が存在する。
プロピレンを二量化することによって形成されたC6オレフィンからエーテル
が製造される場合、異性体の得られる混合物の組成は98重量%のMDMBと2重
量%の2 MMPのように純粋であることが可能であり、3 MMPとMMCPは無
視可能な量である。C6オレフィンが精油所接触分解器中において製造される場
合、異性体混合物は異なり、50%より多くが2 MMPであり、約7%がMDMB
である。
エーテルを自動車用ガソリン添加剤として使用して、米国において存在し懸案
となっている環境的規制のために自動車用ガソリンの品質を改善することは本技
術分野において公知である。自動車用ガソリン中においてオレフィンよりもむし
ろ対応する酸素化物(oxygenate)を使用することによって、自動車用ガソリンの
燃焼時の一酸化炭素汚染の発生が少なくなる。また、自動車用ガソリンの特別な
タィプである改質ガソリン(reformulated gasoline)を規制する規則は、オレフ
ィンはそれらの対応するエーテルよりもオゾンの形成に寄与するため、ガソリン
中のオレフィン含有率が低いことを要求している。自動車用ガソリン中において
オレフィンよりもむしろエーテルを使用することのさらに別の利点は、エーテル
が比較的低いリード蒸気圧(Reid vapor pressure)を有することであり、汚染の
原因となる蒸発物の排出を減少させる。
オクタン価を上げるための自動車用ガソリン又は自動車用ガソリン供給原料へ
のMDMBの添加は幾つかの方法で行うことができる。1つの方法は、2つの組
成物(a)及び(b)の混合物を含むブレンドの調製を含み、ここで組成物(a)は自動
車用ガソリン又は自動車用ガソリン供給原料から成り、これは組成物(b)とブレ
ンドされ、組成物(b)はオクタン価上昇量の第三ヘキシルメチルエーテル成分を
含み、第三ヘキシルメチルエーテル成分は第三ヘキシルメチルエーテルの総重量
に基づいて少なくとも10重量%の量の2-メトキシ-2,3-ジメチルブタン(MDM
B)を含み、組成物(b)は組成物(a)よりも大きいリサーチ法オクタン価(RON
)
及び/又はモーター法オクタン価(MON)を有する。
第三ヘキシルメチルエーテル及びMDMBに加えて、組成物(b)はその他の成
分も含むことができる。これらの追加の成分は、自動車用ガソリン又は自動車用
ガソリン供給原料中に典型的に見られるその他の炭化水素でよく、芳香族、オレ
フィン及び飽和物を含むがこれらに限定されるものではない。
これらの追加の炭化水素は有用なオクタンブースターでもよいしそうでなくて
もよい。その他の炭化水素がオクタンブースターとして有用である場合、組成物
(b)はMTBE又はTAME、或いはそれらの混合物を含むことができる。
組成物(b)は、95より大きいRON、好ましくは100より大きいRON、及び/
又は85より大きいMON、好ましくは90より大きいMONを有することができる
。
所望により、組成物(b)は、100より大きい混合RON、好ましくは105より大
きい混合RON、及び/又は90より大きい混合MON、好ましくは95より大きい
混合MONを有する。
組成物(b)の第三ヘキシルメチルエーテル成分は10重量%より多く、好ましく
は20乃至100重量%のMDMBを含むことができる。所望により、組成物(b)の第
三ヘキシルメチルエーテル成分は50乃至100重量%、好ましくは80重量%より多
くのMDMBを含むことができる。
第三ヘキシルメチルエーテル成分は100より大きいRON及び/又は90より大
きいMONを有することができる。所望により、第三ヘキシルメチルエーテル成
分は100より大きい混合RON及び/又は90より大きい混合MONを有すること
ができる。
組成物(b)のMDMB成分は105より大きいRON及び/又は95より大きいMO
Nを有することができる。所望により、MDMB成分は105より大きい混合RO
N及び/又は95より大きい混合MONを有することができる。
得られるブレンドは、90より大きいRON、好ましくは93より大きいRON、
及び/又は80より大きいMON、好ましくは83より大きいMONを有することが
できる。
十分な量の組成物(b)を組成物(a)と混合して、組成物(a)のオクタン価が少な
くとも1単位、好ましくは少なくとも2単位、そしてより好ましくは少なくとも
3単位上昇するようにしなければならない。得られるブレンドは、1体積%より
多く、好ましくは2体積%より多く、そして最も好ましくは5体積%より多くの
MDMBを含むことができる。
オクタンブースターとしての使用に加えて、MDMBは、MTBE又はTAM
Eのようなその他のオクタンブースターのように自動車用ガソリンブレンドのR
VPを増加させることがあまりないという追加の利点を有する。
例えば、MTBEは57.9 kPa(8.4 psi)の混合RVPを有し、TAMEは27.
6 kPa(4.0 psi)の混合RVPを有するが、それらはいずれも6.9 kPa(1 psi)
であるMDMBの混合RVPよりも高い。
出発自動車用ガソリン供給原料が高いRVP水準を有する場合、RVPの制限
を越えないようにしながら、必要なオクタン価に関する要件を達成するためにM
TBE又はTAMEを添加できる量が限定されるかもしれない。
従って、本発明のもう1つの実施態様は、最大のオクタン価上昇効果を達成し
、対応する望ましくないRVPの増加を防ぐために、1種より多くのオクタンブ
ースターを使用することを含む。
例えば、環境基準で定められた自動車用ガソリン製品の最大RVP限度までM
TBE及び/又はTAMEを添加したブレンドを調製する。その後、MDMBを
単独で又は第三ヘキシルメチルエーテルとの混合物として自動車用ガソリンにブ
レンドして、自動車用ガソリンの最終ブレンドのRVPを増加させることなくさ
らに高いオクタン価を達成することができるだろう。
本発明の1つの実施態様は、成分(a)のオクタン価を少なくとも1上昇させ、
同時に成分(a)のリード蒸気圧を13.8 kPa(2 psi)未満、好ましくは6.9 kPa(1
psi)未満、より好ましくは3.4 kPa(0.5 psi)未満しか増加させないのに十分
な量の組成物(b)を含むブレンドを含む。
MDMBは、(i)プロピレンを二量化してジメチルブテンを形成すること、及
び(ii)ジメチルブテンをメタノールでエーテル化することを含む方法を使用して
調製することができる。所望により、工程5は部分エーテル化を含み、この方法
は、(iii)エーテル化されていないジメチルブテンを水素化してMDMBとジメ
チルブタンを含む第三ヘキシルメチルエーテル組成物を形成する追加の工程をさ
ら
に含むことができる。
組成物(b)はジメチルブテンを含むことができ、そして1%未満のメタノール
及び/又は5%未満のオレフィンも含むことができる。組成物(b)は50重量%よ
り多く、好ましくは60乃至100重量%、そしてさらに好ましくは80重量%より多
くの第三ヘキシルメチルエーテルを含むことができる。
調製されたMDMBを自動車用ガソリン又は自動車用ガソリン供給原料とブレ
ンドすることによって、ブレンドされたガソリンのオクタン価を、自動車用ガソ
リン又は自動車用ガソリン供給原料の元のオクタン価よりも、1単位以上、好ま
しくは2単位以上、最も好ましくは3単位以上上昇させることができる。
上述の発明を以下の実施例によって説明するが、本発明は実施例によって限定
されるものではない。
実施例
実施例I2-MMP 比較例
この比較例は、C6オレフィンから製造された全てのエーテルが必ずしもオク
タンブースターとして有用であるとは限らないことを説明する。
酸形態のイオン交換樹脂(アンバーリストR15、メタノールで洗浄したもの)
を1000gの2-メチル-1-ペンテン及び416gのメタノールと共に5000ミリリットル
の丸底フラスコに添加した。樹脂触媒のスラリーを磁気的に攪拌し、大気圧で16
時間還流させた。還流プロセス中に、物質は大気圧で沸騰し蒸気は凝縮して沸騰
している物質に戻った。樹脂触媒を生成混合物から濾別し、その後未転化のメタ
ノールとメチルペンテンを生成物のエーテル(2 MMP)から蒸留して分離した
。未転化の物質を樹脂触媒と共に反応フラスコに戻し、再びもう16時間還流させ
た。反応とその後の生成物の分離の手順を3回繰り返した。エーテル化反応は平
衡により制限されるので、出発材料の良好な転化率を達成するためにこれは望ま
しい。生成物のエーテルを再び蒸留して(沸点112℃)、GC分析で測定して99.
4%の純度の生成物を得た。
オクタン価とリード蒸気圧の結果を本技術分野で公知の標準的試験方法を使用
して測定した。リサーチ法オクタン価(RON)は88.3であり、モーター法オク
タン価(MON)は約90であった。燃料/空気比は試験エンジン上で可能な最も
高いセッティングに設定されていたので、正確なMONは測定できなかった。標
準的な試験手順では、ノック(knock)が最大になるまで、燃料/空気比を徐々に
増加させる。リード蒸気圧は1.25 psiであった。
これらの結果はC6オレフィンからのエーテルについて報告されているオクタ
ン価と一致しており、そのようなエーテルは自動車用ガソリン用のオクタンブー
スターとして有用ではないという(例えば、米国特許第4,193,770号に表現され
ているような)産業界の見地を支持している。
実施例IIMDMB 本発明
この本発明の実施例は、C6オレフィンから製造されるエーテルの内の1つ、
即ち、MDMBがオクタンブースターとして有用であることを示す。
実施例I中の2 MMPの調製について記載したのと同様な方法で、2-メトキシ
-2,3-ジメチルブタン(MDMB)を2,3-ジメチル-2-ブテン(2112g)とメタノ
ール(879g)から製造した。生成物は115℃の沸点を有しており、2-メトキシ-2
,3-ジメチルブタンの生成物純度は98.2%であり、残りは出発材料中の2-メチル
ペンテン不純物からの2-メトキシ-2-メチルペンタンであった。このMDMBに
富んだ生成物について測定したリサーチ法オクタン価は108.1であり、モーター
法オクタン価は96.8であった。リード蒸気圧は7.3 kPa(1.06 psi)であった。実施例I及びIIの分析
実施例I及びIIからのオクタン価をC4及びC5オレフィンからのものと共に簡
単に比較できるように以下の表の形式で報告する。
予想外にも、そして従来技術のC6オレフィンエーテルに関する研究からの偏
見とは対照的に、MDMBは自動車用ガソリン用のオクタンブースターとして驚
くべきほど良好なRON及びMONを有していることが分かる。
実施例III
成分のRON、MON、及びリード蒸気圧(RVP)を測定することに加えて
、MDMBの対応する混合価も評価した。当業者にはよく知られているように、
「混合(blending)」RON、MON、及びRVP価はベースガソリン組成によっ
て非常に変化する。典型的には、RON及びMONの「混合価(Blending Values
)」(BV)はより高くなり、RVPについては僅かに低くなる。以下に示す2
種類の異なるガソリンA及びBを使用して、実施例IIで合成した、およそ14、19
、及び25体積%のMDMB/体積ガソリンのブレンドを調製した。
得られるRON、MON、及びリード蒸気圧を各々のブレンドについて測定し
た結果を以下に示す。
ブレンドの価を以下の方法で使用して最終のブレンドの特性を計算した。RV
Pを1例として使用する。
RONとMONは線形的にブレンドしないので、この式はオクタン価を計算す
るには100%正確ではないが、調査した狭い範囲のブレンドについては±1の価
の範囲内でオクタン価を推定するのに使用できる。
この例は、MDMB成分のRON、MON、及びRVPについての成分価(co
mponent value)(それぞれ、108、97、及び7.3 kPa(1.06 psi))と比較して
、RON及びMONについてMDMBの特性の混合価が幾分より高くなり平均が
それぞれ110及び97であること、及びRVPは6.9 kPa(1 psi)で幾分低くなっ
たことを示している。参考のために、15%MTBE、10%エタノール、及び12%
TAMEについての典型的混合価も示されている。
MTMBの混合RON価及び混合MON価は、MTBE、エタノール、及びT
AMEのものに匹敵することが分かる。このことはMTMBを自動車用のガソリ
ン用のオクタンブースターとして魅力的なものにする。MTMBの混合RVP価
は低いので、MTMBは、MTBE、エタノール、及びTAMEと比較して、
特に魅力的である。なぜならば、MTMBは、その他のオクタンブースターに通
常は付随する高いRVPという欠点をともなわないからである。