【発明の詳細な説明】
形質転換植物における蝋エステル
序 論
本発明は、植物酵素、かかる酵素を精製及び獲得するための方法、それに関連
するアミノ酸及び核酸配列、並びにかかる組成物の利用方法、特に植物細胞の中
での蝋(ワックス)エステルの製造におけるかかる組成物の利用方法に向けられ
ている。
植物の遺伝子操作技術の発展を通じて、新規、且つ所望の特徴を有する植物を
提供するよう、様々な植物種を形質転換及び再生することが可能となっている。
かかる植物遺伝子操作技術にとっての一の課題分野は植物組織の中での価値ある
生成物の生産である。かかる用途は、所望の生成物を生産する植物を作り上げる
形質転換操作において利用するための様々なDNA 構築体及び核酸配列の利用を必
要とする。例えば、植物機能性プロモーターが、植物全体における、又は選定さ
れた植物組織における遺伝子配列の適切な発現にとって必要とされている。更に
、形質転換された物質を同定するのに選択マーカー配列が往々にして利用されて
いる。かかる植物プロモーター及び選択マーカーは、新規植物を獲得するうえで
有用である。価値のある手段を担っている。
脂肪酸は約4〜24の炭素数の炭化水素鎖を有する有機酸である。多種多様の脂
肪酸が知られており、それらは互いと、鎖長において、並びに二重結合の有無、
数及び位置において相違し合う。細胞の中では、脂肪酸は一般に共有結合形態に
おいて存在しており、そのカルボキシル部は脂肪アシル基と呼ばれている。これ
らの分子の鎖長及び飽和度は往々にして式CX:Yにより表され、ここで「X」は
炭素の数を表し、そして「Y」は二重結合の数を表している。
脂肪アシル基は数多くの脂質の主成分であり、そしてその長い非極性炭化水素
鎖はこれらの脂質分子の水不溶性的性質にとって重要である。他の因子に対する
この脂肪アシル基の共有結合のタイプは様々でありうる。例えば、生合成反応に
おいては、それらは特定の酵素反応に依存して、チオエステル結合を介してアシ
ル担体タンパク質 (ACP)又は補酵素A (CoA)に共有結合しうる。蝋においては、
脂肪アシル基はエステル結合を介して脂肪アルコールに連結されており、そして
トリアシルグリセロール類はエステル結合を介してグリセロール分子に連結され
ている3個の脂肪アシル基を有している。
脂質を、長鎖(16又は18個の炭素を有する)脂肪アシル基より主として構成さ
れているトリアシルグリセロール類として貯蔵している数多くの植物が研究され
ている。非常に長鎖(20〜24個の炭素を有する)のモノ不飽和脂肪アシル基がア
シル−CoA 伸長経路によりC18:1から形成され、そしてそれは数多くの植物種
子、特に十文字 (Crucifereae)科の構成員の中で見い出されている。
ホホバとしてよりよく知られているデザート・シュラブ、Simmondsia chinens
isは、その種子貯蔵脂質の主成分として大量の液状蝋を生産及び貯蔵するという
能力において、高等植物(種子担持植物)の中では異常である。かかる単純な蝋
化合物は非常に長鎖のモノエン脂肪アシル基とアルコールとの酸素エステルであ
る(Ohlroggeら、Lipids(1978)13:203-210)。1993年5月27日公開の国際出
願WO 93/10241 号には、蝋エステルを製造するために、植物細胞の中でリダクタ
ーゼと一緒にワックスシンターゼを発現させる方法が記載されている。1992年9
月3日公開のWO 92/14816 号においては、ホホバの脂肪アシルリダクターゼにつ
いての核酸配列が開示され
ている。
他の数多くの生物がアルコール及びアシル基質から蝋エステルを生成する。例
えば、植物は表皮蝋又は小皮蝋を生成する(Kolattukudy(1980)のThe Biochemi
stry of Plants(Stumpf,P.K.and Conn,E.E.編)第4巻、頁571-645)。様
々な細菌の種、例えばアシネトバクター(Acinetobacter)(Fixterら(1986)J
.Gen.Microbiol.132:3147-3157)及びマイクロコッカス(Micrococcus)(Ll
oyd(1987)Microbios 52:29-37)、並びに単細胞生物ミドリムシ(Euglena)(
Khan and Kolattukudy(1975)Arch.Biochem.Biophys.170:400-408)につい
ての蝋も報告されている。更に、牛のマイボーム腺(Kolattukudy ら(1986)J
.Lipid Res.27:404-411)、鳥類の尾腺、並びに様々な昆虫及び海洋生物由来
のミクロソーム調製品における蝋の生産が報告されている。
これらの蝋の組成及び生合成経路はホホバ種子の蝋とは異なることがある。ホ
ホバに関しては、非常に長鎖の脂肪アシル−CoA の対応のアルコールに至る還元
は単一の酵素に依存しているものと考えられており、その酵素の活性は発育中の
ホホバ種子由来の粗抽出物において見い出されている(Pollard ら(1979)Lipid
s 14:651-662;Wuら(1981)Lipids 16:897-902)。それに対し、植物の小皮蝋
の形成に関して、二段過程が報告されている(Kollattukudy(1980)The Bioche
mistry of Plants(Stumpf,P.K.and Conn,E.E.編)第4巻、頁571-645)
。脂肪アシル−CoA はNADH−依存性リダクターゼの作用によって遊離アルデヒド
に変換され、その後NADPH-依存性脂肪アルデヒドリダクターゼの作用によりその
アルコールが形成される。
脂肪アシル−CoA リダクターゼ活性を有するミドリムシ(Euglena gracilis)
由来の多重酵素複合体の可溶性化がWildner and Hall
ick により報告されている(The Southwest Consortium第5回恒例会議、1990年
4月22〜24日、Las Cruces,NM由来の要旨集)。ミドリムシの貯蔵蝋の形成にお
いて、アルコール部は脂肪アシル−CoAリダクターゼにより触媒される脂肪アシ
ルのNADH−依存性還元により形成される。
図面の簡単な説明
図1。ホホバの脂質アシルリダクターゼの核酸配列及び翻訳アミノ酸配列を提
供する。
図2。再合成したホホバ脂質アシルリダクターゼの核酸配列及び翻訳アミノ酸
配列を提供する。
図3。ホホバ油及びコントロールのレストン(reston)植物由来の油に対して
プロットした、pCGN 7677-形質転換レストン植物由来の形質転換油の高温ガスク
ロマトグラフィー対比である。
発明の概要
本発明は植物細胞において蝋エステルを製造するための方法であって、前記植
物にとって異種な配列から発現された脂肪アシルリダクターゼを有する植物細胞
を増殖せしめる工程を含んで成る方法を提供する。本発明に至るまで、蝋エステ
ルが植物において、それにとって異種な配列から発現される蝋シンターゼの存在
抜きで製造されうることは知られていなかった。
好ましくは、植物細胞であって、その植物細胞において機能的な調節要素のコ
ントロール下にあるホホバ脂肪アシルリダクターゼコード核酸配列を含んで成る
組換構築体から発現されたリダクターゼを有する細胞を増殖させる。ホホバリダ
クターゼを発現し、且つ蝋エステルを生成する十文字科の植物の種子細胞、詳し
くはアブラナ
(Brassica)属及びシロイヌナズナ(Arapidopsis)属の細胞を例示する。それ
故、本発明は天然では蝋エステルを生成することが知られていない植物細胞にお
いて蝋エステルを製造するのに利用されうる。
リダクターゼ配列を発現する細胞において蝋エステルが生成されるメカニズム
はわかっていない。それは、ホホバ細胞以外の植物細胞が、リダクターゼより生
成された脂肪アルコールと植物細胞にとって内因性の脂肪アシル基質から蝋エス
テルを合成できる何らかの活性を含んでいることにあるかもしれない。蝋合成能
力を含む植物細胞を決定するための方法も本明細書において説明する。
本発明において利用するリダクターゼは、アシル−CoA 類及びアシル−ACP 類
を含む様々な脂肪アシル基質に対して活性でありうる。これらの基質の炭素鎖の
長さは様々でありうる。しかしながら、一定のリダクターゼは、特定の鎖長のア
シル基質に対して優先性を示しうることがあり、又は好適な炭素鎖長の点におい
て広いアシル基質域を有することがある。例示のリダクターゼ配列はホホバから
獲得できうる長鎖脂肪アシルリダクターゼであるが、その他の脂肪アシルリダク
ターゼを植物細胞において蝋エステルを製造するのに利用できうる方法も提供す
る。
ホホバ油は極端な圧力条件にとって適当な鯨油の代用品として奨励されており
、その理由はある程度、この目的にとって一般的な油である鯨油の輸入が禁止さ
れるようになったためである。ホホバ油は97%より多くの蝋エステルを含んで成
り、トリアシルグリセリド類は含まない。鯨油は総脂質の20%又はそれより多く
に至るほどのかなりの量のトリアシルグリセリド類を含む。本発明は、ホホバ植
物をその種子のために栽培する試みにおいて経験してきた数多くの困難を回避す
ることを可能にする。
本発明の新規の植物油及び新規の蝋組成物を提供する。総脂質の約7%に至る
までの蝋エステル成分を有し、残りがトリアシルグリセリド類である油組成物を
提供する。他に、本発明は主流の蝋成分が長鎖の44:2蝋エステルである蝋エス
テル組成物を提供する。この44:2蝋エステルは蝋組成物の約60%又はそれより
多くで存在しうる。
蝋エステルの性質は脂肪アルコール及び脂肪アシル基の鎖長及び飽和度に依存
して変わるであろう。当業者は、多種多様な所望の蝋エステル生成物を有する植
物細胞をもたらしめる数多くのメカニズムを知っているであろう。宿主植物細胞
により供される基質の変化がその細胞により生成される蝋エステルの変化の一の
メカニズムであるが、しかしながらホホバリダクターゼをコードする配列の特異
性を改変することによっても、又は別の入手源に由来するリダクターゼをコード
する配列を利用することによっても、その細胞により生成される蝋エステルを変
えることができうる。
更に、その他のリダクターゼをコードする配列を利用することが、例えばその
植物細胞がホホバリダクターゼの内因性長鎖脂肪アシル基質を含まないとき、又
は植物宿主細胞がホホバリダクターゼにより生成される長鎖脂肪アルコールに対
して活性である蝋合成能力を含まないとき、必要でありうる。従って、宿主細胞
により提供される基質及びリダクターゼに依存して、様々な特性を有する蝋エス
テルが本発明によって考えられる。
リダクターゼをコードする配列の潜在的な入手源はその脂肪アルコール又は蝋
エステルの生産能力により同定されうる。いくつかの方法を説明し、それにより
本明細書において例示しているリダクターゼタンパク質アミノ酸配列以外の配列
が同定及び獲得できうる。他のリダクターゼ配列の単離のための構造遺伝子配列
の利用、並び
にリダクターゼ核酸配列の転写及び/又は宿主細胞におけるリダクターゼタンパ
ク質の発現にとっての組換構築体におけるこの構造遺伝子配列の利用を述べる。
リダクターゼタンパク質に関連するその他の核酸配列の利用、例えば5′及び3
′非コード領域の利用も考慮する。
本発明の更なる別の観点において、本発明の蝋エステルを含む細胞も考慮する
。例示しているのは、ホホバリダクターゼにとって好適な基質を含む細胞、例え
ば一定の十文字科の植物の胚における細胞である。蝋エステルは種子細胞の総脂
質の約7%のレベルに至るまでの成分として存在している。
発明の詳細な説明
脂肪アシルリダクターゼ又は「リダクターゼ」は脂肪アシル基の対応のアルコ
ールに至る還元を触媒するうえで活性である。引用することで本明細書に組入れ
る同時係属米国特許出願第07,659,975号(91年2月22日出願)(第08/149,007号
(93年8月11日出願)として継続)、第07/767,251号(91年9月27日出願)及び
第07,920,430号(92年7月31日出願)はかかるリダクターゼタンパク質に向けら
れている。配列をコードする核酸を含むホホバリダクターゼに関する情報も、引
用することで本明細書に組入れる1992年9月3日公開のPCT 特許出願WO 92/1481
6 号に供されている。本発明において利用する脂肪アシルリダクターゼには、任
意のアミノ酸配列、例えばタンパク質、ポリペプチド又はペプチドフラグメント
であって、脂肪アシル基の対応のアルコールに至る還元の触媒活性があるものが
含まれる。脂肪アシル基は担体、例えばACP 又は補酵素Aに共有結合している任
意の脂肪アシル基を意図している。
本発明により、外来の脂肪アシルリダクターゼタンパク質は、蝋
エステルの生産を引き起こすように植物細胞の中で発現されうることが認められ
た。植物細胞における蝋エステルの生産は、その植物にとって外来の配列から発
現される蝋シンターゼ抜きで起こる。例示の十文字科植物細胞はこの方法によっ
て長鎖蝋エステルを発現したが、このリダクターゼタンパク質の更なる研究は、
その触媒特性を更に特性決定及び改善せしめるための、又はそのアシル基質特異
性を改変せしめるための部位特異的突然変異誘発研究をもたらしうる。改変され
た基質特異性を有するリダクターゼはその他のFAS 酵素を伴う用途に有用であり
うる。例えば、中鎖(C12−C14)優先性植物性チオエステラーゼ(同時係属米
国特許出願第07/662,007号を参照のこと)及び適当なアシルトランスフェラーゼ
が、中鎖アルコールを生成するのに改変リダクターゼと一緒に利用できうる。こ
の中鎖アルコールは次に宿主植物細胞により、その植物細胞にとって内因性の蝋
合成活性を介して中鎖蝋エステルへと変換されうる。
更に、ホホバリダクターゼの精製のために開発された方法を、他の生物からの
類似の膜結合型アシル−CoA リダクターゼの精製に応用できうることが理解され
る。そのリダクターゼも植物宿主細胞における蝋エステルの製造に似たようにし
て利用できうる。このようにして、一連の基質優先性又は特異性を有する様々な
リダクターゼを獲得することができうる。かかるリダクターゼのとりわけ所望さ
れる入手源はアシネトバクター(Acinetobacter)種、マイクロコッカス(Micro
coccus)及び緑藻類(Euglena)である。
実質的に精製されたリダクターゼタンパク質の回収は様々な方法により成し遂
げられうる。例えば、ポリアクリルアミドゲルを泳動し、そしてそのタンパク質
を膜支持体、例えばニトロセルロース又はポリビニリデンフルオリド(PVDF)に
転写させてよい。次にこの膜の特定したタンパク質を含んでいる区画を獲得して
、その特定し
たタンパク質が実質的にその他のタンパク質を含まないようにすることができう
る。当業界に公知の、及び以下の実施例の中にも記載されている技術を利用し、
そのタンパク質を膜から取り出し、そしてそのアミノ酸配列を決定できるように
更なる操作にかけることができうる。
例えば、アミノ酸配列は、全タンパク質からN−末端アミノ酸領域を配列決定
することにより、又は臭化シアンによる消化によって所望のタンパク質のフラグ
メントを調製することにより、もしくは他にプロテアーゼを利用する酵素切断に
より、決定されうる。有用でありうるプロテアーゼの例には、エンドプロティナ
ーゼlysC,gluC,AspN及びトリプシンが含まれうる。このようにして得たフラグ
メントを次に精製し、次いで当業界に公知の方法に従って配列決定できうる。
薬品、化粧品、洗剤、プラスチック類及び湿潤油において用途を有するアシル
アルコール生成物を供するために、植物細胞においてリダクターゼタンパク質を
発現させることも所望されうる。本明細書に記載の通り、遺伝子導入アブラナ属
及びシロイヌナズナ属におけるホホバリダクターゼの発現は、これらの植物の種
子における長鎖蝋エステルの生産をもたらす。このエステルは公知のけん化又は
エステル交換工程によって対応の脂肪アシルアルコール及び脂肪アシル基質へと
容易に変換される。
ある状況において、例えば他のリダクターゼ入手源の利用において、細胞にお
けるリダクターゼ活性の発現のために様々な操作が必要とされうる。例えば、膜
挿入にとって重要なリーダーペプチドを同定しておき、そして成熟リダクターゼ
をコードする配列のみを含む構築体を調製することができる。本発明のリダクタ
ーゼ核酸はゲノム又はcDNAであり、そしてcDNAもしくはゲノムライブラリーから
単離するか、又は単離した植物DNAから直接単離することができうる。タンパク
質が単離できたときの及び/又はタンパク質のアミノ酸配列が獲得できたときの
遺伝子配列の単離方法は当業者に公知である。
例えば、抗体をその単離タンパク質に対して、生起させ、次いで発現ライブラ
リーをスクリーニングに用い、これにより植物アシルリダクターゼタンパク質又
はその抗原性フラグメントを生産するクローンを同定することができる。他方、
そのアミノ酸配列からオリゴヌクレオチドを合成し、そして核酸配列の単離に利
用することができる。このオリゴヌクレオチドは、cDNA又はゲノムライブラリー
をスクリーニングに用いられうる核酸フラグメントを作製するPCRにおいて有用
でありうる。別の手法において、このオリゴヌクレオチドは、有用なプローブを
同定するために、及びcDNA又はゲノムライブラリーをスクリーニングにこれらの
オリゴヌクレオチドを利用できうるハイブリダイゼーション条件を同定するため
に、ノーザン又はサザンブロットに直接利用できうる。
本発明において例示するアシルリダクターゼ核酸配列にはホホバアシル−CoA
リダクターゼタンパク質に関係するもの、及びホホバタンパク質又は核酸配列か
ら獲得できうる配列が含まれる。「関係するもの」とは、DNA 又はRNA のいづれ
かである、ホホバアシルリダクターゼタンパク質又はその一部をコードするもの
;ホホバの胚においてそのリダクターゼの転写及び翻訳(発現)を誘発する、前
記コード配列に対して5′又は3′に認められる調節配列;cDNAの中には存在し
ないイントロン配列;並びに小胞体の膜への挿入にとって必要とされうるが、し
かし成熟又はプロセスを経たアシルリダクターゼ酵素においては見い出せないリ
ダクターゼタンパク質前駆体の任意のリーダー又はシグナル配列をコードする配
列;を意味す
る。
ホホバの配列又はタンパク質から「獲得できうる」配列とは、ホホバアシルリ
ダクターゼアミノ酸配列から合成されうる所望の脂肪酸リダクターゼタンパク質
に関連した、又はプローブとしてホホバリダクターゼ核酸配列を、もしくはホホ
バリダクターゼタンパク質に対して調製された抗体を用いて他の生物から単離し
た、任意の核酸配列を意図している。これによると、核酸ハイブリダイゼーショ
ン又は抗原的方法のいづれかによりホホバ配列を利用して所望の生物から単離し
た他のアシルリダクターゼの配列は、更なる他のアシルリダクターゼを単離する
のに似たように利用できうることが理解されうる。ホホバリダクターゼを介して
単離された種子植物リダクターゼを通じて得られたリダクターゼも本明細書にお
いても「獲得できうる」と考えられる。
核酸配列の単離のために、cDNA又はゲノムライブラリーを当業者に公知のプラ
スミド又はウィルスベクター及び技術を利用して調製することができうる。所望
の配列についてスクリーニングに用いられうる有用な核酸ハイブリダイゼーショ
ン及び免疫学的方法も当業者に公知であり、そして例えばManiatisら(1989)(
Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989)Cold Spring Harbor
,Cold Spring Harbor,New York)に提供されている。
一般に、核酸プローブの利用より獲得できうる配列は標的配列と注目のアシル
リダクターゼ酵素をコードする所定の配列との間で60〜70%の配列同一性を示す
であろう。しかしながら、50〜60%ほどの低い配列同一性を有する冗長配列も得
られうる。核酸プローブはその核酸配列の冗長フラグメントであるか、又はより
短いオリゴヌクレオチドプローブであってもよい。プローブとして長めの核酸フ
ラグメントを採用するとき(約100bpより大)、プローブとして利
用する配列から20〜50%のずれを有する(即ち、50〜80%の配列相同性を有する
)配列を標的サンプルから獲得するのに、より低めのストリンジェンシーでスク
リーニングすることができうる。オリゴヌクレオチドプローブはアシルリダクタ
ーゼ酵素をコードする核酸配列全体よりもかなり短くてよいが、しかしながら少
なくとも約10、好ましくは少なくとも約15、そしてより好ましくは少なくとも約
20のヌクレオチドであるべきである。長めの領域に反してより短めの領域を使用
するとき、より高度の配列同一性が所望される。即ち、相同遺伝子を検出するた
めのオリゴヌクレオチドプローブをデザインするには、アミノ酸配列同一性の高
い酵素活性部位を同定することが所望されうる。
所定の配列とのハイブリダイゼーションによって近縁遺伝子が単離できうるか
を調べるため、その配列を検出できるように、一般に放射能を利用してラベルす
るが、しかしながらその他の方法も有用である。ラベルしたプローブをハイブリ
ダイゼーション溶液に加え、そして所望の核酸を含むノーザンブロット又はサザ
ンブロットいづれかのためのフィルターとインキュベートするか(所望の起源を
相同性についてスクリーニングするため)、又はスクリーニングすべきcDNAもし
くはゲノムクローンを含むフィルターとインキュベートする。ハイブリダイゼー
ション及び洗浄条件は、そのプローブの注目の配列に対するハイブリダイゼーシ
ョンを最適化するために変えることができうる。低めの温度及び高めの塩濃度は
より遠縁の配列のハイブリダイゼーションを可能にする(低ストリンジェンシー
)。低ストリンジェンシー条件下でバックグランドハイブリダイゼーションが問
題となるなら、ハイブリダイゼーションもしくは洗浄工程のいづれかの温度を上
げるか、及び/又は塩濃度を下げて、特異的なハイブリダイゼーション配列の検
出性を高めることができる
。ハイブリダイゼーション及び洗浄の温度はBeltz ら(Methods in Enzymology
(1983)100:266-285)に論じられている通り、プローブの推定アニーリング温
度に基づいて調節できうる。
有用なプローブ並びに適切なハイブリダイゼーション及び洗浄条件は上記の通
りに同定され、cDNA又はゲノムライブラリーはそのラベル化配列及び最適化条件
を利用してスクリーニングされる。このライブラリーはまず固形寒天培地上でプ
レート培養し、そしてそのDNA を通常はニトロセルロース又はナイロンフィルタ
ーである適当な膜に移す。次いでこれらのフィルターをラベル化プローブとハイ
ブリダイズさせ、そして前記の通りに洗って近縁配列含有クローンを同定する。
免疫学的スクリーニングのため、ホホバアシルリダクターゼに対する抗体を、
ウサギ又はマウスに精製タンパク質を注射することによって調製することができ
うる。抗体を調製するかかる方法は当業者に公知である。モノクローナル又はポ
リクローナル抗体のいづれも製造できるが、一般に遺伝子単離にとってはポリク
ローナル抗体がより有用である。
所望の植物種をスクリーニングするためには、ホホバリダクターゼに対する抗
体と交差反応する近縁タンパク質が所望の植物種の抽出物の中に存在しているか
を決定するウェスタン分析を行う。これは植物抽出タンパク質の、通常ニトロセ
ルロースの膜の上での固定化、それに続く電気泳動及び抗体とのインキュベーシ
ョンにより成し遂げられる。ニトロセルロースフィルター上での抗体/タンパク
質複合体の検出の多種多様な系、例えば抗体の放射性ラベリング及び第二抗体/
酵素コンジュゲート系が有用である。いくつかの有用な系がOber felder (Focus
(1989)BRL/Life Technlogies,Inc.11:1-5)により述べられている。交差
反応が観察できたら、近縁タ
ンパク質をコードする遺伝子を、所望の植物種を代表する発現ライブラリーをス
クリーニングすることによって単離される。発現ライブラリーは、Maniatisら(
前掲)に記載されているようなラムダgt11を含む様々な市販のベクターにおいて
構築されうる。
DNA ハイブリダイゼーション又は免疫学的スクリーニング技術を利用して上記
の通りに同定したクローンを次に精製し、そしてそのDNA を公知の技術を利用し
て単離及び分析する。このようにして、そのクローンが近縁アシルリダクターゼ
タンパク質をコードするかを確認する。その他の種子植物脂肪アシルリダクター
ゼも、ホホバリダクターゼを利用するのと同じ方法でこれらのリダクターゼを利
用することを通じて得られうる。
当業者は、本発明のアシルリダクターゼ核酸配列は部位特異的突然変異もしく
はPCR の標準技術を利用して改変できること、又は配列の改変は合成核酸配列の
製造の際に成し遂げられうることを理解しているであろう。このような改変配列
も本発明のアシルリダクターゼ核酸配列と考えられる。例えば、コドンの中の自
由度のある位置をその核酸配列が同一のアミノ酸配列をコードするように変えて
よく、またはそうでなければ、コドンを保存性アミノ酸置換が得られるように改
変させてよい。いづれにしても、このペプチドは所望の酵素活性を維持しており
、それ故本発明の一部と考慮される。
本発明のアシルリダクターゼ酵素の核酸配列は、ゲノムDNA,cDNA,mRNAに由
来するDNA もしくはRNA 配列であるか、又は全体的もしくは部分的に合成された
ものであってよい。この遺伝子配列は例えばゲノムDNA を適当な起源から単離し
、そして注目の配列をポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)を利用して増幅及びクローニ
ングすることによってクローニングすることができうる。他方、この遺伝子配列
は、特に植物にとって好適とされる配列を供することを所望する場
合、完全に又は部分的に合成されたものであってよい。即ち、所望の構造遣伝子
全体又は一部(リダクターゼタンパク質をコードする遺伝子部分)を、選定され
た宿主にとって好適とされるコドンを用いて合成してよい。宿主にとって好適な
コドンは、例えば所望の宿主種において発現されるタンパク質において最も頻繁
に利用されるコドンから決定されうる。ホホバリダクターゼコード配列内の一定
の領域は75%前後に至るまでのAT利用率を有し、その平均は57%を上まわる。再
合成したコード配列は好ましくは55%未満、最も好ましくは51%以下程度の相対
的に均一なAT組成を有する。
本発明の脂肪アシルリダクターゼをコードするDNA 配列は様々な方法で外来DN
A 配列と組合せてよい。「外来」DNA 配列とは、自然ではリダクターゼと関係し
ていることが見い出されていない任意のDNA 配列、例えば同一生物由来の自然で
は互いと結合し合っていないDNA 配列の組合せを意味する。例えば、トランジッ
トペプチドをコードする配列を本発明のリダクターゼ配列に連結することが所望
されうる。このようにして、脂肪アシル基質、特に脂肪アシル−ACP が利用可能
となっているクロロプラストを、このリダクターゼは標的とすることができるよ
うになりうる。また、ホホバ・デサチュラーゼゲノムDNA に由来する、又は他の
植物のゲノムDNA に由来するイントロンを、特定の植物細胞における発現レベル
の促進手段として導入することが所望されうる。種子胚細胞において通常発現さ
れる配列由来のイントロン、例えばデサチュラーゼ又はナピン (napin)ゲノム配
列由来のイントロンがこの目的にとって適当である。
本発明のアシルリダクターゼをコードするDNA 配列は、リダクターゼに通常係
っている遺伝子配列全体又はその一部と一緒に採用できうる。その構成部におい
て、リダクターゼをコードするDNA 配列は、5′から3′に至る転写方向におい
て、宿主細胞の中での転写
及び翻訳を促進できる転写開始コントロール領域、リダクターゼをコードする核
酸配列、並びに転写終止領域を有する組換構築体において組合せてよい。
宿主に依存して、その調節領域は様々であり、ウィルス、プラスミド又は染色
体遺伝子等に由来する領域がある。原核又は真核微生物、特に単細胞宿主におけ
る発現のため、多種多様な構成的又は調節性プロモーターを採用してよい。微生
物における発現は植物酵素の簡単な供給源となりうる。転写開始領域は、記載の
もののうちでとりわけ、細菌及び酵母宿主、例えば大腸菌 (E.coli)、B.スブ
チリス (B.subtilis)、サッカロマイセス セレビジエ(Saccharomyces cerevi
siae)由来の領域、例えばベーターガラクトシダーゼ、T7ポリメラーゼ、トリプ
トファンE等の如くの遺伝子である。
ほとんどの場合、この組換構築体はアシルリダクターゼの生産を司る、植物に
おいて機能的な調節領域を含むであろう。植物リダクターゼ又はその機能性フラ
グメントをコードするオープンリーディングフレームは、転写開始調節領域に対
してその5′末端において連結されるであろう。転写開始領域も所望され、そし
てそれはリダクターゼcDNA配列の5′非コード領域より供されるか、又はこの構
築体の転写開始領域に自然に結合している転写開始領域より供されうる。一般に
、転写及び翻訳調節領域の組合せはプロモーターと呼ばれている。植物における
構造遺伝子の多種多様な構成的又は調節性、例えば誘導型発現を司る莫大な数の
プロモーター領域がある。
植物における構成的遺伝子発現を司るうえで有用であることが知られている配
列としてはとりわけアグロバクテリア (Agrobacterium)遺伝子に係る調節領域、
例えばノパリン・シンターゼ (Nos)、マノパイン・シンターゼ (Mas)又はオクト
パインシンターゼ (Ocs)にとってのもの、更にはウィルス遺伝子の発現をコード
する領域、例
えばカリフラワー・モザイク・ウィルス(CaMV)の35S及び19S領域がある。本
明細書で用いている「構成的」なる語は、遺伝子が全てのタイプの細胞において
同一レベルで発現されることを必ず意味しているわけではなく、その遺伝子が広
域の細胞タイプの中で発現はされるが、量における多少の変動が往々にして検出
されることも意味する。その他の有用な転写開始領域、例えばナピン、種子又は
葉のACP に由来するもの、RUBISCO の小サブユニット等が、一定の組織において
の、又は所定の増殖条件下での転写を優先的に担う。
完全な植物アシルリダクターゼ遺伝子全体又はその一部の利用が様々な場合に
所望されることがあり、即ち5′上流非コード領域(プロモーター)を、構造遣
伝子配列及び3′下流非コード領域とともに利用してよい。例えば、ホホバリダ
クターゼcDNAがわかっているため、このリダクターゼ構造遺伝子に係っているプ
ロモーターはPCR ハイブリダイゼーション技術を利用して、ホホバゲノムDNA か
ら獲得できうる。別のプロモーター、例えば注目の植物宿主にとって天然のプロ
モーター、又は改変プロモーター、即ち、ある遺伝子源に由来する転写開始領域
とそれとは別の遺伝子源に由来する翻訳開始領域とを有するプロモーター、又は
増強型プロモーター、例えばダブル35S CaMV プロモーターを所望するなら、そ
れらの配列を標準の技術を利用して連結してよい。
5′上流非コード領域を種子の成熟中に調節されるような他の遺伝子から獲得
する場合の用途にとっては、植物胚組織の中で優先的に発現されるもの、例えば
ACP 及びナピン誘導型転写開始コントロール領域が所望される。かかる「種子特
異的プロモーター」は88年1月25日に出願された米国出願第07/147,781号(現在
、91年8月8日に出願された米国出願第07/742,834号)及び1990年3月16日前後
に出願された表題「Novel Sequences Preferentially Expressed i
n Early Seed Development and Methods Related Thereto」の米国出願第07/494
,722号の教示に従って獲得及び利用されうる。これらの同時係属出願は全て引用
することで本明細書に組入れる。種子組織の中で優先的に発現される転写開始領
域は、他の植物器官における遺伝子生成物の任意の破綻又はそれに対する有害な
作用を最少限とするために脂肪アルコール生産にとって所望されると考えられて
いる。
調節転写終止領域も本発明の組換構築体の中に設けてよい。転写終止領域は、
植物アシルリダクターゼをコードするDNA 配列により、又は別の遺伝子起源に由
来する慣用の転写終止領域、特にこの転写開始領域と自然に係っている転写終止
領域により供されうる。この転写終止領域は一般に、少なくとも約 0.5kb、好ま
しくは約1〜3kbの配列を、その終止領域が由来している構造遣伝子の3′側に
含むであろう。
発現にとっての注目のDNA 配列として植物アシルリダクターゼを有する植物発
現構築体は、多種多様な植物生命体、特に非常に長鎖の脂肪アシル−CoA 分子を
供する植物生命体(例えばアブラナ属)、及び特にナタネ(rapeseed)の高エル
カ酸変異体を供する植物生命体に利用することができうる。注目のその他の植物
は所望の基質、例えば中鎖又は長鎖の脂肪アシル分子を供し、そして限定するこ
となく、ナタネ(カノーラ(Canola)変異種)、シロイヌナズナ属、ヒマワリ、
ベニバナ、綿、タバコソウ属(Cuphea)、ダイズ、ピーナッツ、ココナッツ及び
アブラヤシ、並びにトウモロコシが含まれる。宿主細胞の中にDNA 発現構築体を
導入するための方法に依存して、その他のDNA 配列が必要でありうる。重要には
、本発明は双子葉植物及び単子葉植物の種等に適用でき、そして新規の及び/又
は改良型の形質転換及び再生技術に容易に適用できるであろう。
形質転換の方法は本発明に関して制限されない。様々な植物形質転換法が現状
有用である。新たな方法が作物を形質転換するのに有用となったら、それらは以
降直接採用されうる。例えば、アグロバクテリア感染に天然では感受性である数
多くの植物種が、アグロバクテリア媒介型形質転換の三分節系交配又はバイナリ
ーベクター法を介して有効に形質転換されうる。宿主植物細胞への核酸配列の移
入を供するうえで有用なその他の配列は植物病原性ウィルス又は植物転移因子に
由来しうる。更に、様々な単子葉植物種及び双子葉植物種の形質転換を可能にす
るマイクロインジェクション、DNA 粒子ボンバードメント、エレクトロポレーシ
ョンの技術が開発されている。
組換構築体を開発するうえで、この構築体の様々な成分又はそのフラグメント
は通常、細菌宿主、例えば大腸菌の中で複製可能である慣用のクローニングベク
ターの中に挿入されるであろう。論文において記載された莫大な数のベクターが
存在する。各クローニングの後、そのプラスミドを単離し、そして更なる操作、
例えば制限酵素処理、新フラグメントの挿入、ライゲーション、欠損、挿入、リ
セクション等に委ね、所望の配列の成分も仕立ててよい。構築体が完成したら、
宿主細胞の形質転換法に従い、更なる操作にとって適当なベクターに移入してよ
い。
通常、この組換構築体に含まれているのは、宿主における発現にとって必須の
調節領域及び形質転換細胞の選別を担う領域を有する構造遣伝子であろう。この
遺伝子は細胞障害剤、例えば抗生物質、重金属、毒素等に対する耐性、栄養要求
性宿主に原栄養性を供する補完、ウィルス免疫性等を司どる。同様に、色調変化
により (例えばGUS)又は発光により(例えばルシフェラーゼ)同定可能な化合物
の生成を担う酵素をコードする遺伝子が有用である。発現構築体を
導入する様々な宿主に依存して、1又は複数種のマーカーを形質転換組織の選別
又は検出のために採用してよく、ここで種々の選別条件が種々の宿主にとって利
用される。
植物形質転換のためにアグロバクテリアを利用するとき、核酸配列はその一方
又は両末端で、特に左側及び右側ボーダー領域で、そしてより特に、少なくとも
右側のボーダー領域でT-DNA と接していることが所望されうる。これらのボーダ
ー領域は、別の形質転換法を採用するときにも有用でありうる。
アグロバクテリア又はリゾジーンズ(Rhizogenes)配列を植物形質転換のため
に利用する場合、宿主において存在しているTi−又はRi−プラスミド上のT-DNA
との相同組換のためにアグロバクテリア宿主の中に導入できうるベクターを使用
してよい。組換にとってのT-DNA を含むTi又はRiはアームド(瘤形成可能)又は
ディスアームド(瘤形成不能)であってよく、後者は植物宿主細胞へのDNA の移
入にとって必須のトランス作用因子をコードするvir 遺伝子の機能補完が形質転
換アグロバクテリア宿主の中に存在している限り、許容される。うでつきアグロ
バクテリア株の利用は正常な植物細胞(その一部は所望の核酸配列を含む)と、
腫瘍形成遺伝子の存在に基づき瘤形成可能な植物細胞との混合物をもたらしうる
。所望の核酸配列を含むが、腫瘍遺伝子を欠く細胞をこの混合から選択でき、こ
れにより正常な遺伝子導入植物が得られうる。
宿主植物細胞を形質転換するための媒体としてアグロバクテリアを利用する好
適な方法において、T-DNA ボーダー領域により境界が設けられている発現又は転
写構築体を大腸菌及びアグロバクテリアの中で復製可能な広宿主域ベクターの中
に挿入することができ、かかる広宿主域ベクターは論文の中に記載されている。
一般に利用されているのはpK2又はその誘導体である。例えばDitta ら(Proc.
Nat.Acad.Sci.,U.S.A(1980)77:7347-7351)及びEPA 0,120,515 号を参
照のこと。それらは引用することで本明細書に組入れる。他に、一方がベクター
を大腸菌の中で安定化せしめ、そして他方がアグロバクテリアの中で安定化せし
める別々の複製配列を含むベクターの中に、植物細胞の中で発現させるべき配列
を挿入してよい。例えばMcBride and Summerfelt(Plant Mol.Biol.(1990)1
4:269-276)を参照のこと。これにおいては、pRiHRI (Jouanin ら、Mol.Gen.
Genet.(1985)201:370-374)複製起点を利用しており、そしてそれは宿主アグ
ロバクテリア細胞の中での植物発現ベクターの増強した安定性を司る。
アグロバクテリアの中で複製できる上記の如くベクターの利用が好ましい。こ
のようにして、プラスミドの組合せは必要でなくなり、そして宿主アグロバクテ
リアvir 領域はT-DNA ボーダー配列を植物宿主細胞に移入するのに必要なトラン
ス作用因子を提供することができる。
アブラナ属細胞の形質転換のため、例えばアグロバクテリア形質転換法が利用
できうる。一のかかる方法はRadke ら (Theor.Appl.Genet.(1988)75:685-
694)に記載されている。
植物細胞についての蝋合成能力を決定することのできうる方法を提供する。例
示するのはアブラナ属 (カノーラ及び高エルカ酸ナタネ (HEAR))及びシロイヌナ
ズナの胚アッセイであり、それぞれはホホバの胚について決定されたレベルに比
べて低い相対レベルで蝋合成活性を含むことが示される。このようにして、蝋エ
ステル製造にとっての候補を決定するのに、あらゆる植物を内因性蝋合成活性の
検出のためにアッセイすることができる。また、この蝋合成活性の好適な基質、
並びに内因性蝋合成活性の好適な脂肪アルコール基質を生成するリダクターゼを
コードする配列を含むように仕立てられ
たリダクターゼ構築体、又は他に所望の蝋エステルの生産性を高めるように選ば
れたリダクターゼが決定されうる。
アブラナ属の胚細胞の中で認めれる蝋合成活性は、発現されたホホバリダクタ
ーゼにより作られた脂肪アルコールを蝋エステルへと変換する活性を構成してい
るようである。かかる活性が、その植物細胞にとって異種のリダクターゼをコー
ドする配列により形質転換された細胞中の脂質アルコールから蝋エステルに至る
変換につかさどるかどうかはわかっていない。この活性は、もしつかさどってい
るなら、専用の酵素であるか、又は別の主要活性を有する酵素のいづれかであり
うる。例えば、ジアシルグリセロール・アシル・トランスフェラーゼ (DAGAT)は
リガーゼ活性を含むことができうる。
アシルリダクターゼの好適な基質を含む宿主植物細胞中でのリダクターゼタン
パク質の発現は検出可能な蝋エステル成分を有する細胞をもたらす。粗製油は高
温ガスクロマトグラフィーにより検出可能な蝋エステルを含むが、誘導化油にお
いては、その蝋エステルはその脂質アルコールと脂肪アシル基質に戻り変換する
ため、これが検出されるこのエステルの脂肪アシルアルコール成分である。
これらの遺伝子導入植物から得られる油は蝋エステルとトリアシルグリセリド
とのブレンドである。鯨油もかかる成分のブレンドである。植物油からの蝋の分
離のための又は鯨油からの蝋エステルの分離のための公知であり、且つ長年利用
されている簡単な方法が、遺伝子導入リダクターゼ植物から獲得できた蝋エステ
ルとトリアシルグリセリド成分とを分けるのに利用できる。一のかかる方法はウ
インタリゼーション(winterization)脱蝋操作であり、これによれば油を冷却
して蝋成分を結晶化させ、それを次に固体としてその油から機械的に分離させて
いる。莫大な数のその他の分画手順がかかる目的にとって知られ、有機溶媒を利
用する抽出方法が利用されて
いる。様々なかかる方法がGunstoneらのThe Lipid Handbook第2版、Chapman &
Hall(1994)London に記載されている。
本発明を概説してきたが、本発明は、例示の目的で含ませ、従って何らかのこ
とわりのない限り本発明を限定することを意図していない以下の実施例を参照す
ることによってより容易に理解されるようになるであろう。
実施例
実施例1−アシル−CoA リダクターゼアッセイ
ミクロソーム膜調製品又は可溶化タンパク質調製品中のアシル−CoA リダクタ
ーゼ活性をアッセイするための方法を説明する。
A.放射性ラベル化材料
長鎖〔1−14C〕脂肪酸〔比活性51〜56Ci/mole)、即ち11−cis −エイコセ
ン酸、13−cis −ドコセン酸及び15−cis −テトラコセン酸を、〔14C〕シアン
化カリウムと対応のアルキルメシレートとの反応、それに続くアルキルニトリル
の遊離脂肪酸に至る塩基性加水分解により、調製する。この遊離脂肪酸をエーテ
ル系ジアゾメタンによりそのメチルエステルに変換させ、そして調製硝酸銀薄層
クロマトグラフィー (TLC)により精製する。その脂肪酸メチルエステルを遊離脂
肪酸へと加水分解で戻す。放射性化学純度は3通りのTLC 法により評価する:ノ
ーマル相シリカTLC、硝酸銀TLC 及びC18逆相TLC。これらの方法により測定され
た放射性化学純度は92〜98%であった。長鎖〔1−14C〕アシル−CoA を対応の
1−〔14C〕遊離脂肪酸から、Young and Lynen の方法(J.Bio.Chem.(1969
)244:377)により、10Ci/moleの比活性に至るように調製する。その他の〔1
−14C〕アシル−CoA、例えば〔1−14C〕テトラカセノイル−CoA はAmersham
(Arlington Heights,IL)より購入した。〔1−14C〕ヘキサデカナールはPletc
her and Tate の方法 (
Tet.Lett.(1978)1601-1602)の小スケール改良法に従って、〔1−14C〕ヘ
キサデカン−1−オールのジクロメート酸化により調製する。その生成物を調製
シリカTLC により精製し、そしてヘキサン溶液として−70℃で使用時まで保存す
る。
B.ミクロソーム膜調製品中のリダクターゼ活性のアッセイ
1.アッセイ:ミクロソーム膜調製品中のリダクターゼ活性は20μMの〔1−14
C〕アシル−CoA(通常のテトラコセノイル−CoA ;比活性2〜5Ci/mol)の、
アッセイすべきサンプル及び2mMのNADPH との全容量0.25mlでのインキュベーシ
ョンにより測定する。そのインキュベーション混合物は10% w/vのグリセロ
ール、1mMのDTT も含み、そして50mMのHEPES(4−〔2−ヒドロキシエチル]
−1−ピペラジンエタン−スルホン酸)(ここで及び以降において、HEPES はpH
7.5 に調整した1Mのストック溶液より添加)で緩衝化されている。
このアッセイはアシル−CoA 基質の添加により開始し、そしてインキュベーシ
ョンは30℃で1時間行う。アッセイはアッセイチューブを氷の上に載せ、そして
直ちに0.25mlのイソプロパノール:酢酸(5:1,v/v)を加えることにより
停止させる。未ラベルの蝋エステル(0.1mg) 及びオレイルアルコール (0.1mg)を
担体として加える。〔14C〕脂質をHara及びRadin のスケールダウンプロトコー
ル(Anal.Biochem.(1978)90:420)により抽出する。6mlのヘキサン/イソ
プロパノール(3:2,v/v)を終了アッセイに加える。そのサンプルをボル
テックスにかけ、2mlの水性硫酸ナトリウム溶液(5.5% w/v)を加え、そし
てそのサンプルを再びボルテックスにかける。
2.アッセイ2:ミクロソーム膜調製品中のリダクターゼ活性は20μMの〔1
−14C〕アシル−CoA(通常のテトラコセノイル−CoA
、比活性2〜5Ci/mol)の、アッセイすべきサンプル及び2mMのNADPH との全容
量0.25mlでのインキュベーションにより測定する。そのインキュベーション混合
物は10% w/vのグリセロール、1mMのDTT も含み、そして50mMのHEPES(4
−〔2−ヒドロキシエチル〕−1−ピペラジンエタン−スルホン酸)(ここで及
び以降において、HEPES はpH7.5に調整した1Mのストック溶液より添加)で緩
衝化されている。この膜調製品の中に更に存在している(且つリダクターゼ反応
生成物を消費する)アシルCoA:アルコールアシルトランスフェラーゼ活性を阻
害することを所望するなら、0.3% w/vのCHAPS をそのアッセイ混合物の中
に含ませる。CHAPS のこの濃度はリダクターゼ酵素に対して最少限の作用を及ぼ
すが、しかしアシルトランスフェラーゼ反応を完全に阻害し、それ故リダクター
ゼ活性の定量を簡単にする。
アッセイはアシル−CoA 基質の添加により開始し、そしてインキュベーション
は30°で1時間行う。アッセイはアッセイチューブを氷の上に載せ、そして直ち
に0.25mlのイソプロパノール:酢酸(4:1,v/v)を加えることにより停止
させる。未ラベルの蝋エステル(25μg)、オレイルアルコール(50μg)及び
オレイン酸(50μg)を担体として加える。〔14C〕脂質をHara及びRadin のス
ケールダウンプロトコール(Anal.Biochem.(1978)90:420)により抽出する
。4mlのヘキサン/イソプロパノール(3:2,v/v)を終了アッセイに加え
る。そのサンプルをボルテックスにかけ、2mlの水性硫酸ナトリウム溶液(6.7%
w/v) を加え、そしてそのサンプルを再びボルテックスにかける。
C.可溶化リダクターゼ活性についてのアッセイ
可溶化リダクターゼ活性をアッセイするためには、酵素の活性化のための塩の
添加を含むいくつかの変更を必要とする。可溶化リダ
クターゼアッセイにとってのアッセイバッファーはミクロソーム膜調製品につい
て前記した通りであるが、ただし以下の変化を伴う:
a.NaClを 0.3〜0.5 Mの最終濃度となるように加える;
b.EDTAを〜1mMで含ませる;及び
c.一般に0.75%のCHAPS を含むアッセイすべきサンプルを≦0.3%に希釈す
る(CHAPS にとってのCMC は〜 0.5%)。
D.アッセイ生成物の分析
ミクロソーム膜調製品のリダクターゼアッセイ又は可溶化リダクターゼアッセ
イのいづれかの生成物の分析のため、2通りのプロトコールが開発されている。
以下に「長時間アッセイ」として説明する一のプロトコールは時間がかかるが、
よりよい定量的な結果を供する。以下に「迅速アッセイ」として説明する他のプ
ロトコールもリダクターゼ活性の測定を供するが、より迅速であり、より便利で
あり、しかしながら定量性に欠ける。
1.長時間分析:硫酸ナトリウムの添加及びサンプルのボルテックスの後、上
部有機相を除去し、そして下部水性相を4mlのヘキサン/イソプロパノール(7
:2 v/v)で洗う。その有機相をプールし、そして窒素のもとで乾くまでエ
バポレートする。その脂質残渣を小容量のヘプタンに再懸濁し、そしてそのアリ
コートを液体シンチレーションカウンティングにより放射能についてアッセイす
る。サンプルの残りは、ラベル化されたクラスのTLC 分析のために、又は蝋エス
テルを解裂させるように誘導し、これにより生成した総アルコール量の測定値を
得るために利用できる。
脂質クラス分析のため、サンプルをシリカTLC プレートに載せ、そしてそのプ
レートをヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(例えば80:20:1又は70:30:1
v/v/v)の中で展開させる。脂質クラス、大半の蝋エステル(リガーゼが
存在しているときは、ミク
ロソーム膜調製品アッセイにおける通り)、遊離脂肪酸、脂肪アルコール及び起
源にある極性脂質間の放射能の分布をAMBIS 放射能分析用イメージングシステム
(AMBIS Systems Inc.,San Diego,CA)を用いて測定する。必要ならば、個々
の脂質クラスを更なる分析のためにTLC プレートから回収してよい。
蝋エステルの解裂のため、Pinaら(Lipids(1987)22:358-361)のグリニヤ
ール誘導化プロトコールを基礎とするスケールダウンプロトコールを利用する。
このサンプルと200μgの担体蝋エステルとを、テフロンライン・スクリューキ
ャップの付いたガラス管の中で乾かす。ドライジエチルエーテル(0.4ml)、酢酸
エチル(3μl)3Mのエチルマグネシウムブロミドのジエチルエーテル溶液を
(0.1ml)を順次加える。そのサンプルをボルテックスにかけ、そして室温で少な
くとも2時間放置し、その後水飽和化ジエチルエーテルを過剰の試薬を破壊する
ために慎重に加える。2mlづつの1MのHCl 及びヘキサンを加え、そしてこのガ
ラス管をボルテックスにかける。上部有機相を水で洗い(2×2ml)、そして50
〜100 μlのエタノールの存在下で乾くまでエバポレートする。
そのサンプルを50〜100 μlのヘキサンに再懸濁し、そしてTLC プレートに載
せる。順相及び逆相TLC の両方の系を分析のために利用する。順相TLC はシリカ
TLC プレートを使用し、ヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(70:30:2 v/
v/v)で展開させる。逆相系はC18プレートを利用し、メタノール中で展開さ
せる。
2.迅速分析:硫酸ナトリウムの添加及びサンプルのボルテックスの後、所定
の割合いの有機相を取り出し、そして液体シンチレーションカウンティングを介
して計測する。この計測は有機相中の総計測数を推定するために用いる。別の有
機相部を取り出し、窒素のもとで乾かし、ヘプタンの中に再溶解し、そしてTLC
プロット上に
点着し、次いで展開させ、そして詳細のアッセイについて記載の通りにスキャン
する。このようにして、アルコールに組込まれた総計測数の%が決定される。
実施例2−ホホバアシル−CoA リダクターゼの特性決定
リダクターゼ活性を有するタンパク質調製品を獲得する方法及びこの酵素活性
の試験結果をホホバを利用して例示する。
A.種子の発育及びアシル−CoA リダクターゼ活性のプロフィール
胚の発育をDavis,CA において5体の植物に基づいて二夏かけて追跡した。胚
の新鮮、且つ乾燥した重量は約80日目から約 130日目にかけてかなり一定の割合
で上昇することが見い出せた。脂質抽出は、胚の新鮮重量が約 300mgに到達する
とき(約80日目)、脂質の重量、対、乾燥重量の比は50%の最大レベルに達する
ことを示した。
アシル−CoA リダクターゼ活性を実施例1に記載の通りにして発育中の胚で測
定した。ホホバの種子被膜が阻害因子の起源であることがわかっているため、種
子被膜を除去してから胚を液体窒素の中で凍結し、−70℃で保存した。
無細胞ホモジネート又は膜画分のいづれかにおいて測定されるアシル−CoA リ
ダクターゼ活性についての発育プロフィールはリダクターゼ活性の大幅な誘導を
示唆し、それは開花して約 115日後にピークを迎える。従って、酵素研究のため
の胚は開花後約90〜110 日目の間である、リダクターゼ活性が高く、脂質蓄積が
最大レベルを迎えておらず、そして種子被膜が容易に除去できる期間中に収穫し
た。リダクターゼ活性の上昇の最大速度は開花後80日〜90日目に認められた。従
って、cDNAライブラリーの構築のための胚は開花後約80〜90日目の間に収穫し、
その際、リダクターゼタンパク質の合成速度は最大であろう。関連して、アシル
−CoA リダクターゼをコー
ドするmRNAのレベルはこの段階において最大であろう。
B.分画研究
ホホバ胚サンプルを分画する初期の研究は、遠心分離により得られる脂質パッ
ド、上清液及び粒状画分におけるリダクターゼ活性の様々な分布をもたらす。活
性の分布に潜在的に影響を及ぼすかなりの数の処理、例えば音波処理、浮遊勾配
及び抽出バッファーへの様々な試薬の添加を試験した。抽出バッファーの中に塩
を含ませることは、100,000gで1時間にわたる遠心分離を経た上清画分におい
て、リガーゼ活性の回収率における最大の向上をもたらした。この抽出バッファ
ーは3MのNaCl,0.3Mのシュースクロース、100mMのHEPES,2mMのDTT、並びにプ
ロテアーゼインヒビター、1mMのEDTA,0.7mg/mlのロイペプチン、0.5mg/mlの
ペプスタチン及び17mg/mlのフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)より
成る。
C.ミクロソーム膜調製品
高レベルのリダクターゼ活性を有する粒子は、上記の上清画分から、透析、そ
れに続く 100,000gでの遠心分離により、又は硫酸アンモニウム分画により得ら
れうる。透析方法は実施例3に詳細する。リダクターゼ活性を有するこれらの粒
子の更なる分析、例えば密度勾配遠心分離、ゲル浸透クロマトグラフィー及びタ
ンパク質/リン脂質分析は、これらの粒子が膜画分を占めていることを確立する
。この膜調製品は高いチトクロームCリダクターゼ活性も有し、その活性は小胞
体(ER)膜にとってのマーカーとして利用される。即ち、これらの試験はリダク
ターゼタンパク質が膜に結合していることを確立せしめる。
硫酸アンモニウム分画のため、実施例3に本質的に記載の通りにしてホホバ胚
から 100,000gの上清液を獲得した。等容量の硫酸アンモニウム溶液 (33.2g/
100ml)をその上清画分に(撹拌しながら
)ゆっくりと加えて硫酸アンモニウム濃度を30%にする。その濃度はリダクター
ゼ酵素を効率的に沈殿するであろう濃度である。更に30分撹拌後、その懸濁物を
26,000gで30分遠心し、そしてそのペレットを最初の上清液画分S1の容量の1/
10の容量に、25mMのHEPES,1MのNaCl,1mMのDTT,0.1mMのPMSFより成る溶液
を用いて再懸濁する。その懸濁物を 100,0O0gで1時間遠心分離し、そして得ら
れるペレットを25mMのHEPES,10%のグリセロール(これもS1容量の1/10)に再
懸濁する。100,000gでのこの懸濁物の遠心分離は洗浄されたミクロソームペレ
ットを供し、それをS1の1/20の容量の25mMのHEPES,10%のグリセロールに再懸
濁し、約3〜4mg/mlのタンパク質濃度にする。その後の使用のためにアリコー
トを−70℃に凍結する。
D.リダクターゼ活性の膜結合の研究
Bordier(J.Biol.Chem.(1981)256:1604-1607)に記載のTriton X114 相
分画手順を、ホホバリダクターゼが膜内在性タンパク質であるか、又は膜の層に
もっとゆるく結合したもの(より親水性の高いタンパク質)であるかどうかを調
べるために利用する。この技術は本質的に、膜と1%のTriton X114 との氷上で
のインキュベーション、それに続いてその混合物の温度をその条件下での界面活
性剤の曇点よりも高い温度に上昇させる、ことを含む(この曇点は、非常に大型
のミセルが自発的に形成され始める温度である;1%のTriton X114 にとっては
これは〜20℃である)。遠心分離後、2つの別々の相、即ち、下部の界面活性剤
に富む相と上部の界面活性剤の少ない相(ここでは水性相と呼ぶ)とが観察でき
る。膜内在性タンパク質はその界面活性剤に富む相に優先的に分配され、一方、
より親水性の高いタンパク質は水性相において回収される。ホホバ膜調製品をこ
のTriton X114 相分画プロトコールにかけると、リダ
クターゼ活性は界面活性剤に富む相に含まれており、水性相においてはリダクタ
ーゼ活性は検出されない。このことは、リダクターゼ酵素が膜内在性タンパク質
であることを証明する。
E.リダクターゼ酵素の更なる特性決定
上記のミクロソーム膜調製品をリダクターゼ酵素の更なる特性化のために利用
する。このリダクターゼ酵素はpH5〜9の域にわたって活性であることが示され
た。特性決定実験をpH7.5 で行い、それは細胞質の推定生理学的pHに近い。
1.塩効果:様々な塩類を、一塩基塩類当り 0.5Mの標準濃度を利用し、それ
らのリダクターゼ活性に及ぼす効果について調べた。二価のカチオン又はアニオ
ンとの塩類を 0.167M(O.5Mの一塩基塩類と同一のイオン強度を供する) そして
更に 0.5Mで調べた。0.5MのNaClの添加により15倍に至る剌激が認められた。
一価及び二価(例えばLiCl,KCl,MgCl2,CaCl2及びNa2SO4)の両方のその他の
塩類もリダクターゼ活性を剌激することが示されたが、ただし一般にNaCl剌激に
比べて度合いが低かった。強力なカオトロピック塩類、KSCN及びNaSCN はリダク
ターゼ活性の剌激を供さないか、又は最低限の剌激を供した。
2.その他のエフェクター:ジチオスレイトール (DTT)は、必須ではないが、
リダクターゼ活性に対する剌激剤であることが見い出され、一方、エチレンジア
ミン四酢酸(EDTA)は若干の剌激を供し、その最適濃度は 2.5mMであった。活性
のわずかな剌激が低(0.02〜0.075 mg/ml)BSA(牛血清アルブミン)濃度で認
められ、一方、活性の阻害が 0.2mg/ml以上の濃度のBSA で認められた。
アシル−CoA リダクターゼがNADPH 特異的依存性活性であるという初期の所見
(Pollard ら、前掲)が確証された。バックグランドを超えるほどのNADH依存性
活性は測定されなかった(NADPH 依存性
活性の<2%)。また、リダクターゼ反応の両水溶性最終産物CoA及びNADP+ は
有意義な活性阻害を供し(ミリモラー濃度で)、一方NADH及びNAD+は活性に対し
て最低限の作用を及ぼした。
3.基質特異性:様々な鎖長の脂肪酸、アシル−ACP 及びアシル−CoA のチオ
エステルをリダクターゼ酵素にとっての基質として比べた。試験は10μmの基質
濃度で行い、なぜならテトラコセノイル−CoA(24:1−CoA)基質はより高い濃度
では強力な基質阻害を示すからである。これらのアッセイにおけるNaCl濃度は0.
5Mとする。基質特異性実験の結果を以下の表1に示す。
テトラコセノイル−CoA は試験したもののうちで最大の基質活性を有し、従っ
てこれを更なる酵素精製及び特性化実験におけるリダクターゼアッセイのために
用いる。パルミトイル−CoA (C16:0−CoA)とパルミトイル−ACP (C16:0−AC
P)を基質として直接比較した。パルミトイル−CoA に対する活性はかろうじてバ
ックグランドより高く、一方パルミトイル−ACP に対する活性は高かった。既に
、ステアロイル−ACP (C18:0−ACP)が基質としての活性を有していることが示
されている(Pollardら、前掲)。
また、パルミトイル−CoA はリダクターゼ酵素にとっての劣った基質のようで
あるにもかかわらず、未ラベルのパルミトイル−CoA(0〜30mM)及び〔1−14
C〕テトラコセノイル−CoA (20mM)を用いて行う競合阻害実験においては、テト
ラコセノイル−CoA に対するリダクターゼ活性の50%の阻害が5mMのパルミトイ
ル−CoA で認められた。即ち、このアッセイ条件下ではパルミトイル−CoA は劣
った基質ではあるが、有効なインヒビターである。
4.リダクターゼインヒビターアッセイ:その他のタイプのリダクターゼタン
パク質のいくつかの既知のインヒビターを、ホホバアシル−CoA リダクターゼ活
性に及ぼすその効果について試験した。HMG-CoA リダクターゼ(3−ヒドロキシ
ル−3−メチルグルタリル−補酵素Aリダクターゼ)の強力なインヒビターであ
るメビノリンは、HMG-CoA リダクターゼに対する阻害濃度(約1nMのKi)に比て
比較的高い濃度(100μM)においてのみ効果を有していた。セルリネンはβ−
ケトアセチルチオエステルシンターゼに共有結合することでよく知られているが
、ホホバアシル−CoA リダクターゼに対して強力な阻害作用を有さない。
スルフィドリルブロッキング剤もリダクターゼ活性に及ぼすその作用について
スクリーンした。N−エチルマレイミドは強力な阻害活性を示し、一方、para−
ヒドロキシマーキュリ−ベンゾエートも多少の阻害作用を示し、そしてヨードア
セトアミドは作用を有さなかった。このことは、アシル−CoA リダクターゼが、
様々なスルフヒドリルブロッキング試薬に対してかなりの特異性を示す本質的な
スルフィドリル基を有する所見に至る。
実施例3−アシル−CoA リダクターゼの精製
リダクターゼ活性を有するホホバ膜調製品の単離、リダクターゼ活性の可溶化
及びリダクターゼタンパク質の更なる精製のために利用できうる方法を説明する
。
A.ミクロソーム膜調製品
ホホバの胚を花成(flowering)して約90〜110日目に収穫し、胚の水分含有量
を評価する(45〜70%)。外殻及び種子被膜を除き、そしてその子葉を液体窒素
の中で急速凍結し、そして将来の使用のために−70℃で保存する。一次タンパク
質調製品のため、凍結胚をスチール製乳鉢の中で液体窒素温度で粉砕することに
より粉末状にする。典型的な実験において、70gの胚を処理する。
この粉末を、70gの胚当り 280mlの溶液の割合で、以下の高塩溶液に加える:
3MのNaCl,0.3Mのスクロース、100mMのHEPES,2mMのDTT、並びにプロテアーゼ
インヒビター、1mMのEDTA,0.7mg/mlのロイペプチン、0.5mg/mlのペプスタチ
ン及び17mg/mlのPMSF。無細胞ホモジネート (CFH)を、この粉末胚をバッファー
の中にPolytron組織ホモジナイザーで約30秒間分散させることにより形成する。
このホモジネートを三層のMiracloth(Cal Biochem,La Jolla,CA)で濾過し、
そしてその溶液を100,000gで1時間遠心分離する。
得られるサンプルはペレット、上清液及び浮遊脂肪パッドより成る。この脂肪
パッドを除去し、そしてその上清画分を集め、次いで1mMのNaCl,100mM のHEPE
S,2mMのDTT 及び1mMのEDTAを含む溶液に対して一夜透析する(バッファー溶液
は3回交換)。その透析物を200,000gで1時間遠心してペレットDP2を得る。
そのペレットを25mMのHEPES (pH7.5),10%(w/v)のグリセロール、1mMのED
TA及び0.5MのNaClの中にもとのCFH 容量の約1/20の容量で懸濁し、ミクロソ
ーム膜調製品を得る。
活性は実施例1に記載の通りにアッセイする。アシル−CoA リダクターゼ活性
の回収率はこの無細胞ホモジネート品中のもとの活性の約30%であると評価され
た。この調製品におけるアシル−CoA リダクターゼ活性は−70℃で保存したとき
に安定である。
B.リダクターゼタンパク質の可溶化
固形CHAPS(3−〔(3−クロラミドプロピル)−ジメチル−アンモニオ〕−1
−プロパンスルホネート) をミクロソーム膜調製品に加え、2%(w/v)の最
終濃度にする。このサンプルをゆっくりとしたゆらし運動にかけながら約1時間
氷上でインキュベートし、次いで25mMのHEPES (pH7.5),10%のグリセロール、0.
34MのNaCl,1mMのEDTAで希釈して、CHAPS 濃度を0.75%に、そしてNaCl濃度を
約 0.4Mに下げる。次いでこのサンプルを 200,000gで1時間遠心し、次いでそ
の上清液を回収し、そして実施例1に記載の通りにしてリダクターゼ活性をアッ
セイする。一般に、その上清液画分においてミクロソーム膜調製品から85%のリ
ダクターゼ活性が回収される。
C.Blue Aカラムクロマトグラフィー
約25mlのベッド容量を有するBlue A(Cibacron Blue F3GA;Amicon Divisio
n,W.R.Grace & Co.)を含むカラム(1.8×〜10cm)を用意し、そしてそのカ
ラムを0.4MのNaClを含むバッファーA(25mMのHEPES (pH7.5),20%(w/v)
グリセロール、0.75%のCHAPS,1mMのEDTA)で平衡にする。前記の可溶化リダ
クターゼ調製品をBlue Aカラムに載せる。
このカラムを0.4MのNaClを含む数倍のカラム容量のバッファーAで洗い、次
いで0.5MのNaClを含むバッファーAで洗う。90%より高いリダクターゼ活性が
カラムに結合し、同時に85%より多くのその他のタンパク質が通過する。リダク
ターゼ活性は1.0MのNaCl
を含むバッファーAでカラムから溶離する。画分を集め、そして実施例1に記載
の通りにしてリダクターゼ活性についてアッセイする。リダクターゼ活性含有画
分をプールし、そして−70℃で保存する。一般に、添加したリダクターゼ活性の
30〜50%が1.0MのNaClバッファーでの溶離により回収される。
D.サイズ排除クロマトグラフィー
Blue Aカラムからのプールした活性画分を、YM30膜(Amicon Division,W.
R.Grace)の付いた加圧セルの中での限外濾過を介して〜10倍に濃縮する。一般
に、活性は〜90mlでBlue Aカラムから溶出し、そして〜8mlにまで濃縮し、次
いで以下の通りにして2本のSephacryl S100カラムに載せる。カラム(2.5×7.5c
m)にS100 HR媒体 (Pharmacia LKB Biotechnology, Piscataway,NJ)を充填し、
次いで0.5MのNaClを含むバッファーAで平衡化する。これらのカラムを以下の
タンパク質標準品でサイズ検量する:牛血清アルブミン(66kD)、カルボニック
アンヒドラーゼ(29kD)、チトクロームC(12.4kD)及びブルーデキストラン(
ボイドボリュームを決定するために使用)。濃縮サンプルのアリコート4mlを各
S100カラムに載せ、それを約17cm/hrの直線流速において展開させる。〜4時間
にわたり画分を集め、そしてそれら画分中のリダクターゼ活性を実施例1に記載
の通りに測定する。
添加した活性のうちの60%より高い活性が1本のメインピークにおいて回収さ
れ、それは約49kDの見かけ上の分子量において溶出した。プールした活性画分の
容量は〜30−35ml/カラムとする。
E.アフィニティークロマトグラフィー
カラム(1.5cm×〜2cm) にパルミトイル−CoA アガロース(Sigma Chemical C
o.,St.Louis,MO)を充填し、そしてバッファーB(0.1MのNaClを含むバッファ
ーA)で平衡化する。ゲル濾過カラム由
来のプールした活性画分を上記の通りの限外濾過を介して〜16倍に濃縮する。濃
縮サンプル中のNaClレベルをバッファーAによる希釈によって0.5M〜0.1 Mに
下げる。希釈サンプルをこのカラムに載せ、次いで数倍のカラム容量のバッファ
ーBで洗う。次いでこのカラムを15mMのNADHを含むバッファーB 10mlで洗い、
次いでバッファーBで更に洗う。リダクターゼ活性はそのカラムにバッファ−B
中の15mMのNADPH 15mlを通すことにより溶出させる。一般に、一度に一本のゲル
濾過カラム由来の材料をアフィニティーカラムで処理し、そしてそのカラムに載
せた活性のうち70%より高い活性がNADPH による溶出により回収される。活性画
分をプールし、そしてリダクターゼ活性、タンパク質濃度及びポリペプチド組成
について分析する。タンパク質濃度は市販のキット (Bio.Rad Laboratories,
Inc.,Richmond,CA)を用い、Bradford (Analy.Biochem.(1976)72:248-25
4)に記載の色素結合法に基づいて評価する。対照タンパク質としてBSA を用いる
。
F.精製表
典型的な精製実験における各段階でのタンパク質回収率及びリダクターゼ活性
を以下の表2に示す。
G.SDS PAGE分析
サンプルのポリペプチド組成をSDS PAGE(Laemmli,U.K.(1970)Nature(L
ondon)227:680-685)により分析する。これらのサンプルを、SDSと、ストック
溶液由来のジチオスレイトールとをそれぞれ2%及び30mMの最終濃度となるまで
加えることにより、電気泳動のために用意する。約50μlのサンプルを12%の分
離用ゲル(NUVEX,San Diego,CA)を有するアクリルアミドゲルのウェルの上に
載せる。分子量標準品はBio-Rad Laboratoriesから購入した。タンパク質は銀染
色により検定する(Blumら、Electrophoresis(1987)8:93-99)。
約52及び54kDの見かけ上の分子量を有する2本の主要ポリペプチドバンドがア
フィニティーカラム由来の活性サンプルにおいて検出され、これらは一緒になっ
てこの調製品の中のタンパク質の>95%を占めている。55kDのタンパク質標準品
を含むタンパク質サイズマーカー系を用いてのこれらのサンプルの更なる分析は
、54kD及び56kDという異なる分子量評価をもたらす。自然状態のリダクターゼ酵
素の見かけ上のサイズは約49kDであるため(上記のサイズ排除クロマトグラフィ
ーにより決定)、これらのバンドは、一つの酵素のうちの2つの異なるサブユニ
ットではなく、リダクターゼ酵素の近縁形態を示しているようである。
H.膜に対するタンパク質のブロッティング
上記のリダクターゼポリペプチドをアミノ酸配列決定のため、これらのタンパ
ク質をニトロセルロース又はPVDFのいづれかであるImmobilon-P(Millipore;Be
dford,MA)又はPro Blott (Applied Biosystems;Foster City,CA)のいづれか
の膜に転写し、次いでSDS-PAGEにかけることにより単離する。ニトロセルロース
はタンパク質をその後酵素的に消化するときに好ましく、一方PVPFはN−末端配
列決定法のため及び臭化シアン消化より得られるペプチドの配列決定のために有
用である。
1.ニトロセルロースへのブロッティング:タンパク質をニトロセルロースに
エレクトロブロットするとき、そのブロッティング時間は、5〜20%のメタノー
ル中の25mMのトリス、192mMのグリシンの如くのバッファー中では一般に1〜5
時間とする。エレクトロブロッティング後、膜を1%(v/v)の酢酸中の0.1
%(w/v)のPonceau Sの中で2分染色し、次いで0.1%(v/v)の酢酸を
2回交換して脱色する(交換当り2分とする)。これらの膜をヒートシールプラ
スチックバッグの中でウェットのまま−20℃で保存する。時間が許すなら、ブロ
ットは凍結せず、下記のアミノ酸配列の決定のためのペプチドを作り上げるよう
直ちに消化のために用いる。
2.PVDFへのブロッティング:タンパク質をImmobilon P PVDFにエレクトロ
ブロットするとき、そのブロッティング時間は一般に10%(v/v)のメタノー
ル中の12.5mMのトリス/5Mのグリシン
の如くのバッファー中では約1〜2時間とする。PVDFに対するエレクトロブロッ
ティングの後、膜を50%(v/v)のメタノール/10%(v/v)の酢酸中の0.
1%(w/v)のクマジーブルーの中で5分間染色し、そして50%(v/v)の
メタノール/10%(v/v)の酢酸を2回交換して脱色する(交換当り2分とす
る)。PVDF膜を次に30分間風乾し、次いでドライの状態でヒートシールプラスチ
ックバックの中で−20℃で保存する。PVDF膜、例えばPro Blott にブロットした
タンパク質は完全タンパク質のN−末端配列を決定するために直接用いることが
できうる。タンパク質をPro Blott にエレクトロブロットするためのプロトコー
ルは以下の実施例4Aに記載する。
実施例4−アミノ酸配列の決定
本実施例においては、アシル−CoA リダクターゼ活性に係る植物タンパク質の
アミノ酸配列の決定のための方法を述べる。
A.タンパク質の臭化シアノ解裂及びペプチドの分離
臭化シアン解裂を、Promega,Inc.(Madison, WI)由来のProbe-Design Pept
ide Separation System Technical Manual に記載の方法を利用して課題のタン
パク質について行う。リダクターゼタンパク質を上記の通りにしてPVDF膜にブロ
ットする。タンパク質バンドをブロットから切り取り、70%(v/v)のギ酸中
の臭化シアン溶液に入れ、そしてこの溶液の中で室温で一夜インキュベートする
。このインキュベーションに続いて、臭化シアンを取り出し、プールし、次いで
Reacti-Vapエバポレーター(Pierce,Rockford,IL)を用いて連続窒素流のもと
で乾かす。完璧な取り出しを確実なものとするため、70%(v/v)のイソプロ
パノール、0.2%(v/v)のトリフルオロ酢酸、0.1mMのリジン及び0.1mMのチ
オグリコール酸を用い、臭化シアンペプチドの更なる溶出を行ってよい。次に溶
出溶媒を取り出し、そして乾燥臭化シアン溶液を含むチューブに加え、そして上
記の通りに乾燥させる。この溶出手順を新鮮な溶出溶媒で繰り返してよい。HPLC
級の水50μlを次にこの乾燥ぺプチドに加え、そしてその水をSpeed-Vac(Savan
t,Inc.,Farmigdale,NY)の中でのエバポレーションにより除去する。
9)に記載と類似のトリス/トリシンSDS-PAGE系を利用してペプチドを分離させる
。ゲルを 125〜150 ボルトの定電圧において約1時間、又はトラッキング色素が
このゲンの下端から流出し始めるまで泳動させる。転写の前に、ゲルを転写バッ
ファー(125mMのトリス、50mMのグリシン、10%(v/v)のメタノール)の中に1
5〜30分浸しておく。ゲルをPro Blott 配列決定用膜(Applied Biosystems,Fost
er City,CA)に50ボルトの定電圧で2時間にわたりブロットする。これらの膜を
クマジーブルー(50%(v/v)のメタノール/10%(v/v)の酢酸中で0.1
%)で染色し、次いで50%(v/v)のメタノール/10%(v/v)の酢酸の中
で2分づつ、3回脱色する。膜を30〜45分風乾し、次いで−20℃でドライで保存
する。
Pro Blott にブロットしたペプチドは、ポリブレン・コート化ガラスファイバ
ーフィルターを取り付けることなくタンパク質シーケンサーのシーケンサーカー
トリッジに直接載せることができる。ペプチドはApplied Biosystemsより供給さ
れた、若干改良された反応サイクルでBLOT−1を用いて配列決定する。また、溶
液S3(塩化ブチル)をS1とS2との50:50の混合物(n−ヘプタン及び酢酸エチル
)に置き換える。これらの2通りの改良はPro Blott にブロットしたサンプルを
配列決定するとき常に利用する。
B.プロテアーゼ消化及びペプチドの分離
ニトロセルロースにブロットしたタンパク質を、配列決定のため
のペプチドを得るために、プロテアーゼによる消化に委ねることができる。利用
した方法はAebersold ら (PNAS(1987)84:6970)のそれとする。リダクターゼ
タンパク質のバンド、そしてまたコントロールとして使用した同じ大きさのブラ
ンクニトロセルロースをこのニトロセルロース膜から切り出し、そしてHPLC級の
水で数回洗ってPonceau Sを除去する。この洗浄の後、0.5%の酢酸中の0.5%の
ポリビニルピロリドン(PVP-40,Aldrich,Milwaukee,WI)1.0ml をこの膜片に
加え、そしてその混合物を37℃で30分インキュベートする。PVP-40を完璧に除去
するため、ニトロセルロース片を多量のHPLC級水(8×5ml)で洗い、214nmで
の洗液の吸収を光度計でチェックしておく。また、PVP-40処理及び洗浄が終える
までバンドを小片に切らなければPVP-40はもっと簡単に除去できる。これら2通
りの改良はPVP-40による妨害の問題を排除する。
次にこれらの断片を適当な消化用バッファー、例えばトリプシン消化用バッフ
ァー、100mMの炭酸水素ナトリウムpH8.2、又はエンドプロティナーゼglucバッフ
ァー、25mMの炭酸アンモニウム/1mMのEDTA pH7.8の中に懸濁する。この消化用
混合物にアセトニトリルを5〜10%(v/v)の濃度となるまで加える。プロテ
アーゼを消化用バッファーの中で希釈し、そしてこの消化用混合物に、一般にプ
ロテアーゼ、対、タンパク質の比を1:10(w/w)にして加える。消化用物を
18〜24時間インキュベートする。例えば、トリプシン消化用物は37℃でインキュ
ベートし、そしてエンドプロティナーゼglucC 消化用物は室温でインキュベート
する。同様に、その他のプロテアーゼ、例えばlysC及びaspNをリダクターゼタン
パク質を消化するのに用いてよい。個々の消化用バッファー条件は異なるが、消
化、ペプチド分離、精製及び配列決定のためのプロトコールはトリプシン及びgl
ucによる消化について記載したものと実質的に同じ
である。
一夜のインキュベーション後、消化反応を10mlの10%(v/v)のトリフルオ
ロ酢酸 (TFA)又は1μlの100%のTFA の添加により停止させる。この消化混合
物をニトロセルロース片から除去し、そのニトロセルロース片を5〜10%のアセ
トニトリルを有する消化用バッファー 100ml容量で1〜5回洗い、次いでその容
量をSpeed-Vac の中で 100ml未満の容量となるまで濃縮する。これらのペプチド
をApplied Biosystems(Fostger City,CA)モデル130高性能液体クロマトグラ
フィー(HPLC)に取付けたVydac 逆相C18カラム(2.1mm×100mm)上で分離させる
。ペプチドを溶出させるのに用いる移動相は:バッファーA:0.1mMのリン酸ナ
トリウム、pH2.2;バッファーB:0.1mMのリン酸ナトリウム中の70%のアセトニ
トリル、pH2.1とする。50ml/分の流速で、2時間かけての10〜55%のバッファ
ーB;5分かけての55〜75%のバッファーB;及び15分にわたる75%のバッファ
ーBイソクラチック;の3段勾配を利用する。ペプチドは 214nmで検出し、手動
で集め、次いで−20℃で保存する。
C.タンパク質及びペプチドのN−末端配列決定
配列決定は全て、Applied Biosystems 477A Pulsed-Liquid Phase Protein Se
quencer でエドマン分解により行う;このシーケンサーにより生成されるフェニ
ルチオビタントイン (PTH)アミノ酸をオン−ライン・Applied Biosystems 120A
PTH Analyzerにより分析する。データーを集め、そしてApple Macintosh 用のAp
plied Biosystemsモデル610Aデーター分析システムを用いて保存し、そして更に
PE NELSON,Inc.,(Cupertino,CA)由来のACCESS★CHROM ソフトウェアーを用い
てDigital Microvaxで保存する。配列データーをチャートレコーダーから読み取
り(このレコーダーはPTH Analyzerからのインプットを受容する)、そしてモデ
ル610Aソフトウェアーから
得られる定量的なデーターを利用して確認する。配列データーは全て2人のオペ
レーターにより、データー分析システムの助けを借りて個別に読み取る。
HPLCのオフ−ピークとして得られるペプチドサンプルに関して、このサンプル
を、シーケンサーにおいて3回のプレーサイクルに委ねたポリブレンコート化ガ
ラスファイバーフィルター (Applied Biosystems,Foster City,CA)に載せる。
還元及びアルキル化したペプチドに関して、各シーケンサーサイクル由来のPTH-
アミノ酸生成物質の一部を液体シンチレーションカウンターにおいて計測する。
Immobilon-Pにエレクトロブロットさせたタンパク質サンプルに関して、課題の
バンドを切り出し、次いで上記の通りにプレサイクルに付してあるポリブレンコ
ート化ガラスファイバーフィルターの上に載せ、そして反応カートリッジを製造
者の仕様に従って組立てる。Pro Blott にエレクトロブロットさせたタンパク質
サンプルに関しては、このガラスファイバーフィルターは必要でない。
少量のサンプル (5〜30pmole)からタンパク質配列を得るためには、Tempst a
nd Riviere (Anal.Biochem.(1989) 183:290)に記載の477A変換サイクル及
び120Aアナライザーを用いる。
D.リダクターゼペプチドのアミノ酸配列
精製リダクターゼ調製品をSDS-PAGEに載せ、54kDと56kDのタンパク質を分離さ
せる。分離した物質をニトロセルロース型膜(Immobilon N)に転写し、そして
Ponceau Redで染色してバンドの位置を決定する。56kD又は54kDタンパク質のい
づれかを含むブロットの切り出し部をトリプシンで処理し、そしてこのトリプシ
ン処理ペプチドを逆相HPLCで分離させる。各リダクターゼタンパク質由来のいく
つかのペプチドから得られる配列情報(SEQ ID N0:1〜18)を以下の表3に示
す。
ペプチド配列はアミノ酸についての標準1文字コードを用いて記載してある。
「x」はその位置のアミノ酸が同定されていないことを示す。小文字で示してい
るアミノ酸表示は、そのアミノ酸にとっての同定が仮りであることを示す。
2つのリダクターゼタンパク質間の類似性は上記のペプチド配列から明らかで
ある。54kDのタンパク質由来のペプチドは全て配列決
定された56kDのペプチドにおいても見い出せる。決定されたアミノ酸配列と、こ
の56kDリダクターゼをコードするcDNAから(図1(SEQ ID NO:9))推定され
るリダクターゼアミノ酸配列との間では一箇所の不一致がある。cDNA配列データ
ーに従うとアミノ酸 460はセリンである。54kD及び56kDのペプチド(それぞれ6
及び9)由来の情報は、その位置にグリシンがあることを示している。
E.ウェスタン分析
リダクターゼ56kDタンパク質のアミノ酸167-235(図1参照)をコードするリ
ダクターゼcDNA(実施例5)の一部を、Taq プロモーターからのリダクターゼペ
プチドの発現のために、大腸菌pGEX発現ベクター (AMRAD;Burwood,Victoria;
Australia)にイン・フレームでライゲートさせる。得られる構築体をこのリダク
ターゼタンパク質の生産のために大腸菌細胞に形質転換させるのに用いる。この
ようにして作った69アミノ酸のペプチドを精製し (Smithら(1988)Gene 67:31
-40)、そしてこのリダクターゼペプチドに対するポリクローナル抗体を得るため
に用いる。
56kD及び54kDのバンドを含む精製リダクターゼ調製品並びにホホバ無細胞ホモ
ジネート品(実施例3A)のウェスタンブロットを、上記の抗体調製品を用いるリ
ダクターゼ調製品分析のために調製する。56kDのバンドは無細胞ホモジネート品
及び精製リダクターゼ調製品の両者において検出され、一方54kDバンドは精製リ
ダクターゼ調製中のみに検出された。これらの結果は、精製リダクターゼ調製品
の中で認められた54kDバンドが、リダクターゼ精製手順より得られる56kDタンパ
ク質の分解生成物であることを示唆する。
更に、4種類の制限酵素を用いての制限酵素消化ホホバゲノムDNA のサザンブ
ロット分析はリダクターゼcDNA(実施例5)プローブにハイブリダイズする一本
のメジャーバンド及び一本のマイナーバ
ンドの検出をもたらす。
実施例5−ホホバリダクターゼcDNA
A.ホホバRNAの単離
RNA は、最初にJackson and Larkins により述べられた(Plant Physiol.(1
976)57:5-10),Goldbergらにより改良された (Developmental Biol.(1981
)83:201-217)方法によってポリリボソームから単離する。この手順においては
、何らかのことわりのない限り、全ての工程を4℃で実施する。開花後80〜90日
目に集めた10gのホホバ胚をWaringブレンダー中の液体窒素の中でその組織が微
粉末となるまで粉砕する。液体窒素が蒸発した後、170mlの抽出用バッファー(2
00mMのトリス pH9.0,160mMのKCl,25mMのEGTA,70mMのMgCl2,1%のTriton X-
100,0.5%のナトリウムデオキシコレート、1mMのスペルミジン、10mMのβ−メ
ルカプトエタノール及び500mMのシュークロース)を加え、そしてその組織を約
2分ホモジナイズにかける。そのホモジネート品を滅菌ミラクロスで濾過し、そ
して12,000gで20分遠心分離する。その上清液を500mlの滅菌フラスコにデカン
トし、そして1/19の容量の20%の清浄溶液(20%のBrij 35,20%のTween 40,
20%のNoidet p-40 w/v)を室温で加える。その溶液を4℃で30分中速で撹拌
し、次いでその上清液を12,000gで30分遠心分離する。
約30mlの上清液を滅菌Ti 60 遠沈管に小分けし、そして40mlのトリスpH9.0,5
mMのEGTA,200mM のKCl,30mM のMgCl2,1.8Mのスクロース、5mMのβ−メルカ
プトエタノールを含む溶液7mlを下に敷く。これらのチューブを頂部に至るまで
抽出用バッファーで満たし、そして60,000rpm で4時間4℃でTi 60 ローターに
おいて回転させる。遠心後、その上清液をアスピレート除去し、そして0.5mlの
再懸濁用バッファー(40mMのトリス pH9.0,5mMのEGTA,200mM の
KCl,30mM のMgCl2,5mMのβ−メルカプトエタノール)を各チューブに加える。
これらのチューブを氷の上に30分置き、その後そのペレットをよく再懸濁し、そ
してプールする。次にその上清液を 120gで10分遠心して不溶性物質を除去する
。20mMのトリス pH7.6,200mMのEDTA,2%のN−ラウリル−サルコシネート中
の一容量の自己消化した1mg/mlのプロティナーゼKをその上清液に加え、そし
てその混合物を室温で30分インキュベートする。
RNA を1/10容量の酢酸ナトリウム及び2容量のエタノールを加えることによ
り沈殿させる。−20℃で数時間後、RNA を4℃で12,000gでの30分の遠心により
ペレット化する。そのペレットを10mlのTEバッファー(10mMのトリス、1mMのED
TA)に再懸濁し、そして等容量のトリス pH7.5飽和フェノールで抽出する。相
を10,000gで20分、4℃で遠心することにより分離させる。その水性相を除き、
そして有機相を1容量のTEバッファーで再抽出する。次いでその水性相をプール
し、そして1容量のクロロホルムで抽出する。これらの相を再び遠心により分け
、そしてその水性相を前記の通りに沈殿させてポリリボソームRNA を得る。
ポリリボソームRNA 調製品中の多糖類夾雑物を、そのRNA をセルロースカラム
(Sigma-cell 50)に高塩バッファー(0.5MのNaCl,20mMのトリス pH7.5,1mMの
EDTA,0.1%のSDS)で流すことにより除去する。夾雑物はカラムに結合し、そして
RNA は溶離液に集まる。その溶離画分をプールし、そしてRNA をエタノール沈殿
させる。沈殿させた全RNA を小容量に再懸濁し、そしてオリゴd(T)セルロー
スカラムに載せてポリアデニル化RNA を単離する。
B.プラスミドベクターの中でのcDNAライブラリーの構築
市販のクローニングベクターBluescribe M13- (Stratagene Cloning Systems
;San Diego,CA)に由来し、そして下記の通りに作っ
たプラスミドクローニングベクターpCGN 1703 の中にcDNAライブラリーを構築す
るためにポリアデニル化RNA を使用する。BluescribeM13−のポリリンカーをBam
HIによる消化、マングビーン(mung bean)エンドヌクレアーゼによる処理及び
ブラント末端ライゲーションによって改変し、BamHI欠失型プラスミドpCGN 170
0にする。pCGN 1700 をEcoRI及び SstI(隣り合う制限部位)で消化し、次い
でBamHI,PstI,XbaI,ApaI及び SmaIにとっての制限部位、AATTの5′突き出
し及びTCGAの3′突き出しを有する合成リンカーとアニールさせる。pCGN 1700
へのリンカーの挿入はEcoRI部位を排除し、Bluescribeにおいて見い出せる Sst
I(本明細書は時折り「SacI」とも呼ぶ)を再生させ、そしてそのリンカー上
に含まれている新たな制限部位を付加する。得られるプラスミドpCGN 1702 をHi
ndIIIで消化し、そしてクレノウフラグメントでブラント末端化する。その線形D
NA を PvuIIで部分消化し、そして希薄溶液中でT4 DNAリガーゼとライゲートさ
せる。lac プロモーター領域の欠失した形質転換体を選定し (pCGN 1703)、そし
てプラスミドクローニングベクターとして用いる。
要約すると、cDNA合成用のクローニングは方法は以下の通りである。プラスミ
ドクローニングベクターを SstIで消化し、そして末端デオキシヌクレオチジル
トランスフェラーゼを用い、得られる3′突き出し接着末端の上にホモポリマー
T−テールを作り上げる。このテール付きプラスミドをオリゴ(dA)−セルロー
スクロマトグラフィーにより未消化又はテール無しプラスミドから分離させる。
得られるベクターは、ベクタープラスミドの両端に共有結合しているcDNA第一鎖
の合成のためのプライマーを担う。cDNA−mRNA−ベクター複合体をデオキシグア
ノシン三リン酸の存在下で末端トランスフェラーゼにより処理し、cDNA鎖の先端
にG−テールを作り上げる
。BamHI部位の隣りの追加のcDNA−mRNA複合体をBamHI消化により除き、一端に
BamHI接着末端を、そして他端にG−テールを有するcDNA−mRNA−ベクター複合
体が残る。この複合体を、5′BamHI接着末端、制限酵素NotI,EcoRI及びSst
Iにとっての認識配列、並びに3′C−テール末端を有するアニール化合成サイ
クリングリンカーを用いて環化する。リゲーション及び修復後、その環状複合体
を大腸菌株 DH5α (BRL,Gaithersburg,MD)に形質転換させ、cDNAライブラリー
を作り上げる。ホホバ胚cDNAバンクは、約500塩基対の平均cDNAインサートサイ
ズを有するクローンを約1.5×106個含む。
C.ラムダベクターの中でのcDNAライブラリーの構築
ホホバポリアデニル化RNA はクローニングベクター1 ZAPII/EcoRI (Strata
gene,San Diego,CA)の中でcDNAライブラリーを構築するためにも用いる。この
ライブラリーはその製造者により供給されているプロトコール、DNA及び細菌株
を用いて構築する。クローンはGigapack Gold パッケージング抽出物(Stratage
ne)を用いてパッケージングする(これも製造者の推奨に従う)。このようにし
て構築したcDNAライブラリーは、約 400塩基対の平均cDNAインサートサイズを有
するクローンを約1×106個含む。
D.リダクターゼcDNAの単離
pCGN 1703 細菌ベクター中のホホバライブラリーをスクリーニングするために
、リダクターゼペプチド配列よりデザインしたプライマーによるPCR 技術を、リ
ダクターゼ核酸配列の約1kbの部分を作り上げるのに用いる。
このライブラリーを例えばManiatisら(前掲)に記載の如くの当業界に公知の
技術を利用してスクリーニングする。56kDのリダクターゼタンパク質にとっての
クローンpCGN 7571 を獲得し、そしてDN
A 配列を決定する。pCGN 7571 の核酸及び推定アミノ酸配列(SEQ ID N0:19)
を図1に示す。
E.大腸菌中でのリダクターゼcDNAの発現
pCGN 7571 をインビトロ突然変異誘発せしめてリダクターゼコード配列の最初
のATG に NdeI部位を導入し、そしてこの NdeI部位のすぐ上流に BglII部位を
導入する。BamHIリンカーをリダクターゼコード領域の下流の SphI部位に導入
する。この 1.5kbの BglII−BamHIフラグメントをゲル精製し、そして BglII−
BamHI消化pCGN 3686にクローニングし(以下参照)、pCGN 7582を得る。
pCGN 3686 はBluescript KS+(Stratagene Cloning Systems;San Diego,CA
)由来のクローニングベクターであるが、しかしクロラムフェニコール耐性遺伝
子及び改変リンカー領域を有する。クロラムフェニコール耐性遺伝子の起源、pC
GN 565はpUC 12-cm(K.Buckley Ph.D.Thesis,Regulation and expression o
f the phi X174 lysis gene,University of California,San Diego,1985)を
基礎とするクローニングベクターであるが、しかしpUC リンカー(Yanisch-Perr
onら、Gene(1985)53:103-119)を含む。pCGN 565を HhaIで消化し、そして
クロラムフェニコール耐性遺伝子を含むフラグメントを切り出し、マングビーン
ヌクレアーゼを利用してブラント化し、そしてBluescript KS-(Stratagene:La
Jolla,CA)のEcoRV部位に挿入しpCGN 2008 を作り上げる。pCGN 2008 のクロ
ラムフェニコール耐性遺伝子をEcoRI/HindIII消化により取り出す。その末端
をブラント化するためにクレノウ酵素で処理した後、そのフラグメントを DraI
消化Bluescript KS+にライゲートする。アンピシリン耐性遺伝子の代わりにクロ
ラムフェニコール耐性を含むDraIフラグメントを有するクローンを選定し、そ
してpCGN 2015と命名する。pCGN 2015 のリンカー領域を、以下の制限消化部位
を
lac Zリンカー領域において5′から3′にかけて含むpCGN 3686とするように
改変させる:PstI,BglII,XhoI,HincIII,SalI,HindIII,EcoRV,EcoRI,Ps
tI,SmaI,BamHI,SpeI,XbaI及び SacI。
このリダクターゼ遺伝子の下流のBamHI部位はpCGN 7582 の構築中にこわされ
てしまうため、BamHIリンカーをpCGN 7582 の中にそのリダクターゼ遺伝子の下
流の XhaIベクター部位に挿入し、そしてリダクターゼ遺伝子を含む NdeI−Ba
mHIフラグメントをBamHI− NdeI消化pET3A(Studierら(1990)Methods Enzy
mol.185:60-89)にクローンする。このプラスミドをpCGN 7800 と命名する。p
CGN 7800を、誘導性プロモーターのコントロール下においてT7 RNAポリメラーゼ
を有する大腸菌 BL21(Stndierら、前掲)に形質転換させる。
リダクターゼ構築体を含むBL21大腸菌細胞BL21(pCGN 7800)を、pET3A ベク
ターのみを有するコントロールBL21細胞と比較する。培養物を40μg/mlのカル
ベニシリンを有するECLBの中で一夜増殖させ、40μg/mlのカルベニシリンを有
する新鮮なECLBの中で1/10に希釈し、そして1時間増殖させる。IPTGを1mMに
なるように加え、そしてその細胞を回収前に更に3時間増殖させる。その細胞を
遠心により回収し、そして細胞ペレットを−70℃で保存する。細胞をフレンチプ
レスの中で破砕し、そしてタンパク質抽出物を実施例1Cに記載のリダクターゼア
ッセイを利用してリダクターゼ活性をアッセイする。ただし、NADPH の濃度は2
mMから5mMに高めておく。このアッセイ生成物を実施例1Dに記載の通りにしてア
ッセイする。BL21 (pCGN 7800)細胞抽出物のアッセイ生成物の薄層クロマトグラ
フィー (TLC)分析はアルコール形成を示し、一方BL21 (pET3A)コントロール細胞
由来の抽出物はアルコール形成を触媒しない。更に、BL
21 (pCGN 7800)及びBL21 (pET3A)細胞のSDS PAGE分析は、56kDのタンパク質がBL
21 (pCGN 7800)細胞の中に存在しており、そしてBL21 (pET3A)細胞にはないこと
を示す。
リダクターゼ発現大腸菌細胞がアルコールを生成するかを調べるため、BL21 (
pCGN 7800)細胞及びコントロール細胞から全脂質を、ヘキサン:イソプロパノー
ル(3:2)抽出法(シューカー上で一夜)により抽出する。その有機相を乾く
までエバポレートし、そして脂質を小容量のヘキサンに溶かし、TLC により分析
し、そしてヨウ素染色により可視化させる。この分析は、BL21 (pCGN 7800)細胞
から抽出された脂質はアルコールを含み、一方コントロール細胞から抽出された
脂質は含まないことを示す。
BL21 (pCGN 7800)細胞において生成されるアルコールの炭素鎖の長さを調べる
ため、アルコールバンドをTLC プレートからかき取り、そして逆相TLC 及びガス
クロマトグラフィー(GC)により分析する。GC分析はPinaら(Lipids(1987)22
:358-361)に記載の通りにして、30mのSUPELCOWAX(商標)10 (Supelco,Inc
;Bellefonte,PA)溶融キャピラリーカラム(内径0.32mm;フィルムの厚み0.2mm
)を用いて行う。プログラムのパラメーターは下記の通りにする:190℃で15分
、続いて1分当り5°づつの温度上昇により250℃にし、250℃に3分保つ。この
ようにして、ホホバリダクターゼの発現の結果としての16:0及び18:1のアル
コールが、大腸菌の中で生成される主要アルコールであることが決定された。蝋
は脂肪アルコール基質に対して活性である内因性蝋合成活性を含まないことが明
らかな形質転換大腸菌においては検出されない。
実施例6−植物発現のための構築体
A.発現カセット
種子組織において優先的に発現される遺伝子に由来する5′及び
3′調節領域を含む発現カセットは、例えばWO 92/03564 号に記載の通りにして
、ナピン、Bce 4及びACP 遺伝子から調製できうる。
例えば、ナピン発現カセットは以下のようにして調製できうる。蝋シンターゼ
又はリダクターゼ遺伝子の発現のために利用できうるナピン発現カセットpCGN 1
808 は、引用することで本明細書に組入れるKridl ら (Seed Science Research
(1991)1:209-219)に記載されている。
他方、pCGN 1808は、バイナリベクター、例えばpCGN 1557に対する発現配列の
みの移動を可能とし、抗生物質耐性マーカーの移動はできない隣接制限酵素切断
部位を含むように改変してよい。KpnI,NotI及びHindIII制限酵素切断部位を含
む合成オリゴヌクレオチドをアニールさせ、そしてpCGN 1808 の固有HindIII部
位に、一つのHindIII部位のみが回復するようにライゲートさせる。得られるプ
ラスミドpCGN 3200 は、配列分析による確認に従い、ナピン3′−調節配列の3
′末端におけるHindIII,NotI及び KpnI制限酵素切断部位を含んでいる。
ナピン発現カセットの主要部をpCGN 3200から、HindIII及び SacIにより消化
し、HindIII及び SacI消化pIC19R (Marsh ら(1984)Gene 32:481-485)にライ
ゲーションさせることによりサブクローニングしてpCGN 3212 を作る。このナピ
ンプロモーター領域の最端5′−配列は、鋳型としてのpCGN 3200、並びに Sac
I部位及びナピン5′−プロモーターとpCGN 1808 構築体に由来するpCGN 3200
のpUC 骨格との接合部に隣接する2種のプライマーを用いるPCR により再構築さ
せる。順方向プライマーは ClaI,HindIII,NotI及びKpnI制限部位並びにナピ
ン5′−配列のヌクレオチド408-423(EcoRV部位から) を含み、そして逆方向プ
ライマーは5′−プロモーターの中に固有 SacI部位を含むナピン配列718-739
に対する相補
配列(complement)を含む。PCR はPerkin Elmer/Cetus サーモサイクラーを用
い、その製造者の仕様に従って行う。PCR フラグメントをブラント末端化フラグ
メントとしてpUC8 (Vieira and Messing(1982)Gene 19:259-268)にサブクロ
ーニングし、そしてHindIIで消化してpCGN 3217 を得る。ナピンインサートを含
むpCGN 3217の配列は、不適切なヌクレオチドがPCR により導入されなかったこ
とを確証せしめる。pCGN 3217 中のナピン5′配列をナピン発現カセットの残り
の部分に、ClaI及び SacIによる消化並びに ClaI及び SacIにより消化したp
CGN 3212 へのライゲーションによってライゲートさせる。得られる発現カセッ
トpCGN 3221 をHindIIIで消化し、そしてそのナピン発現配列をゲルより精製し
、そしてHindIIIで消化したpIC20H(Marsh 前掲)にライゲートさせる。最終発
現カセットはpCGN 3223 であり、それはアンピシリン耐性バックグランドの中に
pCGN 1808 において見い出せるものと本質的に同一の1.725ナピン5′及び1.265
3′調節配列を含んでいる。その調節領域はHindIII,NotI及び KpnI制限酵
素切断部位と隣接しており、そして固有 SalI,BglII,PstI及び XhoIクローニ
ング部位は5′及び3′非コード領域の間に位置している。
同様にして、オレオシン遺伝子由来の5′及び3′領域のコントロール下にあ
る転写調節についての配列のクローニング用のカセットを調製することができう
る。ブラシカナプス(Brassica napus)オレシン遺伝子の配列がLee and Huang
(Plant Phys.(1991)96:1395-1397)により報告されている。公開の配列に
対するプライマーを、ブラシカナプスcv.Westar由来のオレオシン遺伝子の5′
及び3′調節領域を獲得するためにPCR 反応に用いる。2通りのPCR反応を行い
、一方はオレオシン遺伝子にとってのATG 開始コドンの上流約 950ヌクレオチド
を増幅し、そして他方はオレオシン遺伝子
にとってのTAA 停止コドン及びその下流の約 600bpのPCR 増幅する。これらのPC
R 生成物をプラスミドベクターpAMP1 (BRL)に製造者のプロトコールに従ってク
ローンした。オレオシン5′隣接する領域を含むプラスミドpCGN 7629 及び3′
隣接する領域を含むpCGN 7630 を得る。PCR プライマーは5′及び3′隣接する
領域を一緒に発現カセットの中にクローニングするための慣用制限酵素切断部位
を含む。pCGN 7629 由来の5′隣接する領域を含む PstIフラグメントを PstI
消化pCGN 7630 にクローンし、プラスミドpCGN 7634を得る。オレオシン発現カ
セット全体を含む、pCGN 7634 由来のBssHI (New England BioLabs)フラグメン
トをBssHI消化 pBCSK+(Stratagene)にクローニングしてプラスミドpCGN 763
6 の中にオレオシンカセットを供する。pCGN 7636 中のオレオシンカセットの配
列を図4に提供する。このオレオシンカセットにはBssHI, KpnI及び XbaI
制限酵素切断部位が隣接しており、そして5′及び3′オレオシン領域の間に蝋
シンターゼ、リダクターゼ又はその他課題のDNA 配列を挿入するための SalI,
BamHI及びPstI部位を含む。
遺伝配列をかかるカセットに挿入して、植物形質転換方法のための発現カセッ
トを提供する。例えば、かかる構築体は下記のようにしてアグロバクテリア媒介
型形質転換のためにバイナリーベクターの中に挿入してよい。
B.植物形質転換のためのベクター
バイナリーベクターをpCGN 1578,pCGN 1559及びその他のベクターから、McBr
ide ら(前掲)に記載の通りにして、pCGN 1578 及びpCGN 1559リンカー領域を
、以下の制限酵素切断部位:
Asp 718/ AscI/PacI/XbaI/ BamHI/SwaI/Sse 8387(PstI)/ HindIIIを
含むリンカー領域に置き換えることにより調製する。こ
れはpCGN 1578 PASS又はpCGN 1559 PASS及び似たようにデザインされたその他の
改変ベクターをもたらす。AscI,PacI,SwaI及びSse 8387は8塩基の制限酵素
認識部位を有する。これらの酵素はNew England BioLabs(AscI,PacI);Boeh
ringer Mannheim(Swai);及びTakara(日本)(Sse 8387)より入手できる。
C.植物形質転換のためのリダクターゼ構築
ナピン遺伝子由来の5′及び3′調節領域を用いての植物細胞におけるリダク
ターゼの発現のための構築体を以下のようにして調製する。
pCGN 7571 と命名したリダクターゼcDNA(上記のpCGN 1703ベクターの中にあ
る)を SphIで消化し(塩基1594-1599 にある3′未翻訳配列における部位)、
そして SalIリンカーをこの部位に挿入する。得られるプラスミドをBamHI及び
SalIで消化し、そしてこのリダクターゼcDNAを含むフラグメントをゲルより精
製し、そしてBglII/XhoI消化した上記のナピンカセットpCGN 3223 にクローニ
ングしてpCGN 7585 を得る。
ナピン5′/リダクターゼ/ナピン3′を含むpCGN 7585 のHindIIIフラグメ
ントをHindIII消化したpCGN 1578(McBride and Summerfelt 前掲)にクローニ
ングし、植物形質転換のためのバイナリーベクターpCGN 7586 を得る。
ナピンプロモーターの発現下にあるホホバリダクターゼ遺伝子をも含む植物形
質転換用構築体pCGN 7589 は以下のようにして調製する。
pCGN 7571 をインビトロ突然変異誘発させて NdeI部位をリダクターゼコード
配列の第一ATG に、そして BglII部位を NdeI部位のすぐ上流に導入する。BamH
Iリンカーをリダクターゼコード領域の下流の SphI部位に導入する。1.5kbのB
glII−BamHIフラグメン
トをゲルより精製し、そして BglII−BamHI消化したpCGN 3686 にクローニング
して(以下参照のこと)、pCGN 7582 を得る。
pCGN 3686 はBluescript KS+(Stratagene Cloning Systems;San Diego,CA
)由来のクローニングベクターであるが、しかしクロラムフェニコール耐性遺伝
子及び改変リンカー領域を有する。クロラムフェニコール耐性遣伝子の起源、pC
GN 565はpUC 12-cm(K.Buckley Ph.D.Thesis,Regulation and expression o
f the phi X174 lysis gene,University of California,SanDiego,1985)を
基礎とするクローニングベクターであるが、しかしpUC 18リンカー(Yanisch-Pe
rronら、Gene(1985)53:103-119)を含む。pCGN 565を HhaIで消化し、そし
てクロラムフェニコール耐性遺伝子を含むフラグメントを切り出し、マングビー
ンヌクレアーゼを利用して平滑末端化し、そしてBluescript KS- (Stratagene:
La Jolla,CA)のEcoRV部位に挿入しpCGN 2008 を作り上げる。pCGN 2008のクロ
ラムフェニコール耐性遺伝子をEcoRI/HindIII消化により取り出す。その末端
を平滑末端化するためにクレノウ酵素で処理した後、そのフラグメントを DraI
消化Bluescript KS+にライゲートする。アンピシリン耐性の代わりにクロラムフ
ェニコール耐性を含む DraIフラグメントを有するクローンを選定し、そしてpC
GN 2015 と命名する。pCGN 2015 のリンカー領域を、以下の制限酵素切断部位を
lac Zリンカー領域において5′から3′にかけて含むpCGN 3686とするように
改変させる:PstI,BglII,XhoI,HindIII,SalI,HindIII,EcoRV,EcoRI,Ps
tI,SmaI,BamHI,SpeI,XbaI及びSacI。
XhoIリンカーをpCGN 7582 の XbaI部位に挿入する。リダクターゼ遺伝子を
含む BglII−XhoIフラグメントを単離し、そしてBglII−XhoI消化pCGN 3223
にクローニングする。ホホバ遺伝子由
来の5′非翻訳リーダー配列を欠く得られるプラスミドをpCGN 7802 と命名する
。pCGN 7802 由来のナピン/リダクターゼフラグメントをHindIIIにより切り出
し、そしてHindIII消化pCGN 1578 にクローニングしてpCGN 7589 を得る。
別のナピン/リダクターゼ構築体を以下のようにして調製する。リダクターゼ
cDNA pCGN 7571(図1)を突然変異させてSalI部位をATG 開始コドンに対して
5′側に(その部位はATG に対して8塩基対5′側にある)及びTAA 翻訳停止コ
ドンのすぐ3′側に挿入し、pCGN 7631 を得る。pCGN 7631 をSalIで消化し、
そしてリダクターゼをコードする配列を含む約 1.5kbのフラグメントを SalI/X
hoIで消化したナピンカセットpCGN 3223 にクローニングする。センス方向でリ
ダクターゼ配列を含む得られるプラスミドをpCGN 7640と命名する。pCGN 7640
をHindIIIで消化し、そしてオレオシン/リダクターゼ構築体を含むフラグメン
トをHindIIIで消化したバイナリーベクターpCGN 1559 PASSにクローニングし、
バイナリー構築体pCGN 7642を得る。
オレオシン調節領域のコントロール下にあるリダクターゼ発現のための構築体
は以下のようにして調製する。リダクターゼをコードする配列を SalIによるpC
GN 7631 の消化により獲得し、そして SalI消化したオレオシンカセットpCGN 7
636 にリゲートさせる。センス方向にリダクターゼ配列を含む得られるプラスミ
ドをpCGN 7641 と命名する。pCGN 7641 を XbaIで消化し、そしてオレオシン/
リダクターゼ構築体を含むフラグメントを XbaIで消化したバイナリーベクター
pCGN 1559 PASSにクローニングし、バイナリー構築体pCGN 7643を得る。
D.リダクターゼ遺伝子の再合成
ホホバリダクターゼ遺伝子を、そのAT含有率を低下させ、57.5%
から約51%のレベルにまで下げるために再合成した。これはタンパク質のアミノ
酸組成(図2)を改変することなく成し遂げられ、そして全体にわたって比較的
均質なAT含有量を有する配列をもたらす。再合成前のホホバをコードする配列は
75%に近いAT含有率の局在領域を有する。遺伝子再合成はBambot and Russell (
Bamot,S.B.and Russell,A.J.(1993)PCR methods and applications 2
:266-271)のプロトコールにより実施し、そして再合成遺伝子を含むプラスミド
はpCGN 7675 と命名した。
pCGN 7675 由来の再合成リダクターゼの XhaI−BamHIフラグメントを、Sal
I及びBamHIによる消化を経たオレオシンカセットpCGN 7636(前記)にクロー
ニングした。
このオレオシン−リダクターゼ遺伝子融合体を、ASP718を用いて植物形質転換
用ベクターpCGN 1559 PASSにクローニングして。pCGN 7677 を作った。従って、
プラスミドpCGN 7677 は、PCGN 7643 由来のホホバアシル−CoA リダクターゼ遺
伝子が低めのAT含有率の合成遺伝子により置き換えられていることを除き、pCGN
7643 と本質的に同一である。
これと同じフラグメントを、SalI及び BglIIの消化を経たpCGN 3223 のナピ
ンカセットにもクローニングした。次いでこのナピン−リダクターゼ遺伝子融合
体をASP718消化により植物形質転換用ベクターpCGN 1559 PASSにクローニングし
て、pCGN 7698 を作った。プラスミドpCGN 7698 は、pCGN 7642 由来のホホバア
シル−CoA リダクターゼ遺伝子のみが低めのAT含有率を有する合成遺伝子により
置き換えられていることを除き、pCGN 7642 と本質的に同一である。
アグロバクテリア細胞、例えばEHA 101株(Hoodら、J.Bacteriol.(1986)1
68:1291-1301)を、Holstersら (Mol.Gen.Genet.
(1978)163:181-187)の方法によりバイナリーベクター構築体で形質転換し、
そして以下の植物形質転換方法に利用する。
実施例7−蝋合成活性についてのアッセイ
蝋シンターゼ又は蝋合成能についてアッセイするための方法を述べる。
A.放射性ラベル化材料
蝋シンターゼアッセイにおいて一般的に利用されている基質〔1−14C〕パル
ミトイル−CoA をAmersham(Arlington Heights,IL)より購入する。その他の
長鎖の基質と、鎖長特異性研究を行うために合成した。長鎖〔1−14C〕脂肪酸
(比活性51〜56Ci/mole)、即ち11−cis−エイコセン酸、13−cis−ドコセン酸
及び15−cis−テトラコセン酸は、〔14C〕シアン化カリウムと対応のアルコー
ルメシレートとの反応、それに続くアルコールニトリルの遊離脂肪酸に至る塩基
性加水分解により、調製する。この遊離脂肪酸をエーテル系ジアゾメタンにより
そのメチルエステルに変換させ、そして調製硝酸銀薄層クロマトグラフィー (TL
C)により精製する。その脂肪酸メチルエステルを遊離脂肪酸へと加水分解で戻す
。放射性化学純度は3通りのTLC 法により評価する:ノーマル相シリカTLC、硝
酸銀TLC 及びC18逆相TLC。これらの方法により測定された放射性化学純度は92
〜98%であった。長鎖〔1−14C〕アシル−CoA を対応の〔1−14C〕遊離脂肪
酸から、Young and Lynen の方法(J.Bio.Chem.(1969)244:377)により、
10Ci/moleの比活性に至るように調製する。〔1−14C〕ヘキサデカナールはPl
etcher and Tate の方法 (Tet.Lett.(1978)1601-1602)の小スケール改良法
に従って、〔1−14C〕ヘキサデカン−1−オールのジクロメート酸化により調
製する。その生成物を調製シリカTLC により精製し、そしてヘキサン溶液として
−70℃で使用時まで保存する。
B.蝋シンターゼ活性のアッセイ
蝋シンターゼ活性は、40μMの〔1−14C〕アシル−CoA(通常のパルミトイル
−CoA;比活性5.1〜5.6mCi/mol)の、200mMのオレイルアルコール及びアッセイ
すべきサンプルとの全容量0.25mlでのインキュベーションにより測定する。その
インキュベーション混合物は20% w/vのグリセロール、1mMのDTT,0.5Mの
NaClも含み、そして25mMのHEPES(4−〔2−ヒドロキシエチル〕−1−ピペラ
ジンエタン−スルホン酸)で緩衝化されている。ここで及び以降において、HEPE
S はpH7.5 に調整した1Mのストック溶液より添加する。
基質混合物をガラスバイアルの中で調製し、使用直前にオレイルアルコールを
加え、そしてサンプルに加える。インキュベーションは30℃で1時間行う。アッ
セイはアッセイチューブを氷の上に載せ、そして直ちに0.25mlのイソプロパノー
ル:酢酸(4:1,v/v)を加えることにより停止させる。未ラベルの蝋エス
テル(0.1mg)及びオレイルアルコール (0.1mg)を担体として加える。〔14C〕脂
質をHara及びRadin のスケールダウンプロトコール(Anal.Biochem.(1978)9
0:420)により抽出する。4mlのヘキサン/イソプロパノール(3:2, v/
v)を終了アッセイに加える。そのサンプルをボルテックスにかけ、2mlの水性
硫酸ナトリウム溶液(6.6%w/v)を加え、そしてそのサンプルを再びボルテッ
クスにかける。
C.アッセイ生成物の分析
蝋シンターゼアッセイの生成物を以下の通りにして分析する。
硫酸ナトリウムの添加及びサンプルのボルテックスの後、所定の割合の有機相
を取り出し、そして液体シンチレーションカウンティングを介して計測する。次
いで有機相の別の部を取り出し、窒素のもとで乾かし、ヘキサンの中に再溶解さ
せる。
脂質クラス分析のため、そのサンプルシリカTLC プレートに載せ、そしてその
プレートをヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(80:20:1 v/v/v)の中
で展開させる。脂質クラス、大半の蝋エステル、遊離脂肪酸、脂肪アルコール及
び起源にある極性脂質間の放射能分布をAMBIS 放射能分析用イメージングシステ
ム(AMBIS Systems Inc.,San Diego,CA)を利用して測定する。必要ならば、個
々の脂質クラスを更なる分析のためにTLC プレートから回収してよい。
D.基質特異性
様々な炭素鎖長及び不飽和度を有するアシル−CoA 及びアルコール基質を蝋シ
ンターゼ活性を有するミクロソーム膜画分に加え、ホホバ蝋シンターゼにより認
識される基質域を決定した。蝋シンターゼ活性は実施例1に記載の通りにして、
アシル特異性を80mMのアシル−CoA 基質及び 100mMの放射性ラベル化オレイルア
ルコールを用いて測定することで測定した。アルコール特異性は100mMのアルコ
ール基質及び40mMの放射性ラベル化エイコセノイル−CoA を用いて測定した。こ
れらの実験の結果を以下の表4に示す。
上記の結果は、ホホバ蝋シンターゼが広域にわたる脂肪アシル−CoA 及び脂肪
アルコール基質を利用することを実証する。
更に、様々なチオエステル基質に対する蝋シンターゼ活性をパルミトイル−Co
A、パルミトイル−ACP 及びN−アセチル−S−パルミトイルシステアミンをア
シル基質として用いて同様に試験した。最大の活性はアシル−CoA 基質で認めれ
た。有意な活性(アシル−CoA のそれの〜10%)がアシル−ACP で認められたが
、N−アセチル−S−パルミトイルシステアミン基質では活性は検出されなかっ
た。
実施例8−植物形質転換方法
課題のDNA 配列を植物宿主のゲノムに挿入してその配列の転写又は転写と翻訳
を獲得し、表現型変化を起こさせる様々な方法が開発されている。アブラナ属の形質転換
高エルカ酸種子、例えば栽培品種レストン又はブラシカナプスのカノラ型変種
を95%のエタノールの中に2分浸漬する。表面を1滴のTween 20を含む次亜塩素
酸ナトリウムの1%の溶液の中で45分滅菌し、次いで滅菌蒸留水で3回すすぐ。
次いで種子を、ピリオドキシン(50μg/l)、ニコチン酸(50μg/l)、グ
リシン(200μg/l)及び0.6%のPhytagar(Gibco) p5.8 の添加された1/1
0の濃度のムラシゲ最少有機系培地(Gibco;Grand Island,NY)を有するMagent
a ボックスの中で培養する。種子をPercivalチャンバーの中で22℃において、1
秒につき平方メートル当り約65μ Einstein(μEm-2S-1) の強度の低温蛍光及び
赤色光の16時間の照光時間のもとで発芽させる。
胚軸を5〜7日目の実生から切り取り、長さ約4mmの断片へと切り、そしてフ
ィーダープレートの上にまく(Horschら、Science(1985)227:1229-1231)。
フィーダープレートは使用1日前に、1.0mlのタバコ懸濁培養物を約30ml MS 塩
ベース(Carolina Biological,Burlington,NC)、100mg/lのイノシトール、1.
3mg/lのチアミン−HCl,3%のスクロース、2,4−D(1.0mg/l)を伴う20
0mgのKH2PO4,0.6% w/vのPhytagar(オートクレーブにかける前に 5.8にpH
を合わせてある)(MS 0/1/0培地)を含むペトリ皿(100×25mm)上にまく
ことにより調製する。滅菌濾紙ディスク(Whatman 3mm)を使用前のフィーダー
層の上に載せる。タバコ懸濁培養物は、10m1の培養物を、2,4−D(0.2mg/l
)、キネチン(0.1mg/l)を有するフィーダープレートについて述べた 100ml
の新鮮MS培地の中に移すことによって毎週継代培養する。フィーダー細胞を使用
しない実験においては、胚軸外植体を切り取り、そしてMS 0/1/0培地の上
の濾紙ディスクの上に載せる。胚軸外植体は全てフィーダープレート上で24時間
、22℃において30μEm-2S-1〜65μEm-2S-1の強度の連続光を伴ってプレインキ
ュベートしておく。
所望の遺伝子構築体を有するバイナリープラスミドを含むA.トゥメファシエ
ンス(A.tumefaciens)株 EHA 101の独立コロニーを5mlのMG/L培養液に移し
、そして30℃で一夜増殖させる。胚軸外植体を1×108個の細菌/mlに希釈して
おいた細菌を有する7〜12mlのMG/L培養液の中に浸し、そして10〜25分後、フ
ィーダープレートの上に載せる。MG/L培養液はリットル当り5gのマンニトー
ル、1gのL−グルタミン酸又は1.15gのグルタミン酸ナトリウム、0.25gのKH2
PO4,0.10gのNaCl,0.10gのMgSO4・7H2O,1mgのビオチン、5gのトリプト
ン及び2.5gの酵母抽出物を含み、そしてこの培養液はpH7.0 に調整してある。
アグロバクテリアと一緒に48時間インキュベートした後、胚軸外植体を、濾過除
菌したカルベニシリン(500mg/l;オートクレーブ後に添加)及び25mg/lの濃
度の硫酸カナマイシン(Boehringer Mannheim;Indianapolis,IN)を含むB5
0/1/0カルス誘導培地に移す。
65μEm-2S-1の連続光のもとで3〜7日間培養後、カルス組織が切断面の上に
見えるようになり、そして胚軸外植体をシュート誘導培地B5BZ(3mg/lのベン
ジルアミノプリン、1mg/lのゼアチン、1%のスクロース、0.6%のPhytagar
が添加され、そしてpHが 5.8に合わせてあるB5塩類及びビタミン類)に移す。こ
の培地もカルベニシリン(500mg/l)及び硫酸カナマイシン(25mg/l)を含む
。胚軸外植体は2週間毎に新鮮なシュート誘導培地に継代培養する
。
胚軸カルスからシュートが1〜3ヶ月後に再生する。高さ1cm以上の生きのよ
いシュートをカルスから切り取り、そしてB5塩類及びビタミン類、1%のシュー
クロース、カルベニシリン(300mg/l)、硫酸カナマイシン(50mg/l)及び0
.6% w/vのPhytagarを含む培地の上にまく。2〜4週間後、生きのよいまま
である苗条を根元から切り、そして発根誘導培地(B5塩類及びビタミン類、1%
のスクロース、2mg/lのインドール酪酸、50mg/l硫酸カナマイシン及び 0.6
%のPhytagar)を含むMagenta ボックスに移す。生きのよい発根したシュートを
リダクターゼ活性について試験する。
シロイヌナズナ属の形質転換
遺伝子導入シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物はValverkensら(Pro
c.Nat.Acad.Sci.(1988)85:5536-5540)に記載の通りにしてアグロバクテ
リア媒介形質転換により獲得し得る。構築体はアグロバクテリア細胞、例えばEH
A 101 株(Hoodら、J.Bacteriol(1986)168:1291-1301)の細胞に、Holstersら
(Mol.Gen.Genet.(1978)163:181-187)の方法によって形質転換する。
ピーナッツの形質転換
注目のDNA 配列は、少なくともプロモーター領域、注目のゲノム及び終止領域
を含んで成る発現カセットとして、粒子ボンバードメント法を介して植物ゲノム
の中に導入することができうる。
要約すると、0.5mM〜3mMのサイズの範囲のタングステン又は金粒子に発現カ
セットのDNA をコートする。このDNA は水性混合物又はドライ DNA/粒子沈殿物
の形態であってよい。
ボンバードメイントにとっての標的として利用する組織は子葉外植体、シュー
ト分裂組織、未熟葉又は葯に由来しうる。DNA コート粒子による組織の砲撃はBi
olistics(商標)粒子ガン(Dupont;W
ilmington,DE)を用いて実施する。粒子をバレルの中に、バレル口から1cm〜14
cmに範囲する様々な距離において入れる。砲撃すべき組織ストッピングプレート
の下に置く;試験は20cmまでの距離において組織に対して行う。発射時、その組
織はナイロンネットにより、又はナイロンネットと10mM〜300mM に範囲するメッ
シュとの組合せにより保護しておく。
砲撃の後、植物をAtreyaら(Plant Science Letters(1984)34:379-383)の方
法に従って再生させる。要約すると、胚軸組織又は子葉区画をMS培地(Murashig
e and Skoog,Physio.Plant.(1962)15:473)(子葉区画のためのMSと 2.0m
g/lの6−ベンジルアデニン(BA))の上にまき、そして暗所の中で1週間25
±2℃でインキュベートし、次いで連続低温白色蛍光のもと(6.8w/m2)に移す
。培養の10日目、苗木を滅菌土壌を含む鉢に移し、日影の下で3〜5日間保ち、
そして最後に温室に移す。予測の遺伝子導入シュートが発根する。外性DNA の植
物ゲノムへの組込みは当業者に公知の様々な方法によって確認できうる。
実施例9−形質転換化植物の分析
pCGN 7586 ナピン/リダクターゼ構築体で形質転換されたシロイヌナズナ属植
物由来の発育中の種子を実施例1Cに記載の通りにしてリダクターゼ活性について
分析する。分析した15体の植物のうちの11体が、5〜30pmol/min/mg タンパク質
に範囲する比活性のリダクターゼ酵素活性を有することが見い出された。ウェス
タン分析は、遺伝子導入シロイヌナズナの胚に存在しているリダクターゼの量が
総タンパク質の約0.01%であることを示した。
形質転換植物を、本明細書に記載の通りにして脂肪アルコール及び蝋エステル
成分を測定するためにアッセイする。かかる植物は上記のアグロバクテリア形質
転換法により調製されうる。植物は、蝋
エステルの存在について、例えばTLC による蝋エステルからのトリグリセリド類
(TAG)の分離によってアッセイできうる。得られる蝋を更に分析するためにGC分
析を利用できうる。
A.形質転換植物のガスクロマトグラフィー(GC)分析
未エステル化又は粗製油の含有物は一般のGCカラムを通過しなく、その理由は
TAG 成分を燃焼させるためには高温を必要とするからである(約 350℃〜365℃
)。例えばSUPELCOWAX(商標)10カラムは約 280℃の頂部温度域を有する。
脂質をシロイヌナズナの成熟種子から抽出し、誘導化し(Browseら(1986)An
al.Biochem.152:141-145)、そして上記の通りにしてアルコール含有量につ
いて分析する。これらの分析は、形質転換したシロイヌナズナ植物のうちの3体
における20:1アルコールの存在を示す。
コントロールのナタネ植物及びpCGN 7643 ナタネ植物由来の種子油を同様に、
メタノール/H2SO4 において、以下の方法によりエステル交換させる。各植物由
来の25個の種子をメタノール(5%)中の4mlのH2SO4 の中に80℃で90分インキ
ュベートする。このインキュベート混合物に、1mlの 0.9%のNaCl及び1mlのヘ
キサンを加え、そしてその上部有機相を分析のために取り出す。SUPELCOWAX(商
標)10カラム上でのガスクロマトグラフィー(GC)は、pCGN 7643サンプルが22
:1アルコールを含み、一方非形質転換コントロール植物はそのアルコールを含
まないことを示す。アルコールとしてのこのピークの同定はマススペクトロメー
ター(MS)を用いて確認される。
T2種子由来の粗製油も分析する。各植物由来の25個の種子を集め、そして2ml
のヘキサンの中でホモジナイズする。その抽出物を濾過し、そしてCHROMPAK(商
標)トリグリセリドカラムを用いて高温
GC分析を行う(約 370℃の最大温度)。このカラムはTAG 及び蝋の分析にとって
適当である。蝋エステルとに相当する保持時間でのいくつかのピークがpCGN 764
3 サンプルにおいて検出されるが、しかし脂肪アルコールに相当するピークは認
められない。蝋エステルピークは非形質転換コントロールサンプルには存在しな
い。最も主要たるピークは40:2蝋エステルに相当する保持時間を有する。エス
テル交換油中で唯一検出される脂肪アルコールは22:1アルコールであるため、
この主要蝋エステルは22:1脂肪アルコールへとエステル化される18:1脂肪酸
を含んで成るものと信じられる。
メタノール/H2SO4 の中でエステル交換させた形質転換ナタネ油を更に分析す
るために高温GC分析プロトコールを利用する。蝋エステルピークはpCGN 7643 植
物由来のエステル交換油の中には存在しない。これは予測でき、なぜならエステ
ル交換は油の蝋成分から脂肪酸メチルエステル及びアルコールを生成せしめるか
らである。誘導化油の22:1脂肪アルコール成分は形質転換ナタネ植物の一部の
種子において、重量による測定に従い、総脂質の約0.5%を占めると予測される
成分として存在する。
高温GC/MS分析をCHROMPAK(商標)トリグリセリドカラムを用い、ナタネ植物
のT2種子油で行う。T2油のマスクロマトグラフィー(選定のイオンをモニターす
る)は遺伝子導入油中の38:2,40:2,42:2及び44:2蝋エステルの存在に
相当する保持時間及び質量を有するピークを示した。これらのピークはコントロ
ール油においては検出されなかった。pCGN 7643 植物由来の40:2蝋エステルピ
ークのマススペクトルは、それが22:1アルコール及び18:1脂肪酸を含んで成
ることを確証する。
トリグリセリドカラムを利用する、pCGN 7643 植物のT3種子由来の油の高温GC
分析は、その遺伝子導入油が、T2種子油におけるGC/
MS分析の特徴の40:2蝋エステルピークを含むことを示す。この蝋エステルピー
クは非形質転換油においては検出されない。
プラスミドpCGN 7677 を用いて作製した30体の遺伝子導入レストン植物からプ
ールしたT2種子を油組成について分析した。この構築体で形質転換した植物のう
ちの半分における誘導化油は、pCGN 7643 により形質転換した最良の植物由来の
油よりも高レベルのアルコールを示した。この最良植物はプールしたT2種子中で
〜0.9%の脂肪アルコールを有し、一方、pCGN 7643 植物由来の最良のプールを
種子油の組成では0.16%のアルコールであった。
最大脂肪アルコール含有量を有するpCGN 7677 植物から、15個の半種子を分析
した。半種子は遺伝子導入効果のより良い尺度であり、なぜならT2種子は分裂中
の種子であり、それ故非発現性及びヘテロ接合種子、並びに遺伝子導入の特徴に
関する種子ホモ接合体を含むからである。植物7677-R-15 及び7677-R-16 に由来
する個々のT2半種子由来の誘導化油は最高のアルコールレベルを示した。これら
の植物の個々の誘導化種子油において見い出せる脂質の 3.5%のほどが脂質アル
コールである。蝋エステルの脂肪アルコール基質は蝋エステルの総重量の約半分
を占めるため、蝋エステルは形質転換植物由来の油中の約7重量%に至るまでの
成分として生成されうる。
単一個のT2種子(7677-R-15-49)由来の油の高温GC分析は、38:1,38:2,
40:1,40:2,40:3,40:4,42:1,42:3,44:1,44:2及び44:3
の考えられる組成を有する一連の蝋エステルの存在を示す(図3)。これらのう
ち、38:2,40:2,42:2及び44:2のみが有意義な量で存在している。表5
はかかるGC分析の結果を提供し、蝋全体の%として示しているいくつかの個別の
7677-R-15 種子に由来する油の蝋成分中の蝋エステルの相対量を示している。
多数の7677-R-15 半種子由来の油において、最も豊富な蝋エステルは、豊富さ
の順に挙げて、44:2,40:2、そして42:2である。一方、7643形質転換レス
トン植物に由来する油の中で見い出せる最も豊富な蝋エステルは40:2蝋エステ
ルであった。7677-R-15 由来の一部の半種子においては、44:2蝋エステルは油
の中で見い出せる蝋成分の60%より多くを占めていた。これは図3から見た油の
高温GCグラフトレースにおいて劇的に実証されている。
これらの7677-R-15 植物由来の油におけるプロフィールは、42:
2蝋エステルが一般に蝋の47%を占め、そして44:2蝋エステル成分が油の約8
%しか占めていないホホバにおいて見い出せる蝋エステルプロフィールからのか
なりの相違を示す。
主要蝋エステルとして44:2を含んで成る蝋組成物はホホバ油よりも勝る一定
の利点を有するであろう。この主要蝋エステルの高めの分子量は遺伝子導入蝋組
成物に高い融点、高い安定性及び剪断応力に対する高い安定性を与えるであろう
。60%以上の44:2蝋エステルを有する油組成物は、高発現性T2植物由来の混合
トリアシルグリセリド/蝋エステル油の分画により、対応の蝋及びトリアシルグ
リセリド成分への結晶化又は溶媒抽出法により、簡単に得られる。
B.精製して蝋画分の分析
ナタネ油サンプルの蝋を濃縮するため、及び油からトリグリセリドを排除する
ために調製薄層クロマトグラフィーを利用する。油サンプルをシリカ−G TLCプ
レート上に点着し、そしてヘキサン:酢酸エチル(95:5)で展開する。蝋バン
ドの位置はヨウ素染色により同定する。蝋画分をヘキサン:酢酸エチル(70:30
)によりシリカ媒体から溶離させ、窒素ガスのもとで乾かし、そしてヘキサンの
中に再懸濁させる。蝋画分を次にトリグリセリドカラムを用いて高温GCにより分
析する。40:2蝋エステルピークはpCGN 7643 植物由来のサンプルの中に存在し
ている最も豊冨な物質の一つであるが、しかし非形質転換コントロールサンプル
の中には、存在しない。
次にTLC 精製蝋をメタノール/H2SO4 でエステル交換する。高温GC分析は、蝋
のピークがもはやサンプルの中に存在していないことを示す。これは予測され、
なぜならエステル交換は蝋エステルから脂肪酸メチルエステル及びアルコールを
生成せしめるであろうからである。
SUPELCOWAX(商標)10カラムを用いてのエステル交換蝋画分のGC
分析は、pCGN 7643 植物由来の遺伝子導入サンプルが主要22:1脂肪アルコール
ピークを含むことを示す。コントロールサンプル由来の画分は脂肪アルコールを
含まない。
TLC 精製蝋を銀カラムHPLCによって分析した。pCGN 7643 遺伝子導入植物から
抽出した油において、44:2,42:2,40:2及び38:2ホホバ蝋標準品と同一
の保持時間で溶離するピークがある。これらのピークは非形質転換コントロール
油の中にはない。
ノーマル相TLC と銀HPLCとの組合せを7643油から40:2蝋エステルを精製する
ために用いた。この精製蝋エステルをエステル交換した。GC分析は、蝋エステル
が18:1脂肪酸及び20:1脂肪アルコールを含んで成ることを示した。この精製
サンプルに対する高温GC分析及び銀カラムHPLCは、遺伝子導入油から単離した蝋
エステルを対照標準品と混合したとき、2種の化合物が単一ピークとして溶出す
ることを示した。
精製蝋エステルをIRスペクトル、NMR 及び高分解マススペクトルによっても分
析した。IR及びNMR スペクトルを対照標準品のスペクトルと比較し、そして遺伝
子導入油中の40:2蝋エステルの同一性を確認した。蝋エステルの高分解マスス
ペクトルは、それが40:2蝋エステルについて予測される分子量及び分子式を有
することを示した。
上記の結果は、植物細胞であってそれに対して外来の配列から発現された脂肪
アシルリダクターゼを有する植物細胞を増殖させる工程を含んで成る方法による
、植物細胞の中で蝋エステルを生成する能力を実証する。ホホバリダクターゼ核
酸配列により形質転換された長鎖蝋エステルを含む細胞を例示した。植物細胞に
おいてその他の脂肪アルコール及び蝋を生成するためのその他のリダクターゼタ
ンパク質及びコード配列を獲得するための方法を提供した。
本明細書において挙げた公開物及び特許出願は全て、あたかも個々の公開物又
は特許出願を本明細書に引用することにより組入れることを表示しているかの如
く、本明細書に引用することで組入れる。
明瞭化及び理解の目的で以上の発明を具体例及び実施例により多少詳しく説明
してきたが、当業者は本発明の教示において、一定の変更及び改良を請求の範囲
を逸脱することなく本発明に施すことができることを理解しているであろう。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C12N 5/10 9359−4B C12P 7/64
C12P 7/64 9359−4B C12N 9/04 Z
// C12N 9/04 9281−4B 5/00 C