【発明の詳細な説明】
薬剤供給用懸濁液
発明の分野
本発明は、系から薬剤を徐々に放出する相互作用剤を含有する新規なポリマー
含有薬剤供給系に関する。本発明の薬剤供給系は、眼科用または皮膚科用処方組
成物に使用できるが、投与後に薬剤を制御かつ持続して放出するための局所眼科
用薬剤供給系として特に有用である。
発明の背景
眼および皮膚への薬剤の投与においては、多様な因子が良好な治療に対する重
要な因子となりうる。より重要な因子は、投与の快適さ、一定性および正確さで
ある。製品を眼内に入れている場合には、視覚妨害がある場合にその持続時間、
投与の容易さおよび投与間隔が特に重要である。
従来の薬剤供給系の賦形剤(ビヒクル)、特に眼科用薬剤供給系は、これらの
1もしくは2以上の因子に欠点があった。例えば、水溶液または水性懸濁液の形
態の点眼剤は、眼の涙液によってすぐに洗い流されてしまう。軟膏やクリーム剤
は視覚をぼやけさせ、眼内の滞留時間も比較的短い。ゼラチン・ラメラ剤その他
のフィルム剤もしくはシート剤、眼インサート剤、ならびに非水懸濁液剤および
エマルジョン剤は、いずれも直ちに苦痛を生じて不快感が続くことがある上、視
覚を妨害する場合もある。
Davis らの国際出願公開 WO 92/00044(1992年1月9日公開)には、これらの
問題点のいくつかを克服するために開発された局所眼科用薬剤供給系が開示され
ている。これに開示されているポリマー含有薬剤供給系は、眼に投与された時の
pHが約 3.0〜6.5 である。Davis らは、許容しうるpH調整用の酸、塩基また
は緩衝剤を用いてpHを約 3.0〜6.5 、好ましくは約 4.0〜6.0 に調整すること
を教えている(該公開公報13〜14頁)。眼内では、涙液との接触の結果として系
のpHが上昇するため、系の粘度が増大する。そのため、ここに開示されている
薬剤供給系は点眼形態で容易に投与しうる。眼の涙液と接触すると、この薬剤供
給系は急速にゲル化して、投与時の液滴の粘度に比べて高粘度になる。
この国際出願公開 WO 92/00044に開示されている薬剤供給系は、かなりの時間
にわたって眼内にとどまり、薬剤を放出するが、薬剤を長時間にわたってよりゆ
っくり、かつより均一に放出する薬剤供給系をさらに開発することは引き続いて
求められている。この種の薬剤供給系の成分として用いられるポリマーを強く架
橋させることは、薬剤放出速度を低下させ、ポリマーの侵食(erosion)を阻止す
るのに利用できるかも知れないが、架橋は系の膨潤性を低下させる点で望ましく
ないことがある。架橋につれて系の膨潤性が低下すると、粒子が生成することが
あり、それにより凝集性のゲル構造の生成が阻害される。従って、薬剤を徐々に
放出し、なおかつ膨潤性を保持している薬剤供給系が特に求められている。
従来のポリマー含有薬剤供給系の製造は、ポリマーを水のような溶媒に溶解さ
せ、次いでpHを所望水準に調整することにより行われる。このpH調整の前後
に薬剤を添加しうる。カルボキシルビニルポリマーのようなカルボキシル基含有
ポリマーを使用した場合、水に溶解したポリマーのpHは普通は3.0 前後である
。ほとんどの場合、水酸化ナトリウムなどの塩基を添加して系のpHを上昇させ
る。塩基の添加により、ポリマーのCOOH基の一部は中和されることになる。
本発明者らは、相互作用剤を添加すると、適当な条件下でポリマー粒子、ポリ
マー連鎖と相互作用剤との相互作用が促進され、系の膨潤性を低下させずに、系
に含まれている薬剤の放出が遅くなり、涙液の存在下でもポリマー系の耐侵食性
が向上することを見出した。
本発明は眼科用薬剤供給系に特に有用であるが、その用途に制限されるもので
はない。本発明の薬剤供給系は、例えば、皮膚に適用する薬剤組成物として使用
することもできる。以下に、本発明の各種態様をより詳細に説明する。
発明の要約
本発明においては、相互作用剤がポリマー分子と結合(associations)を形成し
、それにより本発明に従った相互作用剤を用いずに処方した懸濁液に比べて、薬
剤供給系からの薬剤の放出速度が遅くなる。この結合は、相互作用剤とポリマー
の
カルボキシ基との間のイオン性吸引により生ずると現時点では考えられる。相互
作用剤とポリマーとの間には水素結合も生じているかもしれず、これも場合によ
っては本発明の効果に寄与している可能性がある。相互作用剤の使用により生成
した結合は、薬剤供給系からの薬剤の移動を阻止する安定なマトリックスの形成
を促進する。
本発明の1態様は、カルボキシル含有ポリマーおよび約5重量%以下の架橋剤
を懸濁液の全重量に基づいて約 0.1〜6.5 重量%の量で含有し、さらに相互作用
剤を含有する水性懸濁液からなる持効性局所眼科用薬剤供給系である。この懸濁
液のpHは、ポリマーのカルボキシル基の少なくとも約0.5 %をイオン化するの
に十分で、かつ相互作用剤を少なくとも2つのイオン化性サイトで解離させ、1
サイトでは実質的にイオン化(解離)させるのに十分なものである。このような
状況下では、相互作用剤は異なるポリマー連鎖と少なくとも2つの相互作用を生
ずることができる。
本発明の上記およびその他の態様、ならびにその特徴、範囲および利用につい
ては、以下の詳細な説明および添付した請求の範囲から当業者にはより明らかと
なろう。
発明の詳細な説明
本発明は、好適態様において、点眼またはリボン形態で投与可能で、投与後に
膨潤しうる眼科用薬剤供給系を提供する。この系の侵食を阻止し、系からの薬剤
の徐放を達成する相互作用剤を、ポリマー溶液に添加する。この処置は、リン酸
が相互作用剤である場合に特に有用である。本発明はまた、局所用途全般に、よ
り具体的には皮膚用途にも利用できる。
本発明で用いる相互作用剤は、解離(イオン化)に利用できる少なくとも2個
の活性水素基を持った有機酸および無機酸である。かかる酸としては、ホウ酸、
乳酸、正リン酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、および蟻酸グリセロ
リン酸(formic glycerophosphoric acid)が挙げられる。好ましい酸はリン酸お
よびホウ酸である。相互作用剤は酸または塩基形態で使用できる。これは、最終
組成物の所望pHに到達した時、溶液中に相互作用剤の解離種が存在することに
なるためである。従って、必要な解離を生ずる条件下では、ホウ酸ナトリウムの
ような適当な塩の形態で添加することにより相互作用剤を生成させることもでき
る。
普通には、ポリマーと水とをまず混合すると、得られた溶液のpHは約3.0 で
ある。かかる普通の系では、ポリマーのカルボキシル基の少なくとも約0.5 %、
好ましくは約20%以上がイオン化するように十分にpHを上昇させる必要がある
。しかし、同時にpHは、相互作用剤を少なくとも2つのイオン化性サイトで解
離させるのに十分でなければならず、この解離は少なくとも1つのサイトでは実
質的でなければならない。
実質的程度の解離とは、相互作用剤の少なくとも1つのイオン化性サイトが約
20%以上解離(イオン化)し、第2のサイトが少なくともある程度の解離を受け
た時点まで解離が進んだことを意味する。好ましくは、1サイトで少なくとも約
30%以上の解離を生じさせ、より好ましくは1サイトでのイオン化率50%以上の
解離を生ずるようにpHを調整する。1サイトでこのような程度まで解離が起こ
ってしまえば、第2のサイトでの解離度はより小さくても(例えは、3〜5%あ
るいは10%)本発明の目的に十分である。2またはそれ以上のサイトでの解離度
が20%、30%もしくは50%またはそれ以上であっても、本発明の目的が達成され
うることは当然である。pHが実質的程度の解離を生ずるのに必要な値より低い
と、本発明により生ずる結合の網目構造が全く生成しないか、或いは薬剤のより
遅い放出を効果的に生じさせるのに十分な程度には生成しない。
少なくとも2つのサイトで解離(イオン化)を生じた相互作用剤は、少なくと
も2つのポリマー粒子、ポリマー連鎖またはポリマー粒子の一部と相互作用体を
形成することができるので、実質的な解離を生ずることは重要であると考えられ
る。このような相互作用体の形成によって、有効量の相互作用剤を含有しないマ
トリックスに比べて、マトリックスからの薬剤の移行がより困難なマトリックス
が生起するものと考えられる。系のpHを上昇させるのに必要な塩基は、ポリマ
ー含有懸濁液に相互作用剤を添加する前か後に添加することができる。
本発明の利点を生ずるpHは、もちろん相互作用剤のイオン化性サイトのpK
に依存しよう。例えば、正リン酸の場合、本発明の利点はpH約7.0 以上で明ら
かであるが、pH約5.0 では明らかではない。ホウ酸を使用する場合にも、pH
約7以上で十分な解離が起こるが、pH約5ではそうではない。クエン酸および
EDTAでは、pH約5以上で十分な解離が起こる。任意の適当の酸に対する適
切なpH値は、その酸の各pK値と異なるイオン化度を生ずる時のpH値が示さ
れている標準的な表を参照することにより容易に決定できる。かかるチャートの
例は、CRC化学/物理学便覧(The CRC Handbook of Chemistry and Physics)6
7版(CRC Press,Inc.,Boca Raton,Florida)のD159-D163 頁にある。この刊
行物の開示を参考文献としてここに組み入れる。
本発明の実施に用いる軽度に架橋したアクリル酸等のポリマーは、一般に当技
術分野では周知である。好適態様にあっては、かかるポリマーは、存在するモノ
マーの合計重量に基づく重量%で少なくとも約90%、好ましくは約95〜99.9%の
1種もしくは2種以上のカルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーから
製造されたものである。アクリル酸が好ましいカルボキシル基含有モノエチレン
性不飽和モノマーであるが、他の不飽和で重合性のカルボキシル基含有モノマー
、例えば、メタクリル酸、エタクリル酸、β−メチルアクリル酸(クロトン酸)
、cis−α−メチルクロトン酸、trans−α−メチルクロトン酸、α−ブチルクロ
トン酸、α−フェニルアクリル酸、α−ベンジルアクリル酸、α−シクロヘキシ
ルアクリル酸、β−フェニルアクリル酸(ケイ皮酸)、クマリン酸(o−ヒドロ
キシケイ皮酸)、ウンベル酸(p−ヒドロキシクマリン酸)などを、アクリル酸
に加えて、またはアクリル酸に代えて、使用することができる。
かかるポリマーは、少量、即ち、存在するモノマーの合計重量に基づく重量%
で約5%以下、例えば約0.5 %から約5%まで、好ましくは約 0.5%から約2.0
%までの多官能性架橋剤を用いて架橋されている。このような架橋剤として挙げ
られるのは、ジビニルグリコール、2,3−ジヒドロキシヘキサ−1,5−ジエン、2,
5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン、N,N−ジアリルアクリル
アミド、N,N−ジアリルメタクリルアミドなどの非ポリアルケニルポリエーテル
型の二官能性架橋用モノマーである。また、1分子あたり2以上のアルケニルエ
ーテル基、好ましくは末端に H2C=C<基を持つアルケニルエーテル基を含有す
るポリアルケニルポリエーテル型架橋剤も使用可能である。この種のポリア
ルケニルポリエーテル型架橋剤は、少なくとも3個のヒドロキシル基を持つ炭素
数4以上の多価アルコールを臭化アリル等のハロゲン化アルケニルによりエーテ
ル化することによって製造され、具体例としてはポリアリルスクロース、ポリア
リルペンタエリスリトールなどがある。例えば、Brown の米国特許No.2,798,053
を参照。分子量約 400〜8,000 ジオレフィン性非親水性多量体(macromeric)架橋
剤、例えば、ジオールおよびポリオール類のジおよびポリアクリレートおよびメ
タクリレート、ジイソシアネート−ヒドロキシアルキルアクリレートもしくはメ
タクリレート反応生成物、ならびにポリエステルジオール、ポリエーテルジオー
ルもしくはポリシロキサンジオールから誘導されたイソシアネート末端プレポリ
マーとヒドロキシアルキルメタクリレートとの反応生成物なども架橋剤として使
用することができる。例えば、Mueller らの米国特許No.4,192,827およびNo.4,1
36,250を参照。
本発明で用いる軽度に架橋したポリマーは、存在するモノエチレン性不飽和モ
ノマーが1種もしくは2種以上のカルボキシル基含有モノマーのみからなり、こ
れと1種もしくは2種以上の架橋剤とから製造したものでも勿論よい。また、1
種もしくは2種以上のカルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーの約40
重量%まで、好ましくは約0〜20重量%を、生理学的に無害な置換基のみを含有
しカルボキシル基を含有しない1種もしくは2種以上のモノエチレン性不飽和モ
ノマーで置換したポリマーであってもよい。かかるカルボキシル基を含有しない
モノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリ
レート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルメタクリレート、2−ヒド
ロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのアク
リル酸およびメタクリル酸エステル類、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンなど
が挙げられる。かかる追加のモノエチレン性不飽和モノマーのより広範なリスト
については、Mueller ら米国特許No.4,548,990を参照。特に好ましいポリマーは
、架橋用モノマーが2,3−ジヒドロキシヘキサ−1,5−ジエンまたは2,3−ジメチ
ルヘキサ−1,5−ジエンである、軽度に架橋したアクリル酸ポリマーである。
本発明の実施に有用な軽度に架橋したポリマーは、慣用のラジカル重合触媒を
用いて、等積球径(equivalent spherical diameter)で約50μm以下の乾燥粒度
まで、例えば等積球径で約1〜30μm、好ましくは約3〜20μmの粒度範囲の乾
燥ポリマー粒子を形成するように、モノマー類を懸濁または乳化重合させること
により製造することが好ましい。一般に、かかるポリマーの分子量は約 250,000
〜4,000,000 、好ましくは約2,000,000 以上と推定される範囲内である。
眼科用の場合、平均乾燥粒度が等積球径で約50μmよりかなり大きな、懸濁重
合または乳化重合で得られたポリマー粒子を含有する水性懸濁液は、等積球径が
平均で約50μm以下のポリマー粒子を含有する、粒度以外は組成的に同一の水性
懸濁液に比べて、眼に投与した時の不快感が大きくなる。また、等積球径で約50
μmよりかなり大きな乾燥粒度となるように製造し、製造後に例えば機械的な粉
砕または摩砕により等積球径で約50μm以下の乾燥粒度まで微細化した、軽度に
架橋したアクリル酸等のポリマーは、水性懸濁液から得られたポリマーほどには
うまく作用しない。機械的な粉砕または摩砕で生成した粒子は、粒度があまり均
一ではなく、粒度分布がより広いことが、その原因であるかもしれない。いずれ
にしても、かかる機械的に微細化した粒子は、懸濁または乳化重合により適当な
粒度に調製した粒子に比べて、水性懸濁液の状態で水和されにくいが、存在する
軽度に架橋したポリマー粒子の全重量に基づいて約40重量%まで、例えば約0〜
20重量%であれば、かかる粉砕または摩砕したポリマー粒子を、乾燥粒径が約50
μm以下の懸濁または乳化重合させたポリマー粒子と混合して使用することがで
きる。
本発明の眼科用懸濁液は、眼に投与する前と同一または実質的に同一の粘度を
眼内で保持するように処方することができる。或いは、本発明の眼科用懸濁液は
、涙液と接触すると懸濁液の粘度が増大し、増大したゲル化を生ずるように処方
することもできる。このゲル化の増大が望ましい場合には、1992年1月9日公開
の国際公開公報WO 92/00044の教示に従うことが好ましい。
軽度に架橋したポリマー粒子は好ましくは、幅10μmの主要粒度分布幅の範囲
に粒子の少なくとも80%、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上が
含まれる、という狭い粒度分布を粒子が有している。また、微粒子、即ち、粒度
が1μm未満の粒子の割合は、20%以下、好ましくは10%以下、特に好ましくは
5%以下である。
また、ポリマー粒子の平均粒度が50μm、より好ましくは30μmという上限か
ら、例えば6μmというようにより小さくなると、それにつれて主要粒度分布幅
も、例えば5μmというように狭くすることが一般に好ましい。主要粒度分布幅
の範囲内に含まれる粒子の好ましい寸法は約30μm以下、より好ましくは約20μ
m以下、特に好ましくは約1〜5μmである。単分散粒子を使用すると、ある一
定の粒度について、懸濁液の粘度が最高となり、眼科用薬剤供給系の眼内滞留時
間が長くなる。粒度が30μm以下の単分散粒子が特に好ましい。粒度分布が狭い
と良好な粒子充填が助長される。
本発明の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に基づいて約 0.1〜6.5 重量%、
好ましくは約 0.5〜4.5 重量%の範囲の量で軽度に架橋したポリマー粒子を含有
しよう。この水性懸濁液は、生理学的または眼科学的に有害な成分を含有しない
滅菌純水、好ましくは脱イオン水または蒸留水を用いて調製することが好ましく
、相互作用剤を添加した後、約 3.0〜9.0 、好ましくは約 6.5〜7.5 のpHに調
整されよう。本発明の薬剤供給系は、相互作用剤を添加すると普通には酸性とな
るため、pHの調整は許容されうるpH調整用の塩基または緩衝剤により行われ
る。しかし、任意の生理学的または眼科学的に許容されるpH調整用の酸、塩基
または緩衝剤を用いてpHを調整することができる。かかる酸としては、酢酸、
ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、塩酸などの酸が挙げられる。本発明の系のp
H調整用に用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化
アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸
ナトリウム、THAM(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)などが挙げられる。
pH調整剤として使用できる塩および緩衝剤としては、クエン酸/ブドウ糖、重
炭酸ナトリウム、塩化アンモニウムおよび前述の酸と塩基との混合物等が挙げら
れる。従来のポリマー懸濁液のpHは低い(約3.0)であるため、普通には塩基の
みをpH調整剤として添加することになろう。
本発明の水性懸濁液を製造する場合、適当な量の生理学的および眼科学的に許
容される塩を用いて、懸濁液の浸透圧(π)を約10〜400 mOsm(ミリオスモル)
、好ましくは約 200〜300 mOsmに調整することになる。塩化ナトリウムが生理学
的液体に近似させるのに好適であり、水性懸濁液の全重量に基づいて約0.01〜1
重量%、好ましくは約0.05〜6.0 重量%、より好ましくは約0.05〜2重量%の範
囲の量の塩化ナトリウムを用いると、上記範囲内の浸透圧(オスモル濃度)が得
られよう。また、上記範囲内の浸透圧を得るのに、塩化ナトリウムに加えてまた
は塩化ナトリウムに代えて、当量の1種もしくは2種以上の他の塩を使用するこ
ともできる。かかる他の塩としては、カリウム、ナトリウム、アンモニウムなど
のカチオンと、塩素、クエン酸、アスコルビン酸、ホウ酸、リン酸、重炭酸、硫
酸、チオ硫酸、重亜硫酸などのアニオンとからなる塩、例えば、塩化カリウム、
チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどがある。ポリ
オールを添加して浸透圧を調整してもよい。
上述した範囲内で選択した、軽度に架橋したポリマー粒子の量、pHおよび浸
透圧は、互い同士、また架橋度と相関して、25番スピンドルと13R 少試料アダプ
タとを取り付けたブルックフィールドディジタルLVT 粘度計を12 rpmで用いて室
温(約25℃)で測定した時の粘度が約 1,000〜30,000 cps、好ましくは約 5,000
〜20,000 cpsの範囲内である水性懸濁液を生じよう。
リボン形態で眼に投与するには約30,000〜100,000 cps の粘度が好ましい。本
発明の薬剤供給系に含有させた薬剤の放出速度は、薬剤それ自体とその物理的形
状、供給系の薬剤含有量の程度およびpH、ならびに系に添加可能な薬剤供給佐
剤(アジュバント)、例えば、眼表面と適合性のあるイオン交換樹脂などの存在
、といった因子に依存して変動しうる。
薬剤とは、疾病の治療または健康状態の改善に使用する物質である。皮膚用の
薬剤は、身体の症状を治療するために皮膚に浸透させる(経皮投与される)薬剤
と、特に皮膚または皮膚層の症状を治療するため皮膚に適用される薬剤とを包含
する。眼科用薬剤は、眼それ自体の症状または眼の周囲組織の症状を治療するた
めの薬剤と、眼に関連するもの以外の局所症状を治療するために眼経路を経て投
与される薬剤とを包含する。本発明の局所薬剤供給系に含有させる眼科用薬剤の
投与量は、一般には他の投与形態の場合の投与量に匹敵する治療有効量であり、
この量は通常は組成物(懸濁液)の全重量に基づいて約 0.005〜10重量%、好ま
しくは約0.01〜5重量%の範囲内の量であろう。例えば、このようにして約0.01
〜1重量%の抗炎症性ステロイドであるフルオロメトロンを投与できる。
皮膚への投与に有用な薬剤としては、塩酸ブピバカイン、塩酸テトラカイン、
ベンゾカイン、塩酸コカイン、ジブカイン、塩酸ジクロニン、リドカイン、塩酸
プラモキシン、塩酸プロパラカイン、塩酸ベノキシネート、ベンジルアルコール
、ブタカイン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸ネオマイシン、エリスロマインン、ス
ルファセタミドナトリウム、銀スルファジアジン、ヒドロコルチゾン、ジプロピ
オン酸ベクロメタゾン、フルランドレノリド、トリアムシノロンアセトニド、過
酸化ベンゾイル、フルオロウラシル、塩化セチルピリジニウム、クロフルカーボ
ン、トリクロサン、トリクロカーボン、およびt−レチン酸が挙げられる。上記
およびその他の薬剤は、皮膚の局所症状、皮膚内の真皮症状、またはその薬剤が
投与された人の全身症状を治療しうるものである。
本発明の懸濁液は、水性懸濁液として、または軟膏もしくはクリームとして、
またはオイルの1成分として、皮膚に直接塗布することができる。水性懸濁液を
皮膚投与用に処方する場合、懸濁液のポリマー含有量は約 0.1%から約20%まで
の範囲に及びうるが、好ましくは約1〜10%である。皮膚用組成物および懸濁液
のpHは好ましくは約5〜9、より好ましくは約 6.5〜7.5 である。本発明の懸
濁液を皮膚用のクリーム、軟膏またはオイルに処方することは、皮膚用製剤を日
常的に調製している者には容易である。薬剤を皮膚に投与するために、本発明の
水性懸濁液をそのまま、或いは軟膏、クリームもしくはオイルの1成分として皮
膚に投与しうる。本発明により皮膚に投与された薬剤は、皮膚の表面、皮膚層、
または身体の症状を治療することができる。本発明の皮膚投与により身体の症状
を治療するには、投与した薬剤が皮膚を浸透しうるものである必要があることは
もちろんである。
眼科用のかかる薬剤の例(但し、決して網羅を意図したものではない)を列挙
すると、粘滑剤(”ドライアイ”軽減用)、抗性物質、抗ウィルス剤、ステロイド
、アミノ置換ステロイド、抗炎症剤、ペプチド、ポリペプチド、強心薬、降圧剤
、抗アレルギー剤、α−およびβ−アドレナリン作用性ブロッキング剤、眼科用
薬剤(抗白内障剤、抗緑内障剤および眼科用抗炎症剤等)、眼科用滑剤、眼科用
局所もしくは局部麻酔剤などが含まれる。本発明で使用可能な具体的な薬剤とし
ては、ピロカルピン、イドクスウリジン、カルバコール、ベタネコール、チモロ
ー
ル、アテノロール、ラベタロール、メトロプロロール、ナドロール、オクスプレ
ノロール、ピンドロール、ソタロール、ベタキソロール、アセブトロール、アル
プレノロール、レボブノロール、p−アミノクロニジン、ジピベフリン、テトラ
サイクリン、エピネフリン、フェニレフリン、エセリン、ホスホリン、アセクリ
ジン、デメカリウム、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、ニト
ログリセリン、エタクリン酸、フロセミド、アミロライド、クロルテトラサイク
リン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、ポリミキシンB、グラミシ
ジン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ペニ
シリン類、エリスロマイシン、スルファセタミド、トブラマイシン、トロスペク
トマイシン、バンコマイシン、シプロフロキサシン、ペルフロキサシン、ノルフ
ラキサシン、エノキサシン(enoxacin)、塩酸ナファゾリン、クリンダマイシン、
イソフルロフェート、フルオロメトロン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、
フルオロシノロン、メドリゾン、酢酸プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、
プロピオン酸フルチカゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、エストラジオー
ル、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン;イブプロフェン、フ
ルルビプロフェン、およびナプロキセンのエステル類;ケトロラック、スプロフ
ェン、インターフェロン類、クロモリン、ガンシクロビール、アミノゾラミド、
全trans-レチン酸(ビタミンA)、ならびにこれらの無毒で薬剤に許容される塩
が挙げられる。対応するプロドラッグも本発明の範囲内で使用できる。眼科用滑
剤とは、自然の流涙を誘起させるか、または人工的な流涙を作りだすことができ
る物質のことであり、これには例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロ
ピルメチルセルロース等のセルロースポリマー類、ポリビニルピロリドン等のポ
リラクタム類等が含まれる。純水に、上述した種類の軽度に架橋したポリマーを
やはり上述した範囲内の量で含有させ、食塩水で低張にすることにより必要な浸
透圧を有するようにしたドライアイ用組成物も、本発明の範囲内に含まれる薬剤
組成物である。局所または局部麻酔剤としては、眼科手術および他の眼科処置時
に使用されるものが含まれ、例えば、リドカイン、コカイン、ベノキシネート、
ジブカイン、プロパラカイン、テトラカイン、エチドカイン、プロカイン、ヘキ
シルカイン、ブピバカイン、メピバカイン、プリロカイン、クロロプロカイン等
である。
「薬剤に許容される塩」とは、親化合物の薬剤としての特性(例、毒性、効力
等)に顕著な影響または悪影響を及ぼさない親化合物の塩を意味する。本発明の
水性懸濁液により投与できる薬剤に許容される塩としては、例えば、塩化物、ヨ
ウ化物、臭化物、塩酸塩、酢酸塩、硝酸塩、ステアリン酸塩、パモ酸塩、リン酸
塩および硫酸塩が挙げられる。遊離の薬剤の水溶性または極性を高める適当な塩
の形態の薬剤を使用する方が望ましい場合もある。
本発明では多くの製剤技法を用いることができる。例えば、薬剤と軽度に架橋
したポリマー粒子と浸透圧調整用の塩とを乾燥状態で予備混合してから、水の全
量または一部に添加し、見かけ上ポリマーの分散が完了する(ポリマーの凝集体
が肉眼で見えなくなることで判断できる)まで激しく攪拌すればよい。次に、1
種もしくは2種以上の相互作用剤を、溶液の粘度が増大するようにポリマー粒子
と相互作用剤との相互作用を十分に促進させるのに十分な量で添加しうる。その
後、所望のpH値にするのに十分なpH調整剤を少しづつ加え、必要ならこの時
点でさらに水を加えて、100 %の組成物重量にする。別の簡便な方法によれば、
最終的な水の量の約95%に薬剤を加え、溶液を飽和させるのに十分な時間攪拌す
る。
溶液の飽和は、既知の方法、例えば分光光度計を用いて決定することができる
。軽度に架橋したポリマー粒子と浸透圧調整用の塩は、まず乾燥状態で混合した
後、上記の薬剤を飽和させた懸濁液に添加し、見かけ上ポリマーの水和が完了す
るまで攪拌する。所望のpHにするのに十分なpH調整剤を少しづつ添加した後
、攪拌しながら水の残りを加えて、懸濁液を100 %の組成物重量にする。
調製した水性懸濁液は、保存剤を含有しない1回用の再密閉できない容器に注
入することができる。これは、1回量の薬剤を一度に一滴だけ眼に投与すること
ができ、使用後に容器は廃棄する。このような容器を用いると、特に水銀系保存
剤を含有する眼科用薬剤で起こることが認められているような、保存剤が関係す
る角膜上皮の刺激や過敏の可能性が排除される。所望により、多数回用の容器を
使用することもできる。これは、特に本発明の水性懸濁液は粘度が比較的低いた
め、点眼により一定した正確な用量の薬剤を必要なだけ一日に何回も眼に投与で
きるためである。保存剤を含有させる懸濁液において、適当な保存剤はクロロブ
タノール、ポリクワット(polyquat)、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルなどで
ある。
薬剤の放出をさらに遅くするために他の添加剤を系に含有させてもよい。例え
ば、イオン交換樹脂の添加は薬剤とのイオン結合を形成することにより薬剤の放
出を遅くする。薬剤分子とより大きな樹脂分子とのイオン性および非イオン性の
吸引力が、系からの薬剤の移行を遅くするものと考えられる。多糖類ゲル(例、
ゲルライト<Gelrite>)などの増粘剤も、ポリマー媒質の性質を薬剤の移行がより
困難なものに変化させることにより薬剤の放出を遅くする。
当業者が本発明をより完全に理解できるように、以下に実施例を示す。これら
の実施例は、例示のためだけに示すものであり、請求の範囲に記載していない限
り、本発明を制限するものと考えるべきではない。実施例1
最終重量のほぼ2/3 の水を入れたビーカーに、ノベオン(Noveon)AA-1(軽度に
架橋したカルボキシル基含有ポリマー)を徐々に分散させ、1.5 時間攪拌する。
次いで、EDTA、正リン酸(相互作用剤)およびホウ酸ナトリウム(相互作用
剤)を順に加え、各添加後ごとに10分間攪拌する。この相互作用剤の組合わせを
添加している間、溶解したポリマーは約 3.0〜3.5 のpHにある。得られた混合
物を121 ℃のオートクレーブで20分間滅菌する。別に、緑内障の治療に有効な薬
剤であるアプラクロニジンを最終重量のほぼ1/5 の水に溶解させ、滅菌濾過によ
り上記ポリマー混合物に添加する。10N NaOHで混合物のpHを6に調整し、滅菌
濾過により水を最終重量になるまで加え、1回量用の容器に無菌的に充填する。実施例2
最終重量のほぼ2/3 の水を入れたビーカーに、ノベオンAA-1を徐々に分散させ
、上部に取り付けた攪拌機で1.5 時間攪拌する。次に、EDTA、正リン酸(相
互作用剤)およびホウ酸ナトリウム(相互作用剤)の組合わせを順に加え、各添
加後ごとに10分間攪拌する。正リン酸を添加している間、ポリマー含有溶液のp
H
は約 3.0〜3.5 である。その後、溶液にアンバーライト(Amberlite)IRP(イオン
交換樹脂)を加え、その塊りがなくなって均一に混ざるまで(約15分)攪拌す
る。得られた混合物を121 ℃のオートクレーブで20分間滅菌する。別に、アプラ
クロニジンを最終重量のほぼ1/5 の水に溶解させ、滅菌濾過により上記ポリマー
混合物に添加し、少なくとも12時間攪拌してアプラクロニジンを確実にアンバー
ライトにイオン結合させる。10N NaOHで混合物のpHを7に調整し、滅菌濾過に
より水を最終重量になるまで加え、1回量用の容器に無菌的に充填する。
次の表Iに実施例1および2の組成物中の各成分の量をまとめて示す。
実施例3〜6
次の表IIに示した組成物3、4、5および6を下記のように調製する。最終重
量のほぼ2/3 の水を入れたビーカーに、ノベオンAA-1を徐々に分散させ、上部に
取り付けた攪拌機で1.5 時間攪拌する。次に、エデト酸二ナトリウムと、塩化ナ
トリウム(組成物5および6)または正リン酸およびホウ酸ナトリウム(組成物
3および4)とを順に加え、各添加後ごとに15分間攪拌し、その間ポリマー含有
溶液は約 3.0〜3.5 のpHにある。得られた混合物を121 ℃のオートクレーブで
20分間滅菌した後、室温に放冷してから次の工程に進める。別に、眼科用薬剤で
ある塩酸レボブノロールを最終重量のほぼ1/10の水に溶解させる。次に塩酸レボ
ブノロールの溶液をポリマー溶液に滅菌濾過(0.2μm)により添加し、15分間よ
く混合する。この混合物を10N 水酸化ナトリウムまたは6N塩酸でpH 5.4(組成
物3および5)またはpH 7.5(組成物4および6)に調整し、滅菌濾過により
残りの水を加えて最終重量にする。
相互作用剤である正リン酸およびホウ酸ナトリウムの添加は薬剤の放出速度を
低下させ、それにより塩酸レボブノロールの放出が持続する時間が長くなった。
この改善は、pH 5.4よりpH 7.5でより顕著である。
薬剤の放出速度を以下の手順に従って測定する。フロースルー(flow through)
デザインのプレクシグラス(plexiglass,アクリル樹脂)製の拡散セルを用意す
る。溶離液(pH 7.4のリン酸緩衝液含有食塩水)を37℃に保持し、ポンプによ
り約7.4 mL/hr の流速で拡散セルを経て UV-Vis Diode Array 分光光度計(カリ
フォルニア州サニーベールのヒューレット・パッカード社製 8452A型)に送り込
む。約25mgの試験物質を試料口に注入し、試験する薬剤のλmax で薬剤の濃度を
監視する。
試料口への注入から約15分後に測定した上記組成物の薬剤放出速度は、組成
物3が約160 μg/hr、組成物4が約50μg/hr、組成物5が約150 μg/hr、そして
組成物6が約130 μg/hrである。いずれの場合も、約15分で求めた測定値は、各
組成物についての薬剤放出速度の最高値である。どの組成物の放出速度も約 2.5
〜3時間の間に0に近づく。組成物3と組成物4の放出速度を比べると、リン酸
の相互作用剤はpH 5.4では薬剤放出を著しくは阻害しないが、pH 7.5の組成
物では薬剤放出を著しく阻害することがわかる。pH 7.5の組成物における薬剤
放出速度を比較しよう。即ち、組成物4と組成物6の放出速度を比較すると、相
互作用剤を含有するpH7.5 の組成物は、相互作用剤を含有しない同じpHの組
成物より薬剤放出の抑制程度が著しく大きいことが示される。実施例7〜10
次の表IIIに示した組成物7、8、9および10を下記のように調製する。最終
重量のほぼ2/3 の水を入れたビーカーに、ノベオンAA-1を徐々に分散させ、上部
に取り付けた攪拌機で1.5 時間攪拌する。次いで、エデト酸二ナトリウムと、塩
化ナトリウム(組成物7および8)または正リン酸およびホウ酸ナトリウム(組
成物9および10)とを順に加え、各添加後ごとに15分間攪拌し、その間ポリマー
含有溶液は約 3.0〜3.5 のpHにある。得られた混合物を121 ℃のオートクレー
ブで20分間滅菌した後、室温に放冷してから次の工程に進める。別に、眼科用薬
剤である塩酸プロパラカインを最終重量のほぼ1/10の水に溶解させる。次に塩酸
プロパラカインの溶液をポリマー溶液に滅菌濾過(0.2μm)により添加し、15分
間よく混合する。この混合物を10N 水酸化ナトリウムまたは6N塩酸でpH 5.4(
組成物7および9)またはpH 7.4もしくは 7.5(組成物8および10)に調整し
、滅菌濾過により残りの水を加えて最終重量にする。組成物10が本発明を例示す
る実施例である。
次の組成物11、12および13は本発明をさらに例示するものであり、下記の表IV
に示されている。その製造法は次の実施例11、12および13に説明されている。実施例11
組成物11を調製するために、最終重量のほぼ2/3 の水を入れたビーカーにノベ
オンAA-1を徐々に分散させ、上部に取り付けた攪拌機で1.5 時間攪拌する。ノベ
オンAA-1はB.F.Goodrich 社製のアクリル酸ポリマーである。次に、得られたポ
リマー溶液に、エデト酸二ナトリウム(EDTA)とクエン酸(相互作用剤)を
加え、10分間攪拌する。このポリマー溶液のpHは約 3.0〜3.5 である。その後
、溶液にアンバーライトIRP を加え、その塊りが消えてこれが均一に混ざるまで
攪拌する(約15分)。アンバーライトIRP は、Rhom & Haas 社製のイオン交換樹
脂であり、薬剤とイオン性結合を生ずると考えられる。得られた混合物を121 ℃
のオートクレーブで20分間滅菌する。別に、緑内障の治療によく用いられる薬剤
であるアプラクロニジンを、最終重量のほぼ1/5 の水に溶解させ、滅菌濾過によ
り上記ポリマー混合物に添加し、少なくとも12時間攪拌してアプラクロニジンを
確実にアンバーライトに結合させる。10N NaOHで混合物のpHを4.5 に調整し、
滅
菌濾過により水を最終重量になるまで加え、1回量用の容器に無菌的に充填する
。実施例12
組成物12を調製するために、最終重量のほぼ3/4 の水を入れたビーカーにノベ
オンAA-1を徐々に分散させ、上部に取り付けた攪拌機で1.5 時間攪拌する。ノベ
オンAA-1はB.F.Goodrich社製のアクリル酸ポリマーである。次いで、得られた
ポリマー溶液に、エデト酸二ナトリウム(EDTA)とクエン酸(相互作用剤)
を加え、各添加後ごとに10分間攪拌する。このポリマー溶液のpHは、約 3.0〜
3.5 である。この混合物を10N NaOHで 4.5に調整し、重量を最終重量からゲルラ
イトの添加量を差し引いた差に調整する。この混合物を75℃に加熱し、ゲルライ
トを添加する。ゲルライトは、懸濁液の増粘のために使用するSchweizer Hall社
製の多糖類である。温度を90℃に上げ、混合物を0.5 時間攪拌する。得られた混
合物を121 ℃のオートクレーブで20分間滅菌する。別に、緑内障の治療に有効な
薬剤であるMK 417を、最終重量の1/5 の水に溶解させ、上記混合物中に滅菌濾過
し、15分間攪拌する。MK 417はMerck 社製のカーボニック・アンハイドラーゼ(c
arbonic anhydrase)阻害剤である。水酸化ナトリウムでpHを6.0 に調整する。
滅菌濾過した水を加えて最終重量に調整し、生成物を1回量用の容器に無菌充填
する。実施例13
組成物13を調製するために、最終重量のほぼ2/3 のエタノール/水混合液を入
れたビーカーにノベオンAA-1を徐々に分散させ、上部に取り付けた攪拌機で1.5
時間攪拌する。ノベオンAA-1はB.F.Goodrich 社製のアクリル酸ポリマーである
。次に、得られたポリマー溶液に、エデト酸二ナトリウム(EDTA)、正リン
酸(相互作用剤)およびホウ酸ナトリウム(相互作用剤)を加え、各添加ごとに
10分間攪拌する。このポリマー溶液のpHは約 3.0〜3.5 である。別に、ザ瘡(
アクネ)の治療によく用いられる薬剤であるt−レチン酸を、最終重量のほぼ1/
5 のエタノール/水混合液に溶解させ、上記ポリマー混合物に添加し、15分間攪
拌する。得られた混合物を10N 水酸化ナトリウムで見かけpH7に調整し、エタ
ノ
ール/水混合液を加えて最終重量にする。
本発明の上記説明は、主にその好適態様と実施に向けたものである。ここに説
明した技術思想の実施においては、以下の請求の範囲に記載した本発明の精神お
よび範囲を逸脱せずに、さらに変更および修正を容易に成しうることは当業者に
は自明であろう。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD),AM,AT,
AU,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C
Z,DE,DK,ES,FI,GB,GE,HU,JP
,KE,KG,KP,KR,KZ,LK,LT,LU,
LV,MD,MG,MN,MW,NL,NO,NZ,P
L,PT,RO,RU,SD,SE,SI,SK,TJ
,TT,UA,UZ,VN
(72)発明者 ツァオ,シェン−ワン
中国、台湾300、シン―チュー、ミン―フ
ー・ロード、102レイン、648アレイ37
(72)発明者 ボー,ホア・ビンフー
アメリカ合衆国、カリフォルニア州94501、
アラメダ、コーラル・リーフ・ロード404