JPH0949820A - ガソリン・軽油識別装置及び識別方法 - Google Patents
ガソリン・軽油識別装置及び識別方法Info
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Abstract
・軽油識別装置を実現する。 【解決手段】 識別対象物としてのガソリン及び軽油を
識別するガソリン・軽油識別装置を構成するに、識別対
象物17のいずれかの蒸気が導かれる検知部2に、周囲
雰囲気の熱伝導度に従って異なった出力値を出力する熱
伝導式センサの検知素子3を備え、検知部2に導かれる
蒸気に感応して前記熱伝導式センサが出す出力値に基づ
いて、識別対象物17がガソリンであるか軽油であるか
を識別する識別手段を備える。
Description
ガソリン及び軽油を識別するガソリン・軽油識別装置及
びその使用方法に関する。このようなガソリン・軽油識
別装置は、例えば、有人、無人のガソリンスタンド等に
設置され、ガソリンと軽油との誤認混同を防止し、爆発
あるいはエンジンの損傷等をなくす目的に使用される。
別装置が半導体セラミックセンサ、接触燃焼式センサ等
のセンサを用いて開発されている。
題点から指摘すると、半導体式セラミックセンサ、接触
燃焼式センサは、夫々、以下のような問題を有してい
る。半導体式セラミックセンサは、ガソリン・軽油を比
較的速い応答速度で高感度に検知することが可能である
が、雰囲気温度、湿度の影響を受け再現性・安定性に問
題がある。長期安定性もまた問題である。更に高濃度蒸
気に対してもセンサは感度が変化する等の問題がある。
接触燃焼式センサは、温度・湿度の影響は受け難いが、
長期安定性が問題である。さらに、高濃度蒸気に対して
は半導体式センサと同じくセンサ感度が変化する。特に
貴金属触媒を用いていることから、ガソリン・軽油中に
存在する硫黄(S)化合物(例えばH2S)により、ま
た産業界から家庭までよく使用されているシリコンパ
テ、ペンキ等から揮発してくるシリコン(Si)化合物
により被毒し感度の劣化がおこる。特にSi化合物によ
る被毒は触媒上に半永久的にSiO 2を形成するため、
極微量のSi化合物が雰囲気中に存在しても感度劣化は
時間と共に大きくなり、やがて感度がなくなる。Si化
合物及びS化合物による被毒は半導体式センサでも起こ
りセンサ感度が劣化する。このため安定性・信頼性ある
ガソリン・軽油の識別ができない。これを補うため標準
ガスによる点検がおこなわれているが、経費、人手がか
かる。次に両センサを備えたガソリン・軽油識別装置に
ついて説明すると、これらのセンサを用いたガソリン・
軽油識別装置は、比較的速くガソリン・軽油を識別する
が、充分ではなく、より短時間に識別することが望まれ
ている。本発明は、これらの点に鑑みなされたもので、
識別速度の速い安定性・信頼性あるガソリン・軽油識別
装置を実現するものである。
めの、請求項1に係わり、識別対象物としてのガソリン
及び軽油を識別するガソリン・軽油識別装置の特徴構成
は、前記識別対象物のいずれかの蒸気が導かれる検知部
に、周囲雰囲気の熱伝導度に従って異なった出力値を出
力する熱伝導式センサの検知素子を備え、前記検知部に
導かれる前記蒸気に感応して前記熱伝導式センサが出す
出力値に基づいて、前記識別対象物が前記ガソリンであ
るか軽油であるかを識別する識別手段を備えることにあ
る。ここで熱伝導式センサとは検知素子と温度補償素子
という2つの素子から構成され、検知素子は被検ガス中
に曝露され、温度補償素子は標準ガス(空気)中に密閉
される構造を持つセンサをいう。検知素子と温度補償素
子をそれらの周囲の雰囲気温度より高温に加熱してお
き、被検ガスと空気との熱伝導度の違いにより検知素子
に生じた温度変化から被検ガスを検知するものである。
以上が熱伝導式センサの構成・構造・検知原理である
が、その形状は様々あり、本発明の検知部2はフロー型
と呼ばれる熱伝導式センサの1つである。従って、この
装置においては、識別対象物の蒸気が検知部に導かれ、
検知部に配設される検知素子によって感知され、熱伝導
式センサ出力が得られる。熱伝導式センサ出力は、周部
雰囲気がガソリン蒸気である場合と軽油蒸気である場合
とで、図5に一例を示すように、その出力が異なる。従
って、前記識別手段により、熱伝導式センサ出力と、予
めガソリン蒸気、軽油蒸気に対して判明している出力値
との関係から、識別対象物を識別することが可能とな
る。
によらず、以下のような特徴を有している。即ち、熱伝
導式センサは高濃度蒸気、被毒物質に安定であり、また
長期安定性に非常に優れている。これはセンサの動作原
理が検知ガスと空気との熱伝導度の違いにより生じる加
熱された検知素子の温度変化を測定するという検知原理
が簡明な物理センサ(温度計)であるためであり、半導
体式センサ、接触燃焼式センサのように触媒作用等の化
学反応を利用していないためである。このため、半導体
式センサの半導体感応部や触媒及び接触燃焼式センサの
貴金属触媒が、高濃度蒸気に晒されて還元され半導体の
特性や触媒の酸化活性が変化するのに対し、熱伝導式セ
ンサのPt抵抗体は高濃度蒸気に長時間晒されてもその
抵抗値に変化がない。
合、半導体式センサでは、半導体感応部に特に活性の高
い触媒上に優先的にSiO2として積層し、半導体感応
部を変質させ、触媒の活性をも劣化させる。接触燃焼式
センサでは貴金属触媒上にSiO2が積層しその触媒活
性が劣化する。しかしながら、熱伝導式センサでは、た
とえSiO2が形成されても、その特性に影響を与えな
い。長期安定性について言えば、半導体式センサは、感
応部の半導体の焼結進行(高湿中では促進される)や触
媒の劣化等により問題であるし、接触燃焼式センサでは
その触媒活性が長期低落傾向にあることは良く知られて
いるところである。これに対し熱伝導式センサの感応部
であるPt抵抗体の経時的変化は殆ど認められない。従
って、先に説明した従来技術の課題を、解決することと
なっている。
識別装置の特徴構成は、請求項1に係わるガソリン・軽
油識別装置において、前記熱伝導式センサが、前記検知
部に配設される前記検知素子と、標準雰囲気中に配設さ
れる温度補償素子とを備えたものであり、前記検知素子
が、絶縁性を有する耐熱性不活性材料からなる不活性薄
膜で被覆された白金(Pt)を主成分とする線材からな
るコイルであることにある。このように、検知素子と温
度補償素子とを備えたセンサ構造を採用すると、識別に
於ける環境雰囲気によらない識別を、正確に行える。さ
らに、検知素子を、表面に不活性薄膜層を備えた線材か
らなるコイルとして構成することにより、線材表面での
接触燃焼によるセンサの誤動作を防止することが可能で
あるとともに、熱伝導式センサの検知素子として、適切
な温度状態にコイル部を維持して、ガソリン蒸気、軽油
蒸気の熱伝導特性の差による、異なったセンサ出力を良
好に得られるとともに、応答性、ウオーミングアップの
迅速化を図れる。
識別装置の特徴構成は、請求項2に係わるガソリン・軽
油識別装置において、前記耐熱性不活性材料が、シリカ
(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、窒化珪素(Si3
N4)、窒化アルミニウム(AlN)から選択される少
なくとも1種であり、前記不活性薄膜の厚みが0.01
μm〜10μmであり、前記線材の線径が5μm〜12
μmであり、前記コイルにおいて、ターン数が5〜12
ターンで、コイル外径が50μm〜150μmであり、
コイル間ピッチが前記線径の3倍以下であることにあ
る。ここで、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al
2O3)、窒化珪素(Si3N4)、窒化アルミニウム(A
lN)らを採用する場合は、入手容易な材料であること
から、線材の表面に不活性薄膜を容易に形成できる。さ
らに、検知コイルの形状に関する限定に関しては、後述
する。
識別装置の特徴構成は、請求項2または3に係わるガソ
リン・軽油識別装置において、前記検知素子を備えた前
記検知部に、吸引により前記識別対象物の揮発蒸気を導
く吸引・排出機構を備えるとともに、前記検知素子の周
部を流れる前記揮発蒸気の流速を緩和する流速緩和機構
を備えることにある。このように、吸引・排出機構を備
える場合は、液状態でタンク内に収容されている識別対
象物から、その蒸気を適切に検知部に導いて、熱伝導式
センサの構造に適した状態で、識別検知を行える。さら
に、流速緩和機構を備える作用・効果については、実施
の態様例及び効果の項で説明する。
識別装置の特徴構成は、請求項1〜4のいずれか1項に
係わるガソリン・軽油識別装置において、前記識別対象
物を貯留するタンク内の温度を検出する温度検出手段を
備えるとともに、予め測定された軽油飽和蒸気に対する
前記熱伝導式センサの出力値の温度依存性指標より、前
記温度検出手段により検出される温度における軽油飽和
蒸気の軽油基準出力値を求める基準出力値導出手段を備
え、前記識別手段が、前記軽油基準出力値に所定の安全
係数を乗じた値をガソリンと軽油との識別閾値とするこ
とにある。熱伝導式センサの出力は、その一例として図
5に示すように温度によって変化する。従って、温度検
出手段によってタンク内の温度を検出し、基準出力値導
出手段が、この温度に於ける軽油蒸気に対するセンサの
出力値を温度依存性指標より導出し、識別手段が、この
軽油基準出力値に所定の安全係数を乗じた値を識別閾値
として、ガソリンと軽油を識別する。熱伝導式センサの
出力は、軽油飽和蒸気に対して、非常に小さいため、こ
の方式を採ると、良好な識別が行える。
手段は、請求項3に係わるガソリン・軽油識別装置を使
用するに、前記検知素子の温度を200℃以下の所定温
度に維持し、前記ガソリンと軽油の識別をおこなうこと
にある。このようにすると、後述するように、ガソリン
・軽油に対して、その安全基準を満たしながら、良好な
識別を行える。
基づいて説明する。図1に、本願独特の熱伝導式センサ
を採用したガソリン・軽油識別装置100の装置構成ブ
ロック図を示し、図2、図3に、装置100の検知部2
の詳細構造を示した。図2は検知部2の断面正面図であ
り、図3は側面図である。図4に、本発明の熱伝導式セ
ンサに使用される素子1の構造を示した。先ず、装置1
00の概要について説明する。ガソリン・軽油識別装置
100は、識別対象物であるガソリンもしくは軽油のい
ずれかの蒸気が導かれる検知部2に、周囲雰囲気の熱伝
導度に従って異なった出力値を出力する熱伝導式センサ
の検知素子3を備え、この検知部2に導かれる蒸気に感
応して熱伝導式センサが出す出力値に基づいて、識別対
象物がガソリンであるか軽油であるかを識別する識別手
段4を備えて構成されている。ここで、前記検知素子3
が、絶縁性を有する耐熱性不活性材料からなる不活性薄
膜5で被覆された白金(Pt)を主成分とする線材6か
らなる微小コイル7であることに本願の一つの大きな特
徴がある。
装置100の構造の順に詳細に説明していく。 1 熱伝導式センサに備えられる素子1の構造 熱伝導式センサで使用される素子1の一例を図2、図4
に示した。図2は、検知素子3として使用できる微小コ
イル7をベース8に取付けた状態を示しており、図4
は、微小コイル7を形成する線材6の断面構造を示して
いる。製作にあたっては、線径10μmの白金(Pt)
線9を用いてターン数6、コイル外径80μmの微小コ
イル7を作製する。この微小コイル7をNiピン10等
の電極に溶接する。線材6の表面に備えられる不活性薄
膜5は、例えばSiO 2層の場合、このコイルの両端に
電圧を印加し、コイルの温度を500℃以上にし、ヘキ
サメチルジシロキサン(CH3)3SiOSi(CH3)3 等
の蒸気で処理することによりSiO2の不活性薄膜5が
形成される。このSiO2不活性薄膜5を形成すること
により、Ptを主成分とする素子を不活性化することが
出来る。この不活性化処理(不活性薄膜形成処理)によ
り、熱伝導式センサの誤動作の原因となる可燃性ガスの
接触燃焼を防ぐことができる。このようにして得られた
素子1を、熱伝導式センサの検知素子3及び温度補償素
子11として使用する。
いて説明する。この装置100は、先に説明した素子1
を、検知素子3及び温度補償素子11とした熱伝導式セ
ンサを、主要機器として備えたものである。ガソリン・
軽油識別装置100は、主要構成部位として、前述の熱
伝導式センサの検知素子3が備えられ、ガソリン・軽油
のいずれかの蒸気が導かれる検知部2、この検知部2に
ガソリンあるいは軽油の蒸気を導く蒸気導入部12、検
知部2に蒸気を導くための吸引流を発生するとともに、
これを排気する吸引・排出機構13、さらには、熱伝導
式センサの出力から、蒸気サンプルがガソリンか、軽油
かを判別する識別部14を備えて構成されている。前記
蒸気導入部12の先端には、温度検出手段としての温度
センサ15が備えられている。
16に、識別対象物17の入ったタンク18を連結する
ことにより、ガソリンもしくは軽油の蒸気が、吸引・排
出機構13により、蒸気導入部12を通り検知部2に導
かれる。そして、この蒸気により検知素子3近傍の熱伝
導状態が決定され、熱伝導式センサによりセンサ出力が
出力される。同時に、タンク18内の温度が温度センサ
15により測定される。熱伝導式センサ及び温度センサ
の出力は増幅器19、A/D変換器20を経て識別部1
4内の計算機(演算処理部)21に入力される。この計
算機21内のソフトが、識別手段を主に構成している。
識別部14においては、基準出力値導出手段により、予
めメモリ22に入力されていたパラメター(例えば、
a,b,c)を用い、温度センサ15により検出された
温度における軽油の飽和蒸気に対するセンサ出力(例え
ば、aX2+bX+c、X:温度)が計算される。ここ
で、この軽油の飽和蒸気に対する出力曲線は、図5の−
△−線で示すような指標線である。これに安全係数(例
えば、2)を乗じ、識別閾値Sが求められる。そして、
先に説明した識別手段により、この識別閾値Sと熱伝導
式センサのセンサ出力値を比較することにより、ガソリ
ンと軽油とを識別する。即ち、センサ出力値が識別閾値
Sより高い場合は、蒸気をガソリンと判断し、センサ出
力値が識別閾値Sの1/2より低い場合は、蒸気を軽油
と判断する。但し、熱伝導式センサの出力が1/2S〜
Sにある場合は識別不可として処理し安全を確保する。
この識別閾値Sを、温度20℃の場合について図5に示
した。結果は、外部出力310に出力される。
図3に基づいて説明する。図2には、検知部2を蒸気流
入側から見た断面正面図が、図3には、検知部2の側面
構造が示されている。同図に示すように、検知部2は、
蒸気が流れる検知流路2aを備えるとともに、この検知
流路2aに連通連結される検知素子配設部2bと、温度
補償素子11が配設される温度補償素子配設部2cとを
備えて構成されている。前述の検知流路2aには、流速
緩和機構としてのワイヤーメッシュ23が配設されてい
る。さらに、温度補償素子配設部2c内には、標準雰囲
気としての空気が密閉封入されている。ここで、前記ワ
イヤーメッシュ23は、検知素子3の周りに於ける蒸気
の流速による影響を緩和する。このように、ワイヤーメ
ッシュ23を備えることにより、熱伝導式センサの応答
速度は速くなり、再現性のある安定した識別が可能とな
る。
く、拡散系では0.2秒以下である。しかしフロー系で
は応答速度は遅くなる。フロー系においては、一般に、
熱伝導式センサの検知素子3が温度計であるため、フロ
ー状態が安定するまで検知素子3の温度は変化し、従っ
て熱伝導式センサの出力も変化し一定値に達し難い。さ
らに、電源offの状態からon状態になる操作状況
は、無風状態からフロー状態になる状況と相似とみなす
ことができる。従って、熱伝導式センサの応答速度・ウ
ォーミング・アップ時間を早めるためには、速やかに安
定したフロー状態を確保する必要があるが、本願の流速
緩和機構(この例ではワイヤー・メッシュ23)は、検
知素子3周りの雰囲気の流速を制限するとともに温度状
態を安定化させて、迅速な応答が可能となっている。従
って、フロー系としての本願装置においては、1秒以下
での検知が可能である。
出力について以下、説明する。図5に周囲温度−20℃
〜50℃におけるガソリン及び軽油の飽和蒸気圧に対す
る熱伝導式センサのセンサ出力を示す。−△−が軽油の
出力を示し、−○−がレギュラーガソリンのセンサ出力
を示し、−×−がハイオクガソリンのセンサ出力を示し
ている。同図に示すように、−20℃におけるガソリン
蒸気に対する熱伝導式センサの出力は50℃の軽油蒸気
に対する出力より大きく、周囲温度−20℃から50℃
において、熱伝導式センサによりガソリンと軽油の識別
が可能である。
に、これまで説明してきた微小コイル7(Pt線材6の
表面に不活性薄膜5を設けたものをコイルとして形成し
たもの)を用いた熱伝導式センサのガソリン1%に対す
る応答波形を、図6(ロ)に従来型熱伝導式センサ(P
t線材をコイル状に形成し、このコイル全体の周部に玉
状に耐熱性不活性材料の塊状体を形成したもの)を用い
た熱伝導式センサの応答波形を示した。このように、熱
伝導式センサは、1%程度のガソリン蒸気にあっても優
れた感度を有し、良好に、ガソリンを検知できる。さら
に、微小コイル7使用の熱伝導式センサと、従来型熱伝
導式センサとの応答速度を比較すると、前者のものでは
応答速度が1秒以内であるのに対し、従来型のものでは
10秒程度であり、前者のものが実用性に富むことが判
る。
明する。図5に示すように、熱伝導式センサにあって
は、ガソリンと軽油では蒸気圧がガソリンのほうが高い
ため、センサは常にガソリンに高感度である。そして、
それぞれの蒸気圧は温度により異なる。従って、使用雰
囲気温度−20℃〜50℃の場合、50℃におけるガソ
リン1%(分解能)に対するセンサ出力(ガソリン1%
に対する出力としては、センサと雰囲気との温度差が最
も小さいため、50℃の場合が最も小さい)が、50℃
における軽油の飽和蒸気圧に対するセンサ出力より高け
ればガソリンと軽油の識別は可能である。実際、本願の
ガソリン・軽油識別装置100においては、この状況が
実現するため、両者を識別検知できる。従って、本願の
装置100にあっては、安全性を見込んで50℃におけ
る軽油の飽和蒸気圧に対する出力の2倍の出力の時、ガ
ソリンと軽油を識別するものとする。さらに、50℃に
おける軽油の飽和蒸気圧に対する出力の2倍の出力にセ
ンサ出力が達するに要する時間を識別速度とすると、図
6(イ)に示すように、使用雰囲気温度−20℃〜50
℃において、この識別速度は微小コイル構造の場合、
0.35秒以内となる。この識別速度は充分実用的であ
る。またウォーミング・アップ時間も2秒以内と速く大
幅に短縮され、使用状態にない時は電源を切っておくこ
とができ、節電、安全性という点からも役に立つことと
なる。
温度を周囲雰囲気温度より高める必要がある(本発明の
実施形態の場合前者の温度が110℃程度であり、後者
の温度は−20℃〜50℃程度となる)。また、熱伝導
式センサの出力は検知素子3及び温度補償素子11の両
端にかかるブリッジ電圧に比例するため、検知素子3及
び温度補償素子11の電気抵抗値は、ある程度の大きさ
がある必要がある。従って、線径の大きな線材6を用い
た場合は、コイルの外径、ターンを大きくしなければな
らない。さらに、これらの条件を充たしながら、なお且
つ応答時間、ウォーミング・アップ時間が速いことが、
実用的には好ましい。ここで、識別時間としては1秒以
内が実用的であり、ウォーミング・アップ時間は5秒以
内が実用的である。このような条件下に微小コイル7の
構造を検討した結果を以下に説明する。
採用することが上記の条件を満たす。線径が、5μm未
満ではコイルの線材の電気抵抗値が大きくなりコイルの
線材自身の熱伝導が悪くなるためか、熱伝導式センサの
応答速度が遅くなり識別速度も遅くなる。またPtを主
成分とする線材の入手が困難であり実用的でない。一
方、12μmより大きい場合は、上記の温度に関する条
件を充たすためには、コイルの外径、ターン数が大きく
なり、応答速度が遅くなり識別速度も遅くなり、これの
条件を満たし難い。これは系が大きくなったため系が熱
平衡に達するのに時間を要することと共に、素子の周囲
の熱分布が再構成され2次的に素子の温度に影響を与え
ることなどが原因として考えられる。
用することが上記の条件を満たす。ターン数が、5ター
ン未満の場合は、熱的にコイル部の温度が上昇し難く、
感度が低めになってセンサ出力が小さくなり過ぎる。1
2ターンより大きいコイルは作製が難しくなり製造収率
が悪くなる。 7−3 微小コイル7のコイルピッチ 微小コイルのコイル外径としては、コイル外径50μm
〜150μmを採用することが上記の条件を満たす。コ
イルの外径が、50μm未満の場合は、コイル部の抵抗
が充分に保たれず熱的にコイル部の温度が上昇し難く、
感度が低めになってセンサ出力が小さくなり過ぎる。ま
た作製が難しくなり製造収率が悪くなる。150μmよ
り大きい場合、線径が大きい場合に述べたのと同じ理由
により応答速度ひいては識別速度が遅くなる。
が上記の条件を満たす。コイルのピッチが大きい場合
は、系が大きくなり上述した理由により応答速度が遅く
なる。またコイルの抵抗値が殆ど変わらないのに系だけ
大きくなるためコイルを高温にし難くなる。 7−5 不活性薄膜5の膜厚 微小コイルを構成する線材6に於ける不活性薄膜5の膜
厚は、0.01μm〜10μmであることが上記の条件
を満たす。不活性薄膜5の膜厚は、0.01μm以下で
は高濃度の可燃性ガスに対して接触燃焼を防ぐのに充分
な厚さではない。可燃性ガスの接触燃焼は局所的に開始
されていも加速的に発達する傾向にあり、0.01μm
以下の膜厚では可燃性ガスの接触燃焼の可能性があり、
熱伝導式センサの誤動作の危険性がある。また10μm
以上の膜厚は、コイル部分の熱容量を増しセンサの応答
速度を遅くする。ここで、上記の例では、不活性薄膜5
としてSiO2膜を採用したが、この例の他Al2O3、
Si3N4、AlN等の少なくとも1種からなる薄膜であ
っても、接触燃焼防止の目的は達成できる。
ているが、白金ロジウム線(PtとロジウムRhの合金
線)、白金ジルコニア線(ジルコニアZrO2分散強化
白金線)等のPtを主成分とする線材であれば本発明に
適用できる。
ンサによりおこなう。これまで説明してきたように、熱
伝導式センサを採用する場合は、他種のセンサを使用す
る場合より、様々に利点がある。しかしながら、同じく
熱伝導式センサを採用する場合にあっても、そのセンサ
構造により、その検知性能に差がでる。よって、以下、
この点について説明する。比較対象の従来型熱伝導式セ
ンサとは、検知素子3及び温度補償素子11として、サ
ーミスタを用いたり、Pt線で作られたコイルをアルミ
ナで覆い球状(球径0.7mm〜1mm程度)にしたも
の、或いは1mm×1mm角のアルミナ基板上にPt薄
膜抵抗体を形成したものである。先ず、これらの従来型
熱伝導式センサは、ガソリン・軽油の蒸気に対する応答
速度(本文では飽和出力の90%に達するのに要する時
間とする)が10秒程度であり、かなり遅い、また電源
を入れてから使用可能な状態になるウォーミング・アッ
プ時間が2〜3分かかる。従って、この点で、改良の余
地があり、実用上の見地から、先に説明した微小コイル
型のものを備えた熱伝導式センサを、ガソリン・軽油の
識別装置の主要部位に備えることが、応答性、ウォーミ
ング・アップ性能の上で、実用的である。
装置100の使用方法について説明すると、ガソリン・
軽油蒸気の発火温度は〜260℃であり、安全防爆構造
を考える場合、温度等級T3以上が要求されるので、素
子1の表面温度は200℃以下としなければならない。
さらに素子1の表面温度は135℃以下に保持すれば温
度等級T4が満たされ、より安全性が確保されて好まし
い。
おいては、検知素子3として使用される微小コイル7と
同一のものを、温度補償素子11として使用したが、こ
の温度補償素子11の雰囲気としては空気を採用するた
め、不活性薄膜5を備えない白金線をそのまま、温度補
償素子11として使用することも可能である。さらに、
タンク18内の温度を測定しない場合は、使用温度の上
限の軽油の飽和蒸気に対する熱伝導式センサの出力に安
全係数を乗じた値を識別閾値としてメモリに入力してお
き、これと熱伝導式センサの出力を比較することによ
り、ガソリンと軽油とを識別する構造を採用しても良
い。
安定性・信頼性あるガソリン・軽油識別装置を実現して
いる。熱伝導式センサは高濃度蒸気、被毒物質に安定で
あり(たとえSiO2を形成されても感度に影響しな
い)、また長期安定性に非常に優れている。これはセン
サの動作原理が検知ガスと空気との熱伝導度の違いによ
り生じる加熱された検知素子の温度変化を測定するとい
う検知原理が簡明な物理センサであるためであり、半導
体式センサ、接触燃焼式センサのように触媒作用等の化
学反応を利用していないためである。
サ温度110℃(周囲温度25℃)における、センサ出
力の結果である。これに対し半導体式センサをこのよう
な低温で作動させることは安定性・再現性の点で困難で
あり、温度パルス(400℃以上)を加えてセンサをリ
フレッシュする等の工夫が必要である。接触燃焼式セン
サもこのような低温では触媒に汚れが付着し触媒の酸化
活性が劣化するため安定性が問題となる。また接触燃焼
式センサは高濃度ガスの接触燃焼によりセンサ温度が高
くなり、ガソリン蒸気の発火・爆発の危険性がある。こ
れに対して熱伝導式センサは高濃度のガソリン・軽油蒸
気に対してもセンサ温度が殆ど変化せずに、好ましい状
況が実現できることが判る。
を、箇条書きする。 〔微小コイル構造を採用するための利点 1〕従来型の
熱伝導式センサの応答速度(90%応答)は10秒程度
と遅く、実用上改良の余地があった。微小コイル構造を
採用することにより識別速度の速いガソリン・軽油識別
装置が実現できた。識別速度は0.35秒以内である。
また、従来タイプの熱伝導式センサを用いた場合、無通
電状態から電源をonしてから2〜3分掛っていたウォ
ーミング・アップ時間が、2秒以内に大幅に短縮されて
いる。この為、従来素子では、実際上常時電源をいれた
状態で使用しなければならなかったが、この素子を用い
ることにより必要な時だけ電源をいれれば良くなり、電
気使用量が節減され、また素子を高温に保っていること
により生ずる危険性も減少することになる。 〔微小コイル構造を採用するための利点 2〕更に、熱
伝導式センサに使用されている素子として、シリコンの
異方性エッチングを利用し、シリコン基板上に架橋構造
または片持ち張り構造を構築し、その上にPtの微小薄
膜抵抗体を形成したものがある。この素子の応答速度は
速い。しかし熱的、機械的および長期安定性に問題があ
り様々な工夫が必要とされる。一方、本発明に使用され
ている素子はそのような問題が一切なく安定である。し
かもシリコンの異方性エッチングを利用し作製された素
子は製造が多数の行程からなっている。例えばシリコン
基板の酸化行程、何回かのパターン作製行程、ドライエ
ッチング行程、異方性エッチング行程、保護膜作製行程
等の行程があり、またそれぞれの行程が幾つかの小行程
からなり製造が複雑且つ大変である。またそれぞれの行
程に使用される装置は高価な装置である。これに対し本
発明に用いられている素子は製造が簡単であり、製造に
使用される装置は安価なものでも可能である。極端に言
えば手作りででも可能である。更に本発明に用いられて
いる素子は従来の熱伝導式センサと比較しても簡単且つ
安価に製造できる。従って、本発明ガソリン・軽油識別
装置も従来品と比較して簡単且つ安価に製造できる。
ロー系の場合、そもそも温度計の組合わせである熱伝導
式センサは流速の影響を受ける。この為フロー系で識別
を行う場合、速やかにフロー系を一定状態にし流速によ
る影響を緩和してやる工夫が必要である。これは、検知
素子の周囲にワイヤー・メッシュ、グラスウール、邪魔
板等を設置することにより可能であり、本発明の実施形
態ではワイヤーメッシュを採用した。
を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明
は添付図面の構成に限定されるものではない。
面断面図
面図
す図
油飽和蒸気に対するセンサの出力を示す図
Claims (6)
- 【請求項1】 識別対象物としてのガソリン及び軽油を
識別するガソリン・軽油識別装置であって、前記識別対
象物(17)のいずれかの蒸気が導かれる検知部(2)
に、周囲雰囲気の熱伝導度に従って異なった出力値を出
力する熱伝導式センサの検知素子(3)を備え、前記検
知部(2)に導かれる前記蒸気に感応して前記熱伝導式
センサが出す出力値に基づいて、前記識別対象物(1
7)が前記ガソリンであるか軽油であるかを識別する識
別手段(4)を備えたガソリン・軽油識別装置。 - 【請求項2】 前記熱伝導式センサが、前記検知部
(2)に配設される前記検知素子(3)と、標準雰囲気
中に配設される温度補償素子(11)とを備えたもので
あり、 前記検知素子(3)が、絶縁性を有する耐熱性不活性材
料からなる不活性薄膜(5)で被覆された白金(Pt)
を主成分とする線材(6)からなるコイル(7)である
請求項1記載のガソリン・軽油識別装置。 - 【請求項3】 前記耐熱性不活性材料が、シリカ(Si
O2)、アルミナ(Al2O3)、窒化珪素(Si
3N4)、窒化アルミニウム(AlN)から選択される少
なくとも1種であり、前記不活性薄膜(5)の厚みが
0.01μm〜10μmであり、前記線材(6)の線径
が5μm〜12μmであり、前記コイル(7)におい
て、ターン数が5〜12ターンで、コイル外径が50μ
m〜150μmであり、コイル間ピッチが前記線径の3
倍以下である請求項2記載のガソリン・軽油識別装置。 - 【請求項4】 前記検知素子(3)を備えた前記検知部
(2)に、吸引により前記識別対象物(17)の揮発蒸
気を導く吸引・排出機構(13)を備えるとともに、前
記検知素子(3)の周部を流れる前記揮発蒸気の流速を
緩和する流速緩和機構(23)を備えた請求項2又は3
記載のガソリン・軽油識別装置。 - 【請求項5】 前記識別対象物(17)を貯留するタン
ク(18)内の温度を検出する温度検出手段(15)を
備えるとともに、予め測定された軽油飽和蒸気に対する
前記熱伝導式センサの出力値の温度依存性指標により、
前記温度検出手段(15)により検出される温度におけ
る軽油飽和蒸気の軽油基準出力値を求める基準出力値導
出手段を備え、前記識別手段が、前記軽油基準出力値に
所定の安全係数を乗じた値をガソリンと軽油との識別閾
値(S)とするものである請求項1〜4のいずれか1項
に記載のガソリン・軽油識別装置。 - 【請求項6】 請求項3記載のガソリン・軽油識別装置
を使用するに、前記検知素子(3)の温度を200℃以
下の所定温度に維持し、前記ガソリンと軽油の識別をお
こなう識別方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20195195A JP3408897B2 (ja) | 1995-08-08 | 1995-08-08 | ガソリン・軽油識別装置及び識別方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP20195195A JP3408897B2 (ja) | 1995-08-08 | 1995-08-08 | ガソリン・軽油識別装置及び識別方法 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0949820A true JPH0949820A (ja) | 1997-02-18 |
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ID=16449484
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JP (1) | JP3408897B2 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007040960A (ja) * | 2004-12-24 | 2007-02-15 | Showa Shell Sekiyu Kk | ガソリンコンタミ検知器、ガソリンコンタミ検知器セット、その使用方法およびこれを用いて灯油や軽油がガソリンスタンドにおいてjis規格を満たすかどうかを簡略的に判断する方法 |
JP2008164583A (ja) * | 2006-12-04 | 2008-07-17 | Ngk Spark Plug Co Ltd | 可燃性ガス検出装置 |
-
1995
- 1995-08-08 JP JP20195195A patent/JP3408897B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JP3408897B2 (ja) | 2003-05-19 |
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