JPH0940550A - ステロールベシクル中への化合物の捕捉方法 - Google Patents

ステロールベシクル中への化合物の捕捉方法

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JPH0940550A
JPH0940550A JP19170796A JP19170796A JPH0940550A JP H0940550 A JPH0940550 A JP H0940550A JP 19170796 A JP19170796 A JP 19170796A JP 19170796 A JP19170796 A JP 19170796A JP H0940550 A JPH0940550 A JP H0940550A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水溶性活性物質のより高い服用量の投与を提
供するためおよび水不溶性の活性物質の投与を容易とす
るために、生体内投与に適したステロールベシクルへ生
物学的活性物質を有効に捕捉する方法を提供する。 【解決手段】有機溶媒中に水不溶性化合物を溶解し、該
有機溶媒を除去して水不溶性化合物で構成されるフィル
ムを残し、ステロールの有機誘導体の塩からなるステロ
ールベシクル懸濁液をフィルムへ添加することからなる
ステロールベシクル中への水不溶性化合物の捕捉方法、
あるいは水不溶性化合物および水性相中で二重層を形成
し得るステロールの有機酸誘導体の塩形態を、有機溶媒
中に共に溶解させ、該有機溶媒を蒸発させて、上記化合
物およびステロールの有機酸誘導体の塩形態を含有する
フィルムを残し、水性相を該フィルムに添加し、そして
完全に閉鎖されたマルチラメラベシクルの乳白色の懸濁
液が形成するように振盪することからなるステロールベ
シクル中への水不溶性化合物の捕捉方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二重層を形成し得
るステロールの有機酸誘導体の塩形態から成るリポソー
ム中への化合物の捕捉についての方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】
1.リポソーム リポソームは内包された水性相を含有する完全に閉鎖さ
れた二重層膜である。リポソームは、種々のマルチラメ
ラベシクル(水性相によって互いに離された同中心的な
膜二重層群によって特徴づけられるタマネギ状構造)ま
たはユニラメラベシクル(単一の膜二重層を有するも
の)である。リポソーム調製の2つのパラメータは、ベ
シクル径と脂質濃度の作用である。 (1)脂質の与えられた量によって囲まれた容積として
定義される捕捉容量は、全脂質のモル当り(mol~1
の捕捉リットルの単位として表わされる。捕捉容量は、
ベシクルの脂質組成および媒質のイオン組成によっても
また影響されるリポソームの半径に依存する。(2)二
重層によって隔離された水性成分の画分として定義され
る内包能は、パーセンテージとして表わされる。内包能
は、脂質濃度に直接比例し、より多くの脂質が存在する
場合、より多くの溶質がリポソーム中へと隔離され得る
(ディーマーとアステター、1983年、リポソームプ
レパレーション:メソッズ アンド メカニズムス、リ
ポソーム中、エム.オストロ編、マルセル デッカー
インコーポレーテッド、ニューヨーク、第27〜51頁
[Deamer and Uster,1983,Li
posomePreparation:Methods
and Mechanism,inLiposome
,ed.M.Ostro,Marcel Dekke
r,Inc.,NY,pp.27−51]を参照のこ
と。)。リポソーム調製に関する元来の方法(バングハ
ムら、1965年、ジャーナルオブ モレキュール バ
イオロジー 13:238−252[Banghame
t.al.,J.Mol.Biol.13:238−2
52]は、有機溶媒中にリン脂質を懸濁させ、そして次
に反応容器中にリン脂質の粘稠な沈殿物を残して乾燥す
るまで蒸発させることを含むものであった。次に水性相
の適当な量が添加され、混合物が「膨潤」し、そしてマ
ルチラメラベシクル(以下MLVと呼称する。)から成
る生成リポソームが、機械的手段により分散させられ
た。生成した膜二重層の構造は、脂質の疎水性(非極
性)「テール」が二重層の中心へ向って配向し、一方親
水性(極性)「ヘッド」が水性相へ向って配向したよう
なものとなっている。この技法は、パパハジョプーロス
とミラー[papahadjopoulos and
Miller](1967年、バイオヒミカ エトバイ
オフィジカ アクタ 135:624−638[196
7,Biochim.Biophys.Acta.13
:624−638])によって述べられた音波処理さ
れた微小なユニラメラベクシル(以下SUVと呼称す
る。)への発展の基礎となった。しかしながら、MLV
とSUVの双方ともモデルシステムとしては限界がある
ものであった。
【0003】捕捉容量ないしは内包能を増大させる試み
において、リン脂質二重層からなるリポソームの調製に
関するいくつかの方法が発展してきてはいるが、どの方
法も、有機溶媒の使用を必要としている。これらのいく
つかの方法を以下に簡単に記す。内包能を増加させるた
めに、リポソーム前駆体すなわちミセル、すなわち、極
性ヘッド基が水性相に指向するように配向された脂質分
子の単一層によって囲まれた水性相を含むベシクルを最
初に形成する方法が提案されている。リポソーム前駆体
は、内包されるべき水性溶液を有機溶媒中の極性脂質の
溶液中へ添加し、そして音波処理することで形成され
る。このリポソーム前駆体は、次に、過剰の脂質の存在
下第二の水性相中へ乳化させられ、そして蒸発させられ
る。脂質二重層によって内包された水性相から成る、生
成リポソームは水性相中に分散させられる(エム、シュ
ナイダー[M.Schneider]に対して1980
年9月23日に発行された米国特許第4,224,17
9号を参照のこと。)。内包能を最大にするための他の
試みにおいて、パパハジョプロース(1980年11月
25日発行の米国特許第4,235,871号)は、逆
相蒸発ベシクル[reverse−phase eva
poration vesicle](以下、REVと
呼称する。)としてもまた知られているオリゴラメラ脂
質ベシクルを形成するための「逆相蒸発方法[reve
rse−phase evaporation pro
cess]」を述べている。この方法によると、内包さ
れるべき水性脂質は、有機溶媒中の極性脂質混合物へと
添加される。次に均質な油中水[water−in−o
il]型エマルジョンが形成され、そしてゲルが形成さ
れるまで有機溶媒が蒸発させられる。ゲルは次に、水性
媒体中のゲル様混合物を分散させることにより、懸濁液
へ転化される。生成されたREVは、多くのユニラメラ
ベクシル(ラージユニラメラベクシル、LUV)と、大
きな内的水性空間を有するわずか二、三の同中心的二重
層によって特徴づけられるわずかのオリゴラメラベシク
ルから成る。薬剤供給系へのリポソームの使用の可能性
に関しては、多くの記述がある。例えば、イゥ−ヤァ
ラーマンとエリザベス エイ.セルニー[Yeuh−E
rhRahman and Elizabeth A.
Cerny]に対して1976年11月23日に発行さ
れた米国特許第3,993,754号や、バリーディ
ー.シェアーズ[Barry D.Sears]に対し
て1979年3月20日に発行された米国特許第4,1
45,410号を参照されたい。リポソーム薬剤供給系
においては、医薬は、リポソーム形成の間に捕捉され、
次いで治療されるべき患者へと投与される。この医薬
は、水にあるいは非極性溶媒に可溶である。このような
記述の代表的なものは、パパハジョプーロスとスゾカ
[Szoka]に対して1980年11月25日発行さ
れた米国特許第4,235,871号およびエム.シュ
ナイダーに対して1980年9月23日に発行された米
国特許第4,224,179号である。生体内に使用す
るリポソームを調製する場合、(1)リポソームの調製
の間の有機溶媒を使用する必要性をなくすこと、および
(2)捕捉物質のより大きな容量と濃度が、一服用量当
りに供給されることが可能となるよう、内包能および捕
捉容量を最大化することが、有利となるであろう。
【0004】2 水溶性ステロール 種々のステロールとそれらの水溶性誘導体が、化粧用、
薬学用および診断学用の目的のために用いられている。
水溶性ステロールとしては例えば、分枝脂肪酸コレステ
ロールエステル、ステロールエステルおよびPEG−植
物ステロールが化粧用調製品において使用されている
(欧州特許出願第28,456号、米国特許第4,39
3,044号ならびにシュライダー、ドラッグ アンド
コスメティック インダストリー、1983年9月第
33頁および1983年10月第46頁[Schrad
er,Drug and Cosmetic Indu
stry,September 1983,p.33
and October 1983,p.46])。サ
ッカーとキューン[Thakkar and Kueh
n](1969年、ジャーナル・オブ・ファーマシュー
ティカル・サイエンス58(7):850−852[1
969,J.Pharm,Sci.58(7): 85
0−852)は、1〜5%濃度のステロイド非イオン性
界面活性剤、特に、エトキシ化コレステロール(すなわ
ち、PEG−コレステロール)の水性溶液を用いてのス
テロイドホルモンの安定化を開示している。しかしなが
ら、生体内での可溶化ステロイドホルモンの有効性ある
いは利用は示されていない。多くの水溶性コレステロー
ルが調製されそして生体液中のコレステロール値の測定
に関する水溶性標準として用いられている(米国特許第
3,859,047号、米国特許第4,040,784
号、米国特許第4,042,330号、米国特許第4,
183,847号、米国特許第4,189,400号お
よび米国特許第4,224,229号)。シニツズキー
ら[Shinitzky et.al.](1979
年、プロスィーデング オブ ザ ナショナル アカデ
ミー オブ サイエンスィズ オブ ザ ユナイテット
ステート オブ アメリカ 76:5313〜531
6[1979,Proc.Natl.Acad.Sc
i.USA76:5313〜5316]は低濃度のコレ
ステロールおよびコレステリルヘミサクシネートを含有
する組織培養培地中に腫瘍細胞を培養した。細胞膜内へ
のコレステロールまたはコレステリルヘミサクシネート
の取込みは、膜流動性を減少し、そして膜−脂質ミクロ
ビスコシティーを増加させた。コレステロールおよびそ
の他のステロールはまた、脂質二重層の物理的特性を変
えるためにリン脂質リポソーム膜内へ取込まれている。
例えば、最近の抜粋において、エレンズら[Ellen
s et.al.](1984年、バイオフィジィック
ス ジャーナル 45:70a[1984,Bioph
ys.J.45:70a]) はホスファチジルエタノ
ールアミンおよびコレステリルヘミサクシネートから成
る脂質ベシクルの安定性におけるH+ の効果について論
議している。事実、ブロッカホフとラムサミー[Bro
ckerhoff and Ramsammy](19
82年、バイオヒミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ
691:227〜232[1982,Biochim.
Biophys.Acta.])は、安定化する親水性
アンカーが供給されるならば二重層が完全にコレステロ
ールから成るもので構成され得ることを報告している。
マルチラメラおよびユニラメラコレステロールリポソー
ムは上述した周知の方法において、有機溶媒中に分散さ
れたコレステロール誘導体(すなわち、コレステロール
ホスフォコリン、コレステロール−ポリエチレングリ
コール、またはコレステロール−SO4 )を乾燥するま
で蒸発させ、反応容器中に沈殿した脂質フィルムを残す
ことで調製された。この脂質フィルムはマイクロチップ
を有する超音波ホモジナイザーを用いて2ml水下で音
波処理された。マルチラメラベシクルの形成には10分
間の音波処理が必要であり、一方スモールユニラメラベ
クシルの形成には4時間の音波処理が必要であった。こ
のマルチラメラリポソーム生成懸濁液は乳白色で、一方
ユニラメラリポソームの懸濁液は透明であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、水溶性
活性物質のより高い服用量の投与を提供するためおよび
水不溶性の活性物質の投与を容易とするために、生体内
投与に適したステロールベシクルへ生物学的活性物質を
有効に捕捉する方法は、これまでに明らかとはされてお
らず、これらの方法を提供することが本発明の課題であ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、ステロールの
有機酸誘導体の塩形態からなる二重層からなるリポソー
ム中への種々の化合物の捕捉方法である。即ち本発明
は、(1)(a)有機溶媒中に水不溶性化合物を溶解
し、(b)該有機溶媒を除去して水不溶性化合物で構成
されるフィルムを残し、(c)閉鎖されたベシクルを形
成し得るステロールの有機酸誘導体の塩形態を完全に閉
鎖されたベシクルを形成するのに十分な量で水性相に添
加し、混合物を振盪することによって得られるマルチラ
メラベシクルのステロールリポソームの乳白色の懸濁液
もしくは該乳白色の懸濁液を、さらに音波処理して得ら
れるユニラメラベシクルの懸濁液を上記フィルムへ添加
する、ことからなるステロールベシクル中への水不溶性
化合物の捕捉方法、 (2)(a)水不溶性化合物および水性相中で二重層を
形成し得るステロールの有機酸誘導体の塩形態を、有機
溶媒中に共溶解させ、(b)該有機溶媒を蒸発させて、
上記化合物およびステロールの有機酸誘導体の塩形態を
含有するフィルムを残し、(c)水性相を該フィルムに
添加し、そして完全に閉鎖されたマルチラメラベシクル
の乳白色の懸濁液が形成するように振盪する、ことから
なるステロールベシクル中への水不溶性化合物の捕捉方
法、および (3)ユニラメラベシクルを形成するために、乳白色の
懸濁液をさらに音波処理することを有するものである上
記(2)記載の方法、に関するものである。
【0007】化合物の捕捉は、本明細書において、ステ
ロール二重層内への水不溶性化合物の捕捉として定義さ
れる。本発明のステロールリポソームは、捕捉した化合
物の生体内投与に特に有用であり、この場合、ステロー
ルの有機酸誘導体の生体適合性塩形態がリポソームの調
製に用いられるべきである。実際、生体内投与に関し
て、ステロールの有機酸誘導体のトリス(ヒドロキシメ
チル)アミノメタン塩(トリス−塩)形態がベシクル二
重層構成成分として特に有用である。ステロールベシク
ルを調製する方法は、水性緩衝溶液に、水性成分を捕捉
する完全に閉塞された二重層を形成するのに十分な量
の、閉塞二重層を形成し得るステロールの有機酸誘導体
の塩形態を添加することを包含するものである。マルチ
ラメラベシクルの懸濁液はこの混合物を振盪することに
よって形成される。水性緩衝溶液が溶液中に該塩の対イ
オンをも含んでいるとすると、ベシクルの形成は促進さ
れる。さらにまた、ステロールの有機酸誘導体の解離化
塩形態が中性pHで負に帯電されるとすると、水性緩衝
溶液は本質的に二価または多価カチオンが存在しないも
のとされるべきである。同様にステロールの有機酸誘導
体の解離化塩形態が中性pHで正に帯電されるとする
と、水性緩衝溶液は本質的に二価または多価アニオンが
存在しないものとされるべきである。懸濁液へのエネル
ギーの適用、例えば音波処理、またはフレンチ加圧セル
(フレンチプレス[French Press])を通
してのもしくは適当な孔径を有する多孔性フィルターを
通してのベシクルの押出しは、マルチラメラステロール
ベシクルをユニラメラベクシルへと転化させるであろ
う。本発明のステロールベシクル中へ水溶性化合物、部
分水溶性化合物または水不溶性化合物を捕捉させるため
には、いくつかの方法が可能である。ステロール二重層
中へ分配されるもの(例えば、水不溶性化合物)または
水溶性化合物のいずれであっても、ベシクル形成の間に
この物質をベシクル中に捕捉するために、ベシクル形成
以前に水性相へ添加することができる。あるいはまた、
水不溶性または脂溶性である化合物は、ベシクルが形成
された後に、ステロールベシクルの懸濁液に添加される
ことができ、この場合、化合物はステロール二重層中に
分配される。他の実施態様において、水溶性化合物およ
びステロールの有機酸誘導体の塩形態は、この双方を溶
解する(相互可溶とする)ために有機溶媒へ添加するこ
とができる。有機溶媒は、次に、水不溶性化合物とステ
ロール誘導体の均質な分配物を含有するフィルムを残し
て蒸発される。水不溶性化合物を捕捉するステロールリ
ポソームは、水性緩衝溶液がフィルムへ振盪しながら添
加された時に形成される。本発明のステロールリポソー
ムは、水不溶性の生物学的活性物質または水中にわずか
に溶ける生物学的活性物質を捕捉するのに用いられる場
合に、特に有利である。これは、水不溶性薬剤の生体内
投与を可能とし、そしてさらに、これは、服用量:容量
比の変化を許容するゆえに、高濃度の水不溶性化合物の
生体内投与を可能とするものである。本発明のステロー
ルベシクルは生体外的な診断学的検定法において用いら
れ得る。
【0008】本発明のステロールベシクルは、(1)容
易にかつ迅速に形成される、(2)リン脂質−MLVと
比較して高い内包能を有する、(3)生体内に投与され
た場合、放出されそして新陳代謝される生物学的に活性
物質なあるいは薬剤を捕捉することができる。生体内で
の捕捉物質がどのような経路をたどるかは、投与の様式
に依存する。本発明は、水不溶性化合物のリポソーム中
への捕捉、即ち閉塞した二重層を形成し得るステロール
の有機酸誘導体の塩形態よりなる二重層への捕捉方法に
関するものである。本発明のステロールリポソームは、
(1)ステロール二重層中へと分配する水不溶性化合物
を捕捉する、あるいはまた(2)水溶性化合物と水不溶
性化合物の双方を1つのリポソーム調製物中へ捕捉する
ように調製され得る。水性溶液中で完全に閉鎖された二
重層(すなわちリポソーム)を形成し得るステロールの
有機酸誘導体の任意の塩形態が本発明の実施において用
いられ得る。ステロールの有機酸誘導体の特定の塩形態
の好適性は、水溶性化合物が外部環境と接触してないた
めに、水溶性化合物を捕捉するその能力の如何にかかっ
ている。任意のリポソームの水性成分中での捕捉が生じ
たことを明確に測定するために、以下の基準が確立され
ている(セサとウェイシュマン、1970年 ジャーナ
ル オブ バイオロジー アンド ケミストリー 24
:3295[Sessa and Weissma
n,1970,J.Biol.Chem.245:32
95]を参照のこと。):(a)ゲル濾過によって検定
された際に捕捉された化合物と遊離の化合物が完全に分
離されていなければならない、(b)最外郭のベシクル
二重層と捕捉した化合物との間の疎水性相互作用または
荷電−荷電相互作用があってはならない。というのは、
この相互作用が分子ふるいによるリポソームからの遊離
化合物の分離を達成することを妨害し、それによって見
せかけの捕捉ないしは内包能を不自然に増加させるため
である。この可能性を回避するために、あらかじめ形成
されたリポソームの懸濁液に添加された水溶性化合物
が、あらかじめ形成されたリポソームと相互に溶出しな
いことを示すべきである。(c)洗浄剤あるいは他の膜
摂動剤の使用によるゲル濾過されたリポソームの破裂
は、リポソームピークと一致する位置から遊離分子で溶
出する位置への、捕捉された分子のゲル濾過パターンに
おけるシフトを誘導するものでなければならない。
【0009】一般に、有機酸の付加により変性され得る
任意のステロールが、本発明の実施において用いられ得
る。例えばこのようなステロールとしては、コレステロ
ール、ビタミンD、植物ステロール類(シトステロー
ル、カンペステロール、スチグマステロールおよび同様
のものが含まれるが、何らこれらに限定されるものでは
ない。)、ステロイドホルモン類および同様のものが含
まれるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
ステロールを誘導体化するのに用いられ得る有機酸は、
カルボン酸類、ジカルボン酸類、ポリカルボン酸類、ヒ
ドロキシ酸類、アミノ酸類およびポリアミノ酸類を含む
が、もちろんこれらに限定されるものではない。塩形態
は有機酸の水溶解性を高めるゆえに、任意の有機酸がス
テロールを誘導体化するために用いられ得る。しかしな
がら、有機酸部分自身が水溶性である場合には、ある利
点が得られる。このような水溶性有機酸部分は、酢酸、
プロピオン酸、酪酸、吉草酸および同様のものなどのよ
うな水溶性脂肪族カルボン酸類(注:炭素数4個までの
酸は水と混和する、炭素数5個の遊離酸は部分的に溶解
し、より長い鎖を有する遊離酸は実質的に不溶性とな
る。);マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン
酸、ピメリン酸、マレイン酸および同様のものなどのよ
うな水溶性脂肪族ジカルボン酸類(注:より短い鎖のも
のは、水中で幾分かより溶解する。水中での溶解性のボ
ーダラインは炭素数6ないし7で起こる。);そしてヘ
ミメリチン酸、トリメシン酸、サクシンイミドおよび同
様なものなどのような水不溶性芳香族ジカルボン酸類;
ポリカルボン酸類;グリコール酸、乳酸、マンデル酸、
グリセリン酸、リンゴ酸、洒石酸、クエン酸および同様
のものなどのような水溶性ヒドロキシ酸(注:カルボニ
ル基の第α位の炭素に付着した分枝鎖を有するα−ヒド
ロキシ酸は加水分解をより受けにくく、そしてそれゆ
え、本発明の実施において有利である。);ならびに任
意のアミノ酸類およびポリアミノ酸類が含まれるが、も
ちろんこれらに限定されるわけではない。有機酸は、周
知の方法(例えば米国特許第3,859,047号、米
国特許第4,040,784号、米国特許第4,04
2,330号、米国特許第4,183,847号、米国
特許第4,189,400号を参照のこと。)を用いて
エステルまたはエーテル結合を介してステロールの水酸
基へと結合されることができる。誘導体化ステロールの
塩形態は、ステロールの有機酸誘導体と塩の対イオン
(例えば、塩の遊離塩基)の双方を適当な揮発性溶媒中
に溶解し、そして該溶媒を蒸発あるいは同様の技法によ
り除去し、ステロールの有機酸誘導体の塩形態からなる
残留物を残すことにより調製され得る。用いられ得る対
イオンとしては、トリス([tris] トリス(ヒド
ロキシメチル)アミノメタン)、2−アミノ−2−メチ
ル−1,3−プロパンジオール、2−アミノエタノー
ル、ビス−トリスプロパン、トリエタノールアミンおよ
び同様なものが含まれ(もちろんこれらに限定されるわ
けではない。)、相応する塩が形成される。実際、ミコ
ナゾール遊離塩基および同様のものなどのようなイオン
化可能な生物学的活性剤の遊離塩基が対イオンとして用
いられ得る。
【0010】本発明で用いられるステロールリポソーム
は、二重層を形成し得るステロールの有機酸誘導体の塩
形態を、該誘導体化ステロールがベシクル(すなわち、
捕捉した水性成分を含有する完全に閉鎖した二重層)を
形成するのに十分な量存在するように、水性相へ添加す
ることにより調製され得る。この調製物は、次にマルチ
ラメラコレステロールベシクルの乳白色の懸濁液が形成
されるまで振盪される。好ましい実施態様においては、
水性相は、ベシクル形成を促進するように溶液中に該塩
を含むべきである。さらにまた、ステロールの有機酸誘
導体の解離塩形態が中性pHで負に荷電されている場合
には、水性緩衝溶液は本質的に多価カチオンの存在しな
いものでなければならない。同様に、有機酸誘導体の解
離塩形態が中性pHにおいて正に荷電されている場合に
は、水性緩衝溶液は、本質的に多価アニオンの存在しな
いものでなければならない。マルチラメラベシクル形成
に関する報告された方法(例えば、ブロッカホフとラム
サミー、1982年、バイオヒミカ・エ・バイオフィジ
カ・アクタ 691:227〜232[Brocker
hoff and Ramsanny,1982,Bi
ochim.Biophis.Acta.691:22
7−232]のリン脂質ベシクルまたはコレステロール
リポソーム)との完全な差異として、本発明のステロー
ルマルチラメラベシクルの形成に関する方法は、有機溶
媒の使用を必要としない。さらにまた、ブロッカホフと
ラムサミーの方法(上記)とは異なり、ステロールマル
チラメラベシクルを形成するために音波処理は必ずしも
必要ではない。事実、本発明のステロールマルチラメラ
ベシクルの乳白色の懸濁液の音波処理、あるいは後に続
く音波処理を伴なうフレンチプレス(エスエルエム−ア
ミンコ[SLM−Aminco]、アラバマ、イリノイ
州)の使用は、マルチラメラステロールベシクルの乳白
色の懸濁液をユニラメラステロールベクシルの透明な懸
濁液へと転化するために用いることができる。同様に直
径100nmに等しいあるいはこれ以下の孔径を有する
フィルターを通しての適当な圧力下でのマルチラメラス
テロールベシクルの多段階押出しは、ユニラメラステロ
ールベクシルを得るために用いることが可能である。こ
の押出し技法は、「ユニラメラベクシル調製のための押
出し技法[Extrusion Techniquef
or producing Unilamellar
Vesicles]」に関するキューリスら[Cull
is et al.]によって1984年6月20日に
出願された同時係属出願一連番号第622,690号中
に詳細に述べられており、参照されたい。
【0011】先に説明したようにステロールの任意の有
機酸誘導体のトリス−塩形態は、本発明の実施において
有効に用いられる。例をあげると、例えばステロールヘ
ミサクシネートまたはステロールヘミサクシネート類の
混合物などのような、ステロールヘミジカルボン酸のト
リス−塩形態は、生体内に投与されるステロイドリポソ
ームのベシクル二重層を形成するのに特に有用である。
例えば、コレステロールヘミサクシネートを用いた場
合、2.5〜70μmolの、トリス−塩形態が、トリ
ス−HCl[Tris−HCl](トリス(ヒドロキシ
メチル)アミノメタン ハイドロクロライド)を含有す
る2.0mlの水性緩衝溶液へベシクルを形成するよう
に添加される。この場合、水性緩衝溶液は本質的に二価
または多価カチオンの存在しないものでなければならな
い。本発明によると、水不溶性化合物あるいはわずかに
可溶な化合物の、ステロールの有機酸誘導体の塩形態か
ら構成されるリポソーム中への捕捉は、いくつかの方法
によって達成されることができる。 (1)水不溶性化合物は、ステロールの有機酸誘導体の
適当な塩形態を用いて上記したようにして調製されたス
テロールリポソーム(マルチラメラステロールベシクル
またはユニラメラステロールベクシルのいずれか)の懸
濁液へ添加されることができる。該化合物は、ステロー
ル二重層へ分配されるゆえ、リポソーム中へ捕捉され
る。この実施態様は通常以下のように実行される。すな
わち、水不溶性化合物は適当な有機溶媒中に溶解され、
続いて蒸発が行なわれ、フィルムすなわち該化合物の残
留物を残すものである。そして、予め形成されたステロ
ールリポソームの水性懸濁液が該残留物へ添加された
際、該残留物はステロールリポソームの二重層中に捕捉
される。好ましい実施態様においては、ユニラメラステ
ロールベクシルが用いられるべきである。マルチラメラ
ステロールベシクルが用いられた場合には、水不溶性化
合物はリポソームの最外殻の二重層中に捕捉され、不変
化の最内殻の二重層を残すこととなり、ステロール成分
を不必要に使用するという結果に終るためである。 (2)水不溶性化合物とステロールの有機酸誘導体の塩
形態は双方とも有機溶媒中に共溶解することができ、続
いて、蒸発が行なわれ、水不溶性化合物とステロール誘
導体との均質な分配物からなるフィルムを残すものであ
る。捕捉した化合物を含有するマルチラメラステロール
ベシクルの懸濁液が、振盪を行ないながら該フィルムに
水性相を加えることによって形成される。このマルチラ
メラベシクルは前記したようにユニラメラベクシルに転
化されることができる。 (3)水溶性化合物または水不溶性化合物は、ステロー
ルベシクルの調製において用いられる水性相中に該化合
物を添加することで、ステロールリポソーム中に捕捉さ
れることができる。すなわち、該化合物は、水性相に、
ステロールの有機酸誘導体の塩形態を添加する前にまた
は同時に添加され得る。この場合、水不溶性化合物は、
ベシクル形成の間にこれが二重層中へ分配された際に捕
捉されたものとなり、一方水溶性化合物は、ベシクル形
成の間にステロールベシクルの水性成分中に捕捉された
ものとなる。いずれの場合も、マルチラメラベシクルは
前記したようにしてユニラメラベクシルに転化されるこ
とができる。 (4)もし生物学的活性物質が、イオン化され得るもの
である場合、生物学的活性物質の遊離塩基は、ステロー
ルの有機酸誘導体の塩形態を調製するための対イオンと
して用いられ得る。ステロールリポソームは、ステロー
ルの有機酸誘導体の生物学的活性物質−塩形態を用い
て、本明細書において前述した任意の方法によって調製
され得る。例えば、抗真菌性化合物であるミコナゾール
の遊離塩基は、本発明のこの実施態様において塩誘導体
を形成するために用いられ得る。 以上述べた4つの方法のいずれかを用いることで、水溶
性化合物および水不溶性化合物の双方が1つのステロー
ルリポソーム調製物中に捕捉され得る。
【0012】本発明のステロールベシクルを用いての水
不溶性化合物の捕捉に関して上記された方法によれば、
いったん二重層中へ水不溶性化合物が分配すれば、ベシ
クルを完全な形にとどめておく必要はない。実際、ひと
たび化合物が二重層中へ分配すると、ベシクルは、捕捉
した水性の化合物の漏出ないしは放出を導きながら撹乱
ないしは崩壊されることが考えられ得る。このような
「漏れやすい」ベシクルは捕捉した水不溶性化合物を搬
送するためには用いることができるが、水溶性物質の内
包ないし搬送には用いるべきではない。本発明の一実施
態様によると、ステロールリポソームは、コレステロー
ルヘミサクシネートのトリス−塩形態を用いて以下のよ
うにして調製される:コレステロールヘミサクシネート
のトリス−塩形態4.5〜200mgが0.01Mトリ
ス−HCl、0.14M NaClを含有する水性緩衝
溶液1ml当りについて添加される。混合物は振盪され
そしてコレステロールヘミサクシネートマルチラメラベ
シクルの乳白色懸濁液が形成される。ベシクルは遠心分
離によってペレット化することができ、そして水性緩衝
溶液を用いて繰返し洗浄される。コレステロールヘミサ
クシネートマルチラメラベシクル(CHS−MLV)の
懸濁液はコレステロールヘミサクシネートユニラメラベ
クシル(CHS−SUV)を形成するために、音波処理
(例えば浴型音波処理器において)され得る。あるいは
また、CHS−MLVは、40000psiでフレンチ
圧力ふるい(フレンチプレス)を通して濾過させる。も
しくはCHS−MLVは300〜400paで2つの1
00nmヌクレオポア[Nucleopore](商標
名)フィルターを通過させて,CHS−SUVを形成す
る。コレステロールヘミサクシネートベシクル(MLV
かSUVのいずれか)は2価のカチオンの存在下におい
て不安定である、すなわち、2価のカチオンにさらすこ
とで、捕捉した水性成分および水溶性化合物を放出す
る。これゆえ、ベシクルの調製においてあるいは貯蔵の
間に用いられる水性媒体は、本質的に2価のカチオンの
存在しないものであるべきである。
【0013】本発明の方法により捕捉される化合物は、
種々の方法で用いることができる。例えば、化合物が生
物学的活性物質である場合、ステロールリポソームに捕
捉された化合物は、生体内に投与され得る。これは、通
常、水溶液中に不溶またはほとんど溶けない生物学的活
性物質の生体内投与を容易にする。ステロールの有機酸
誘導体の塩形態から構成されたリポソーム中への捕捉
は、より高い服用量:容量比でこのような不溶性化合物
の投与を容易なものにし得る。実際、本発明のステロー
ルベシクルは、該ベシクルが生体内供給のための1ない
しそれ以上の生物学的活性物質を捕捉するのに用いられ
得るゆえ、生体内で特に有利に使用される。捕捉した作
用物質の生体内でどのような経路をたどるかは、投与の
経路または様式により変ってくる。例えばステロールリ
ポソームに捕捉された作用物質が静脈内に投与された場
合、作用物質の生体内におけるクリアランスは、捕捉さ
れていない作用物質、またはリン脂質から構成された従
来のリポソーム(すなわち、MLV、SUV、REV、
LUV)中に捕捉された作用物質とは異なる経路を伴
う。一方、ステロールリポソームに捕捉された作用物質
の筋内投与は、該作用物質の生体内における持続された
放出をもたらす。
【0014】実質的に任意の生物学的活性物質が、本発
明のステロールリポソーム中へ捕捉されることができ
る。このような作用物質としては、例えば抗細菌性物
質、抗ウィルス性物質、抗真菌性物質、抗寄生虫性物
質、抗腫瘍性物質、抗代謝剤、ポリペプチド、ペプチ
ド、タンパク質、毒素、酵素、ホルモン、神経伝達物
質、糖タンパク、リポタンパク、免疫グロブリン、免疫
調節剤、血管拡張剤、染料、放射線標識、放射線不透過
性化合物、蛍光化合物、受容体結合分子、抗炎症剤、抗
緑内障剤、散瞳性化合物、局所麻酔剤、麻薬、ビタミ
ン、核酸、ポリヌクレオチドなどが含まれるが、もちろ
んこれらに限定されるものではない。2ないしそれ以上
の化合物を同時に捕捉することは、これらの化合物が相
補的なあるいは相乗的な効果をもたらす場合に特に望ま
しい。ステロールリポソームに捕捉された作用物質は、
接種もしくは注射(例えば、静脈内、腹腔内、筋内、皮
下、耳内、関節内、乳房内等)、局所適用(例をあげる
と、例えば眼、皮膚などのような部位上に、耳内に、あ
るいは創傷および火傷などのような傷の上に)、および
上皮または粘膜皮膚内面(例えば鼻の、口内の、膣の、
直腸の、胃腸の粘膜など)を通じての吸収などのような
(もちろんこれに限定されるわけではない。)任意の好
ましい経路によって生体内に投与される。これらの使用
の他の例において、ステロールリポソームに捕捉された
化合物は、他の脂質のベシクルないしリポソーム、ゲ
ル、オイル、エマルジョンおよび同様のものなど(もち
ろんこれらに限定されるわけではない。)のような広い
範囲の物質中へ取り込まれ得る。例えば、捕捉化合物を
有するステロールリポソームの懸濁液は、任意の種類の
リポソーム調製物(例えば、リン脂質のMLV,SU
V,LUV,REVなど)における成分である水性相に
添加される。これによってリン脂質リポソーム中へ上記
化合物を捕捉することができる。上記以外の他の使用に
ついては、調製物の特別の特性によっており、当業者が
容易に想像し得るものである。例えばこれらの二価カチ
オン感応性ゆえに、本発明のコレステロールヘミサクシ
ネートリポソームは、二価カチオンに対して感応性の指
示染料を捕捉することにより、生体外における比色的な
診断学的検定法に用いることができる。
【0015】本発明におけるステロールリポソームにお
いては、有機酸の塩形態などのような親水性部が付着さ
れており、例えばコレステロールあるいは他の脂質のな
どのようなステロールが、マルチラメラベシクル[mu
ltilamellar vesicle]またはスモ
ールユニラメラベシクル[small unilame
llar vesicle]の懸濁液の調製に用いるこ
とができる。本発明におけるステロールリポソームは、
有機溶媒を用いてあるいは用いずに調製され得る。これ
らのベシクル(小胞体)は、水溶性化合物、部分水溶性
化合物および水不溶性化合物を捕捉し得るが、水不溶性
化合物の捕捉において特に有利である。本発明における
ステロールベシクルは、生体内に[in vivo]投
与され得る生物学的に活発な化合物ないしは薬学的な化
合物の捕捉に特に有用である。あるいはまた、本発明の
ステロールリポソームは、生体外的に[in vitr
]に用いられ得る。例えば、本明細書中に述べられる
コレステロールヘミサクシネートリポソームは、生体外
において二価カチオン依存検定システムに用いられ得
る。
【0016】
【実施例】以下の参考例および実施例は、説明の目的の
ために与えられるものであり、本発明の範囲を限定する
ものではない。水溶性化合物を捕捉するコレステロールヘミサクシネー
トリポソーム 以下、アルセナゾIII 、イヌリンまたはクロムを捕捉す
るコレステロールヘミサクシネートリポソームの調製を
述べるものである。内包能および捕捉容量などのような
パラメーターが評価されている。このコレステロールベ
シクルのカルシウム依存不安定性が表示される。コレス
テロールヘミサクシネートベシクルの冷凍エッチング電
子顕微鏡像、X線回折像および電子スピン共鳴吸収につ
いて、また述べられている。 例1 コレステロールヘミサクシネートの種々の塩形態
を用いて調製されたリポソーム(参考例) 以下の文節は、コレステロールヘミクシネートの種々の
塩形態を用いてのCHSリポソームの調製を述べるもの
である。コレステロールヘミサクシネートのトリス−塩
形態(以下トリス−塩CHSと呼称する。)を含むすべ
ての例において、トリス−塩CHSは、シグマバイオケ
ミカルズ、セントルイス、ミズリー州[Sigma B
iochemicals,St.Louis,MO]か
ら購入され、精製されずに用いられたか、あるいは以下
のようにして合成されたもののいずれかであった。トリ
ス塩基の3.3モル溶液30mlが、エーテル中のコレ
ステロールヒドロゲン サクシネート(アイシーエス、
クリーブランド、オハイオ州[INC、Clevela
nd,Ohio])の67Mモル溶液1.5リットルに
添加された。得られた溶液は、しめった残留物となるま
で回転蒸発されそして12時間凍結乾燥された。得られ
たトリス−塩CHSは、酢酸エチルから3度再結晶化さ
れた。残留酢酸エチルは減圧下(0.1mmHg)56
℃に加熱することによって除去された。
【0017】例1−1 トリス−塩コレステロールヘミ
サクシネート−MLV トリス−塩CHS(54mg)が0.01M トリス−
HCl(pH7.3)、0.14M NaCl中のアル
セナゾIII(4.5mM、最終濃度)の溶液1mlに添
加された。CHS−MLVの乳白色の懸濁液が機械的振
盪によって形成された。このCHS−MLVは10,0
00×gで15分間遠心分離されて、ペレット化され、
そして得られたペレットは0.01Mトリス−HCl
(pH7.3),0.14M NaClの10mlを用
いて3度洗浄された。得られたペレットは、アルセナゾ
IIIの捕捉を示す赤色を呈していた。 例1−2 2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパン
ジオールコレステロール ヘミサクシネート−MLV コレステロールヘミサクシソート(50mg)の2−ア
ミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール塩が0.
01M 2−アミノ−2−メチル1,3−プロパンジオ
ール−HCl(pH7.3)、0.07M KCl,
0.07M NaCl中のアルセナゾIII(4.5m
M、最終濃度)の溶液1mlへ添加された。CHS−M
LVの懸濁液はガラス製ビーズを用いての旋回混合によ
って、形成された。このCHS−MLVは10,000
×gで15分間遠心分離されて、ペレット化され、そし
て得られたペレットは例1−1で述べた様にして3度洗
浄された。得られたペレットは、アルセナゾIIIの捕捉
を色示していた。例1−3 2−アミノエタノールコレステロールヘミサ
クシネート−MLV コレステロールヘミサクシネート(50mg)の2−ア
ミノエタノール塩が0.01M 2−アミルエタノール
−HCl(pH7.3),0.07M KCl,0.0
7M NaCl中のアルセナゾIII(4.5mM、最終
濃度)の溶液1mlへ添加された。CHS−MLVの懸
濁液はガラス製ビーズを用いての旋回混合によって形成
された。このCHS−MLVは10,000×gで15
分間遠心分離されて、ペレット化され、そして得られた
ペレットは、上記例1−1において述べる様にして3度
洗浄された。得られたぺレットは、アルセナゾIIIの捕
捉を示す赤色を呈していた。
【0018】例1−4 ビス−トリス−プロパンコレス
テロールヘミサクシネート−MLV コレステロールヘミサクシネート(50mg)のビス−
トリス−プロパン塩が0.01Mビス−トリス−プロパ
ン−HCl(pH7.3),0.07M KCl,0.
07M NaCl中のアルセナゾIII(4.5mM、最
終濃度)の溶液1mlへ添加された。CHS−MLVの
懸濁液はガラス製ビーズを用いての旋回混合によって形
成された。このCHS−MLVは10,000×gで1
5分間遠心分離されて、ペレット化され、そして得られ
たペレットは、例1−1において述べる様にして3度洗
浄された。得られたぺレットは、アルセナゾIIIの捕捉
を示す赤色を呈していた。 例1−5 トリエタノールアミン コレステロール ヘ
ミサクシネート−MLV コレステロールヘミサクシネート(50mg)のトリエ
タノールアミン塩が0.01Mトリエタノールアミン−
HCl(pH7.3),0.07M KCl、0.07
M NaCl中のアルセゾIII(4.5mM、最終濃
度)の溶液1mlへ添加された。CHS−MLVの懸濁
液は10,000×gで15分間遠心分離され、ペレッ
ト化され、そして得られたペレットは例1−1に述べる
様にして3度洗浄された。得られたぺレットは、アルセ
ナゾIIIの捕捉を示す赤色を呈していた。例1−6 ミコナゾールコレステロールヘミサクシネー
ト−MLV ミコナゾールの遊離塩基が以下のようにして調製され
た。すなわち、NaOHの水溶液がエーテル中のミコナ
ゾール−ニトレートの懸濁液中へ滴定さた。エーテル相
は、採取され、そしてエーテルは、ミコナゾール遊離塩
からなるオイルを残して蒸発される。該オイルは次にコ
レステロールヒドロゲンサクシネートを含有するエタノ
ールへ添加された。エタノールは、ミコナゾールコレス
テロールヘミサクシネートの塩形態からなるフィルムを
残して蒸発される。次に、該フィルムに食塩水が添加さ
れる。延長的な旋回混合の後に、ベシクルが溶液中に観
察された。 例1−7 音波処理により調製されたコレステロールヘ
ミサクシネート−SUV アルセナゾIIIを用いない以外は、上記例1−1、1−
2、1−3、1−4、および1−5述べたものと同様に
して、CHS−MLVが調製された。それぞれのベシク
ルの最終ペレットは、それが調製された緩衝溶液の2m
l中へ再懸濁され、そして乳白色の懸濁液が透明とな
り、CHS−MLVのCHS−SUVへの転化を示すま
で浴型音波処理器において音波処理された。 例1−8 押出し技法により調製されたコレステロール
ヘミサクシネート−SUV CHSが、100mg/mlの濃度で、10mMヘペス
[HEPES]、150mM NaCl(pH7.5)
中へ分散させられた。この物質は、30nmヌクレオポ
アフィルターを通して10回押出され、CHS−SUV
を得た。
【0019】例2 コレステロールヘミサクシネートM
LV中へのイヌリンの捕捉(参考例) 捕捉される作用物質として 3H−イヌリンを取込んだコ
レステロールヘミサクシネートマルチラメラベシクル
(CHS−MLV)は、以下の様にして調製された。3
H−イヌリン(1.0mCi/ml、ニューイングラン
ド ヌクレア[New England Nuclea
r]、ボストン、マサチューセッツ州)は、0.01M
トリス−HCl(pH7.3)、0.14M NaC
l 2ml中へ溶解された。次にトリス−塩CHS40
mgが該溶液へ添加され、そして得られた混合物は振盪
により機械的に分散された。マルチラメラベシクル形成
を示す乳白色の懸濁液が形成された。この懸濁液は、2
時間静置され、この時間経過時に懸濁液は0.01M
トリス−HCl(pH7.3)、0.14M NaCl
を用いて最終濃度の10mlへと希釈された。1つの1
0μlアリコット([aliquot]、分割物)の放
射能は、該アリコットをシンチレーション流体(オムニ
フルア[Ommiflour](ニューイングランド
ヌクレア、ボストン、マサチューセッツ州)40g、ト
ルエン6l、エチレングリコールモノエチルエーテル4
l)10ml中に添加し、そして0.400にウィンド
ウをセットしてベックマンL6800リクイド シンチ
レーションカウンター[Beckman L6800
liquid scintilation count
er]を用いて放射能測定をすることにより、24,6
25cpm/10μlであると測定された。1分間あた
りのカウント数(cpm)における放射能はケンチング
補正のH#方法[the H# method of
quench correction]を適用すること
によって1分間あたりの崩壊に変換された(ホロック、
ディーエル ザ ナンバー コンセプト、ベックマン
インストルメンツ、1977[Horrock,D.
L. The Number Concept,Bec
kman Instruments,1977])。こ
のCHS−MLVは次に10,000×gで15分間遠
心分離されてペレット化された。得られたペレットは該
ペレットを0.01Mトリス−HCl(pH7.3)、
0.14M NaClを用いて最終濃度の10ml中に
再懸濁させ、そして10,000×gで15分間遠心分
離して再ペレット化することによって3度洗浄された。
ベシクルの洗浄されたペレットは、最終容量10mlと
なるように0.01Mトリス−HCl(pH7.3)、
0.14M NaCl中へ再懸濁された。10μlアリ
コットの放射能は3,442cpm/10μlであると
測定された。それゆえ、最初の 3H−イヌリンの全体の
14%がCHS−MLV中に捕捉された。
【0020】例2−1 コレステロールヘミサクシネー
ト−MLVおよび卵ホスファチジルコリン−MLVにお
けるイヌリン内包能 コレステロールヘミサクシネートの変動濃度からなるM
LV中に捕捉されたイヌリンの内包能が、卵ホスファチ
ジルコリンの変動濃度からなるMLV中に捕捉されたイ
ヌリンの内包能と比較された(注.任意のリポソームに
関する内包能は、二重層によって隔離された水性成分の
画分と定義され、そしてそれはパーセンテージで表わさ
れる。従来技術の項参照のこと。)。卵ホスファチジル
コリン(EPC)またはトリス−塩CHSのいずれかで
構成されるマルチラメラベシクルは、内包能を比較する
ために全く同じ処方を用いて調製された。従って 3H−
イヌリン(217.0mCi/mg)5μlを有する。
0.01M トリス−HCl(pH7.3)、0.14
M NaCl緩衝溶液2.0ml中の40、80、16
0、320もしくは400mgの濃度のトリス−塩CH
Sが旋回混合され、そして2時間放置され、捕捉された
化合物として 3H−イヌリンを有するCHS−MLVが
形成された。0.01M トリス−HCl(pH7.
3)、0.14M NaCl緩衝溶液の追加的な3ml
が該懸濁液に添加され、懸濁液は室温下1晩放置され
た。次に、0.01M トリス−HCl(pH7.
3)、0.14M NaCl緩衝溶液約3.0mlが全
容量を10mlまでにするために添加された。卵ホスフ
ァチジルコリン(アバンティ、バーミンガム、アラバマ
州[Avanti,Birmingham,AL])か
ら構成されるマルチラメラベシクル(EPC−MLV)
は以下の処方により調製された。40、80、160、
320もしくは400mg/mlのEPCが、このリン
脂質を完全に溶解するのに十分な量のクロロホルム中に
懸濁された。クロロホルムは乾燥するまで蒸発され、試
験管にワックス状の沈殿物が残された。次に 3H−イヌ
リン(217.0mCi/mg)5μgを有する0.0
1M トリス−HCl(pH7.3)、0.14M N
aCl緩衝溶液2.0mlが添加され、この混合物は
「膨張」させられ、得られたEPC−MLVは延長され
た旋回混合により分散させられた。追加的な0.01M
トリス−HCl(pH7.3)、0.14M NaC
l緩衝溶液3mlが該懸濁液に添加され、懸濁液は室温
下一晩放置された。次に0.01Mトリス−HCl(p
H7.3)、0.14M NaCl緩衝溶液を用いて、
全容量を10mlとした。CHS−MVSおよびEPC
−MLVによる 3H−イヌリン内包能が以下のようにし
て測定された。成分のそれぞれ最初の混合物の20μl
における放射能が、前記したようにシンチレーションカ
ウンティングによって計測された。形成の後、リポソー
ムは、懸濁液を10,000×gで10〜20分間遠心
分離することによってペレット化され、それぞれのペレ
ットは、0.01M トリス−HCl(pH7.3)、
0.14M NaCl緩衝溶液10ml中で4度洗浄さ
れ、そして最終容量10mlの0.01Mトリス−HC
l(pH7.3)、0.14M NaCl緩衝溶液へ再
懸濁された。この最終的に洗浄されたサンプルの20μ
lアリコットの放射能が測定された。この最終的なサン
プルにおいて計測された最初の放射能の分数が、脂質ベ
シクル中に捕捉された 3H−イヌリンを表わした。表1
に示すように、内包能における増加は、CHS濃度にお
ける増加に比例しているが、より重要なことは20〜2
00mg/ml CHSを用いて調製されたCHS−M
LVは、同濃度のリン脂質を用いて調製されたEPC−
MLVのものよりも、より高いイヌリン内包能を示した
ことである。
【0021】 表 1 リン脂質ベシクルとコレステロールヘミサクシネートベシクルに おけるイヌリンの内包能の比較 脂質の濃度(mg/ml) 捕捉された 3H−イヌリン(%) EPC−MLV a CHS−MLV b 20 2 10 40 4 14 80 5 29 160 8 38 200 11 60 ────────── a 卵ホスファチジルコリン マルチラメラ ベシクル b コレステロール ヘミサクシネート マルチラメラベシクル CHS−MLVの内包能が、水性緩衝溶液中でCHSが
遊離 3H−イヌリンと接触した時間の量によって影響さ
れるか否かを測定するために、CHS−MLVが以下の
ようにして調製された。トリス−塩CHS80mgある
いは300mgが 3H−イヌリン(217mCi/mg
比放射能)10μlを含有する0.01M トリス−H
Cl、0.14M NaCl緩衝溶液20ml中に旋回
混合され、これによりそれぞれ40mg/mlおよび1
50mg/ml CHSの濃度を用いたCHS−MLV
を形成した。2つの脂質濃度のそれぞれ5つのサンプル
が調製され、CHS−MLV懸濁液は、0.01M ト
リス−HCl(pH7.3)、0.14M NaCl緩
衝溶液2.0ml中で室温下放置された。以下の時間間
隔、すなわち0、15、30、60および120分で、
サンプルは同じ緩衝溶液を用いて10ml容量とされ
た。それぞれのサンプルの最初の10μlアリコット
は、前記したようなシンチレーションカウンティングの
ために取り除かれた。サンプルは次に10,000×g
で10分間遠心分離され、それぞれのペレットは緩衝溶
液10ml中で4度洗浄された。最終的なペレットは最
終容量10mlへと緩衝溶液中へ懸濁され、それぞれの
最終的サンプル10μlアリコットの放射能が、それぞ
れの時間点での最初のサンプルの放射能と比較された。
この結果は、試験された脂質のいずれの濃度においても
5つの時間点に関する内包能における顕著な違いが全く
なかったことを示すものであった。これは、調製物に対
して添加された最初の 3H−イヌリンの約12%もしく
は20%の捕捉は、それぞれCHS40mg/mlもし
くは150mg/mlでの接触時間に関係なく起ること
を示している。これは、卵ホスファチジルコリンを用い
て調製された従来のMLVとは異なり、「膨脹時間」
は、CHS−MLVの調製においては不必要であること
を示すものである。
【0022】例3 コレステロールヘミサクシネート−
SUVにおけるイヌリンの捕捉(参考例) 捕捉された作用物質として 3H−イヌリンを含有するコ
レステロールヘミサクシネートから構成されたスモール
ユニメラベシクル(CHS−SUV)は次のようにして
調製された。1.0mCi/ml 3H−イヌリン(ニュ
ーイングランドヌクレア、ボストン、マサチューセッツ
州)の100μlが、トリス−塩CHS100mgある
いは200mgのいずれかが添加される0.01M ト
リス−HCl(pH7.3)、0.14M NaCl
2.5ml溶解された。ガラス製ビーズを用いての旋回
混合の後、混合物は、ビーズからピペット中へ吸引さ
れ、そして透明となるまで、すなわち約2時間、音波処
理された。懸濁液の透明化は、CHS−MLVのスモー
ルユニラメラベシクルへの転化を示す。CHS−SUV
懸濁液中のCHSの最終濃度はそれぞれ40mg/ml
および80mg/mlであった。イヌリン捕捉を明らか
とするために(発明の詳細な説明の項参照)、CHS−
SUVは、以下のようなゲル濾過により未捕捉のイヌリ
ンから分離された。それぞれのリポソーム懸濁液は、
0.01M トリス−HCl(pH7.3)、0.14
M NaCl緩衝溶液で平衡化され校正された、分子量
40,000〜15,000,000ドルトンの操作範
囲を有するバイオーゲル A−15m[Bio−Gel
A−15m]100〜200メッシュアガロースカラ
ム(バイオ−レッド ラボラトリーズ[Bio−Red
Laboratories]、リッチモンド、カリフ
ォルニア州)に別々に適用された。次にカラムから溶出
された1ml分画は採取されそしてそれぞれの分画の1
0μlアリコットの放射能が、前記したようにして測定
された。隔離されたイヌリンの存在しない透明な分離物
がゲル濾過によって得られ、これゆえCHS−SUV中
へのイヌリンの捕捉が示された。この分析は、イヌリン
の約1%がCHS−SUV中に捕捉されたことを示して
いた。
【0023】例4 コレステロールヘミサクシネートM
LV中へのクロムの捕捉(参考例) 捕捉された作用物質として51Crを取込むコレステロー
ルヘミサクシネートマルチラメラベシクルは、以下のよ
うにして調製された。トリス塩CHS 15.0μmo
l、40.0μmol、65.8μmol、100.0
μmol、175.0μmol、263.2μmol、
526.4μmolもしくは658.0μmolが51
r(ニューイングランド ヌクレア、ボストン、マサチ
ューセッツ州)の痕跡量を含有する、0.01M トリ
ス−HCl、0.14M NaCl、pH7.3 5m
lへ添加され、そして室温下で2時間放置され、捕捉し
たCrを含有するCHS−MLVの懸濁液が得られた。
【0024】例4−1 コレステロールヘミサクシネー
ト−MLV中へのクロムの内包能 例4において調製されたCHS−MLVの内包能を測定
するために、それぞれの調製物のサンプルが蒸溜水中で
3度煮沸された透析バッグ(トーマスサイエンティフィ
ス[Thomas Scientific]、カタログ
番号第3787−D22号、12,000ドルトンの分
子量除去)中へピペットにより入れられた。透析バッグ
中のサンプルは、ガンマカウンター(ティーエム アナ
リテック[Tm Analytic]、モデル番号第1
191号)にて最初に計測された。サンプルは次に、
1:150よりも大きい保持物:透析物比において同じ
0.01Mトリス−HCl、0.14M NaCl、p
H7.3緩衝溶液に対してそれぞれ20時間透析され
た。透析物は最初の6時間においては2時間毎に満たさ
れた。内包能は、残存した最初のカウントのパーセンテ
ージを計算することにより決定された。表2に示すよう
に、内包能における増加は、CHS濃度の増加に比例す
るものである。
【0025】 表 2 コレステロールヘミサクシネートベシクル中へのクロムの内包能 CHSの濃度(μmol) 捕捉された51Cr(%) 15.0 14.79 40.0 15.20 65.8 15.09 100.0 16.10 165.0 20.13 263.0 27.90 526.4 40.74 658.0 48.03
【0026】例4−2 コレステロールヘミサクシネー
ト中への捕捉容量:クロム捕捉およびコレステロールヘ
ミサクシネート濃度 例4−1において述べたようにして調製されたCHSベ
シクルの捕捉容量が、次の計算式、 を用いて捕捉容量を計算することによって、それぞれの
コレステロールヘミサクシネートの濃度に関して測定さ
れた。図1に図示された結果は、トリス−塩CHSの濃
度が増加するに従いより少ないクロム/モル(脂質)が
捕捉された。ゆえに、内包能における増加は、脂質濃度
における増加に比例しているが、捕捉容量は、脂質濃度
の増加に従い減少する。1つの点当りの試みの回数は、
それぞれの点の横のカッコ内に示す。
【0027】例5 コレステロールヘミサクシネートリ
ポソームの超微細構造(参考例) イヌリンが用いられない以外は例1−1において述べる
ようにしてコレステロールヘミサクシネートのトリス−
塩を用いて調製された、CHS−MLVおよびCHS−
SUVのサンプルが、凍結エッチング電子顕微鏡(凍結
エッチング法に関しては、プフェニンガーら、1975
年、ジャーナル オブ セル バイオロジーズ65:1
5〜28[Pfenninger et al,197
5,J.Cell Biol.65:15−28]を参
照のこと。)のために調製された。CHS−MLV凍結
エッチング化調製物の電子顕微鏡は、少なくとも1つの
ラメラによって結合された不連続単位、すなわちリポソ
ームないしは脂質ベシクルを見せるものであった。直径
800〜10,000nmの範囲にわたる、CHS−M
LVの大きさのかなりの不均質性があった。より大きな
ベシクルは、1つのあるいは2、3の外核ラメラを有す
るもの、および多くのラメラを有するものなどを含むい
くつかの分類に類別され得るものであった。より大きな
ベシクルの多くは、水性画室を示し得る、木目のような
外観を内部に有する実質的な空間を有していた。多くの
例において、小さなベシクルあるいは小さなベシクルの
群は、より大きなベシクルの内側にはっきりして、幾分
か遊離したもので、時々は4もしくは5層の深さであっ
た。このはっきりした「造巣[nesting]」は負
に帯電したリン脂質を用いて調製された従来のリポソー
ムにおいて普通に観察されるものである。時折、密着し
て並んだラメラのゾーンを観察することができた。これ
らは従来のリン脂質MLVのラメラとすべての点におい
て同様のものであった。調べられた音波処理されたサン
プルはまた、50nm〜500nmの範囲の多くの微小
な球状体を含んでいた。これらのベシクルはおそらくリ
ン脂質MLVの音波処理により調製されたSUVに相当
する。より微小なCHS−ベシクルは裂くことができな
いので内部またはこれらの成分ラメラの構造を識別する
ことは不可能であった。30nmフィルターを通過して
押出された(10回)、平均直径約65nmを有するC
HSベシクルが観察された。これはフレンチプレス法に
より調製された極端に小さい(平均直径約25nmまた
はそれ以下)CHSベシクルと対比される。
【0028】例6 コレステロールヘミサクシネートの
X線回折分析(参考例) 種々のCHS−MLV調製物のX線回折が、他のもの
(グルーナー、エス.エム、1977年、物理学博士論
文、プリンストンユニバーシティ、プリンストンニュー
ジャージー州 09540 アメリカ合衆国[Grun
er,S.M.,1977,phD thesis,P
rinceton University,Princ
eton NJ 09540 USA];レイノルズ、
ゼオ.ティー.,ミリック、ジェイ.アール.およびグ
ルーナー、エス.エム.、1978年、リバイズド サ
イエンティフィックインストラクションズ 49:12
41〜1249[Reynolds,Geo.T.Mi
lch,J.R.andGruner,S.M.,19
78,Rev.Sci.Instr.49:1241−
1249];テルコック、シー.ピー.ティー.、バリ
ー、エム.ビー.、ファーレン、エス.ビー.、キュー
リス、ピー.アール.およびグルーナー、エス.エ
ム.、1984年、バイオケミカリー、23:2696
〜2703[Tilcock,C.P.T.,Ball
y,M.B.,Farren,S.B.,Culli
s,P.R.and Gruner,S.M.,198
4,Biochem,23:2696−2703])に
述べられた2次元画像−増幅X線検知装置を用いて行な
われた。X線反復間隔は±0.5Åとして表わされた。
CHS分散液は、エポキシの栓により密封された1.5
mmのガラス製X線キャピラリー中に保たれた。標本は
ゆっくりとまたは活発に水和された。ゆっくりとした水
和に関しては、緩衝溶液は、シリンジを介してX線キャ
ピラリーの底部における乾燥CHS上へ積み重ねられ
た。このキャピラリーは次に、脂質水ペーストからの空
気泡を消すためにテーブルトップ遠心機中でしばらく遠
心分離された。キャピラリーは、次に密封されそして5
℃で少なくとも4時間平衡化された。活発な水和は、乾
燥CHSを緩衝溶液および2個のガラス製混合ビーズと
試験管中にて渦動することによって行なわれた。1つの
アリコットが次にX線キャピラリーへと移された。X線
回折は、水和されたCHSがマルチラメラ構造を形成し
ていることを示した。図2aおよび図2bは、それぞれ
68.9重量%および59.1重量%のCHSから成る
ゆっくりと水和された標本から得られた低角度回折を示
す。回折の最高4つまでの均等な間隔を保たれた秩序置
換[order]は視認でき、それぞれ68.1Åおよ
び79.8Å、反復、のマルチラメラ配列で一致してい
た。この秩序置換はシャープでかつよく分析されてお
り、格子がほとんど無秩序置換[disorder]を
含んでいないことを示していた。これらの濃縮されたC
HS標本は、視認出来る過剰な緩衝溶液を有しない均一
なペースト様外観を有し、水性含量の増加に従って反復
間隔が増加する事実と一致する。極めて高い水性濃度に
おいては、ゆっくりと水和されたCHS標本は、水和さ
れた脂質の頂部上に過剰な緩衝溶液の明らかに視認でき
る溜りを示す。こういうサンプル(全重量に対し20.
2%のCHS)からの回折は図2cに示される。より高
角度の回折ピークの広がることは、格子における少なか
らぬ無秩序置換を暗示するものである。回折における無
秩序置換は決定的な格子割当を困難とするが、図2cに
おいて示されたように、ラメラ適合がなされると、反復
は約86Åであり、脂質二重層間の広い水性空間を示唆
するものであった。ゆっくりした水和を用いる代わり
に、20.7%CHS標本が、乾燥脂質を緩衝溶液と旋
回的に混合することによって調製される場合、得られる
標本は、均一な乳白色の外観を有していた。図2dに示
すように、低角度回折は、鋭く限定された格子の形跡を
殆ど有さない広い散乱のバンドを示すものであった。同
様の回折特色が、ラメラ間の水性幅が広く変化したマル
チラメラ系から期待できる。希釈CHS分散液のX線回
折は、ラメラ間力が弱いマルチラメラ系から発生するも
のとして、最も矛盾なく解釈される。例えば希釈卵ホス
ファチジルコン分散液などのような、他の脂質系におい
ては、X線回折パターンは、重量的にほとんど脂質であ
る鋭く限定されたラメラ格子を示す(ランド、1981
年、アニュアル・レヴュー・オブ・バイオフィジックス
・アンド・バイオエンジニアリング 10:217〜3
14[Rand,1981,Annu.Rev.Bio
phys.Bioeng.10:217−314])。
この明確な格子反復は、脂質層分離の関数である格子電
位におけるかなり鋭い極小の結果である。電位対距離曲
線が浅いくぼみしか有していない場合には、弱いラメラ
間力および少なからぬ格子無秩序置換を予想するもので
ある。これはCHSベシクルでの場合であるようであ
る。図2dの標本は、図2aの68.1Å反復に比較さ
れる、約86Å反復を有している。このことは、過剰の
緩衝溶液の存在下において、CHSリポソームが脂質に
対する水の高い割合を有していることを示す。同様の結
果が、他の帯電脂質系において観察できる(ランド,1
981年,上記)。
【0029】例7 コレステロールヘミサクシネート
リポソームの電子スピン共鳴分析(参考例) 卵ホスファチジルコリン(アバンティ ポーラ リピッ
ズ[Avanti Polar Lipidsp]、バ
ーミンガム、アラバマ州)から調製されたマルチラメラ
ベシクルはスピン標識化され、そして本質的には前記し
たようにして調製された、同様にスピン標識化されたト
リス−塩CHS−MLVと比較された。EPC−MLV
の場合には、5、7、9、10、12または16ドキシ
ルステアレート(モレキュラープローブス[Molec
ular Probes]、ジャンクション シティ
オレゴン州)の1モルパーセントが、脂質40mgのク
ロロホルム溶液に添加され、そして得られた溶液は回転
蒸発によって薄いフィルムとなるまで乾燥された。次に
トリス−HCl緩衝溶液2mlを用いて、このフィルム
が完全に懸濁されるまで渦動することによりフィルムを
水和した。得られたEPC−MLVは分光分析の前に2
度洗浄された。CHS−MLVの場合には、エタノール
中の適当なスピン標識が、試験管側面に薄いフィルムを
形成するまで乾燥され、そしてここにトリス−塩CHS
粉末40mgおよびトリス−HCl緩衝溶液2mlが添
加された。この懸濁液は渦動され、そして得られたリポ
ソームは2度洗浄された。すべての電子スピン共鳴実験
は、アイビーエムインストルメンツ ER100D E
SR スペクトロメーター[IBM Instrume
nts ER100D ESR spectromte
r]を用いて行なわれた。秩序パラメーター[orde
r parameter](S)は、他の文献(グリッ
フィスとジスト、スピン ラベリング、ベルリナー、エ
ル.ジェイ(編)、アカデミック プレス、ニューヨー
ク、1976年中[Griffith and Jus
t in、Spin Labelling、Berli
ner、L.J(ed.)、Academic Pre
ss、N.Y.1976)に述べられるようにして算定
された。図3は、5、6、7、9、10、12または1
6ドキシルステアレートでこれらの調製物をスピン標識
化することによって決定されるCHS−MLVおよびE
PC−MLVの秩序パラメーター特性を示す。EPC二
重層に関しては、すでに報告されているように、二重層
中への炭素数の増加に伴い、秩序パラメーターが減少す
る。CHS二重層の超分子構造は、顕著に異なるもので
ある:すなわち、EPC二重層よりもCHS二重層が劇
的により剛直であるのみならず、CHS系は50番目か
ら90番目の炭素にかけて秩序が増大しており、以前に
報告されているものとは全く異なる物理的および化学的
二重層構造を示すものである。
【0030】例8 コレステロールヘミサクシネートリ
ポソームの等張膨脹(参考例) 以下の一連の実験において、コレステロールヘミサクシ
ネートおよびリン脂質のマルチラメラベシクルの等張膨
脹挙動が比較された。 (1) CHS−MLVは、0.01Mトリス−HC
l、0.1M KCl緩衝溶液2.0ml中のトリス−
塩CHS 40mgを用いて例1において述べたように
して調製された。 (2) EPC−MLVは、0.01Mトリス−HC
l、0.1M KCl緩衝溶液2.0ml中のEPC5
1.8mgを用いて例2−1において述べたようにして
調製された。 (3) EPCおよび卵ホスファチジン酸(EPA)か
ら構成される脂質二重層を有するマルチラメラベシクル
が、0.01Mトリス−HCl、0.1M KCl緩衝
溶液22.0ml中のEPC41.1mgおよびEPA
9.79mgを用いて、EPC−MLV調製に関して例
2−1において述べられた方法を用いて調製された。得
られたMLV(EPC:EPA−MLV)は、それぞれ
が8:2のモル比のEPC:EPAで構成されていた。
旋回混合の後、MLVのそれぞれの懸濁液(すなわち、
CHS−MLV,EPC−MLVおよびEPC:EPA
−MLV)が調製に用いられた緩衝溶液中で2時間室温
下に放置された。それぞれのリポソーム調製物の20μ
lアリコットが、次に、0.055Mから0.5Mまで
の範囲の濃度のKClを含む0.01Mトリス−HCl
緩衝溶液の連続群1.0mlへ添加された。1.5時間
の平衡化の後、550nmの波長でのサンプルの吸光度
を計測することにより光散乱が測定された。結果をベシ
クルがさらされる媒体のKCl濃度の逆数に対して吸光
度がプロットされるものである図4に図示する。増加し
た吸光度は、脂質ベシクルの膨脹を示す。曲線Bおよび
Dは、予期したように、リン脂質MLV(すなわちEP
C−MLVおよびEPC:EPA−MLV)が理想浸透
圧計であるようにふるまったことを示す。しかしながら
曲線Cは、CHS−MLVが閉鎖したベシクル構造とし
てふるまうが、これらは、低張および高張媒体において
は非理想的挙動を示すことを示唆している。図4に示し
たこの挙動は、ブロッカホフとラムサミー(1982
年、バイオヒミカ エト バイオフィジカ アクタ
91:227〜232[1982,Biochi.Bi
ophis.Acta.691:227〜232])の
コレステロールリポソームにおいて観察されるものとは
全く異なるものである。
【0031】例9 難溶性化合物を捕捉するコレステロ
ールヘミサクシネートリポソーム(実施例) 水にわずかに溶解する化合物のCHS−リポソーム中へ
の捕捉が、ウシ成長ホルモン、インスリンおよびタイロ
シン(tylosyn)に関して実証された。 例9−1 コレステロールヘミサクシネート−SUV中
に捕捉されたウシ成長ホルモン 約191のアミノ酸の単鎖から成る単純タンパクであ
る、ウシ成長ホルモン(BGH)は、部分水溶性であ
る。通常溶解度は、pH8.0で1〜1.5mg/ml
である。BGHは、クロロホルムのような有機溶媒中に
沈澱する。
【0032】CHS−MLVは、0.01Mトリス−H
Cl(pH7.4)、0.14MNaCl緩衝溶液1.
0ml中のトリス−塩CHS27mgを用いて例2に記
載されたようにして調製された。CHS−MLV調製物
は、音波処理化CHS−MLVを形成するために、透明
となるまで音波処理され、そして次にBGH(エリリリ
ー アンド カンパニー[Eli Lilly & C
o.]、インディアナポリス、インディアナ州)5,1
0,15,25,30または166mgのいずれかが、
音波処理化CHS−MLV懸濁液の別々のアリコットへ
加えられた。懸濁液は、延長的に旋回混合され、CHS
−SUV二重層中へのタンパクの分配を起こした。音波
処理化CHS−SUV懸濁液は、1日、2日および21
日に沈澱物の存在に関して目視的に観察された。沈澱物
は観察されず、室温下で21日間試験されたすべての濃
度でウシ成長ホルモンはCHSリポソーム中に捕捉され
たままであったことを示した。
【0033】例9−2 コレステロールヘミサクシネー
ト−SUV中に捕捉されたインスリン 亜鉛−インスリン(ポリペプチドホルモンの1つであ
る。)は、希釈酸またはアルカリに容易に溶解するが、
pH4.5〜7.0の水性相に実質的に不溶である。実
際、マクロ集塊を形成するインスリン溶液の傾向は、長
期間インスリン供給系の発達において障害であった。C
HS−MLVは、0.01Mトリス−HCl(pH7.
4)、0.14MNaCl緩衝溶液1.0ml中のトリ
ス−塩CHS27mgを用いて、例2に述べるようにし
て調製された。CHS−MLV調製物は、音波処理化C
HS−SUVを形成するために透明となるまで音波処理
され、そして亜鉛−インスリン粉末(ウシ膵臓インスリ
ン、シグマケミカルカンパニー、セントルイス、ミズー
リー州[Bovine Pancreatic Ins
ulin,Sigma Chemical Co,S
t.Louis,MO])が47mgに至るまで、CH
S−SUV懸濁液へ添加された。懸濁液は、延長的に旋
回混合され、インスリンのCHS−SUV中への分配を
起こした。音波処理化CHS−SUVは、1日、2日お
よび21日に沈澱物の存在に関して目視的に観察され
た。沈澱物は観察されず、室温下で少なくとも21日
間、5mg/mlの濃度でインスリンは捕捉されたまま
であったことを示した。
【0034】例9−3 コレステロールヘミサクシネー
ト−SUV中に捕捉されたタイロシン タイロシンは、水に25℃で5mg/ml溶解してそし
て低級アルコール類、エステル類およびケトン類、塩素
化炭化水素類ならびにエーテルにもまた可溶である抗生
物質である。スモールユニラメラベシクルは以下のよう
に調製された。タイロシン−塩基(エリ リリー アン
ドカンパニー,インディアナポリス、インディアナ州)
100mgおよびトリス−塩CHS200mgが、リン
酸緩衝化食塩水(pH7.4)4ml中にて旋回混合さ
れた。得られたCHS−MLVの乳白色懸濁液は、プロ
ーブチップ音波処理器[probe tip soni
cator]を用いて15分間音波処理された(予防処
置として、氷浴が、混合物の温度を低下させつづけるよ
うに試験管のまわりに配置された。)。混合物は、次に
1時間45分の間、浴型音波処理器中へ移された。2時
間の音波処理期間の後、タイロシンを捕捉したCHS−
SUVが、10,000×gで10分間の懸濁液の遠心
分離によって、小さなペレットと乳白光を発する上澄み
を形成することによって懸濁液から分離された。上澄み
中の音波処理化CHS−SUVはタイロシン−塩基(エ
リ リリー アンド カンパニー,インディアナポリ
ス,インディアナ州)100mgを水の同容量に添加し
た懸濁液と目視的に比較された。タイロシン−塩基の懸
濁液においては沈澱物が形成されたが、CHS−SUV
タイロシン調製物においては沈澱物は形成されなかっ
た。これゆえタイロシンは少なくとも48時間捕捉され
ていた。
【0035】例10 脂質溶性化合物の捕捉へのコレス
テロールヘミサクシネートの使用(実施例) 脂質に対して可溶である生物学的活性物質の捕捉が、イ
ンドメタシンおよびジアゼパムに関して実証された。例
10−1 コレステロールヘミサクシネート−MLV中
に捕捉されたインドメタシン プロスタグランジン阻止剤の1つである、インドメタシ
ンの遊離酸は、エタノール、エーテル、アセトンおよび
ひまし油に可溶である。生物学的活性剤としてインドメ
タシンの変化する量を取込むCHS−MLVが、以下の
ようにして調製された。丸底フラスコ中に、トリス−塩
CHS27mg、インドメタシン1〜5mgおよび14
−インドメタシン(22.0mCi/mmol,ニュー
イングランド ヌクレア,ボストン,マサチューセッツ
州)10μlが混ぜ合せられた。すべての成分を溶解す
るのに十分な量のメタノールが添加された。混合物は次
に、容器上に薄いフィルムを形成させるために回転蒸発
され、そしてすべてのメタノールの除去を保証するため
に一晩真空乾燥された。次にCHS−MLVが、それぞ
れのフラスコに0.01Mトリス−HCl(pH7.
3)、0.14M NaCl緩衝溶液1.0mlを添加
することにより形成された。懸濁液は、ガラス製ビーズ
を用いて旋回混合され、そして2時間静置された。2時
間の後、CHS−MLV中に捕捉されたインドメタシン
の相対量が次のようにして測定された。0.01Mトリ
ス−HCl(pH7.3)、0.14MNaCl緩衝溶
液9.0mlがそれぞれのサンプルへ添加され、そして
混合物は、10,000×gで10〜20分間遠心分離
された。得られたペレットは、0.01Mトリス−HC
l(pH7.3)、0.14M NaCl緩衝溶液10
ml中で3度洗浄され、そして最終容量1.0mlの
0.01Mトリス−HCl(pH7.3)、0.14M
NaCl緩衝溶媒中へ懸濁された。「標準」は、最初
の混合物中に放射線標識化インドメタシンのみを添加す
る(すなわち、インドメタシン1〜5mgは、CHS−
MLV標準調製から除外された。)以外はサンプルと同
様の方法で調製された。それぞれのサンプルからの濾過
された20μlアリコット中に含まれる放射能がシンチ
レーション流体10ml中でカウントされた。「標準」
とインドメタシンの種々の濃度を含むサンプルとの比較
により、捕捉されたインドメタシンのパーセンテージの
決定を行なった。結果は表3に示す。
【0036】 表 3 CHS−MLV中へのインドメタシンの捕捉 インドメタシン濃度 CHS−MLV中に捕捉された (mg/ml) 14C−インドメタシン(%) 1 78 2 70 3 37 4 28 5 34 ───────────────────────────── 結果は、最高78%までのインドメタシンがCHS−M
LV中に捕捉され得ることを示している。
【0037】例10−1−2 インドメタシンを含有す
るコレステロールヘミサクシネートベシクルの微細構造 捕捉されたインドメタシンが膜ベシクルを変化させるも
のであるか否かを調べるために、インドメタシンの存在
下調製されたCHS−MLV(例10−1−1参照のこ
と。)を前述のようにして凍結エッチング電子顕微鏡に
よって分析した。凍結エッチング電子顕微鏡において、
低拡大条件下、「空の[empty]」CHS−MLV
は、インドメタシンを含有するCHS−MLVと区別が
つかなかった。すなわち、このものが、このものあるい
は他のものに対して独特であるとして識別できる明らか
な特色がなかった。しかしながら、高拡大条件下では、
インドメタシンを含有するCHS−MLVの「二重層」
を検知できる。インドメタシンは水不溶性薬剤でありか
つエタノール、エーテル、アセトン、および他の非極性
溶媒に可溶であるので、脂質の存在下では、インドメタ
シンは水から隔離されるように配置されるであろう。電
子顕微鏡によって観察された二重層の調査は、二重層の
厚さは、交差破砕において変わることを示していた。こ
れは、インドメタシンが、実際に二重層の脂質部位に分
配され、これによって付加的な厚みと非常に不均一な配
列を与えることを示唆するものであった。すなわち、厚
さは、1つの二重層を破砕ラインに沿って追跡した際に
変化していた。この結果は、薬剤が二重層の脂質部位に
分画されるような溶解性を有する薬剤におそらく固有の
ものである。
【0038】例10−2 コレステロールヘミサクシネ
ート−SUV中に捕捉されたジアゼパム 鎮静剤またはトランキライザーの1つであるジアゼパム
(すなわち、ヴァリアム[Valium])は、クロロ
ホルム、ベンゼン、アセトンおよびアルコールに可溶で
あるが、水にはほんのわずか溶解するにすぎない。ジア
ゼパムを取込むCHS−SUVは、次のようにして調製
された。ジアゼパム2,3,4または5mgが 3H−ジ
アゼパム(75.7Ci/mmol,ニューイングラン
ドヌクレア,ボストン,マサチューセッシ州)5μlを
含んでいる試験管へ添加された。該薬剤を溶解するのに
十分な量のメタノール(最大2mlのメタノール)がそ
れぞれの試験管に加えられた。混合物は次に薄いフィル
ムになるまで回転蒸発され、そしてすべてのメタノール
の除去を保証するために一晩真空下で乾燥された。乾燥
フィルムは音波処理化CHS−SUV(CHS50,1
00、または200mg/mlを用いて以下に述べるよ
うにして調製された。)の懸濁液1ml中に再懸濁液さ
れ、ガラス製ビーズを用いて旋回混合し、そして0.2
2μmミリポア[Millipore]フィルター(ミ
リポアコーポレーション[Millipore Cor
p.],ニューヨーク,ニューヨーク州)を用いて濾過
された。CHS−SUVは以下の処方に基づき調製され
た。トリス−塩CHS50,100または200mgが
0.01Mトリス−HCl(pH7.3)、0.14M
NaCl緩衝溶液1.0mlと旋回混合された。プロー
ブ音波処理器を用いて、混合物は、550nmの波長で
計測した約0.40の光学密度(すなわち「透明な」溶
液)となるまで音波処理され、そして次に音波処理器の
プローブの先端からとれたかもしれないチタンを除去す
るために1,000×gで遠心分離された。CHS−S
UVの懸濁液は次に試験管からデカンテーションされ
た。音波処理化CHS−SUVによって捕捉され得たジ
アゼパムの相対量は、サンプルの「標準」調製物との比
較によって測定された。「標準」調製物は、放射線標準
化ジアゼパムのみを添加する(すなわち、ジアゼパム2
〜5mgはCHS−SUV標準調製からは除外され
た。)以外はサンプルと同様の方法において調製され
た。いずれの場合においても、濾過された懸濁液の10
μlアリコット中に含まれる放射能はシンチレーション
流体10ml中でカウントされた。結果は表4に示され
る。
【0039】 表 4 音波処理化CHS−ベシクル中へのジアゼパムの捕捉 ジアゼパム濃度 捕捉された 3H−ジアゼパム(%) (mg/ml) CHS濃度(mg/ml) 50 100 200 2 86 100 100 3 79 95 89 4 58 100 100 5 53 100 100 ──────────────────────────────── 結果は、CHS100mg/mlおよび200mg/m
lは、用いられたジアゼパムの最高濃度である100%
を捕捉することを示すものである。CHS100mg/
mlおよび200mg/mlは共に十分にジアゼパムを
捕捉するので、100mg/mlがジアゼパムの捕捉に
関するCHSのより理想的な濃度である。
【0040】例11 血清中のアミノグリコシド濃度を
測定するためのコレステロールヘミサクシネートリポソ
ームの使用(参考例) 比較的低濃度のCHS−ベシクル(1μg/mlより少
なくCHS)がリン酸緩衝化食塩水(PBS)中の懸濁
液から赤血球細胞(RBC)を強く凝集することが観察
された。CHS−ベシクルはCa++および他のカチオ
ン、例えばアミノグリコシド抗生物質類などにより沈澱
されるので、CHS−ベシクルは、(a)CHS−ベシ
クルの固定量が沈澱される抗生物質を含む血清の希釈度
を測定し、そして(b)抗生物質含有血清への添加の後
に沈澱されていない残存する遊離ベシクルの濃度を赤血
球凝集滴定により測定する、ことで血清中のアミノグリ
コシド抗生物質の濃度を測定することに用いられ得る。
いずれの場合においても、抗生物質の正確な量は抗生物
質の既知濃度から導き出された標準曲線での比較を行な
うことにより得られる。基礎実験は以下に述べられる。
すなわち、PBS中の硫酸ゲンタマイシン(1mg/m
l)24μlが血清中に連続的に希釈された(すなわ
ち、血清の25μlアリコット)。次に0.01M ト
リス−HCl(pH7.3)、0.14M NaCl緩
衝溶液中で25mg/mlの濃度で、pH7.4でトリ
ス−塩CHSを音波処理することによって調製されたC
HS−ユニラメラベシクルの24μlアリコットがそれ
ぞれのサンプルに添加された。室温で10分間経過の
後、それぞれの混合物の混濁度が記録された。50μg
あるいはそれ以上のゲンタマイシンを含む混合物のみ
が、視認できる沈澱を示し、CHSベシクルがゲンタマ
イシンと相互作用したことを示した。次に沈澱した物質
は、ペレット化されそして上澄み液は、ニワトリ赤血球
細胞を用いての赤血球凝集によるCHS−SUVの濃度
を測定するために用いられた。赤血球凝集検定は、96
U型ミクロウェルプレート[96U−shapedmi
crowell plate]中でPBS50μlにベ
シクル懸濁液を連続的に希釈し、そして次にPBS中の
0.5%RBC40μlをそれぞれのウェルに加えるこ
とにより行なわれた。4℃で60分間経過の後、赤血球
凝集は反転鏡を用いて観察された。比較対象(CHSベ
シクルの存在しないRBC)は全く赤血球凝集を示さな
かった。予備実験において濁りを起こしたものを除い
た、CHSを含むすべてのサンプルはRBCを強く赤血
球凝集した。この結果は、CHSのみを含む比較対照の
懸濁液と比較して、かなり少量のベシクルが赤血球凝集
に有効であるために、CHSベシクルがゲンタマイシン
と相互作用したことを示すものであった。
【0041】例12 コレステロールヘミサクシネート
リポソームの生体内投与(参考例) 以下に、本発明のコレステロールヘミサクシネートリポ
ソームを用いての生物学的活性物質の生体内投与に関す
る方法および組成物を述べるものである。捕捉された生
物学的活性物質の医学的効果が測定され、そして選択さ
れた臓器での薬剤分布が適当な所で追跡された。 例12−1 コレステロールヘミサクシネートリポソー
ム中に捕捉されたインドメタシンを用いての関節炎の治
雄の白色ニュージランドウサギ(2〜2.5kg)が、
フロイント完全アジュバンド中で乳化された20mg/
mlウシ血清アルブミン(BSA)(マイルズラボラト
リーズ[Miles Laboratories],エ
ルクハート,インディアナ州)1mlを用いて2週間間
隔で2回皮内に免疫された。第3週目に、ウサギは関節
炎を起こさせるために右膝関節中へ食塩水1.0ml中
BSA10mlの関節内注射を1回受けた。左膝関節は
比較対照として取扱われた。関節の直径は、0.01m
m精度のフォウラー[fowler]ダイアル式カリパ
スを用いて計測された。BSAを注入された関節は膨脹
し、そして通常、比較対照関節よりも3〜4mm大きか
った。第4週目において、ウサギは、関節炎を起こさせ
るために、食塩水中のBSAの別の関節内注射を受け
た。CHS270.0mgおよびインドメタシン10m
gを用いて例10−1において述べられたようにして、
CHS−MLVが調製され、インドメタシンの最終濃度
1.0mg/mlを得た。炎症誘導の3日間後、BSA
を注入された動物はCHS−ベシクル中に捕捉されたイ
ンドメタシン1mg/mlの関節内注射を1回受けた
(全投与量1mg/動物)。関節膨脹はその後10日間
計測された。図5にグラフ的に図示された結果は、CH
S−MLV中に捕捉されたインドメタシンは関節内投与
された際に関節膨脹を減少させることに有効であること
を示す。 例12−2 コレステロールヘミサクシネートSUV中
に捕捉されたジアゼパムの生体内投与 マウスに、例10−2において述べたようにして調製さ
れたCHS−SUV中に捕捉されたジアゼパムの500
μg/kg(体重)を静脈内にあるいは筋内に接種し
た。該ジアゼパムは、捕捉された薬剤の活性の保持を示
すものであるマウスにおける鎮静効果(マウスは接種後
に睡眠におちいる。)を有していた。例12−2−1 静脈内接種後の臓器分布 捕捉されたジアゼパムを含有するCHS−SUVは、例
10−2において述べられるようにして調製された。浴
型音波処理器における音波処理の後、550nmの波長
で計測された懸濁液の吸光度は0.370であった。次
にCHS−SUV懸濁液の44.2μlアリコットが、
14C−ジアゼパム(比活性は、エタノール中の100μ
Ci/mlとして供給された181μCi/mgに等し
い。)の40μCiが窒素条件下乾燥されたものである
ガラス製試験管中へ添加された。5分間の旋回混合の
後、0.01Mトリス−HCl(pH7.3)、0.1
4MNaCl緩衝溶液1.282mlが該溶液中へ添加
され、ジアゼパム0.167mg/μlのマウスに対す
る治療学的投与量を生じる、懸濁液の30倍希釈物を得
た。CHS−SUV−14C−ジアゼパム懸濁液の0.1
mlアリコットが意識のある拘束された35mgスイス
ウェブスター[Swiss−Webster]マウスの
尾静脈中へ注射された。比較対照マウスには、捕捉され
ていない14C−ジアゼパムの等量を同様に接種した。注
入後1,2または5時間目に、マウスは脊髄脱臼により
殺し、そして内臓(腎臓、肺、脾臓、肝臓、腸、脳、心
臓、脾臓および脂肪)および血液サンプルを取り出し
た。臓器は計量されそしてそれぞれの小さなサンプル
(20〜40μg)がマイムとコーベルグ[Mahim
andKohberg]の方法(1966年,アナリ
ティカル バイオケミストリー16:500[196
6,Analytical Biochem,16:5
00])によって消化されそして脱色された。サンプル
は次に、化学ルミネッセンスを放射能計測前に静めるた
めに、5日間暗順応させた。
【0042】この実験の結果は図6に示される。CHS
−SUVに捕捉されたジアゼパムを接種されたマウスに
おいては、薬剤は、脾臓中には蓄積しておらず、CHS
−SUV中に捕捉されたジアゼパムは、リン脂質リポソ
ームに捕捉された薬剤が静脈内的に生体内投与された際
と同様の挙動をしないことを示している。
【0043】例12−3 コレステロールヘミサクシネ
ート−MLV中に捕捉されたクロムの生体内投与 CHSベシクルが生体内投与された際にそのまま残存す
るか否かを測定するために、遊離水性標識の臓器分布
が、CHSベシクル中に捕捉された水性標識の臓器分布
と比較して、マウスへの静脈内注射の後に測定された。
このために、捕捉されていない51クロム(51Cr)、C
HS−MLV中に捕捉された51Crおよびリン脂質ベシ
クル中に捕捉されたCr51の臓器分布の比較を行なっ
た。これらの処方は次の通りである。(a)捕捉されていない51Cr 51Crは0.9%殺菌
食塩水中の51CrO2 =(ニューイングランドヌクレア,
ニュートン,マサチューセッツ州)として供給される。
これらの遊離の51Cr注射剤は、0.9%食塩水中の51
Cr 100μlを0.01Mトリス−HCl、pH
7.3、0.14NaCl、5%デキストロースを用い
て最終容量1.5mlへ希釈することで調製された。雄
の40gスイスウェブスターマウス16匹にそれぞれ尾
静脈を介して0.1ml(約700,000cpm)の
静脈内注射を行なった。(b)CHS−MLV中の51Cr は、極微量の51Cr
(殺菌0.9%食塩水中の51CrO2 = )を含有する
0.01MトリスHCl、pH7.3、0.14M N
aCl、5%デキストロース中に、乾燥トリス−塩CH
S粉末を溶解することによって調製された。混合物は旋
回混合され、そしてすぐ後に30分間音波処理された。
前記したように遠心分離によるペレット化および3度洗
浄した後に、最終的ペレットはCHS10mg/mlの
最終濃度に再懸濁され、そしてニコンプ準弾性光散乱分
析[Nicomp quesielastic lig
ht scattering analysis]によ
って直径1ミクロンにおいて計測された。雄の40gス
イスウェブスターマウス12匹にそれぞれ尾静脈を介し
て0.1ml(約120,000cpm)の静脈内注射
を行なった。 (c)EPC−SPLV中の51Crは、参考のため本明
細書で引用している、「安定なプルリラメラベシクル、
その調製および使用」と題されたレンクら[Lenk
et al.]によって1983年3月24日に出願さ
れた同時係属米国出願番号第476,496号中に詳述
に述べられる一般的方法によって調製された。卵ホスフ
ァチジルコリン(EPC)65mgをクロロホルム中に
溶解しそしてフィルムを形成するようにEPCを乾燥さ
せることによって、バッチ5mlを調製し、フィルム
を、エーテル10ml中に再懸濁し、そして、51CrO
2 =の0.9%食塩水(pH8)溶液0.3mlを加え
た。混合物は、次いで音波処理により乳化し、一方同時
にN2ガス条件下でエーテルを蒸発した。得られた安定
なプルリラメラベシクル(SPLV)は0.01Mトリ
ス−HCl、pH7.3、0.14M NaCl、5%
デキストロース溶液5ml中に再懸濁した。そして遠心
分離によりペレット化し、このペレットは捕捉されてい
ない51Crを除去するために3度洗浄され、そして最終
的ペレットは0.01Mトリス−HCl、pH7.3、
0.14M NaCl、5%デキストロース溶液5ml
中に再懸濁した。EPCの最終濃度は13mg/mlで
あった。雄の40gスイスウエブスターマウス12匹
に、それぞれ尾静脈を介して0.1ml(約100,0
00cpm)の静脈内注射を行なった。1,2,5およ
び24時間後に、リポソーム調製物で処理されたそれぞ
れのグループから3匹のマウスおよび捕捉されていない
51Crで処理されたグループから4匹のマウスを脊髄脱
臼により殺した。その臓器を取り出し、0.9%食塩水
で洗い、それぞれの臓器中に残存する投与量のパーセン
テージおよび投与量/グラムのパーセンテージの測定を
前記のようにして行なった。図7に示す結果は、捕捉さ
れていないクロム(図7C参照)は迅速に排泄され、試
験されたいずれの臓器中にも集中していないことを実証
している。EPCおよびCHSに捕捉されたクロムは、
注射の24時間後に計測し得る値をとどめており、CH
Sベシクルが、EPC−SPLVと同様に、生体内にそ
のままとどまることを示していた。さらに、0.5〜
1.0ミクロン間の平均直径を有するEPC−SPLV
(13mg/ml)は、肝臓、肺および脾臓中に蓄積さ
れ(図7B参照)、すなわちリポソーム分布の代表的パ
ターンを示す。等モルのCHSベシクルは主に肝臓中に
蓄積され、そして肺および脾臓における蓄積はそれより
少なかった(図7A参照)。2種のリポソーム調製物の
生体内の分布パターンの違いを示している。
【0044】例12−4 コレステロールヘミサクシネ
ートMLV中に捕捉されたヒト成長ホルモンの生体内投
125 I−ヒト成長ホルモン(HGHニューイングラン
ド、ヌクレア、ボストン,マサチューセッツ州)を取込
んだCHS−マルチラメラベシクルは以下のようにして
調製された。トリス−塩CHSが、 125I−HGH(ニ
ューイングランドヌクレア、ボストン、マサチューセッ
ツ州)1μCi/mlを含有する0.01Mトリス−H
Cl、0.14M NaCl緩衝溶液(pH7.4)中
へ、トリス−塩CHS最終濃度25mg/mlとなるよ
うに添加された。この懸濁液をガラス製ビーズを用いて
旋回混合し、得られたCHS−MLVは、最初の放射能
カウント数と比較することにより測定して125I−HG
Hの10%を捕捉していた。雌のスイスウェブスターマ
ウス12匹のグループに、CHS−MLVに捕捉された
125I−HGHの懸濁液0.5mlを後肢に筋内的に注
射した。マウス12匹の比較対象グループには、0.0
1Mトリス−HCl、0.14M NaCl緩衝溶液中
の遊離125I−HGH 0.5mlを注射した。双方の
グループのそれぞれの動物は、1匹当り約35,000
cpmのHGHを投与されたことになる。注射後、週期
的間隔でマウスを殺し、後肢が解剖され、そして残存す
る全放射能のパーセンテージが測定された。表5のデー
タは、CHS−MLV中へ取込まれているものの場合、
125I−HGHの保持が実質的に増加することを実証し
ている。したがって、筋内的に注射される場合、CHS
−リポソームに捕捉された薬剤は、持続的に放出される
ものである。
【0045】 表 5 投与されたMLVに捕捉された125I−ヒト成長ホルモンの持続 接 種 物 肢中に残存する放射能(%) (数:12匹) 時間(時間) 24 72 168 比較対照a 125I −HGH 5 0.7 0.2 0.3 CHS−ベシクル中の 125I−HGHb 56 37 29 22 ─────────────────── a.動物は、0.01Mトリス−HCl、0.14M
NaCl中の125I−ヒト成長ホルモン0.5mlを投
与された。 b.動物は、0.01Mトリス−HCl、0.14M
NaCl中のCHS−ベシクル(25mg/ml CH
S)中の125I−ヒト成長ホルモン0.5mlを投与さ
れた。
【0046】
【発明の効果】水不溶性化合物をステロールベシクル中
へ効率よく捕捉することができ、水不溶性活性物質の高
い服用量での投与を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】捕捉された溶質(クロム)とマルチラメラリポ
ソームを調製するのに用いられたコレステロールヘミサ
クシネートの濃度との逆比例関係をグラフで示したもの
である。
【図2】4つの異なるCHS−MLV(コレステロール
ヘミサクシネート−マルチラメラベシクル)調製物に関
して得られたX線回折パターンを表わすものである。
【図3】CHS−マルチラメラベシクルおよびEPC−
マルチラメラベシクル(卵ホスファチジルコリン−マル
チラメラベシクル)に関する電子スピン共鳴データを表
わすものである。
【図4】種々の緊張力の水性緩衝溶液中でのコレステロ
ールヘミサクシネートリポソームおよび卵ホスファジル
コリンリポソームの膨潤特性を示すものである。
【図5】筋内的に投与された際の、コレステロールヘミ
サクシネートリポソーム中に捕捉されたインドメタシン
の関節膨脹を減少させる効果をグラフで示すものであ
る。
【図6】マウスに静脈内的にCHS−SUVに内包され
ないで(遊離)あるいは内包されて投与された14C−ジ
アゼパムの臓器分布を示すものである。
【図7A】マウスに静脈内的に投与された51Crの臓器
分布を示す図であり、その投与形態がCHS−MLVに
内包されたものである。
【図7B】マウスに静脈内的に投与された51Crの臓器
分布を示す図であり、その投与形態がEPC−SPLV
に内包されたものである。
【図7C】マウスに静脈内的に投与された51Crの臓器
分布を示す図であり、その投与形態がEPC−SPLV
に内包されないで投与されたものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ジャノフ、アンドリュー エス アメリカ合衆国 ペンシルバニア州 19067 ヤードレイ サウス クレセント ブルバード 1807 (72)発明者 ポペスク、マーシー シー アメリカ合衆国 ニュージャージー州 08536 プレインスボーロ パークウェイ アベニュー 5 (72)発明者 ウェイナー、アラン エル アメリカ合衆国 ニュージャージー州 08536 プレインスボーロ フォックス ラン ドライブ 39−06 (72)発明者 ボルクサク、ルイズ イー アメリカ合衆国 ニュージャージー州 08648 ローレンスヴィール タワープレ ース 11 (72)発明者 トゥレムブレイ、ポール エイ アメリカ合衆国 ニュージャージー州 08619 ハミルトン ノッチングガム ウ ェイ 2633

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)有機溶媒中に水不溶性化合物を溶解
    し、(b)該有機溶媒を除去して水不溶性化合物で構成
    されるフィルムを残し、(c)閉鎖されたベシクルを形
    成し得るステロールの有機酸誘導体の塩形態を完全に閉
    鎖されたベシクルを形成するのに十分な量で水性相に添
    加し、混合物を振盪することによって得られるマルチラ
    メラベシクルのステロールリポソームの乳白色の懸濁液
    もしくは該乳白色の懸濁液を、さらに音波処理して得ら
    れるユニラメラベシクルの懸濁液を上記フィルムへ添加
    する、ことからなるステロールベシクル中への水不溶性
    化合物の捕捉方法。
  2. 【請求項2】(a)水不溶性化合物および水性相中で二
    重層を形成し得るステロールの有機酸誘導体の塩形態
    を、有機溶媒中に共溶解させ、(b)該有機溶媒を蒸発
    させて、上記化合物およびステロールの有機酸誘導体の
    塩形態を含有するフィルムを残し、(c)水性相を該フ
    ィルムに添加し、そして完全に閉鎖されたマルチラメラ
    ベシクルの乳白色の懸濁液が形成するように振盪する、
    ことからなるステロールベシクル中への水不溶性化合物
    の捕捉方法。
  3. 【請求項3】ユニラメラベシクルを形成するために、乳
    白色の懸濁液をさらに音波処理することを有するもので
    ある請求項2記載の方法。
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