JPH09309007A - 被覆硬質工具 - Google Patents

被覆硬質工具

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JPH09309007A
JPH09309007A JP12695696A JP12695696A JPH09309007A JP H09309007 A JPH09309007 A JP H09309007A JP 12695696 A JP12695696 A JP 12695696A JP 12695696 A JP12695696 A JP 12695696A JP H09309007 A JPH09309007 A JP H09309007A
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JP
Japan
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coating layer
tool
surface area
cutting
coated hard
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JP12695696A
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English (en)
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Hideki Moriguchi
秀樹 森口
Akihiko Ikegaya
明彦 池ヶ谷
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 被覆硬質工具において被覆層の耐剥離性の性
能ばらつきを極度に抑制し、工具寿命を安定化させる。 【解決手段】 被覆硬質工具は、硬質材料からなる基材
と、その基材の表面に形成された被覆層とを備える。被
覆層の表面の少なくとも一部が、その被覆層の鏡面状態
の表面積に対して1.001以上1.020以下の比率
で拡大された表面積を有する。基材の硬質材料としては
超硬合金などが用いられる。被覆層の材料としては元素
の周期律表4A、5A、6A族金属などの炭化物、窒化
物、ダイヤモンド、ダイヤモンド状炭素などが用いられ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、硬質材料からな
る基材と、その基材の表面に形成された被覆層とを備え
た被覆硬質工具に関し、特に、耐溶着性と被覆層の耐剥
離性に優れた被覆硬質工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、金属材料切削用の工具材質として
は、超硬合金(WC−Co合金、またはWC−Co合金
にTi、TaもしくはNbの炭化物もしくは炭窒化物を
添加した合金)が用いられてきた。近年、切削条件が高
速化してきた結果、超硬合金、サーメットまたはアルミ
ナ系や窒化珪素系のセラミックスからなる基材の表面に
3〜15μmの厚みの被覆層を形成した被覆硬質工具を
使用する割合が増大している。この場合、被覆層は、C
VD法やPVD法によって形成され、元素の周期律表4
A、5A、6A族金属またはAl等の炭化物、窒化物、
炭窒化物、炭酸化物、ホウ窒化物または酸化物、あるい
はこれらの化合物の固溶体、さらにダイヤモンド、ダイ
ヤモンド状炭素からなる。
【0003】これらの被覆硬質工具では、被覆層の剥離
する割合が少なければ、工具の寿命は長い。しかしなが
ら、低炭素鋼などを切削する場合には、工具の表面に被
削材が溶着しやすく、それによって被覆層の剥離が発生
しやすく、工具の寿命にばらつきが多いというのが現状
であった。被覆層の剥離の原因の1つとして、被削材が
工具の表面に溶着し、その被削材が引き剥がされるとき
に被覆層が剥離する場合が多いと言われている。この溶
着現象は、被覆層の表面の凹凸に関係しているとされて
いる。
【0004】そこで、被覆層の表面の表面粗さを制御す
ることによって、被覆層の耐欠損性を向上させるため
に、被覆層としてのAl2 3 膜の表面粗さをある規定
値以下にすることが特開昭62−228305号公報や
特開平5−57507号公報で提案されている。
【0005】また、特開昭64−16302号公報で
は、被覆層の表面が、基準長さ5μmに対する表面粗さ
Rmaxが0.2μm以下の滑らかな面で実質的に構成
されていることを特徴とする被覆超硬合金工具が提案さ
れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開昭
62−228305号公報や特開平5−57507号公
報で提案された技術によれば、被覆層の耐欠損性に関し
てはある程度の効果を得ることができるが、被覆層の耐
摩耗性、特に被覆層の耐剥離性に関しては、ばらつきが
大きく、被覆層の剥離が原因となって発生する工具の損
傷に対して、被覆層の表面の状態は十分に制御されたも
のではなかった。
【0007】また、特開昭64−16302号公報で
は、非常に厳しい表面粗さの基準を提案しているにもか
かわらず、工具の切削性能のばらつきは十分小さいもの
とはなっていなかった。
【0008】以上のことから、被覆硬質工具において被
覆層の耐剥離性、さらには工業レベルでの工具を用いた
機械加工の製造現場の実情を十分に考慮した被覆硬質工
具の開発が望まれている。
【0009】そこで、この発明は、上記のような問題点
を解決するとともに、被覆硬質工具において被覆層の耐
剥離性の性能ばらつきを極度に抑制し、無人で定数加工
することの多い機械加工の製造現場での工具の使用に適
した、工具寿命を著しく安定させた被覆硬質工具を提供
することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明者らは、金属材料の切削においてその切削メ
カニズムについて鋭意研究を行なった結果、硬質材料か
らなる基材と、その基材の表面に形成された被覆層とを
備えた被覆硬質工具において、被覆層の表面の少なくと
も一部が、その被覆層の鏡面状態の表面積に対して一定
の比率で拡大された表面積を有することにより、被覆層
の耐剥離性と耐欠損性を大幅にバランスよく向上させる
ことができることを見い出した。このような知見に基づ
いて、本発明に従った被覆硬質工具においては、被覆層
の表面の少なくとも一部が、その被覆層の鏡面状態の表
面積に対して1.001以上1.020以下の比率で拡
大された表面積を有する。
【0011】上記の比率は、1.001以上1.010
以下であるのが好ましい。上記の被覆層の厚みは、0.
5μm以上100μm以下であるのが好ましい。
【0012】さらには、上記の被覆層の厚みは15μm
以上100μm以下であるのが好ましい。
【0013】上記の被覆層の少なくとも一部は、工具の
切れ刃稜線部、すくい面または逃げ面の領域であるのが
好ましい。
【0014】さらには、上記の被覆層の少なくとも一部
は、切れ刃稜線部上でノーズR部を含む切削に関与する
切れ刃長さの30%以上の領域であるのが好ましい。
【0015】また、穴あけ工具の場合には、上記の被覆
層の少なくとも一部は、工具の切れ刃稜線部、すくい
面、逃げ面またはみぞの領域であるのが好ましい。
【0016】さらには、穴あけ工具の場合には、上記の
被覆層の少なくとも一部は、上記のすくい面を含む切削
に関与するみぞ長さの30%以上の領域であるのが好ま
しい。
【0017】
【発明の実施の形態】この発明においては、被覆層の表
面の少なくとも一部の表面積が、その被覆層の鏡面状態
の表面積に対して1.001以上1.020以下の比率
で拡大される。この拡大比率は、具体的には一例として
以下のような方法で測定される。上記の拡大比率は、増
加表面積比率として測定され、言換えれば、被覆層の表
面の少なくとも一部が0.1%以上2.0%以下(0.
001以上0.020以下)の増加表面積比率として測
定される。この増加表面積比率の一例として、株式会社
エリオニクス製三次元粗さ形状測定機を用いて測定した
値が用いられる。倍率を5000倍に設定して被覆層の
表面を測定し、測定視野内の水平方向と垂直方向のサン
プリング数をそれぞれ280点、210点とする。ここ
で、測定視野の面積をSm、測定された部分の表面積を
Saとしたときに増加表面積比率ΔSは以下の式で表わ
される。
【0018】ΔS=(Sa/Sm−1)×100(%) 上記の数式によって定量化された数値を増加表面積比率
とする。同様の原理で計測可能な装置であれば、その定
量化された数値を同じ指標で用いることもできる。この
場合、測定視野面積Smは、被覆層の鏡面状態の表面積
に相当し、測定された部分の表面積Saは、その測定視
野面積Smに対応するものとして、被覆層の拡大された
表面積に相当する。
【0019】なお、上記の測定において測定倍率は、被
覆層が形成される基材の表面のうねりを排除し、微細な
凹凸を測定するために、たとえば5000倍と設定され
る。
【0020】上記のような指標を用いると、従来から注
目されていた高さ方向の面粗さ、たとえばRa、Rma
x等の面粗さの情報だけでなく、水平方向の面粗さの情
報も含めた三次元の面粗さに関する情報を得ることがで
きる。このため、上記の数式によって定量化された数値
を用いることにより、三次元的な面粗さを制御すること
が可能になる。従来の特開昭62−228305号公報
や特開平5−57507号公報で提案された、高さ方向
の面粗さの数値だけでは制御できなかった水平方向の面
粗さをも含む面粗さを管理することにより、工具寿命の
ばらつきの非常に少ない、耐剥離性に優れた被覆硬質工
具を得ることができる。
【0021】以上のように、被覆層の表面の粗さを三次
元的に制御することにより、耐剥離性に優れた被覆層を
得ることができる。また、被覆層が剥離した部分で基材
としての硬質材料の表面が露出し、その表面に被削材が
溶着し、急激に摩耗や欠損が進行するといった従来の工
具の問題を抑制することができる。これにより、工具寿
命をさらに長くすることができるとともに、被覆層の剥
離の起点となる凹凸を高度に制御できるので工具寿命の
ばらつきの非常に小さい被覆硬質工具を得ることができ
る。
【0022】また、本発明においては、被覆層の表面の
少なくとも一部において、その表面積が1.001以上
1.020以下の比率で拡大されていることが重要であ
る。言換えれば、工具として稼動部となる工具の表面領
域の少なくとも一部において、上記の増加表面積比率が
0.1%以上2.0%以下となっていることが重要であ
る。工具の表面領域において、上記のように被覆層の表
面積が拡大されていることによって、高さ方向において
従来の工具と同じ表面粗さであっても、被削材と被覆層
の表面との接触抵抗が低下する。本効果は乾式切削でも
期待できるが、特に湿式切削のときには、被覆層の微細
な凹部が油だまりとなり、微視的な接解抵抗が軽減する
効果が期待できる。これにより、被覆層の耐剥離性が向
上したり、切屑の排出性が向上するため、工具の寿命を
延長することができるものと考えられる。
【0023】上記の増加表面積比率が2.0%よりも大
きいときには、切削性能の向上に寄与する効果は小さ
い。また、上記の増加表面積比率が0.1%よりも小さ
くすることは、♯2000以上(粒度:約10μm以
下)のダイヤモンドパウダーなどによってラッピング処
理を行なえば達成することはできるが、工業的に高価と
なるため、増加表面積比率を0.1%以上にするのが好
ましい。また、上記の増加表面積比率が0.1%以上
1.0%以下であるときには、特に優れた耐剥離性能を
示す。
【0024】増加表面積比率の値を0.1%以上2.0
%以下にする領域、すなわち被覆層の鏡面状態の表面積
に対して1.001以上1.020以下の比率で被覆層
の表面積を拡大する領域は、工具として稼動部となる切
れ刃稜線部、すくい面、逃げ面のすべてであることが最
も好ましい。これらの領域の少なくとも一部が上記の範
囲内の増加表面積比率で被覆層の表面積が拡大されても
切削性能の向上効果を得ることができる。特に切れ刃稜
線部上の領域で被覆層の増加表面積比率の値を0.1%
以上2.0%以下にすれば、工具の切削性能の向上効果
が大きい。さらに、切れ刃稜線部上でノーズR部を含む
切削に関与する切れ刃長さの30%以上の領域で、被覆
層の表面の増加表面積比率の値を0.1%以上2.0%
以下にすることにより、工具の切削性能において大きな
効果を得ることができる。
【0025】また、穴あけ工具の場合には、増加表面積
比率の値を0.1%以上2.0%以下にする領域は、穴
あけ工具として稼動部となる切れ刃稜線部、すくい面、
逃げ面、みぞのすべてであることが最も好ましい。これ
らの領域の少なくとも一部が上記の範囲内の増加表面積
比率で被覆層の表面積が拡大されても切削性能の向上効
果を得ることができる。特にすくい面上の領域で被覆層
の増加表面積比率の値を0.1%以上2.0%以下にす
れば、穴あけ工具の切削性能の向上効果が大きい。さら
に、穴あけ工具では、すくい面を含む切削に関与するみ
ぞ長さの30%以上の領域で、被覆層の表面の増加表面
積比率の値を0.1%以上2.0%以下にすることによ
り、穴あけ工具の切削性能において大きな効果を得るこ
とができる。
【0026】なお、旋削、転削用工具では切れ刃稜線部
上、ドリル、エンドミル工具ではすくい面上の被覆層の
増加表面積比率を本発明の範囲、0.1%以上2.0%
以下とすることが好ましい。特にドリルなどの穴あけ工
具では、本発明に従えば、切屑の排出性が向上するた
め、被覆層の耐剥離性が向上するだけでなく、切屑詰ま
りによる工具本体の欠損を抑制する効果も期待できる。
近年、環境保護の観点から切削油を用いない加工形態が
増加し、切屑詰まりによる欠損事例が増えていることか
ら、この対策が期待できる。
【0027】なお、図1の(a)は工具チップのコーナ
ー部の拡大した模式的な斜視図、(b)または(c)は
(a)のX−Y方向に沿った模式的な断面図を示す。こ
れらの図を参照して、工具チップのコーナー部は、すく
い面1と逃げ面2と、すくい面1と逃げ面2の境界に切
れ刃稜線部Aとを備えている。切れ刃稜線部Aはノーズ
R部3を有している。
【0028】図2は、穴あけ工具の一例としてドリルを
示す側面図である。図2に示すように、ドリルは、切れ
刃10、すくい面11、逃げ面12、みぞ13を備えて
いる。Dは刃径、Lはみぞ長さである。
【0029】また、本発明では被覆層の厚みが0.5μ
m以上100μm以下であれば、より好ましい切削性能
の向上効果を得ることができる。特に、被覆層の厚みが
15μm以上100μm以下の場合には、被覆層の増加
表面積比率を0.1%以上2.0%以下に抑制すると、
増加表面積比率を上記の範囲内に制御しない場合に比べ
て特に切削性能の向上効果が大きい。これは、被覆層の
厚みが15μm以上まで厚くなると、被覆層の破壊が起
こりやすくなり、剥離が生じやすくなるため、特に被覆
層の表面積の値を一定範囲に制御することによる効果が
大きくなるためと考えられる。
【0030】本発明の被覆硬質工具は、被覆層を形成し
た後に表面処理を施さないで製造することが製造コスト
の観点から最も望ましい。900℃以下の低温で被覆層
を形成することにより被覆層の表面積を上記の比率の範
囲内に制御することができる。しかしながら、低温で被
覆層を形成する場合、被覆層の形成速度が遅いという欠
点を有するため、15μm以上の厚みを有する被覆層を
形成する場合には、低温で被覆層を形成することは特に
工業的に望ましくない。
【0031】そこで、本発明者らは、被覆層を形成した
後に表面処理を施すことによって被覆層の表面性状、す
なわち被覆層の増加表面積比率を本発明の範囲内に制御
することを検討した。その結果、被覆層を形成した後
に、♯800以上(粒度:約30μm以下)の細かいS
iCおよび/またはダイヤモンドからなる砥粒を有する
弾性砥石、ブラシ、バレル用メディアなどにより、表面
処理を施すことによって、表面処理時に導入される研磨
筋、研磨痕を抑制することができるため、本発明の範囲
内の増加表面積比率を有する被覆層を備えた被覆硬質工
具を安定して得ることができることを見い出した。した
がって、15μm以上の厚みを有する被覆層を形成する
場合には、被覆層を形成した後、上記のような表面処理
を施すことによって本発明の範囲内に被覆層の増加表面
積比率を制御することができる。
【0032】なお、本発明の被覆硬質工具において基材
を構成する硬質材料として超硬合金、サーメット、また
はアルミナ系や窒化珪素系のセラミックスなどが用いら
れる。被覆層を構成する材料としては、元素の周期律表
4A、5A、6A族金属(Ti,Zr,Hf;V,N
b,Ta;Cr,Mo,W)またはAl等の炭化物、窒
化物、炭窒化物、炭酸化物、ホウ窒化物または酸化物、
あるいはこれらの固溶体、さらにダイヤモンド、ダイヤ
モンド状炭素などが挙げられる。被覆層は、CVD法や
PVD法によって形成される。
【0033】
【実施例】表1に示すように、a〜dの各種硬質材料か
らなる基材を型番SNMG120408(ISO規格)
の形状で準備した。
【0034】
【表1】
【0035】各種の基材a〜dの表面上に、表2に示す
ように各種の硬質膜の組合せからなるA〜Fの被覆層を
約1000℃の被覆温度でCVD法(膜質Bについては
PVD法)を用いて形成した。
【0036】
【表2】
【0037】このようにして、表3に示すように基材と
被覆層の膜質との組合せでサンプルNo.1〜8の被覆
硬質工具(チップ)を作製した。
【0038】
【表3】
【0039】実施例1 サンプルNo.1のチップに、♯800(粒度:約30
μm)のSiC砥粒を含有したプラスチック製メディア
を用いてバレル処理を施すことにより、切れ刃稜線部の
増加表面積比率の異なる比較品1〜2と発明品1〜5の
工具を得た(表4)。
【0040】次に、このようにして作製された比較品、
発明品の工具を用いて、図2に示すような断面のSCM
415製の被削材20(外周に4つの溝21があり、外
周を切削すると、断続切削になる丸棒材)を下記の条件
で切削し、各工具の寿命を比較した。
【0041】切削条件 切削速度 250m/min. 送り 0.35mm/rev 切込み 1.5mm 切削油 湿式 使用ホルダ PSLNR2525M12(ISO規格) なお、寿命の判定は、工具に被削材の溶着が発生した時
点を寿命時間(切削可能時間)とした。その結果、表4
に示すように、表面処理を施さなかった比較品1と表面
処理の不十分な比較品2に比べて、増加表面積比率を
0.1%以上2.0%以下とした発明品1〜5は優れた
耐溶着性、すなわち耐剥離性を示した。中でも、増加表
面積比率が0.1%以上1.0%以下の範囲にある発明
品4,5は特に優れた耐剥離性能を示した。
【0042】
【表4】
【0043】実施例2 表3に示すサンプルNo.2〜8のチップと、これらの
チップを♯800〜♯1200(粒度:約30μm〜約
15μm)のダイヤモンド、SiCなどの砥粒を付着さ
せた弾性砥石、プラスチック製ブラシ、プラスチック製
メディアにより処理して被覆層の増加表面積比率を制御
したチップとを用いて、実施例1と同様の切削試験を行
なった。被覆層を形成した後の表面処理によって切削性
能が向上した割合を切削性能向上率(%)として、その
結果を表5に示す。これらの結果により、♯800以上
の細かいダイヤモンドやSiCの砥粒を有する弾性砥
石、ブラシ、バレル用メディアを用いると、増加表面積
比率が1.0%以下の本発明の工具を容易に作製するこ
とができた。また、それらのチップの耐剥離性能は、表
面処理を施さなかった未処理品と比較して非常に優れて
いることがわかる。
【0044】
【表5】
【0045】実施例3 表3に示すサンプルNo.1のチップの表面にバレル研
磨処理を施し、切れ刃稜線部の表面粗さRaと増加表面
積比率を表6に示す値に制御したチップを作製した。こ
れらのチップを用いて、SK5製の被削材を下記の条件
で切削し、各工具に溶着が発生するまでの寿命(切削可
能時間)を比較した。なお、切削試験は、6つのコーナ
ー部の切削を行ない、平均寿命を切削可能時間、最長時
間切削できたチップと最短時間で寿命となったチップの
切削時間の比率を性能ばらつきとしてパーセント表示し
た。ここで、性能ばらつきは以下の数式で表わされる。
【0046】性能ばらつき=(Tmax/Tmin−
1)×100(%) ここで、Tmaxは最長切削時間、Tminは最短切削
時間を示す。
【0047】切削条件 切削速度 100m/min. 送り 0.2mm/rev 切込み 1.5mm 切削油 乾式 使用ホルダ PSLNR2525M12(ISO規格) 切削試験の結果を表6に示す。発明品11と12は比較
品1と8に対して、切削可能時間が長く、しかも性能ば
らつきが著しく小さくなっていることがわかる。
【0048】
【表6】
【0049】実施例4 表3に示すサンプルNo.8のチップは、通常のCVD
法を用いて約1000℃の被覆温度で被覆層が基材の表
面に形成されたものである。このようにして得られたサ
ンプルNo.8のチップを比較品9(表7)とした。厚
み1μmのTiN膜、厚み3μmのTiCN膜を870
℃の被覆温度でCVD法を用いてISOM20超硬合金
からなる基材の表面上に形成することにより、切れ刃稜
線部の被覆層の増加表面積比率を本発明の範囲内にした
発明品13(表7)を作製した。比較品9と発明品13
に、♯1200(粒度:約15μm)のSiC砥粒を不
織布に付着させた弾性砥石を用いて表面処理を施した発
明品14と15も作製した。このようにして得られた比
較品9、発明品13〜15のチップを用いて実施例3と
同様の切削試験を行なった。
【0050】その結果を表7に示す。これらの結果によ
り、被覆温度を低温にすることにより、被覆層の増加表
面積比率を本発明の範囲内に制御することが可能である
ことがわかる。ただし、低温で形成された被覆層にさら
に表面処理を施すことによって、被覆層の増加表面積比
率を1.0%よりも小さくすることができ、それによっ
てさらに切削性能を向上させることが可能であることが
わかる。
【0051】
【表7】
【0052】実施例5 表3に示すサンプルNo.3のチップを表面処理なしで
用いて実施例3と同様の切削試験を行なったところ、5
秒で被削材の溶着が発生し、全く切削を行なうことがで
きなくなった。この工具において被覆層の増加表面積比
率を測定したところ、10.5%と非常に大きな値であ
ることが判明した(表8中の比較品10)。
【0053】そこで、♯800のダイヤモンド粒子を付
着させたプラスチック製ブラシを用いて、その工具の切
れ刃稜線部に、表8に示すように処理される領域の割合
を異ならせて表面処理を施してみた。その結果、処理部
の被覆層の増加表面積比率は1.1〜1.3%となっ
た。この表面処理されたチップを用いて実施例3と同様
の切削試験を行なったところ、被削材の溶着が発生する
までの切削可能時間は表8中に示すとおりの結果であっ
た(表8中の発明品16〜19)。
【0054】この工具のように、被覆層の全体膜厚が1
5μm以上の工具は、被覆層の膜厚が厚いために、被覆
層の性質がセラミックスそのものに近づくため、非常に
破壊しやすく、被削材との接触抵抗により、切削開始初
期に破壊、剥離が発生しやすく、従来は実用化されてい
なかった。しかし、被覆層の表面性状、すなわち増加表
面積比率を本発明の範囲内に制御することにより、切削
が可能となった。この利点は大きく、工業的にはその効
果は非常に大きいものと言える。
【0055】次に、ノーズR部を含む切れ刃稜線部上で
本発明に従った増加表面積比率の範囲に被覆層を表面処
理する領域の割合は30%以上が好ましいことも判明し
た。
【0056】
【表8】
【0057】実施例6 シャンク部に一体形成されるドリル本体の基体としてI
SOのP30グレードの超硬合金製の刃径10mmのソ
リッドドリル(ISO−MDS100SP)を用いて、
そのドリルの表面にPVD法により、3μmの膜厚のT
iNを形成したドリルを作製した。ドリルのみぞ13
(図2)に、♯800(粒度:約30μm)のダイヤモ
ンドを付着させたプラスチックブラシを用いて表面処理
を施すことにより、すくい面11を含むみぞ長さLのう
ち処理された面積(領域)の割合の異なる、表9に示す
比較品11と発明品20〜23のドリルを作製した。
【0058】なお、表面処理された領域の割合の判定
は、すくい面11を含む切削に関与するみぞ長さL(本
実施例の場合、ドリル先端より30mmの深さまでのみ
ぞ部に相当)のうち、みぞ長さ方向にみぞ底部の任意の
10点の増加表面積比率を測定し、本発明の範囲内
(0.1〜2.0%)の増加表面積比率となった領域の
割合を算出することによって行なった。
【0059】そして、これらのドリルを15馬力のマシ
ニングセンターにセットして被削材S50Cに対し、切
削油を用いずに切削速度50m/min.、送り0.3
mm/revの条件で穴深さ30mmの加工を行なっ
た。そのテスト結果は表9中に示す。表9において、
「加工できた穴数」はドリルが折損するまでに加工でき
た穴の数を示す。
【0060】この結果から、表面処理により、すくい面
を含むみぞ部の被覆膜の増加表面積比率を本発明の範囲
内とした発明品20〜23は優れた耐折損性を有してい
ることがわかる。その中でも、すくい面を含むみぞ長さ
の30%以上の領域で表面処理され、本発明の範囲内の
増加表面積比率を有する発明品21〜23は特に優れた
性能を示すことも判明した。
【0061】
【表9】
【0062】以上のように開示された発明の実施の形態
と実施例は、すべての点で例示であって制限的なもので
はないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述
の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許
請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更
を含むことが意図される。
【0063】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、被覆
層が形成された硬質材料において被覆層の耐剥離性と耐
欠損性を大幅にかつバランスよく向上させることがで
き、被覆層の表面粗さを三次元的に制御することができ
るので、非常に工具寿命のばらつきの少ない被覆硬質工
具を得ることができる。その結果、被覆硬質工具が用い
られる、工業レベルでの機械加工の製造現場での工具寿
命を著しく安定させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の工具の一例として工具チップのコーナ
ー部を拡大して模式的に示す斜視図(a)と、(a)に
おいてX−Y方向に沿った模式的な断面図(b)と
(c)である。
【図2】本発明の工具の一例としてドリルを示す側面図
である。
【図3】本発明の実施例1の切削試験で用いられる被削
材を示す図である。
【符号の説明】
1,11 すくい面 2,12 逃げ面 3 ノーズR部 10 切れ刃 13 みぞ A 切れ刃稜線部 L みぞ長さ

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 硬質材料からなる基材と、その基材の表
    面に形成された被覆層とを備えた被覆硬質工具におい
    て、 前記被覆層の表面の少なくとも一部が、その被覆層の鏡
    面状態の表面積に対して1.001以上1.020以下
    の比率で拡大された表面積を有することを特徴とする、
    被覆硬質工具。
  2. 【請求項2】 前記比率が1.001以上1.010以
    下である、請求項1に記載の被覆硬質工具。
  3. 【請求項3】 前記被覆層の厚みは、0.5μm以上1
    00μm以下である、請求項1または2に記載の被覆硬
    質工具。
  4. 【請求項4】 前記被覆層の厚みは、15μm以上10
    0μm以下である、請求項3に記載の被覆硬質工具。
  5. 【請求項5】 前記被覆層の少なくとも一部は、前記工
    具の切れ刃稜線部、すくい面および逃げ面からなる群よ
    り選ばれた少なくとも1つの領域である、請求項1から
    4までのいずれかに記載の被覆硬質工具。
  6. 【請求項6】 前記被覆層の少なくとも一部は、前記切
    れ刃稜線部上でノーズR部を含む切削に関与する切れ刃
    長さの30%以上の領域である、請求項5に記載の被覆
    硬質工具。
  7. 【請求項7】 前記工具は穴あけ工具であって、前記被
    覆層の少なくとも一部は、前記工具の切れ刃稜線部、す
    くい面、逃げ面およびみぞからなる群より選ばれた少な
    くとも1つの領域である、請求項1から4までのいずれ
    かに記載の被覆硬質工具。
  8. 【請求項8】 前記被覆層の少なくとも一部は、前記す
    くい面を含む切削に関与するみぞ長さの30%以上の領
    域である、請求項7に記載の被覆硬質工具。
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