JPH09306401A - 直熱型電子銃における陰極支持構造 - Google Patents

直熱型電子銃における陰極支持構造

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JPH09306401A
JPH09306401A JP11586696A JP11586696A JPH09306401A JP H09306401 A JPH09306401 A JP H09306401A JP 11586696 A JP11586696 A JP 11586696A JP 11586696 A JP11586696 A JP 11586696A JP H09306401 A JPH09306401 A JP H09306401A
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照久 平島
Toshiroku Shimotori
利六 下鳥
Susumu Wada
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 機械的振動や衝撃に対して強度の強い構造で
かつ熱変形による電場分布の変化の少ない堅牢な構造と
することができる上に熱輻射及び熱伝導による熱放射
(逃げ)を最小限に抑え得て加熱電力を少なくすること
ができ、低真空環境の下での動作が可能で長寿命化を図
ることができるようにする。 【構成】 ランタン,セリウム又はカルシウムのほう化
物から成り、かつ、円盤状の陰極本体部2aとこの陰極
本体部2aの下端側の周面に突設されたフランジ部2b
とをそれぞれ有する陰極2を用い、陰極本体部2aの側
面及びフランジ部2bの上面を熱輻射抑制用円筒部材1
6で覆うと共に、パイログラファイト製の発熱体8と熱
輻射抑制用円筒部材16の天井壁16aとの間に陰極2
を配置し、弾性力付与手段から付与される弾性力(例え
ば、スプリング11から常時付与される附勢力)によ
り、この陰極2をこれらの間に挟み込んだ状態で支持す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、直熱型電子銃にお
ける陰極支持構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近においては、電子線の照射によりプ
ラスチック,ゴム等の改質,滅菌などを行う産業用プロ
セシングと呼ばれる技術の利用が次第に盛んになりつつ
ある。それ等に使用される電子線の平均強度は、従来の
医療用X線やテレビのそれより遥かに大きい。この場
合、必要な電流を安定にかつ確実に供給するためには、
使いやすく長寿命であり、ビーム電流強度だけでなく、
ビーム断面の形状、広がり等の性質の再現性も良好な電
子銃が不可欠である。
【0003】電子銃は、電子の発生源として高温物体の
熱電子,プラズマ中の電子,強電場により低温物体から
引き出される電子,あるいはレーザー等により固体表面
から放出される電子等を使用している。なお、産業用プ
ロセシングの目的に用いる電子銃としては、装置の簡単
さ、コスト等の観点から熱電子源が最も多く使用されて
いるのが実状である。
【0004】その熱電子の発生方法にも各種の方法があ
るが、大きく分けて、高融点金属を2000度以上の高
温として金属内部の電子にエネルギーを与え、金属表面
の電子放出を妨げる障壁(仕事関数)を乗り越えさせる
方法と、何らかの方法で仕事関数を小さくして、比較的
低温で電子を取り出そうとする方法の二つに大別され
る。前者は最も簡便であるが、真空中において高温材料
は熱伝導以外にも、その絶対温度の4乗と表面積に比例
する熱量を、可視光,赤外線などの電磁エネルギーとし
て放出するので、必要とする電流を得るための加熱電力
は温度と共に急上昇することとなる。そこでこのような
不具合を解消するために高融点金属の表面積を小さくし
てその熱輻射損失を少なくし、また熱伝導による損失を
押さえるために細いフィラメントが多く用いられる。し
かし、フィラメントは熱変形し、電場の形状が変化しや
すいから、ビームの直径を絞って常に一定の軌道を通ら
せる必要のある用途には適していない。また高融点金属
であっても白熱した状態に保つことによって、結晶構造
や組成に変化を生じ、脆くなることが多く、真空中の残
留気体から発生するイオンにより叩かれるバックボンバ
ードにより細い線が損傷を受けることもあって、短寿命
となりがちである。
【0005】フィラメント型ではないタイプとして、金
属板を陰極とし、別のフィラメントの大強度の電流を低
い電圧で加速して衝突させ、加熱をする間接加熱型があ
る。陰極が板状であるので変形させて、凹面反射鏡の形
とし、表面から放出された電子が加速により集束され
る、ピアス型と呼ばれる電場配置を得ることができる
し、変形しにくい、バックボンバードにも耐え易いなど
の利点がある。また損傷しても、陰極の金属部の交換を
容易とすることが可能で、そうしたものにはディスペン
サーカソードの名がある。表面積がフィラメントより大
きいから加熱電力が大きくなるが、電子の衝突により加
熱するので、エネルギーを金属板に集中させることが熱
伝導などの方法より容易である。それでも必要加熱電力
は当然大きく、また加熱電子用のフィラメント電源,ボ
ンバード用加速電源を通常の電子銃電源以外に必要とす
るので、大電流と良好なビーム特性の両方を必要とする
研究用などの特殊な用途に使用されることが多い。
【0006】仕事関数が低い、あるいは他の金属の表面
に存在することによって仕事関数を引き下げる、などの
性質を持つ材料としてはアルカリ,アルカリ土類金属等
がある。ところが、これらの材料単独では融点が低すぎ
たり、大気中は勿論、真空中でもよほどの高真空状態で
ないと、不純物と反応して電子放出特性が劣化する失活
と呼ばれる現象が起き易いなどの問題がある。しかし、
使用温度が低いので、使用条件を守りさえすれば電子銃
の寿命を長くでき、電流その他の再現性も良いので、多
様な構造が開発され、真空管その他の用途に広く使用さ
れているのが現状である。
【0007】ただし、産業用プロセシングにおける電子
銃の使用条件は真空管のように良好ではなく、常に高真
空のもとに使用できるとは限らない。大気に晒されるこ
ともある。また、平均電流が大きいので、イオンのバッ
クボンバードも多い。従って特性がいかに良好であって
も、デリケートな材料は使用できない。そのため、プロ
セシング用の直流加速器では、純タングステンのフィラ
メントを低めの温度で使用して、長寿命を実現している
ものが多い。その場合はフィラメントの表面積当たりの
電流量は勿論少ないが、ビームの径が大きくても済むの
で、太いフィラメントで大きい陰極を形成して表面積を
大きくし、必要な寿命と電流量を得ている。
【0008】しかし、パルス運転の高周波加速器では、
平均電流を大きくするために、できる限り大きな電流を
パルス時間内に陰極から引き出さねばならない。また高
周波加速に必要なビームの時間的及び空間的集束のため
には、陰極の直径が小さいことが望ましいので、陰極の
面積当たりのビーム放出量が大きくなくてはならず、純
タングステンでは非常に高温にしないと目的を達するこ
とができない。そのためパルス加速器では、仕事関数の
低い材料を陰極に使用するのが普通であるが、プロセシ
ングに使用するには幾つかの問題の解決が必要である。
【0009】金属表面の仕事関数の低い状態を作り出す
方法としては、セシウム,バリュウム等を表面に付着さ
せる方法が最も知られているが、何れも使用する真空環
境に対する要求が厳しく、プロセシング用としての実用
性には問題がある。
【0010】一方、従来より、ランタン(La),セリ
ウム(Ce),カルシウム(Ca)等のほう化物が仕事
関数が比較的小さく、真空条件が従来の低仕事関数の材
料より厳しくなく、充分な耐熱性を持つことが知られて
いたが、加速器の電子銃陰極として使用されるようにな
ったのは最近である。その理由は、それ等は金属のよう
な延性,展性を持たず、線条に加工できないし、電気伝
導度が比較的良好なので抵抗加熱ができないから、熱伝
導又はボンバードによる加熱が必要であるためである。
ボンバード法は別個の陰極とボンバード電源を要する
し、結晶の電子衝撃スパッタによる寿命短縮が報告され
ており、余り使われていない。さらに、これらの材料に
は、高温下で金属と接触すると、化学反応が発生して電
子放出が起きなくなる現象があり、熱伝導加熱方式で
は、この点を考慮した陰極支持構造を採用しなければな
らない。
【0011】図5はこの点を考慮して開発された従来の
陰極支持構造を示すものであって、この従来の陰極支持
構造にあっては、円盤状の陰極本体部30aとこの陰極
本体30aの下面に同軸状に一体成形された摘み部30
bとをそれぞれ有する断面T字形状のLaB6 製の陰極
30を使用している。そして、上述の摘み部30bを左
右一対のグラファイト製の薄い発熱体31,32で挟み
込むと共に、絶縁体支持台33上に立設された一対の挟
持部材34,35の先端間にこれらの発熱体31,32
を挟み込み、この状態の下で前記一対の挟持部材34,
35に板ばね36,37の弾性復元力を作用させること
により陰極30の摘み部30bを発熱体31,32と一
緒に挟持して陰極30を支持するような構造を採用して
いる。なお、図5において、38,39は板ばね36,
37を挟持部材34,35の側に押しつけるための押さ
え部材である。
【0012】また、この場合、通常のグラファイトは電
気伝導度が良好なため電流による発熱効果が少ないの
で、電気伝導度の異方性が大きいパイログラファイトを
使用し、電流が流れる方向を電気伝導度の低い方向に選
ぶと共に、面積を小さくして、グラファイト片の抵抗値
を大きくしている。図5に示す従来例では、前記一対の
挟持部材34,35間に電圧を印加して発熱体31,3
2の積層面に直交する方向(抵抗値が大きい方向)に電
流を流して発熱させるようにしている。また、この従来
例では、発熱体31,32として最小寸法の部品を使用
し,高温部分の表面積を小さくして輻射によるエネルギ
ー損失を押さえることに成功しており、加熱電力も少な
くて済む利点がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
如き従来の陰極支持構造では、陰極30を小さいグラフ
ァイト片(発熱体31,32)で挟んで支持する構造な
ので、電子引き出し用電極や電子引き出し用グリッドと
の組合せにより電場を形成させる際の陰極30の位置関
係や平行度を計算通りに設定するにはかなりの注意を払
わねばならない。また、長時間の高温動作による変形や
摩耗に起因する幾何学的配置の変化を修正するための作
業も容易ではないという問題点がある。
【0014】また、機械的により強固な構造として、タ
ングステンやジルコニウムの多孔質の焼結体にランタン
等のほう化物を含浸させる方法もあるが、この方法の場
合には比較的低真空で使用できる利点はあるものの、バ
リウムなどを含浸させ、マトリクスの金属の仕事関数を
低下させて、全表面を活性化する場合と異なり、電子を
放出する有効面積が少なくなるという問題点がある。
【0015】本発明は、このような種々の問題点に鑑み
てなされたものであって、その目的は、機械的振動や衝
撃に対して強度の強い構造でかつ熱変形による電場分布
の変化の少ない堅牢な構造とすることができる上に熱輻
射及び熱伝導による熱放射(逃げ)を最小限に抑え得て
加熱電力を少なくすることができ、低真空環境の下での
動作が可能で長寿命化を図ることができるような構成の
直熱型電子銃における陰極支持構造を提供することにあ
る。
【0016】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、本発明では、ランタン,セリウム又はカルシウム
のほう化物から成り、かつ、円盤状の陰極本体部とこの
陰極本体部の下端側の周面に突設されたフランジ部とを
それぞれ有する陰極を用い、前記陰極本体部の側面及び
前記フランジ部の上面を熱輻射抑制用円筒部材で覆うと
共に、前記陰極本体部の下方に配置されたパイログラフ
ァイト製の発熱体と前記フランジ部の上方に配置された
前記熱輻射抑制用円筒部材の天井壁との間に前記陰極を
配置し、弾性力付与手段から付与される弾性力により、
前記陰極をこれらの間に挟み込んだ状態で支持するよう
にしている。
【0017】また、本発明の直熱型電子銃における陰極
支持構造では、支持棒の先端に取付けた前記発熱体の上
面を前記陰極本体部の下面に接触させると共に、この下
面とは反対側の前記フランジ部の上面をパイログラファ
イト製のリング状の押さえ部材を介して前記熱輻射抑制
用円筒部材の天井壁に対応配置して陰極がパイログラフ
ァイト以外の材料に接触することを防ぐと共に、この状
態の下で、前記支持棒をスプリングの附勢力にて常時附
勢することにより前記陰極を弾性的に挟持するようにし
ている。
【0018】また、本発明の直熱型電子銃における陰極
支持構造では、前記発熱体の上面中央部に嵌合突起を設
けると共に、前記陰極本体部の軸心に嵌合穴を設け、こ
の嵌合穴に前記発熱体の嵌合突起を嵌合させることによ
り前記陰極と発熱体との間の相対的な位置規制をするよ
うにしている。
【0019】また、本発明の直熱型電子銃における陰極
支持構造では、高融点物質から成り、前記発熱体の下面
及び側面を覆うカップ形状の熱遮蔽部材を、前記支持棒
に取付けるようにしている。
【0020】また、本発明の直熱型電子銃における陰極
支持構造では、前記発熱体の側面を覆う前記熱遮蔽部材
の周壁部分を同軸多重構造にしている。
【0021】また、本発明の直熱型電子銃における陰極
支持構造では、前記熱輻射抑制用円筒部材をタンタル又
はモリブデン等の高融点金属又はカーボンにて構成構成
するようにしている。
【0022】また、本発明の直熱型電子銃における陰極
支持構造では、前記熱輻射抑制用円筒部材を支持台上に
支持する支持脚を通しての熱伝導による熱放散を抑える
べく、本来は全体として円筒形状をなす支持脚の一部を
切り欠き、周面に部分的に配設された複数本の円弧状部
分にて前記支持脚を構成している。
【0023】また、本発明の直熱型電子銃における陰極
支持構造では、前記発熱体への加熱電流の供給のための
リード線としての機能を兼ねる前記支持棒を、機械的強
度および電流抵抗の許す範囲内で細い支柱として構成
し、これにより前記支持棒を通しての熱伝導による熱放
散を抑えるようにしている。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について図
1〜図4を参照して説明する。
【0025】図1は本発明の第1実施例を示すものであ
って、本例の陰極支持構造を具備する直熱型電子銃1
は、低真空環境下で大電流を得られる材料の1つである
ランタンのほう化物(LaB6 )を素材とする陰極2を
有している。本例において用いられるLaB6 製の陰極
2は、図1に示す如く断面がハット形状のものであっ
て、円盤状の陰極本体部2aとこの陰極本体部2aの下
面側に同軸状に一体成形されて外周側に突出したリング
形状のフランジ部2bとをそれぞれ有している。そし
て、陰極2の円盤状の陰極本体部2aの軸心部分には嵌
合穴3が設けられている。かくして、この陰極2は直熱
型電子銃1において次のような構造にて支持されてい
る。
【0026】まず、図1においては直熱型電子銃1を断
面にして示しているが、この直熱型電子銃1の全体形状
は図1の断面中心に対し全て回転対称形である。図1に
おいて、4はセラミック等の絶縁材から成る支持台であ
り、この支持台4に形成された貫通孔5に導電材から成
る電極(電流端子)6が軸線方向(上下方向)に沿って
摺動可能に嵌合配置されている。そして、この電極6の
一端側には導電材から成る細い支持棒7が一体に取付け
られており、支持棒7が軸線方向(上下方向)に移動可
能な状態で支持台4から上方に向けて突出配置されてい
る。
【0027】さらに、上述の支持棒7の先端部には、軸
方向に電気伝導度の小さいパイログラファイト製の発熱
体8が嵌着状態で一体に取付けられると共に、この発熱
体8に対応する支持棒7の上部箇所にカップ形状の熱遮
蔽部材9が熱輻射の抑制のために取付けられている。な
お、熱遮蔽部材9の開口側は上方に向けられ、前記発熱
体8の底面及び周面が熱遮蔽部材9にて覆われた状態と
なされている。また、支持棒7の中間箇所にはばね受け
板10が固着され、このばね受け板10と支持台4との
間にスプリング(圧縮コイルばね)11が装着されてい
る。従って、このスプリング11の附勢力によって、支
持棒7ひいては発熱体8が上方に向けて弾性的に常時附
勢されている。
【0028】また、上述の如く支持棒7の上端に取付け
られた発熱体8の上面中央部には嵌合突起8aが設けら
れており、この嵌合突起8aが陰極2の嵌合穴3内に挿
嵌されている。従って、前記支持棒7は発熱体8及び陰
極2の支持部材としての役目を果たすと共に、後述の如
く電流供給用のリード線としての機能をも果たすように
なっている。なお、支持棒7を細く構成しているのは、
支持棒7を介しての熱伝導による熱放散を抑えるためで
ある。
【0029】一方、前記支持台4上には支持脚12が立
設されている。この支持脚12は、導電材から成る本来
は円筒形状の部材を例えば等角度間隔の3箇所を軸心方
向に沿って完全に切り欠くことにより、約30度の中心
角をそれぞれ有しかつほぼ120度間隔の位置に配置さ
れた3つの円弧状の部分12aにて構成したものであっ
て、これら3つの円弧状の部分12aは、それらの下端
に溶接結合された取付板13をボルト14及びナット1
5にて前記支持台4上にねじ止めされて支持台4上に固
定配置されるようになっている。さらに、これら3つの
円弧状の部分12aの上部には、タンタル又はモリブデ
ン等の高融点金属あるいはカーボンから成る熱輻射抑制
用円筒部材(陰極外円筒)16が取付けられている。そ
して、この円筒部材16の内部には、陰極(LaB6
が高温でこの円筒部材16と反応することを防ぐために
リング形状のパイログラファイト製押さえ部材17が後
述の如く配設されるようになっている。
【0030】すなわち、パイログラファイト製押さえ部
材17は、熱輻射抑制用円筒部材16内においてその天
井壁16aに対応して配置されると共に、支持棒7,発
熱体8及び陰極2を順次介して常時作用するスプリング
11の附勢力にて、上述の天井壁16aと陰極2のフラ
ンジ部2bとの間に挟持された状態で介在されるように
構成されている。しかして、陰極2はスプリング11の
附勢力によって上方(パイログラファイト製押さえ部材
17及び熱輻射抑制用円筒部材16の天井壁16aに向
かう方向)に常時附勢されており、これにより、陰極2
のフランジ部2bの上面及び陰極2の陰極本体部2aの
下面中央箇所にパイログラファイト製押さえ部材17及
び発熱体8がそれぞれ挟着された状態で陰極2がこれら
の間に挟持されて支持されるようになっている。
【0031】なお、上述の如く陰極2が支持された状態
の下では、陰極2の陰極本体部2aがパイログラファイ
ト製押さえ部材17の中心孔に貫通配置されると共に、
その陰極本体部2aの上部部分が熱輻射抑制用円筒部材
16の中心孔に挿通配置されて陰極2の上面が熱輻射抑
制用円筒部材16の天井壁16aから露出されている。
また、この場合、陰極2は熱輻射抑制用円筒部材16に
直接接触することなく、かつ、前記熱遮蔽部材9にも接
触することなく配置される。一方、既述の発熱体8及び
押さえ部材17の構成材料であるパイログラファイトの
電気伝導度及び熱伝導度は軸方向に小さく、半径方向に
大きくなるように製作されている。
【0032】また、本例の直熱型電子銃1にあっては、
電極6に螺着されたダブルナット18が一方の電流端子
となされると共に、取付け用のボルト14に螺着される
前記ナット15が他方の電流端子となされている。かく
して、発熱体8ひいては陰極2の加熱のための電流は、
例えば、電極6の電流端子18から供給され、リード線
としての支持棒7,パイログラファイト製の発熱体8,
LaB6 製の陰極2,パイログラファイト製の押さえ部
材17,熱輻射抑制用円筒部材16へと流れ電流端子1
5へ戻るように構成されている(なお、この電流の向き
を逆にしてもよい)。この際、支持棒7と熱輻射抑制用
円筒部材16に加熱電圧が印加されるのに応じて、パイ
ログラファイト製発熱体8が加熱され、この発熱体8か
らの熱伝導によりこれに接触する陰極2が加熱される。
なお、これと同時に、熱輻射抑制用円筒部材16及び支
持棒7も電流により加熱されるが、パイログラファイト
製の発熱体8及び押さえ部材17に隣接する場所から遠
ざかるにつれて温度は低下する。
【0033】このような構成の直熱型電子銃1における
陰極2の支持構造によれば、陰極2はその陰極本体部2
aの下面及びフランジ部2bの上面においてのみパイロ
グラファイト製発熱体8及びパイログラファイト製押さ
え部材17にそれぞれ接触する構造となっているため、
高温で金属と反応することは皆無である。
【0034】さらに本例によれば、LaB6 製の陰極2
を使用しているため、10-5 Torr程度の低真空度
の環境においても使用可能である。
【0035】また、構造をすべて軸対称とし、かつ、発
熱体8の支持部をスプリング11で常時附勢しているた
め、陰極2,発熱体8,及び押さえ部材17の相互の位
置関係が加熱や陰極2の損耗等によって変化され難い構
造となっている。すなわち、加熱膨張による変化(温度
変化に伴う寸法変化)や損耗による経時変化を生じて
も、それらの変化分はスプリング11の附勢力にて完全
に適宜に吸収されることとなるため、陰極2と発熱体8
との熱接触状態並びに電気伝導性を良好に維持すること
ができ、各部材相互の位置変化に伴う特性の劣化を回避
できる。
【0036】また、発熱体8の放熱は殆ど熱輻射によっ
てなされるが、この部分における熱輻射はカップ状の熱
遮蔽部材9によって抑制される。一方、支持棒7を熱伝
導による熱損失(熱放散)を避けるべく機械的強度およ
び電流抵抗の許す範囲内で細くするようにしており、さ
らに、支持棒7と共に陰極加熱用電流の通路を兼ねる支
持脚12を熱伝導及び熱輻射損失を少なくすべくこの支
持脚12の周面の大部分をカットしてあるので、熱伝導
による熱放散は最小限に抑えられる。従って、熱輻射及
び熱伝導による陰極発熱部からの熱の放散(逃げ)を小
さく抑えることができる。その結果、従来の場合よりも
低い加熱温度でも十分に電子銃としての機能を発揮させ
ることができ、低電力(低消費)による稼働が可能とな
る。
【0037】図2は本発明の第2実施例を示すものであ
って、本例では、電子を引き出すためのパイログラファ
イト製のグリッド20が陰極2と同一のセラミック製の
支持台4にグリッド支持柱21を介して支持されてい
る。また、本例においては、中心に1mmφの嵌合穴3
を有する電子放射面6mmφのランタンの多結晶ほう化
物(低真空環境下で大電流を得られる材料の1つ)から
成る陰極2と、円形孔を有する厚さ1mmのリング状の
パイログラファイト製押さえ部材17と、4mmφ×5
mmhのパイログラファイト製発熱体8と、1mmφの
タンタル線から成る円柱状の支持棒7とをそれぞれ使用
している。
【0038】本例の場合には、熱輻射抑制用円筒部材1
6に陰極電位が、電子引き出し用グリッド20に引き出
し電位が与えられる。電子ビームのグリッド20による
カットオフのための、グリッド20の熱輻射抑制用円筒
部材16に対する電位は、グリッド20の構造と引き出
し電極、あるいはアノード(陽極)電極によりグリッド
位置に作られる電場の大きさに依存し、負の数+Vから
数百Vである。グリッド電位を0Vないし正の数100
Vとすることにより、アノードとグリッド間の加速電場
に電子を引き出し、加速をする。電流密度は陰極の温度
及び引き出し電圧により数10mA/cm2 から数A/
cm2 の間で変化する。例えば、約100Wの加熱電力
により、1A/cm2 以上の電流を引き出している。そ
の電流値は1×10-6 Torr程度の真空度で使用し
た場合でも、数百時間以上の使用に対して、引き出され
た電流の特性は測定誤差の範囲内ではほとんど変化をし
ない。なお必要であれば、陰極表面をピアス(Pier
ce)条件を満足するように加工成形することもできる
が、産業用プロセシングの目的に使用される特性の電子
ビームを得るのに、これまでのところそのような加工の
必要性は認められていない。
【0039】図3は本発明の第2実施例を示すものであ
って、本例では、電子を引き出すための電位がラッパ状
の電極23に加えられる以外は前記実施例2と同様の構
造が採用されている。前記実施例2に比べた場合の本例
の利点は、グリッドが無いため、グリッドの加熱による
熱電子放出が無いこと、及びグリッドにより電子が失わ
れない点にある。他方、引き出し電圧及びカットオフ電
圧は前記実施例2(図2)の場合の10倍程度必要とな
る。従って、大電流を必要とする場合は、本例のほうが
前記実施例2より優れている。
【0040】以上、本発明の実施例につき述べたが、本
発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発
明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能で
ある。例えば、既述の実施例では、LaB6 製の陰極2
を使用するようにしたが、これとは別の低真空環境下で
大電流を得られる材料、すなわち、セシウムのほう化
物、あるいはカルシウムのほう化物を使用することが化
可能である。具体的には、CeB6 ,CaB6 ,BaB
6 等が陰極2の材料として使用可能である。
【0041】また、スプリング11による支持棒7,発
熱体8及び陰極2の附勢機構に限らず、これらの部材に
弾性力を常時付与するための機構であればどのような機
構を採用してもよい。
【0042】さらに、図4に示すように、熱遮蔽部材9
の周壁部を9aを2重の同軸構造あるいはそれ以上の多
重構造にすることも可能である。このようにした場合に
は、発熱体8からの輻射熱の放散をより効果的に防止で
きる。
【0043】
【発明の効果】以上の如く、本発明の陰極支持構造によ
れば、比較的に低コストで入手が容易なランタン,セリ
ウム又はカルシウムのほう化物から成る陰極を使用する
ようにしたので、産業用プロセシング等の用途において
しばしば遭遇する低真空の使用環境でも容易に使用でき
る直熱型電子銃を提供することが可能となる。
【0044】また、本発明の陰極支持構造によれば、パ
イログラファイト製発熱体に弾性手段により附勢力を常
時付与せしめ、この弾性手段より付与される附勢力にて
前記発熱体とパイログラファイト製押さえ部材との間に
陰極を挾持した状態で前記陰極を支持するようにしたの
で、機械的振動や衝撃に対し、陰極,グリッド,引き出
し電極等の相対的位置の変化が起こりにくい構造(変化
を吸収できる構造)にすることができ、また熱変形によ
る電場分布の変化の少ない堅牢な構造にすることができ
るので、電子ビームの特性に再現性があり、かつ長時間
の使用に対して安定な大強度電子銃を提供できる。さら
に、陰極の接触部分のすべてにパイログラファイトを使
用することによって、長時間の使用に対して陰極の失活
の起こりにくい長寿命の直熱型電子銃を提供できる。
【0045】また、本発明の陰極支持構造によれば、発
熱体の熱輻射による熱放散を抑えるべく熱遮蔽部材を設
け、かつ、支持棒及び支持脚を介しての熱伝導による熱
放散を抑えるべく支持棒を細くしたり支持脚を切り欠く
ようにしているので、加熱電力が少なくて済み、しかも
発熱体の加熱温度が比較的低くて済むような長寿命の実
用的な電子源を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る陰極支持構造を示す
断面図である。
【図2】本発明の第2実施例に係る陰極支持構造を示す
断面図である。
【図3】本発明の第3実施例に係る陰極支持構造を示す
断面図である。
【図4】熱遮蔽部材の変形例を示す陰極支持構造の要部
の拡大断面図である。
【図5】従来の陰極支持構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 直熱型電子銃 2 LaB6 製の陰極 2a 陰極本体部 2b フランジ部 3 嵌合穴 4 支持台 5 貫通孔 7 支持棒 8 パイログラファイト製の発熱体 8a 嵌合突起 9 熱遮蔽部材 9a 周壁部 11 弾性付与手段としてのスプリング 12 支持脚 12a 円弧状部分 15 ナット(電流端子) 16 熱輻射抑制用円筒部材 17 パイログラファイト製の押さえ部材 18 ダブルナット(電流端子) 20 電子引き出し用グリッド 23 電子引き出し用電極

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ランタン,セリウム又はカルシウムのほ
    う化物から成り、かつ、円盤状の陰極本体部とこの陰極
    本体部の下端側の周面に突設されたフランジ部とをそれ
    ぞれ有する陰極を用い、前記陰極本体部の側面及び前記
    フランジ部の上面を熱輻射抑制用円筒部材で覆うと共
    に、前記陰極本体部の下方に配置されたパイログラファ
    イト製の発熱体と前記フランジ部の上方に配置された前
    記熱輻射抑制用円筒部材の天井壁との間に前記陰極を配
    置し、弾性力付与手段から付与される弾性力により、前
    記陰極をこれらの間に挟み込んだ状態で支持するように
    したことを特徴とする直熱型電子銃における陰極支持構
    造。
  2. 【請求項2】 支持棒の先端に取付けた前記発熱体の上
    面を前記陰極本体部の下面に接触させると共に、この下
    面とは反対側の前記フランジ部の上面をパイログラファ
    イト製のリング状の押さえ部材を介して前記熱輻射抑制
    用円筒部材の天井壁に対応配置し、この状態の下で、前
    記支持棒をスプリングの附勢力にて常時附勢することに
    より前記陰極を弾性的に挟持するようにしたことを特徴
    とする請求項1に記載の直熱型電子銃における陰極支持
    構造。
  3. 【請求項3】 前記発熱体の上面中央部に嵌合突起を設
    けると共に、前記陰極本体部の軸心に嵌合穴を設け、こ
    の嵌合穴に前記発熱体の嵌合突起を嵌合させることによ
    り前記陰極と発熱体との間の相対的な位置規制をするよ
    うにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の直熱
    型電子銃における陰極支持構造。
  4. 【請求項4】 高融点物質から成り、前記発熱体の下面
    及び側面を覆うカップ形状の熱遮蔽部材を、前記支持棒
    に取付けるようにしたことを特徴とする請求項2又は3
    に記載の直熱型電子銃における陰極支持構造。
  5. 【請求項5】 前記発熱体の側面を覆う前記熱遮蔽部材
    の周壁部分を同軸多重構造にしたことを特徴とする請求
    項4に記載の直熱型電子銃における陰極支持構造。
  6. 【請求項6】前記熱輻射抑制用円筒部材をタンタル又は
    モリブデン等の高融点金属又はカーボンにて構成したこ
    とを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の直
    熱型電子銃における陰極支持構造。
  7. 【請求項7】 前記熱輻射抑制用円筒部材を支持台上に
    支持する支持脚を通しての熱伝導による熱放散を抑える
    べく、本来は全体として円筒形状をなす支持脚の一部を
    切り欠き、周面に部分的に配設された複数本の円弧状部
    分にて前記支持脚を構成したことを特徴とする請求項1
    乃至6の何れか1項に記載の直熱型電子銃における陰極
    支持構造。
  8. 【請求項8】 前記発熱体への加熱電流の供給のための
    リード線としての機能を兼ねる前記支持棒を、機械的強
    度および電流抵抗の許す範囲内で細い支柱として構成
    し、これにより前記支持棒を通しての熱伝導による熱放
    散を抑えるようにしたことを特徴とする請求項1乃至7
    の何れか1項に記載の直熱型電子銃における陰極支持構
    造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP5011383B2 (ja) * 2007-05-16 2012-08-29 電気化学工業株式会社 電子源
JP2017532719A (ja) * 2014-08-22 2017-11-02 ア−カム アーベー 改善された電子ビーム生成

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