JPH0928378A - 神経細胞特異的に発現するアデノウイルスベクター - Google Patents

神経細胞特異的に発現するアデノウイルスベクター

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JPH0928378A
JPH0928378A JP7203838A JP20383895A JPH0928378A JP H0928378 A JPH0928378 A JP H0928378A JP 7203838 A JP7203838 A JP 7203838A JP 20383895 A JP20383895 A JP 20383895A JP H0928378 A JPH0928378 A JP H0928378A
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lacz
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adenovirus
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Katsuhiko Mikoshiba
克彦 御子柴
Izumi Saito
泉 斎藤
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SOOSEI KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 神経細胞への遺伝子導入に利用されるアデノ
ウイルスベクターを提供することを目的とする。 【構成】 本発明は、小脳プルキンエ細胞又はオリゴデ
ンドロサイト特異的に発現する非増殖型アデノウイルス
ベクター及びそれを用いた神経特異的遺伝子導入法であ
る。本発明のアデノウイルスベクターは神経細胞特異的
な遺伝子発現システムに有用である。特に、顕著な毒性
なく、成熟した神経細胞に機能のある分子を効率的に発
現でき、遺伝子の機能研究、脳障害の治療などに利用で
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアデノウイスルベク
ターに関する。より詳細には、遺伝子の機能研究、遺伝
子産物の細胞による生産、ヒトに対する遺伝子治療等の
目的で、細胞に遺伝子を導入する非増殖アデノウイルス
産生に関する。
【0002】
【従来の技術】アデノウイルスベクターは将来実用的な
遺伝子治療技術として、また神経系等の高度に分化した
細胞での発現研究の面で急速に普及してきている。既
に、いくつかのウイルスベクターは外部遺伝子を神経細
胞に運ぶ方法として確立しつつあり、その中でHSV1
やレトロウイルスによる遺伝子の導入は脳機能の研究の
上で有用性を示してきている。しかしながら、顕著なダ
メージを与えることなく、増殖が休止した神経組織への
効率的な遺伝子の運搬には未だ困難な側面を有する。こ
の観点から、最近、アデノウイルスを用いた方法が静止
期の神経細胞への遺伝子導入方法として有益であるとい
われており、その特長として、以下の点が挙げられてい
る。 1)数kbまでのDNAでコードされる外来遺伝子を導
入できる。 2)幅広い生物種の様々なタイプの細胞に導入できる(L
e Gal La Salle et al.Science 259, 988-990, 1993; D
avison et al. Nature Genet. 3, 219-223, 1993; Akli
et al. Nature Genet. 3, 224-228, 1993. Bajocchi C
aillaud et al.Nature Genet. 3, 229-234, 1993)。 3)濃い濃度のウイルス液を調製できる。 4)細胞毒性が他のベクターに比較して相対的に低い。 これらの特長は、成熟した神経細胞における試験管内及
び生体内における研究に遺伝子治療を含めて有用であ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述の如く、アデノウ
イルスベクターにより静止細胞への遺伝子導入が可能で
あり、分化した細胞や特に神経系への遺伝子導入方法と
して、初代培養や動物個体への遺伝子導入実験が注目さ
れている。多種多様な細胞により構成される哺乳類の中
枢神経系における研究においては、特定の神経細胞に特
定の分子を発現することが望まれている。これは、多く
の場合、神経機能に重要な遺伝子は細胞のタイプ特異的
に発現するからである。本発明者等も従来より、遺伝子
導入法としてレトロウイルスベクターの研究を行ってき
ているが、上述のアデノウイルスベクターの研究も併せ
て行ってきており、脳細胞特異的に発現する遺伝子導入
法を研究した結果、その哺乳類小脳において神経細胞特
異的に目的とする遺伝子の発現を行うことができること
を確認し、本発明を完成した。本発明はかかる知見に基
づいてなされたもので、本発明は神経細胞に特異的に遺
伝子を導入することができ且つ細胞障害性の低いアデノ
ウイルスベクター及びそれを用いた神経細胞への遺伝子
導入法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めになされた本発明は、 小脳プルキンエ細胞特異的に発現する非増殖型アデノ
ウイルスベクター; オリゴデンドロサイト特異的に発現する非増殖型アデ
ノウイルスベクター; 上記及びで規定された非増殖型アデノウイルスベ
クターを用いた神経特異的遺伝子導入法である。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
上述の如く、神経系の高次機能発現機構、発生、分化機
構の解析には、神経系への効率よい遺伝子導入法を確立
することが必要となる。本発明者等は、神経細胞並びに
小脳初代培養系において、アデノウイルスベクターが成
熟した神経細胞への効率よい遺伝子導入法であることを
明らかにすること、また神経細胞は多種多様に分化して
おりその発生分化機構も細胞型によって異なっているた
め、成熟した神経細胞の細胞型特異的に遺伝子を発現さ
せる方法を試みた。
【0006】前述のように、本発明のアデノウイルスベ
クターは、小脳プルキンエ細胞特異的に発現する非増
殖型アデノウイルスベクター;及びオリゴデンドロサ
イト特異的に発現する非増殖型アデノウイルスベクター
である。上記の本発明のウイルスベクターは、それぞ
れ、小脳のプルキンエ細胞特異的に発現しているプロモ
ーターの支配下に所望する発現遺伝子を融合させた遺伝
子を有する非増殖型アデノウイルス;オリゴデンドロサ
イト特異的に発現しているプロモーターの支配下に所望
する発現遺伝子を融合させた遺伝子を有する非増殖型ア
デノウイルスで特徴付けられる。本発明で利用される非
増殖型アデノウイルスとしては、例えば、アデノウイル
スのC〜E群に属する非造腫瘍性のアデノウイルスが例
示される。
【0007】より具体的な例としては、詳細は後述する
ように、小脳のプルキンエ細胞特異的に発現しているL
7/PCP2のプロモーター、そしてオリゴデンドロサ
イト特異的に発現しているミエリン塩基性蛋白質(myeli
n basic protein, 以下、MBPという)のプロモーター
支配下にlacZ遺伝子を発現させるアデノウイルス、
即ち、それぞれ、AdexL7−LacZ、Adex−
MBP−LacZというアデノウイルスが例示される。
これらのアデノウイルスを作製し、インビトロにおける
細胞型特異性を検討したところ、AdexL7−Lac
Zは小脳初代培養細胞系においてプルキンエ細胞特異的
に、Adex−MBP−LacZはオリゴデンドロサイ
ト特異的にLacZ遺伝子を発現させた。インビボの系
として脳定位固定装置を用い、アデノウイルスのラット
小脳への直接注入を行ったところ、lacZ陽性細胞が
AdexL7−LacZではプルキンエ細胞層のプルキ
ンエ細胞に、Adex−MBP−LacZでは白質に局
在するオリゴデンドログリアにその発現を確認すること
ができた。このように、小脳において、細胞型特異的に
成熟した神経細胞やグリア細胞へ遺伝子を導入すること
ができ本発明を完成するに至った。
【0008】まず、組換アデノウイルスベクターの作製
については、三宅等の確立したDNA-終止蛋白複合体
(DNA-terminal protein complex 1)であるAd5−d1
x(Saito et al. J. Virol. 54, 711-719, 1985)の非
増殖性のヒトアデノウイルスタイプ5を有するコスミド
を用いた。図1に示すように、本発明者等は上記の方法
を用いて8種類のアデノウイルスの遺伝子を遺伝子工学
的に作製した。これらの構築物は基本的にpAdex1
cwとよばれるコスミドベクター由来であり、E1A、
E1B及びE3を欠くAd5ゲノムを有している。この
欠損している領域(E1A及びE1B)に、外来の遺伝子
を挿入している。さらに遺伝子の導入の効果を見る上
で、E. coli lacZ 遺伝子を、組織化学的リポーター遺
伝子として導入して用いている。このlacZは、シス
-アクチング制御エレメント(cis-acting regulatory el
ement)のコントロール下に挿入されている。
【0009】こうして調製した組換アデノウイルスベク
ターは、基本的に2種のカテゴリーに分けることが可能
である。一種は広い範囲の組織で遍く強いプロモーター
活性を持つアデノウイルスであるAdex1SRLac
ZL、Adex1EFLacZL、Adex1CALa
cZ、AdexCAG−NL−LacZである。上記の
うち2種のアデノウイルスはCAGプロモーターを有し
ており、AdexCAG−NL−LacZは核局在シグ
ナル(NL)を有しているが、Adex1CALacZ
は有していない。
【0010】その他は、AdexL7−NL−LacZ
とAdexMBP−NL−LacZであり、それぞれマ
ウスL7/PCP2遺伝子(Oberdick et al. Science 2
48,223-248, 1990; Vandaele et al. Genes Dev. 5, 11
36-1148, 1991)やマウスMBP遺伝子(Kimura et al. P
ro. Natl. Acad. Sci. USA 86, 5661-5665, 1989)から
得た神経細胞特異的なプロモーターをそれぞれ有してい
る。上記のL7/PCP2は、元々小脳のプルキンエ細
胞や網膜のバイポーラー細胞に見出されたものであり(O
berdick et al. Neuron 1, 367-376, 1988)、トランス
ジェニック マウスを用いた研究から、小脳において大
変限局したトランスジーン(trans gene)の発現を示した
(Oberdick et al. Science 248, 223-248, 1990; Vanda
ele et al. Genes Dev. 5, 1136-1148, 1991)。Ade
xL7−NL−LacZにおいては、0.8kbのL7
/PCP2遺伝子配列、即ち、0.4kbの5'フランキ
ング(flanking)と最初のエクソン及びイントロンを持
ち、L7/PCP2のポリA配列を合わせ持つNLla
cZユニットの上流に位置する。
【0011】マウスMBP遺伝子の1.3kbの5'フラ
ンキング配列は、中枢神経系においてオリゴデンドロサ
イトでトランスジーンを発現できるが(Kimura et al. P
ro.Natl. Acad. Sci. USA 86, 5661-5665, 1989)、シュ
ワン細胞では発現しないこと(Gow et al. J. Cell Bio
l. 119, 605-616, 1992)がトランスジェニックマウスの
研究で明らかになっている。このオリゴデンドロサイト
特異的な発現はレトロウイルスを用いたアッセイにおい
ても示されている(Ikenaka et al. New Biol. 4, 53-6
0, 1992)。一方、AdexMBP−NL−LacZにお
いて、MBPプロモーター(1.3 kb)はNLlacZIV
SpAユニットの上流に位置している。対照として、外
部遺伝子を含まないAdex1W及びNLlacZIV
SpAユニットを含むAdexΔP−NL−LacZを
用いた。
【0012】神経細胞への遺伝子導入 こうして、調製したアデノウイルスを用いて、まず数種
の株化神経細胞(例えば、B104,C6やNeuro
2aなど)への感染実験を行った。その際、これらの細
胞は、AdexlCALacZ、AdexEFLacZ
LやAdexlSRLacZなどにより感染多重度
(m.o.i.)20と100で効率的に感染された。
m.o.i.20であった細胞の70%及び100であ
った細胞の100%は顕著な毒性なく、β−ガラクトシ
ダーゼ活性を示した。
【0013】次に成熟した神経組織のモデルとして本発
明者等は、ゲッ歯類の小脳を選択した。これは、容易に
組織内の神経細胞の種類を同定できることと神経機能の
研究に適しているからである。マウスの小脳から得た標
本はそれぞれ特異的に反応するモノクローナル抗体を用
いてプルキンエ細胞、顆粒細胞、アストサイト、オリゴ
デンドロサイトが同定できる。Adex1CALacZ
とAdex1SRLacZL並びにAdex1w(対
照)を、小脳の初代培養細胞に神経細胞が成熟する20
日目に接種した。その結果を図2A〜Cに示す。図中、
AはAdex1CALacZ、BはAdex1SRLa
cZL、CはAdex1wを接種した結果を示す。Ad
ex1CALacZ感染後2日(m.o.i.100)
で、β−ガラクトシダーゼ活性を、100%のプルキン
エ細胞に、80%の顆粒細胞に、100%のアストサイ
トに確認した。プルキンエ細胞においては体幹(soma)と
樹状突起(dendrite)に確認できた。Adex1SRLa
cZLで感染させた方がAdex1CALacZで感染
させたものより弱かった(図2A,B参照)。特に、顆
粒細胞ではほとんどβ−ガラクトシダーゼ活性は検出で
きなかった(図2B)。この差は、CAGプロモーター
とSRαプロモーターの差に起因するものと考えられ
た。即ち、小脳初代培養においては、CAGプロモータ
ーはSRαプロモーターに比較して、小脳組織における
神経細胞やグリア細胞において安定であることによると
推察される。一方、コントロールとして用いたAdex
1wでは、ラベルされた細胞は検出できなかった(図2
C)。
【0014】神経細胞特異的な発現 本発明者等は、上記のようにインビトロにおいて神経細
胞に感染することを確認した後、次に、AdexL7−
NL−LacZとAdexMBP−NL−LacZを用
いて細胞特異的な発現の検討を行った。まず最初に、A
dexL7−NL−LacZを用いてプルキンエ細胞特
異的にβ−ガラクトシダーゼ活性が発現するかどうかを
検討した。その結果を図2D及びEに示す。m.o.
i.100での分離して培養されたマウス小脳細胞への
感染において、インビトロにおいてプルキンエ細胞に顕
著な形態である木の葉状に数多くの突起をもった大きな
細胞としての核移行シグナルをつけることにより核で発
現したβ−ガラクトシダーゼ活性を確認できた。形態的
な同定と共に、4Cllモノクローナル抗体を用いた二
重染色によっても確認した。その結果、ほぼ100%の
プルキンエ細胞でβ−ガラクトシダーゼ活性が確認でき
たが、顆粒細胞やアストサイト等、その他の細胞ではほ
とんど陰性であった。図2Dや図2Eに示すように、本
AdexL7−NL−LacZは未成熟、成熟を問わ
ず、形態的変化を伴わず、プルキンエ細胞に感染しβ−
ガラクトシダーゼ活性を示した。
【0015】ひきつづき、本発明者等は、インビボにお
いて細胞特異的に感染が起こり、発現するか試みた。ま
ず、AdexCAG−NL−LacZ及びAdexΔP
−NL−LaxZ(対照)を脳定位固定装置を用いてラ
ットの小脳に注入した。即ち、1μgのAdexCAG
−NL−LacZ及びAdexΔP−NL−LaxZ
(それぞれ、1x1011p.f.u./ml)をラット小脳に注入
した。注入後、3日(AdexCAG−NL−LacZ)
もしくは7日(AdexΔP−NL−LaxZ)で、組織
を固定し、ブルオガル(Bluo-gal)溶液にて染色した。そ
の結果を図3に示す。図中、A〜DはAdexCAG−
NL−LacZを、E及びFはAdexΔP−NL−L
axZを注入した結果である。なお、B及びDは、それ
ぞれA及びCの高倍率写真であり、またB及びCの白点
線は針の跡を示す。
【0016】AdexCAG−NL−LacZにおいて
は、強いβ−ガラクトシダーゼ活性が、注射針及び小脳
の裂け目に沿う細胞で見られた(図3Aの矢印)。切片
の顕微鏡による観察により、小脳の皮質層に青く染色さ
れた細胞が見られた(図3C,D)。小脳の皮質の表面
にあるプルキンエ細胞の樹状突起と細胞体が染まってい
たが、これはアデノウイルスがあたかも樹状突起から神
経細胞体へ逆方向に感染したかのように染色された(図
3B−Dの矢印)。同様に青色の蛍光色素(マーカー)
であるファストブルー(Fast Blue)と混合したAdex
ΔP−NL−LacZをラットの小脳に注入した(図3
E,F)。その結果、β−ガラクトシダーゼ活性細胞は
観察されず(図3E)、注入部位は紫外線により蛍光発
色した(図3F、白点線は小脳のアウトラインを示
す)。
【0017】次に、本発明者等は、ラットの小脳にAd
exL7−NL−LacZやAdexMBP−NL−L
acZを注入した。即ち、1μgのAdexL7−NL
−LacZ又はAdexMBP−NL−LacZ(それ
ぞれ、1x1011p.f.u./ml)をラット小脳に注入し、7
日後に脳組織を染色した。その結果を図4及び図5に示
す。図4において、BはAの暗視野写真、CはAの高倍
率写真(WMは白質、GLは顆粒細胞層、MLは分子
層、PLはプルキンエ細胞層、黒点線は小脳裂を示
す)、D及びEは注入部近傍の矢状切片であり、これら
はモノクローナル抗体で免疫的組織化学法にも染色され
ている。また、図5において、Aの白点線にそって注入
を行ったことを示し、B及びCは注入部近傍の矢状切片
であり、これらはモノクローナル抗体で免疫的組織化学
法にも染色されている。
【0018】図に示されるように、β−ガラクトシダー
ゼ活性は、注入部位に限局されたが(図4Bの矢印及び
図5A)、明らかにプルキンエ細胞層(図4C−E)と
白質(図5B,C)がAdexL7−LacZもしくは
AdexMBP−NL−LacZの注入によって青色に
染色された。この青く染色された細胞はモノクローナル
抗体4Cl1(図4D,E)や抗MBP抗体(図5B,
C)にて免疫染色することにより確認できた。その結
果、プルキンエ細胞の核及びオリゴデンドロサイトに特
異的なβ−ガラクトシダーゼ活性が見られ、プルキンエ
細胞特異性及びオリゴデンドロサイト特異性はインビボ
でも保持されていた。
【0019】以上のように、本発明者等はインビボにて
プルキンエ細胞やオリゴデンドロサイト特異的に外部遺
伝子の発現を確認した。同時に、今回のアデノウイルス
を投与されたラットでは、異常な行動や震えは観察しな
かった。また、腎臓、肝臓、脾臓においてβ−ガラクト
シダーゼ活性は検出できなかった。なお、本発明は上記
の例に限定されるものではなく、適宜変更して実施する
ことができる。例えば、上記の例では、発現遺伝子とし
てlacZ遺伝子を用いているが、その代りに所望する
遺伝子を用いれば、当該遺伝子を神経細胞に導入するこ
とができる。
【0020】
【発明の効果】本発明のアデノウイルスベクターは神経
細胞特異的な遺伝子発現システムとして有用である。従
来までに組織選択的なプロモーターを用いたウイルスベ
クターの報告がいくつかなされている(Ikenaka et al.
New Biol. 4, 53-60, 1992; Andersen et al. Hum. Gen
e Ther. 3, 487-499, 1992)。これらのベクターに比較
して本発明のベクターは以下の利点を持つ。第1点目
は、神経系を構成する細胞のサブタイプを決定するのに
重要なシス-アクチング エレメント(cis-acting elemen
t)の解析にアデノウイルスベクターは有益である。慣用
の方法として、プロモータ-lacZ構築物を持つトラ
ンスジェニックマウスを作製することがあるが、発生の
初期に活性のあるプロモターを解析することはトランス
ジーン産物の過剰発現に伴う毒性のため大変困難であ
る。この点アデノウイルスを用いた方法では、効率的で
あり、従来の方法に置き換わることも可能である。次の
利点として、顕著な毒性なく成熟した神経細胞に機能の
ある分子が発現できる点がある。従来までに、成熟した
静止細胞とりわけ神経細胞への遺伝子の導入は効率が悪
く困難であると考えられてきたが、本発明のアデノウイ
ルスベクター係る困難性を解決することができる。ま
た、HSVによる遺伝子の導入と比較しても細胞毒性が
低く且つ炎症性が低い。レトロウイルスベクターは外部
遺伝子の発現に干渉を示すことが知られている。しか
し、この外来遺伝子の発現は、外部遺伝子の上流にある
プロモーターの強度と細胞特異性に依存している。本発
明のアデノウイルスによる発現システムはdominant Neg
ative Knock outや機能分子の過剰発現を伴う神経機能
のインビトロ及びインビボの試験法として大変有用であ
る。また、小脳変性症、大脳白質萎縮症(Leukodystroph
y)、多発性硬化症(Multiple Sclerosis)等の病因や治療
についても有用である。
【0021】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に
説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものでは
ない。 実施例1ウイルスゲノムの構築 Adex1SRLacZL、Adex1EFLacZ
L、Adex1CALacZはそれぞれ文献に記載され
ており、その方法に準じて調製した(Kanegae etal. Jp
n. J. Med. Sci. Biol. 47, 157-166, 1994; Chang et
al. Kidney International 47, 322-326, 1995; Nakamu
ra et al. Cancer Res. 54, 5757-5760, 1994)。Ade
x1SRLacZLは、SRαプロモーターとSV40
ポリアデニレーション シグナル(Polyadenylation sig
nal)との間にlacZを持つように挿入した。
【0022】Adex1EFLacZLは、伸長因子(e
longation factor)1αプロモーター、LacZとPo
lyA配列を含む発現ユニットを持つ。Adex1CA
LacZLでは、lacZ遺伝子は、別途調製したpA
dex1pCAwベクターに挿入され、サイトメガロウ
イルス エンハンサーと鶏βアクチン プロモター及び兎
のβ-グロビン ポリアデニレーション シグナルからな
るCAGプロモーターを含む発現ユニットを有する。
【0023】AdexCAG−NL−LacZ 本構築は次のように行った。NLlacZを有する平滑
末端断片をpAdex1pCAwベクターのSwal サイ
トに挿入して構築した。上記NLlacZユニットには
5’非翻訳領域と融合させたlacZとグルココルチコ
イド受容体からの核局在シグナル(NL)に続く単純ヘ
ルペスウイルス チミジンキナーゼ(Herpes simplex vir
us thimidine kinase)遺伝子からの開始コドンからな
る。
【0024】AdexL7−NL−LacZ L7/PCPプロモーター(0.8kbp)とPCR法
により増幅したL7/PCP2遺伝子 ポリアデニレー
ション シグナル L7 pA(0.5kbp)を含むp
PCP2Sを用いた。上記の2断片の間には、SalI
−BamHI リンカーを挿入した。その末端にSal
IとBamHIを持つように修飾したNLlacZユニ
ットを、pPCP2Sベクターに挿入した。生成した発
現ユニットは平滑末端化し、pAdex1cwのCla
Iサイトに挿入した。それは42kbのコスミドベクタ
ーであり、ヒトアデノウイルスタイプ5ゲノムのE1
A、E1B領域(1.3−9.3m.u.)及びE3領
域(79.5−84.8m.u.)を欠くものである。
挿入の方向性は発現を高くするためE1A、E1Bと逆
の方向である。
【0025】AdexMBP−NL−LacZ マウスMBP遺伝子の転写開始サイトからの5’129
7bp配列を含むBglII/MroI 1.3kb断
片のプロモーターを、cosBJAB5(J. Neurochem.
56, 560-567, 1991)よりサブクローンした。この断片
は、リンカーの挿入より両末端にSpeIサイトを持つ
ように修飾した。これにより得られたSpeI断片は、
497−524zからのHindIII断片(5.5kb
p)を有するpBluescript KS(−)に挿入
した(以下、NLlacZIVSpAユニットと称す
る)。これは、兎β−グロビン遺伝子からのポリアデニ
レーション サイトに続くNLlacZユニットを含ん
でいる(Paabo et al. Cell 35, 445-453, 1983)。NL
lacZIVSpAに続くMBPプロモーターを有して
いる当該ユニットは、平滑末端化し、pAdex1cw
ベクターのSwaIに挿入した。
【0026】AdexΔP−NL−LacZ NLlacZIVSpAユニットをpAdex1cwの
SwaIサイトに挿入することによって構築した。
【0027】実施例2アデノウイルスの調製 遺伝子工学的なアデノウイルスの調製は既に公知の方法
を用いて行った(Saitoet al. J. Virol. 54, 711-719,
1985)。その概要を簡単に記せば以下の通りである。発
現コスミドベクターとE3領域の欠落したヒトタイプ5
アデノウイルスであるAd5−d1xのDNA-終止蛋
白複合体とを、293細胞(ATCC; CRL1573)にリン酸カ
ルシウム共沈法により共トランスフェクションした。単
離したアデノウイルスへの発現カッセトの導入とその構
築は、適当な制限酵素によるウイルスゲノムの消化にて
確認した。このアデノウイルスは293細胞の中でさら
に増殖させ、またウイルス溶液は−80℃にて保存し
た。それぞれのベクターは、ダブル セシウム勾配精製
法により、単一の高い感染能を有するストックに調製し
た(1×1011 p.f.u./ml, (Kanegae et al. Jpn.J. M
ed. Sci. Biol. 47, 157-166, 1994)。なお、このスト
ックは、常法通り293細胞のプラークアッセイにて確
認した。コントロールとして発現ユニットを持たないA
dex1wを用いた。
【0028】実施例3マウス小脳の初代培養 無血清培地での生後0日のICR系マウス小脳の初代培
養は、Weberらの方法(Brain Res. 311, 119-130, 1984)
によった。上記のアデノウイルスを37℃で1時間感染
させた。感染後2日で、細胞を2%パラホルムアルデヒ
ドと0.1%グルタルアルデヒドにて10分間固定し
た。
【0029】実施例4インビボ感染実験 スプラギュドウリー(Sprague-Dawley)雌ラット(体重150
g; 7-8週齢)をペントバルビタール50mg/kgで麻
酔をかけ、ラット定位固定装置に固定した。次に無菌的
に頭骨を露出させ、高速ドリルを用いてラムダ縫合から
尾側4mmのポイントに2mmの穿孔をあけた。次に、
別途調整した1μlのアデノウイルス10%スクロース
・PBS−(1×1011p.f.u.)を1μlのハミ
ルトン シリンジ(Hamilton syringe)と26Sゲージ針
を用いて小脳に注入した。針は、硬膜から4mmのとこ
ろまで注入し、溶液の注入速度は0.125μl/0.
5mmで行った。針はそのまま10分間保持した。感染
させた動物は毎日異常行動及び震えの観察を行った。
【0030】感染後3日及び7日して、動物に麻酔をか
け、2%のパラホルムアルデヒド−0.1%グルタルア
ルデヒドを含むPBS(−)の心臓内投与により屠殺し
た。屠殺した動物の脳は除去し、4℃にて一晩固定し
た。次に、この標本をブルオガル溶液にて37℃一晩染
色した。次に、この脳を、3日間、スクロース溶液(1
0%、15%及び20%スクロース、4℃、24時間)
での連続平衡化(serial equilibration)によってクリ
オプロテクト(cryoprotect)した。次に、脳をOCT
化合物により凍結し、低温槽を用いて10μmの幅で矢
状に切開した。この切開した標本はゼラチンでコートし
たスライドに置き、風乾し、後記する免疫的組織化学方
法にて染色を行った。
【0031】実施例5β−ガラクトシダーゼ検出 固定された細胞や脳組織はPBSにて簡単に洗浄した
後、5mM K4Fe(CN)6、5mM K3Fe(C
N)6、1mM MgCl2、0.01% デオキシコール
酸ナトリウム(Sodium deoxycholate)、0.02%Nonid
et p-40、0.01%ハロゲン化インドイル(Halogenate
d indoyl)-β-ガラクトシダーゼ(bluo-gal;Gibco)が含
むPBS溶液(Bluo-gal溶液)にて37℃12時間染色
した。
【0032】実施例6免疫的組織化学法(Immunohistochemistry) 組織標本及び凍結標本(cryo-section)は、細胞特異的に
反応する下記のモノクローナル抗体によって、それぞれ
免疫染色を行った。即ち、プルキンエ細胞はイノシトー
ル-1,4,5-トリホスフェートに作用する4Cllで
同定した。このモノクローナル抗体はプルキンエ細胞に
局在するタイプ1受容体を認識する。次にオリゴデンド
ロサイトは、MBPに対する抗体にて同定した。二次抗
体としては、抗ラットIgG結合のフルオレセイン イ
ソチオシアナート(fluorescein isothiocyanate,FI
TC)と抗ウサギIgG抗体結合のFITCを用いた。
【図面の簡単な説明】
【図1】組換アデノウイルスの遺伝子構造を示す図であ
る。図中、Adexは、E1A、E1B及びE3領域が
欠損したヒトタイプ5アデノウイルスゲノムを示す。図
中、lacZはE.coli β-ガラクトシダーゼ遺伝子、S
RαはSRαプロモーター、PAはSV40ポリアデニ
レーション シグナル、EF1αは伸長因子1αプロモ
ーター、CAGはCAGプロモーター、G PAは兎β
−グロビン ポリアデニレーション シグナル、NL1は
核局在シグナル、L7はL7/PCP2由来プロモータ
ー、L7 PAはL7/PCP2由来ポリアデニレーシ
ョン シグナル、MBPはMBPプロモーターを示す。
【図2】アデノウイルスを接種したマウス小脳初代培養
細胞におけるβ−ガラクトシダーゼ組織化学的染色の結
果を示す顕微鏡写真(生物の形態)である。図中、Aは
Adex1CALacZ、BはAdex1SRLacZ
L、CはAdex1w、D及びEはAdexL7−NL
−LacZを接種した結果を示す。なお、A〜Dは培養
20日後、Eは培養8日後に接種した。
【図3】アデノウイルスを注入したラット小脳における
発現β−ガラクトシダーゼ活性を示す顕微鏡写真(生物
の形態)である。図中、図中、A〜DはAdexCAG
−NL−LacZを、E及びFはAdexΔP−NL−
LaxZを注入した結果である。なお、B及びDは、そ
れぞれA及びCの高倍率写真である。また、Dにおい
て、FIは小脳裂、MLは分子層、PLはプルキンエ細
胞層を示す(以下、同様)。
【図4】本発明のアデノウイルスを注入したラット小脳
におけるプルキンエ細胞特異的遺伝子発現を示す顕微鏡
写真(生物の形態)である。図中、BはAの暗視野写
真、CはAの高倍率写真(WMは白質、GLは顆粒細胞
層、黒点線は小脳裂を示す)、D及びEは注入部近傍の
矢状切片であり、これらはモノクローナル抗体で免疫的
組織化学法にも染色されている。
【図5】本発明のアデノウイルスを注入したラット小脳
におけるオリゴデンドロサイト特異的遺伝子発現を示す
顕微鏡写真(生物の形態)である。図中、Aの白点線に
そって注入を行ったことを示し、B及びCは注入部近傍
の矢状切片であり、これらはモノクローナル抗体で免疫
的組織化学法にも染色されている。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 小脳プルキンエ細胞特異的に発現する
    非増殖型アデノウイルスベクター。
  2. 【請求項2】 オリゴデンドロサイト特異的に発現す
    る非増殖型アデノウイルスベクター。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2で規定された非増殖型
    アデノウイルスベクターを用いた神経特異的遺伝子導入
    法。
JP7203838A 1995-07-17 1995-07-17 神経細胞特異的に発現するアデノウイルスベクター Withdrawn JPH0928378A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6815430B1 (en) 1999-04-02 2004-11-09 Hisamitsu Pharmaceutical Co., Inc. Gene expression base sequences for therapeutic use and drugs for gene therapy

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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