JPH09274071A - 酸素17標識化合物の核磁気共鳴信号観測方法および測定装置 - Google Patents

酸素17標識化合物の核磁気共鳴信号観測方法および測定装置

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JPH09274071A
JPH09274071A JP8264696A JP8264696A JPH09274071A JP H09274071 A JPH09274071 A JP H09274071A JP 8264696 A JP8264696 A JP 8264696A JP 8264696 A JP8264696 A JP 8264696A JP H09274071 A JPH09274071 A JP H09274071A
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observation
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nmr
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Mitsuru Tamura
充 田村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 酸素17と化学結合を有する水素、炭素1
3、りん31を観測核とし、酸素17との分極移動を経
由する観測核のNMR信号の検出期間中に酸素17をデ
カップリングすることにより、観測核のNMRスペクト
ルを先鋭化し、信号対雑音比を向上し、測定時間を短縮
する。 【解決手段】 酸素17と観測核とを同時に磁気励起可
能なNMR分光計および検出器と、酸素17との分極移
動を経由する観測核のNMR信号を観測可能なパルス系
列を用い、検出期間中に酸素17をデカップリングす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸素17と化学結
合を有する水素、りん31、炭素13の核磁気共鳴(N
MR)信号の観測方法およびNMRの観測装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】水素、炭素13、りん31、酸素17は
それぞれ天然存在比99.985%、1.11%、100%、3.7×10-2%
のNMRを観測可能な安定核種で、磁束密度11.74テス
ラの外部磁場におけるそれぞれのNMR共鳴周波数は、
500.000MHz、125.8MHz、202.4MHz、67.78MHz であるこ
とが、例えば文献、日本化学会編「第4版実験化学講座
5 NMR」、第3.1章、表3.1、348ページ、丸善株式
会社(1991)により知られている。
【0003】生体中の有機化合物において酸素と化学結
合を有する水素、炭素、りんのいずれかをNMR信号の
観測核として利用し、酸素17のNMR現象を反映した
観測核のNMR信号を観測した公知例としては、以下に
示すように、水素およびりん31のNMR観測が知られ
ている。
【0004】酸素17と化学結合を有する水素のNMR
スペクトルは、例えば文献 M.L.Magnuson, B.M.Fung,
J.Magn.Reson., 99, 301-307 (1992) に開示されている
ように、45原子%標識した酸素17水(H2 17O)の水
素のNMRスペクトルは、共鳴周波数500MHz、絶対温度
298度、水素イオン濃度pH6.5において、酸素17を含ま
ない水(H2 16O)のスペクトルの共鳴周波数の範囲の
数倍程度に広がる。
【0005】また、例えば特開平3-165743「核磁気共鳴
断層撮影に使用する造影用吸入ガスおよびその造影用吸
入ガスを使用した核磁気共鳴による断層撮影方法」に開
示されているように、生体に吸収された酸素17ガスが
生体内で酸素17水に代謝され、酸素17水の水素のN
MRスペクトル線幅が無標識物よりも拡大してピーク強
度が減少することを利用し、水素のNMR信号強度の現
象から酸素17の生体への取り込みを算出することが可
能である。
【0006】また、例えば文献、I.Ronen, G.Navon, Ma
gnetic resonance in medicine, 32(6), 789-793 (199
4) に開示されているように、酸素17の含有率が数%
の低濃度の酸素17水を測定対象として、水素の横緩和
時間測定パルス系列中の待ち時間に対する水素NMR信
号強度の変化量から、酸素17の含有率を算出でき、水
素の磁気共鳴イメージングを用いて、酸素17の濃度の
空間分布を観測可能である。
【0007】酸素17と化学結合を有するりん31のN
MRスペクトルは、例えば特願平7-71137「りん31核
磁気共鳴信号の選択観測法およびこれを利用する方法」
によって提案されたように、異核種間の分極移動を経由
するりん31−NMR信号の選択観測が知られ、また例
えば文献 M.Tamura, Y.Harada, J.Magn.Reson. Ser.B,
109(1), 97 (1995) に開示されているように、無機りん
酸のりん31−NMRスペクトル線幅が400Hz程度に広
がる。これら2つの資料には、酸素17との分極移動を
経由するりん31−NMRスペクトルの位相は、通常観
測法のりん31−NMRスペクトル位相を基準として,
180度反転して観測されることが示されている。
【0008】また、前記文献に示されるように、りん酸
基の4個の酸素原子の少なくとも1個を酸素17で標識
した酸素17標識りん酸化合物と、天然存在比の酸素1
7を有する無標識のりん酸化合物とを含む試料を測定対
象とし、酸素17とりん31を同時に磁気的に励起可能
なNMR検出器とNMR分光計を用いて、酸素17との
分極移動を経由するりん31−NMR信号を観測可能な
観測パルス系列を実施することにより、酸素17標識り
ん酸基に由来するりん31−NMR信号を観測し、酸素
17が結合しないりん酸基に由来するりん31−NMR
信号を消去しうることが知られている。水素、炭素1
3、りん31は、ともに核スピン量子数が2分の1の核
種であり、りん31による酸素17との分極移動の観測
が可能であることから、水素、炭素13を、酸素17と
の分極移動の観測核として用いることが可能であること
は容易に推察できる。
【0009】異核種間の分極移動を経由するNMR信号
を観測可能なパルス系列としては、例えば前記文献によ
り、HMQCパルス系列を使用可能であることが知られ
ているが、HMQCパルス系列以外にもDEPT、AP
T等のパルス系列を利用しうることが、例えば文献、R.
R.Ernst, G.Bodenhausen, A.Wokaun, "Principles ofNu
clear Magnetic Resonance in One and Two Dimension
s", Chapter 4, Section 5, p180-201, Oxford Scienti
fic Publications (1987) に示されている。
【0010】酸素17と結合した観測核のNMRスペク
トル線幅に関しては、観測核と酸素17とのスピンスピ
ン相互作用により観測核の横緩和過程に酸素17の核四
極子緩和が関与するために、観測核の横緩和時間が短縮
され、その結果、NMRスペクトル線幅が、結合しない
観測核の線幅と比較して広がることが、例えば文献、R.
D.Sammons, P.A.Frey, K.Bruzik, M.-D.Tsai, J. Am. C
hem. Soc., 105, 5456-5461 (1983) により知られてい
る。
【0011】観測核のNMR信号受信中に、観測核と化
学結合した他核種を磁気的に励起し続けることにより、
他核種と観測核とのスピンスピン相互作用を消去し、観
測核のNMRスペクトルを尖鋭化する手法をデカップリ
ングと呼称し、デカップリングに用いるパルス系列とし
て、例えば文献、A.J.Shaka, J.Keeler, R.Freeman,J.M
agn.Reson., 53, 313 (1983) で知られるWALTZ−
16パルス系列を使用可能なことが、前出の文献、R.R.
Ernst, G.Bodenhausen, A.Wokaun, "Principles of Nuc
lear Magnetic Resonance in One and Two Dimension
s", Chapter 4,Section 7, p220-241, Oxford Scientif
ic Publications (1987)により知られ、また文献、A.J.
Shaka, J.Keeler, Progress in NMR Spectroscopy, 19,
47-129 (1987) により知られている。デカップリング
用のパルス系列としては、WALTZ−16以外にもM
LEV−64、BLEW−32などのパルス系列を使用
しうることが前記文献により知られている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】NMR信号を観測する
水素、りん31、炭素13は、無標識物の均一溶液中で
のスペクトル線幅が十分に高分解能であっても、酸素1
7との化学結合を有する水素、りん31、炭素13のN
MRスペクトルは、酸素17との結合により横緩和時間
が短縮されてスペクトルが広幅化するため、隣接する共
鳴線との重複の可能性が発生して信号の分離が低下す
る。
【0013】また、NMRスペクトルの線幅が拡大する
と、ピーク高さは減少し、信号対雑音比は低下する。
【0014】りん31を観測核として、酸素17との分
極移動を経由するりん31−NMR信号を選択的に観測
した場合、標識物のみのりん31−NMRスペクトルが
得られるので、信号の分離の問題は避けられるが、分極
移動を経由するりん31−NMRスペクトルは、酸素1
7とのスピンスピン結合により線幅が拡大しているの
で、無標識物のりん31−NMRスペクトルと比較し
て、信号対雑音比は低下する。
【0015】本発明は上記の点に鑑みてなされたもので
あり、酸素17との分極移動を経由する水素、または炭
素13、またはりん31を観測することで、注目する観
測核のNMR信号を選択的に観測するとともに、観測核
のそれぞれのNMR信号の検出期間中に、観測核と酸素
17とのスピンスピン結合を消去し、観測核のNMRス
ペクトルを尖鋭化し、観測核のNMRスペクトルの信号
対雑音比を向上することを課題としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の核磁気共鳴信号の観測法および観測装置
は、水素または炭素13またはりん31をNMR信号の
観測核とし、酸素17との分極移動を経由する観測核の
NMR信号受信中に、観測核と化学結合を有する酸素1
7をデカップリングすることにより、観測核のNMRス
ペクトルを尖鋭化する手段を有する。
【0017】
【発明の実施の形態】図1は、本発明にかかる酸素17
標識物のNMR測定のパルス系列を表すタイミング図で
ある。図1は、特願平7-71137により知られる1次元H
MQCパルス系列と比較して、観測核のNMR信号の検
出期間において、観測核と化学結合した酸素17をデカ
ップリングする点が異なる。図1の酸素17デカップリ
ング付きHMQCパルス系列においては、酸素17チャ
ネル第1パルス6と、検出期間5における受信機位相と
の間で、180度単位の位相サイクリングを実施する。
【0018】酸素17との分極移動を経由する検出核の
NMR信号は、次のようにして選択観測される。
【0019】1回目の観測では、観測核チャネル(31
チャネル)第1パルス1、第2パルス2の高周波位相を
一致させ、また、酸素17チャネル(17Oチャネル)第
1パルス6、第2パルス7の高周波位相を一致させる。
検出期間5において、観測核のNMR信号を取り込む。
2回目の観測では、酸素17チャネル第1パルス6また
は第2パルス7のいずれかの高周波位相を180度反転
し、かつ、検出期間5における観測チャネルの受信機位
相を180度反転して観測核のNMR信号を取り込む。1
回目と2回目の信号を加算する。ここで3は31Pチャネ
ルの第1パルス1と17Oチャネルの第1パルス6とのイ
ンターバル、4は17Oチャネルの第2パルス7と検出期
間5の始点とのインターバルである。
【0020】酸素17が結合しない観測核に由来する信
号は、1回目の観測と2回目の観測とで受信器の位相が
反転したことにより、1回目と2回目とでは観測される
共鳴信号の位相も反転しており、1回目と2回目を加算
すると相殺される。しかし、酸素17が結合した観測核
に由来する信号は、2回目の観測において酸素17の高
周波位相が反転していることにより、分極移動を経由す
る観測核の共鳴信号も位相反転し、さらに受信器の位相
が反転していることにより、1回目と同位相で信号が観
測されるので、加算により強度が増す。このようにし
て、酸素17が結合した観測核のNMR信号は観測さ
れ、結合のない観測核の信号は消去される。
【0021】本発明では、酸素17と観測核とのスピン
スピン相互作用の消去を目的として、検出核のNMR信
号の検出期間5において、酸素17にデカップリングパ
ルス8を照射し続け、酸素17を定常的に磁気共鳴した
状態に保持しておく。デカップリングパルス8はWAL
TZ−16など異核種スピンスピン結合を消去可能であ
れば、その種類は何でも良い。
【0022】図2は、本発明にかかる酸素17標識物の
NMR観測法を実施可能な装置構成を示す説明図であ
り、測定対象である試料、NMR検出器、NMR分光
計、磁石の関係を示す。
【0023】磁石11、12はNMR装置付属の磁石で
あり、例えば磁場中心の磁束密度が11.7T(テスラ)の
超伝導磁石が用いられる。
【0024】試料13は、天然存在比よりも高い含有率
の酸素17で標識された酸素17標識化合物をガラス管
などで支持し、酸素17照射コイル20、観測核照射お
よび観測コイル21によって、試料13が磁気的に励起
されるよう配置したものである。試料13は、酸素17
標識化合物以外に、天然存在比の酸素17を含有する他
の化合物を含んでいてもよい。
【0025】検出器25は、試料中の酸素17と観測核
を同時に励起可能な2重共鳴NMR検出器であり、試料
13、酸素17照射コイル20、観測核照射および観測
コイル21を内蔵している。この検出器25は、試料1
3が磁石11、12の磁場中心に位置するよう設置され
る。酸素17照射コイル20はNMR分光計18の酸素
17照射回路15と接続される。観測核照射および検出
コイル21は、切り替え器29に接続され、この切り替
え器29は、NMR分光計18の観測核照射回路16お
よび受信器17と接続される。
【0026】切り替え器29は、試料を磁気的に励起す
る際は、観測核照射回路16と観測核照射および検出コ
イル21とを接続し、受信器17を切り離す。試料から
の観測核のNMR信号を受信する際は、観測核照射およ
び検出コイル21と受信器17とを接続し、観測核照射
回路16を切り離す。
【0027】高周波フィルタ26は、酸素17照射回路
15と酸素17照射コイル20との間に設置され、酸素
17の共鳴周波数の高周波を通過し、観測核の共鳴周波
数の高周波を遮断することにより、酸素17照射回路か
ら発生する観測核共鳴周波数の雑音が検出器25の内部
に到達しないように動作する高周波フィルタであれば何
でもよく、その形式は問わない。
【0028】高周波フィルタ27は、受信機17の動作
中に酸素17共鳴周波数の高周波が受信機に到達しない
よう動作する高周波フィルタであれば何でもよく、その
形式は問わない。高周波フィルタ27は、検出核照射お
よび検出コイル21と受信機17との間に設置されれば
よく、切り替え器29と受信機17との間に設置されて
もよい。
【0029】NMR検出器25には、酸素17、観測核
の照射機能に加え、水素と観測核とのスピンスピン結合
を消去するための水素核照射、磁場ロックを実施するた
めの重水素核照射の機能が付属してもよい。酸素17照
射コイル20と、観測核照射および観測コイル21は、
図2のように独立していてもよく、また単一のコイルに
2重共鳴回路を接続して酸素17、観測核の単一コイル
2重共鳴検出器としても構わない。それぞれのコイルに
接続される共振回路の形式は問わない。
【0030】試料13が複数の化学種の化合物を含む場
合は、それぞれの化学種が含有する観測核が磁気的に励
起されればよく、それぞれの化学種がお互いに接触する
よう混合されていてもよいし、接触しないよう隔離され
ていてもよい。試料の支持体は一端を封じたガラス管な
どを任意に用いることができる。また、微生物の培養液
など、混合りん酸化合物を含有する溶液を、検出器25
の外部に設置された容器に用意し、シリコンチューブ等
で磁場中心の試料13の位置に導入して測定してもよ
い。
【0031】本発明の酸素17標識物の核磁気共鳴信号
検出装置は、測定空間内の酸素17と観測核を同時に励
起可能な機構を有していればよく、他の核種を磁気的に
励起する機構の有無は問わない。
【0032】図3は、酸素17標識りん酸化合物を含む
混合りん酸溶液を測定対象とし、共鳴周波数202.46MHz
において公知のりん31−NMR観測法で測定した場合
のりん31−NMRスペクトルを示す説明図である。観
測信号は時間領域において4096回積算され、フーリエ変
換されて、図3の周波数スペクトルが得られた。試料溶
液は、8mM濃度の25.7原子%酸素17標識りん酸、2
mM濃度の無標識アデノシン2りん酸(ADP)、12
0mM濃度の塩化カリウム、4mM濃度の塩化マグネシ
ウム、20mM濃度のモルホリノプロパンスルホン酸
(MOPS)緩衝液を含む水溶液で、環境温度25℃に
おいて水素イオン濃度をpH7.0に調製した。横軸は
りん31−NMR化学シフト値であり、試料溶液中に含
まれる、無機りん酸、ADPアルファりん酸基、ADP
ベータりん酸基が、それぞれ約1.6ppmのピーク30、約
-10.2ppmのピーク32、約-6.2ppmのピーク31として
観測される。通常観測法では、試料中の全ての化学種の
りん酸基が励起されるので、酸素17標識物、無標識物
ともにりん31−NMRスペクトルが観測される。
【0033】図4は、図3と同一の試料を、特願平7-71
137で知られるりん31−NMRの選択観測法で観測し
た場合のりん31−NMRスペクトルを示す説明図であ
る。積算回数は図3と同じく4096回である。縦軸は2倍
拡大した。酸素17との分極移動を経由するりん31−
NMR信号のみを観測することにより、酸素17結合し
たりん酸のピーク33のみが観測され、図3において見
られたADPに由来する2本のピークは消去される。図
4では、りん31−NMR信号の検出期間において酸素
17をデカップルしないので、酸素17との結合により
半値幅としての線幅が400Hz程度に拡大したりん31の
ピーク33が観測される。
【0034】図5は、本発明にかかる酸素17標識物の
選択観測法を用いて、図3、図4と同一の試料を観測し
た場合のりん31−NMRスペクトルを示す説明図であ
る。積算回数は図3、図4と同じく4096回である。縦軸
は2倍拡大した。酸素17標識されたりん酸のみがピー
ク34として観測される点は、図4の場合と同様である
が、りん31−NMR信号の検出期間において、約3W
の高周波電力強度で酸素17をデカップルした結果、観
測されるりん31−NMR信号の線幅は先鋭化され、ピ
ーク34の半値幅としての線幅は約79Hzに変化し、図
4におけるピーク33と比較して、ピーク高さは約2.
3倍に増強された。
【0035】図4、図5の違いは、りん31−NMR信
号の検出期間における酸素17のデカップリングの有無
のみであるから、図5において先鋭化し、かつピーク高
さが増強されたたりん31−NMR信号は、酸素17デ
カップリングの効果を示している。
【0036】図4、図5は、積算回数が同一の条件で酸
素17デカップリングすることにより、酸素17標識り
ん酸化合物のりん31−NMR信号のピーク高さが約
2.3倍に増強されることを示したが、酸素17デカッ
プリングを実施すれば、4096回以下の積算回数でも図4
と同程度のピーク高さを得られることは容易に想像でき
る。すなわち、酸素17デカップリングを実施すれば、
従来のりん31−NMRの選択観測と同程度の信号対雑
音比のりん31−NMR信号を、より短時間に測定でき
ることになる。
【0037】図3、図4、図5においては、りん31を
検出核とした場合の、NMR信号検出期間において酸素
17デカップルを実施する選択観測法のNMRスペクト
ルの例を示したが、りん31と同じ核スピン量子数を有
する水素、炭素13を検出核とした場合にも、りん31
と同様に、酸素デカップリングにより先鋭化された選択
観測NMRスペクトルが得られることは、容易に推測で
きる。
【0038】酸素17との化学結合を有する水素を含有
する化合物は、酸素17と結合した水素が存在する化合
物であれば何でもよく、例えば酸素17水のように酸素
17と水素のみで構成される分子でもよく、また例えば
酸素17水酸化ナトリウムのように、酸素17と水素以
外の原子やイオンを含んでいてもよい。
【0039】酸素17との化学結合を有する炭素13を
含有する化合物は、例えば酸素17メタノールのよう
に、天然存在比よりも高濃度の酸素17を含有し、酸素
17と結合した炭素13が存在する化合物であれば何で
もよい。炭素13の含有率は天然存在比でもよく、また
天然存在比よりも高濃度となるように炭素13標識され
ていてもよい。
【0040】酸素17との化学結合を有するりん31を
含有する化合物は、例えば酸素17りん酸のように、天
然存在比よりも高濃度の酸素17を含有し、酸素17と
結合したりん31が存在する化合物であれば何でもよ
い。
【0041】
【発明の効果】上記詳述したごとく、本発明のNMR観
測法および観測装置を用いれば、酸素17との分極移動
を経由する水素または炭素13またはりん31のNMR
信号の検出期間中に、酸素17をデカップリングするこ
とにより、観測核のNMRスペクトルを尖鋭化すること
が可能になる。
【0042】観測核のNMRスペクトルが尖鋭化するこ
とによって、NMRスペクトルの面積強度が一定でもピ
ーク高さが増強されるので、同一積算回数における観測
スペクトルの信号対雑音比の向上が得られる。
【0043】また、観測核のNMRスペクトルが尖鋭化
することで、デカップリングしない従来の測定法で観測
される観測核のNMRスペクトルと同等の信号対雑音比
のNMRスペクトルを得るのに要する積算回数が減少し
て測定時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるNMR選択法の観測パルス系列
を示すタイミング図。
【図2】本発明にかかるNMR観測法を実施可能な装置
の構成を示す説明図。
【図3】公知のりん31−NMR測定法で観測される、
混合りん酸化合物水溶液のりん31−NMRスペクトル
を示す説明図。の説明図、
【図4】酸素17との分極移動を経由するりん31−N
MR信号の選択観測法を用い、りん31−NMR信号の
検出期間において酸素17をデカップリングしない場合
のりん31−NMRスペクトルを表す説明図。
【図5】酸素17との分極移動を経由するりん31−N
MR信号の選択観測法を用い、りん31−NMR信号の
検出期間において酸素17をデカップリングした場合の
りん31−NMRスペクトルを表す説明。
【符号の説明】
1…りん31チャネル第1パルス、2…リン31チャネル
第2パルス、3、4…インターバル、5…検出期間、6
…酸素17チャネル第1パルス、7…酸素17チャネル
第2パルス、8…酸素17デカップリングパルッス、1
1、12…磁石、13…試料、15…酸素17照射回
路、16…りん31照射回路、17…受信器、18…NM
R分光計、20…酸素17照射コイル、21…りん31照
射および検出コイル、25…検出器、26…高周波フィ
ルタ、27…高周波フィルタ、29…切り替え器、3
0、31、32、33、34…りん31−NMRピー
ク。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】天然存在比よりも高い濃度で酸素17標識
    した酸素17含有化合物の酸素17核磁気共鳴信号の観
    測方法において、酸素17との化学結合を有するりん3
    1を信号検出の対象とし、酸素17との分極移動を経由
    するりん31の核磁気共鳴信号の受信期間中に、デカッ
    プリングパルスを照射し続け、酸素17を定常的に磁気
    共鳴した状態に保持することを特徴とする酸素17標識
    化合物のりん31の核磁気共鳴信号観測法。
  2. 【請求項2】検出の対象が酸素17との化学結合を有す
    る水素である請求項1記載の酸素17標識化合物の水素
    の核磁気共鳴信号観測方法。
  3. 【請求項3】検出の対象が酸素17との化学結合を有す
    る炭素13である請求項1記載の酸素17標識化合物の
    水素の核磁気共鳴信号観測方法。
  4. 【請求項4】所定の磁束密度の磁場を生成する手段、該
    磁場内に配置され天然存在比よりも高い含有率の酸素1
    7で標識された酸素17標識された観測核を有する試料
    を保持する手段、該試料の酸素17を励起するための高
    周波磁場を照射する手段、該試料の観測核を励起するた
    めの高周波磁場を照射する手段、該試料の励起された観
    測核からの信号を検出する手段を備え、前記試料の酸素
    17を励起するための高周波磁場を照射する手段は、前
    記励起された観測核からの信号を検出する期間中観測核
    と化学結合を有する酸素17をデカップリングするため
    の信号を照射することを特徴とする核磁気共鳴信号観測
    装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002031673A (ja) * 2000-05-25 2002-01-31 Bruker Sa 多重周波数のrf信号発生装置

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