JPH09248647A - 可塑性材料の熱間加工割れ強度試験方法および熱間加工割れ予測方法 - Google Patents

可塑性材料の熱間加工割れ強度試験方法および熱間加工割れ予測方法

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JPH09248647A
JPH09248647A JP8058668A JP5866896A JPH09248647A JP H09248647 A JPH09248647 A JP H09248647A JP 8058668 A JP8058668 A JP 8058668A JP 5866896 A JP5866896 A JP 5866896A JP H09248647 A JPH09248647 A JP H09248647A
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Tadatsugu Yoshida
吉田忠継
Masakazu Yano
矢野正和
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Sanyo Special Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、温間域または熱間域で金属などの
可塑性材料を成形加工する際に生じる加工割れに対し
て、材料を割れやすい状態にすることにより、延性の高
い材料の耐割れ強度特性の評価を可能にする。 【解決手段】 予め温間域から熱間域に加熱した軸対称
形状の可塑性試験片を平工具で据え込み鍛造し、試験片
側面に割れが発生する加工条件を比較検討することによ
り、加工割れ強度を評価する可塑性材料の熱間加工割れ
強度試験方法において、前記軸対称形状の可塑性試験片
として、円柱側面に円環状の突起を形成した形状の試験
片を用い、据え込み鍛造することを特徴とする可塑性材
料の熱間加工割れ強度試験方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術】本発明は、温間域または熱間域で
金属などの可塑性材料を成形加工する際に生じる加工割
れに対して材料の強度を測定する際に、試験片の形状や
温度分布を制御することによって、材料を割れやすい状
態にすることにより、延性の高い材料の耐割れ強度特性
の評価を可能にする材料の熱間強度試験方法および該試
験方法を適用した熱間加工割れ予測方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、国際競争力の向上の観点から、自
動車用部品などで製造コストの大幅な削減が求められて
おり、その手段として素材材質の低グレード化、複
雑形状鍛造品のニアネットシェープ成形化・精密化によ
る部品点数削減や切削工程省略などが検討されている。
しかし、ニアネット化や精密化を図るためには、材料の
局部に無理な変形が生じるような形状の金型を敢えて用
いたり、加工寸法精度が良くなるように加工温度を低下
させるなど、材料への負荷が一段と増加する方向であ
る。また、材料コストの低減のために、このような厳し
い負荷のもとで、従来品より性能の劣る材料を使用する
ことは、温間域または熱間域での成形加工時の材料の割
れ発生を助長する方向である。そこで、この加工割れを
防止するために、鍛造業者では、分流法など金型設計、
潤滑強化、ダイスの摺動、材料の加熱などによる材料へ
の負荷の軽減が検討されているが、これだけでは限界が
あり、材料の加工性を向上させる対策が実施されること
が多い。そこで、材料メーカーでは、より過酷化する負
荷に耐える最適な材料の開発が実施されている。
【0003】その際、負荷の過酷化にも対応した、材料
の温間域および熱間域での耐割れ強度を精度良く評価す
る試験方法の確立が重要になる。通常、グリーブル試験
などの熱間引張試験により、試験片の温度を一定に保っ
た状態での引張破断を行い、破断部の伸び率や絞り率の
大小で、鍛造時の耐割れ強度を間接的に評価している。
しかし、引張破断試験は加工ひずみが小さい段階でくび
れが生じて不均一変形になるため、極めて不安定な破壊
であり、高いひずみまで安定な変形を示す鍛造において
材料の耐割れ強度を評価するには原理的に適さない。
【0004】また、熱間ねじり試験で割れ限界を調査す
る方法も考えられるが、これは面外せん断変形による破
壊であり、通常鍛造時に生じる垂直応力による破壊とは
原理的に破壊機構が異なるので一般的でない。
【0005】一方、熱間鍛造工程のスケールモデル試験
方法として、従来、加工フォーマスター試験が適用され
ている。これは、温間および熱間の鍛造工程を直接シミ
ュレートするものであり、割れ発生機構は原理的に実機
の鍛造工程と同一であり、割れの評価方法として有望な
方法と考えられる。図10は加工フォーマスター試験装
置の作動原理を示す図である。円柱状の試験片1を石英
または炭化珪素系のセラミックス性の下パンチ3の上に
載せ、試験片1の周囲に配設した電磁誘導加熱コイル1
1に高周波電流を通電することにより試験片を加熱す
る。試験片の側面中央部に試験片温度を測定するための
熱電対5を溶接し、図示しない制御装置によりコイルで
消費する電力を調節して試験片の温度制御を行うことに
より、任意のヒートパターンで試験片を加熱できる。ま
た、下パンチと同じ材料の上パンチ4を下降させて、そ
の位置を制御して据え込み鍛造をすることにより、試験
片を任意のタイミングおよび加工速度で圧下できるの
で、原理的には実際の鍛造条件をほぼ忠実にシミュレー
トできることになる。
【0006】しかし、鋼などの金属材料は、温間域また
は熱間域での延性が高いため、加工フォーマスター試験
で用いられている円柱状試験片を、据え込み鍛造しただ
けではほとんど割れ発生が生じない。そのため、割れ発
生限界条件を精度良く評価できないという問題があっ
た。
【0007】また、加工フォーマスター試験では、工
具と試験片の接触界面に作用する摩擦係数は一定、試
験片の温度分布は均一と仮定して、各圧下率における試
験片形状を図11(A)に示すように唯一の樽状に推定
している。しかし、実際の試験片の形状はこの予測形状
と異なる場合が有り、例えば、熱間域で加工速度の遅い
場合は、図11(B)に示すように不均一な提灯状の形
状となる。割れは試験片の側面が樽状に張り出したP点
もしくはP’点で発生するが、(A)と(B)の変形様
式でPまたはP’点の応力およびひずみの履歴が異なる
ことから、この影響を無視した従来方法では精度の高い
実験は期待できないことが判る。
【0008】以上、従来技術では温間域または熱間域で
の種々の可塑性材料の加工割れ発生限界を精度良く評価
することが困難であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】温間域または熱間域で
の種々の可塑性材料の鍛造割れ発生限界を、加工フォー
マスター試験で精度良く評価するためには、少ない圧
下で割れが発生しやすい試験条件の確立、試験片に生
じる不均一変形発生機構の解明と割れ発生限界への影響
の把握、実際の加工における割れ発生限界予測への適
用方法の開発が課題となっている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、温間域または
熱間域での種々の可塑性材料の割れ発生限界を把握する
ために、加工フォーマスター試験において、加工割れが
発生しやすい試験片形状および試料温度分布を求め、こ
れに基づく割れ発生限界の評価試験方法を提供すること
を目的とする。
【0011】本発明の要旨は特許請求の範囲に記載の通
りである。
【0012】即ち、課題を解決するための本発明の手段
は、請求項1の発明では、予め温間域から熱間域に加熱
した軸対称形状の可塑性試験片を、平工具で据え込み鍛
造し、試験片側面に割れが発生する加工条件を比較検討
することにより、加工割れ強度を評価する可塑性材料の
熱間加工割れ強度試験方法において、前記軸対称形状の
可塑性試験片として、円柱側面に円環状の突起を形成し
た形状の試験片を用い、据え込み鍛造することを特徴と
する。
【0013】また、請求項2の発明では、上記の請求項
2の方法において、円柱側面に円環状の突起を形成した
形状の試験片が、円環状突起部の直径(d2 )と円柱部
の直径(d1 )、および、円環状突起部の高さ(h2
と円柱部の高さ(h)が下記式(1)、(2)の条件を
満足する形状の試験片であることを特徴とする。
【0014】1<d2 /d1 <2 …(1) 1/10<h2 /h<1/2 …(2) また、請求項3の発明では、上記の請求項1または2の
方法において、円環状突起の断面形状が台形又は矩形で
あることを特徴とする。
【0015】また、請求項4の発明では、上記の請求項
1から3のいずれかに記載の方法において、試験片の圧
下方向に、所定の温度分布を生じさせて、加工中に生じ
る転位密度の回復率が80%以下であるひずみ速度で鍛
造することを特徴とする。
【0016】更に、請求項5の発明では、上記の請求項
1から4のいずれかに記載の方法において、試験片の端
面に所定温度に保たれた工具を接触させて、工具の接触
時間と工具の温度を制御することにより、試験片の圧下
方向に所定の温度分布を生じさせて、据え込み鍛造する
ことを特徴とする。
【0017】また、請求項6の発明は、請求項1から5
いずれかに記載の熱間加工割れ強度試験方法により得ら
れた試験結果と、実際の加工条件に基づき、被加工材に
生じる応力とひずみ分布の履歴を推定する手段、およ
び、推定した応力とひずみから割れ発生を予測する割れ
限界予測式により割れ発生を予測する手段、とからなる
ことを特徴とする熱間加工割れ予測方法を要旨とする。
【0018】本発明の作用について説明する。
【0019】図1は、本発明の割れ発生強度試験方法を
示す説明図である。被加工材である試験片1を、石英ま
たは炭化珪素系のセラミックス性の下パンチ3の上に載
せ、試験片の周囲に配設された電磁誘導加熱用コイル8
に通電することにより、試験片を加熱する。試験片は環
状の突起2を有し、側面には試験片用熱電対5が溶接さ
れており、試験片の温度制御に使用される。上下パンチ
は熱電対6、7が埋め込まれ、図示しない温度調節器で
一定温度に保たれており、試験片と直接接触する部分に
は必要により雲母箔などの下側断熱材9および上側断熱
材10が挿入される。図5は、試験片の温度制御方法お
よび加工の制御方法を示す説明図である。時刻t0 で加
熱を開始し、時刻t1 で設定温度T1に達した後、時刻
2 まで保定し、時刻t2 からt3 まで上下パンチを試
験片に軽く接触させる。そして、時刻t3 から加工を開
始し、時刻t4 で加工を終了するとともに、工具を分離
し、時刻t5 まで保定するとともに、時刻t5 からt6
まで冷却し、試験を完了する。
【0020】図4は本発明の試験片の変形前後の中心軸
を含む断面形状を示す説明図で、(A)は加工前、
(B)は加工後の形状を示す。試験片側面に円環状の突
起を有する試験片を用いるのは、(B)の斜線部で示す
突起の外周部に周方向の引張応力が発生して加工割れが
発生しやすいからである。
【0021】以下に、その機構を説明する。加工前後の
試験片の各部寸法を図4に示すように定義する。塑性加
工理論から変形前後の試験片の体積は不変であるから、
次式が成立する。
【0022】H*D*D=h*d*d 但し、h、dは変形前、H、Dは変形後の試験片の高さ
と直径を示す。右辺で左辺を除して、対数をとることに
より次式が得られる。
【0023】ln(H/h)+2*ln(D/d)=0 故に、外径増加率、即ち周方向ひずみεθと圧下ひずみ
εZの間には次式の関係が成り立つ。
【0024】 εθ=0.5*εZ (1) εZ=−ln(H/h) εθ=ln(D/d) 即ち、均一変形の場合の周方向ひずみは、圧下ひずみの
半分になる。
【0025】図6は縦軸に周方向ひずみ、横軸に試験片
の高さ変化から求めた圧下ひずみをとり、式(1)か
ら求めた均一変形の場合、図4の最少外径d1 とD1
の実測結果、図4の最大外径d2 とD2 の変化の実測
結果を示す。最少外径部は、均一変形より大となり、
最大外径部は即ち突起外周部は平均変形より小さくな
った。図7は、図6の結果を定性的に説明する模式図で
あり、(A)は変形前の試験片を円柱部と環状部に分離
した場合を示しており、(B)は圧下による各部の変形
様式を表す図で、円柱部は圧下とともに外径が増大し、
そのため環状部から側面を締め付ける方向の拘束応力を
受ける。一方、環状部はその反作用で内周に環を拡大す
る方向の垂直圧力を受けるため、円周方向に垂直応力σ
θが発生する。そのため、図4の突起付き試験片は、圧
下により突起外周部に降伏応力レベルの周方向の引張応
力が生じて、加工割れを発生しやすくなる。
【0026】図8は縦軸に試験片の外周部に働く周方向
の応力、横軸に試験片の高さから求めた圧下ひずみをと
り、環状突起のある場合と無い場合について、外周に加
工割れが発生した時期を×印で示した。また、環状突起
の無い場合には、工具と試験片の接触面の摩擦係数μを
μ=0とμ=0.25で比較した。環状突起が無く、摩
擦係数μ=0の場合には外周の応力は圧下ひずみの如何
によらず0である。また摩擦係数がμ=0.25と有限
の場合には、圧下ひずみの増加とともに周方向応力が増
加する。これは、図11(A)のように樽型変形が生じ
て、P点の部分がQ点より外側に張り出すために、図7
の環状突起のように作用することで説明できる。一方、
環状突起が有る場合は、図7の機構が直接当てはまるの
で、圧下ひずみの小さいところから大きな周方向応力が
発生する。そのため、環状突起の無い場合に比べて圧下
ひずみの小さい領域で加工割れが発生する。また、突起
の高さや幅を種々変化させると、発生する応力も変化す
るので、材料の割れ特性に応じて、試験の感度を変化さ
せることができる。突起の断面形状は、任意形状で可能
であるが、加工性、およびひずみや応力などの評価を簡
便化する観点から台形または矩形が望ましい。
【0027】また、本願請求項2の発明のように、円柱
側面に円環状の突起を形成した形状の試験片が、円環状
突起部の直径(d2 )と円柱部の直径(d1 )、およ
び、円環状突起部の高さ(h2 )と円柱部の高さ(h)
が下記式(1)、(2)の条件を満足する形状の試験片
であることがより好ましい。
【0028】1<d2 /d1 <2 …(1) 1/10<h2 /h<1/2 …(2) これは、図12及び図13に示すデータから分かるよう
に、上記条件を満足する範囲で、周方向応力が大となる
こと、かつ、割れ観察も容易で、試験片の作成も容易で
ある、といった有利な点があるからである。
【0029】即ち、本発明の環状突起を有する場合に
は、環状突起が無い通常の試験条件の場合に比べて、外
周部に作用する応力が大となり、温間域または熱間域で
割れにくい材料に対しても、加工割れを発生できるの
で、割れ強度の評価が可能となる。
【0030】図9は、試験片の温度分布が加工後の試験
片の形状に影響を及ぼす機構の説明図であり、(A)は
加工速度が速いかまたは、工具と試験片の間の断熱が良
好な場合、(B)は加工速度が遅いかまたは、工具と試
験片の間の断熱が不充分な場合に、それぞれ試験片の圧
下方向の温度分布および変形抵抗の分布を示す。図中の
斜線部は、工具による抜熱により端部が冷却した効果を
示しており、端部温度が中央部温度より低いため、変形
抵抗は逆に端部で上昇して、中央部より硬くなってい
る。また、変形後の試験片の形状を図中に破線で示す。
【0031】通常、加工フォーマスター試験では図9
(A)のように、工具による試験片端面の冷却の影響が
小で、圧下方向の温度分布がほぼ均一であることを前提
にしている。この場合、変形抵抗の分布はほぼ均一であ
るから、加工後の試験片の形状は、図9(A)に示すよ
うに樽型変形となる。この場合は、試験片の直径・高さ
比および工具と端面の摩擦による拘束の影響のみを受け
て、試験片の間の摩擦係数が一定であれば、変形後の試
験片の形状は唯一に定まる。実際、市販の試験機は、樽
型変形形状を圧下率のみの関数として取り扱っているの
で、温度が均一であれば、簡易式としての精度は実用的
な範囲である。しかし、温度分布の不均一度が大きいと
きには、結果の精度が悪化する。
【0032】一方、図9(B)は工具との接触時間が長
いために、工具による抜熱冷却のため試験片端部の温度
が低下している例である。この場合、変形後の試験片の
形状は、図9(A)の樽型と大きく異なる提灯状の局部
変形となっており、特に、圧下の際の加工ひずみ速度が
小さい場合にしばしば観察される。これは、中央部に比
して、両端部近傍の材料が硬くなるため、両端部があた
かも工具のように作用して、変形が中央部に集中するた
めと理解される。この場合の変形を前記の簡易式で精度
良く推定できないので、従来はこのような変形を極力避
ける工夫がなされていた。例えば、図9(A)に示すよ
うに、試験片と工具の間に断熱材として熱伝導率の小さ
い雲母箔を挟むことがなされていた。しかし、近年、有
限要素法などの塑性加工に関する数値解析技術が進んで
おり、不均一変形が生じる場合でも、この条件を考慮し
て精度の高い解析が実施できるようになっている。
【0033】そこで、従来外乱として扱われていた温度
不均一を積極的に利用して、割れ発生試験の感度向上方
法を考案した。即ち、図9(A)に示すように、試験片
中央部と端部の間に所定の温度差ΔTを生じさせて加工
することにより、提灯型の変形を発生させて、変形ひず
みを試験片中央部に集中させる。そのため、変形により
側面から張り出した図9(A)のP点近傍の材料が、図
7に示す環状突起と同様に作用するので、周方向応力が
増大し、割れが発生しやすくなる。
【0034】また、加工割れ発生は変形抵抗が高い程生
じやすいので、割れの発生を促進するためには、加工中
の変形抵抗を高くすればよい。温間域や熱間域の材料の
変形抵抗は材料の温度とひずみ速度に強く依存し、一般
に温度が低い程、またはひずみ速度が小さい程高くな
る。そこで、ひずみ速度を種々変化させて、割れ発生へ
の影響を調査した結果、加工中に生じる転位密度の回復
率が80%以下のひずみ速度で加工すれば、割れ発生の
頻度が高くなることが判明した。これは、回復が加工に
より生ずる転位の高温下での消滅現象であり、回復率が
80%以下では加工により発生した転位が完全には消滅
せず、材料の内部に蓄積されるため、変形抵抗が上昇し
割れが発生するものとして理解できる。
【0035】次に、試験片の温度分布を制御する方法と
して、試験片の端面に所定温度に保たれた工具を接触さ
せる方法を検討した。伝熱学の理論式より、工具面と試
験片端面の接触熱抵抗が大きく変化しなければ、工具の
接触時間と工具の温度から試験片の圧下方向の温度分布
を求めることができる。そこで、工具の接触時間と工具
の温度を制御して、図9(B)に示すように、試験片の
中心部と端部の温度差ΔTを発生させることにより提灯
型の変形を発生させて加工割れの発生を促進することが
できる。この際、別途求めた各材料毎の変形抵抗予測式
に、温度差ΔTを入れて変形抵抗の分布が求められるの
で、前記の塑性加工に関する有限要素法により、試験片
中央部の応力やひずみなどの分布が求められ、割れ発生
限界条件が精度良く求められる。
【0036】また、前記の加工割れ強度試験方法によ
り、加工割れが発生する応力やひずみの限界を求めてお
き、前記の有限要素法などの数値解析手段を適用して、
実際の加工条件から実操業において被加工材に生じる応
力とひずみ分布の履歴を推定し、推定した応力及びひず
みと前記の加工割れ限界応力またはひずみとを比較する
ことにより、割れ発生を予測することができる。
【0037】
【発明の実施の形態】図1〜図3および第1表〜第3表
に本発明の実施の形態を示す。
【0038】図1は熱間加工試験状況を示す中心軸を含
む断面図、第1表は、試験片の条件を示す。試験片は工
具鋼と軸受け鋼とし、図1に示す本発明の矩形断面環状
突起付き試験片と比較材として円柱状試験片を用いた。
【0039】第2表は試験条件を示す。図示しない加工
フォーマスター試験機は商標をサーメックマスターとし
て市販されており、下パンチ固定式で、上パンチのスト
ローク位置をコンピュータ制御式油圧装置で駆動する方
式で、圧下率、ひずみ速度を任意に設定できる。また、
試験片の周囲に電磁誘導加熱用コイルを配置することに
より、試験片を加熱し、試験片の側面および工具の内部
に取り付けた熱電対で測温したデータをもとに、試験機
に付属の温度制御装置で温度制御して、図5に示すよう
に、任意のヒートパターンを設定する。
【0040】 第1表 試験片条件 試験片材質 工具鋼(SKD11)、軸受け鋼(SUJ2) 試験片形状 円柱状試験片、矩形断面環状突起付き試験片 寸法 d1 /mm 8 d2 /mm 8、10、12 h/mm 12 h2 /mm 1、2、3、4
【0041】 第2表 試験条件 試験装置 サーメックマスター(富士電波工機株式会社製) 加工温度/℃ 700〜1200 ひずみ速度1/sec 0.1〜100 圧下率 0.7 工具面の潤滑状況 無潤滑 断熱材 雲母箔有り、無し 加熱条件 高周波電磁誘導加熱 工具の材質 石英(1000℃以下)、 炭化珪素(1000℃以上) 工具の温度/℃ 常温〜300 上下工具の接触時間 /sec 5〜1000
【0042】図2は試験片の材料として工具鋼を用いた
場合の割れ発生試験結果を示す図で、縦軸にひずみ速
度、横軸に加工温度をとり、円柱試験片と環状突起付き
試験片で、実験から得られた割れ発生が生じる限界線を
示す。図2の実線は円柱試験片の割れ限界であり、線よ
り上方の領域は割れが発生せず、下方の領域は割れが発
生したことを示す。割れはひずみ速度が大きい場合に発
生する傾向であり、1000℃付近ではほとんど割れな
いことがわかる。図2の破線は本発明の環状突起付き試
験片の割れ限界を示す。円柱試験片に比べて割れ限界線
がひずみ速度の小さい方に移動しており、加工割れが発
生しやすくなっていることが判る。図3は試験片の材料
として軸受け鋼を用いた場合の、図2と同様の、割れ発
生試験結果を示す図である。実線で円柱試験片の割れ限
界を示す。工具鋼に比して割れが発生しにくいことが判
る。一点鎖線は、本発明の環状突起付き試験片の割れ限
界を示す。円柱試験片では割れない条件でも、高ひずみ
速度域で割れが発生することが判る。破線は、本発明の
環状突起付き試験片に100℃の温度差を与えた場合の
割れ限界を示す。温度差を付けない場合に比べて、低ひ
ずみ速度の側で割れ発生が生じている。
【0043】第3表は、本発明による工具鋼の鍛伸にお
ける割れ発生推定方法を示す図である。
【0044】鍛伸中に素材の温度が低下して割れが発生
するのを防止するために、予め材料の評価試験を行って
割れ発生限界式を求め、実機の鍛伸条件から求めた境界
条件で剛塑性有限要素法による変形解析を行った。そし
て、解析より得られた応力・ひずみの履歴を割れ発生限
界式に適用して、割れ発生の有無を予測した。第3表に
示す鍛伸条件の場合、鍛伸時間が長くなり温度が低下し
た部分に対して割れ限界を越える条件が抽出されたの
で、その部分を補助的に加熱することにより鍛伸時間を
長くしても割れないことが判明した。
【0045】
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、延性の高い材料の耐割
れ強度特性の評価も可能となり、高温材料の割れ強度を
精度良く評価できる。また、精度の高い熱間加工割れ予
測方法を提供することができる。ひいては温間域または
熱間域における材料の加工割れを防止するのに寄与し、
顕著な効果がある。
【0047】本発明は、材料への負荷の過酷化に対応し
た業界のニーズに答える極めて有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の割れ強度試験方法を示す図である。
【図2】本発明の試験方法の効果を示す図である。
【図3】本発明の試験方法の効果を示す図である。
【図4】本発明の試験方法に用いる試験片を示す図であ
る。
【図5】本発明の試験方法におけるヒートパターンを示
す図である。
【図6】本発明の試験方法の作用を示す図である。
【図7】本発明の試験方法の割れ発生の機構を示す図で
ある。
【図8】本発明の試験方法の効果を示す図である。
【図9】本発明の試験方法の作用を示す図である。
【図10】従来技術の加工フォーマスター試験方法を示
す図である。
【図11】従来技術の試験方法で生じる変形を示す図で
ある。
【図12】円柱側面に円環状の突起を形成した形状の試
験片における、円環状突起部の直径(d2 )と円柱部の
直径(d1 )のd2 /d1 の値と周方向応力σθとの関
係を示す図である。
【図13】円柱側面に円環状の突起を形成した形状の試
験片における、円環状突起部の高さ(h2 )と円柱部の
高さ(h)のh2 /hの値と周方向応力σθとの関係を
示す図である。
【符号の説明】
1 試験片 2 環状突起 3 下パンチ 4 上パンチ 5 試験片用熱電対 6 下側工具用熱電対 7 上側工具用熱電対 8 電磁誘導加熱用コイル 9 下側断熱材 10 上側断熱材

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 予め温間域から熱間域に加熱した軸対称
    形状の可塑性試験片を平工具で据え込み鍛造し、試験片
    側面に割れが発生する加工条件を比較検討することによ
    り、加工割れ強度を評価する可塑性材料の熱間加工割れ
    強度試験方法において、前記軸対称形状の可塑性試験片
    として、円柱側面に円環状の突起を形成した形状の試験
    片を用い、据え込み鍛造することを特徴とする可塑性材
    料の熱間加工割れ強度試験方法。
  2. 【請求項2】 円柱側面に円環状の突起を形成した形状
    の試験片が、円環状突起部の直径(d2 )と円柱部の直
    径(d1 )、および、円環状突起部の高さ(h2 )と円
    柱部の高さ(h)が下記式(1)、(2)の条件を満足
    する形状の試験片であることを特徴とする請求項1記載
    の可塑性材料の熱間加工割れ強度試験方法。 1<d2 /d1 <2 …(1) 1/10<h2 /h<1/2 …(2)
  3. 【請求項3】 円環状突起の断面形状が台形又は矩形で
    あることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記
    載の可塑性材料の熱間加工割れ強度試験方法。
  4. 【請求項4】 試験片の圧下方向に、所定の温度分布を
    生じさせて、加工中に生じる転位密度の回復率が80%
    以下であるひずみ速度で鍛造することを特徴とする請求
    項1から3のいずれかに記載の可塑性材料の熱間加工割
    れ強度試験方法。
  5. 【請求項5】 試験片の端面に所定温度に保たれた工具
    を接触させて、工具の接触時間と工具の温度を制御する
    ことにより、試験片の圧下方向に所定の温度分布を生じ
    させて、据え込み鍛造することを特徴とする請求項1か
    ら4のいずれかに記載の可塑性材料の熱間加工割れ強度
    試験方法。
  6. 【請求項6】 請求項1から5のいずれかに記載の熱間
    加工割れ強度試験方法により得られた試験結果と、実際
    の加工条件に基づき、被加工材に生じる応力とひずみ分
    布の履歴を推定する手段、および、推定した応力とひず
    みから割れ発生を予測する割れ限界予測式により割れ発
    生を予測する手段、とからなることを特徴とする熱間加
    工割れ予測方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007139476A (ja) * 2005-11-16 2007-06-07 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 鍛造性試験方法及び試験装置
JP2009168528A (ja) * 2008-01-11 2009-07-30 Koa Kagaku Kogyo Kk コンクリート試験体載荷加熱装置
JP2013103238A (ja) * 2011-11-11 2013-05-30 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp 表面加工割れ感受性評価方法およびその装置
JP2015223613A (ja) * 2014-05-28 2015-12-14 日産自動車株式会社 鍛造割れ予測方法、鍛造割れ予測プログラム、および記録媒体

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