JPH09235732A - 植物生育基盤材 - Google Patents

植物生育基盤材

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JPH09235732A
JPH09235732A JP8221013A JP22101396A JPH09235732A JP H09235732 A JPH09235732 A JP H09235732A JP 8221013 A JP8221013 A JP 8221013A JP 22101396 A JP22101396 A JP 22101396A JP H09235732 A JPH09235732 A JP H09235732A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 施工時における作業性がよく、保水性、通気
性及び保肥性が優れており、法面等の土木工事用として
好適な植物生育基盤材を得る。 【解決手段】 ココヤシ外殻非繊維物、肥料及び種子を
混合し、所望形状に圧縮成形したもの1を、麻袋等の生
分解性の袋体2に詰め込み、植物生育基盤材4を得る。
この植物生育基盤材においては、母材となるココヤシ外
殻非繊維物が吸水し、膨潤するため、保水性、通気性及
び保肥性が優れている。また、ココヤシ外殻非繊維物は
生分解速度が遅いため、種子が発芽し、十分に生育する
まで、風雨や低温から植物を保護することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ココヤシ外殻非繊
維物を母材として含有しており、道路の法面工事用及び
河岸、海岸、湖岸の護岸工事用として、さらには都市、
山又はゴルフ場の緑化及び農業用として好適な植物生育
基盤材に関する。
【0002】
【従来の技術】環境保全意識の高まりを受け、道路の法
面工事や河岸、海岸、湖岸の護岸工事において、従来よ
り行われてきた環境破壊を伴う工法に対する批判が高ま
ってきており、それを見直す方法のひとつとして植栽に
よる工法が注目されている。もちろん従来より、法面に
コンクリート枠、網張り又はござ敷き等を施工ののち、
芝生、牧草、灌木等の植物を植える工法は採用されてい
た。しかし、施工場所に土壌や肥料を運んだり、種子を
蒔いたり苗を植えたりする負担が大きく、さらには植物
が根付く前に雨により流出してしまうなど、非常に効率
の悪いものであった。
【0003】そこで、このような問題点を解決するた
め、植栽用の人工基盤についての技術がいろいろと提案
されている。例えば、特開平4−44521号公報に
は、法面工事用として、土壌、砂、石、苦土石灰、ピー
トモス、ヤシガラ、バーク、有機肥料、化学肥料、海
草、苔、腐葉土、魚粉、骨粉、人工土壌活性材、高吸水
性物質から選ばれた植生のための材料及び接着剤を含む
成形体であって、密度が成形体全部分において同一であ
るか又は外側部分は密度が高く、内部は密度が低くなっ
ている植生基盤材が提案されている。特開平4−281
703号公報には、法面等の緑化資材として、泥炭、パ
ーク堆肥からなる有機質腐植資材、ゼオライト、ベント
ナイト及び種子を配合したものに、バーミキュライトを
配合し、加圧成型したものが提案されている。特開平7
−54342号公報には、法面等の工事用として、澱粉
系高分子と易崩壊性プラスチック(エチレン−酢酸ビニ
ル共重合体けん化物)からなる組成物をフィルム成形
し、延伸配向して得られたスプリットヤーンを混合機器
で開繊して得られた易崩壊性繊維状物と肥料を含む土
砂、種子からなる土木工事用組成物が提案されている。
特開平7−236354号公報には、護岸工事や法面工
事用として、加水分解性樹脂と多孔性無機質とを含有し
て特定形状に固化された易崩壊性構造体が提案されてい
る。
【0004】また、土木工事以外においても、特開平6
−153689号公報には、野菜の栽培床として、パル
プ粉末、バーク等の木質系粉末、綿、やし殻繊維等の有
機質繊維と、高吸水性樹脂とを混合して、圧縮成形した
成形体からなる栽培床が提案されている。特開平7−2
74714号公報には、一般家庭における植物栽培用と
して、高温乾燥処理したピートモス、ココナッツ繊維と
種子を含む層を上部に有し、特定量の植物性繊維材料及
びゼオライトを含む平板状圧縮成形体からなり、表面と
裏面に溝を有する植物栽培培地用圧縮成形体が提案され
ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】護岸工事、法面工事等
に使用する植栽用の人工基盤等に要求されるものとして
は種々あるが、まず、施工が容易であることが要求さ
れ、施工後においては、植物の発芽生長に寄与するた
め、保水性、保肥性及び通気性等がよいことが要求され
る。そして、植物が発芽生長したあとは、それが十分に
根づくまで、風雨、温度等の外的要因から保護し、具体
的には幼苗が雨水で流出したり、低温や高温で枯死した
りすることを防止し、その後は生分解して周辺環境を汚
染しないことが等が要求される。このような各種要求を
満たす上において、植栽用の人工基盤等の主成分をなす
母材の存在は、肥料、ピートモス、ココナッツ繊維(や
し殻繊維)、ゼオライト、ベントナイト、バーミキュラ
イト等の土壌改良材と比べてもその重要性は非常に大き
なものである。
【0006】本発明は、植栽用の人工基盤等における母
材の重要性に着目し、母材としてココヤシ外殻非繊維物
を用い、上記要求を十分に満たし、更に優れた効果を付
加することができる植物生育基盤材を提供することを目
的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するための手段として、母材となるココヤシ外殻非繊
維物及び肥料を含有する成形体又は圧縮成形体と、種
子、幼苗又は根分株が一体化されていることを特徴とす
る植物生育基盤材(以下「第1発明」という)を提供す
るものである。本発明は、上記目的を達成するための他
の手段として、さらに、土壌改良材又は土壌活性材を含
有する第1発明の植物生育基盤材を提供するものであ
る。
【0008】本発明は、上記目的を達成するための他の
手段として、母材となるココヤシ外殻非繊維物及び肥料
と、種子、幼苗又は根分株が、生分解性の袋体により被
包されていることを特徴とする植物生育基盤材(以下
「第2発明」という)を提供するものである。
【0009】また本発明は、上記目的を達成するための
他の手段として、母材となるココヤシ外殻非繊維物及び
肥料が成形体又は圧縮成形体であり、前記成形体又は圧
縮成形体と種子、幼苗又は根分株が一体化されている請
求項4記載の植物生育基盤材(以下「第3発明」とい
う)を提供するものである。また本発明は、上記目的を
達成するための他の手段として、さらに、土壌改良材又
は土壌活性材を含有する第2又は第3発明の植物生育基
盤材を提供するものである。
【0010】さらに本発明は、上記目的を達成するため
の他の手段として、種子、幼苗の水分含有率が30重量
%以下である第1乃至第3発明の植物生育基盤材を提供
するものである。さらに本発明は、上記目的を達成する
ための他の手段として、根分株の水分含有率が40重量
%以下である第1乃至第3発明の植物生育基盤材を提供
するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】まず、第1発明の植物生育基盤材
について説明する。第1発明の植物生育基盤材は、母材
となるココヤシ外殻非繊維物及び肥料を含有する成形体
又は圧縮成形体と、種子、幼苗又は根分株が一体化され
てなるものである。第1発明において一体化していると
は、ココヤシ外殻非繊維物及び肥料を含有する成形体又
は圧縮成形体の表面に、種子、幼苗又は根分株が付着さ
れているか又は発芽可能な程度の深さに埋め込まれてい
ることを意味し、そのほかにも、ココヤシ外殻非繊維物
及び肥料とともに、種子等が成形体又は圧縮成形体を形
成している場合も含まれるものである。ここで成形体と
は、必要に応じて結着材を用い、人力又はそれと同等の
道具類により(即ち、機械的手段により圧縮することな
く)所望の形状に成形したものをいい、圧縮成形体と
は、必要に応じて結着材を用い、機械的手段により所望
の形状に圧縮成形したものをいう。これらの定義は以下
においても同様の意味で用いる。
【0012】第1発明におけるココヤシ外殻非繊維物及
び肥料を含有する成形体又は圧縮成形体は、例えば、図
1に示すような板状のものであり、そのほか施工状況に
応じた所望の形状、例えば、立方体状、直方体状、球
状、円柱状、棒状、帯状等の種々の形状にすることがで
きる。また、その大きさも、施工状況に応じた所望の大
きさのものにすることができる。
【0013】第1発明で用いるココヤシ外殻非繊維物
は、ココピート又はコイヤーピート(Coir Peat )とも
称せられるもので、ココヤシ外殻から、タワシ等の材料
として汎用され、ココナツ繊維又はヤシガラ繊維等とも
称せられる繊維を取り除いた残部を意味するものであ
る。ココヤシ外殻非繊維物の形態は、粉末状、細片状又
は0.5〜30mm程度の短い繊維状、その他の不定形物
が混在したものであり、その性質に影響を与えない程度
のヤシガラ繊維や内核の破砕物等も含有されている。コ
コヤシ外殻非繊維物は、原料となるココヤシが天然物で
あるため、その組成は必ずしも一定したものではない
が、その一分析例を表1に示す。
【0014】
【表1】 ココヤシ外殻非繊維物の組成 成 分 含有割合(%) 水 分 11.38 pH(乾物相当量 1:10 25℃) 4.9 (以下乾物換算値) 窒素全量 0.77 リン酸全量 0.44 カリウム全量 1.14 有機物 95.19 陽イオン交換容量 70.9meq/100g
【0015】このような一組成例で示されるココヤシ外
殻非繊維物は、ポーラス化しており、圧縮により、容易
にかつ大幅に体積を減少させる性質を有しており、一
方、雨水等を吸水したときには、約1.5〜15倍もの
体積に速やかに膨潤する性質を有している。膨潤による
体積復元量は、吸水量や時間経過、圧縮率、配合素材の
種類や配合量等に左右されるが、好ましくは約3〜8倍
である。また、ココヤシ外殻非繊維物は、最終的には生
分解するもののその速度は非常に遅く、通常は、完全に
分解するまでに約1年以上もの期間を要する。よって、
ココヤシ外殻非繊維物は、保水性、保肥性及び通気性等
が優れており、植物が十分に大きく成育するまでの間の
風雨からの保護作用も優れている。
【0016】なお、上記したとおり、ココヤシ外殻非繊
維物は、その外観がピートモスに似ていることから従来
よりココピート等と俗称されているものであるが、表1
の分析結果からも明らかなとおり、ピート(peat) 、即
ち泥炭ではないため、泥炭化した繊維土壌であるピート
モスには当然に含まれている腐植酸がまったく含まれて
いない。また、ココヤシは熱帯地域に生育する植物であ
るため、樹上より落下したココヤシは高温度により容易
に分解していまい、泥炭化することはあり得ないもので
ある。
【0017】第1発明で用いる肥料としては、腐植酸苦
土肥料又は商品名キチントップE(日本キレート社製)
等として市販されている、甲殻質肥料粉末(カニ殻粉末
等)を主成分とし、これに米糠とカニ殻抽出液を混ぜた
うえ有用菌を入れて発酵させたボカシ肥(以下「ボカシ
肥」という)等を配合することが好ましい。ここで腐植
酸苦土肥料は、酸性矯正をなし、リン酸の肥料効果を高
める作用をするものであり、次に、腐植酸苦土肥料の組
成の分析例を表2に示す。
【0018】
【表2】 腐植酸苦土肥料の組成 成 分 含有割合(%) 腐植酸 60 く溶性苦土 4 (内水溶性苦土) (2) 窒素全量 3 ケイ酸 4 鉄 2 有機物 95.19 陽イオン交換容量 70.9meq/100g
【0019】ボカシ肥は、農薬、肥料及び土壌改良材と
して作用するものである。ボカシ肥は、上記のとおり、
カニ殻粉末、米糠及びカニ殻抽出液を原料として用いた
発酵肥料である。各成分の一分析例を示すと、カニ殻粉
末は、キチン質32.6%、カルシウム29.3%、マ
グネシウム5.6%、窒素4%、リン酸4%、カリウム
0.5%、蛋白質29.5%及び水分7.2%であり、
米糠は、窒素2.1%、リン酸3.8%及びカリウム
1.4%である。また、カニ殻抽出液は、カニの甲羅か
ら抽出したキチンを脱アセチル化して得られるキトサン
の溶液であり、60〜1000倍に希釈して使用するも
のである。
【0020】また、第1発明においてはそのほかにも、
通常の植物栽培に用いる各種有機肥料及び化学肥料も必
要に応じて配合することができる。肥料の配合割合はそ
の種類に応じて適宜調整することができる。例えば、腐
植酸苦土肥料の配合量は、ココヤシ外殻非繊維物100
重量部に対して8〜12重量部が好ましく、ボカシ肥の
配合量は、ココヤシ外殻非繊維物100重量部に対して
1.5〜3.5重量部が好ましい。
【0021】さらに、第1発明においては、土壌改良材
としてピートモスを配合することができる。ピートモス
は水苔が堆積して泥炭化した繊維性土壌改良材であり、
その一分析例を表3に示す。
【0022】
【表3】 ピートモスの組成 成 分 含有割合(%) 水 分 53.33 pH(乾物相当量 1:10 25℃) 3.5 窒素全量 0.78 リン酸全量 0.03 カリウム全量 0.01 マンガン全量 0.002 (以下乾物換算値) 有機物 94.54 腐植酸 8.61 陽イオン交換容量 138.0meq/100g
【0023】また、第1発明においてはそのほかにも、
通常の植物栽培に用いる各種土壌改良材も必要に応じて
配合することができる。肥料の配合割合はその種類に応
じて適宜調整することができる。例えば、ピートモスの
配合割合は、ココヤシ外殻非繊維物100重量部に対し
て30〜50重量部が好ましい。
【0024】さらに、第1発明においては、ゼオライト
等の土壌改良材や、アルギン酸ソーダ系化合物を主成分
とする粉末状の土壌活性材を配合することができる。こ
こでゼオライトは、塩基置換容量を高めて地力を付与
し、同時に含有されている各種微量成分により土壌の有
害物を吸着して植物の健全発育を促し、土壌の緩衝能を
高める作用をするものである。また、アルギン酸ソーダ
系化合物を主成分とする粉末状の土壌活性材は、微生物
を土壌に固定化し、微生物の働きを永続化させるように
するものである。これらの各成分の一分析例を表4及び
表5に示す。
【0025】
【表4】 天然硬質ゼオライトの組成 成 分 含有割合(%) ケイ酸 70.17 アルミニウム 12.15 鉄 1.14 マンガン 0.06 カルシウム 1.88 マグネシウム 0.33 ナトリウム 1.95 カリウム 2.34 チタン 0.17 強熱残量(1g.loss) 9.29 pH 6.9 水素イオン濃度(pH)1%水溶液 7.20 陽イオン交換容量(CEC) 130〜160meq/100g
【0026】
【表5】 粉末状土壌活性材の組成 成 分 含有割合(%) アルギン酸ソーダ系化合物 75.0 窒素全量 6.8 リン酸全量 6.0 カリウム全量 6.0 微量成分(60種類) 2.0 pH(乾物相当量 1:10 25℃) 4.9
【0027】また、第1発明においてはそのほかにも、
通常の植物栽培に用いる各種土壌活性材等を必要に応じ
て配合することができる。土壌改良材の配合割合はその
種類に応じて適宜調整することができる。例えば、ゼオ
ライトの配合割合は、ココヤシ外殻非繊維物100重量
部に対して3〜4重量部が好ましく、アルギン酸ソーダ
系化合物を主成分とする粉末状土壌活性材の配合割合
は、ココヤシ外殻非繊維物100重量部に対して1〜2
重量部が好ましい。
【0028】さらに、第1発明においては、VA菌根
(Vesicular-Arbuscuiar mycorrhiza)等の内性菌根、腹
菌類等の外性菌根のような菌根菌を配合することができ
る。内性菌根としてのVA菌根は、菌糸が植物の細胞内
に入るもので、植物の生育助長、病原抵抗性の付与、植
物の水分保持の補助的作用、リン酸分の吸収促進作用等
に資するものであり、その例としては、アカウロスポラ
属(Acaulospora sp.)、エントロホスポラ属(Entoroph
ospora sp.) 、ギガスポラ属(Gigaspora sp.)、グロム
ス属(Glomus sp.) 、スクレロシツチス属(Sclerrocys
tis sp.)、スクテロスポラ属(Scutellospora sp.)を挙
げることができる。外性菌根としての腹菌類等は、胞子
多産型で胞子による接種が可能で乾燥にも強いことか
ら、腹菌類に属するコツブダケ、タマコツブダケ、ナガ
エノコツブダケ等のキノコを挙げることができる。
【0029】さらに、第1発明においては、そのほかに
も、通常の植物栽培に用いられる各種菌のボカシ菌等を
配合することができる。
【0030】第1発明の植物生育基盤材は、次の方法に
より製造することができる。まず、ココヤシ外殻非繊維
物及び肥料を混合し、必要に応じて、水溶性又は腐食性
の結着材を用い、成形体又は圧縮成形体を得る。次に、
成形体又は圧縮成形体の所望の面に、種子等をそのまま
又は必要に応じて結着材等を用いて付着させるか、指等
で発芽可能な程度の深さに埋め込むことにより、第1発
明の植物生育基盤材を得ることができる。
【0031】また、コヤシ外殻非繊維物、肥料及び種子
等を混合し、同様にして成形体又は圧縮成形体を製造す
ることにより、第1発明の植物生育基盤材を得ることが
できる。さらに、種子等の位置を調整するため、まずコ
ヤシ外殻非繊維物と肥料を用いて2つの成形体又は圧縮
成形体をつくり、それらの間に種子等を挟み込んだの
ち、一つの成形体又は圧縮成形体にする方法、また、種
子等を生分解性の小袋に入れたのち、前記の二つの方法
に従って、成形体又は圧縮成形体を得る方法によって
も、第1発明の植物生育基盤材を得ることができる。
【0032】このような第1発明の植物生育基盤材は、
施工前の保管時における種子等の発芽を防止するため、
施工時までにおける水分含有率が30重量%以下(根分
株のきは40重量%以下)であることが好ましく、15
重量%以下であることが特に好ましい。また、このよう
に水分を調節することにより、比重を約0.1〜0.5
にすることができる。
【0033】次に、第2発明の植物生育基盤材について
説明する。第2発明の植物生育基盤材は、生分解性の袋
体により、母材となるココヤシ外殻非繊維物及び肥料
と、種子、幼苗又は根分株が被包されてなるものであ
る。この第2発明の植物生育基盤材においては、ココヤ
シ外殻非繊維物及び肥料は成形されておらず、単なる混
合物として存在しているものである。
【0034】第2発明で用いるココヤシ外殻非繊維物、
肥料及び種子、幼苗又は根分株は、第1発明と同じもの
であり、さらに第1発明において例示した、土壌改良
材、土壌活性材、菌根菌等のその他の成分を配合するこ
とができる。
【0035】第2発明で用いる生分解性の袋体は、ココ
ヤシ外殻非繊維物等を含む前記混合物を収納し、保持す
るためのものである。この袋体は、その存在により水分
の蒸発を抑制する作用や雨水により生じた水流を遅くす
る作用をする。また、袋体の外気面側が破れた場合に
は、袋体内部に水を貯留する作用もするものである。よ
って、この袋体は、例えば、図2において示すような形
状の袋体2であり、その内部には、所望容積の外部雰囲
気と連絡自在、即ち、通水及び通気が可能な空間を有す
るものである。この生分解性の袋体は、図2に示したも
ののほかに、筒状、立方体状、帯状等の所望の形状にす
ることができ、外部雰囲気と連絡するための目(孔)の
大きさは、少なくともココヤシ外殻非繊維物等を含む前
記混合物を収納、保持できる大きさに調整する。また、
この袋体は、植物生育基盤材の施工時において、法面等
の土壌に接する面を密にし、外気と接触する面(即ち、
発芽面)の目を荒くすることができる。
【0036】このような生分解性の袋体としては、例え
ば、植物又は動物由来の天然繊維、紙、布、不織布等か
らなる袋状のものを挙げることができるが、より目の大
きな網袋状のものにすることもできる。また、生分解性
の程度については、施工場所や施工時期等を考慮して、
分解しやすいものや分解しにくいものを適宜選択するこ
とができる。
【0037】第2発明の植物生育基盤材は、ココヤシ外
殻非繊維物、肥料及び種子、幼苗又は根分株等を混合し
たのち、そのまま生分解性の袋体に詰め込むことによ
り、製造することもできる。生分解性の袋体素材として
は、例えばポリビニールアルコールを含むフィルム(以
下「PVAフィルム」という)を用いることができる。
PVAフィルムはどのような作用効果を得ようとするか
によって組成等を調整することができ、例えば発芽調整
作用を目的とする場合には、重合度、けん化度、結晶化
度等により水溶解性を調整する必要がある。
【0038】次に、第3発明の植物生育基盤材について
説明する。第3発明の植物生育基盤材は、生分解性の袋
体により、母材となるココヤシ外殻非繊維物及び肥料を
含有する成形体又は圧縮成形体と、種子、幼苗又は根分
株が一体化されたものが被包されてなるものである。
【0039】第3発明において一体化されているとは、
ココヤシ外殻非繊維物及び肥料を含有する成形体又は圧
縮成形体と、種子、幼苗又は根分株が、発芽及び生育が
可能な程度に接触していることを意味するものである。
この一体化の形態としては、ココヤシ外殻非繊維物及び
肥料を含有する成形体又は圧縮成形体と、種子、幼苗又
は根分株が、袋体内部にともに詰め込まれている場合を
例示することができる。この場合における「ともに詰め
込まれている」とは、本発明の目的を考慮すれば当然の
ごとく、「健全な発芽及び生育が可能なようにともに詰
め込まれている」ことを意味するものである。よって、
例えば、成形体又は圧縮成形体が板状の場合には、上面
(施工後において外気と接触する面)に種子等が適度に
分散されて置かれていること、付着されていること含
み、さらに、成形体又は圧縮成形体が薄い場合には、下
面(施工後において法面等に接触する面)に対して、上
面の場合と同様に種子を付着等することも含まれる。
【0040】また、成形体又は圧縮成形体の上面に種子
等が付着等されている場合には、運搬及び施工時におい
て、袋体の内表面と種子等が擦れ合い、それにより成形
体又は圧縮成形体の表面から種子等が脱落するおそれが
ある。よって、上記した「健全な発芽及び生育が可能な
ようにともに詰め込まれている」という点を考慮すれ
ば、成形体又は圧縮成形体の内部に種子等が発芽可能な
程度の深さにまで埋め込まれている態様も含まれる。さ
らに、種子等の脱落のおそれを完全に排除し、より健全
な発芽及び生育を確保するという観点からは、ココヤシ
外殻非繊維物、肥料及び種子等を含む成形体又は圧縮成
形体にし、袋体に詰め込む態様も含まれる。
【0041】第3発明における成形体又は圧縮成形体
は、第1発明における植物生育基盤材と同様のものであ
る。よって、第3発明の植物生育基盤材は、ココヤシ外
殻非繊維物及び肥料等を混合し、成形又は圧縮成形して
得られた成形体又は圧縮成形体と種子等を一体化させた
もの(第1発明の植物生育基盤材に相当する)を、第2
発明と同様の袋体(図2参照)に詰め込むことにより製
造することができる(図4参照)。また、そのほかに
も、第2発明の植物生育基盤材を製造したのち、袋体ご
と圧縮成形する方法も適用することができる。
【0042】このような第2及び第3発明の植物生育基
盤材においても、第1発明と同様に、水分含有率が30
重量%以下(根分株は40重量%以下)であることが好
ましく、15重量%以下であることが特に好ましい。
【0043】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説
明するが、本発明はこれらにより限定されるものではな
い。
【0044】実施例1 まず、ココヤシ外殻非繊維物100重量部に対して、ピ
ートモス38重量部、腐植酸苦土肥料7.6重量部、ゼ
オライト3.0重量部、アルギン酸ソーダ系土壌活性材
1.5重量部及びボカシ肥1.5重量部、さらに水不溶
性の結着材であるPVAを1重量部を配合し、混合し
た。次に、この混合物を、機械を使用することなく成形
し、幅30cm、長さ50cm及び厚さ5cmの板状成形体を
得た。次に、この成形体の一面に、前記結着材を用いて
ウィーピングラブグラスの種子を貼り付ける方法又はウ
ィーピングラブグラスの種子を指で押し込む方法によっ
て、第1発明の植物生育基盤材を得た。この植物生育基
盤材の重量は約1500gで、含水率は20重量%であ
った。このようにして得られた植物生育基盤材に、3リ
ットルの水をかけると速やかに吸水し、幅45cm、長さ
75cm及び厚さ7.5cmとなり、約3.5倍にまで膨潤
した。
【0045】実施例2 実施例1と同一組成の各材料(結着材を除く)を混合
し、機械的に30〜80kg/cm2の圧力を加え、幅13c
m、長さ27cm及び厚さ4cmの板状の圧縮成形体を得
た。次に、その一面に、前記結着材を用いてウィーピン
グラブグラスの種子を貼り付ける方法又はウィーピング
ラブグラスの種子を指で押し込む方法によって、第1発
明の植物生育基盤材を得た。この植物生育基盤材の重量
は約1500gで、含水率は22重量%であった。
【0046】実施例3 実施例1と同一組成の各材料及びウィーピングラブグラ
スの種子を混合し、機械を使用することなく実施例1と
同様にして成形し、幅30cm、長さ50cm及び厚さ5cm
の板状成形体からなる。第1発明の植物生育基盤材を得
た。
【0047】実施例4 実施例1と同一組成の各材料及びウィーピングラブグラ
スの種子を混合し、実施例2と同様にして機械的に圧縮
成形し、幅13cm、長さ27cm及び厚さ4cmの板状の圧
縮成形体からなる第1発明の植物生育基盤材を得た。
【0048】実施例5 まず、ココヤシ外殻非繊維物100重量部に対して、ピ
ートモス28.6重量部、腐植酸苦土肥料7.1重量
部、ゼオライト2.9重量部、アルギン酸ソーダ系土壌
活性材1.4重量部及びボカシ肥1.4重量部を配合
し、混合した。次に、この混合物を30〜80kg/cm2
圧力を加えて圧縮成形し、幅13cm、長さ27cm及び厚
さ4cmの板状の圧縮成形体を得た。次に、この成形体の
一面に、前記結着材を用いてメドハギの種子を貼り付け
る方法又はメドハギの種子を指で押し込む方法によっ
て、第1発明の植物生育基盤材を得た。この植物生育基
盤材の重量は約1400gで、含水率は15重量%であ
った。このようにして得られた植物生育基盤材に、2リ
ットルの水をかけると速やかに吸水し、幅34cm、長さ
67cm及び厚さ16cmとなり、約5倍にまで膨潤した。
【0049】実施例6 実施例5と同一組成の各材料及びメドハギの種子を混合
し、30〜80kg/cm2の圧力を加え、幅15cm、長さ3
0cm及び厚さ7cmの板状の圧縮成形体からなる第1発明
の植物生育基盤材を得た。この植物生育基盤材の重量は
約1400gで、含水率は15重量%であった。
【0050】実施例7 実施例1で用いた組成の各成分とウィーピングラブグラ
スの種子を混合し、成形することなく幅40cmで長さ6
0cmの麻袋のなかに詰め込み、第2発明の植物生育基盤
材を得た。なお、この麻袋は、発芽を容易にさせるた
め、その一面の目を十分に荒くしたものを用いた。
【0051】実施例8 実施例1で得た植物生育基盤材(30cm×50cm×5c
m)を実施例7と同様の麻袋のなかに詰め込み、第3発
明の植物生育基盤材を得た。
【0052】試験例1 実施例7及び8において得られた植物生育基盤材を用
い、道路法面への施工試験を行った。まず、各植物生育
基盤材を道路法面に敷設し、十分な水をかけた。このと
き、各植物生育基盤材の麻袋は、内部の膨潤により、ぱ
んぱんに膨らんだ。その後、そのままで2週間放置した
場合の状態を観察した。その結果、いずれの植物生育基
盤材からもウィーピングラブグラスが発芽しており、麻
袋の目の間から一斉に苗が伸びていた(以上、図5参
照)。なお、麻袋には外観状の変化は見られなかった。
【0053】実施例9及び10 実施例5及び6で得た植物生育基盤材を、幅40cmで長
さ60cmの植生用の分解性不織布袋のなかに詰め込み、
第3発明の植物生育基盤材を得た。
【0054】試験例2 実施例9及び10において得られた植物生育基盤材を用
い、道路法面への施工試験を行った。まず、各植物生育
基盤材を道路法面に敷設し、十分な水をかけた。このと
き、各植物生育基盤材の分解性不織布袋は、内部の膨潤
により、ぱんぱんに膨らんだ。その後、そのままで2週
間放置した場合の状態を観察した。その結果、いずれの
植物生育基盤材においても水溶性不織布袋が溶解して大
きく開口した状態になっており、その開口部からメドハ
ギの苗が一斉に伸びていた(以上、図5参照)。
【0055】
【発明の効果】本発明の植物生育基盤材は、小型でかつ
軽量であるため、保管及び運搬が容易であり、施工時に
おける作業性もよい。また、本発明の植物生育基盤材
は、雨水等を吸水した場合には、母材であるココヤシ外
殻非繊維物の作用により、水を吸収して速やかに膨潤
し、保水性も優れている。そして、前記膨潤により、保
水性と同時に通気性及び保肥性も向上されるため、種子
等の健全な発芽及び生育において非常に有効である。さ
らに、母材であるココヤシ外殻非繊維物は、生分解速度
が非常に遅いため、植物が十分に生育するまでの間、施
工当初の形態を保持することができ、それにより、種子
等を鳥や小動物から保護したり、低温や風雨から保護し
たりできる。
【0056】また、本発明の植物生育基盤材を袋体を含
む構成にすることにより、水分の蒸発を抑制する作用、
保水作用の一層の向上、多量の雨水により生じた水流を
緩和する作用等も発揮することができる。本発明の植物
生育基盤材は、道路法面の緑化による保全工事、川岸,
湖岸,海岸等の護岸工事、都市部,山岳,ゴルフ場等に
おける緑化、ハウス栽培,苗床又は露地栽培における農
業的用途等において非常に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1発明の植物生育基盤材の斜視図である。
【図2】第2及び第3発明の植物生育基盤材に用いる袋
体の斜視図である。
【図3】第3発明の植物生育基盤材に用いる成形体又は
圧縮成形体の斜視図である。
【図4】第3発明の植物生育基盤材の斜視図である。
【図5】図4に示す植物生育基盤材が吸水し、種子が発
芽・生育した状態を説明するための図である。
【符号の簡単な説明】
1 植物生育基盤材 2 袋体 3 圧縮成形体 4 植物生育基盤材

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 母材となるココヤシ外殻非繊維物及び肥
    料を含有する成形体又は圧縮成形体と、種子、幼苗又は
    根分株が一体化されていることを特徴とする植物生育基
    盤材。
  2. 【請求項2】 さらに、土壌改良材又は土壌活性材を含
    有する請求項1記載の植物生育基盤材。
  3. 【請求項3】 母材となるココヤシ外殻非繊維物及び肥
    料と、種子、幼苗又は根分株が、生分解性の袋体により
    被包されていることを特徴とする植物生育基盤材。
  4. 【請求項4】 母材となるココヤシ外殻非繊維物及び肥
    料が成形体又は圧縮成形体であり、前記成形体又は圧縮
    成形体と種子、幼苗又は根分株が一体化されている請求
    項3記載の植物生育基盤材。
  5. 【請求項5】 さらに、土壌改良材又は土壌活性材を含
    有する請求項3又は4記載の植物生育基盤材。
  6. 【請求項6】 種子、幼苗の水分含有率が30重量%以
    下である請求項1、3又は4記載の植物生育基盤材。
  7. 【請求項7】 根分株の水分含有率が40重量%以下で
    ある請求項1、3又は4記載の植物生育基盤材。
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